生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_冷感増強剤
出願番号:2011011747
年次:2012
IPC分類:A61K 8/97,A61Q 11/00,A61K 47/46


特許情報キャッシュ

組橋 堅太郎 逆井 充好 楠奥 比呂志 JP 2012153617 公開特許公報(A) 20120816 2011011747 20110124 冷感増強剤 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 組橋 堅太郎 逆井 充好 楠奥 比呂志 A61K 8/97 20060101AFI20120720BHJP A61Q 11/00 20060101ALI20120720BHJP A61K 47/46 20060101ALI20120720BHJP JPA61K8/97A61Q11/00A61K47/46 10 OL 12 4C076 4C083 4C076BB22 4C076EE58T 4C076FF52 4C083AA111 4C083AA112 4C083AC122 4C083AC432 4C083AD532 4C083CC01 4C083CC41 本発明は、冷感物質の使用により得られる冷感を増強するための冷感増強剤に関する。 日常に使用される化粧品、ヘアケア製品、トイレタリー製品、入浴剤、医薬品などの各種製品には、冷感剤がしばしば添加される。それらの添加により、使用中若しくは使用後に強い清涼感が得られ、使用感が向上するからである。特にメントールが冷感剤として頻繁に使用される。 メントールはハッカの主成分であり、皮膚や口腔内の粘膜に対して生理的に冷たい感触、すなわち冷感を与える化合物として知られている。メントールは、香味料として食料品、飲料、歯磨若しくはタバコなどに添加され、また冷感剤として化粧品、シャンプー、リンス、ボディシャンプー、入浴剤若しくは虫除けスプレーなどに添加されるなど、広範に使用されている。 このメントールの冷感作用は、メントールが皮膚や粘膜組織中に存在する知覚神経終末に直接作用することにより生じると考えられている。メントールが引き起こす冷感に関して、生理学的な知見が幾つか得られている。 2001年に、Bucharest大のGordon ReidとMaria−Luiza Flontaは、ラットの感覚神経うち少数のニューロンが弱い冷却刺激に応答して内向きのイオン電流を生じること、そしてそのニューロンがメントールに対しても同様の応答性を示すことを発見した(非特許文献1)。それまで、冷感は電位依存性Caチャネルの阻害により引き起こされると推測されていたが、この発見により、冷却・メントール刺激による冷感が内向きのカルシウム電流により引き起こされることが明らかとなった。 2002年3月7日付けのNature誌において、UCSFのMcKemy、Neuhausser、Juliusは、三叉神経ニューロンから、メントール及び冷刺激に応答性を示す受容体として、CMR−1(cold and menthol sensitive receptor)を同定したことを報告している(非特許文献2)。CMR−1は、TRPイオンチャネルファミリーに属する興奮性のイオンチャネルであり、Reidらが報告した冷刺激誘発内向きカルシウム電流を引き起こす受容体と考えられる。 Novartis社のPeierらのグループによる同様の報告が、翌日のCell誌(2002年3月8日付)上でもなされ、またCMR−1はTRPM8と命名された(非特許文献3)。 これらの報告により、メントールによる冷感は、メントールが感覚神経に存在するTRPM8に結合して内向き電流が発生することにより生じることが明らかとなった。また2004年2月にBehrendtらは、この知見から、化合物の冷涼活性が、TRPM8に対する化合物の効果を定量することにより評価できると考え、HEK293細胞に強制発現させたマウスTRPM8に対する、70種類の香料素材及びメントール誘導体の効果を、Ca感受性蛍光色素により解析したことを報告している(非特許文献4)。彼らの報告では、70種類のうち、10種類の化合物(リナロール、ゲラニオール、ヒドロキシシトロネラール、WS−3、WS−23、Frescolate MGA、Frescolate ML、PMD38、Coolact(登録商標)P、Cooling Agent 10)でアゴニスト活性が見られ、TRPM8活性評価系が冷感剤の評価系として有効であることが示唆された。 2002年、低温及びメントールに対する感受性を有する、ラット由来の受容体(CMR1)がクローニングされた。この受容体は三叉神経や後根神経節のニューロンに発現する興奮性イオンチャネルである(非特許文献5)。