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タイトル:公開特許公報(A)_認知症周辺症状改善剤、易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤、抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤、並びに、ブロナンセリン作用調整剤
出願番号:2011035339
年次:2012
IPC分類:A61K 31/55,A61P 25/28,A61P 25/00,A61P 25/18,A61P 25/22,A61P 43/00,A61K 31/496


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江本 康一 JP 2012171910 公開特許公報(A) 20120910 2011035339 20110222 認知症周辺症状改善剤、易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤、抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤、並びに、ブロナンセリン作用調整剤 江本 康一 511046944 八木 敏安 100120019 江本 康一 A61K 31/55 20060101AFI20120814BHJP A61P 25/28 20060101ALI20120814BHJP A61P 25/00 20060101ALI20120814BHJP A61P 25/18 20060101ALI20120814BHJP A61P 25/22 20060101ALI20120814BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120814BHJP A61K 31/496 20060101ALI20120814BHJP JPA61K31/55A61P25/28A61P25/00A61P25/18A61P25/22A61P43/00 121A61K31/496 4 OL 19 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC32 4C086BC50 4C086GA01 4C086GA07 4C086GA12 4C086MA01 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA05 4C086ZA02 4C086ZA15 4C086ZA18 4C086ZC75本発明は、クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする認知症周辺症状改善剤、易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤、抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤、並びに、ブロナンセリン作用調整剤に関する高齢化社会の進行に伴って、認知症の問題は以前にも増して重要なものとなってきている。認知症は、中心となる症状である記憶障害、見当識障害、判断力の低下といった中核症状と、これら中核症状に伴って起こる周辺症状(BPSD)とがある。BPSDは、認知症が中等度から重度に進行するに従い頻繁に出現するようになる症状である。このような周辺症状としては、睡眠障害、妄想、徘徊、攻撃的行動、介護への抵抗、多動による転倒、衝動的な盗食による窒息等が挙げられる。これらの周辺症状は、介護者に大きな負荷を与え、また、認知症患者自身の命に関わるものでもあり、認知症患者に対しては、抗精神病薬、気分安定薬、抗不安薬、睡眠薬、漢方薬(抑肝散など)、脳循環改善薬、脳代謝改善薬等が使用される。しかし、BPSDを抑制する十分な効果を有する薬品は開発されていなかった。よって、このようなBPSDを十分に抑制することができる薬剤が求められていた。また、統合失調症や双極性障害などの精神病患者において、抗精神病薬、気分安定薬、抗不安薬等の多剤併用状態であるにもかかわらず、易怒性、被刺激性、衝動性が持続している場合に、このような症状を改善する薬剤が求められていた。特に、D2遮断の強い抗精神病薬の単剤使用状態、又は、抗精神病薬の多剤併用により強力なD2遮断になっている状態、又は、患者の抗精神病薬に対する感受性が高くD2遮断の弱い抗精神病薬の使用でも見かけ上D2遮断の強い状態になっているものと思われる状況下で、気分安定薬及び/又は抗不安薬を併用しても易怒性や被刺激性や衝動性が持続している場合に、これを改善することは困難であり隔離や身体拘束などの行動制限が余儀なくされていた。よって、このような易怒性や被刺激性や衝動性を改善することができる薬剤が求められていた。更に、抗精神病薬として特許文献1に記載されたブロナンセリンが知られている。ブロナンセリンは、ロナセン(登録商標)という商品名で大日本住友製薬が販売している非定型抗精神病薬の一種であり、主に統合失調症の治療薬として使用されている。ブロナンセリンは、強力なドパミンD2受容体拮抗作用とセロトニン5-HT2A受容体拮抗作用とを持つが、5-HT2AよりもD2受容体に対する親和性が高いという特徴を持つため、dopamine−serotonin antagonist(DSA)と呼ばれる。このため、幻覚や妄想等の陽性症状にすぐれた効果が期待できる。しかし、ブロナンセリンは、アカシジアや易興奮性の発現が高いと言われており、他抗精神病薬への変更や他の向精神薬との併用を余議なくされる場合もある。よって、このような有害事象を改善することができる薬剤が求められていた。他方、クロミプラミンは古くから抗うつ薬として使用されてきた化合物であり、現在はアルフレッサファーマからアナフラニール(登録商標)という商品名で販売されている(非特許文献1〜9)。しかし、クロミプラミンの薬理活性については、一日50mg以上を処方した場合のうつ病や強迫性障害の治療薬としての活性が一般的であり、これ以下の少ない用量で用いた場合の薬理活性については疼痛や小児遺尿症の治療薬としての活性くらいしか知られていない。更に、上述したような認知症周辺症状改善剤、易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤、抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤、並びに、ブロナンセリン作用調整剤としての使用は検討されていない。