タイトル: | 再公表特許(A1)_安定化抗体含有溶液製剤 |
出願番号: | 2011050911 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 39/00,A61K 9/08,A61K 9/19,A61K 47/18,A61K 47/26 |
井川 智之 森山 千史 JP WO2011090088 20110728 JP2011050911 20110120 安定化抗体含有溶液製剤 中外製薬株式会社 000003311 清水 初志 100102978 春名 雅夫 100102118 山口 裕孝 100160923 刑部 俊 100119507 井上 隆一 100142929 佐藤 利光 100148699 新見 浩一 100128048 小林 智彦 100129506 渡邉 伸一 100130845 大関 雅人 100114340 五十嵐 義弘 100114889 川本 和弥 100121072 井川 智之 森山 千史 JP 2010010060 20100120 A61K 39/00 20060101AFI20130502BHJP A61K 9/08 20060101ALI20130502BHJP A61K 9/19 20060101ALI20130502BHJP A61K 47/18 20060101ALI20130502BHJP A61K 47/26 20060101ALI20130502BHJP JPA61K39/00A61K9/08A61K9/19A61K47/18A61K47/26 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20130523 2011550936 37 4C076 4C085 4C076CC07 4C076DD51Q 4C076DD51Z 4C076FF61 4C076FF63 4C085AA13 4C085AA14 4C085AA16 4C085BB17 4C085BB18 4C085CC21 4C085EE01 4C085EE07 4C085GG01 本発明は抗体含有製剤に関し、特に安定な高濃度抗体含有製剤に関する。 近年、医療現場のニーズにより、抗体含有製剤を自己注射可能な皮下注射用製剤として開発する要望が高くなっている。皮下注射用の抗体含有製剤を設計するにあたっては、1回あたりの抗体投与量が大量(100〜200 mg程度)となる一方で、皮下注射では一般的に注射液量の制限があることから、投与液中の抗体の高濃度化が必要となる。 高濃度の抗体含有溶液は、タンパク質の巨大分子としての性質及び分子間相互作用によりそれ自体粘度の高い溶液を形成する傾向にある。さらに、タンパク質を高濃度溶液にて保存する場合、会合体の生成を始めとする劣化現象が問題となり、それを防止する必要がある。特に、高濃度の抗体含有溶液を凍結状態や溶液状態で長期保存する場合、あるいは凍結融解する場合、会合体が生成しやすい(非特許文献1、2)。 現在、高濃度抗体含有製剤の安定化を図る方法として、比較的低い濃度の抗体溶液を凍結乾燥し、凍結乾燥前より少ない容量の水を用いて凍結乾燥製剤を再溶解することにより高濃度溶液製剤を調製する、いわゆる凍乾濃縮技術を利用した高濃度製剤が使用されることが多い(特許文献1)。しかし、この場合、凍結乾燥製剤の製造に糖などの凍結保護剤の添加が必要であり、再溶解後の溶液製剤の粘度の増大が懸念される。 それに対して、凍結乾燥を行わない溶液製剤であれば、この問題を回避することができると思われるが、上述のごとく、高濃度の抗体含有溶液製剤は、会合体を生じやすい。しかしながら抗体含有溶液製剤は、その取り扱いが凍結乾燥製剤に比べて簡便であり、さらにはプレフィルドシリンジ製剤への適用が容易であることから、その開発の要望が高い。 現在までに、抗体の高濃度の溶液製剤を安定化させるために、種々の検討がなされている(非特許文献1〜4)。これまでに抗体含有溶液製剤のバッファーおよび安定化剤としてヒスチジンバッファーおよびアルギニンが有用であることが報告されている(特許文献2,3,4,5,6)。ヒスチジンバッファーとしては一般に塩酸塩が使用されているが、最近、ヒスチジン塩酸塩よりもヒスチジン酢酸塩のほうが高い安定化効果を示し、ヒスチジンバッファーの対イオン種として酢酸が有用であることが報告された(特許文献6)。また、安定化剤であるアルギニンには一般にアルギニン塩酸塩が使用されている。しかしながら、ヒスチジンおよびアルギニンの対イオン種として塩酸や酢酸を用いた場合では十分な安定性が確保されない場合も存在し、より優れた対イオン種が求められていた。WO 1997/004801WO 2008/121615WO 2009/141239WO 2008/071394WO 2006/065746WO 2006/044908Challenges in the development of high protein concentration formulations, J Pharm Sci, 2004, 93 (6), 1390-1402Curr Opin Biotechnol. 2009 Dec;20(6):708-14. Epub 2009 Oct 31.Antibody structure, instability, and formulation, J Pharm Sci, 2007, 96 (1), 1-26Formulation and delivery issues for monoclonal antibody therapeutics, Adv Drug Del Rev, 2006, 58 (5-6), 686-706 本発明の目的は、安定な、皮下投与に適した高濃度抗体含有製剤を提供することである。 上記目的を達成するために鋭意研究した結果、本発明者らは、ヒスチジン緩衝液またはトリスヒドロキシメチルアミノメタン緩衝液の対イオン種として、酸性アミノ酸であるアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることにより、すなわち、バッファーとしてヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液あるいはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液、またはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-アスパラギン酸塩緩衝液あるいはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-グルタミン酸塩緩衝液を用いることにより、医薬品製剤の緩衝液として報告されているヒスチジン−塩酸塩緩衝液、ヒスチジン−酢酸塩緩衝液等に比べ顕著に安定化効果を有することを見出した。さらに安定化剤として用いられるアルギニン等の塩基性アミノ酸の対イオン種として酸性アミノ酸であるアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることにより、すなわち、安定化剤としてアルギニン−アスパラギン酸塩あるいはアルギニン−グルタミン酸塩を用いることにより、医薬品製剤の安定化剤として報告されているアルギニン塩酸塩に比べ顕著に安定化効果を有することを見出し、これを安定化剤として添加することにより高濃度の安定な抗体含有溶液製剤となしうることを見いだし、本発明を完成した。 すなわち、本発明は以下のものを提供する。〔1〕 塩基性アミノ酸−アスパラギン酸塩あるいは塩基性アミノ酸−グルタミン酸塩を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤。〔2〕 塩基性アミノ酸がヒスチジンである、ヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液あるいはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液を含有することを特徴とする、〔1〕に記載の製剤。〔3〕 塩基性アミノ酸がアルギニンである、アルギニン−アスパラギン酸塩あるいはアルギニン−グルタミン酸塩を含有することを特徴とする、〔1〕に記載の製剤。〔4〕 ヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液あるいはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液、および、アルギニン−アスパラギン酸塩あるいはアルギニン−グルタミン酸塩を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤。〔5〕 トリスヒドロキシメチルアミノメタン-アスパラギン酸塩緩衝液またはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-グルタミン酸塩緩衝液を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤。〔6〕 トリスヒドロキシメチルアミノメタン−アスパラギン酸塩緩衝液およびトリスヒドロキシメチルアミノメタン−グルタミン酸塩緩衝液を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤。〔7〕 塩化物イオンおよび酢酸イオンを実質的に含まない、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の製剤。〔8〕 さらに糖類を含む、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の製剤。〔9〕 抗体がヒト化抗体またはヒト抗体である、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の製剤。〔10〕 抗体の等電点(pI)が、5〜8に改変された抗体である、〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の製剤。〔11〕 抗体濃度が50 mg/mL以上である、〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の製剤。〔12〕 抗体濃度が50 mg/mL〜250 mg/mLである、〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の製剤。