このイオンチャネルは、低温(8〜28℃)、及び冷感と同様の知覚をもたらす化学物質であるメントールにより活性化される。また、このイオンチャネルの電流特性は、単離したラット後根神経節ニューロンにおける、低温又はメントールにより引き起こされる電流特性と酷似していることから、低温及びメントールによる冷感受容体であることが示唆される(非特許文献6)。 ヒトTRPM8(trp−p8とも呼ばれる)は、ラットCMR1と92%の相同性を有しており、ヒトTRPM8はラットCMR1のオーソログと考えられている(非特許文献7及び非特許文献5)。これらの知見から、ヒトに対するメントールによる冷感の解析は、TRPM8へのメントールの作用を解析することにより可能になると考えられる。 メントールは優れた冷感作用を発揮するものの、多量に使用した場合における皮膚や粘膜への刺激性、また特有の香りによる不快感などの問題点が存在するため、その使用量は制限されることがある。そこで、メントールによる清涼感をより増強する試みが従来からなされており、例えば、メントールと、冷感剤として使用される他の香料との併用、またそれら以外の物質とメントールとの併用などがなされている(非特許文献8)。 最近では、冷感を増強するため、冷感剤とカチオン型界面活性剤との組み合わせ(特許文献1)、冷感剤とカフェインとの組み合わせ(特許文献2)、冷感剤とキナ酸誘導体との組み合わせ(特許文献3)などが提案されている。しかしながら、冷感剤と組み合わせる物質の安全性の問題、当該物質が有する生理作用の問題、あるいは独特の風味などの問題が存在するため、更なる改良に対するニーズが存在する。 ニクズク種子又はそれから得られる材料(例えばナツメグオイル等)は古来より、胃腸薬や頭痛薬、又は香辛料などに用いられていたが、冷感物質による冷感を増強させる効果に関しては従来明らかにはされていなかった。特開2002−114649号公報特開2003−128583号公報特開2006−104070号公報REID,G.& FLONTA,M.L.(2002),Neurosci.Lett.,324,p164−8MCKEMY,D.D.,NEUHAUSSER,W.M.& JULIUS,D.(2002),Nature,416,p52−6PEIER,A.M.,MOQRICH,A.,HERGARDEN,A.C.,REEVE,A.J.,ANDERSSON,D.A.,STORY,G.M.,EARLEY,T.J.,DRAGONI,I.,MCINTYRE,P.,BEVAN,S.& PATAPOUTIAN,A.(2002),Cell,108,p705−15BEHRENDT,H.−J.,GERMANN,T.,GILLEN,C.,HATT,H.& JOSTOCK,R.(2004),Br.J.Pharmacol.,141,p737−45David D.McKemy,Werner M.Neuhausser& David Julius(2002),Nature 416:p52−8Gordon Reid,Maria−Luiza Flonta(2001),Nature 413:p480Larisa Tsavaler,Michael H.Shapero,Stan Morkowski& Reiner Laus(2001),Cancer Res.61:p3760−9特許庁 周知・慣用技術集(香料)、第I部、香料一般、p211−5ECCLES,R.(1994),J.Pharm.Pharmacol.,46,618−630 本発明は、冷感物質の使用により得られる冷感を増強するための、冷感増強剤、当該冷感増強剤を含有する組成物、並びに当該冷感増強剤を用いる冷感増強方法を提供することに関する。 本発明者らは、鋭意研究の結果、ニクズク(Myrstica fragance)種子に由来する物質を用いることにより上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、以下の(1)から(10)に係るものである。(1) ニクズク種子又はその抽出物を有効成分とする冷感増強剤。(2) ニクズク種子抽出物が、非極性溶剤、極性溶剤及び水・極性溶剤混合液から選ばれる溶剤を用いてニクズク種子から抽出される抽出物である、前記(1)に記載の冷感増強剤。(3) 前記水・極性溶剤混合液中の極性溶剤の濃度が、50.0〜99.5%(v/v)である、前記(2)に記載の冷感増強剤。(4) 前記極性溶剤がエタノールである、前記(3)に記載の冷感増強剤。(5) 冷感物質による冷感受容体の活性化を増強する、前記(1)から(4)のいずれか1つに記載の冷感増強剤。