生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_糸状菌培養用培地
出願番号:2011010086
年次:2012
IPC分類:C12N 1/00,C12N 9/42,C12N 9/58,C12N 9/14


特許情報キャッシュ

春見 隆文 荻原 淳 小山 善幸 松本 和 JP 2012147741 公開特許公報(A) 20120809 2011010086 20110120 糸状菌培養用培地 学校法人日本大学 899000057 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 春見 隆文 荻原 淳 小山 善幸 松本 和 C12N 1/00 20060101AFI20120713BHJP C12N 9/42 20060101ALI20120713BHJP C12N 9/58 20060101ALI20120713BHJP C12N 9/14 20060101ALI20120713BHJP JPC12N1/00 FC12N9/42C12N9/58C12N9/14C12N1/00 S 12 OL 20 特許法第30条第1項適用申請有り 「JOURNAL OF APPLIED GLYCOSCIENCE 第57巻 講演要旨集(通巻227号)」(平成22年7月20日 日本応用糖質科学会 発行) (出願人による申告)平成22年度 農林水産省委託プロジェクト研究「稲わら等の作物の未利用部分や資源作物、木質バイオマスを効率的にエタノール等に変換する技術の開発」、産業技術力法第19条の適用を受ける特許出願 4B050 4B065 4B050CC00 4B050DD03 4B050EE02 4B050LL10 4B065AA58X 4B065AA60X 4B065AA70X 4B065AC14 4B065BB27 4B065CA31 4B065CA33 4B065CA55 本発明は、糸状菌培養用培地に関する。さらに詳しくは、大豆由来の不溶性窒素成分を窒素源として含む糸状菌培養用培地に関する。 Aspergillus属、Humicola属、Trichoderma属等の糸状菌は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の糖化酵素を産生する菌として、リグノセルロース系のバイオマスを原料としたエタノールの製造や、コムギわら等からグルコース、セロビオース等の加水分解性生物を得ること等に利用できるとされてきた(例えば、特許文献1、2参照)。 日本ではイナワラが毎年大量に排出されていることから、これを原料として、エタノール等を製造することが望まれている。しかし、イナワラは強固な構造を持つことから、一般に利用されているTrichoderma属由来のセルラーゼのみではなかなか分解されないという問題があった。 そこで、イナワラの分解に有用なセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を効率的に産生できる糸状菌の培養条件が検討されているが、十分な培養方法は開発されておらず、イナワラ高分解酵素生産菌として知られるHumicola属の糸状菌においては、酵素生産性が極めて低いという問題もあった。 本発明者らはこれらの問題に対し、大豆由来の不溶性窒素成分を窒素源とする糸状菌培養用培地を本発明において見出した。 大豆由来の成分を窒素源として用いることは、従来、滅菌された大豆、脱脂大豆、これらを熱処理等したもの、大豆蛋白質等を窒素源とすること等から知られているが(例えば、特許文献4〜7参照)、窒素源として大豆由来の不溶性窒素成分を特に用いることは知られていなかった。特開2010−136702号公報特表2008−523788号公報国際公開第2003/028476号パンフレット特表2009−505653号公報国際公開第98/29558号パンフレット特開平9−121807号公報 本発明は、イナワラ等の分解に有用なセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を効率的に産生できる糸状菌の培養条件の提供を課題とする。さらに、詳しくは、Humicola属の糸状菌がペレット化せず、結果として酵素を効率的に産生できる培養条件の提供を課題とする。 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、窒素源として大豆由来の不溶性窒素成分を用いた糸状菌培養用培地を見出した。この糸状菌培養用培地で糸状菌を培養すると、イナワラ等の分解に有用なセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を効率的に糸状菌に産生させることが可能となる。さらに、Humicola属の糸状菌において、糸状菌がペレット化せず培養が行えることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、次の(1)〜(12)で示される、糸状菌培養用培地、糸状菌を培養する方法等に関する。(1)大豆由来の不溶性窒素成分を含む糸状菌培養用培地。(2)次の(A)または(B)の特徴を有する大豆由来の不溶性窒素成分を含む上記(1)に記載の糸状菌培養用培地。(A)水分8%以下、粗たん白質含量47%以上、粗繊維7%以下、粗灰分6.8%以下、窒素分7.52%以上、粒度0.106mm(150メッシュ)パス90%以上、抗原量100U/10mg以下(B)水分12%以下、粗たん白質含量51.125%以上(無水物換算)、粗繊維3〜7%、粗灰分6〜7%、窒素分8.18%以上(無水物換算)、粒度0.355mm以上痕跡、0.25mm(60メッシュ)パス90%以上、0.15mm(100メッシュ)パス50%以上、ウレアーゼ活性度0.3以下(3)糸状菌がAspergillus属、Humicola属またはTrichoderma属に属する菌である上記(1)または(2)に記載の糸状菌培養用培地。(4)糸状菌がHumicola insolensである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の糸状菌培養用培地。(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の糸状菌培養用培地によって、糸状菌を培養する方法。(6)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の糸状菌培養用培地によって、糸状菌を培養することにより、糸状菌に酵素を産生させる方法。(7)酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼまたはリグニン分解酵素である上記(6)に記載の方法。(8)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の糸状菌培養用培地によって、糸状菌を培養することにより、糸状菌に産生させる酵素を調節する方法。(9)酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼまたはリグニン分解酵素である上記(8)に記載の方法。(10)上記(5)に記載の方法によって培養された糸状菌を用い、バイオマスを分解する方法。(11)バイオマスが草本系バイオマスである上記(10)に記載の方法。(12)草本系バイオマスがイナワラ、バガスまたはススキである上記(11)に記載の方法。 本発明によって提供される糸状菌培養用培地を用いることにより、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を効率的に糸状菌に産生させることが可能となる。また、本発明によって培養した糸状菌を用いることにより、イナワラ等のバイオマスを原料として、エタノール等を製造することが可能となる。前培養における糸状菌の状態を示した図である(実施例2)。前培養における糸状菌の状態を示した図である(実施例2)。本培養における酵素活性の経時的な変化を示した図である(実施例2)。培養8日目の培地の様子を観察した図ある(実施例2)。前培養の違いによる本培養における酵素活性の違いを示した図である(実施例2)。窒素源の違いによる本培養における酵素活性の違いを示した図である(実施例3)。 本発明の「糸状菌培養用培地」とは、Aspergillus属、Humicola属またはTrichoderma属等に属する糸状菌の培養に適する培地のことをいう。 ここで「糸状菌の培養に適する」とは、糸状菌の増殖や、糸状菌に酵素を産生させるための培地として有効に利用できることを指す。 本発明の「糸状菌培養用培地」は、大豆由来の不溶性窒素成分を含み、糸状菌の培養に適するものであれば、糸状菌の培養に有用な公知の他の成分等を含んでいてもよく、固体培地であっても液体培地であっても良い。特に液体培地においては、糸状菌がペレット化せず、分散した状態で培養できる培地であることが特に好ましい。 このような糸状菌がペレット化せず、分散した状態で培養できる液体培地としては、窒素源として次の(A)のような特徴を有する不溶性窒素成分を含む本発明の「糸状菌培養用培地」等が挙げられる。(A)水分8%以下、粗たん白質含量47%以上、粗繊維7%以下、粗灰分6.8%以下、窒素分7.52%以上、粒度0.106mm(150メッシュ)パス90%以上、抗原量100U/10mg以下である。 また、上記(A)のような特徴に加え、さらに、水溶性窒素指数(NSI)が概ね5以上、20未満、ウレアーゼ活性度0.02以下、トリプシンインヒビター活性1.5U/mg以下である、(A’)のような特徴を有する不溶性窒素成分を含むものであっても良い。 この(A)または(A’)のような特徴を有する不溶性窒素成分として、例えば、市販のJ−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)(J−オイルミルズ製)等が挙げられる。