〔13〕 溶液製剤である、〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の製剤。〔14〕 溶液製剤の粘度が、30 mPa・s以下である、〔13〕に記載の製剤。〔15〕 溶液製剤が2〜8℃で少なくとも6ヶ月間安定である、〔13〕または〔14〕に記載の製剤。〔16〕 溶液製剤の製造過程に凍結乾燥工程を含まないで製造される、〔13〕〜〔15〕のいずれかに記載の製剤。〔17〕 −30℃〜−10℃で凍結保存される、〔13〕〜〔16〕のいずれかに記載の製剤。〔18〕 凍結乾燥製剤である、〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の製剤。〔19〕 緩衝液濃度が5 mM〜100 mMである、〔2〕、〔4〕、〔7〕〜〔18〕のいずれかに記載の製剤。〔20〕 アルギニンの濃度が5 mM〜300 mMである、〔3〕、〔7〕〜〔19〕のいずれかに記載の製剤。〔21〕 抗体が抗IL-6レセプター抗体である、〔1〕〜〔20〕のいずれかに記載の製剤。〔22〕 緩衝液が実質的にアミノ酸のみからなる、〔2〕、〔4〕、〔7〕〜〔21〕のいずれかに記載の製剤。〔23〕 皮下投与用である、〔1〕〜〔22〕のいずれかに記載の製剤。〔24〕 高濃度抗体含有製剤中の緩衝剤の対イオン種としてアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることで、当該製剤の凍結状態における保存時の会合化を抑制する方法。〔25〕 高濃度抗体含有製剤中の緩衝剤の対イオン種としてアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることで、当該製剤の溶液状態における保存時の会合化を抑制する方法。〔26〕 高濃度抗体含有製剤中の安定化剤の対イオン種としてアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることで、当該製剤の凍結状態における保存時の会合化を抑制する方法。〔27〕 高濃度抗体含有製剤中の安定化剤の対イオン種としてアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることで、当該製剤の溶液状態における保存時の会合化を抑制する方法。 さらに本発明は、塩基性アミノ酸−アスパラギン酸塩あるいは塩基性アミノ酸−グルタミン酸塩の安定な抗体含有製剤の製造における使用、および、高濃度抗体含有製剤の凍結状態または溶液状態における保存時の会合化を抑制する方法に使用するための、当該製剤中の緩衝剤もしくは安定化剤の対イオン種であるアスパラギン酸あるいはグルタミン酸、に関する。 本発明により、安定性に優れた抗体含有製剤が提供される。また本発明により、溶液状態または凍結状態の製剤における会合体生成が抑制され、即ち高濃度の抗体を含む製剤を提供することが可能となった。本発明の高濃度抗体含有製剤は、溶液状態あるいは凍結状態で安定に長期保存可能である。さらには、本発明の製剤は凍結融解のストレスに対する安定性も向上する。また、浸透圧の観点から、ヒスチジンあるいはアルギニンあるいはトリスヒドロキシメチルアミノメタンの対イオン種として、一般に使用される塩酸や酢酸を用いるよりも、アスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることにより、浸透圧を上げることなく、安定化することができる。皮下投与(SC)製剤のようにほぼ等張で安定な製剤を目指す場合、浸透圧を上げずに安定化できることはメリットである。Mab1を40℃保存した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab2を40℃保存した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab1を凍結融解した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab1を25℃保存した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab1を5℃保存した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab1を凍結融解(-20℃〜室温)した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab1を-20℃ 3M保存した際の会合体量(%)を縦軸にプロットした図である。Mab2を凍結融解(-20℃〜室温)した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab1を-20℃保存した際の会合体量(%)を縦軸にプロットした図である。Mab1を凍結融解(-20℃〜室温)した際の会合体量(%)を縦軸にプロットした図である。Mab1を25℃ 3M保存した際の会合体量(%)を縦軸にプロットした図である。Mab2を25℃保存した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab3を25℃保存した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab3を凍結融解(-20℃〜室温)した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab4を25℃保存した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab4を凍結融解(-20℃〜室温)した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab1, Mab2, Mab3を25℃保存した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab1, Mab2, Mab3を凍結融解(-20℃〜室温)した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab5を25℃保存した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab5を凍結融解(-20℃〜室温)した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab1-5を25℃保存した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab1-5を凍結融解(-20℃〜室温)した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab1-3を25℃保存した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。Mab1-3を凍結融解(-20℃〜室温)した際の会合体量(%)の経時的変化を縦軸にプロットした図である。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明は、塩基性アミノ酸−アスパラギン酸塩あるいは塩基性アミノ酸−グルタミン酸塩を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤を提供する。本発明において塩基性アミノ酸とは、例えばヒスチジン、アルギニン、リジン等が挙げられ、さらに本発明において、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等の塩基性アミノ化合物の緩衝液も本発明の塩基性アミノ酸の定義に含まれる。 即ち本発明は、塩基性アミノ酸がヒスチジンである、ヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液あるいはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤を提供する。さらに、本発明は、塩基性アミノ酸がアルギニンである、アルギニン−アスパラギン酸塩あるいはアルギニン−グルタミン酸塩を安定化剤として含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤を提供する。さらに本発明は、ヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液あるいはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液、および、アルギニン−アスパラギン酸塩あるいはアルギニン−グルタミン酸塩を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤を提供する。さらに本発明は、トリスヒドロキシメチルアミノメタン-アスパラギン酸塩緩衝液またはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-グルタミン酸塩緩衝液を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤を提供する。さらに本発明は、トリスヒドロキシメチルアミノメタン−アスパラギン酸塩緩衝液およびトリスヒドロキシメチルアミノメタン−グルタミン酸塩緩衝液を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤を提供する。本発明において、抗体含有製剤とは、活性成分として抗体を含み、ヒト等の動物に投与できるように調製された製剤を指す。 なお本発明における「安定な抗体含有製剤」とは、当該製剤中に抗体等のタンパク質の会合体が生成しにくい、即ち溶液或いは凍結保存中に不溶性及び可溶性会合体の生成を始めとする劣化反応が起こりにくい製剤を指す。 本発明の製剤に含まれる抗体濃度は特に制限されないが、高濃度の抗体を含有することが好ましい。抗体濃度は好ましくは、50 mg/mL以上、さらに好ましくは100 mg/mL以上、さらに好ましくは120 mg/mL以上、さらに好ましくは150 mg/mL以上、さらに好ましくは180mg/ml以上である。本発明の製剤に含まれる抗体濃度の上限は、特に限定されないが、通常、250 mg/mLである。 