タイトル: | 特許公報(B2)_有機物中のホルボールエステル除去法、高タンパク質含有有機物の製造方法、高タンパク質含有有機物、飼料の製造方法、及び飼料 |
出願番号: | 2010550450 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | B09B 3/00,A23K 1/16,A23K 1/00,C12P 21/00,A23L 1/211 |
赫 宇曦 菊次 英雄 JP 5430012 特許公報(B2) 20131213 2010550450 20100209 有機物中のホルボールエステル除去法、高タンパク質含有有機物の製造方法、高タンパク質含有有機物、飼料の製造方法、及び飼料 出光興産株式会社 000183646 日本植物燃料株式会社 307029733 渡辺 喜平 100086759 生富 成一 100154184 赫 宇曦 菊次 英雄 JP 2009054157 20090213 20140226 B09B 3/00 20060101AFI20140206BHJP A23K 1/16 20060101ALI20140206BHJP A23K 1/00 20060101ALI20140206BHJP C12P 21/00 20060101ALI20140206BHJP A23L 1/211 20060101ALN20140206BHJP JPB09B3/00 AA23K1/16 304CA23K1/00 103A23K1/00 101C12P21/00 AA23L1/211 B09B 1/00− 5/00 A23K 1/00− 1/24 C12P 1/00−41/00 CAplus/REGISTRY(STN) JSTPlus(JDreamIII) Science Direct Thomson Innovation 特開平5−268881(JP,A) Food and Chemical Toxicology(2008),46(12),3621-3625,Abstract,2008:1420639,CAPLUS,26.11.2008 21 JP2010000770 20100209 WO2010092792 20100819 23 20121204 小久保 勝伊 本発明は、ホルボールエステル成分を含んだ有機物と微生物とを混合して発酵させ、微生物が有機物中のホルボールエステル成分を分解することによって除去処理する方法に関する。 動物向け飼料または飼料材料の加工生産過程を対象とし、飼料または飼料材料の原料中に含まれている環境汚染物質や毒性物質を取り除く目的でなされる処理方法として、特許文献1および特許文献2に開示されたものが代表例として挙げられる。 特許文献1に記載の技術は、環境汚染物質または毒性成分を含有する脂肪または油に、揮発性作業流体である脂肪酸エステルや脂肪酸アミド、遊離脂肪酸や炭化水素類を添加した後、脂肪または油と揮発性作業流体とともにストリッピング処理を施すことによって、揮発性作業流体と一緒に環境汚染物質または毒性成分を脂肪または油から分離するものである。なお、ストリッピング処理とは、除去したい特定の物質を含んだ液体中に蒸気やガスを吹き込んだり、若しくは揮発性の高い液体を混合した後揮発させたり、又は液体全体を真空条件にすることにより、特定の物質を蒸気やガス相または揮発性流体相に移動させ、又は特定物質自身を揮発させることで、特定の物質を液体中から除去する処理法である。 特許文献2に記載の技術は、飼料や食料としての穀物中に含有されているフィチン酸を除去することを目的としている。高濃度のフィチン酸を含有する飼料や食物を動物が摂取した場合、栄養上重要な微量金属類の正常な腸管内吸収が妨害されて一連の欠乏障害を起こす恐れがある。このため、前記のようなフィチン酸を含んだ穀物中からフィチン酸を除去することが求められる。この技術では、フィチン酸を含む大豆粕などの穀物に麹菌を接種して製麹することで、麹菌が増殖する過程で作り出されるフィターゼやフォスファターゼというフィチン酸分解酵素を利用して穀物中のフィチン酸を分解除去するというものである。特許第3905538号特開平8−214822号公報 しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ストリッピング過程を経た後には環境汚染物質あるいは毒性成分を含んだ揮発性作動流体が残ることになる。