(6) 前記冷感物質が、メントール、メンチルアセテート、メントン、イソメントン、サビネンハイドレート、イソプレゴール、ピペリトール、p−メンタン−3−カルボン酸アミド、p−メンタンジオール、メンチルグルコシド、メンチル−2−ピロリドン−5−カルボキシレート、メンチルケトアルカノエート、メンチルN−アセチルグリシン、メンチルヒドロキシアルカノエート、2−メントキシテトラヒドロピラン、2−メントキシテトラヒドロフラン、メントキシプロパン−1,2−ジオール、メンチル3−ヒドロキシブチレート、1−アルコキシ−3−メントキシプロパン−2−オール、メントンケタール類、3−ヒドロキシメチル−p−メンタンアルカノエート及び2−ヒドロキシメチルメントールからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、前記(5)に記載の冷感増強剤。(7) 前記冷感受容体が、TRPファミリーに属する受容体である、前記(5)又は(6)に記載の冷感増強剤。(8) 前記TRPファミリーに属する受容体がTRPM8である、前記(7)に記載の冷感増強剤。(9) 前記(1)から(8)のいずれか1つに記載の冷感増強剤を含んでなる、冷感物質含有組成物。(10) 前記(1)から(8)のいずれか1つに記載の冷感増強剤を用いることを特徴とする、冷感物質の冷感増強方法。 本発明により、安全性の問題や、当該物質が有する生理作用、あるいは独特の風味の問題などの懸念を生じさせることなく、冷感物質の使用により得られる冷感を増強するための冷感増強剤、当該冷感増強剤を含有する組成物、並びに当該冷感増強剤を用いる冷感増強方法の提供が可能となる。ニクズク種子抽出物による、冷感剤増強効果を示すグラフ。ニクズク種子抽出物を含む洗口液及び含まない洗口液を口に含んだ後(1分後)の、冷感の強度を示すグラフ。ニクズク種子抽出物を含む洗口液及び含まない洗口液を口に含んだ後(5分後)の、冷感の強度を示すグラフ。 本発明において、ニクズクとは、ニクズク科に属する植物(学名:Myrstica fragrance)である。ニクズクは黄色い果実を実らせるが、これが成熟した後、果皮が割れ、網目状の赤い仮種皮に包まれた暗褐色の種子が現れる。一般的には、その仮種皮を乾燥させたものをメースと称し、一方その種子をナツメグと称するが、本発明においては上記植物の種子の部分を用いる。 本発明の第1の態様は、ニクズク種子又はその抽出物を有効成分とする冷感増強剤に関する。 本発明の冷感増強剤とは、それ自体は冷感を生じさせることはないが、冷感物質と組み合わされることにより、当該冷感物質により生じる冷感を増強させる物質のことを指す。冷感とは、冷感物質の作用により、冷感受容体が活性化されることにより生じるが、冷感増強剤を冷感物質と併用することにより、冷感物質による冷感が増強する。ここで、当該冷感受容体は通常TRPファミリーに属する受容体であり、TRPA1又はTRPM8等が挙げられるが、より好ましくはTRPM8である。 前記冷感物質は、それを使用した際に冷感を催す物質であれば特に限定されないが、前記冷感受容体のアンタゴニストであるのが好ましく、例えばメントール、メンチルアセテート、メントン、イソメントン、サビネンハイドレート、イソプレゴール、ピペリトール、p−メンタン−3−カルボン酸アミド、p−メンタンジオール、メンチルグルコシド、メンチル−2−ピロリドン−5−カルボキシレート、メンチルケトアルカノエート、メンチルN−アセチルグリシン、メンチルヒドロキシアルカノエート、2−メントキシテトラヒドロピラン、2−メントキシテトラヒドロフラン、メントキシプロパン−1,2−ジオール、メンチル3−ヒドロキシブチレート、1−アルコキシ−3−メントキシプロパン−2−オール、メントンケタール類、3−ヒドロキシメチル−p−メンタンアルカノエート及び2−ヒドロキシメチルメントールからなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。 あるいは、メントールの性質や風味を改良すべく、これまで合成された数多くの化合物を用いてもよい。例えばWS−3(N−エチル−p−メンタン−3−カルボキシアミド)、WS−5[エチル−3−(p−メンタン−3−カルボキシアミド)アセテート]、WS−23(2−イロプロピル−N,2,3−トリメチルブチルアミド)の3つの化合物が挙げられ、これらの化合物は、メントールと比較し臭気、刺激が低いなどの特徴を有している。また、上記のメントールやWSシリーズの冷感剤をリードとした様々な冷感物質を用いてもよい(非特許文献9)。 本発明のニクズク種子としては、前記種子をそのまま又は乾燥させた後に適当な大きさに切断・粉砕したものを使用することができ、その抽出物には、抽出エキスの他、更にそれを分離精製して得られるより活性の高い画分(成分)が包含される。