特開平03−7257号公報「こころの治療薬ハンドブック第6版(星和書店)」「今日の治療薬2010(南江堂)」「精神科治療薬ハンドブック第6版(中外医学社)」「精神科処方ノート第3版(中外医学社)」「精神疾患の薬物療法ガイド(星和書店)」「精神科治療薬処方ガイド(MEDSi)」「向精神薬マニュアル第3版(医学書院)」「精神薬理学エセンシャルズ第2版(MEDSi)」「アラフラニール錠10mg アラフラニール錠25mg」 [online] 2010年8月改訂 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構ホームページ、インターネット(URL:http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1174002F1029_3_09/1174002F1029_3_09?view=body)本発明は、上記に鑑み、認知症周辺症状改善剤、易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤、抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤、並びに、ブロナンセリン作用調整剤を得ることを目的とするものである。本発明は、クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする認知症周辺症状改善剤である。本発明は、クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤である。本発明は、クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤である。本発明は、クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするブロナンセリン作用調整剤である。本発明の認知症周辺症状改善剤によって、攻撃的行動、介護への抵抗、衝動性、多動性、徘徊等の認知症の周辺症状を短期間で改善することができる。これにより、患者が服用する医薬品の種類や量を減少させることも期待できる。本発明の易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤によって、統合失調症や双極性障害などの精神病患者において、多剤併用状態であるにもかかわらず、易怒性や被刺激性や衝動性が持続している場合に、これらの症状を改善することができる。これにより、患者が服用する医薬品の種類や量を減少させることも期待できる。本発明の抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤を併用することにより、抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の使用にても改善しない易怒性や被刺激性や衝動性を改善することができる。これにより、患者が服用する医薬品の種類や量を減少させることも期待できる。本発明のブロナンセリン作用調整剤を併用することによって、ブロナンセリンが有する薬理活性を調整し、アカシジアや易興奮性などの有害事象を改善したり統合失調症の解体症状や認知機能低下などを改善する等、ブロナンセリンが有する薬理活性を最大限に生かすことができる。これにより、患者が服用する医薬品の種類や量を減少させることも期待できる。以下に本発明を詳細に説明する。本発明における有効成分は、クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩である。クロミプラミンは、下記一般式で表わされる公知化合物であり、うつ病や強迫性障害等の治療剤として使用されている。薬学的に許容される塩としては、無機酸との塩、有機酸との塩を挙げることができる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩は、当業者に知られている手順に従って、医薬製剤に調製することができる。例えば、上記化合物は、通常の賦形剤、希釈剤または担体と配合して、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、粉末剤等に成形することができる。そのような製剤に適当な賦形剤、希釈剤および担体の例には、以下のものが包含される。デンプン、糖、マンニトール、およびケイ素誘導体といったような充填剤および増量剤、カルボキシメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、およびポリビニルピロリドンといったような結合剤、グリセロールといったような湿潤剤、寒天、炭酸カルシウム、および重炭酸ナトリウムといったような崩壊剤、パラフィンといったような溶解遅延剤、第四級アンモニウム化合物といったような吸収促進剤、セチルアルコール、グリセロールモノステアレートといったような界面活性剤、カオリンおよびベントナイトといったような吸着担体、並びにタルク、ステアリン酸カルシウムおよびマグネシウム、および固形ポリエチルグリコールといったような滑沢剤。上記化合物はまた、経口投与に便利なエリキシル剤または溶液剤として、あるいは非経口(例えば、筋肉内、皮下または静脈内経路)投与に適当な溶液剤として製剤化することもできる。さらに、上記化合物は、徐放性投与形態等に製剤化してもよい。場合によっては一定時間の間、好ましくは腸管の特定部位においてのみ活性成分を放出するような製剤に設計することもできる。例えば、高分子物質またはワックスにより、コーティング、エンベロープおよび保護マトリックスを施すことができる。クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩のヒトへの投与量は、従来は通例、成人一人当たり一日の許容有効量は約50mg/日〜約225mg/日、さらに一般的には約50mg/日〜約150mg/日である。その疾患または障害を抑制するのに十分な期間にわたり、そのような用量を毎日1〜3回、要すればそれ以上の回数で、処置を必要とする対象患者に投与する。本発明の新たな用途においてクロミプラミン又はその薬学的に許容される塩のヒトへの投与量は、成人一人当たり一日に10〜50mg程度である。そのような用量を毎日1回眠前(場合によっては夕食後)、要すればそれ以上の回数で、処置を必要とする対象患者に投与する。