この揮発性作動流体から環境汚染物質あるいは毒性成分を分離するのは容易ではないため、一度ストリッピング過程を経た揮発性作動流体を再利用することは難しい。それゆえ、ストリッピング処理する毎に新たな揮発性作動流体を使うことが要求されるとともに、ストリッピング過程を経た揮発性作動流体には環境汚染物質あるいは毒性成分を含んでいるためこれを安全に処分することが求められるので、処理に関わるランニングコストが高くなってしまうという問題があった。 また、この技術で利用しているストリッピング処理は、実際にストリッピング処理を行うストリッピング槽において、槽内の温度や圧力、そして揮発性作動流体の供給率などを正確にコントロールしなければ、環境汚染物質あるいは毒性成分の除去率が上がらない。このため、これらを実現させるためには必然的に高価な制御装置や機器が必要となり、設備導入時のイニシャルコストも高くなってしまうという問題もあった。 さらに、この技術で利用しているストリッピング処理は、処理対象物中の環境汚染物質あるいは毒性成分と揮発性作動流体がストリッピング槽内で互いに十分混合・接触しなければ除去率をあげることができない。このため、必然的に処理対象物は脂肪または油などの液状の物質に限られてしまう。つまり大豆粕やその他植物の絞りかす等の固体状の処理対象物に対しては適用が困難であるという大きな問題を有している。 また、特許文献2に開示された技術では、大豆粕やその他植物の絞りかす等の固体状の処理対象物に対しても適用ができるものの、除去可能なものは処理対象物中に含まれているフィチン酸に限られる。このため、麹菌が増殖する過程で作り出されるフィターゼやフォスファターゼというフィチン酸分解酵素で分解できない他の毒性成分が処理対象物中に含まれている場合は適用ができないという問題がある。 トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas.L)の種子には油分が30〜40%という高い含有率で含まれ、かつこの油には発がん性を有するホルボールエステル類が含まれているため食用には向かず、それゆえ食糧用途との競合を起こさない有望な再生可能エネルギー資源として近年世界中で注目されている。また、多量の種子を搾油する際には必然的に多量の種子絞り粕が発生し、これら絞り粕のたんぱく質含有率は約60%と主な飼料原料である大豆絞り粕のたんぱく質含有率(約45%)よりも高く、ヤトロファ種子絞り粕は大豆絞り粕よりも優れる飼料原料として利用できる可能性をもっている。しかし、このヤトロファ種子絞り粕中にもホルボールエステル類が含まれるために現実には飼料原料としての利用は困難であり、付加価値の低い肥料としての利用、または利用せずに廃棄するという方法しかないのが現状である。 ヤトロファ種子絞り粕のような発がん性のホルボールエステル成分を含有する有機物から毒性成分であるホルボールエステル成分を除去する目的で特許文献1に開示された技術を適用しようとしても、ヤトロファ種子絞り粕は固形状の有機物であるためにこの技術に使われているストリッピング処理ではホルボールエステル成分を十分に除去することは物理的に困難である。また、特許文献2に開示された技術を適用しようとした場合においても、麹菌ではホルボールエステル成分の分解能力が低いためにやはり十分に除去することができない。 以上述べてきたようにヤトロファ種子絞り粕のような発がん性のホルボールエステル成分を含有する有機物から毒性成分であるホルボールエステル成分を低コストで十分除去するという目的は、すでに開示されているような技術だけでは達成できず、上記目的を達成可能とする新たな技術の開発が要求されていた。 そこで本発明は、発がん性のホルボールエステル成分に対して高い分解能力を有しながら入手が容易な微生物を利用することで、ホルボールエステル成分を含んだ有機物中からホルボールエステル成分を低コストかつ高い処理能力にて分解除去できる方法、家畜の飼料として好適に用いることができる高タンパク質含有有機物、高タンパク質含有有機物の製造方法、飼料、及び飼料の製造方法を提供することを目的とする。 上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ホルボールエステル成分を含んだ有機物と、納豆菌(Bacillus subtilis var.natto)を混合した後、当該混合物を発酵させることにより、混合物中のホルボールエステル成分を微生物を使って分解させることを特徴とするものである。 