タイトル: | 公開特許公報(A)_γ―バレロラクトンの製造方法 |
出願番号: | 2011029961 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07D 307/33 |
伊藤 廣記 栗山 恭直 JP 2012167064 公開特許公報(A) 20120906 2011029961 20110215 γ―バレロラクトンの製造方法 日本化学工業株式会社 000230593 伊藤 廣記 栗山 恭直 C07D 307/33 20060101AFI20120810BHJP JPC07D307/32 F 2 OL 8 4C037 4C037EA05 本発明は、γ―バレロラクトンの製造方法に関するものである。 環状のエステルであるラクトンは、果実用香気誘導体物質として知られている。特に5員環のものは桃の香料に多く含まれている。従来のラクトンの製造方法としては、例えばヒドロキシカルボン酸の脱水閉環反応(例えば、非特許文献1参照。)、或いは過酸による環状ケトンの環拡大によるBaeyer−Villiger酸化反応を利用する方法(例えば、非特許文献2参照。)が知られている。また、下記特許文献1には、水素化触媒の存在下に、ケトンエステルを水素と気相反応させる方法、或いは下記特許文献2には不飽和カルボン酸を水素還元するか或いはエステル化後水素還元したのちアルカリ加水分解して、相当する飽和脂肪族オキシカルボン酸塩を得た後、該塩を酸性条件下で還元する方法が提案されている。 しかしながら、前記ヒドロキシカルボン酸の脱水閉環反応は、平衡反応であり加水分解により容易にヒドロキシカルボン酸に戻ってしまい収率が問題になる。また、前記Baeyer−Villiger酸化反応を利用する方法は、過酸の取り扱いが問題となり工業的に有利でない。また、前記特許文献1及び特許文献2の方法によれば、環境負荷が大きい。 本発明者らは、先に環境負荷の少ないラクトンの製造方法として、下記反応式(1)に示すように反応基質として4−ペンテン酸(化合物(A))等のアルケン化合物を用いて、アルミノシリケートと接触させて、γ―バレロラクトン(化合物(B))を選択的に製造する方法を提案した(特許文献3参照)。特公平1−48907号公報。特開昭49−36678号公報。特開2010−202637号公報。Foods Food Ingredient J.JPn., No.195, 2001, 44−60。「第5版実験化学講座 16」、 発行所 丸善、発行日 平成17年3月31日、70頁。 本発明らは、更に環境負荷の少ないラントンの製造方法の研究を進める中で、反応基質として、特定のアルケン化合物を用いてアルミノシリケートと特定温度以上で接触させると、選択的にγ―バレロラクトンが得られこと。また、前記反応基質となるアルケン化合物は、アルミノシリケートと無溶媒下での混合処理でも容易にアルミノシリケート中に抱接されることを見出し、本発明を完成させた。 即ち、本発明の目的は、工業的に有利な方法で、且つ環境負荷の少ない方法でγーバレロラクトンを効率よく製造する方法を提供することにある。 本発明は、下記化学式(1a)〜(1b)から選ばれるアルケン化合物を抱接したアルミノシリケートを100℃以上で加熱処理して前記アルケン化合物を分子内環状化し、下記化学式(1)で表わされるγーバレロラクトンを選択的に生成させることにより、前記目的を達成するものである。 本発明の製造方法によれば、触媒としてアルミノシリケートを用いて特定温度以上で接触させるだけで、反応基質からγ―バレロラクトンを選択的に製造することができることから、工業的に有利であり、しかも環境負荷が小さい。 以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。 本発明のγーバレロラクトンの製造方法は、特定のアルケン化合物を反応基質として用い、該アルケン化合物を抱接したアルミノシリケートを100℃以上で加熱処理して前記アルケン化合物を分子内環状化し、前記一般式(1)で表されるγーバレロラクトンを選択的に生成させることにその特徴を有する。 反応基質のアルケン化合物は、下記化学式(1a)〜(1b)から選ばれる。 環状化反応の触媒として使用するアルミノシリケートは、合成品に限らず天然品であっても差し支えないが、品質上の面からA型、P型、X型、Y型或いはUSY型(Utra Stable Y型)の結晶系の合成ゼオライト、その他ソーダライト、アナルサイム、モルデナイト、ハイシリカゼオライト等の合成品が好適に用いられる。これらは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属で一部置換したものであってもよい。かかるアルミノシリケートは結晶質であっても非晶質であってもよい。 