このような投与量は、クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩をうつ病や強迫性障害の治療剤に使用する従来の用法に比べると、少ない量での投与である。また、うつ病や強迫性障害の治療に際しては、投与から効果が表れるまでの間に、1〜2週間程度の長期間を要していたが、本発明の用途においては、数日間程度という極めて短期間で効果が表れ始める。これらの点から、本発明の用途は、クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩の公知の薬理作用とは異なる作用が介在していることが推測される。抗うつ効果や強迫症状改善効果を発揮するために用いられる通常量でのクロミプラミン使用により、心毒性(不整脈など)などの重大な副作用が生じる可能性がある。また、抗うつ効果や強迫症状改善効果を発揮する通常量のクロミプラミン使用状態でこれを急に中止することは悪性症候群等を生じるリスクを伴う。しかし、クロミプラミンを10〜25mg程度で数日間試してみて、もし効果や反応がない場合には直ぐに中止したとしてもこのようなリスクは少ないものと思われる。少量かつ短期間であれば、急に中止しても悪性症候群等は生じにくいと考えられ、また、少量であれば、心毒性などの重大な副作用が生じる可能性も低いと考えられるからである。故に、本発明のクロミプラミン少量投与法は、非常に試しやすく使いやすいという利点がある。このようなクロミプラミン又はその薬学的に許容される塩の投与によって、認知症周辺症状、易怒性,被刺激性及び/又は衝動性を改善することができる。認知症周辺症状とは、認知症の周辺的な症状であり、例えば、妄想、徘徊、攻撃的行動、介護への抵抗、多動による転倒、衝動的な盗食による窒息、睡眠障害等を挙げることができる。また、易怒性、被刺激性、衝動性とは、認知症の周辺症状であったり、統合失調症、双極性障害、コルサコフ症候群、アルコール依存症等の患者において発生する症状であり、怒りっぽくなったり、周囲からの刺激に過敏に反応したり、衝動的な行動を取る症状である。このような症状が発生すると、介護者に非常に大きな負担がかかり、日常生活にも問題を生じてしまうため、このような症状を抑制することが求められている。本発明の易怒性及び/又は被刺激性及び/又は衝動性改善剤は、統合失調症や双極性障害等において、多剤併用状態にある患者であっても、このような易怒性、被刺激性、衝動性が抑制されていない場合に、このような症状を改善する作用を有する。さらに、このクロミプラミン追加投与により過鎮静になる場合も少なからずあり、かといって鎮静系の他剤を減量または中止しても精神症状は増悪しないことが多い。このため、患者が服用する医薬品の種類・量を減少させることができるという利点も有する。本発明の「易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤」とは、易怒性、被刺激性、衝動性のうちの1つ又は複数の症状が現れた状態において、これらを改善することができる作用を有する医薬品を意味するものである。抗精神病薬,気分安定薬,抗不安薬のうちの1種又は2種以上を使用した状態の患者においても、一部の症状についてなかなか改善しないことがある。本発明における「抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤」とは、このような患者に対して、「抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬」と併用して使用し、抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の効果の調整を生じさせる医薬品である。統合失調症における陽性症状の中核である幻覚、妄想、思考障害を改善するためには抗精神病薬の使用が必須である。その使用によりこれらの症状が軽減したにもかかわらず、易怒性、被刺激性、衝動性が亢進している場合には、他抗精神病薬が追加されたり気分安定薬や抗不安薬が併用されることが多い。双極性障害における気分変動や衝動性などの抑制には、抗精神病と気分安定薬と抗不安薬が併用されることが多い。しかし、このような多剤使用状態によっても易怒性、被刺激性、衝動性が改善しないことが少なからずあり、入院による隔離・拘束などの行動制限が余儀なくされる場合もある。そのような場合にクロミプラミン又はその薬学的に許容される塩を併用することにより、抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用が調整され、易怒性、被刺激性、衝動性の改善が期待できる。さらに、このクロミプラミン追加投与により過鎮静になる場合も少なからずあり、かといって鎮静系他剤を減量または中止しても精神症状は増悪しないことが多い。このため、患者が服用する医薬品の種類・量を減少させることができるという利点も有する。本発明において、クロミプラミンを抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤として使用する場合、併用して用いられる抗精神病薬、気分安定薬、抗不安薬としては特に限定されず公知の任意の物を使用することができる。併用される抗精神病薬としては、通常当分野で用いられているものが挙げられ、例えばクロルプロマジン、ハロペリドール、リスペリドン、オランザピン、ケチアピン、アミスルプリド、クエチアピン、ペロスピロン、ブロンペリドール、スルピリド、モサプラミン、ピモジド、プロペリシアジン、ゾテピン、ブロナンセリン等を挙げることができる。併用される抗不安薬としては、通常当分野で用いられているものが挙げられ、例えばジアゼパム、フルニトラゼパム、ブロチゾラム、エチゾラム、ゾルピーデム、ロラゼパム、アルプラゾラム、クロチアゼパム、タンドスピロン、ブスピロン、ヒドロキシジン等を挙げることができる。併用される気分安定薬としては、通常当分野で用いられているものが挙げられ、例えば、炭酸リチウム等のリチウム、カルバマゼピン、バルプロエート、ラモトリジン、トピラマート、クロナゼパム等を挙げることができる。これらの抗精神病薬、抗不安薬、気分安定薬は、その薬学的に許容される塩も包含するものである。このような「抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤」として効果が顕著なものとして、ブロナンセリンを挙げることができる。