また、本発明の「糸状菌培養用培地」は、炭素源としてバイオマスをさらに含むこともできる。 本発明の「糸状菌培養用培地」に含まれる「大豆由来の不溶性窒素成分」とは、大豆由来のタンパク質等窒素源になり得るものであって水に不溶なものを含むもののことをいい、糸状菌の増殖や、糸状菌に酵素を産生させるために有用な「大豆由来の不溶性窒素成分」であれば、従来知られているいずれのものも用いることができる。 このような「大豆由来の不溶性窒素成分」として、例えば、上記(A)または(A’)のような特徴を有するものが挙げられる。このような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」は、エクストルーダーで脱脂大豆を処理し、膨化、変性させた後、乾燥し、粉砕することで調製することができる。 エクストルーダーによる脱脂大豆の処理は、上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」が得られる条件であれば、いずれの処理条件であっても良い。例えば、エクストルーダーKEI−87(幸和工業株式会社製)を用いる場合には、バレル温度160〜190℃、圧力30〜50kg/cm2、回転数280rpm、スクリュー配置に於いてニーディングディスクを6個含むスクリューを使用し、原料供給量530〜600kg/時間、水供給量80〜130リットル/時間、ダイ2.5mm×226穴の処理条件等が挙げられる。 また、二軸型エクストルーダーKE145−25(幸和工業株式会社製)を用いる場合には、バレル温度180℃、圧力45kg/cm2、回転数280rpm、原料供給量77kg/hr、ダイ2mm×10穴の処理条件やバレル温度140℃、圧力54kg/cm2、回転数280rpm、原料供給量77kg/hr、ダイ2mm×10穴の処理条件等が挙げられる また、「大豆由来の不溶性窒素成分」として、次の(B)のような特徴を有するものも用いることができる。(B)水分12%以下、粗たん白質含量51.125%以上(無水物換算)、粗繊維3〜7%、粗灰分6〜7%、窒素分8.18%以上(無水物換算)、粒度0.355mm以上痕跡、0.25mm(60メッシュ)パス90%以上、0.15mm(100メッシュ)パス50%以上、ウレアーゼ活性度0.3以下である。 また、上記(B)のような特徴に加え、さらに、抗原量5000〜2万U/10mgであり、水溶性窒素指数(NSI)が概ね15以上35未満である、(B’)のような特徴を有する不溶性窒素成分を含むものであっても良い。 この(B)または(B’)のような特徴を有する不溶性窒素成分として、例えば、市販のソイプロ(J−オイルミルズ製(登録商標))等が挙げられる。このような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」は、脱脂大豆を乾燥し、粉砕することで調製することができる。 この(B)または(B’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を用いた糸状菌培養用培地では、上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を用いた糸状菌培養用培地と比べてやや糸状菌がペレット化しやすく、必ずしも糸状菌が完全に分散した状態で培養することはできないが、糸状菌に酵素を産生させる場合等において有用である。 本発明の培地を用いて培養する糸状菌としては、従来知られているいずれの糸状菌であっても良いが、例えば、Aspergillus属、Humicola属またはTrichoderma属等に属する糸状菌や難培養性の糸状菌等が挙げられる。このような糸状菌として、Humicola insolens等が挙げられる。 本発明の「糸状菌を培養する方法」とは、本発明の大豆由来の不溶性窒素成分を含む糸状菌培養用培地を用いて、糸状菌を増殖させ、また、糸状菌に酵素を産生させる培養方法のことをいう。 本発明の「糸状菌を培養する方法」では、本発明の糸状菌培養用培地を培地として用いれば、従来、糸状菌の培養方法として知られているいずれの方法を用いても良い。例えば、液体培地を用いて糸状菌を培養する場合には、PW−1(サクラ精機製)等の市販のジャーファメンターを用いて培養してもよく、MIR−220R(SANYO製)等の市販の震盪培養機を用いて震盪培養してもよい。震盪培養することにより、糸状菌の増殖や、糸状菌による酵素の産生を効率的に行うことができるため好ましい。 また、本発明の「糸状菌を培養する方法」において、糸状菌の生育を促し、生育ステージを均一にするために、糸状菌の胞子を本発明の糸状菌培養用培地に植菌して培養を行うことが好ましい。 本発明の「糸状菌に酵素を産生させる方法」とは、本発明の「糸状菌を培養する方法」において、さらに、糸状菌による酵素の産生を促進できる培養方法のことをいう。 本発明の「糸状菌に酵素を産生させる方法」では、本発明の糸状菌培養用培地を培地として用いれば、糸状菌に酵素を産生させるために有効な方法として知られているいずれの方法を用いても良い。例えば、前培養によって糸状菌を増殖させた後、増殖した糸状菌を効率的に酵素が産生できる培地に植菌して本培養を行うこと等が挙げられる。 ここで、前培養では、糸状菌が効率的に増殖できる「糸状菌培養用培地」を用いることが好ましく、このような「糸状菌培養用培地」として、糸状菌がペレット化せず、分散して培養できる、上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を用いることが好ましい。また、やや糸状菌がペレット化しやすく、必ずしも糸状菌が完全に分散した状態で培養を行うことはできないが、上記(B)または(B’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を用いることもできる。 本培養では、糸状菌が効率的に酵素を産生できる「糸状菌培養用培地」を用いることが好ましい。このような「糸状菌培養用培地」として、上記(A)あるいは(A’)または(B)あるいは(B’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を用いることができる。 特に上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を用いて糸状菌がペレット化せず、分散した状態で前培養を行い、糸状菌を効率よく増殖させた後、上記(B)または(B’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地でこの糸状菌を本培養することにより、糸状菌に特に効率的に酵素を産生させることができる。 本発明の「糸状菌に酵素を産生させる方法」により、糸状菌によって産生される「酵素」としては、キシラナーゼ活性、βキシロシダーゼ活性等を有するヘミセルラーゼ、セロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、β−グルコシダーゼ活性等を有するセルラーゼ等の糖化酵素やプロテアーゼやリグニン分解酵素等が挙げられる。 本発明の実施例においては、本発明の糸状菌培養用培地を用いて糸状菌を培養することにより、カバ由来キシラン分解活性(主にキシラナーゼ活性)およびパラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)を測定することにより、これらの酵素活性を有するヘミセルラーゼが産生され、パラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)およびパラ−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド分解活性(主にβ−グルコシダーゼ活性)を測定することにより、セロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、β−グルコシダーゼ活性等を有するセルラーゼが産生されていることを確認している。 本発明の「糸状菌に産生させる酵素を調節する方法」とは、本発明の「糸状菌を培養する方法」において、糸状菌の培養に用いる糸状菌培養用培地を選択することによって、糸状菌に産生させる酵素の種類や組み合わせ、量等を調節することをいう。 この糸状菌培養用培地は、その培地に含まれる成分によって選択することができ、特に、大豆由来の不溶性窒素成分によって選択することが好ましい。例えば、糸状菌培養用培地として、上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を選択し、Humicola insolens等の糸状菌を培養する場合には、パラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)(pNP−Xase)等を有するヘミセルラーゼを産生させることができ、さらにパラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)(pNP−Lase)等を有するセルラーゼを多く産生させることができる。 また、糸状菌培養用培地として、上記(B)または(B’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を選択し、Humicola insolens等の糸状菌を培養する場合には、パラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)(pNP−Lase)等を有するセルラーゼを産生させることができ、さらにパラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)(pNP−Xase)等を有するヘミセルラーゼを多く産生させることができる。 本発明の「バイオマスを分解する方法」とは、上記のような糸状菌に産生させたセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼやリグニン分解酵素等によって、バイオマスを糖化し、分解することをいう。