本発明で使用される抗体は、所望の抗原と結合する限り特に制限はなく、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよく、均質な抗体を安定に生産できる点でモノクローナル抗体が好ましい。 本発明で使用されるモノクローナル抗体としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ラクダ、サル等の動物由来のモノクローナル抗体だけでなく、キメラ抗体、ヒト化抗体、bispecific抗体など人為的に改変した遺伝子組み換え型抗体も含まれる。さらに、血中滞留性や体内動態の改善を目的とした抗体分子の物性の改変(具体的には、等電点(pI)改変、Fc受容体の親和性改変等)を行うために抗体の定常領域等を人為的に改変した遺伝子組み換え型抗体も含まれる。 また、本発明で使用される抗体の免疫グロブリンクラスは特に限定されるものではなく、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのIgG、IgA、IgD、IgE、IgMなどいずれのクラスでもよいが、IgG及びIgMが好ましい。 さらに本発明で使用される抗体には、wholeの抗体だけでなく、Fv、Fab、F(ab)2などの抗体断片や、抗体の可変領域をペプチドリンカー等のリンカーで結合させた1価または2価以上の一本鎖Fv(scFv、sc(Fv)2やscFvダイマーなどのDiabody等)などの低分子化抗体なども含まれる。 上述した本発明で使用される抗体は、当業者に周知の方法により作製することができる。 モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、所望の抗原や所望の抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングすることによって作製できる。ハイブリドーマの作製は、たとえば、ミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73: 3-46 )等に準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行えばよい。 また、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた遺伝子組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。具体的には、ハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成する。目的とする抗体のV領域をコードするDNAを得たら、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。 本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体などを使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体であり、マウス抗体の可変領域をコードするDNAをヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。 ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400、WO 96/02576 参照)。CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。 抗体の活性、物性、薬物動態、安全性等を改善するために抗体のアミノ酸を置換する技術としては、例えば以下に述べる技術も知られており、本発明で使用される抗体には、このようなアミノ酸置換を施された抗体も含まれる。 IgG抗体の可変領域にアミノ酸置換を施す技術は、ヒト化(Tsurushita N, Hinton PR, Kumar S., Design of humanized antibodies: from anti-Tac to Zenapax., Methods. 2005 May;36(1):69-83.)をはじめとして、結合活性を増強させるための相補性決定領域(CDR)のアミノ酸置換によるaffinity maturation(Rajpal A, Beyaz N, Haber L, Cappuccilli G, Yee H, Bhatt RR, Takeuchi T, Lerner RA, Crea R., A general method for greatly improving the affinity of antibodies by using combinatorial libraries., Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Jun 14;102(24):8466-71.)、フレームワーク(FR)のアミノ酸置換による物理化学的安定性の向上(Ewert S, Honegger A, Pluckthun A., Stability improvement of antibodies for extracellular and intracellular applications: CDR grafting to stable frameworks and structure-based framework engineering., Methods. 2004 Oct;34(2):184-99. Review)が報告されている。また、IgG抗体のFc領域のアミノ酸置換を施す技術として、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)活性や補体依存性細胞障害活性(CDC)活性を増強させる技術が知られている(Kim SJ, Park Y, Hong HJ., Antibody engineering for the development of therapeutic antibodies., Mol Cells. 2005 Aug 31;20(1):17-29. Review.)。さらに、このようなエフェクター機能を増強させるだけではなく、抗体の血中半減期を向上させるFcのアミノ酸置換の技術が報告されている(Hinton PR, Xiong JM, Johlfs MG, Tang MT, Keller S, Tsurushita N., An engineered human IgG1 antibody with longer serum half-life., J Immunol. 2006 Jan 1;176(1):346-56.、Ghetie V, Popov S, Borvak J, Radu C, Matesoi D, Medesan C, Ober RJ, Ward ES., Increasing the serum persistence of an IgG fragment by random mutagenesis., Nat Biotechnol. 1997 Jul;15(7):637-40.)。さらに、血中滞留性あるいは体内動態の向上を目的として、抗体の等電点(pI)を制御するためのアミノ酸置換技術、具体的には抗体の表面に露出しているアミノ酸残基を改変することにより抗体のpIを制御する技術が知られている(WO 07/114319)。さらには抗体の物性改善を目的とした定常領域の種々のアミノ酸置換技術も知られている(WO 09/41613)。 抗体の血漿中滞留性や半減期を伸ばすことにより、医薬としての抗体の投与量の低減や投与間隔の延長が期待できる。そのための有望な技術の一つとして、抗体の等電点を下げる技術が挙げられる(WO 07/114319)。本発明の製剤は、このような等電点が改変された抗体に対しても高い安定化効果を有する。このようなpI改変抗体とは、改変前の抗体のpIよりも1以上、好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上改変された抗体をいう。なお、天然の(または通常の)抗体は、通常7.5〜9.5の範囲の等電点を有すると考えられる。本発明の製剤は、特に天然では存在し難い、低い等電点を有する抗体に対して高い安定化効果を有する。このような抗体の等電点としては5.0〜8.0が挙げられ、好ましくは5.0〜7.5であり、さらに好ましくは5.0〜7.0であり、特に好ましくは5.5〜6.5である。後述の実施例に記載されるように、Mab2(等電点:9.3)のアミノ酸配列を改変して等電点を制御したMab1の等電点は、5.8である。 また、ヒト抗体の取得方法も知られている。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878 参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を抗原で免疫することで所望のヒト抗体を取得することができる(WO 93/12227, WO 92/03918,WO 94/02602, WO 94/25585,WO 96/34096, WO 96/33735参照)。さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を含む適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は既に衆知であり、WO 92/01047, WO 92/20791, WO 93/06213, WO 93/11236, WO 93/19172, WO 95/01438, WO 95/15388を参考にすることができる。本発明で使用される抗体には、このようなヒト抗体も含まれる。 抗体遺伝子を一旦単離し、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いることができる。動物細胞としては、(1) 哺乳類細胞、例えば、CHO, COS,ミエローマ、BHK (baby hamster kidney ),HeLa,Vero,(2) 両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3) 昆虫細胞、例えば、sf9, sf21, Tn5などが知られている。