すなわち、クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩は、ブロナンセリンと併用して使用することによって、ブロナンセリンを使用した場合の薬効をより優れたものとすることができる。すなわち、ブロナンセリン作用調整剤として使用することもできる。なお、本明細書において「ブロナンセリン」は、その薬学的に許容される塩も包含するものである。ブロナンセリンは、以下の化2に示した化学構造を有する化合物であり、幻覚や妄想等の陽性症状に優れた効果が期待される。しかし、アカシジアや易興奮性の発現が高いと言われており、このために他抗精神病薬への変更もしくは他抗精神病薬との併用を余儀なくされる場合がある。このようなブロナンセリンの性質を改善する目的でクロミプラミン又はその薬学的に許容される塩を用いることもできる。ブロナンセリンの使用に際して、少量のクロミプラミンを併用すると、ブロナンセリンの作用が増強されたり、上述したアカシジアや易興奮性といった有害事象が改善されたりする、という効果が得られる。このような効果によって、より好適にブロナンセリンを利用することができるものである。さらに、このクロミプラミンの追加投与により過鎮静になる場合も少なからずあり、かといって鎮静系他剤を減量または中止しても精神症状は増悪しないことが多い。このため、患者が服用する医薬品の種類・量を減らすことができるという利点も有する。クロミプロラミンが本発明のような薬理活性を発現するメカニズムは明らかではないが、以下のようなものではないかと推測される。クロミプロラミンの薬理活性としては、(1)5−HT (=セロトニン)再取り込みポンプ阻害。(2)NA (=ノルアドレナリン)再取り込みポンプ阻害。(3)アセチルコリンM1受容体遮断。(4)ヒスタミンH1受容体遮断。(5)アドレナリンα1受容体遮断。(6)ドパミンD2受容体遮断。(7)アドレナリンβ受容体の感受性低下。(8)セロトニン5−HT1A受容体の感受性低下。が知られている。(精神科治療薬処方ガイド(MEDSi)、向精神薬マニュアル第3版(医学書院))クロミプラミンが抗うつ効果や不安改善等の効果を奏するのは、これらのうち、5−HT、NAによる効果であると考えられている。しかし、本発明の一連の効果は、作用の即効性や著効性からみて、クロミプラミンが持つH1遮断作用やα1遮断作用による鎮静効果、5−HT,NA再取り込み阻害作用による抗うつ効果だけでは説明が困難であるものと思われる。本発明においては、認知症、統合失調症、双極性障害、コルサコフ症候群、アルコール依存症等の各種疾患によるか、又は、これらの疾患に対する多くの治療剤の投与によって、脳内神経伝達系のバランスが崩れた状態にある患者に対して、効果を有するものと推測される。すなわち、上述したようにクロミプラミンは、脳内神経伝達系の多くの部位に対して作用するものであるから、神経伝達系の興奮と抑制のバランスが崩れている場合には、多くの神経伝達系に作用を与えて、そのバランスを整える作用を発揮するのではないか、と推測される。認知症やその周辺症状の場合には、薬剤使用以前から既に、アセチルコリン系だけでなく、セロトニン系、ノルアドレナリン系、ドパミン系等の脳内神経伝達系が広範囲に障害されていると言われており、そのような場合には脳内神経伝達系の多くの部位に対して作用するクロミプラミン単剤もしくはクロミプラミンと他剤の併用が奏効するものと推測される。また、ブロナンセリンは薬理活性を発現するメカニズムが単純であり(D2受容体遮断作用とセロトニン5-HT2A受容体遮断作用の2つに特化されている)、それ故に強力な抗幻覚・妄想作用を示しながらも副作用が少ないと言われている。しかしそれだけに不足面も多く脳内神経伝達系のバランスが崩れることが起こりうるものと考える。そのような場合に、脳内神経伝達系の多くの部位に対して作用するクロミプラミンが奏効するものと推測される。更に、上述したような脳内神経伝達系に作用する各種の医薬品にクロミプラミンを併用した場合には、その脳内神経伝達系の多くの部位に対する調整作用により、各種医薬品の作用が増強または緩和または補強されているものと思われる。各種鎮静系医薬品の鎮静作用がクロミプラミンの併用により増強された場合には、これらの各種鎮静系医薬品を減量・中止することが可能となる。さらに、クロミプラミンが直接脳内神経伝達系に微妙に働きかけることにより、脳内神経伝達系が本来持つ機能の回復を促している可能性も考えられる。このような調整作用に基づくものであることから、従来のうつ病での使用よりも少量の使用で効果が得られると推測される。このようなクロミプラミンの用途は、従来のうつ病治療剤としての使用とは異なる作用に基づくことは明らかである。以下、本発明を実施例を用いて更に詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。以下の実施例においては、クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩としては、塩酸塩であるアナフラニール(登録商標;アルフレッサファーマ社の商品名)を使用した。更に、ブロナンセリンとしては、ロナセン(登録商標;大日本住友製薬株式会社の商品名)を使用した。(症例1)85歳 男性 アルツハイマー型認知症 不眠、被刺激性、易怒性 入院中(アナフラニール 10mg 投与前処方)分1 朝食後アリセプト(登録商標;エーザイ社の商品名)5mg分3 朝昼夕食前抑肝散 7.5g(アナフラニール 10mg投与前症状)周囲にいる他患の声などに反応して大声を出して怒る、介護や検査に抵抗して怒るなど被刺激性や易怒性亢進。また、入眠困難、中途覚醒あり。(アナフラニール10mg 投与開始後症状)抑肝散中止してアナフラニール10mg開始。アナフラニール投与開始日より夜間良眠できるようになった。アナフラニール投与開始2日目より被刺激性や易怒性消失、介護や検査にも穏やかに応じるようになった。(症例2)84歳 女性 認知症 不眠、被刺激性、易怒性 当院外来通院中(アナフラニール 10mg 投与前処方)分1 眠前アモバン(登録商標;サノフィアベンティス社の商品名) 10mg分3 朝昼夕食前抑肝散 7.5g分3 朝昼夕食後セディール(登録商標;大日本住友製薬社の商品名) 50mg(20、10、20、0)(アナフラニール 10mg 投与前症状)易怒性亢進。 衝動的に暴力行為あり。 夜間に何度も中途覚醒あり。(アナフラニール10mg 投与開始後症状)アナフラニール10mgオン。中途覚醒することなく夜間良眠できるようになった。易怒性軽減。衝動的な暴力行為の頻度も程度も減少。