ここで、分解対象となるバイオマスとしては、バガス、ススキまたはイナワラ等の草本系バイオマスや、木質系バイオマス等が挙げられる。これらを炭素源として本発明の「糸状菌培養用培地」に加えることにより、糸状菌を培養しながら、これらのバイオマスを分解することができる。 以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。糸状菌培養用培地 糸状菌培養用培地として、グルコース5w/v%と大豆由来の不溶性窒素成分を0.3w/v%含む培地を調製した。この大豆由来の不溶性窒素成分は、以下のように調製したものをそれぞれ用いた。不溶性窒素成分1)J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標) 脱脂大豆(水溶性窒素指数15〜35程度)(J−オイルミルズ製)を、エクストルーダーKEI−87(幸和工業株式会社製)にて、バレル温度190℃、圧力54〜69kg/cm2、回転数280rpm、スクリュー配置に於いてニーディングディスクを6個含むスクリューを使用し、原料供給量770kg/時間、水供給量123リットル/時間、ダイ2.5mm×226穴の条件下で処理し、大気中に押し出して膨化、変性させた。この処理物を3〜5mm程度に切断し、80℃の温風で充分に乾燥し、これを粉砕機ACM−100(ホソカワミクロン製)にて粉砕したものを、J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)として調製した。 このように調製された不溶性窒素成分は、水分8%以下、粗たん白質含量47%以上、粗繊維7%以下、粗灰分6.8%以下、窒素分7.52%以上、粒度0.106mm(150メッシュ)パス90%以上、抗原量100U/10mg以下であるという特徴(A)を有する。2)ソイプロ(登録商標) 脱脂大豆(水溶性窒素指数15〜35程度)(J−オイルミルズ製)を、粉砕機ACM−100(ホソカワミクロン製)でソイプロ(登録商標)として調製した。このように調製された不溶性窒素成分は、水分12%以下、粗たん白質含量51.125%以上(無水物換算)、粗繊維3〜7%、粗灰分6〜7%、窒素分8.18%以上(無水物換算)、粒度0.355mm以上痕跡、0.25mm(60メッシュ)パス90%以上、0.15mm(100メッシュ)パス50%以上、ウレアーゼ活性度0.3以下であるという特徴(B)を有する。糸状菌培養用培地の調製方法 蒸留水100mlを500ml三角フラスコに入れ、グルコース5w/v%、不溶性窒素成分0.3w/v%を添加しよく溶かした。その後、オートクレーブ(ES−315:TOMY製)で121℃、20分高温高圧滅菌を行い、糸状菌培養用培地とした。糸状菌の培養 実施例1で調製した糸状菌培養用培地を用い、糸状菌の培養を行った。比較として、基本培地を用いた培養も行った。1.糸状菌 Humicola insolens ATCC26908株(ATCC(American Type Culture Collection)の菌株保存機関より住商ファーマインターナショナル社を通じて入手した)を用いた。2.前培養用培地1)糸状菌培養用培地 実施例1で調製した糸状菌培養用培地を用いた。2)基本培地 グルコース5w/v%、Yeast extract2w/v%、Polypepton0.1w/v%、硫酸マグネシウム0.03w/v%、塩化カルシウム0.03w/v%を含む培地を基本培地として調製した。 即ち、蒸留水50mlを500ml三角フラスコに入れ、グルコース(関東化学製)5w/v%、Yeast extract(BD製)2w/v%、Polypepton(日本製薬製)0.1w/v%、を添加しよく溶かした。その後、オートクレーブ(ES−315:TOMY製)で121℃、20分高温高圧滅菌を行った(1)。 次に10w/v%硫酸マグネシウム水溶液(和光純薬製)、10w/v%塩化カルシウム水溶液(和光純薬製)を調製し、オートクレーブ(ES−315:TOMY製)で上記と同様に滅菌した後、0.03w/v%になるように上記(1)に無菌的に添加し、基本培地とした。3)比較用培地 グルコース5w/v%、比較用窒素成分0.3w/v%、硫酸マグネシウム0.03w/v%、塩化カルシウム0.03w/v%を含む培地を比較用培地として調製した。 比較用窒素成分は、Polypepton−Y(日本製薬製)、PhytonePepton(BBL製)、ゼラチンペプトン(nacalai tesque製)、乾燥おから(さとの雪食品製)、小麦ふすま(ナチュラルキッチン製)、米ぬか(ノイマン製)、魚粉(益川商店製)、菜種ミール(J−オイルミルズ製)、コーングルテンミール(J−オイルミルズ製)、脱脂大豆(J−オイルミルズ製)またはペプトン(極東製薬工業製)をそれぞれ用い、上記2)の基本培地と同様に比較用培地を調製した。3.本培養用培地 炭素源としてコシヒカリのイナワラを一週間程度天日干しして乾燥し実験用カッティングミルP−15(FRITSCH製)にて粉砕した後、80メッシュで篩別したものを5w/v%含み、窒素源としてJ−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)として調製した不溶性窒素成分を0.3w/v%含むものをpH6.0としたものを本培養用の糸状菌培養用培地として調製した。 即ち、蒸留水100mlを500ml三角フラスコに入れ、イナワラ5w/v%、不溶性窒素成分0.3w/v%を添加しよく溶かした。その後、オートクレーブ(ES−315:TOMY製)で121℃、20分高温高圧滅菌を行い、本培養用の糸状菌培養用培地とした。4.糸状菌培養1)前培養 上記の前培養用培地(糸状菌培養用培地、基本培地または比較用培地)をそれぞれ50mLいれた500mL三角フラスコに、糸状菌を1白金耳植菌し、200rpm、30℃で3日間、震盪培養機(MIR−220R:SANYO製)を用いて震盪培養した。 基本培地で前培養した場合、図1、A.に示したように、菌体は、1cmほどのぺレツトを形成したが、本願発明の糸状菌培養用培地で前培養した場合は、図1、B.に示したように、ペレットを形成せず、菌体が分散した状態で前培養できることが確認できた。 比較用培地で前培養した場合は、図2に一例を示したが、いずれの比較用窒素成分を使用した場合も糸状菌がペレットを形成してしまい、十分に増殖が行えないことが確認された。2)本培養 上記糸状菌培養用培地で前培養した糸状菌を10w/v%となるように、上記の本培養用の糸状菌培養用培地1Lに加え、2Lジャーファメンター(PW−1:サクラ精機製)を用いて、通気量はlvvm、回転数は溶存酸素量に合わせ200rpm〜500rpmで制御し、10日間培養を行った。 24時間おきに培養上清を10mLずつ採取し、採取したサンプルについてPHを6.0に調整し、次のような手法により、還元糖および遊離糖を測定することで、ヘミセルラーゼ等の酵素活性を調べた。還元糖の測定(DNS) 表1の組成で混合した混合液のうち100μLに、DNS試薬300μLを加え、50℃で60分間反応させた後、100℃で5分間おくことにより反応を停止した。この反応溶液50μLを1000μLの滅菌水で希釈した後、吸光度(500nm)を測定した。 DNS試薬の調製および還元糖の測定は、以下の文献を参考にして、次のように行った。文献:Use of dinitrosalicylic acid reagent for determination of reducing sugar;G.L. Miller;Anal. Chem., 31, 426−428 (1959)使用薬品 水酸化ナトリウム(和光純薬工業製)、3,5ジニトロサリチル酸(DNS)(東京化成工業製)、ロッシェル塩(和光純薬工業製)、結晶フェノール(和光純薬工業製 核酸抽出用)、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業製)、ろ紙(Whatman(登録商標) No,1)、リン酸二水素ナトリウム(和光純薬工業製)、リン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業製)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)(ナカライテスク製)Xylan Birchwood(SIGMA製)測定手法1)DNS試薬溶液の調製 4.5%の水酸化ナトリウム水溶液60mLと1%DNS水溶液176mLを混合し45gのロッシェル塩を加え完全に溶解させた。(A液) 10%水酸化ナトリウム水溶液4.4mLに結晶フェノール2gを加え完全に溶解させ、純水で20mLにフィルアップした。この溶液13.8mLに炭酸水素ナトリウムを1.38g完全に溶かした。(B液) B液にA液を全量加えよく攪拌させ、さらにロッシェル塩を飽和するまで溶かしこみ遮光して室温で2日以上安定させた。この操作でできた溶液をDNS試薬溶液とした。2)還元糖の測定 1Mリン酸二水素ナトリウム水溶液39mLと、1Mリン酸水素二ナトリウム水溶液61mLを混合し、pHを6に調整した物をリン酸バッファーとした。 氷上にてリン酸バッファー25μL、純水975μL、1%CMCまたは1%Xylan Birchwoodを125μL、培養上清125μLを入れ、激しく攪拌した。 以下の操作は三連で行った。 混合した溶液のうち100μLを予め反応の0時間として採取し、氷上に保管しておいた。残った溶液を150μLずつ採取した。50℃の湯を入れたウォーターバスに浮かべ1時間反応させた。反応後は、直ちに氷上に移し5分間急冷した。 溶液は次に氷上で100μLずつ分注し、0時間として保管しておいたサンプルとともに1)で調製したDNS試薬を300μLずつ加え、よく攪拌した。その後5分間煮沸しその後直ちに冷水で5分間冷却した。 最後にそこから50μL採取し、1000μLの純水で希釈した後、分光光度計(BECKMAN COULTER DU730)でOD500nmの波長の吸光度を測定した。