請求項2に記載の発明は、上記発明において、ホルボールエステル成分を含んだ有機物の重量がAkgであるとき、ホルボールエステルを含んだ有機物と、A/2kgの水とを混合した後、当該混合物を高温高圧滅菌し、Akgの滅菌水に納豆菌体を1重量%溶かしたものを、高温高圧滅菌した後の混合物中にかく拌しながら添加し、十分混合されたものを、温度37〜50℃で期間2〜4週間発酵させることを特徴とするものである。 請求項3に記載の発明は、上述の請求項1に記載の発明において、ホルボールエステル成分を含んだ有機物の重量がAkgであるとき、ホルボールエステルを含んだ有機物と、A/2kgの水とを混合した後、当該混合物を高温高圧滅菌し、Akgの滅菌水に請求項1又は2記載のホルボールエステル除去法にて前もって処理された有機混合物を5重量%溶かしたものを、前記高温高圧滅菌した後の混合物中にかく拌しながら添加し、十分混合されたものを、温度37〜50℃で期間2〜4週間発酵させることを特徴とするものである。 請求項4に記載の発明は、上記発明において、ホルボールエステル成分を含んだ有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas.L)の種子を搾油した後の絞りかすを使うことを特徴とするものである。 請求項5に記載の発明は、上記発明において、ホルボールエステル成分を含んだ有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas.L)の種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞りかすを使うことを特徴とするものである。 また、本発明の高タンパク質含有有機物の製造方法は、ホルボールエステルを含んだ有機物と納豆菌を混合し、発酵させることにより、ホルボールエステルを分解することを特徴とするものである。 また、本発明の高タンパク質含有有機物は、ホルボールエステル成分を含んだ有機物と、納豆菌とを混合して発酵させ、ホルボールエステル成分を分解して得られた発酵産物を含有することを特徴とするものである。 また、本発明の飼料の製造方法は、ホルボールエステルを含んだ有機物と納豆菌を混合し、発酵させることにより、ホルボールエステルを分解することを特徴とするものである。 また、本発明の飼料は、ホルボールエステル成分を含んだ有機物と、納豆菌とを混合して発酵させ、ホルボールエステル成分を分解して得られた発酵産物を含有することを特徴とするものである。 本発明によれば、発がん性を有するホルボールエステルを含む有機物からホルボールエステルを分解除去する処理過程において、高価な揮発性試薬を使ったり処理に困る毒性物質の含んだ廃液を発生させることなく、かつ高価な制御装置や制御機器を導入することなく済ませることができる。また安価で入手が容易な納豆菌を使って前記ホルボールエステルを含む有機物を比較的条件の緩い条件で発酵させることによって、他の微生物をつかった場合よりも効率良くホルボールエステルを分解除去することができる。これらにより、処理に関わるイニシャルコスト、ランニングコストを低く抑えながらも高いホルボールエステル除去率を実現することが可能となり、したがって、本発明は、従来と比べてより高い処理能力を有するホルボールエステル除去方法、高タンパク質含有有機物、飼料等をより低コストで市場に提供できるという効果を奏するものである。本発明に係るホルボールエステル除去法の第一実施形態の工程を示す概略図である。本発明に係るホルボールエステル除去法適用前の有機物中のホルボールエステル含有量を測定した結果を示す図である。本発明に係るホルボールエステル除去法適用後の有機物中のホルボールエステル含有量を測定した結果を示す図である。有機物中のホルボールエステル分解率を各菌について比較測定した結果を示す図である。本発明に係るホルボールエステル除去法の第二実施形態の工程を示す概略図である。発酵工程における納豆菌の作用によって有機物中のホルボールエステル含有量が時間とともにどのように変化していくかを調べた結果を示す図である。本発明に係るホルボールエステル除去法の第三実施形態の工程を示す概略図である。本発明に係るホルボールエステル除去法の第四実施形態に関連するヤトロファの油の生産性を説明する図である。本発明に係るホルボールエステル除去法の第四実施形態に関連するヤトロファの搾油絞り粕の発生量を説明する図である。