| タイトル: | 公開特許公報(A)_アミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬 |
| 出願番号: | 2011032506 |
| 年次: | 2012 |
| IPC分類: | A61K 38/16,A61K 31/713,A61P 25/28,A61P 25/16 |
塩田 清二 大滝 博和 小林 夏季 JP 2012171872 公開特許公報(A) 20120910 2011032506 20110217 アミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬 フォーデイズ株式会社 500492750 萼 経夫 100068618 宮崎 嘉夫 100104145 加藤 勉 100104385 小山 京子 100156889 伴 知篤 100163360 塩田 清二 大滝 博和 小林 夏季 A61K 38/16 20060101AFI20120814BHJP A61K 31/713 20060101ALI20120814BHJP A61P 25/28 20060101ALI20120814BHJP A61P 25/16 20060101ALI20120814BHJP JPA61K37/10A61K31/713A61P25/28A61P25/16 6 1 OL 17 特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名:第3回 これからの健康と栄養を考えるシンポジウム 主催者名:昭和大学、産経新聞社 開催日:平成22年11月28日 4C084 4C086 4C084AA02 4C084AA03 4C084BA44 4C084CA45 4C084DC50 4C084MA02 4C084NA14 4C084ZA022 4C084ZA152 4C084ZA162 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA16 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA02 4C086ZA15 4C086ZA16 本発明は、アミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬に関するものであり、詳細には、有効成分として核タンパク質を含む前記神経変性疾患の予防・改善薬に関する。 高齢化社会に伴い、アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患の患者数は、年々増加している。これら疾患の症状は、学習・記憶障害や運動、言語障害など様々であるが、これら障害は患者自身の社会生活を障害するだけではなく、その家族を含む介護者にとっても大きな負担になる。さらに、このような長期にわたる治療を要する神経変性疾患患者の増加は本国のみならず先進国の保険医療を圧迫している。そのため、薬物を用いた新規治療法に加え、神経変性疾患の症状の進行の抑制(改善)や発症を予防する代替医療法による予防医学的アプローチの開発の必要性が求められている。 アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症などを含む多くの神経変性疾患においてアミロイド線維の形成(難溶性のタンパク質凝集体の形成)が認められている。この難溶性のタンパク質凝集体の形成は神経変性疾患の発症に深く関わる因子として考えられている。アルツハイマー病において特徴的な病理構造物である老人斑は、組織に沈着したタンパク質封入体であり、その構成成分はアミロイドβペプチド(以下、Aβとも記載する。)により形成されたアミロイド線維である。家族性アルツハイマー病家系において様々な原因遺伝子への病原性変異が見出されているが、いずれもAβの脳への蓄積を促進することが報告されている(例えば、非特許文献1及び2参照。)。また、培養細胞を用いた実験系において、Aβの凝集体が神経細胞毒性を示したことも報告されている(例えば、非特許文献3及び4参照。)。更に、ヒトアルツハイマー病家系のAβの遺伝子を導入した動物や、脳内にAβを注入された動物はアミロイド線維の蓄積が認められ、認知・学習障害などヒトアルツハイマー病様症状を示し、そして、これらアミロイド線維の蓄積を抑制することにより、アルツハイマー病様症状が改善したことも報告されている(例えば、非特許文献5参照。)。