遊離糖の測定(pNP) 表2の組成で混合し、リン酸バッファーでpH6.0に調製したものを50℃で10分間反応させた後、1M炭酸ナトリウムを100μL加えることで反応を停止した。この反応溶液の吸光度(415nm)を測定した。 その結果、図3に示したように、培養日数が本培養開始から3日目以降では、カバ由来キシラン分解活性(主にキシラナーゼ活性)(図3、XYLase)、パラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)(図3、pNP−Xase)、パラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)(図3、pNP−Lase)が上昇することが確認された。 一方、パラ−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド分解活性(主にβ−グルコシダーゼ活性)(図3、pNP−Gase)、カルボキシメチルセルロース分解活性(主にエンドグルカナーゼ活性)(図3、CMCase)は本培養の開始から7日目以降の後期になって始めて活性の上昇が確認され、カルボキシメチルセルロース分解活性に関しては、培養期間を通してほとんど活性がみられなかった。 従って、この結果より、本発明の糸状菌培養用培地を用いて糸状菌を培養することにより、糸状菌にキシラナーゼ活性、βキシロシダーゼ活性等を有するヘミセルラーゼおよびセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、β−グルコシダーゼ活性等を有するセルラーゼ等を産生させることができることが確認できた。 また、本培養の開始から培養日数が8日目の培地を顕微鏡で観察したところ、図4の写真(左)に示したように、Humicola insolens ATCC26908株がイナワラ粉末に対し菌糸を伸ばし分解しようとしていることが観察された。 また、図4の写真(右)においてイナワラの細胞壁がわからないほど分解されていることも観察された。従って、これらより、Humicola insolens ATCC26908株によってイナワラ粉末を資化できることが確認された。 さらに、同様に本発明の糸状菌培養用培地で前培養したHumicola insolens ATCC26908株を用いた本培養における培養上清と、基本培地で前培養したHumicola insolens ATCC26908株を用いた本培養における培養上清との活性を比較した。 その結果、図5に示したように、CMCアーゼ活性(CMCase)はほとんど差が見られなかった。キシラナーゼ活性(XYLase)については、基本培地で前培養したHumicola insolens ATCC26908株を用いた場合は、ほとんど活性が見られなかったが、糸状菌培養用培地で前培養した場合には、酵素活性が著しく高まり、基本培地で前培養した場合と比べて約1000倍の活性を示すことが確認された。 この活性値は、キシラナーゼ分解酵素(キシラナーゼ分解活性:400unit/m)として市販されているノボザイムH−TECU(ノボザイム製)の活性の約10分の1程度であるが、さらなる上昇も可能であり、この点からも本発明の糸状菌培養用培地で前培養したHumicola insolens ATCC26908株を用いることにより、イナワラ等のバイオマスの分解が可能であることが十分に示唆された。従ってこの結果から、ペレットを形成せず、分散した状態で前培養を行い、十分に増殖した糸状菌を用いることが、バイオマスの分解において好ましいものと考えられた。糸状菌培養1)前培養 実施例1と同様に調製した前培養用の糸状菌培養用培地(不溶性窒素成分:J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標))50mlに、糸状菌の胞子を1白金耳植菌し、200rpm、30℃で3日間、震盪培養機(MIR−220R:SANYO製)を用いて震盪培養した。2)本培養 実施例2と同様に調製した本培養用の糸状菌培養用培地(不溶性窒素成分:J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)またはソイプロ(登録商標)(いずれも5w/v%))100mlに、上記1)の前培養で得られた糸状菌培養液をそれぞれ10w/v%となるように加え、200rpm、30℃で10日間、震盪培養機(MIR−220R:SANYO製)を用いて震盪培養した。 本培養終了後(10日目)の培養上清を採取し、採取したサンプルについて実施例2と同様の方法で遊離糖を測定することで、ヘミセルラーゼ等の酵素活性を調べた。 その結果、図6に示したように、本培養においてソイプロ(登録商標)を窒素源とする糸状菌培養用培地を用いた場合(図6、B)は、J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)を窒素源とする糸状菌培養用培地を用いた場合(図6、A)よりもヘミセルラーゼ活性が上昇する事が確認された。 したがって、この結果より、窒素源としてJ−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)を含む培地で糸状菌を前培養した後、窒素源としてソイプロ(登録商標)を含む培地で本培養を行うことにより、糸状菌の酵素産生効率を高めることができた。 また、J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)を窒素源とする糸状菌培養用培地で本培養を行なった場合は、パラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)(pNP−Xase)と比べて、さらにパラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)(pNP−Lase)が高かった。 一方で、ソイプロ(登録商標)を窒素源とする糸状菌培養用培地で本培養を行なった場合はパラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)(pNP−Lase)と比べて、さらにパラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)(pNP−Xase)が高かったことから、糸状菌培養用培地に使用する窒素源の選択により、糸状菌に産生させる酵素の活性を調節できることが示唆された。従って、この結果より、糸状菌培養用培地に使用する窒素源等、糸状菌培養用培地やその成分を選択することにより、目的のバイオマスの種類に応じて、酵素活性の調節が可能となると考えられた。 また、この結果から、本発明の糸状菌培養培地を用い、震盪培養機ではなく、さらに、通気性、撹拌性などが向上するジャーファメンターによってスケールアップ試験を行うことにより、更なる酵素産生の効率化が可能であると予測された。 本発明によって、糸状菌培養用培地を提供することにより、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を効率的に産生できる糸状菌を提供することが可能となる。このような糸状菌を用いることにより、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を提供したり、イナワラ等を原料として、エタノール等を製造したりすること等が可能となる。大豆由来の不溶性窒素成分を含む糸状菌培養用培地。次の(A)または(B)の特徴を有する大豆由来の不溶性窒素成分を含む請求項1に記載の糸状菌培養用培地。(A)水分8%以下、粗たん白質含量47%以上、粗繊維7%以下、粗灰分6.8%以下、窒素分7.52%以上、粒度0.106mm(150メッシュ)パス90%以上、抗原量100U/10mg以下(B)水分12%以下、粗たん白質含量51.125%以上(無水物換算)、粗繊維3〜7%、粗灰分6〜7%、窒素分8.18%以上(無水物換算)、粒度0.355mm以上痕跡、0.25mm(60メッシュ)パス90%以上、0.15mm(100メッシュ)パス50%以上、ウレアーゼ活性度0.3以下糸状菌がAspergillus属、Humicola属またはTrichoderma属に属する菌である請求項1または2に記載の糸状菌培養用培地。糸状菌がHumicola insolensである請求項1〜3のいずれかに記載の糸状菌培養用培地。請求項1〜4のいずれかに記載の糸状菌培養用培地によって、糸状菌を培養する方法。請求項1〜4のいずれかに記載の糸状菌培養用培地によって、糸状菌を培養することにより、糸状菌に酵素を産生させる方法。酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼまたはリグニン分解酵素である請求項6に記載の方法。請求項1〜4のいずれかに記載の糸状菌培養用培地によって、糸状菌を培養することにより、糸状菌に産生させる酵素を調節する方法。酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼまたはリグニン分解酵素である請求項8に記載の方法。請求項5に記載の方法によって培養された糸状菌を用い、バイオマスを分解する方法。バイオマスが草本系バイオマスである請求項10に記載の方法。草本系バイオマスがイナワラ、バガスまたはススキである請求項11に記載の方法。 【課題】セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を効率的に産生できる糸状菌の培養条件の提供。【解決手段】窒素源として大豆由来の不溶性窒素成分を用いた糸状菌培養用培地を提供し、これを用いて糸状菌を培養する。【選択図】なし


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特許公報(B2)_糸状菌培養用培地