その抽出は、室温又は加熱した状態で溶剤に含浸させる方法、又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて行われる溶剤抽出法、水蒸気蒸留等の蒸留法を用いて行ってもよく、また炭酸ガスを超臨界状態にして行う超臨界抽出法、圧搾して抽出物を得る圧搾法、マイクロ波水蒸気蒸留等を用いて行ってもよい。 溶剤抽出に用いられる抽出溶剤としては、水、極性溶剤、非極性溶剤、油脂、ワックス、その他オイル等のいずれをも使用することができ、これらを混合して用いることもできる。あるいは、上記の溶媒を代替する溶媒として知られる超臨界二酸化炭素を溶剤としてもよい。 極性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類等が挙げられ、水と当該極性溶剤との混合液(例えば水・エタノール混合液)を用いることもできる。水・極性溶剤の混合液を用いる場合は、水の配合比率は低いほうが好ましく、例えば水・エタノール混合液を用いる場合、当該溶剤中のエタノール濃度は50.0〜99.5%(v/v)、より具体的には50.0〜95.0%(v/v)の濃度である。 一方、非極性溶剤としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの溶剤のうち、ヘキサンがより好ましい。 抽出は、例えば植物1質量部に対して1〜50質量部、好ましくは3〜20質量部、より好ましくは5〜10質量部の溶剤を用い、3〜100℃、好ましくは30〜80℃、より好ましくは50〜60℃で、数時間〜数週間、通常は1〜14日間、好ましくは1〜3日間、より好ましくは3時間〜12時間、浸漬又は加熱還流することにより行うことができる。 本発明のニクズク種子抽出物をそのまま冷感増強剤として使用することも可能であるが、抽出液を必要に応じて濃縮し、精製することにより、更に増強効果に優れた冷感増強剤が得られる。ニクズク種子抽出物の分離精製手段としては、例えば当該抽出物の濾過、活性炭処理、液−液分配、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲル濾過、精密蒸留等が挙げられる。 本発明では、上記のニクズク種子抽出物をそのまま用いてもよく、適宜な溶媒で希釈した希釈液として用いてもよく、あるいは濃縮エキスや乾燥粉末又はペースト状に調製したものを用いてもよい。また、凍結乾燥し、用時に、通常抽出に用いられる溶剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、水・エタノール混液、水・プロピレングリコール混液、水・ブチレングリコール混液等の溶剤で希釈して用いてもよい。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いてもよい。 本発明のニクズク種子抽出物は、後記実施例に示すように、冷感物質による冷感を増強する作用を有することから、冷感増強剤として、医薬、化粧料、食品あるいは口腔用組成物等に配合された冷感物質により生じる冷感を増強するために使用できる。ニクズク種子抽出物を冷感増強剤として用いる際、ニクズク種子抽出物を単独で用いてもよく、また澱粉質、タンパク質、繊維質、糖質、脂質、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、香料、着色料、甘味料、調味料、防腐剤、保存料、酸化防止剤などの、医薬品や食品に用いられる添加剤や賦形剤等と組み合わせて用いてもよい。またその形態も特に限定されず、例えば溶液、懸濁液、シロップ、粉末、顆粒、粒子など、任意の形態に調製しうる。 ゆえに本発明の第2の態様は、上記冷感増強剤を含有する冷感物質含有組成物に関する。当該冷感物質含有組成物の種類としては、冷感を得るために使用される組成物であれば特に限定されないが、例えば、湿布又は軟膏などの医薬、入浴剤、シャンプーやコンディショナーなどの化粧料、キャンディ、ガム、タブレットなどの食品、あるいは歯磨剤、洗口液などの口腔用組成物などが挙げられる。 上記医薬の投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与又は静脈内注射、筋肉注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、点眼剤、点鼻剤等による非経口投与が挙げられる。また、このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、本発明のニクズク種子又はその抽出物を単独で、又は他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等を適宜組み合わせて用いてもよい。 