植物細胞としては、ニコティアナ(Nicotiana)属、例えばニコティアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces )属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces serevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus )属、例えばアスペスギルス・ニガー(Aspergillus niger )などが知られている。原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が知られている。これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。 さらに、本発明で使用される抗体には、抗体断片や低分子化抗体、並びに抗体修飾物が含まれる。例えば、抗体断片や低分子化抗体としてはFab、F(ab')2、Fv又はH鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させた一価又は二価以上のシングルチェインFv(scFv、sc(Fv)2など) (Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883) が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、又は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137参照)。 抗体修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)や細胞障害性薬剤等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる(Farmaco. 1999 Aug 30;54(8):497-516.、Cancer J. 2008 May-Jun;14(3):154-69.)。本発明の「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。 本発明の製剤に含まれる抗体としては、抗組織因子抗体、抗IL-6レセプター抗体、抗IL-6抗体、HM1.24抗原モノクローナル抗体、抗副甲状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP抗体)、抗グリピカン-3 抗体、抗ガングリオシドGM3抗体、抗TPO受容体アゴニスト抗体、凝固第VIII因子代替抗体、抗IL31レセプター抗体、抗HLA抗体、抗AXL抗体、抗CXCR4抗体、抗NR10抗体、ファクターIXとファクターXとのBi-specific抗体などを挙げることができるが、これに限定されない。 本発明で使用する好ましい再構成ヒト化抗体としては、ヒト化抗インターロイキン6(IL-6)レセプター抗体(トシリツマブ、hPM-1あるいはMRA)(WO92/19759参照)、ヒト化抗HM1.24抗原モノクローナル抗体(WO98/14580参照)、ヒト化抗副甲状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP抗体)(WO98/13388を参照)、ヒト化抗組織因子抗体(WO99/51743参照)、抗グリピカン-3 ヒト化IgG1κ抗体(PCT/JP05/013103参照)、抗NR10ヒト化抗体(WO2009/072604参照)などが挙げられる。本発明で使用するヒト化抗体として特に好ましいのは、ヒト化抗IL-6レセプター抗体である。 ヒトIgM抗体としては、抗ガングリオシドGM3 組み換え型ヒトIgM抗体(WO05/05636参照)などが好ましい。 低分子化抗体としては、抗TPO受容体アゴニストDiabody(WO02/33072参照)、抗CD47アゴニストDiabody(WO01/66737参照)などが好ましい。 さらに、等電点が改良された抗体としては、例えば、WO 2009/041621に記載された抗IL-6レセプター抗体であるMab1(H鎖/配列番号:1、L鎖/配列番号:2)、抗NR10ヒト化抗体であり、WO2009/072604の実施例12に記載の方法で作製した、完全ヒト化NS22抗体などがあげられる。 本発明の製剤中の緩衝液(例えば、ヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液、ヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン-アスパラギン酸塩緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン-グルタミン酸塩緩衝液)の好ましい態様は、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸やトリスヒドロキシメチルアミノメタンを遊離アミノ酸の状態で添加した水溶液等の溶液に、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸を遊離アミノ酸の状態で含む、水溶液等の液体で滴定することによって調整される緩衝液である。またその逆の順番で添加して調整することも可能であり、さらには粉末によって直接滴定することも可能である。 本発明の製剤中のアルギニン−アスパラギン酸塩及びアルギニン−グルタミン酸塩の好ましい態様は、アルギニン(遊離塩基)を遊離アミノ酸の状態で添加した水溶液等の溶液に、アスパラギン酸(遊離アミノ酸)及び/又はグルタミン酸(遊離アミノ酸)を遊離アミノ酸の状態で含む、水溶液等の液体を混合することによって調整される塩である。またその逆の順番で添加して調整することも可能であり、さらには粉末によって直接滴定することも可能である。 本発明者らは、高濃度の抗体を含有する試料の保存時の安定性を評価するために、凍結融解試験、熱加速試験、長期保存試験及び凍結保存試験により種々の添加剤の効果を検討した。その結果、ヒスチジン緩衝液の対イオン種として、酸性アミノ酸であるアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることにより、すなわち、緩衝液としてヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液あるいはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液を用いることにより、医薬品製剤の緩衝液として報告されているヒスチジン−塩酸塩緩衝液やヒスチジン−酢酸塩緩衝液等に比べ顕著に、会合体生成が抑制されることを見出した。 さらに抗体含有製剤の安定化剤として報告されているアルギニン塩酸塩と比較して、アルギニン−アスパラギン酸塩あるいはアルギニン−グルタミン酸塩を添加することにより、より高い安定化効果を示すことも見出した。これらの検討結果は、本明細書中の後述の実施例において、ヒト化抗IL-6レセプター抗体を含有する試料を用いた試験結果として例示されている。 具体的には、ヒスチジン−アスパラギン酸(Histidine-Aspartate)塩緩衝液またはヒスチジン−グルタミン酸(Histidine-Glutamate)塩緩衝液、またはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-アスパラギン酸塩緩衝液あるいはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-グルタミン酸塩緩衝液を含有することにより、抗体の会合体の生成が少なく、安定な高濃度抗体含有製剤とすることができる。さらに、アルギニン−アスパラギン酸塩(Arginine-Aspartate)またはアルギニン−グルタミン酸塩(Arginine-Glutamate)を安定化剤として含有することにより、さらに抗体の会合体の生成が少なく、より安定な高濃度抗体含有製剤とすることができる。したがって、本発明は、ヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液あるいはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液、またはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-アスパラギン酸塩緩衝液あるいはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-グルタミン酸塩緩衝液を高濃度抗体含有溶液の緩衝液として用いることにより、顕著に会合体生成を抑制する方法、並びにアルギニン−アスパラギン酸塩あるいはアルギニン−グルタミン酸塩を安定化剤として高濃度抗体含有溶液に添加することにより、顕著に会合体生成を抑制する方法、に関する。 本方法の一態様として、例えば、高濃度抗体含有製剤中の緩衝液(例えばヒスチジン緩衝液あるいはトリスヒドロキシメチルアミノメタン緩衝液)あるいは安定化剤(例えばアルギニン)の対イオン種としてアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることで、当該製剤の凍結状態における保存時および凍結融解時の会合化を抑制する方法が挙げられる。 本方法の別の態様としては、例えば、高濃度抗体含有製剤中の緩衝液(例えばヒスチジン緩衝液あるいはトリスヒドロキシメチルアミノメタン緩衝液)あるいは安定化剤(例えばアルギニン)の対イオン種としてアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることで、当該製剤の溶液状態における保存時の会合化を抑制する方法が挙げられる。 本発明においてヒスチジン緩衝液の代わりに、緩衝液の対イオン種としてアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることの可能な緩衝液としては、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(トリス)、イミダゾールなどが挙げられる。さらに、これらの緩衝液を本発明のヒスチジン緩衝液に加えて使用することもできる。 また本発明において、安定化剤の対イオン種としてアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることの可能なアルギニン以外の安定化剤としては、アルギニンアミド、リジン、メグルミン、スペルミン、スペルミジン、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。 