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_糸状菌培養用培地
出願番号:2011010086
年次:2015
IPC分類:C12N 1/00,C12N 9/42,C12N 9/58,C12N 9/14


特許情報キャッシュ

春見 隆文 荻原 淳 小山 善幸 松本 和 JP 5825570 特許公報(B2) 20151023 2011010086 20110120 糸状菌培養用培地 学校法人日本大学 899000057 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 春見 隆文 荻原 淳 小山 善幸 松本 和 20151202 C12N 1/00 20060101AFI20151112BHJP C12N 9/42 20060101ALI20151112BHJP C12N 9/58 20060101ALI20151112BHJP C12N 9/14 20060101ALI20151112BHJP JPC12N1/00 FC12N9/42C12N9/58C12N9/14C12N1/00 S C12N 1/−9/ JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN) 特開2010−059069(JP,A) 特開2009−207385(JP,A) JATINDER K. et al.,World Journal of Microbiology & Biotechnology,2006年,Vol.22,P.169-176 9 2012147741 20120809 19 20131211 特許法第30条第1項適用 「JOURNAL OF APPLIED GLYCOSCIENCE 第57巻 講演要旨集(通巻227号)」(平成22年7月20日 日本応用糖質科学会 発行) (出願人による申告)平成22年度 農林水産省委託プロジェクト研究「稲わら等の作物の未利用部分や資源作物、木質バイオマスを効率的にエタノール等に変換する技術の開発」、産業技術力法第19条の適用を受ける特許出願 吉岡 沙織 本発明は、糸状菌培養用培地に関する。さらに詳しくは、大豆由来の不溶性窒素成分を窒素源として含む糸状菌培養用培地に関する。 Aspergillus属、Humicola属、Trichoderma属等の糸状菌は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の糖化酵素を産生する菌として、リグノセルロース系のバイオマスを原料としたエタノールの製造や、コムギわら等からグルコース、セロビオース等の加水分解性生物を得ること等に利用できるとされてきた(例えば、特許文献1、2参照)。 日本ではイナワラが毎年大量に排出されていることから、これを原料として、エタノール等を製造することが望まれている。しかし、イナワラは強固な構造を持つことから、一般に利用されているTrichoderma属由来のセルラーゼのみではなかなか分解されないという問題があった。 そこで、イナワラの分解に有用なセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を効率的に産生できる糸状菌の培養条件が検討されているが、十分な培養方法は開発されておらず、イナワラ高分解酵素生産菌として知られるHumicola属の糸状菌においては、酵素生産性が極めて低いという問題もあった。 本発明者らはこれらの問題に対し、大豆由来の不溶性窒素成分を窒素源とする糸状菌培養用培地を本発明において見出した。 大豆由来の成分を窒素源として用いることは、従来、滅菌された大豆、脱脂大豆、これらを熱処理等したもの、大豆蛋白質等を窒素源とすること等から知られているが(例えば、特許文献4〜7参照)、窒素源として大豆由来の不溶性窒素成分を特に用いることは知られていなかった。特開2010−136702号公報特表2008−523788号公報国際公開第2003/028476号パンフレット特表2009−505653号公報国際公開第98/29558号パンフレット特開平9−121807号公報 本発明は、イナワラ等の分解に有用なセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を効率的に産生できる糸状菌の培養条件の提供を課題とする。さらに、詳しくは、Humicola属の糸状菌がペレット化せず、結果として酵素を効率的に産生できる培養条件の提供を課題とする。 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、窒素源として大豆由来の不溶性窒素成分を用いた糸状菌培養用培地を見出した。この糸状菌培養用培地で糸状菌を培養すると、イナワラ等の分解に有用なセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を効率的に糸状菌に産生させることが可能となる。さらに、Humicola属の糸状菌において、糸状菌がペレット化せず培養が行えることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、次の(1)〜(12)で示される、糸状菌培養用培地、糸状菌を培養する方法等に関する。(1)大豆由来の不溶性窒素成分を含む糸状菌培養用培地。(2)次の(A)または(B)の特徴を有する大豆由来の不溶性窒素成分を含む上記(1)に記載の糸状菌培養用培地。(A)水分8%以下、粗たん白質含量47%以上、粗繊維7%以下、粗灰分6.8%以下、窒素分7.52%以上、粒度0.106mm(150メッシュ)パス90%以上、抗原量100U/10mg以下(B)水分12%以下、粗たん白質含量51.125%以上(無水物換算)、粗繊維3〜7%、粗灰分6〜7%、窒素分8.18%以上(無水物換算)、粒度0.355mm以上痕跡、0.25mm(60メッシュ)パス90%以上、0.15mm(100メッシュ)パス50%以上、ウレアーゼ活性度0.3以下(3)糸状菌がAspergillus属、Humicola属またはTrichoderma属に属する菌である上記(1)または(2)に記載の糸状菌培養用培地。(4)糸状菌がHumicola insolensである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の糸状菌培養用培地。(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の糸状菌培養用培地によって、糸状菌を培養する方法。(6)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の糸状菌培養用培地によって、糸状菌を培養することにより、糸状菌に酵素を産生させる方法。(7)酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼまたはリグニン分解酵素である上記(6)に記載の方法。(8)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の糸状菌培養用培地によって、糸状菌を培養することにより、糸状菌に産生させる酵素を調節する方法。(9)酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼまたはリグニン分解酵素である上記(8)に記載の方法。(10)上記(5)に記載の方法によって培養された糸状菌を用い、バイオマスを分解する方法。(11)バイオマスが草本系バイオマスである上記(10)に記載の方法。(12)草本系バイオマスがイナワラ、バガスまたはススキである上記(11)に記載の方法。 本発明によって提供される糸状菌培養用培地を用いることにより、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を効率的に糸状菌に産生させることが可能となる。また、本発明によって培養した糸状菌を用いることにより、イナワラ等のバイオマスを原料として、エタノール等を製造することが可能となる。前培養における糸状菌の状態を示した図である(実施例2)。前培養における糸状菌の状態を示した図である(実施例2)。本培養における酵素活性の経時的な変化を示した図である(実施例2)。培養8日目の培地の様子を観察した図ある(実施例2)。前培養の違いによる本培養における酵素活性の違いを示した図である(実施例2)。窒素源の違いによる本培養における酵素活性の違いを示した図である(実施例3)。 本発明の「糸状菌培養用培地」とは、Aspergillus属、Humicola属またはTrichoderma属等に属する糸状菌の培養に適する培地のことをいう。 ここで「糸状菌の培養に適する」とは、糸状菌の増殖や、糸状菌に酵素を産生させるための培地として有効に利用できることを指す。 本発明の「糸状菌培養用培地」は、大豆由来の不溶性窒素成分を含み、糸状菌の培養に適するものであれば、糸状菌の培養に有用な公知の他の成分等を含んでいてもよく、固体培地であっても液体培地であっても良い。特に液体培地においては、糸状菌がペレット化せず、分散した状態で培養できる培地であることが特に好ましい。 このような糸状菌がペレット化せず、分散した状態で培養できる液体培地としては、窒素源として次の(A)のような特徴を有する不溶性窒素成分を含む本発明の「糸状菌培養用培地」等が挙げられる。(A)水分8%以下、粗たん白質含量47%以上、粗繊維7%以下、粗灰分6.8%以下、窒素分7.52%以上、粒度0.106mm(150メッシュ)パス90%以上、抗原量100U/10mg以下である。 また、上記(A)のような特徴に加え、さらに、水溶性窒素指数(NSI)が概ね5以上、20未満、ウレアーゼ活性度0.02以下、トリプシンインヒビター活性1.5U/mg以下である、(A’)のような特徴を有する不溶性窒素成分を含むものであっても良い。 