これらの知見は、アミロイド線維形成がアルツハイマー病の発症および進行に深く関わることを示唆するものであり、そのため、アミロイド線維形成を抑制することにより、アルツハイマー病をはじめとする多くの神経変性疾患の治療法の開発につながるものと考えられる。 一方、鮭白子には、デオキシリボ核酸(DNA)とプロタミンの複合体である核タンパク質が高濃度に含まれており機能性食品として用いられている。核タンパク質は、免疫調節作用(例えば、非特許文献6参照。)、抗酸化作用(例えば、非特許文献7参照。)、血管拡張作用(例えば、非特許文献8参照。)などを有することが知られており、その摂取によるアトピー性疾患、脳梗塞、関節リウマチに対する予防・改善的有用性が示されている。しかしながら、核タンパク質の神経変性疾患に対する予防および/または改善効果は十分に明らかにされておらず、特に、核タンパク質がアミロイド線維の形成に対してどのような作用を示すかに付いては何らの報告もなされていない。Hardy, J. (1997). Amyloid, the presenilins and Alzheimer's disease. Trends Neurosci 20, 154-9頁.Hardy, J. and Selkoe, D.J. (2002). The amyloid hypothesis of Alzheimer's disease: progress and problems on the road to therapeutics. Science 297, 353-6頁.Lambert, M.P. et al. (1998). Diffusible, nonfibrillar ligands derived from Abeta1-42 are potent central nervous system neurotoxins. Proc Natl Acad Sci U S A 95, 6448-53頁.Klein, W.L., Krafft, G.A. and Finch, C.E. (2001). Targeting small Abeta oligomers: the solution to an Alzheimer's disease conundrum? Trends Neurosci 24, 219-24頁.Walsh, D.M., Klyubin, I., Fadeeva, J.V., Cullen, W.K., Anwyl, R., Wolfe, M.S., Rowan, M.J. and Selkoe, D.J. (2002). Naturally secreted oligomers of amyloid beta protein potently inhibit hippocampal long-term potentiation in vivo. Nature 416, 535-9頁.Sudo, N., Aiba, Y., Takaki, A., Tanaka, K., Yu, X.N., Oyama, N., Koga, Y. and Kubo, C. (2000). Dietary nucleic acids promote a shift in Th1/Th2 balance toward Th1-dominant immunity. Clin Exp Allergy 30, 979-87頁.Ohtaki, H. et al. (2010) Nucleoprotein Diet Ameliorates Arthritis Symptoms in Mice Transgenic for Human T-Cell Leukemia Virus Type I (HTLV-1). J Clin Biochem Nutr 46, 93-104頁.Matsunaga, M. et al. (2003). Nucleoprotamine diet derived from salmon soft roe protects mouse hippocampal neurons from delayed cell death after transient forebrain ischemia. Neurosci Res 47, 269-76頁. 本発明は、アミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬の提供を課題とする。 本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、核タンパク質が、アミロイドβペプチド線維の形成を阻害し、且つ、中脳黒質のドーパミン神経の脱落を抑制することを見出し、これにより、有効成分として核タンパク質を含む薬剤が、アミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善において有効であることを確認して本発明を完成させた。 