生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_リドカイン含有ゼリー剤
出願番号:2011006172
年次:2011
IPC分類:A61K 47/04,A61K 31/167,A61K 9/06,A61K 47/12,A61P 25/02,A61P 1/02,A61P 25/04


特許情報キャッシュ

石橋 賢樹 ▲浜▼本 英利 松村 周永子 天野 江美 遠藤 充 JP 2011074090 公開特許公報(A) 20110414 2011006172 20110114 リドカイン含有ゼリー剤 株式会社 メドレックス 302005628 石橋 賢樹 ▲浜▼本 英利 松村 周永子 天野 江美 遠藤 充 A61K 47/04 20060101AFI20110318BHJP A61K 31/167 20060101ALI20110318BHJP A61K 9/06 20060101ALI20110318BHJP A61K 47/12 20060101ALI20110318BHJP A61P 25/02 20060101ALI20110318BHJP A61P 1/02 20060101ALI20110318BHJP A61P 25/04 20060101ALI20110318BHJP JPA61K47/04A61K31/167A61K9/06A61K47/12A61P25/02A61P1/02A61P25/04 6 2004349225 20041202 OL 7 4C076 4C206 4C076AA09 4C076BB01 4C076CC01 4C076DD26 4C076DD38 4C076DD43 4C076DD57 4C076DD61 4C076DD70 4C076EE06 4C076EE23 4C076EE30 4C076FF05 4C076FF52 4C076FF57 4C206AA01 4C206AA02 4C206GA31 4C206MA48 4C206MA72 4C206NA09 4C206ZA04 4C206ZA08 4C206ZA21 4C206ZA67 本発明は、リドカインを含有するゼリー剤に関するものである。 局所麻酔薬物が歯科用として口中に使用されていることは良く知られている。また、局所麻酔剤の中でもリドカインなどは胃カメラの使用時の咽喉部麻酔に用いられたり、頻脈に対する薬としても服用されている。 一方、近年、院内処方で局所麻酔薬物であるリドカインをカラギーナンによりゼリー化した製剤が癌患者の口内炎の疼痛緩和に用いられていることが知られている。 癌患者においては、抗癌剤の開発により治療あるいは延命が期待されるようになりつつあるが、一方で化学療法による抗癌剤の副作用により精神的・肉体的苦痛を感じていることが多い。副作用による精神的・肉体的苦痛を和らげることは癌患者のQOLを高めることのみならず、医者・介護者等の治療関係者の負担を減らすことも可能である。 このような抗癌剤の副作用としては、難治性の重篤な口内炎が知られている。化学療法初期から口内乾燥、味覚異常、疼痛などが出現し、栄養状態の悪化、化学療法の中断等の問題が発生している。そのような口内炎の痛み対策として、局所麻酔薬物は有効である。 しかしながら、局所麻酔薬物はリドカイン、パラアミノ安息香酸エチルに代表されるように苦みの強い物質であり、経口、口中用製剤として服用するには強い不快感を有しているため問題となっている。苦味の不快感のないほど局所麻酔薬物の製剤濃度が低濃度であると、局所麻酔薬物としての効果がほとんど見られない。そのため経口、口中用として用いる場合は2%またはそれ以上の高濃度で用いられており、多くの人は不快な苦味を我慢しながら服用している。 本発明者らはこのような不快な苦味の対策として、弱酸を局所麻酔薬物に対し一定以上の割合で加えることにより、完全に苦味がマスクできる知見を持っている。また、局所麻酔薬物を含有する製剤の剤形としては液剤、軟膏剤、ゼリー剤、グミ剤、ドライシロップ、散剤、細粒剤等の経口製剤を取ることができるが、特に、癌化学療法により発生した口内炎の疼痛緩和として用いる場合には、ゼリー剤は取り扱いの容易さ、口中の感触の良さもさることながら、ゼリー剤を患部局所にあてることにより局所的な局所麻酔薬物の投与を行うことができ、口中の麻酔時に起こる舌を噛む副作用、強い違和感などが軽減される上、食事を味わうことも可能となり最適である。 ところで、経口、口中用として局所麻酔薬物を用いる際には、一般に2%またはそれ以上の高濃度で用いられている。その為、局所麻酔薬物を高濃度で用いる場合には、その苦味をマスクするための弱酸も高濃度で用いることとなる。しかし、ゼリー剤において高濃度で弱酸、特にクエン酸等の有機酸を配合した場合には、長期保存においてゼリー剤からの離水が発生する。