この(A)または(A’)のような特徴を有する不溶性窒素成分として、例えば、市販のJ−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)(J−オイルミルズ製)等が挙げられる。また、本発明の「糸状菌培養用培地」は、炭素源としてバイオマスをさらに含むこともできる。 本発明の「糸状菌培養用培地」に含まれる「大豆由来の不溶性窒素成分」とは、大豆由来のタンパク質等窒素源になり得るものであって水に不溶なものを含むもののことをいい、糸状菌の増殖や、糸状菌に酵素を産生させるために有用な「大豆由来の不溶性窒素成分」であれば、従来知られているいずれのものも用いることができる。 このような「大豆由来の不溶性窒素成分」として、例えば、上記(A)または(A’)のような特徴を有するものが挙げられる。このような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」は、エクストルーダーで脱脂大豆を処理し、膨化、変性させた後、乾燥し、粉砕することで調製することができる。 エクストルーダーによる脱脂大豆の処理は、上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」が得られる条件であれば、いずれの処理条件であっても良い。例えば、エクストルーダーKEI−87(幸和工業株式会社製)を用いる場合には、バレル温度160〜190℃、圧力30〜50kg/cm2、回転数280rpm、スクリュー配置に於いてニーディングディスクを6個含むスクリューを使用し、原料供給量530〜600kg/時間、水供給量80〜130リットル/時間、ダイ2.5mm×226穴の処理条件等が挙げられる。 また、二軸型エクストルーダーKE145−25(幸和工業株式会社製)を用いる場合には、バレル温度180℃、圧力45kg/cm2、回転数280rpm、原料供給量77kg/hr、ダイ2mm×10穴の処理条件やバレル温度140℃、圧力54kg/cm2、回転数280rpm、原料供給量77kg/hr、ダイ2mm×10穴の処理条件等が挙げられる また、「大豆由来の不溶性窒素成分」として、次の(B)のような特徴を有するものも用いることができる。(B)水分12%以下、粗たん白質含量51.125%以上(無水物換算)、粗繊維3〜7%、粗灰分6〜7%、窒素分8.18%以上(無水物換算)、粒度0.355mm以上痕跡、0.25mm(60メッシュ)パス90%以上、0.15mm(100メッシュ)パス50%以上、ウレアーゼ活性度0.3以下である。 また、上記(B)のような特徴に加え、さらに、抗原量5000〜2万U/10mgであり、水溶性窒素指数(NSI)が概ね15以上35未満である、(B’)のような特徴を有する不溶性窒素成分を含むものであっても良い。 この(B)または(B’)のような特徴を有する不溶性窒素成分として、例えば、市販のソイプロ(J−オイルミルズ製(登録商標))等が挙げられる。このような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」は、脱脂大豆を乾燥し、粉砕することで調製することができる。 この(B)または(B’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を用いた糸状菌培養用培地では、上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を用いた糸状菌培養用培地と比べてやや糸状菌がペレット化しやすく、必ずしも糸状菌が完全に分散した状態で培養することはできないが、糸状菌に酵素を産生させる場合等において有用である。 本発明の培地を用いて培養する糸状菌としては、従来知られているいずれの糸状菌であっても良いが、例えば、Aspergillus属、Humicola属またはTrichoderma属等に属する糸状菌や難培養性の糸状菌等が挙げられる。このような糸状菌として、Humicola insolens等が挙げられる。 本発明の「糸状菌を培養する方法」とは、本発明の大豆由来の不溶性窒素成分を含む糸状菌培養用培地を用いて、糸状菌を増殖させ、また、糸状菌に酵素を産生させる培養方法のことをいう。 本発明の「糸状菌を培養する方法」では、本発明の糸状菌培養用培地を培地として用いれば、従来、糸状菌の培養方法として知られているいずれの方法を用いても良い。例えば、液体培地を用いて糸状菌を培養する場合には、PW−1(サクラ精機製)等の市販のジャーファメンターを用いて培養してもよく、MIR−220R(SANYO製)等の市販の震盪培養機を用いて震盪培養してもよい。震盪培養することにより、糸状菌の増殖や、糸状菌による酵素の産生を効率的に行うことができるため好ましい。 また、本発明の「糸状菌を培養する方法」において、糸状菌の生育を促し、生育ステージを均一にするために、糸状菌の胞子を本発明の糸状菌培養用培地に植菌して培養を行うことが好ましい。 本発明の「糸状菌に酵素を産生させる方法」とは、本発明の「糸状菌を培養する方法」において、さらに、糸状菌による酵素の産生を促進できる培養方法のことをいう。 本発明の「糸状菌に酵素を産生させる方法」では、本発明の糸状菌培養用培地を培地として用いれば、糸状菌に酵素を産生させるために有効な方法として知られているいずれの方法を用いても良い。例えば、前培養によって糸状菌を増殖させた後、増殖した糸状菌を効率的に酵素が産生できる培地に植菌して本培養を行うこと等が挙げられる。 ここで、前培養では、糸状菌が効率的に増殖できる「糸状菌培養用培地」を用いることが好ましく、このような「糸状菌培養用培地」として、糸状菌がペレット化せず、分散して培養できる、上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を用いることが好ましい。また、やや糸状菌がペレット化しやすく、必ずしも糸状菌が完全に分散した状態で培養を行うことはできないが、上記(B)または(B’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を用いることもできる。 本培養では、糸状菌が効率的に酵素を産生できる「糸状菌培養用培地」を用いることが好ましい。このような「糸状菌培養用培地」として、上記(A)あるいは(A’)または(B)あるいは(B’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を用いることができる。 特に上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を用いて糸状菌がペレット化せず、分散した状態で前培養を行い、糸状菌を効率よく増殖させた後、上記(B)または(B’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地でこの糸状菌を本培養することにより、糸状菌に特に効率的に酵素を産生させることができる。 本発明の「糸状菌に酵素を産生させる方法」により、糸状菌によって産生される「酵素」としては、キシラナーゼ活性、βキシロシダーゼ活性等を有するヘミセルラーゼ、セロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、β−グルコシダーゼ活性等を有するセルラーゼ等の糖化酵素やプロテアーゼやリグニン分解酵素等が挙げられる。 本発明の実施例においては、本発明の糸状菌培養用培地を用いて糸状菌を培養することにより、カバ由来キシラン分解活性(主にキシラナーゼ活性)およびパラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)を測定することにより、これらの酵素活性を有するヘミセルラーゼが産生され、パラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)およびパラ−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド分解活性(主にβ−グルコシダーゼ活性)を測定することにより、セロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、β−グルコシダーゼ活性等を有するセルラーゼが産生されていることを確認している。 本発明の「糸状菌に産生させる酵素を調節する方法」とは、本発明の「糸状菌を培養する方法」において、糸状菌の培養に用いる糸状菌培養用培地を選択することによって、糸状菌に産生させる酵素の種類や組み合わせ、量等を調節することをいう。 この糸状菌培養用培地は、その培地に含まれる成分によって選択することができ、特に、大豆由来の不溶性窒素成分によって選択することが好ましい。例えば、糸状菌培養用培地として、上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を選択し、Humicola insolens等の糸状菌を培養する場合には、パラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)(pNP−Xase)等を有するヘミセルラーゼを産生させることができ、さらにパラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)(pNP−Lase)等を有するセルラーゼを多く産生させることができる。 また、糸状菌培養用培地として、上記(B)または(B’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を選択し、Humicola insolens等の糸状菌を培養する場合には、パラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)(pNP−Lase)等を有するセルラーゼを産生させることができ、さらにパラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)(pNP−Xase)等を有するヘミセルラーゼを多く産生させることができる。 