上記食品の形態としては、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、シロップ等)が挙げられる。種々の形態の食品を調製するには、本発明のニクズク種子又はその抽出物を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて用いてもよい。 また、医薬部外品や化粧料としては、皮膚外用剤、洗浄剤、メイクアップ化粧料、頭皮頭髪用化粧料とすることができ、使用方法に応じて、ローション、乳液、ゲル、クリーム、軟膏剤、粉末、顆粒等の種々の剤型で提供できる。このような種々の剤型の医薬部外品や化粧料は、本発明の植物又はその抽出物を単独で、又は医薬部外品、皮膚化粧料、頭皮頭髪用化粧料及び洗浄料に配合される、油性成分、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬剤、香料、樹脂、防菌防黴剤、植物抽出物、アルコール類等を適宜組み合わせることにより調製できる。 当該冷感物質含有組成物中に含まれる冷感増強剤は、十分な冷感増強効果を有する限り特に限定されないが、通常、冷感物質1質量部に対し、ニクズク種子抽出物の乾燥物換算で10-4〜1質量部の割合であるか、0.01〜1000ppmの冷感増強剤濃度で含まれるのが好ましい。 本発明の第3の態様は、冷感物質の冷感を増強する冷感増強方法に関する。 具体的には、当該冷感増強方法は、上記の冷感増強剤により、上記の冷感物質による冷感受容体の活性化作用を増強し、それにより冷感物質による冷感を増強するものである。ここで、当該冷感受容体は通常TRPファミリーに属する受容体であり、例えばTRPA1又はTRPM8が挙げられる。本発明の冷感増強剤の使用により、冷感物質のみを用いた場合と比較し、25%〜200%の冷感増強効果が得られる。なお、この冷感増強の程度は、官能評価により測定してもよく、又は下記の実施例で説明するような細胞を用いたin vitroモデル実験により測定してもよい。 上記の冷感増強方法は、冷感物質と冷感増強剤とを用いて当該冷感物質による冷感が増強される態様であれば特に限定されず、例えば冷感物質と冷感増強剤とを共に含有する混合物として適用してもよく、冷感物質と冷感増強剤とを別々に含有する調製物を同時に適用してもよく、あるいは冷感物質と冷感増強剤とを別々に含有する調製物を順次適用してもよい。(調製例1:ニクズク種子抽出物の調製) ニクズク科ニクズク(Myristica fragrans Houtt.)の種子(インドネシア産)40gに、95vol%エタノールを400mL添加し、60℃、14日間浸漬して抽出した後、濾過し粗抽出液を得た。当該粗抽出液を減圧乾燥し、目的の抽出物(3.4g)を得た後、再度95vol%エタノール中に、濃度1w/v%若しくは10w/v%となるように溶解させ、下記で用いる試験サンプルとした。(実施例1:TRPM8活性増強作用の評価)(1)ヒトTRPM8安定発現株の作製: ヒトTRPM8安定発現HEK293細胞株を作製するため、ヒトTRPM8遺伝子のクローニングを行った。全長ヒトTRPM8遺伝子は、ヒト前立腺組織全RNA(COSMOBIO社製)より、RT−PCR法を用いて増幅した。 得られたPCR産物をエントリーベクターpENTR−D/TOPO(インビトロジェン社製)へクローニングした後、pCDNA3.2−V5/DEST(インビトロジェン社製)へサブクローニングし、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社製)によりHEK293細胞へ形質導入した。形質導入された細胞を、450μg/mlのG−418(プロメガ社)を含有するDMEM培地中で増殖させて選抜した。HEK293細胞は内在性のTRPM8を発現しないため、TRPM8形質導入株に対するコントロールとして使用できる。(2)カルシウムイメージング: HEK293細胞へ形質導入したTRPM8活性の測定は、蛍光カルシウムイメージング法により行った。まず、培養したTRPM8発現細胞をポリ−D−リジンコートされた96ウェルプレート(BDファルコン社製)へ播種(30,000細胞/ウェル)し、37℃で一晩インキュベートした後、培養液を除去し、Fluo4−AM液(同仁化学社製;カルシウムキットII)を添加し、37℃で30〜60分間インキュベートした。その後、96ウェル穴プレートを蛍光プレートリーダー(FDSS3000;浜松ホトニクス社製)にセットし、装置庫内温度を32℃とした状態で、励起波長480nmで励起したときのFluo4による蛍光イメージを、CCDカメラを用いて検出波長520nmにより捕捉した。