即ち、本発明は、(1)アミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬であって、有効成分として核タンパク質を含む予防・改善薬、(2)前記神経変性疾患の予防・改善が、前記核タンパク質によるアミロイドβペプチド線維の形成阻害及び/又は中脳黒質のドーパミン神経の脱落の抑制によるものである前記(1)記載の予防・改善薬、(3)前記神経変性疾患がアルツハイマー病である前記(1)又は(2)記載の予防・改善薬、(4)前記神経変性疾患がパーキンソン病である前記(1)又は(2)記載の予防・改善薬、(5)前記核タンパク質がヌクレオプロタミンである前記(1)ないし(4)の何れか1つに記載の予防・改善薬、(6)前記ヌクレオプロタミンが鮭の白子由来のものである前記(5)記載の予防・改善薬、に関する。 本発明により、アミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬が提供される。 本発明者等は、今回、試験管内の研究において核タンパク質がアミロイド線維の形成を低下することを見出した。アミロイド線維は、タンパク質が規則的に会合することで形成されるタンパク質凝集体であり、規則的な繰り返し構造を形成することを特徴とする。アミロイド線維は、タンパク質の配列特異的な相互作用による、規則的な会合により形成されると考えられている。本研究によるアミロイド線維の形成抑制には大別して2つの機構すなわち凝集の遅延・抑制もしくは凝集したアミロイド線維の解離(分解)促進である。 本研究で用いたアミロイド形成タンパク質であるAβは、形成するアミロイド線維の詳細な構造解析がなされている(例えば、Luhrs, T., Ritter, C., Adrian, M., Riek-Loher, D., Bohrmann, B., Dobeli, H., Schubert, D. and Riek, R. (2005). 3D structure of Alzheimer's amyloid-beta(1-42) fibrils. Proc Natl Acad Sci U S A 102, 17342-7頁参照。)。Aβの線維形成に重要と考えられている相互作用の一つに、23番目のアスパラギン酸残基と、隣接するAβ分子の28番目のリジン残基の間の静電相互作用による会合が挙げられる。核タンパク質を構成するタンパク質はAβ分子の28番目のリジン残基と同様の正電荷に富むアミノ酸残基を豊富に有しており、さらに、DNAは電気的極性を示す塩基を含んでいる。よって、核タンパク質は、このような特異な構造を有することにより、その構造体(部分構造)が、Aβ分子間の会合部に入り込み、競合もしくは阻害したのではないかと考えられる。そして、その結果、Aβが規則的なアミロイド線維構造を構築することが不可能になり、アミロイド線維形成が抑制されたものと考察される。10μMのAβ添加によるアミロイド線維形成(○:No additive)が、核タンパク質(NP)の0.6μg/mL(▲)、6μg/mL(▼)及び60μg/mL(■)の添加でどの程度抑制されるかを示したグラフである。10μMのAβのアミロイド線維形成に対する、核タンパク質(NP:●)の阻害効果の濃度依存性を示すグラフである。パーキンソン病様モデルマウスの運動機能評価および組織学的評価の実験スケジュールの概略を示す図である。生理食塩水(Saline:○)またはMPTP(●)の投与後7日目におけるマウスのfoot-fault testによる運動機能の評価結果を示すグラフである。MPTP投与により作成されたパーキンソン病様モデルマウスに、無核酸餌(non-NP:○)を摂取させた群と核タンパク質1.2%を含有させた餌(NP:●)を摂取させた群のMPTP投与後7日目におけるfoot-fault率を示すグラフである。生理食塩水(Saline)またはMPTPの投与後8日目におけるマウス中脳黒質近傍のドーパミン神経をTH免疫染色した際の写真(生理食塩水(Saline:上図)、MPTP(下図))である。生理食塩水(Saline:○)またはMPTP(●)の投与後8日目におけるマウス中脳黒質近傍のドーパミン神経をTH免疫染色した際の、TH陽性細胞(TH+細胞)数を示すグラフである。生理食塩水(Saline:上図)またはMPTP(下図)の投与後8日目における、マウス中脳黒質近傍のFJB(Fluoro Jade B)染色の典型的な染色像を示す写真である。