上述のように本発明は、ヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液あるいはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液、またはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-アスパラギン酸塩緩衝液あるいはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-グルタミン酸塩緩衝液を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤を提供する。本発明の抗体含有製剤は、さらにアルギニン−アスパラギン酸塩あるいはアルギニン−グルタミン酸塩を含むことにより、さらなる安定化効果を発揮する。したがって、本発明は、溶液中にヒスチジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸(好ましくは、ヒスチジンおよび/またはアルギニン)やトリスヒドロキシメチルアミノメタンと、アスパラギン酸又はグルタミン酸との組み合わせからなる塩を含むことを特徴とする抗体含有製剤に関する。 本発明で使用されるヒスチジンは、単品またはその誘導体のいずれを用いてもよく、特に、L-ヒスチジンが望ましい。本発明で使用されるアルギニンは、単品、その誘導体、その塩のいずれを用いてもよく、特に、L-アルギニンまたはその塩が望ましい。また、アルギニンの塩は、アスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩が好ましい。 本発明の製剤中のヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液あるいはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液の濃度(量)は、1〜100 mMであることが好ましく、5〜100 mMであることがより好ましく、5〜50 mMであることがより好ましく、10〜25 mMであることがさらに好ましい。 本発明の製剤中のアルギニンの濃度(量)は、5〜300 mMであることが好ましく、25〜200 mMであることがさらに好ましく、50〜150 mMであることがさらに好ましい。 本発明の製剤は、溶液製剤(抗体含有溶液製剤)、あるいは凍結乾燥剤であることができる。本発明の溶液製剤には、凍結乾燥製剤製造工程における凍結乾燥処理前の溶液または再溶解後の溶液も含まれる。本発明の溶液製剤は、製造過程に凍結乾燥工程を含まないで製造される溶液製剤であることが好ましい。また本発明の凍結乾燥剤は、本発明の溶液製剤を当業者に公知の手法により凍結乾燥させることにより得ることができる。 本発明の製剤は、溶液のpHが4〜8であることが好ましく、5.0〜7.5であることがより好ましく、5.5〜6.5であることがさらに好ましい。 また本発明の溶液製剤の粘度は、室温(25℃)条件下で、30 mPa.s以下、好ましくは20 mPa.s以下、より好ましくは15 mPa.s以下である。 本発明の溶液製剤は、冷蔵温度(2〜8℃)で少なくとも6ヶ月、好ましくは12ヶ月、さらに好ましくは2年間、さらに好ましくは3年間、または室温(22〜28℃)で少なくとも6ヶ月、好ましくは1年間、より好ましくは2年間、有意な変化が観察されない。即ち本発明は、22〜28℃で少なくとも6ケ月間安定である溶液製剤に関する。 また本発明の溶液製剤は、−30℃〜−10℃の温度範囲で凍結保存することができる。 本発明の製剤は、さらに界面活性剤を含有することができる。本発明にて用いられる好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであり、特に好ましいのはポリソルベート20、80及びプルロニックF−68(ポロキサマー188)である。本発明の製剤に対する界面活性剤の添加量は、一般には0.0001〜10%(w/v)であり、好ましくは0.001〜5%であり、さらに好ましくは0.005〜3%である。 本発明の製剤は、さらにアミノ酸を含有することができる。本発明にて用いられる好ましいアミノ酸は、天然アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり、特に好ましいのはL-メチオニン、およびL-プロリンである。 本発明の製剤は、さらに糖類を含有することができる。本発明にて用いられる好ましい糖類は、スクロース、トレハロース、メグルミン及びソルビトールである。 本発明の製剤に対するアミノ酸または糖類の添加量は、一般には1 mM〜1000 mMであり、好ましくは5 mM〜500 mMであり、さらに好ましくは10 mM〜300 mMである。 本発明の製剤は、さらに無機塩を含有することができる。本発明にて用いられる好ましい糖類は、マグネシウム塩及びカルシウム塩である。 本発明の製剤は、好ましくは以下のA〜Dの成分から実質的に構成される。A)抗IL-6レセプター抗体B)ヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液および/またはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液C)所望によりアルギニン(アルギニン−アスパラギン酸塩あるいはアルギニン−グルタミン酸塩を含む)、アルギニン以外のアミノ酸、および/または糖類、ならびにD)界面活性剤 上記「実質的に構成される」とは、後述する任意の添加成分である凍結保護剤、懸濁剤、溶解補助剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、含硫還元剤、酸化防止剤等の通常製剤に添加される成分以外の成分が5 mM以下であること、より好ましくは2 mM以下、より好ましくは1 mM以下であることを意味する。 さらに本発明の製剤は、緩衝剤または安定化剤の対イオンとして、アスパラギン酸とグルタミン酸以外の陰イオンを含まないことが好ましい。そのような製剤の一態様として、例えば、塩化物イオンおよび酢酸イオンを実質的に含まない製剤を挙げることができる。「塩化物イオンおよび酢酸イオンを実質的に含まない」とは、例えば塩化物イオンおよび酢酸イオンが5 mM以下、より好ましくは2 mM以下、より好ましくは1 mM以下であることを意味する。安定化効果の小さい塩化物イオンおよび酢酸イオンを実質的に含まず、安定化効果の大きいアスパラギン酸とグルタミン酸を対イオンとして用いることで、浸透圧を上げることなく安定性の高い抗体含有製剤を製造することが可能である。 また本発明の製剤には、必要に応じて、凍結保護剤、懸濁剤、溶解補助剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、含硫還元剤、酸化防止剤等を適宜添加することができる。 凍結保護剤として例えば、トレハロース、ショ糖、ソルビトール等の糖類を挙げることができる。 溶液補助剤として例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マグロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステル等を挙げることができる。 等張化剤として例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等を挙げることができる。 保存剤として例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール等を挙げることができる。 吸着防止剤として例えば、ヒト血清アルブミン、レシチン、デキストラン、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。 含硫還元剤として例えば、N−アセチルシステイン、N−アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、炭素原子数1〜7のチオアルカン酸等のスルフヒドリル基を有するもの等が挙げられる。 酸化防止剤として例えば、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、L−アスコルビン酸及びその塩、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピルあるいはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等のキレート剤が挙げられる。 本発明の製剤は、経口または非経口のいずれでも投与可能であるが、通常、非経口経路で投与される。具体的には、注射、経皮、経粘膜、経鼻、経肺などにより投与される。注射剤型の例としては、例えば、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射などにより全身又は局所的に投与することができる。皮下注射の場合、注射液量の制限があるが1回あたりの抗体投与量を大量(100〜200 mg-程度)とすることができる。そのため、本発明の製剤は皮下投与(注射)用として特に適している。 皮下投与用の製剤では、疼痛の観点から、緩衝剤の浸透圧比が等張の1.0に近いほうが望ましいと考えられている。従って、本発明の溶液製剤の浸透圧比は、好ましくは約1である。また、製剤はその保存安定性を向上させるためにアルギニンや糖類などを添加し安定化を図るが、浸透圧が等張を超えてしまうと皮下投与時の疼痛の原因となるため、これらの安定化剤は浸透圧を考慮して添加することが好ましい。 さらに本発明は、塩基性アミノ酸−アスパラギン酸塩あるいは塩基性アミノ酸−グルタミン酸塩の安定な抗体含有製剤の製造における使用、および、高濃度抗体含有製剤の凍結状態または溶液状態における保存時の会合化を抑制する方法に使用するための、当該製剤中の緩衝剤もしくは安定化剤の対イオン種であるアスパラギン酸あるいはグルタミン酸、に関する。 なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。 以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。