測定は1秒毎に計4分間行い、測定開始30秒後に、FDSS3000内蔵の分注器から冷感剤溶液(l−メントール溶液、終濃度20μM)を添加し、蛍光強度の変化によりTRPM8の活性を評価した。(3)冷感増強効果の評価: 冷感剤溶液に上記の試験サンプルを添加(終濃度0.5μg/ml)したものを、被検物質含有冷感剤溶液として用い、その冷感剤増強効果を評価した。以下の式により、各ウェルの蛍光強度比を算出し、冷感剤溶液添加後の蛍光強度比のピークをTRPM8活性とした。 蛍光強度比=(各時点の蛍光強度)/(初期蛍光強度) 以下の式により、冷感剤増強効果を算出した。 冷感剤増強効果=(被検物質含有冷感剤溶液によるTRPM8活性)/(冷感剤溶液によるTRPM8活性)各処理群あたり8ウェルで評価を行い、その平均値を用いた。(4)試験サンプルによる冷感剤増強効果: 試験サンプルによる冷感剤増強効果を図1に示す。冷感剤単独(対照品)の場合と比較し、0.5μg/mlで試験サンプルを含有する試験品において、1.3倍を超えるTRPM8活性化作用が得られることが明らかとなった。(実施例2:冷感剤配合洗口液における冷感増強剤の効果)(1)試験内容: 下記に示す処方で、本発明の冷感増強剤を含有する試験品と、本発明の冷感増強剤を含有しない対照品とを調製し、男女2名ずつ、計4名のパネラーに対し、各々の洗口液10mlを30秒間、口に含んで吐き出させ、1分後及び5分後における冷感の強度を、20段階評価(0〜10点、0.5点刻み)で官能評価させた。 対照品 試験品ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.2 1.2(エマノーンCH−40;花王)プロピレングリコール(ADEKA) 1 1l−メントール 0.08 0.08精製水 197.72 197.72 200 20010%試験サンプル − 0.0295%エチルアルコール 0.02 −(2)評価結果: 各洗口液を口に含んで吐き出させた後(1分後及び5分後)の冷感の強さを表1及び表2、並びに図2及び図3に示す。ニクズク種子抽出物を含有する試験品において、強い冷感が感じられる結果となった。 以上の実施例1及び2の結果から、ニクズク種子抽出物は、l−メントールによる冷感を、TRPM8の活性化を通じて増強しうることが明らかとなった。 ニクズク種子又はその抽出物を有効成分とする冷感増強剤。 ニクズク種子抽出物が、非極性溶剤、極性溶剤及び水・極性溶剤混合液から選ばれる溶剤を用いてニクズク種子から抽出される抽出物である、請求項1記載の冷感増強剤。 前記水・極性溶剤混合液中の極性溶剤の濃度が、50.0〜99.5%(v/v)である、請求項2記載の冷感増強剤。 前記極性溶剤がエタノールである、請求項3記載の冷感増強剤。 冷感物質による受容体の活性化を増強する、請求項1から4のいずれか1項記載の冷感増強剤。 前記冷感物質が、メントール、メンチルアセテート、メントン、イソメントン、サビネンハイドレート、イソプレゴール、ピペリトール、p−メンタン−3−カルボン酸アミド、p−メンタンジオール、メンチルグルコシド、メンチル−2−ピロリドン−5−カルボキシレート、メンチルケトアルカノエート、メンチルN−アセチルグリシン、メンチルヒドロキシアルカノエート、2−メントキシテトラヒドロピラン、2−メントキシテトラヒドロフラン、メントキシプロパン−1,2−ジオール、メンチル3−ヒドロキシブチレート、1−アルコキシ−3−メントキシプロパン−2−オール、メントンケタール類、3−ヒドロキシメチル−p−メンタンアルカノエート及び2−ヒドロキシメチルメントールからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項5記載の冷感増強剤。 前記冷感受容体が、TRPファミリーに属する受容体である、請求項5又は6記載の冷感増強剤。 前記TRPファミリーに属する冷感受容体がTRPM8である、請求項7記載の冷感増強剤。 請求項1から8のいずれか1項記載の冷感増強剤を含んでなる、冷感物質含有組成物。 請求項1から8のいずれか1項記載の冷感増強剤を用いることを特徴とする、冷感物質の冷感増強方法。 【課題】メントール等の冷感物質により得られる冷感を増強するための冷感増強剤の提供、当該冷感増強剤を含有する組成物の提供、並びに当該冷感増強剤を用いる冷感増強方法の提供。【解決手段】水、極性溶剤、非極性溶剤又はそれらの2つ以上の混合物を用いてニクズク(Myrstica fragance)種子から得たニクズク種子抽出物を有効成分として含んでなる冷感増強剤、当該冷感増強剤を含有する冷感物質含有組成物、並びに当該冷感増強剤を用いる冷感増強方法。【選択図】なし


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