ゼリー剤において離水が発生すると服用中に離水した液をこぼしたり、離水液のためにゼリー剤としての長所である局所へ局所麻酔薬物の投与に問題が生じたり、離水のためにゲルがしまって堅くなり薬剤の放出性が弱くなったり服用しづらかったり多くの問題点を生じる。 本発明の解決課題は、局所麻酔薬物含有のゼリー剤において問題となる苦みなどの不快感を克服しつつ前述のゼリー剤からの離水の問題を解決した製剤の提供にある。 本発明者らは鋭意検討を行った結果、局所麻酔薬物の苦味を克服する為の弱酸としてリン酸を主に用いることにより、ゼリー剤からの離水が改善されることを見出した。このようにして、本発明を完成した。 即ち、本発明の局所麻酔薬物含有のゼリー剤はリン酸またはその薬学上許容される塩またはこれらの混合物を配合することを特徴とする。 上記、局所麻酔薬物含有のゼリー剤は配合される局所麻酔薬物がリドカインまたはその薬学上許容される塩またはその混合物であることを特徴とする。 上記局所麻酔薬物含有のゼリー剤は、用いられる局所麻酔薬物を1%以上含有することを特徴とする。 本発明のリドカイン含有ゼリー剤は、弱酸としてリン酸を配合することにより苦味を改善し、問題点であるゼリー剤からの離水を有意に軽減している。特に、癌化学療法の副作用として発生する口内炎の疼痛緩和に対しては、ゼリー剤が最適な剤形であり、待ち望まれている。その為、このようなゼリー剤開発時の問題点を克服した本発明は、患者のQOLの向上に大きく貢献できる極めて優れたものである。 本発明に係る局所麻酔薬物としては特に限定はしないが、例えばリドカイン、パラアミノ安息香酸エチル、オキシブプロカイン、テトラカイン、プロカイン、パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル等またはこれらの薬学上許容される塩が挙げられ、これらの混合物であってもよい。特に好ましくは、リドカインが挙げられる。 本発明の局所麻酔薬物配合のゼリー剤はリン酸またはその薬学上許容される塩またはその混合物を配合することにより特に好ましい効果が得られる。リン酸またはその薬学上許容される塩としては特に限定しないが例えばリン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物等が挙げられる。特にリン酸、リン酸水素ナトリウムが好ましい。 また、局所麻酔薬物配合のゼリー剤は本発明のリン酸以外の弱酸も少量であれば配合することが可能である。 配合可能な無機の弱酸としては例えば炭酸またはその塩等が挙げられる。 配合可能な有機酸としては、例えばリンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、グルクロン酸またはその塩が挙げられる。また、無機酸、有機酸を問わず、これらの混合物を配合しても良い。好ましくは、リン酸、リン酸水素ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウムの配合、特に好ましくは、リン酸、リン酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。 本発明の局所麻酔薬物配合のゼリー剤はゲル化剤を使用することによりゲル状のゼリー剤を形成することができる。ゲル化剤としては薬学上許容されるものであれば限定はしないが、例えばアルギン酸ナトリウム、カンテン、カンテン末、ゼラチン、ペクチン、キサンタンガム、カロブビーンガム、カラギーナン、トラガント、トラガント末、グァーガム、プルラン、タマリンド種子ガム、カードラン、ジェランガム、グルコマンナン等が挙げられ、特にカラギーナン、カンテン末、キサンタンガム、カロブビーンガムが好ましい。 本発明の製剤には甘味料を添加することができる。甘味料としては、例えばアスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア、ソーマチン、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、グリチルリチン酸二カリウム等が挙げられ、これらの混合物であってもよい。好ましい甘味料としては、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビアが挙げられる。 本発明の製剤においては、薬学上許容される無毒性かつ不活性な添加剤を添加することもできる。