[実施例1] Mab1およびMab2を用いた対イオン種の安定性評価 WO 2009/041621に記載された抗IL-6レセプター抗体であるMab1(H鎖/配列番号:1、L鎖/配列番号:2)とMab2(H鎖/配列番号:3、L鎖/配列番号:4;トシリツマブ)は、CHO細胞安定発現株を用いて当業者の公知の方法で発現し、protein Aを含む当業者公知の方法で高純度に精製し、下記の実施例の安定性試験に使用した。 Mab1およびMab2を用いHistidine - ChlorideまたはHistidine - Acetateの2処方の安定性を凍結融解および40℃保存により評価した。サンプル調製は、Mab1およびMab2を各処方溶液(表1)に対して一晩透析した後、各溶液を濃縮して最終的なMab1またはMab2濃度を37 mg/mLとすることにより行った。凍結融解試験は-20℃にて凍結させたものを室温にて融解させる緩慢凍結融解を10回実施した後、次いで-20℃にて凍結させたものを湯浴(37℃)にて融解させる急速凍結融解を10回実施することにより行った。凍結融解後および40℃保存後の各サンプルの会合体量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用い面積百分率法により算出した。会合体(%)の増加はMab1およびMab2の安定性低下を示唆することから、各処方の安定性比較の指標として会合体増加量を用いた。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC) サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、各処方の会合体量および低分子分解物を分析するために実施した。各サンプルを下記移動相により約0.4-2.0 mg/mLとなるように希釈し、これらをG3000SWXLカラム(東ソー)により分析した。移動相には300 mM NaCl を含む50 mM リン衝液(pH7.0)を用い、流速0.5 mL/minにて分析した(検出波長:220 nm)。単量体よりも早く溶出したピークを会合体、単量体よりも溶出は遅いがbuffer由来のピークよりも早く溶出したピークを低分子分解物として解析し、それぞれの含量(%)を面積百分率法により算出した。 Mab1およびMab2を用いたHistidine - ChlorideまたはHistidine - Acetateの2処方の安定性評価結果を図1〜3に示す。この結果より、Mab1は溶液保存および凍結融解のいずれにおいてもHistidine - Chlorideの方がHistidine - Acetate よりも若干高い安定性を示すことが明らかとなった。また溶液保存の結果より、Mab2はHistidine - Chloride の方がHistidine - Acetate よりも約2倍程度高い安定性を示すことが明らかとなった。[実施例2] Mab1を用いた対イオン種の安定性評価(1) HistidineおよびArginineの対イオン種としては、hydrochloric acidが一般的である。これまでに、Histidineの対イオン種としてAcetic acid、Phosphoric acid、Sulfuric acidを用いた検討の結果、Histidineの対イオン種としてAcetic acidが安定性に優れているとの報告(PCT/US2005/037471)がある。しかし上記実施例1において、Mab1およびMab2に対しては、Histidineのアニオン性の対イオン種としてはAcetic acidよりもhydrochloric acidのほうがやや優れていることが示された。アニオン性の対イオン種としてはhydrochloric acidが一般的であるが、hydrochloric acidは保存容器によく使用されるステンレス鋼を腐食しやすいことが報告されている(Dent. Mater. 17:409-414 (2001)、J. pharm. Sci. 86:1250-1255 (1997))。またAcetic acidは揮発性を有するためpH変動がおこりやすいことが報告されている(Injectable Drug Development, Authors: Pramod K. Gupta (Editor), Gayle A. Brazeau, Gayle A)。 そこで本実施例において、Mab1およびMab2の緩衝液におけるアニオン性の対イオン種として、ステンレス腐食性および揮発性を有さず、且つ、Acetic acidおよびhydrochloric acidよりも優れた安定化効果を有する対イオン種を探索した。これまでにPCT/US2005/037471において報告されているhydrochloric acid、Acetic acid、Phosphoric acid、Sulfuric acid以外のアニオン種として、アミノ酸であるAspartic acidおよびGlutamic acidを対イオン種として検討した。実施例1においてMab1およびMab2のいずれにおいてもHistidine - Acetate よりHistidine - Chlorideのほうが高い安定性を示すことが明らかになっているため、対イオン種の安定性へ及ぼす影響はhydrochloric acidと比較した。具体的にはMab1を用い、表2に示した3処方の安定性評価を行うことで、バッファーであるHistidineおよび安定化剤であるArginineのアニオン性の対イオン種として、hydrochloric acid、 Aspartic acid、Glutamic acidの及ぼす安定性への影響を評価した。 サンプル調製は、実施例1と同様にMab1を各処方溶液(表2)に対して一晩透析した後、各溶液を濃縮して最終的なMab1濃度を200 mg/mLとすることにより行った。凍結融解試験は緩慢融解(-20℃にて凍結させたものを室温にて融解させる)というサイクルを10回実施することにより行った。各処方溶液の調製法を下記に示す。処方No.3に関してはL- HistidineおよびL- Arginineをそれぞれ20 mM, 50 mM分量り取り、これらをMilliQ水に溶かした後、1規定の塩酸を滴定することによりpHを6に調製した。処方No.4-5に関しては、L-Histidine、L-Arginine、およびL-Aspartic acidまたはL-Glutamic acidをそれぞれ20 mM, 50 mM、60 mM分量り取り、これらをMilliQ水に溶かした後、30-40 mMのL-Aspartic acidまたはL-Glutamic acid溶液を滴定することによりpHを6に調製した。凍結融解後、または-20℃保存後、25℃保存後、および5℃保存後の各サンプルの会合体量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用い面積百分率法により算出した。 凍結融解後、または-20℃保存後、25℃保存後、および5℃保存後の各処方の会合体増加量(%)の結果を図4〜7に示す。5℃、25℃保存時の保存時の会合体増加量比較より、HistidineおよびArginineの対イオン種はGlutamic acid=Aspartic acid > Hydrochloric acidの順に高い安定性を示し、対イオン種をHydrochloric acidからAspartic acidまたはGlutamic acidとすることによりMab1の安定性が向上することが明らかとなった。この傾向は凍結融解および凍結保存においても同様であり、-20℃ 3 M保存後のGlutamic acid、Aspartic acid 、Hydrochloric acid処方の会合体増加量 (%) はそれぞれ約0.8, 1.2, 3.0%であり、Glutamic acidはAspartic acidよりもやや高い安定化効果を示した。 実施例1および2より、Mab1におけるアニオン性の対イオン種として、Glutamic acidおよびAspartic acidがHydrochloric acidおよびAcetic acidよりも安定性に優れていることが見出された。Glutamic acidおよびAspartic acidは、ステンレス腐食作用および揮発性も報告されていないことからも、Glutamic acidおよびAspartic acidは、Mab1のアニオン性の対イオン種として有望であるが見出された。具体的には、バッファーとしてはHistidine - glutamateおよびHistidine - aspartateが、Hisitine - chlorideおよびHistidine - acetateよりも優れており、安定化剤としてはArginine - glutamateおよびArginine - aspartateが、Arginine - chlorideおよびArginine - acetateよりも優れていると考えられた。[実施例3] Mab2を用いた対イオン種の安定性評価(1) 実施例1に示したとおり、Mab2はHistidine - Acetate バッファーよりもHistidine - Chlorideバッファーにおいて高い安定性を示すことが明らかとなった(Mab1と同様、図2)。また実施例2に示したとおり、HistidineおよびArginineの対イオン種をHydrochloric acidからAspartic acidまたはGlutamic acidとすることにより、溶液および凍結時のMab1の安定性が顕著に向上することが確認された。特に、Mab1において凍結時にHistidineおよびArginineの対イオン種をHydrochloric acidからGlutamic acidとすることにより、安定性が約3倍以上と大きく改善したことから、Mab2を用いてヒスチジンの対イオン種をGlutamic acidおよびHydrochloric acidとしたときの凍結融解における安定性を評価した。併せて安定化効果の高いArginineを含む処方も実施し、Histidineの対イオン種をGlutamic acidとしたときの安定化効果を観測する際の比較対照とした。 サンプル調製は、実施例1と同様にMab2を各処方溶液(表3)に対して一晩透析した後、各溶液を濃縮して最終的なMab2濃度を約40-230 mg/mLとすることにより行った。各処方溶液の調製法を下記に示す。処方No.6および8に関してはL-HistidineおよびL-Arginine (処方No.8のみ) を50 mM分量り取り、これらをMilliQ水に溶かした後、1規定の塩酸を滴定することによりpHを6に調製した。