MPTP投与により作成されたパーキンソン病様モデルマウスに、無核酸餌(non-NP)を摂取させた群と核タンパク質1.2%を含有させた餌(NP)を摂取させた群のMPTP投与後8日目におけるマウス中脳黒質近傍のドーパミン神経をTH免疫染色した際の写真(無核酸餌を摂取させた群(non-NP:上図)、核タンパク質1.2%を含有させた餌を摂取させた群(NP:下図))である。MPTP投与により作成されたパーキンソン病様モデルマウスに、無核酸餌(non-NP:○)を摂取させた群と核タンパク質1.2%を含有させた餌(NP:●)を摂取させた群のMPTP投与後8日目におけるマウス中脳黒質近傍のドーパミン神経をTH免疫染色した際の、TH陽性細胞(TH+細胞)数を示すグラフである。 更に詳細に本発明を説明する。 本発明のアミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬は、有効成分として核タンパク質を含むことを特徴とする。 病態時に難溶性のタンパク質凝集体の形成(アミロイド線維形成)を伴う疾患は多数報告されており、また、アミロイド線維形成に関与するタンパク質は現在30種類以上報告されているが、これらのアミロイド線維を形成するタンパク質と該タンパク質によるアミロイド線維形成が原因となる疾患を以下の表1及び表2に纏めた。 上記で示される疾患の中で、パーキンソン病、アルツハイマー病やハンチントン舞踏病など多くは神経系にアミロイド線維形成が認められ、神経細胞死を伴う神経変性疾患であるが、筋萎縮性側索硬化症や臓器アミロイドーシスのように筋肉や血管および全身性の臓器・組織にアミロイド線維形成が認められる疾患も報告されている。 従って、本発明の予防・改善薬の対象となる疾患は、上記で示される全ての疾患を含むものである。 また、本発明の予防・改善薬の対象となる疾患としては、特に、アルツハイマー病が挙げられ、また、パーキンソン病が挙げられる。 本発明の予防・改善薬に有効成分として含まれる核タンパク質とは、タンパク質がリボ核酸に結合した複合体を意味し、該タンパク質としては、リボ核酸と結合し得る正荷電に富むタンパク質が挙げられる。 具体的な核タンパク質としては、正荷電に富むタンパク質、例えば、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ヒストン、アビジンおよびプロタミン等がリボ核酸に結合した複合体が挙げられる。 好ましくは、プロタミンがリボ核酸に結合した、ヌクレオプロタミンが挙げられる。 上記ヌクレオプロタミンとしては、魚貝類の精巣(白子)から得られるヌクレオプロタミンが好ましく、鮭の白子から得られるヌクレオプロタミンがより好ましい。 上記核タンパク質は、例えば、核タンパク質を多く含む魚貝類の精巣(白子)から抽出・精製等の操作を行うことにより入手することができる。 例えば、鮭由来の核タンパク質であるヌクレオプロタミンは、鮭白子をエタノールで洗浄して粉砕し、固液分離して固形分を採取し、滅菌し、乾燥し、粉砕した後、篩にかけることにより、粉末状の物質として得ることができる。 また、上記のような天然由来のもののみに限らず、上述の正荷電に富むタンパク質とリボ核酸とを、公知の方法により結合させて複合体とすることによっても製造することができる。 また、核タンパク質は、市販品を使用することもできる。 本発明のアミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬の投与形態としては、注射剤(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内注射)、軟膏剤、坐剤、エアゾール剤等による非経口投与又は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、シロップ剤、液剤、乳剤、懸濁液剤等による経口投与をあげることができる。 本発明のアミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬は、全組成物の質量に対して、有効成分である核タンパク質を約0.01〜99.5質量%、好ましくは、約0.1〜30質量%を含有する。 本発明のアミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬は、有効成分である核タンパク質に加えて、他の医薬的に又は獣医薬的に活性な化合物を含ませることもできる。 