本発明の「バイオマスを分解する方法」とは、上記のような糸状菌に産生させたセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼやリグニン分解酵素等によって、バイオマスを糖化し、分解することをいう。ここで、分解対象となるバイオマスとしては、バガス、ススキまたはイナワラ等の草本系バイオマスや、木質系バイオマス等が挙げられる。これらを炭素源として本発明の「糸状菌培養用培地」に加えることにより、糸状菌を培養しながら、これらのバイオマスを分解することができる。 以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。糸状菌培養用培地 糸状菌培養用培地として、グルコース5w/v%と大豆由来の不溶性窒素成分を0.3w/v%含む培地を調製した。この大豆由来の不溶性窒素成分は、以下のように調製したものをそれぞれ用いた。不溶性窒素成分1)J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標) 脱脂大豆(水溶性窒素指数15〜35程度)(J−オイルミルズ製)を、エクストルーダーKEI−87(幸和工業株式会社製)にて、バレル温度190℃、圧力54〜69kg/cm2、回転数280rpm、スクリュー配置に於いてニーディングディスクを6個含むスクリューを使用し、原料供給量770kg/時間、水供給量123リットル/時間、ダイ2.5mm×226穴の条件下で処理し、大気中に押し出して膨化、変性させた。この処理物を3〜5mm程度に切断し、80℃の温風で充分に乾燥し、これを粉砕機ACM−100(ホソカワミクロン製)にて粉砕したものを、J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)として調製した。 このように調製された不溶性窒素成分は、水分8%以下、粗たん白質含量47%以上、粗繊維7%以下、粗灰分6.8%以下、窒素分7.52%以上、粒度0.106mm(150メッシュ)パス90%以上、抗原量100U/10mg以下であるという特徴(A)を有する。2)ソイプロ(登録商標) 脱脂大豆(水溶性窒素指数15〜35程度)(J−オイルミルズ製)を、粉砕機ACM−100(ホソカワミクロン製)でソイプロ(登録商標)として調製した。このように調製された不溶性窒素成分は、水分12%以下、粗たん白質含量51.125%以上(無水物換算)、粗繊維3〜7%、粗灰分6〜7%、窒素分8.18%以上(無水物換算)、粒度0.355mm以上痕跡、0.25mm(60メッシュ)パス90%以上、0.15mm(100メッシュ)パス50%以上、ウレアーゼ活性度0.3以下であるという特徴(B)を有する。糸状菌培養用培地の調製方法 蒸留水100mlを500ml三角フラスコに入れ、グルコース5w/v%、不溶性窒素成分0.3w/v%を添加しよく溶かした。その後、オートクレーブ(ES−315:TOMY製)で121℃、20分高温高圧滅菌を行い、糸状菌培養用培地とした。糸状菌の培養 実施例1で調製した糸状菌培養用培地を用い、糸状菌の培養を行った。比較として、基本培地を用いた培養も行った。1.糸状菌 Humicola insolens ATCC26908株(ATCC(American Type Culture Collection)の菌株保存機関より住商ファーマインターナショナル社を通じて入手した)を用いた。2.前培養用培地1)糸状菌培養用培地 実施例1で調製した糸状菌培養用培地を用いた。2)基本培地 グルコース5w/v%、Yeast extract2w/v%、Polypepton0.1w/v%、硫酸マグネシウム0.03w/v%、塩化カルシウム0.03w/v%を含む培地を基本培地として調製した。 即ち、蒸留水50mlを500ml三角フラスコに入れ、グルコース(関東化学製)5w/v%、Yeast extract(BD製)2w/v%、Polypepton(日本製薬製)0.1w/v%、を添加しよく溶かした。その後、オートクレーブ(ES−315:TOMY製)で121℃、20分高温高圧滅菌を行った(1)。 次に10w/v%硫酸マグネシウム水溶液(和光純薬製)、10w/v%塩化カルシウム水溶液(和光純薬製)を調製し、オートクレーブ(ES−315:TOMY製)で上記と同様に滅菌した後、0.03w/v%になるように上記(1)に無菌的に添加し、基本培地とした。3)比較用培地 グルコース5w/v%、比較用窒素成分0.3w/v%、硫酸マグネシウム0.03w/v%、塩化カルシウム0.03w/v%を含む培地を比較用培地として調製した。 比較用窒素成分は、Polypepton−Y(日本製薬製)、PhytonePepton(BBL製)、ゼラチンペプトン(nacalai tesque製)、乾燥おから(さとの雪食品製)、小麦ふすま(ナチュラルキッチン製)、米ぬか(ノイマン製)、魚粉(益川商店製)、菜種ミール(J−オイルミルズ製)、コーングルテンミール(J−オイルミルズ製)、脱脂大豆(J−オイルミルズ製)またはペプトン(極東製薬工業製)をそれぞれ用い、上記2)の基本培地と同様に比較用培地を調製した。3.本培養用培地 炭素源としてコシヒカリのイナワラを一週間程度天日干しして乾燥し実験用カッティングミルP−15(FRITSCH製)にて粉砕した後、80メッシュで篩別したものを5w/v%含み、窒素源としてJ−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)として調製した不溶性窒素成分を0.3w/v%含むものをpH6.0としたものを本培養用の糸状菌培養用培地として調製した。 即ち、蒸留水100mlを500ml三角フラスコに入れ、イナワラ5w/v%、不溶性窒素成分0.3w/v%を添加しよく溶かした。その後、オートクレーブ(ES−315:TOMY製)で121℃、20分高温高圧滅菌を行い、本培養用の糸状菌培養用培地とした。4.糸状菌培養1)前培養 上記の前培養用培地(糸状菌培養用培地、基本培地または比較用培地)をそれぞれ50mLいれた500mL三角フラスコに、糸状菌を1白金耳植菌し、200rpm、30℃で3日間、震盪培養機(MIR−220R:SANYO製)を用いて震盪培養した。 基本培地で前培養した場合、図1、A.に示したように、菌体は、1cmほどのぺレツトを形成したが、本願発明の糸状菌培養用培地で前培養した場合は、図1、B.に示したように、ペレットを形成せず、菌体が分散した状態で前培養できることが確認できた。 比較用培地で前培養した場合は、図2に一例を示したが、いずれの比較用窒素成分を使用した場合も糸状菌がペレットを形成してしまい、十分に増殖が行えないことが確認された。2)本培養 上記糸状菌培養用培地で前培養した糸状菌を10w/v%となるように、上記の本培養用の糸状菌培養用培地1Lに加え、2Lジャーファメンター(PW−1:サクラ精機製)を用いて、通気量はlvvm、回転数は溶存酸素量に合わせ200rpm〜500rpmで制御し、10日間培養を行った。 24時間おきに培養上清を10mLずつ採取し、採取したサンプルについてPHを6.0に調整し、次のような手法により、還元糖および遊離糖を測定することで、ヘミセルラーゼ等の酵素活性を調べた。還元糖の測定(DNS) 表1の組成で混合した混合液のうち100μLに、DNS試薬300μLを加え、50℃で60分間反応させた後、100℃で5分間おくことにより反応を停止した。この反応溶液50μLを1000μLの滅菌水で希釈した後、吸光度(500nm)を測定した。 DNS試薬の調製および還元糖の測定は、以下の文献を参考にして、次のように行った。文献:Use of dinitrosalicylic acid reagent for determination of reducing sugar;G.L. Miller;Anal. Chem., 31, 426−428 (1959)使用薬品 水酸化ナトリウム(和光純薬工業製)、3,5ジニトロサリチル酸(DNS)(東京化成工業製)、ロッシェル塩(和光純薬工業製)、結晶フェノール(和光純薬工業製 核酸抽出用)、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業製)、ろ紙(Whatman(登録商標) No,1)、リン酸二水素ナトリウム(和光純薬工業製)、リン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業製)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)(ナカライテスク製)Xylan Birchwood(SIGMA製)測定手法1)DNS試薬溶液の調製 4.5%の水酸化ナトリウム水溶液60mLと1%DNS水溶液176mLを混合し45gのロッシェル塩を加え完全に溶解させた。(A液) 10%水酸化ナトリウム水溶液4.4mLに結晶フェノール2gを加え完全に溶解させ、純水で20mLにフィルアップした。この溶液13.8mLに炭酸水素ナトリウムを1.38g完全に溶かした。(B液) B液にA液を全量加えよく攪拌させ、さらにロッシェル塩を飽和するまで溶かしこみ遮光して室温で2日以上安定させた。この操作でできた溶液をDNS試薬溶液とした。2)還元糖の測定 1Mリン酸二水素ナトリウム水溶液39mLと、1Mリン酸水素二ナトリウム水溶液61mLを混合し、pHを6に調整した物をリン酸バッファーとした。 氷上にてリン酸バッファー25μL、純水975μL、1%CMCまたは1%Xylan Birchwoodを125μL、培養上清125μLを入れ、激しく攪拌した。 以下の操作は三連で行った。 混合した溶液のうち100μLを予め反応の0時間として採取し、氷上に保管しておいた。残った溶液を150μLずつ採取した。50℃の湯を入れたウォーターバスに浮かべ1時間反応させた。反応後は、直ちに氷上に移し5分間急冷した。 溶液は次に氷上で100μLずつ分注し、0時間として保管しておいたサンプルとともに1)で調製したDNS試薬を300μLずつ加え、よく攪拌した。