本発明に係るホルボールエステル除去法の第五実施形態に関連するヤトロファ種子核搾油絞りかすの、飼料原料としての優位性を説明する図である。本発明に係る高タンパク質含有有機物の製造方法の第六実施形態の工程(1)を示す概略図である。本発明に係る高タンパク質含有有機物の製造方法の第六実施形態の工程(2)を示す概略図である。本発明に係る高タンパク質含有有機物の製造方法の第六実施形態の工程(3)を示す概略図である。本発明に係る高タンパク質含有有機物の製造方法の第七実施形態の工程を示す概略図である。本発明に係る高タンパク質含有有機物の製造方法に関する実施例1により得られた発酵ヤトロファの重金属分析試験結果を示す図である。本発明に係る高タンパク質含有有機物の製造方法に関する実施例1、比較例1,2、及び対照区の飼料により飼育した鶏の体重を示す図である。本発明に係る高タンパク質含有有機物の製造方法に関する実施例1、比較例1,2、及び対照区の飼料により飼育した鶏の体重増加量を示す図である。本発明に係る高タンパク質含有有機物の製造方法に関する実施例1、比較例1,2、及び対照区の飼料により飼育した鶏の飼料摂取量を示す図である。本発明に係る高タンパク質含有有機物の製造方法に関する実施例1、比較例1,2、及び対照区の飼料により飼育した鶏の飼育結果を示す図である。 次に図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。[第一実施形態] 図1は、本発明に係るホルボールエステル除去法の第一実施形態の工程を示す概略図である。図1において、まず処理対象であるホルボールエステル成分を含む有機物は、納豆菌(Bacillus subtilis var.natto)と共にかく拌工程にて均一な分布になるまでよくかく拌される。その後かく拌された混合物は次の発酵工程に移され、温度が管理された発酵室や発酵容器内に所定の期間置かれることになる。発酵工程が終了した後、発酵室あるいは発酵容器内から取り出した処理後の混合物は、ホルボールエステル成分が納豆菌の働きによって分解されたものになっているとともに、納豆菌の副次的な働きによって処理後の混合物中のビタミンやミネラルなどの成分が増加されたものになる。 次に、納豆菌による有機物中のホルボールエステル分解作用の優位性について図を用いて説明する。図2は、本発明に係るホルボールエステル除去法適用前の有機物中のホルボールエステル含有量を測定した結果を示す図であり、図3は、本発明に係るホルボールエステル除去法適用後の有機物中のホルボールエステル含有量を測定した結果を示す図となっており、ともに高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いた解析をした場合の出力結果を示している。 有機物中のホルボールエステル含有量は次のような方法で求めることができる。まず、図2、図3のようなHPLCの解析出力結果を得た後、図中のホルボールエステルバンドとしている範囲について、測定結果曲線の下側の面積(これをAとする)を積分によって算出する。一方、ホルボールエステル類の標準物質であるPMA(Phorbol−12−myristate 13−acetate)を使ったHPLC解析出力結果を得た後、上記と同様に測定結果曲線の下側面積(これをBとする)を事前に求めておき、面積比A/Bによって有機物中のホルボールエステル含有量が算出される。 以上説明してきた有機物中のホルボールエステル含有量測定方法の結果として図2と図3を比較すると、納豆菌による発酵処理を行うことによって、ホルボールエステルバンドの測定結果曲線の下側の面積が大きく減少していること、つまり有機物中のホルボールエステル含有量が大幅に減少していることがわかる。 図4は、有機物中のホルボールエステル分解率を各菌について比較測定した結果を示す図である。実験条件としては、ホルボールエステル成分を含む有機物の重量の1%の菌体を混合した後、各菌の最適培養温度(納豆菌と酵母については37℃、麹菌については30℃)で3週間発酵処理したものになっており、上述のHPLC解析によって処理前の有機物中に含まれていたホルボールエステル量の何%が分解されたかを各菌間で比較した。図4を見ればわかるように、納豆菌が最も優れた分解能を持っていることが示されている。 上述のような第一実施形態の工程であれば、入手が容易な微生物である納豆菌(Bacillus subtilis var.natto)を利用するとともに、かく拌工程と発酵工程のみというシンプルな設備を準備すれば、ホルボールエステル成分を含んだ有機物から、高い分解除去率かつ低コストで発がん性を有するホルボールエステル成分を除去することが可能となる。