処方No.7に関しては、L-HistidineおよびL-Glutamic acidをそれぞれ50 mM、25 mM分量り取り、これらをMilliQ水に溶かした後、30-40 mMのL-Glutamic acid溶液を滴定することによりpHを6に調製した。サンプル調製後の各処方におけるMab2濃度を表4に示す。凍結融解試験は-20℃にて凍結させたものを室温にて融解させる緩慢凍結融解を10回実施することにより行った。緩慢凍結融解後の各サンプルの会合体量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用い面積百分率法により算出した。 凍結融解試験における各処方の会合体増加量(%)の結果を図8に示す。この結果、Histidineの対イオン種をHydrochloric acidからGlutamic acidとすることによりMab2の安定性が約2倍程度向上することが明らかとなった。また、このGlutamic acidによる安定化効果は一般的な安定化剤である50 mM Arginine -Chlorideを添加したときとほぼ同等であり、Glutamic acidは対イオン種として単独で高い安定化効果を有することが明らかとなった。 ここで、皮下投与用の製剤では疼痛の観点から緩衝液の浸透圧比が等張の1.0に近いほうが望ましいと考えられている。凍結融解における安定性は50 mM Histidine -Chloride/50 mM Arginine -Chlorideも 50 mM Histidine-Glutamateも同等であるが、緩衝液の浸透圧を考えた場合、後者は前者よりも浸透圧が約100 mOsm程度低い。したがって上記のように対イオン種をAspartic acidまたはGlutamic acidとすることにより安定性が向上した場合、浸透圧を上げずに安定性のみ向上させることが可能であり、これは皮下投与用の製剤を開発するにあたり大きなメリットになり得る。 また、製剤はその保存安定性を向上させるためにarginineや糖類などを添加し安定化を図るが、浸透圧が等張を超えてしまうと皮下投与時の疼痛の原因となるため、これらの安定化剤は浸透圧を考慮して添加する必要がある (Injectable Drug Development, Authors: Pramod K. Gupta (Editor), Gayle A. Brazeau, Gayle A)、Challenges in the development of high protein concentration formulations, J pharm sci, 2004, 93(6), 1390-1402)。Mab1において、Histidineおよびarginineのアニオン性の対イオン種としてhydrochloric acidおよびAcetic acidを添加した場合、hydrochloric acidおよびAcetic acidは安定化効果を示さないため、浸透圧を上げるだけの効果となる。そのため浸透圧の観点から、製剤に含まれるイオン種として、安定化効果の無いイオン濃度は少ないほうが良い。すなわち、浸透圧の観点からもhydrochloric acidおよびAcetic acidが含まれず、バッファーとしてはHistidine - glutamateおよびHistidine - aspartateが、Hisitine - chlorideおよびHistidine - acetateよりも優れており、安定化剤としてはArginine - glutamateおよびArginine - aspartateが、Arginine - chlorideおよびArginine - acetateよりも優れている。[実施例4] Mab1を用いた対イオン種の安定性評価(2) 実施例2および3に示したとおり、HistidineおよびArginineの対イオン種をGlutamic acidとすることにより、特に凍結保存においてMab1の安定性が約2〜3倍と顕著に改善することが明らかとなった。そこでMab1の-20℃における保存安定性を追及するために、HistidineおよびArginineの対イオン種をGlutamic acidとし、さらに安定化剤として糖(Trehalose)を用いて-20℃における保存安定性試験を実施した。併せて溶液保存および凍結融解も実施した。 サンプル調製は、Mab1を各処方溶液(表5)に対して一晩透析した後、各溶液を濃縮して最終的なMab1濃度を200 mg/mLとすることにより行った。各処方溶液の調製法を下記に示す。L-Histidine 、L-Arginine、L-Glutamic acidおよびTrehaloseをそれぞれ100 mM、50 mM、100 mM、0-150 mM分量り取り、これらをMilliQ水に溶かした後、30-40 mMのL-Glutamic acid溶液を滴定することによりpHを6に調製した。凍結融解試験は-20℃にて凍結させたものを室温にて融解させる緩慢凍結融解を10回実施することにより行った。凍結融解後、-20℃保存後、および25℃保存後の各サンプルの会合体量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用い面積百分率法により算出した。 -20℃保存後、凍結融解後、および25℃保存後の各処方の会合体増加量(%)の結果を図9〜11に示す。図9〜11に示したとおり、Trehaloseを50 mM以上添加することにより、-20℃保存および凍結融解において会合体がほとんど増えない処方が得られた。また、25℃溶液保存においてTrehaloseの濃度依存的な安定化効果が観測された。以上のように、アミノ酸および糖のみから成るシンプルで且つ溶液保存時と凍結保存時に安定な処方を見出した。[実施例5] Mab2を用いた対イオン種の安定性評価(2) 実施例1に示したとおり、Mab1と同様に、Mab2はHistidine - Acetate よりもHistidine - Chlorideにおいて高い安定性を示すことが明らかとなった(図2)。また実施例2に示したとおり、HistidineおよびArginineの対イオン種をHydrochloric acidからAspartic acidまたはGlutamic acidとすることにより、溶液および凍結時のMab1の安定性が顕著に向上することが確認された。そこで、Mab2を用いてHistidineの対イオン種をHydrochloric acidまたはGlutamic acidとしたときの溶液保存(25℃)における安定性を評価した。併せて安定化効果の高いArginineを含む処方も実施し、Histidineの対イオン種をGlutamic acidとしたときの安定化効果を観測する際の比較対照とした。 サンプル調製は、実施例1と同様にMab2を各処方溶液(表3)に対して一晩透析した後、各溶液を濃縮して最終的なMab2濃度を約40-230 mg/mLとすることにより行った。各処方溶液の調製法は実施例3と同様である。サンプル調製後の各処方におけるMab2濃度を表4に示す。25℃ 2Weekおよび4Week保存後の各サンプルの会合体量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用い面積百分率法により算出した。 25℃保存後の各処方の会合体増加量(%)の結果を図12に示す。この結果、凍結融解試験とは異なり、Histidineの対イオン種をHydrochloric acidからGlutamic acidに変更してもMab2の安定性は変化しないことが明らかとなった。Mab1とMab2のpIはそれぞれ5.8、9.3であることから、溶液保存における対イオン種の安定化効果は低pIの抗体で顕著に認められる可能性が示唆された。[実施例6] Mab1, Mab2, Mab3, Mab4およびMab5を用いた対イオン種の安定性評価Mab3: ファクターIXとファクターXとのBi-specific抗体であり、IgG4由来の定常領域を有し、更にアミノ酸配列を改変してpI値を6.8に低下させた抗体Mab4:抗NR10ヒト化抗体(WO2009/072604の実施例12に記載の方法で作製した、完全ヒト化NS22抗体)、抗体クラスはIgG2。アミノ酸配列を改変してpI値を5.6に低下させた抗体Mab5:抗グリピカン3ヒト化抗体(WO2006/006693の実施例24に記載の方法でヒト化し、実施例25の方法でL鎖が改変された抗体)、抗体クラスはIgG1。 実施例2および3に示したとおり、Mab1およびMab2において、HistidineおよびArginineの対イオン種をHydrochloric acidからAspartic acidまたはGlutamic acidとすることにより、溶液および凍結時の安定性は顕著に向上することが確認された。そこで、Mab1およびMab2に加えて、抗体の等電点が5〜8に改変されているMab3及びMab4、等電点が9.0のMab5も用いて、HistidineまたはArginineの対イオン種をHydrochloric acidまたはAspartic acidとしたときの溶液保存および凍結融解における安定性を評価した。Mab1, Mab2, Mab3, Mab4およびMab5の各pIを以下の表6に示す。 サンプル調製は、Mab1, Mab2, Mab3, Mab4およびMab5を各透析バッファー(表7)に対して一晩透析した後、各抗体溶液を濃縮し、この抗体濃縮溶液に対して各処方ストックバッファー(表8)を添加して最終的な抗体濃度が約100-190 mg/mLとなるように実施した。このようにして調製した処方溶液一覧を表9に示す。各処方溶液について、25℃保存および凍結融解試験を実施した。凍結融解試験は-20℃にて凍結させたものを25℃にて融解させる緩慢凍結融解を10回実施することにより行った。緩慢凍結融解後の各サンプルの会合体量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用い面積百分率法により算出した。 凍結融解後および25℃溶液保存後の各処方の会合体増加量(%)の結果を図13〜20に示す。25℃溶液保存の会合体増加量比較において、Histidine-Aspartate 処方はHistidine-Chloride処方と同程度の安定性を示し、Arginine-Aspartate処方は Arginine-Chloride処方とほぼ同程度の安定性を示した(図13、図15、図17および図19)。 