本発明のアミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬に含まれる核タンパク質の臨床的投与量は、年令、体重、患者の感受性、症状の程度等により異なるが、通常効果的な投与量は、成人一日0.001〜5.0g、好ましくは、0.5〜2.5g程度である。しかし必要により上記の範囲外の量を用いることもできる。 本発明のアミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬は、製薬の慣用手段によって投与用に製剤化される。 即ち、経口投与用の錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤は、賦形剤、例えば白糖、乳糖、ブドウ糖、でんぷん、マンニット;結合剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビット、トラガント、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えばでんぷん、カルボキシメチルセルロース又はそのカルシウム塩、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール;滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム又はカルシウム、シリカ;潤滑剤、例えばラウリル酸ナトリウム、グリセロール等を使用して調製される。 注射剤、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤及びエアゾール剤は、活性成分の溶剤、例えば水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール;界面活性剤、例えばソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、水素添加ヒマシ油のポリオキシエチレンエーテル、レシチン;懸濁剤、例えばカルボキシメチルナトリウム塩、メチルセルロース等のセルロース誘導体、トラガント、アラビアゴム等の天然ゴム類;保存剤、例えばパラオキシ安息香酸のエステル、塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸塩等を使用して調製される。 経皮吸収型製剤である軟膏には、例えば白色ワセリン、流動パラフィン、高級アルコール、マクロゴール軟膏、親水軟膏、水性ゲル基剤等が用いられる。 坐剤は、例えばカカオ脂、ポリエチレングリコール、ラノリン、脂肪酸トリグリセライド、ココナット油、ポリソルベート等を使用して調製される。 本発明のアミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬の製剤例を以下に示す。製剤例1錠剤 核タンパク質 20g 乳 糖 260g 微結晶セルロース 600g コーンスターチ 350g ヒドロキシプロピルセルロース 100g CMC−Ca 140g ステアリン酸マグネシウム 30g 全 量 1,500g 上記成分を常法により混合したのち1錠中に1mgの活性成分を含有する糖衣錠10,000錠を製造する。製剤例2カプセル剤 核タンパク質 20g 乳 糖 430g 微結晶セルロース 1,000g ステアリン酸マグネシウム 50g 全 量 1,500g 上記成分を常法により混合したのちゼラチンカプセルに充填し、1カプセル中に1mgの活性成分を含有するカプセル剤10,000カプセルを製造する。製剤例3軟カプセル剤 核タンパク質 25g PEG400 464g 飽和脂肪酸トリグリセライド 1,500g ハッカ油 1g ポリソルベート(Polysorbate)80 10g 全 量 2,000g 上記成分を混合したのち常法により3号軟ゼラチンカプセルに充填し、1カプセル中に1mgの活性成分を含有する軟カプセル剤10,000カプセルを製造する。製剤例4軟膏 核タンパク質 1.0g 流動パラフィン 10.0g セタノール 20.0g 白色ワセリン 68.4g エチルパラベン 0.1g l−メントール 0.5g 全 量 100.0g 上記成分を常法により混合し、1%軟膏とする。製剤例5坐剤 核タンパク質 1g ウィッテップゾールH15* 478g ウィッテップゾールW35* 520g ボリソルベート(Polysorbate)80 1g 全 量 1,000g「* トリグリセライド系化合物の商標名 ウィッテップゾール=Witepsol」 上記成分を常法により溶融混合し、坐剤コンテナーに注ぎ冷却固化して1mgの活性成分を含有する1g坐剤1,000個を製造する。