これらの添加剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、白糖、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、タルク、カオリン、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロース等の賦形剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の滑沢剤、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低置換度ヒドロキシメチルセルロース等の崩壊剤、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、メチルセルロース、アラビアゴム末、ポリビニルアルコール等の結合剤、その他増粘剤、着色剤、矯味剤、吸着剤、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、帯電防止剤、pH調整剤等が挙げられる。 また、本発明の局所麻酔薬物配合のゼリー剤は凍らせてからアイスボールとして使用することができ、口内炎等の疼痛緩和に有効に使用することが可能である。 以下に、実施例及び実験例を挙げて、更に具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、本実施例および比較例における配合量の値は、全て質量%である。(試験例1) 表1の配合比に従い、局所麻酔薬物として塩酸リドカインを含有するゼリー剤を作成した。すなわち、表1に示す原料を精製水に分散または溶解させた後、加熱溶解した。室温に冷却し局所麻酔薬物含有ゼリー剤を作成した。 表1に従い作成した製剤例1〜3を用いて、ゼリー剤からの離水の有無を確認した。製剤例1〜3のゼリー剤をそれぞれ内面をポリエチレンコーティングしたアルミニウム容器に充填し、室温で6ヶ月間保存した。保存後、ゼリー剤からの離水の有無を観察した。その結果を表2に示す。 また、製剤例1〜3それぞれの苦味の有無を確認した。苦味は、健常者による官能試験により確認した。製剤例1〜3それぞれ約1gを口に含ませた時の苦味の不快感を判定した。苦味の有無を表3に示す。また、同時に製剤例1〜3のクエン酸イオン濃度、リン酸イオン濃度を表3に示す。 表2および表3の結果より、製剤例3のように高濃度のクエン酸イオンを含有するゼリー剤では離水が発生するが苦味は改善され、製剤例2のようにクエン酸イオンの濃度を低くすると、離水は抑制されるが、局所麻酔薬物のもつ苦味を改善することができないことが示された。 ところが、製剤例1の結果に示すように、クエン酸イオン濃度を低く抑えた場合でもリン酸イオンを加えることにより、局所麻酔薬物の苦味を抑えることができる。この場合は、離水も発生しないことが示された。(製剤例4)塩酸リドカイン含有ゼリー剤の調製 塩酸リドカイン2.0、クエン酸ナトリウム0.9、リン酸0.5、リン酸水素ナトリウム12水和物1.78、サッカリンナトリウム0.5、アズレンスルホン酸ナトリウム0.008、グリチルリチン酸二カリウム0.5、ポリビニルアルコール0.3、ポリエチレングリコール5.1、グリセリン13.3、濃グリセリン4.2、プロピレングリコール4.6、カラギーナン0.7、キサンタンガム0.3、カンテン末0.17、カロブビーンガム0.05、防腐剤適量を全量100になるように調整した精製水に溶解または懸濁し、加熱溶解後室温に冷却し2%塩酸リドカインゼリー剤を調製した。 癌化学療法の副作用として発生する口内炎の疼痛緩和は患者のQOL向上のためにも重要な課題であり、リドカインが有効である。リドカインを含有する製剤の剤形としては、ゼリー剤が最適であるが、リドカインが持つ耐え難い苦味を克服するために配合する弱酸によっては、ゼリー剤から離水が起こり、服用時に問題が発生する。本発明を利用することにより、離水がなく、苦味の克服されたリドカイン含有ゼリー剤の提供を可能とするものである。 リン酸またはそのナトリウム塩またはこれらの混合物を有効成分とする、リドカイン含有経口用又は口中用ゼリー剤の苦味改善剤。 6ヶ月間室温保存で離水の生じない量のクエン酸またはそのナトリウム塩またはこれらの混合物を併用する、請求項1記載の苦味改善剤。 6ヶ月間室温保存で離水の生じない量が、クエン酸イオン濃度として30mMまでの量である、請求項2記載の苦味改善剤。 上記リン酸またはそのナトリウム塩またはこれらの混合物の量が、6ヶ月間室温保存で離水の生じない量として、リン酸イオン濃度として90mMまでの量である、請求項1〜3のいずれかに記載の苦味改善剤。 上記請求項2〜4のいずれかに記載の苦味改善剤を用いた、室温6ヶ月間保存で離水がなく、苦味の克服されたリドカイン含有経口用又は口中用ゼリー剤(但し、リドカイン塩酸塩2w/w%当りリン酸イオン濃度90mM、クエン酸イオン濃度30mMのものを除く)。 リドカインを2w/w%含有していることを特徴とする請求項5に記載の経口用又は口中用ゼリー剤。 【課題】局所麻酔薬物は、癌患者の口内炎の痛み緩和に使用されていることが知られている。口内炎の疼痛緩和に用いる場合にはゼリー剤が剤形として優れている。局所麻酔薬物は苦味の強い物質であり、服用時の苦味の緩和が必須である。本発明者らは弱酸の配合により苦味を緩和できる知見を持っているが、高濃度で局所麻酔薬物を含有する場合は、苦味緩和の為に弱酸を高濃度で配合することが必要となる。しかし、ゼリー剤の場合は、弱酸の種類によっては、製剤の安定性の低下、特に離水が起こり、開発上の問題となっている。そこで、苦味の問題が改善され、かつ安定性の問題を克服した高濃度の局所麻酔薬物を含有するゼリー製剤を提供する。【解決手段】苦味を克服する為の弱酸としてリン酸またはその塩またはそれらの混合物を選択することにより苦味を改善し、かつ製剤安定性の良い局所麻酔薬物含有ゼリー剤を開発した。【選択図】 なし