一方、凍結融解後の会合体増加量比較においては、Histidine-Aspartate 処方はHistidine-Chloride処方と比較して2倍以上高い安定性を示し、Arginine-Aspartate処方はArginine-Chloride処方と比較して高い安定性を示した(図14、図16、図18および図20)。したがって、HistidineまたはArginineの対イオン種をHydrochloric acidからAspartic acidとすることにより抗体の凍結時安定性が顕著に向上することが明らかとなった。[実施例7] Mab1, Mab2, Mab3, Mab4およびMab5を用いた対イオン種の安定性評価 実施例2、3および6に示したとおり、Histidine処方において対イオン種をHydrochloric acidからAspartic acidまたはGlutamic acidとすることにより、溶液および凍結時の抗体の安定性が顕著に向上することが確認された。そこで、Mab1, Mab2, Mab3, Mab4およびMab5を用いて、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(トリス)処方の対イオン種をHydrochloric acidまたはAspartic acidとしたときの溶液保存および凍結融解における安定性を評価した。 サンプル調製は、Mab1, Mab2, Mab3, Mab4およびMab5を各透析バッファー(表10)に対して一晩透析した後、各抗体溶液を濃縮し、この抗体濃縮溶液に対して各処方ストックバッファー(表11)を添加して最終的な抗体濃度が約100 -110 mg/mLとなるように実施した。このようにして調製した処方溶液一覧を表12に示す。各処方溶液について、25℃保存および凍結融解試験を実施した。凍結融解試験は-20℃にて凍結させたものを25℃にて融解させる緩慢凍結融解を10回実施することにより行った。緩慢凍結融解後の各サンプルの会合体量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用い面積百分率法により算出した。 凍結融解後および25℃溶液保存後の各処方の会合体増加量(%)の結果を図21〜22に示す。25℃溶液保存の会合体増加量比較においては、Tris-Aspartate/Arginine-Aspartate処方はTris-Chloride/Arginine-Chloride処方と同程度の安定性を示した(図21)。 一方、凍結融解後の会合体増加量比較においては、Tris-Aspartate/Arginine-Aspartate処方は Tris-Chloride/Arginine-Chloride処方と比較して高い安定性を示した(図22)。したがって、Tris処方においても対イオン種をHydrochloric acidからAspartic acidとすることにより抗体の凍結時安定性が顕著に向上することが明らかとなった。[実施例8] Mab1, Mab2およびMab3を用いたトリスの対イオン種の安定性評価 実施例7に示したとおり、トリス処方において対イオン種をHydrochloric acidからAspartic acidとすることにより、凍結時の抗体の安定性が顕著に向上することが確認された。そこで、Mab1, Mab2およびMab3を用いて、トリスの対イオン種をHydrochloric acidまたはAspartic acidとしたときの溶液保存および凍結融解における安定性を評価した。 サンプル調製は、Mab1, Mab2およびMab3を各透析バッファー(表13)に対して一晩透析した後、各抗体溶液を100 mg/mL以上まで濃縮し、この抗体濃縮溶液に対して各透析溶液を添加して最終的な抗体濃度が約100 mg/mLとすることにより実施した。このようにして調製した処方溶液一覧を表14に示す。各処方溶液について、25℃保存および凍結融解試験を実施した。凍結融解試験は-20℃にて凍結させたものを25℃にて融解させる緩慢凍結融解を10回実施することにより行った。緩慢凍結融解後の各サンプルの会合体量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用い面積百分率法により算出した。 凍結融解後および25℃溶液保存後の各処方の会合体増加量(%)の結果を図23および24に示す。この結果より、25℃溶液保存および凍結融解のいずれの会合体増加量比較においても、Tris-Aspartate処方は Tris-Chloride処方と比較して高い安定性を示しており、特に凍結融解における安定性は2倍以上高くなっていることが明らかとなった。したがって、緩衝剤としてTrisを用いた場合においても、対イオン種をHydrochloric acidからAspartic acidとすることにより抗体の安定性が顕著に向上することが明らかとなった。 塩基性アミノ酸−アスパラギン酸塩あるいは塩基性アミノ酸−グルタミン酸塩を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤。 塩基性アミノ酸がヒスチジンである、ヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液あるいはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液を含有することを特徴とする、請求項1に記載の製剤。 塩基性アミノ酸がアルギニンである、アルギニン−アスパラギン酸塩あるいはアルギニン−グルタミン酸塩を含有することを特徴とする、請求項1に記載の製剤。 ヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液あるいはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液、および、アルギニン−アスパラギン酸塩あるいはアルギニン−グルタミン酸塩を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤。 トリスヒドロキシメチルアミノメタン-アスパラギン酸塩緩衝液またはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-グルタミン酸塩緩衝液を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤。 トリスヒドロキシメチルアミノメタン−アスパラギン酸塩緩衝液およびトリスヒドロキシメチルアミノメタン−グルタミン酸塩緩衝液を含有することを特徴とする、安定な抗体含有製剤。 塩化物イオンおよび酢酸イオンを実質的に含まない、請求項1〜6のいずれかに記載の製剤。 さらに糖類を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の製剤。 抗体がヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項1〜8のいずれかに記載の製剤。 抗体の等電点(pI)が、5〜8に改変された抗体である、請求項1〜9のいずれかに記載の製剤。 抗体濃度が50 mg/mL以上である、請求項1〜10のいずれかに記載の製剤。 抗体濃度が50 mg/mL〜250 mg/mLである、請求項1〜10のいずれかに記載の製剤。 溶液製剤である、請求項1〜12のいずれかに記載の製剤。 溶液製剤の粘度が、30 mPa・s以下である、請求項13に記載の製剤。 溶液製剤が2〜8℃で少なくとも6ヶ月間安定である、請求項13または14に記載の製剤。 溶液製剤の製造過程に凍結乾燥工程を含まないで製造される、請求項13〜15のいずれかに記載の製剤。 −30℃〜−10℃で凍結保存される、請求項13〜16のいずれかに記載の製剤。 凍結乾燥製剤である、請求項1〜12のいずれかに記載の製剤。 緩衝液濃度が5 mM〜100 mMである、請求項2、4、7〜18のいずれかに記載の製剤。 アルギニンの濃度が5 mM〜300 mMである、請求項3、7〜19のいずれかに記載の製剤。 抗体が抗IL-6レセプター抗体である、請求項1〜20のいずれかに記載の製剤。 緩衝液が実質的にアミノ酸のみからなる、請求項2、4、7〜21のいずれかに記載の製剤。 皮下投与用である、請求項1〜22のいずれかに記載の製剤。 高濃度抗体含有製剤中の緩衝剤の対イオン種としてアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることで、当該製剤の凍結状態における保存時の会合化を抑制する方法。 高濃度抗体含有製剤中の緩衝剤の対イオン種としてアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることで、当該製剤の溶液状態における保存時の会合化を抑制する方法。 高濃度抗体含有製剤中の安定化剤の対イオン種としてアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることで、当該製剤の凍結状態における保存時の会合化を抑制する方法。 高濃度抗体含有製剤中の安定化剤の対イオン種としてアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることで、当該製剤の溶液状態における保存時の会合化を抑制する方法。 【課題】 長期保存時の会合体生成が抑制された、安定な、皮下投与に適した抗体含有製剤を提供することを課題とする。【解決手段】 ヒスチジン緩衝液またはトリスヒドロキシメチルアミノメタンの対イオン種として、酸性アミノ酸であるアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることにより、すなわちバッファーとしてヒスチジン−アスパラギン酸塩緩衝液あるいはヒスチジン−グルタミン酸塩緩衝液、またはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-アスパラギン酸塩あるいはトリスヒドロキシメチルアミノメタン-グルタミン酸塩を用いることにより顕著に安定化効果を有することを見出した。さらにアルギニン等の塩基性アミノ酸の対イオン種として酸性アミノ酸であるアスパラギン酸あるいはグルタミン酸を用いることにより、すなわちアルギニン−アスパラギン酸塩あるいはアルギニン−グルタミン酸塩を用いることにより顕著に安定化効果を有することを見出した。【選択図】なし配列表