また、前記アルミノシリケートは、反応基質として4−ペンテンアミド(化合物(1a))を用いる場合には、酸性アルミノシリケートを使用することが好ましく、特にY型結晶系の合成ゼオライト(以下、酸性ゼオライト(HY)と略記することがある)が好ましい。一方、反応基質として4−ペンテンニトリル(化合物(1b))を用いる場合には、USY型結晶系の合成ゼオライトを用いることが特に好ましい。 アルミノシリケートの添加量は、特に制限されないが、反応基質となるヘキサン酸化合物1質量部に対して、1000質量部以下、好ましくは500質量部以下、特に10〜500質量とすることが好ましい。 また、該アルミノシリケートは、反応に使用する前に加熱処理等により脱水したものが好ましい。加熱処理は使用する前記アルミノシリケートの種類により異なるが、アルミノシリケート中に存在する水分と有機物が焼失すればよく、多くの場合500℃で10時間以上、好ましくは12〜24時間程度焼成すればよい。 なお、本発明において、反応終了後、該アルミノシリケートは加熱処理することにより再利用することができる。 前記アルケン化合物を抱接したアルミノシリケートを得る方法としては、例えば、a)反応基質となるアルケン化合物を溶媒に溶解させ、該溶液にアルミノシリケートを粉末として添加し、攪拌することで、反応基質のアルケン化合物をアルミノシリケートに抱接させる方法、b)該アルミノシリケートをカラムに充填し、アルケン化合物を含む溶液をポンプでカラムへ送液しカラム内を循環させて反応基質のアルケン化合物をアルミノシリケートに抱接させる方法、c)或いは、反応基質のアルケン化合物とアルミノシリケート粉末とを無溶媒下で混合処理する方法等が挙げられる。 本発明においては、前記アルケン化合物を用いれば、溶媒を媒体としなくても容易にアルケン化合物をアルミノシリケート中に抱接させることができるため、操作工程も簡素化でき、環境負荷も小さいという観点から前記c)の方法を用いることが特に好ましい。。 前記c)の方法で混合処理する方法としては、機械的手段で行うことができる。使用する装置としては、例えばハイスピードミキサー、スーパーミキサー、ターボスフェアミキサー、アイリッヒミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイブリダイゼイションシステム、ナウターミキサー、リボンブレンダー、ジェットミル及びコスモマイザー、V型混合機等の装置を用いることができるが、これらの装置に限定されるものではない。また、実験室レベルでは、乳鉢等を用いて混合することにより、容易にアルケン化合物をアルミノシリケート中に抱接させることができる。 前記反応基質のアルケン化合物を溶解させる溶媒は、該反応基質を溶解することができ、該反応基質と反応生成物に対して不活性な溶媒が用いられる。例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、アセトン、ジクロロメタン等が挙げられる。このうち、シクロヘキサンが好ましい。 アルケン化合物の分子内環状化反応は、前記アルケン化合物を抱接したアルミノシリケートを特定温度で加熱処理することにより行われる。 前記a)の方法でアルケン化合物をアルミノシリケート中に抱接させた場合には、アルケン化合物をアルミノシリケート中に抱接させる操作を行った後、アルケン化合物を抱接させたアルミノシリケートを常法により固液分離して回収したものを加熱処理してもよく、また、アルケン化合物を抱接させたアルミノシリケートを回収せずに溶媒を媒体としてそのまま加熱処理を行ってもよい。 また、前記b)の方法でアルケン化合物をアルミノシリケート中に抱接させた場合には、カラムをそのまま後述する加熱処理に付してもよい。。 分子内環状化反応は、反応中に副反応を抑える必要がある場合には、必要により不活性雰囲気下で行うことができる。不活性雰囲気とは、例えば窒素雰囲気等が挙げられる。 更に、反応は暗所下で行うことが好ましく、このようにすることで、反応中に副反応を抑えることができる。暗所での反応とは、反応容器を光から遮断して反応させることを意味する。 本発明において、加熱処理の温度は、目的物とするγーバレロラクトンを選択的に収率よく得るため100℃以上、好ましくは100〜150℃で行う必要がある。本発明において反応温度を100℃以上にする理由は、100℃より反応温度が低いと反応が進行しにくくなるからである。 また、反応時間は、環化反応が進行すれば特に制限されないが、多くの場合、10分以上、好ましくは5時間以上、特に好ましくは8〜30時間である。 本発明にかかる反応は、アルミノシリケートの細孔内に保持された反応基質のアルケン化合物は分子内付加反応により環状化合物のγ―バレロラクトンへ随時転換するが、生成したγーバレロラクトンもアルミノシリケートの細孔内にそのまま保持される。 