(症例3)81歳 男性 認知症 抑うつ気分、不眠、易怒性、被刺激性、多動性 入院中(アナフラニール 投与前処方)分1 眠前ロドピン100mg、ピレチア25mg、リフレックス15mg分1朝食後トピナ50mg、アリセプト3mg分2夕食後眠前トピナ200mg分3 朝夕食後眠前リボトリール1.5mg(アナフラニール 25mg 投与前症状)夜間中途覚醒。易怒性。被刺激性。多動による転倒。介護や服薬に対する拒否的態度。(アナフラニール10mg 投与開始後症状)リフレックス中止してアナフラニール25mg開始。投与開始日に中途覚醒することなく夜間良眠できるようになる。投与開始翌日より易怒性軽減、多動性ほぼ消失、介護や服薬に対する拒否的態度軽減。(症例4)68歳 男性 コルサコフ症候群 アルコール依存症 被刺激性、易怒性 入院中(入院後経過)入院当初はふらつき強く臥床傾向であったが、アリナミンF(登録商標;武田薬品工業社の商品名)の投与によりしだいにふらつき改善し離床が進んできた。その頃から被刺激性亢進し易怒的になってきたため保護室隔離として抑肝散7.5g投与開始。症状改善して保護室隔離解除。しばらく気分安定していたが、再び症状再燃したため保護室隔離としてデパケン(登録商標;協和発酵キリン株式会社の商品名)400mg開始。しかしその後も症状不安定に経過。保護室隔離と解除を繰り返した。ロドピン(登録商標;アステラス製薬社の商品名)50mg追加。やはり症状著変なし。柴胡加竜骨牡蠣湯7.5g追加。やや症状改善したが再び症状増悪してきたため、デパケン600mgに増量。しかし症状著変なし。ロドピン75mgまで増量。やはり症状著変なし。ニューレプチル(登録商標;塩野義製薬株式会社の商品名)開始し60mgまで増量、ロドピン漸減中止。しかし、症状著変なし。アナフラニール10mg開始。アナフラニール投与開始翌日より被刺激性や易怒性著明に改善。デパケンを漸減中止し、ニューレプチルを4mgまで漸減したところ脱抑制行為出現(被刺激性や易怒性の再燃はなし)したため5mgに戻した。その後、被刺激性、易怒性、脱抑制症状の再燃なく数ヶ月が経過している。(現処方)分1 寝る前 : アナフラニール10mg分2 朝夕食後 : ワイパックス(登録商標;ファイザー社の商品名) 1mg、 ニューレプチル5mg分3 朝昼夕食前 : 抑肝散 7.5g、柴胡加竜骨牡蠣湯 7.5g分3 朝昼夕食後 : アリナミンF糖衣錠・3錠(症例5)80歳 女性 認知症 不眠、多動性、衝動性、暴力行為 退院して近医通院中(アナフラニール 25mg 投与前処方)分1 眠前 アモバン 7.5mg、 ドラール(田辺三菱製薬社の商品名) 7.5mg、 セロクエル(登録商標;アストラゼネカ社商品名) 12.5mg分1 朝食後 アリセプト 5mg(アナフラニール25mg投与前症状)夜間中途覚醒。多動による転倒あり。衝動的に暴力行為あり。(アナフラニール25mg 投与開始後症状)アナフラニール 25mg投与開始。 ドラール中止しアモバン10mgに増量。 アナフラニール投与開始日より夜間良眠できるようになる。投与開始2日目より多動性や衝動的な暴力行為止まる。(症例6)44歳 男性 非定型精神病 不眠、希死念慮 退院して当院外来通院中(入院前処方)分1 眠前リスペリドン2mg、 ヒルナミン(登録商標;塩野義製薬社の商品名) 75mg、 デパス(登録商標;田辺三菱製薬の商品名) 2mg、 ニューレプチル 30mg、 サイレース(登録商標;エーザイ社の商品名) 4mg、 ベンザリン(登録商標;塩野義製薬社の商品名)10mg、 ピレチア(登録商標;塩野義製薬社の商品名) 50mg、 ドラ―ル 15mg、 ベゲタミン A 2T(登録商標;塩野義製薬社の商品名)、 ベゲタミン B 1T、 セロクエル(登録商標;アストラゼネカ社の商品名) 250mg分1 夕食後メイラックス(登録商標;明治製菓株式会社の商品名) 2mg分2 朝夕食後デパス 1mg、 アキネトン(登録商標;大日本住友製薬の商品名) 4mg、 レキソタン(登録商標;エーザイ社の商品名) 10mg分3 朝昼夕食後EPLカプセル(アルフレッサファーマ社の商品名)(肝機能障害改善薬)750mg、 エルゴスパオン(登録商標;日医工社の商品名)(起立性低血圧改善薬)6mg(入院後経過)入院前に、不眠を苦に希死念慮が強くなり自殺企図あり。眠前にアナフラニール10mgで開始し、デパス 2mgとベンザリン 10mgとベゲタミンA1Tを中止、サイレースを4mgから2mgに減量、セロクエルを250mgから200mgに減量、ニューレプチルを眠前から毎食後分3投与に変更。入眠困難が持続していたためリスパダール(登録商標;ジョンソンアンドジョンソン社の商品名)3mlに増量。夜間良眠得られた。アナフラニール25mgに増量。ベゲタミンA中止しても夜間良眠維持。また、毎食後分3でワイパックス3mg開始することにより毎食後分3で投与されていたデパス1mg、 レキソタン10mg、 メイラックス2mgを中止。副作用の軽減を期待してヒルナミン 75mgをロドピンへ50mgに切り替え。やや過鎮静のため、ベゲタミンBを中止しサイレースを1mgに減量。入眠困難となったためアナフラニールを50mg に増量。 入眠困難解決し夜間良眠。デパケン開始し600mgまで増量、 トピナ(登録商標;協和発酵キリン株式会社の商品名)開始し200mgまで増量、ニューレプチル漸減中止しドラール中止。 夜間良眠維持。デジレル(登録商標;ファイザー社の商品名)50mg開始しロドピン中止。 デジレル200mgまで増量しセロクエル漸減中止。 夜間良眠維持。抗精神病薬を減量するに伴い、アキネトン漸減中止。さらに、起立性低血圧改善してきたため、リズミック(登録商標;大日本住友製薬社の商品名。当院採用薬としてエルゴスパオンの代わりに用いた。)漸減中止。ウルソ(登録商標;田辺三菱製薬社の商品名。当院採用薬としてEPLカプセルの代わりに用いた。)漸減中止し退院とした。以上の変薬により、非定形精神病の症状が再燃することもなく、不眠が改善し、それに伴い希死念慮も消失した。退院後、肝機能数値正常で経過中。(退院時処方)分1 眠前リスパダール内用液 3ml、デジレル 200mg、 ピレチア 50mg、 アモバン 10mg、 サイレース 1mg、 アナフラニール50mg分2 夕食後眠前トピナ 200mg分3 朝昼夕食後ワイパックス 3mg分3 朝夕食後眠前デパケン 600mg(症例7)51歳 女性 統合失調症 不眠、易怒性、こだわり 入院中(アナフラニール投与前処方)分1 眠前ロドピン 250mg、 ベゲタミン B 1T、 サイレース 2mg、 マイスリー(登録商標;アステラス製薬の商品名)10mg、 アモバン10mg、 ワイパックス1mg分1 朝食後セレネース(登録商標;大日本住友製薬の商品名) 9mg、 アキネトン 6mg (屯)不眠時 ヒルナミン 25mg(アナフラニール投与前症状)不眠時屯服ヒルナミン 25mg使用にても不眠 (入眠困難、中途覚醒)。 