製剤例6注射剤 核タンパク質 1mg 注射用蒸留水 5mL用時、溶解して用いる。製造例1:核タンパク質の製造 鮭白子をエタノールで洗浄した後、ブレンダーで粉砕した。固液分離して固形分を採取した後、滅菌(70℃、30分)し、乾燥(水分含量7%以下)した。 得られた乾燥物を粉砕した後、40メッシュの篩にかけることにより、核タンパク質(ヌクレオプロタミン)を得た。 尚、得られた核タンパク質の特性は以下の通りであった。・外観 淡黄色ないし淡褐色粉末・粒径 40メッシュパス・におい 特有臭有り・味 特有味有り・DNA含有量 27%以上・タンパク質含有量 50〜52%・水分含有量 7%以下試験例1:アミロイドβペプチド線維の形成阻害活性の評価1)アミロイドβペプチド(Aβ)溶液の調製 アミロイドβペプチド(Aβ)の凍結乾燥粉末(株式会社ペプチド研究所製)を、ジメチルスルホキシドに溶解させ、超音波処理によりペプチド凝集体を粉砕した。得られたAβ溶液をリン酸緩衝液(10 mM PBS)で終濃度10 μMに希釈し以降の反応に供した。2)アミロイドβペプチド(Aβ)線維の形成阻害活性の評価 Aβの線維形成量は、アミロイド線維とチオフラビンTの特異的な結合を利用し測定した。チオフラビンTは、アミロイド線維に特徴的な四次構造であるクロスβ構造に結合し蛍光強度が上昇することが知られている。Aβを含む溶液に、チオフラビンT(終濃度10 μM)と種々の濃度の核タンパク質(NP)溶液もしくは溶媒(対照群)とを添加・混合し、96ウェルマイクロプレートに添加した(最終容量200 μL)。37℃でインキュベート開始後、20分毎に30時間後までチオフラビンT由来蛍光強度(Ex: 440 nm、Em: 480 nm)を測定し、Aβ線維形成量の経時変化を調べた。 測定した各試料の蛍光強度は、インキュベート開始30時間後における対照群の蛍光強度を100%とした際の相対値で表した。実験中、マイクロプレートはフィルムで覆い、インキュベート中の溶液の蒸発を防いだ。 尚、データは、平均値±標準偏差で示した。 図1に、核タンパク質(NP)(0.6μg/mL(▲)、6μg/mL(▼)及び60μg/mL(■))を添加した際に、どの程度Aβ(10μM)添加によるアミロイド線維形成(○:No additive)が抑制されるかを示したグラフを示し(n=5)、図2に、Aβ(10μM)のアミロイド線維形成に対する、核タンパク質(NP:●)の阻害効果の濃度依存性を示すグラフを示した。3)結果 終濃度10 μMのAβとチオフラビンTをインキュベートした結果、チオフラビンT由来蛍光強度の経時的な上昇が観察されたため、この実験条件において、Aβがアミロイド線維を形成したと考えられた。チオフラビンTの蛍光特性は反応溶液中に、核タンパク質を単独で加えても顕著な影響はなかった。 次に、Aβの線維形成に対する核タンパク質の影響を検討した(図1)。終濃度0.6、6、60 μg/mLの核タンパク質を反応溶液中に添加したところ、インキュベート開始30時間後におけるチオフラビンT由来の蛍光強度は、対照群に比べそれぞれ、93.0 ± 6.8、83.8 ± 12.5、23.1 ± 7.9 %であった(図1)。核タンパク質によるAβ線維形成阻害効果の濃度依存性を図2にまとめた。終濃度60 μg/mLの核タンパク質を添加したときに、Aβの線維形成を有意に抑制した(*p<0.05)。本結果は、核タンパク質がAβの線維形成を抑制することを示した。試験例2:パーキンソン病様モデルマウスにおける運動機能評価1)パーキンソン病様モデルマウスの作製 MPTP(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine HCl , シグマ(Sigma)社製, セントルイス, ミズーリ州)を、生理食塩水に5 mg/mlの濃度で溶解した。 この溶液を、雄性の野生型C57BL/6マウス(体重20〜30 g、8〜10週齢)に対してMPTP 20 mg/kg体重の投与量になるように、2時間おきに4回腹腔内投与して、パーキンソン病様モデルマウスを作製した。2)運動機能評価(foot-fault test) マウスの運動機能はMPTP投与後7日目にfoot-fault testにより評価した。 foot-fault testは、透明なケースの上に、31 cm × 47 cmの金網(約1.5 cm 四方の目の大きさ)を乗せ、マウスをこの金網の上に乗せて、5分間自由に歩かせた。観察は金網の下から行い、金網の目に後肢を踏み外した回数と後肢の総歩数をそれぞれ数えた。