従って、本発明では、反応終了後、生成されたγーバレロラクトンをアルミノシリケートから抽出して、該γーバレロラクトンを回収する工程を設けることが好ましい。 前記抽出方法としては、該アルミノシリケートを有機溶媒中で超音波処理する方法を用いることができ、該方法によれば効率よく目的とするγーバレロラクトンを抽出することができる。 前記抽出に用いる溶媒としては、生成するγーバレロラクトンを溶解できるものであれば特に制限はないが、例えば、アセトン、ジクロロメタン等が挙げられる。このうち、ジクロロメタンが好ましい。 抽出操作終了後、抽出液からアルミノシリケートを常法により固液分離して除去し、抽出液から溶媒を蒸留等により常法により除去した後、必要により、更に溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー等で精製処理を行って、目的とするγーバレロラクトンを得る。 本発明で得られるγーバレロラクトンは、医薬、農薬、香料等の生理活性物質及びその中間体、フレーバとして化粧料、食品、ラッカー、ワニス等の溶剤として特に有用な化合物である。 以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。<γーバレロラクトンの評価> 1H−NMR分析でγーバレロラクトンのメチン基の4.5ppmのピークを用いてγーバレロラクトンのモル比及び質量比を算出した。{実施例1及び比較例1} Y型結晶系の酸性ゼオライト(HY)を電気炉を用いて500℃で、空気中で15時間加熱活性化した。 メノー乳鉢に前記で調製した加熱活性化したHYゼオライトを加え、次いで反応基質として、4−ペンテンアミドを加えて、均一になるまで混合し反応基質を抱接したHYゼオライトを得た。 次いで、反応基質を抱接したHYゼオライトを燃焼ボードに移し、電気炉で所定温度で暗所下に大気中で加熱処理した。 反応終了後、ジクロロメタン20mlを加えて超音波で抽出し、再びろ過し、ろ液を減圧濃縮して溶媒を除去し残渣を得た。得られた残渣を1H−NMRで分析し、生成物の収率をNMRの積分強度比から定量的に求めた。{実施例2} USY型結晶系のゼオライト(Si/Alのモル比が6)を電気炉を用いて500℃で、空気中で15時間加熱活性化した。 メノー乳鉢に前記で調製した加熱活性化したUSYゼオライトを加え、次いで反応基質として、4−ペンテンニトリルを加えて、均一になるまで混合し反応基質を抱接したHYゼオライトを得た。 次いで、反応基質を抱接したHYゼオライトを燃焼ボードに移し、電気炉で所定温度で暗所下に大気中で加熱処理した。 反応終了後、ジクロロメタン20mlを加えて超音波で抽出し、再びろ過し、ろ液を減圧濃縮して溶媒を除去し残渣を得た。得られた残渣を1H−NMRで分析し、生成物の収率をNMRの積分強度比から定量的に求めた。{比較例2} Y型結晶系の酸性ゼオライト(HY)を電気炉を用いて500℃で、空気中で15時間加熱活性化した。 メノー乳鉢に前記で調製した加熱活性化したHYゼオライトを加え、次いで反応基質として、4−ペンテンニトリルを加えて、均一になるまで混合し反応基質を抱接したHYゼオライトを得た。 次いで、反応基質を抱接したHYゼオライトを燃焼ボードに移し、電気炉で所定温度で暗所下に大気中で加熱処理した。 反応終了後、ジクロロメタン20mlを加えて超音波で抽出し、再びろ過し、ろ液を減圧濃縮して溶媒を除去し残渣を得た。得られた残渣を1H−NMRで分析し、生成物の収率をNMRの積分強度比から定量的に求めた。注)比較例2ではγ−バレロラクトンが全く得られなかった。 本発明の製造方法によれば、触媒としてアルミノシリケートを用いて特定温度以上で加熱処理するだけで、反応基質からγ―バレロラクトンを選択的に製造することができることから、工業的に有利であり、しかも環境負荷が小さい。 下記化学式(1a)〜(1b)から選ばれるアルケン化合物を抱接したアルミノシリケートを100℃以上で加熱処理して前記アルケン化合物を分子内環状化することを特徴とする下記化学式(1)で表わされるγーバレロラクトンの製造方法。 前記アルケン化合物を抱接したアルミノシリケートは、アルケン化合物とアルミノシリケートとを無溶媒下での混合処理により得られるものであることを特徴とする請求項1記載のγ―バレロラクトンの製造方法。 【課題】香料等として有用なγーバレロラクトンを効率よく製造する方法の提供。【解決手段】下記化学式(1a)〜(1b)から選ばれるアルケン化合物を抱接したアルミノシリケートを100℃以上で加熱処理して前記アルケン化合物を分子内環状化することを特徴とするγーバレロラクトンの製造方法。【選択図】なし