易怒性著明。 こだわりが強い。(アナフラニール50mg投与後処方)分1 眠前アナフラニール 50mg、ロドピン 250mg、 ピレチア 75mg、サイレース 2mg分2 朝食後セレネース9mg、 アキネトン 3mg(アナフラニール投与後症状)アナフラニール25mgで開始して50mgまで増量。不眠時屯服ヒルナミン25mg使用せずとも夜間良眠できるようになる。 易怒性消失。 こだわり軽減。(症例8)47歳 男性 知的障害 不安障害(前医から妄想性障害の診断) 入院中(入院時前服薬)分1 眠前ベゲタミンA 1T、 ラボナ 50mg、 ロヒプノール 4mg、 ベンザリン 5mg、 デパケン 400mg、 ハルシオン 0.25mg、ソメリン 10mg、 ユーロジン2mg分2 朝夕食後デパケン 400mg、 アキネトン 2mg、ウィンタミン 50mg(登録商標;塩野義製薬社の商品名)分3 朝昼夕食後テシプール(登録商標;持田製薬社の商品名) 6mg ヒルナミン 60mg、 セパゾン(登録商標;第一三共社の商品名) 6mg、 デパス3mg分4 朝昼夕食後眠前リスパダール内用液 4ml(入院前症状)不眠(中途覚醒、熟眠困難)、不安、 易怒性、幻聴(電波が送られる、名前を呼ばれる)、 妄想(監視されている)。(入院後経過)アナフラニール 25mg 開始日より夜間良眠。「爆睡できた。こんなに眠れたのは久しぶり。でも1日中眠い。」と穏やかに話された。アナフラニールを増量しながら、ロドピン、アモバンを用いることにより、多量の抗精神病薬やベンゾジアゼピン系薬剤やバルビツール系薬剤を漸減中止でき夜間良眠が得られるようになった。薬剤の減量に伴い幻覚や妄想は消失。その代わりに、対人恐怖や視線恐怖や赤面恐怖や強迫行為が前面に出てきた。そこで、幻覚や妄想は薬剤性のものであり、不安障害がPtの症状の本体と考え、強迫性障害の治療を意識して、アナフラニールとデプロメール(登録商標;明治製菓社の商品名)を中心に薬剤調整した。さらに、残存する気分変動に対してデパケン、リーマス(登録商標;大正製薬の商品名)、トピナを用いた。以上の治療過程で、不安、易怒性、幻聴、妄想は消失。気分変動、対人恐怖、視線恐怖、赤面恐怖そして強迫行為も軽減した。(現処方)分1 眠前アナフラニール75mg、ロドピン50mg、ピレチア25mg、アモバン10mg分2 朝夕食後デプロメール 100mg、 デパケン 800mg、ワイパックス 1mg分2 朝食後眠前トピナ 100mg分3 朝昼夕食後リーマス600mg(症例9)52歳 男性 双極性障害 不眠 気分高揚 被刺激性 易怒性 退院して近医外来通院中(入院時内服薬)分1 眠前ベゲタミンA 2T、ベゲタミンB 1T、コントミン(登録商標;田辺三菱製薬社商品名)25mg、リーマス800mg、デパケン800mg、ドラール15mg、サイレース2mg、レンドルミン(登録商標;日本ベーリンガーインゲルハイム社商品名)0.25mg(入院後経過)入院時にニューレプチル10mg追加。しかし、不眠、被刺激性および易怒性持続。ニューレプチル20mgに増量。症状著変なし。アナフラニール10mgにて開始。投与日より不眠著明に改善。「こんなに眠れたのは久しぶり。しかし一日中眠たい。夜にトイレに行けなくて寝小便してしまう。」と過鎮静状態。そこで、ベゲタミンAを2Tから1Tに減量するもまだ過鎮静状態持続。まもなく易怒性や被刺激性も軽減したがやや気分高揚持続。アナフラニール25mgに増量、ベゲタミンA、ベゲタミンB、コントミン次々に中止するも夜間良眠維持。ジプレキサ(登録商標;日本イーラーリー社商品名)5mgで開始して20mgまで増量、ニューレプチル漸減中止。サイレース1mgに減量。ドラール中止。夜間良眠維持。気分高揚軽減。上肢振戦出現したためピレチア25mg追加し退院とした。(退院時内服薬)分1 眠前ジプレキサ20mg、ピレチア25mg、アナフラニール25mg、リーマス800mg、デパケン800mg、サイレース1mg、レンドルミン0.25mg(症例10)34歳 女性 統合失調症 不眠、易怒性、思考障害、希死念慮 当院外来通院中(アナフラニール10mg投与前処方)分1 眠前ベゲタミンB 3T、ヒルナミン150mg、セロクエル300mg、ピレチア25mg分1 朝食後ヒルナミン10mg、レキソタン5mg、リスパダール内服液1ml分3 朝昼夕食後コントミン150mg、デパケン600mg、セロクエル300mg、リスパダール6mg、アキネトン3mg(屯)不眠時サイレース2mg(アナフラニール10mg投与前症状)易怒性著明。「殺せ!」と大声で叫ぶ。疎通性が悪く診察不可能で、同伴していた母親から様子を聞く事しかできなかった。また、通院すらできないことも多かった。サイレース2mg屯服使用しても4時間程度しか眠れず。喫煙本数が多かった。(アナフラニール 10mg 投与開始後症状)アナフラニール10mgオン。投与日より不眠時屯服サイレース2mg使用せずに7〜8時間眠れるようになる。易怒性改善。「殺して」とは言うが大声は出さなくなる。疎通が可能になり診察可能になる。診察の終わりに「ありがとうございました」と挨拶するようになる。定期的に通院できるようになる。喫煙本数が減少した。(症例11)48歳 男性 非定型精神病 不眠、 被刺激性、易怒性、衝動性 当院外来通院中(アナフラニール 10mg 投与前処方)分1 眠前コントミン50mg、ピレチア25mg、リーマス1000mg、デパケン800mg、リボトリール1mg、ベンザリン15mg、ユーロジン2mg、アモバン10mg、ベゲタミンB1T(アナフラニール 10mg投与前症状)入眠困難、熟眠困難。 日常の些細なことに反応して怒る。 衝動的に喧嘩してしまう。(アナフラニール 10mg 投与開始後症状)アナフラニール10mgオン。夜間良眠。 被刺激性や易怒性軽減。喧嘩を回避するようになった。(症例12)52歳 男性 統合失調症 不眠、被刺激性、イライラ気分 当院外来通院中(アナフラニール 10mg 投与前処方)分1 眠前ヒルナミン25mg、コントミン50mg、ロドピン100mg、デパス1mg、ベゲタミンA2T、アモバン10mg、ユーロジン1mg分2 朝食後眠前セロクエル400mg(アナフラニール 10mg投与前症状)入眠困難、中途覚醒。