総歩数に対する金網を踏み外した回数の割合をfoot-fault率(金網を踏み外した回数/総歩数)として算出した。3)運動機能評価の実験スケジュール 運動機能評価は図3で示される以下のスケジュールで行った。 マウスを無作為に2群に分け、MPTP7日前(-7日)より無核酸餌(non-NP)もしくは無核酸餌に1.2%核タンパク質を含有させた餌(NP)を摂取させた。運動機能評価はMPTP投与7日後に行った。実験期間中の各時期について図3中に示した。MPTP投与を基準に(0日)、その7日前(-7日)から各種餌の摂取を開始した。MPTP投与7日後(7日)に、マウスの運動機能をfoot-fault testにより評価した。 尚、全てのデータは平均値 ± 標準偏差で表した。対照群との有意差の検定は、Student T検定により行った。p<0.05の場合にその差は有意であるとした。 図4に、生理食塩水(Saline:○)またはMPTP(●)の投与後7日目におけるマウスのfoot-fault testによる運動機能の評価結果を示すグラフを示し、図5に、MPTP投与により作成されたパーキンソン病様モデルマウスに、無核酸餌(non-NP:○)を摂取させた群と核タンパク質1.2%を含有させた餌(NP:●)を摂取させた群のMPTP投与後7日目におけるfoot-fault率を示すグラフを示した。4)結果 MPTP(MPTP投与群)または生理食塩水(対照群)を投与したマウスについて、投与7日後のfoot-fault率を比較した。その結果、対照群のfoot-fault率が0.035 ± 0.009であったのに対し、MPTP投与群のfoot-fault率は0.088 ± 0.025であり、MPTP投与群は対照群に比べてfoot-fault率が有意に高かった(p<0.05(Student's t-test))(図4)。従ってMPTP投与した動物(パーキンソン病様モデルマウス)は、運動機能が低下していることが示された。 次に核タンパク質のパーキンソン病様症候に与える影響を調べた。無作為に2群に分けたマウスはMPTP投与7日前より無核酸餌(non-NP群)もしくは無核酸餌に1.2%核タンパク質を添加した餌(NP群)を与え、実験期間中、実験餌で飼育した。これら動物は、MPTP投与7日後にfoot-fault testを行いfoot-fault率を算出した(図5)。non-NP群は0.066 ± 0.017を示し、上記MPTP群とほぼ同様であった。しかしながら、NP群のfoot-fault率は0.038 ± 0.015を示し、non-NP群のfoot-fault率に比べて有意に低かった[p<0.05(Student's t-test)]。 以上の結果より、核タンパク質の摂取がパーキンソン病様症状である運動機能の低下を抑制していることが示された。試験例3:パーキンソン病様モデルマウスの中脳黒質における組織学的評価1)試験方法 試験例2で使用したマウスを、MPTP投与後8日目にネンブタールの腹腔内投与(50 mg/kg体重)により麻酔し、右心室より生理食塩水を還流し血液を除去した後に10%中性緩衝ホルマリン液を還流し組織を固定した。ただちに脳を摘出し、脳は10%中性緩衝ホルマリン液で後固定を3日間行った。脳はBregma -1mm付近で前額断方向にトリミングを行い、通例の方法に従いパラフィン包埋した。包埋された脳はミクロトームを用い4 μmの厚さに薄切した。中脳黒質の領域はbrain mapに従いBregma -2 mm付近から200 μm間隔で6枚の切片を取りだし組織染色に用いた。 中脳黒質におけるドーパミン神経はTH(Tyrosine Hydroxylase)の免疫染色により同定した。上記の方法で作製したパラフィン切片は、脱パラフィン処理後免疫組織染色に供した。切片は、0.3%過酸化水素を含むPBSに30 min組織を浸漬し、組織中の内因性のペルオキシダーゼを不活化した。PBSで洗浄後、2.5%正常ウマ血清(NHS)で1時間非特異的反応をブロックするためにインキュベートした。その後、切片は2.5% NHSで2000倍希釈したrabbit anti-TH antibody(Millipore)を添加し、一晩4℃でインキュベートした。PBSで洗浄後、切片は、2.5% NHSで200倍希釈したビオチン修飾されたgoat anti-rabbit IgG antibody (Vector社)を添加し、2時間インキュベートした。