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特許公報(B2)_リドカイン含有ゼリー剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_リドカイン含有ゼリー剤
出願番号:2011006172
年次:2013
IPC分類:A61K 47/04,A61K 31/167,A61K 9/06,A61K 47/12,A61P 25/02,A61P 1/02,A61P 25/04


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石橋 賢樹 ▲浜▼本 英利 松村 周永子 天野 江美 遠藤 充 JP 5336527 特許公報(B2) 20130809 2011006172 20110114 リドカイン含有ゼリー剤 株式会社 メドレックス 302005628 石橋 賢樹 ▲浜▼本 英利 松村 周永子 天野 江美 遠藤 充 20131106 A61K 47/04 20060101AFI20131017BHJP A61K 31/167 20060101ALI20131017BHJP A61K 9/06 20060101ALI20131017BHJP A61K 47/12 20060101ALI20131017BHJP A61P 25/02 20060101ALI20131017BHJP A61P 1/02 20060101ALI20131017BHJP A61P 25/04 20060101ALI20131017BHJP JPA61K47/04A61K31/167A61K9/06A61K47/12A61P25/02A61P1/02A61P25/04 A61K 9/00− 9/72 A61K47/00−47/48 特開2006−160607(JP,A) 特開昭60−246325(JP,A) 特開2001−114696(JP,A) 特開平05−163151(JP,A) 国際公開第2004/000283(WO,A1) 国際公開第2004/045588(WO,A1) 特開平10−036252(JP,A) 特開昭62−152465(JP,A) 1 2004349225 20041202 2011074090 20110414 6 20110114 辰己 雅夫 本発明は、リドカインを含有するゼリー剤に関するものである。 局所麻酔薬物が歯科用として口中に使用されていることは良く知られている。また、局所麻酔剤の中でもリドカインなどは胃カメラの使用時の咽喉部麻酔に用いられたり、頻脈に対する薬としても服用されている。 一方、近年、院内処方で局所麻酔薬物であるリドカインをカラギーナンによりゼリー化した製剤が癌患者の口内炎の疼痛緩和に用いられていることが知られている。 癌患者においては、抗癌剤の開発により治療あるいは延命が期待されるようになりつつあるが、一方で化学療法による抗癌剤の副作用により精神的・肉体的苦痛を感じていることが多い。副作用による精神的・肉体的苦痛を和らげることは癌患者のQOLを高めることのみならず、医者・介護者等の治療関係者の負担を減らすことも可能である。 このような抗癌剤の副作用としては、難治性の重篤な口内炎が知られている。化学療法初期から口内乾燥、味覚異常、疼痛などが出現し、栄養状態の悪化、化学療法の中断等の問題が発生している。そのような口内炎の痛み対策として、局所麻酔薬物は有効である。 しかしながら、局所麻酔薬物はリドカイン、パラアミノ安息香酸エチルに代表されるように苦みの強い物質であり、経口、口中用製剤として服用するには強い不快感を有しているため問題となっている。苦味の不快感のないほど局所麻酔薬物の製剤濃度が低濃度であると、局所麻酔薬物としての効果がほとんど見られない。そのため経口、口中用として用いる場合は2%またはそれ以上の高濃度で用いられており、多くの人は不快な苦味を我慢しながら服用している。 本発明者らはこのような不快な苦味の対策として、弱酸を局所麻酔薬物に対し一定以上の割合で加えることにより、完全に苦味がマスクできる知見を持っている。