日常の些細な出来事が気になりイライラする。(アナフラニール 10mg 投与開始後症状)眠前にアナフラニール10mg 追加。アモバン 10mgとユーロジン1mg中止し、ベゲタミンA 2T→1Tに減量するも夜間良眠維持。些細な出来事があまり気にならなくなりイライラ気分軽減。(症例13)44歳 男性 統合失調症 不眠、易怒性、被刺激性、暴力行為 入院中(アナフラニール 10mg 投与前処方)分1 眠前リスパダール6ml、ピレチア75mg分1 朝食後エビリファイ(登録商標;大塚製薬社商品名)30mg、アキネトン3mg分3 朝昼夕食後ルーラン(登録商標;第日本住友製薬社商品名)12mg分4 朝昼夕食後眠前デパケン800mg、リーマス800mg(アナフラニール 10mg 投与前症状)入眠困難。表情硬く、看護師が多食や多飲について注意すると怒り暴力行為あり。周囲にいる他患の言動に過敏に反応して扉などを叩く。(アナフラニール 10mg 投与開始後症状)眠前にアナフラニール10mgオン。夜間良眠。表情柔らかくなり易怒性と暴力行為消失。周囲にいる他患の言動に対する過敏さ軽減。(症例14)56歳 女性 統合失調症 恋愛妄想、 気分高揚、衝動性 退院して当院外来通院中(アナフラニール投与前処方)分1 眠前ジプレキサ10mg、デジレル200mg、アモバン10mg、サイレース2mg分1 朝食後エビリファイ30mg分2 朝夕食後ワイパックス1mg分3 朝昼夕食後リーマス600mg分3 朝夕食後眠前デパケン800mg(200、0、200、400)(アナフラニール投与前症状)恋愛妄想のため病棟内の若い男性に衝動的に何度もしつこくつきまとう迷惑行為あり。(アナフラニール投与後症状)アナフラニール 10mgオン。間もなくつきまといのしつこさ軽減。アナフラニール 25mgに増量。 間もなくつきまとい行為止まる。(症例15)37歳 女性 双極性障害 不眠、 抑うつ気分、希死念慮、不安、易怒性、被刺激性、浪費行為 入院中(アナフラニール 25mg 投与前処方)分1 眠前ジプレキサ5mg、トピナ100mg、デジレル150mg、アモバン10mg分3 朝昼夕食後デパケン600mg、ワイパックス3mg分2 朝夕食後トピナ100mg(アナフラニール 25mg 投与前症状)上記処方にて不眠、 抑うつ気分、希死念慮、不安は消失し浪費行為は軽減。しかし、易怒性と被刺激性持続。 些細な事で母親と喧嘩したり、他患の些細な言動が気になりイライラする。(アナフラニール 25mg 投与開始後症状)眠前にアナフラニール25mgオン。アナフラニール投与開始2日目より易怒性と被刺激性軽減。母親と仲直りし、他患の言動が気にならなくなった。(症例16)42歳 男性 双極性障害 不眠、 抑うつ気分、希死念慮、不安、焦燥感、イライラ気分、易怒性、体感異常 入院中(アナフラニール 25mg 投与前処方)分1 眠前ジプレキサ5mg、トピナ100mg、デジレル200mg、アモバン10mg分3 朝昼夕食後デプロメール150mg、デパケン600mg、ワイパックス3mg分2 朝夕食後トピナ100mg(アナフラニール 25mg 投与前症状)上記処方にて不眠、 抑うつ気分、希死念慮、不安は消失。しかし、体感異常(頭重感、胸部圧迫感など。特に昼間に多く出現。)とイライラ気分と焦燥感と易怒性が残存。喫煙量が多い。(アナフラニール 25mg 投与開始後症状)眠前にアナフラニール25mgオン。投与開始2日目より体感異常とイライラ気分と焦燥感と易怒性が著明に改善。午前中やや過鎮静状態のためデジレル200から150mgに減量しワイパックス3mgから1.5mgに減量できた。投与開始5日目に自ら喫煙量を減らし始めた。(症例17)51歳 女性 妄想性障害 妄想、不安、恐怖、被刺激性、イライラ気分 退院して近医外来通院中(アナフラニール 25mg 投与前処方)分1 眠前リスパダール4ml、デジレル200mg、アモバン10mg分2 朝夕食後トピナ200mg分3 朝昼夕食後デパケン600mg、ピレチア75mg、ワイパックス3mg(アナフラニール 25mg 投与前症状)上記処方にて妄想や不安や恐怖は軽減。しかし、表情の硬さがあり、他患の言動に対して過敏に反応してイライラすることが持続。(アナフラニール 25mg 投与開始後症状)眠前にアナフラニール10mgで開始して25mgに増量。他患の言動に対して過敏に反応しなくなりイライラ気分消失、表情柔らかくなる。(症例18)34歳 男性 統合失調症 妄想、体感幻覚 退院して当院外来通院中(入院前処方)分1 眠前セロクエル300mg分3 朝昼夕食後テグレトール(登録商標;ノバルティスファーマ社の商品名)300mg、ロドピン75mg(入院後経過)ロドピン漸減中止。テグレトール中止してデパケン600mg開始。セロクエル300mg漸減中止してロナセン12mgに変更。妄想や体感幻覚は著明に改善。しかし、気分高揚や易怒性改善や被刺激性が出現。デパケン1000mg、リーマス600mg、ワイパックス3mg、アキネトン3mg、ニューレプチル5mgを用いるも、気分高揚や易怒性や被刺激性が改善せず。外泊中に父母との喧嘩が絶えず、なかなか退院に踏み切ることができなかった。アナフラニール25mgを追加。投与開始翌日より気分高揚や易怒性や被刺激性が著明に改善。ニューレプチルとアキネトンを漸減中止、ワイパックスを減量したが気分高揚や易怒性や被刺激性の再燃なし。父母から退院させたいとの申し出があり退院となった。(現処方)分1 眠前ロナセン12mg、デパケン1000mg、リーマス600mg、アナフラニール25mg、ワイパックス2mg。(症例19)66歳 女性 統合失調症 幻覚・妄想、言動のまとまりのなさ、 こだわり、感情鈍麻、認知機能低下 入院中(入院前処方)分1 眠前ベゲタミンB 1T、サイレース4mg分3 朝昼夕食後リスパダール6mg、アキネトン3mg(入院後経過)入院後、精神症状は不安定に経過。徘徊、執着行為、他患の食事を盗食して咽詰めするなどの問題行動も顕著になってきた。誤嚥性肺炎が出現したため、リスパダールを6mgから4mgに減量。しかし、易怒性著明となるなど精神症状悪化。さらに、中途覚醒が著明となりロドピン開始し150mgまで増量するも改善なし。しだいに、肝機能の数値やCPK上昇。リスパダール漸減中止しロナセン8mgにて開始し24mg(最大量)まで増量。16日経過したが、疎通性の悪さ、言動のまとまりのなさ、表情の乏しさ、こだわり、落ち着きなさ、不眠傾向持続。アナフラニール25mgにて開始し50mgまで増量。