その後、Avidin-Biotin溶液(Vector社)により60分間インキュベート(Avidin-Biotin-Complex法)したのち、3,3'-Diaminobenzidine(DAB)によるDAB法により抗原抗体反応を検出した。最後に組織はヘマトキシリン溶液により核を染色し、光学顕微鏡により観察した。 TH陽性細胞はTH免疫染色による陽性反応とヘマトキシリン染色による核が共染色された細胞をカウントし、TH陽性細胞数とした。 ここで、全てのデータは平均値 ± 標準偏差で表した。対照群との有意差の検定は、Student T検定により行った。p<0.05の場合にその差は有意であるとした。 神経細胞の変性は変性神経細胞に結合する蛍光色素であるFJB(Fluoro Jade B)による組織染色により同定した。脱パラフィン処理した切片は、過マンガン酸カリウム液に15 min浸漬した。蒸留水で洗浄後、FJB染色液に30 min浸漬した。蒸留水で洗浄後、切片は暗所で風乾し、キシレンに浸漬した後、封入した。染色した切片は蛍光顕微鏡下で観察した。 図6に、生理食塩水(Saline)またはMPTPの投与後8日目におけるマウス中脳黒質近傍のドーパミン神経をTH免疫染色した際の写真(生理食塩水(Saline:上図)、MPTP(下図))を示し、図7に、その際のTH陽性細胞数を示すグラフ(生理食塩水(Saline:○)、MPTP(●))を示し、図8に、生理食塩水(Saline:上図)またはMPTP(下図)の投与8日後における、マウス中脳黒質近傍のFJB(Fluoro Jade B)染色の典型的な染色像を示す写真を示し、図9に、MPTP投与により作製されたパーキンソン病様モデルマウスに、無核酸餌(non-NP:○)を摂取させた群と核タンパク質1.2%を含有させた餌(NP:●)を摂取させた群のMPTP投与後8日目におけるマウス中脳黒質近傍のドーパミン神経をTH免疫染色した際の写真(無核酸餌を摂取させた群(non-NP:上図)、核タンパク質1.2%を含有させた餌を摂取させた群(NP:下図))を示し、図10に、その際のTH陽性細胞数を示すグラフを示した。2)結果 中脳黒質におけるドーパミン神経細胞の数を、MPTP投与群と対照群で比較した。典型的なTHの免疫組織染色像を図6に示し、そのTH陽性細胞数の比較は図7に示した。茶褐色に染色されたTH陽性細胞は、対照群に比べMPTP投与群で低下した。両群のTH陽性細胞数をカウントした結果、対照群のTH陽性細胞数(1262.0 ± 361.3)に比べMPTP投与群のそれは698.4 ± 144.5であり、MPTP投与群のTH陽性細胞数は有意に少なかった[p<0.05(Student's t-test)]。 FJB染色により中脳黒質における変性神経細胞調べた(図8)。その結果、対照群にはFJB陽性細胞は認められなかったが、MPTP投与群には、FJB陽性細胞が認められた。 次に、中脳黒質におけるドーパミン神経細胞の数を、non-NP群とNP群で比較した。THの免疫組織染色像は図9に示し、そのTH陽性細胞数の比較は図10に示した。TH陽性細胞はNP群において多くまた強く観察された。両群のTH陽性細胞数をカウントした結果、non-NP群は452 ± 122であったのに対し、NP群は704 ± 214を計上した。NP群のTH陽性細胞数はnon-NP群に比べ有意に多かった[p<0.05 (Student's t-test)]。 以上の結果より、核タンパク質の摂取がパーキンソン病様症状である運動機能だけでなく中脳黒質のドーパミン神経の脱落もまた抑制していることが示された。アミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬であって、有効成分として核タンパク質を含む予防・改善薬。前記神経変性疾患の予防・改善が、前記核タンパク質によるアミロイドβペプチド線維の形成阻害及び/又は中脳黒質のドーパミン神経の脱落の抑制によるものである請求項1記載の予防・改善薬。前記神経変性疾患がアルツハイマー病である請求項1又は2記載の予防・改善薬。前記神経変性疾患がパーキンソン病である請求項1又は2記載の予防・改善薬。前記核タンパク質がヌクレオプロタミンである請求項1ないし4の何れか1項に記載の予防・改善薬。前記ヌクレオプロタミンが鮭の白子由来のものである請求項5記載の予防・改善薬。 【課題】アミロイドβペプチド線維の蓄積に起因して発症する神経変性疾患の予防・改善薬を提供する。【解決手段】アミロイド線維の形成を伴う神経変性疾患の予防・改善薬であって、有効成分として核タンパク質を含む予防・改善薬に関し、特に、前記神経変性疾患がアルツハイマー病、パーキンソン病である予防・改善薬に関する。【選択図】図1