また、局所麻酔薬物を含有する製剤の剤形としては液剤、軟膏剤、ゼリー剤、グミ剤、ドライシロップ、散剤、細粒剤等の経口製剤を取ることができるが、特に、癌化学療法により発生した口内炎の疼痛緩和として用いる場合には、ゼリー剤は取り扱いの容易さ、口中の感触の良さもさることながら、ゼリー剤を患部局所にあてることにより局所的な局所麻酔薬物の投与を行うことができ、口中の麻酔時に起こる舌を噛む副作用、強い違和感などが軽減される上、食事を味わうことも可能となり最適である。 ところで、経口、口中用として局所麻酔薬物を用いる際には、一般に2%またはそれ以上の高濃度で用いられている。その為、局所麻酔薬物を高濃度で用いる場合には、その苦味をマスクするための弱酸も高濃度で用いることとなる。しかし、ゼリー剤において高濃度で弱酸、特にクエン酸等の有機酸を配合した場合には、長期保存においてゼリー剤からの離水が発生する。ゼリー剤において離水が発生すると服用中に離水した液をこぼしたり、離水液のためにゼリー剤としての長所である局所へ局所麻酔薬物の投与に問題が生じたり、離水のためにゲルがしまって堅くなり薬剤の放出性が弱くなったり服用しづらかったり多くの問題点を生じる。 本発明の解決課題は、局所麻酔薬物含有のゼリー剤において問題となる苦みなどの不快感を克服しつつ前述のゼリー剤からの離水の問題を解決した製剤の提供にある。 本発明者らは鋭意検討を行った結果、局所麻酔薬物の苦味を克服する為の弱酸としてリン酸を主に用いることにより、ゼリー剤からの離水が改善されることを見出した。このようにして、本発明を完成した。 即ち、本発明の局所麻酔薬物含有のゼリー剤はリン酸またはその薬学上許容される塩またはこれらの混合物を配合することを特徴とする。 上記、局所麻酔薬物含有のゼリー剤は配合される局所麻酔薬物がリドカインまたはその薬学上許容される塩またはその混合物であることを特徴とする。 上記局所麻酔薬物含有のゼリー剤は、用いられる局所麻酔薬物を1%以上含有することを特徴とする。 本発明のリドカイン含有ゼリー剤は、弱酸としてリン酸を配合することにより苦味を改善し、問題点であるゼリー剤からの離水を有意に軽減している。特に、癌化学療法の副作用として発生する口内炎の疼痛緩和に対しては、ゼリー剤が最適な剤形であり、待ち望まれている。その為、このようなゼリー剤開発時の問題点を克服した本発明は、患者のQOLの向上に大きく貢献できる極めて優れたものである。 本発明に係る局所麻酔薬物としては特に限定はしないが、例えばリドカイン、パラアミノ安息香酸エチル、オキシブプロカイン、テトラカイン、プロカイン、パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル等またはこれらの薬学上許容される塩が挙げられ、これらの混合物であってもよい。特に好ましくは、リドカインが挙げられる。 本発明の局所麻酔薬物配合のゼリー剤はリン酸またはその薬学上許容される塩またはその混合物を配合することにより特に好ましい効果が得られる。リン酸またはその薬学上許容される塩としては特に限定しないが例えばリン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物等が挙げられる。特にリン酸、リン酸水素ナトリウムが好ましい。 また、局所麻酔薬物配合のゼリー剤は本発明のリン酸以外の弱酸も少量であれば配合することが可能である。 配合可能な無機の弱酸としては例えば炭酸またはその塩等が挙げられる。 配合可能な有機酸としては、例えばリンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、グルクロン酸またはその塩が挙げられる。また、無機酸、有機酸を問わず、これらの混合物を配合しても良い。好ましくは、リン酸、リン酸水素ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウムの配合、特に好ましくは、リン酸、リン酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。 本発明の局所麻酔薬物配合のゼリー剤はゲル化剤を使用することによりゲル状のゼリー剤を形成することができる。ゲル化剤としては薬学上許容されるものであれば限定はしないが、例えばアルギン酸ナトリウム、カンテン、カンテン末、ゼラチン、ペクチン、キサンタンガム、カロブビーンガム、カラギーナン、トラガント、トラガント末、グァーガム、プルラン、タマリンド種子ガム、カードラン、ジェランガム、グルコマンナン等が挙げられ、特にカラギーナン、カンテン末、キサンタンガム、カロブビーンガムが好ましい。 本発明の製剤には甘味料を添加することができる。甘味料としては、例えばアスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア、ソーマチン、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、グリチルリチン酸二カリウム等が挙げられ、これらの混合物であってもよい。