間もなく次の変化が起こった。以前までは問いかけに対して「うん」と領くだけであったリ、「お腹が・・出ない・・腹膜炎」などと途切れ途切れに単語を並べ要求を述べることがあってもすぐに別の話題を一方的に支離滅裂に喋りだす状態であったが、問いかけに対して「夜が怖いです。怖い夢を見る。」「食事を柔らかいのに変更して下さい。」などと自分の要求を具体的に述べることができるようになり、言葉のキャッチボールがうまくできるようになった。また、以前までは表情乏しく感情がないように見えたが、「今日は私の誕生日なんです。幸せです。」と満面の笑みを浮かべるなど表情が豊かになってきた。さらに、以前なら、病棟活動に参加するも、他患に対する迷惑行為があり落ち着きなくすぐに立ち去ったりしていたが、迷惑行為がなくなり落ち着いて順番待ちなどもできるようになった。このように、行動面においてもまとまりが出てきた。OTスタッフ間で「最近、○○さん変わったね。すごく良くなった。」との声が多く聞かれるようになった。アナフラニール75mgまで増量したところで空腹感強くなり盗食行為出現。アナフラニール50mgに減量し代わりにデプロメール50mg開始。リーマス300mg開始し400mgに増量。さらに表情豊かになり機嫌よく過ごせるようになった。こだわりや落ち着きのなさ(小走り)残存していたため、デパケン100mg追加後にトピナ開始し300mgまで増量。ロドピンとピレチア漸減中止するも夜間良眠維持。こだわり消失し、落ち着きのなさも改善。徘徊や盗食などの問題行動も全て消失。肝機能の数値やCPKも正常値に戻った。(現処方)分 1眠前アナフラニール50mg、アモバン10mg、デパケン100mg分1 朝食後ロナセン24mg分2 朝夕食後デプロメール50mg、リーマス400mg分3 朝昼食後眠前トピナ300mg(症例20)56歳 女性 統合失調症 言動のまとまりなさ、 認知機能低下、 こだわり 入院中(入院前処方)分1 眠前ロナセン16mg、デパケン200mg、ベゲタミンA 1T、サイレース2mg、ベンザリン10mg分2 朝夕食後デパケン400mg(入院後経過)前医より統合失調症の末期状態との申し送りがあった。物忘れ、道に迷う、赤信号がわからずに突き進み玉突き事故を引き起こす、尿便失禁など認知機能低下を示す症状が見られた。入院直後より、他患の食事をとってかき込み、多飲、不穏・多動があり、保護室隔離開始。さらに、「食事はまだ?」「お箸ついてくる?」などと食事に対するこだわり強く何度も同じ事を言い続け、保護室内を徘徊して落ち着かず。また、一方的に喋るだけで問いかけにも的外れに答え、疎通がとれない状態であった。入院後すぐにアナフラニール25mgで開始。デパケン800mgまで増量しロナセン24mgまで増量。しだいに疎通性改善し保護室隔離解除となった。始めのうちは、質問に対して「うん」と頷くか首を横に振るか「お金がない」などとせいぜい短文で答える事しかできなかったが、入院後28日目の診察では、質問に対する返答内容がいつもより繊細になっていた。「みんなと遊びたいけど、おしっこが近くて漏らしそうになることが気になって遊べない。」「食べるのが早いのをみんなに見られるのが気になる。私は何でも早くしてしまうから。」などとかなり長文で喋ることができるようになっていた。翌日(入院後29日目)に長谷川式認知機能検査を施行してみたところ、21/30点と正常範囲内であることが判明。さらなる症状改善を期待してアナフラニール 50mgに増量。尿へのこだわりや食事のかきこみも軽減。アナフラニール75mgに増量したが、臥床傾向となってきたため、アナフラニール50mgに戻しデプロメール50mgで開始し100mgまで増量。尿に対するこだわりがさらに軽減。離床が進みデイルームに出てきて他患と交流するようになり、意欲的に心理教育に参加するようになった。入院後49日目に長谷川式認知機能検査で25/30点。入院後70日目に長谷川式認知機能検査で29/30点。(現処方)分1 眠前アナフラニール 50mg、デジレル150mg、ピレチア100mg、サイレース2mg、アモバン10mg分1朝食後ロナセン24mg分2 朝食後眠前デパケン800mg分2 朝夕食後デブロメール100mg分3 朝昼夕食後リーマス600mg、インデラル(登録商標;アストラゼネカ社商品名)30mg以上のような各症例から、クロミプラミンが認知症周辺症状改善剤、易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤、抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤、並びに、ブロナンセリン作用調整剤としての優れた効果を有することは明らかである。本発明の認知症周辺症状改善剤、易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤、抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤、並びに、ブロナンセリン作用調整剤は、それぞれ認知症患者や統合失調症患者や双極性障害患者等の治療において使用することができるものである。クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする認知症周辺症状改善剤。クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤。クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤。クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするブロナンセリン作用調整剤。 【課題】優れた薬理活性を有する認知症周辺症状改善剤、易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤、抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤、並びに、ブロナンセリン作用調整剤を得る。【解決手段】クロミプラミン又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする認知症周辺症状改善剤、易怒性,被刺激性及び/又は衝動性改善剤、抗精神病薬,気分安定薬及び/又は抗不安薬の作用調整剤、並びに、ブロナンセリン作用調整剤。【選択図】なし


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