その後5分間煮沸しその後直ちに冷水で5分間冷却した。 最後にそこから50μL採取し、1000μLの純水で希釈した後、分光光度計(BECKMAN COULTER DU730)でOD500nmの波長の吸光度を測定した。遊離糖の測定(pNP) 表2の組成で混合し、リン酸バッファーでpH6.0に調製したものを50℃で10分間反応させた後、1M炭酸ナトリウムを100μL加えることで反応を停止した。この反応溶液の吸光度(415nm)を測定した。 その結果、図3に示したように、培養日数が本培養開始から3日目以降では、カバ由来キシラン分解活性(主にキシラナーゼ活性)(図3、XYLase)、パラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)(図3、pNP−Xase)、パラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)(図3、pNP−Lase)が上昇することが確認された。 一方、パラ−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド分解活性(主にβ−グルコシダーゼ活性)(図3、pNP−Gase)、カルボキシメチルセルロース分解活性(主にエンドグルカナーゼ活性)(図3、CMCase)は本培養の開始から7日目以降の後期になって始めて活性の上昇が確認され、カルボキシメチルセルロース分解活性に関しては、培養期間を通してほとんど活性がみられなかった。 従って、この結果より、本発明の糸状菌培養用培地を用いて糸状菌を培養することにより、糸状菌にキシラナーゼ活性、βキシロシダーゼ活性等を有するヘミセルラーゼおよびセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、β−グルコシダーゼ活性等を有するセルラーゼ等を産生させることができることが確認できた。 また、本培養の開始から培養日数が8日目の培地を顕微鏡で観察したところ、図4の写真(左)に示したように、Humicola insolens ATCC26908株がイナワラ粉末に対し菌糸を伸ばし分解しようとしていることが観察された。 また、図4の写真(右)においてイナワラの細胞壁がわからないほど分解されていることも観察された。従って、これらより、Humicola insolens ATCC26908株によってイナワラ粉末を資化できることが確認された。 さらに、同様に本発明の糸状菌培養用培地で前培養したHumicola insolens ATCC26908株を用いた本培養における培養上清と、基本培地で前培養したHumicola insolens ATCC26908株を用いた本培養における培養上清との活性を比較した。 その結果、図5に示したように、CMCアーゼ活性(CMCase)はほとんど差が見られなかった。キシラナーゼ活性(XYLase)については、基本培地で前培養したHumicola insolens ATCC26908株を用いた場合は、ほとんど活性が見られなかったが、糸状菌培養用培地で前培養した場合には、酵素活性が著しく高まり、基本培地で前培養した場合と比べて約1000倍の活性を示すことが確認された。 この活性値は、キシラナーゼ分解酵素(キシラナーゼ分解活性:400unit/m)として市販されているノボザイムH−TECU(ノボザイム製)の活性の約10分の1程度であるが、さらなる上昇も可能であり、この点からも本発明の糸状菌培養用培地で前培養したHumicola insolens ATCC26908株を用いることにより、イナワラ等のバイオマスの分解が可能であることが十分に示唆された。従ってこの結果から、ペレットを形成せず、分散した状態で前培養を行い、十分に増殖した糸状菌を用いることが、バイオマスの分解において好ましいものと考えられた。糸状菌培養1)前培養 実施例1と同様に調製した前培養用の糸状菌培養用培地(不溶性窒素成分:J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標))50mlに、糸状菌の胞子を1白金耳植菌し、200rpm、30℃で3日間、震盪培養機(MIR−220R:SANYO製)を用いて震盪培養した。2)本培養 実施例2と同様に調製した本培養用の糸状菌培養用培地(不溶性窒素成分:J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)またはソイプロ(登録商標)(いずれも5w/v%))100mlに、上記1)の前培養で得られた糸状菌培養液をそれぞれ10w/v%となるように加え、200rpm、30℃で10日間、震盪培養機(MIR−220R:SANYO製)を用いて震盪培養した。 本培養終了後(10日目)の培養上清を採取し、採取したサンプルについて実施例2と同様の方法で遊離糖を測定することで、ヘミセルラーゼ等の酵素活性を調べた。 その結果、図6に示したように、本培養においてソイプロ(登録商標)を窒素源とする糸状菌培養用培地を用いた場合(図6、B)は、J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)を窒素源とする糸状菌培養用培地を用いた場合(図6、A)よりもヘミセルラーゼ活性が上昇する事が確認された。 したがって、この結果より、窒素源としてJ−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)を含む培地で糸状菌を前培養した後、窒素源としてソイプロ(登録商標)を含む培地で本培養を行うことにより、糸状菌の酵素産生効率を高めることができた。 また、J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)を窒素源とする糸状菌培養用培地で本培養を行なった場合は、パラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)(pNP−Xase)と比べて、さらにパラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)(pNP−Lase)が高かった。 一方で、ソイプロ(登録商標)を窒素源とする糸状菌培養用培地で本培養を行なった場合はパラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)(pNP−Lase)と比べて、さらにパラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)(pNP−Xase)が高かったことから、糸状菌培養用培地に使用する窒素源の選択により、糸状菌に産生させる酵素の活性を調節できることが示唆された。従って、この結果より、糸状菌培養用培地に使用する窒素源等、糸状菌培養用培地やその成分を選択することにより、目的のバイオマスの種類に応じて、酵素活性の調節が可能となると考えられた。 また、この結果から、本発明の糸状菌培養培地を用い、震盪培養機ではなく、さらに、通気性、撹拌性などが向上するジャーファメンターによってスケールアップ試験を行うことにより、更なる酵素産生の効率化が可能であると予測された。 本発明によって、糸状菌培養用培地を提供することにより、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を効率的に産生できる糸状菌を提供することが可能となる。このような糸状菌を用いることにより、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素を提供したり、イナワラ等を原料として、エタノール等を製造したりすること等が可能となる。次の(A)または(B)の特徴を有する大豆由来の不溶性窒素成分を含むフーミコラ インソレンス(Humicola insolens)培養用培地。(A)水分8%以下、粗たん白質含量47%以上、粗繊維7%以下、粗灰分6.8%以下、窒素分7.52%以上、粒度0.106mm(150メッシュ)パス90%以上、抗原量100U/10mg以下(B)水分12%以下、粗たん白質含量51.125%以上(無水物換算)、粗繊維3〜7%、粗灰分6〜7%、窒素分8.18%以上(無水物換算)、粒度0.355mm以上痕跡、0.25mmパス(60メッシュ)90%以上、0.15mm(100メッシュ)パス50%以上、ウレアーゼ活性度0.3以下請求項1に記載のフーミコラ インソレンス(Humicola insolens)培養用培地によって、フーミコラ インソレンス(Humicola insolens)を培養する方法。請求項1に記載のフーミコラ インソレンス(Humicola insolens)培養用培地によって、フーミコラ インソレンス(Humicola insolens)を培養することにより、フーミコラ インソレンス(Humicola insolens)に酵素を産生させる方法。酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼまたはリグニン分解酵素である請求項3に記載の方法。請求項1に記載のフーミコラ インソレンス(Humicola insolens)培養用培地によって、フーミコラ インソレンス(Humicola insolens)を培養することにより、フーミコラ インソレンス(Humicola insolens)に産生させる酵素を調節する方法。酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼまたはリグニン分解酵素である請求項5に記載の方法。請求項2に記載の方法によって培養されたフーミコラ インソレンス(Humicola insolens)を用い、バイオマスを分解する方法。バイオマスが草本系バイオマスである請求項7に記載の方法。草本系バイオマスがイナワラ、バガスまたはススキである請求項8に記載の方法。


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