好ましい甘味料としては、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビアが挙げられる。 本発明の製剤においては、薬学上許容される無毒性かつ不活性な添加剤を添加することもできる。これらの添加剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、白糖、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、タルク、カオリン、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロース等の賦形剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の滑沢剤、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低置換度ヒドロキシメチルセルロース等の崩壊剤、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、メチルセルロース、アラビアゴム末、ポリビニルアルコール等の結合剤、その他増粘剤、着色剤、矯味剤、吸着剤、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、帯電防止剤、pH調整剤等が挙げられる。 また、本発明の局所麻酔薬物配合のゼリー剤は凍らせてからアイスボールとして使用することができ、口内炎等の疼痛緩和に有効に使用することが可能である。 以下に、実施例及び実験例を挙げて、更に具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、本実施例および比較例における配合量の値は、全て質量%である。(試験例1) 表1の配合比に従い、局所麻酔薬物として塩酸リドカインを含有するゼリー剤を作成した。すなわち、表1に示す原料を精製水に分散または溶解させた後、加熱溶解した。室温に冷却し局所麻酔薬物含有ゼリー剤を作成した。 表1に従い作成した製剤例1〜3を用いて、ゼリー剤からの離水の有無を確認した。製剤例1〜3のゼリー剤をそれぞれ内面をポリエチレンコーティングしたアルミニウム容器に充填し、室温で6ヶ月間保存した。保存後、ゼリー剤からの離水の有無を観察した。その結果を表2に示す。 また、製剤例1〜3それぞれの苦味の有無を確認した。苦味は、健常者による官能試験により確認した。製剤例1〜3それぞれ約1gを口に含ませた時の苦味の不快感を判定した。苦味の有無を表3に示す。また、同時に製剤例1〜3のクエン酸イオン濃度、リン酸イオン濃度を表3に示す。 表2および表3の結果より、製剤例3のように高濃度のクエン酸イオンを含有するゼリー剤では離水が発生するが苦味は改善され、製剤例2のようにクエン酸イオンの濃度を低くすると、離水は抑制されるが、局所麻酔薬物のもつ苦味を改善することができないことが示された。 ところが、製剤例1の結果に示すように、クエン酸イオン濃度を低く抑えた場合でもリン酸イオンを加えることにより、局所麻酔薬物の苦味を抑えることができる。この場合は、離水も発生しないことが示された。(製剤例4)塩酸リドカイン含有ゼリー剤の調製 塩酸リドカイン2.0、クエン酸ナトリウム0.9、リン酸0.5、リン酸水素ナトリウム12水和物1.78、サッカリンナトリウム0.5、アズレンスルホン酸ナトリウム0.008、グリチルリチン酸二カリウム0.5、ポリビニルアルコール0.3、ポリエチレングリコール5.1、グリセリン13.3、濃グリセリン4.2、プロピレングリコール4.6、カラギーナン0.7、キサンタンガム0.3、カンテン末0.17、カロブビーンガム0.05、防腐剤適量を全量100になるように調整した精製水に溶解または懸濁し、加熱溶解後室温に冷却し2%塩酸リドカインゼリー剤を調製した。 癌化学療法の副作用として発生する口内炎の疼痛緩和は患者のQOL向上のためにも重要な課題であり、リドカインが有効である。リドカインを含有する製剤の剤形としては、ゼリー剤が最適であるが、リドカインが持つ耐え難い苦味を克服するために配合する弱酸によっては、ゼリー剤から離水が起こり、服用時に問題が発生する。本発明を利用することにより、離水がなく、苦味の克服されたリドカイン含有ゼリー剤の提供を可能とするものである。 リン酸またはそのナトリウム塩またはこれらの混合物を有効成分とする、リドカイン含有経口用又は口中用ゼリー剤の苦味改善剤であって、 上記リン酸またはそのナトリウム塩またはこれらの混合物の量が、6ヶ月間室温保存で離水の生じない量として、リン酸イオン濃度として90mMの量であり、 6ヶ月間室温保存で離水の生じない量として、クエン酸イオン濃度として30mMの量である、ことを特徴とする、リドカイン含有経口用又は口中用ゼリー剤の苦味改善剤。


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