さらに、納豆菌の副次的な働きにより、処理後の有機物中のビタミンやミネラルなどの成分を増加させることができ、特に処理後の有機物を動物飼料原料などに利用する際には、飼料中の栄養素を高めるという効果も付け加わることになる。[第二実施形態] 図5は、本発明に係るホルボールエステル除去法の第二実施形態の工程を示す概略図である。図5において、まず処理対象であるホルボールエステル成分を含む有機物(この重量をAkgとする)は、重量およそA/2kgの水とともに混合工程に送られ、ある程度均一になるまで混ぜ合わされた後、高温高圧滅菌工程で滅菌処理される。その後、滅菌処理された混合物と、重量がAkgのおよそ1%分の納豆菌を、重量がAkgの滅菌水に溶かしたものとをかく拌工程にて均一になるまで十分かく拌され、続いて発酵工程に送られ、密閉条件で温度が37〜50℃に管理された発酵容器内に、およそ2〜4週間置かれる。発酵工程が終了した後、発酵容器内から取り出した処理後の混合物は、ホルボールエステル成分が納豆菌の働きによって分解されたものになっている。 次に、納豆菌による有機物中のホルボールエステル分解に関して、発酵時間を上述のように2〜4週間とした理由について図を用いて説明する。図6は、発酵工程における納豆菌の作用によって有機物中のホルボールエステル含有量が時間とともにどのように変化していくかを調べた結果を示す図である。図6から発酵工程開始後1週間の時点ではおよそ50%の分解率であるが、2週間経過後には分解率はおよそ80%以上、3週間経過後はおよそ95%、4週間経過後にはおよそ99%となっていることが示されている。このように発酵時間を長くすればするほどホルボールエステルの分解率は上がるが、処理時間が長引くと状態を維持するためのコストが嵩むため、分解率とコストとがバランスする発酵時間の選択が求められる。以上のような検討をした結果、発酵時間は2〜4週間とすることが最も効率的であることがわかった。 続いて、この第二実施形態の工程において、かく拌、発酵工程に入る前の段階で処理対象の有機混合物全体を滅菌処理している理由について説明する。通常使用される処理対象有機物には様々な種類の微生物が含まれており、この中には納豆菌によるホルボールエステル分解作用を阻害する微生物も含まれていることがあるため、これらの阻害微生物を死滅させるために、上述の高温高圧滅菌工程を設定している。 上述のような第二実施形態の工程であれば、納豆菌による処理対象有機物の発酵時間を最適化することができるとともに、納豆菌によるホルボールエステル分解作用を阻害する要因を取り除くことにより、最低限の量の納豆菌投入で最大限のホルボールエステル分解作用を得ることができる。このため、有機物中のホルボールエステル除去に必要なコストをさらに低く抑えることが可能となる。[第三実施形態] 図7は、本発明に係るホルボールエステル除去法の第三実施形態の工程を示す概略図である。図7において、まず処理対象であるホルボールエステル成分を含む有機物(この重量をAkgとする)は、重量およそA/2kgの水とともに混合工程に送られ、ある程度均一になるまで混ぜ合わされた後、高温高圧滅菌工程で滅菌処理される。この第三実施形態では、前記の第二実施形態の場合のように納豆菌そのものを使うのではなく、予め本発明に係るホルボールエステル除去法にて処理されたホルボールエステル分解処理済有機物を発酵用の種菌として使う点に特徴がある。滅菌処理された混合物と、重量がAkgのおよそ5%分の上記ホルボールエステル分解処理済有機物を、重量がAkgの滅菌水に溶かしたものとをかく拌工程にて均一になるまで十分かく拌され、続いて発酵工程に送られ、密閉条件で温度が37〜50℃に管理された発酵容器内に、およそ2〜4週間置かれる。発酵工程が終了した後、発酵容器内から取り出した処理後の混合物は、ホルボールエステル成分が納豆菌の働きによって分解されたものになっている。 上述のような第三実施形態の工程であれば、有機物中のホルボールエステル除去処理の回数毎に新たに納豆菌を準備する必要性がなくなる。このため、ホルボールエステル除去処理に必要な納豆菌の総量を、第二実施形態の場合よりさらに少なくすることができるため、結果として有機物中のホルボールエステル除去に必要なコストをさらに一層低く抑えることが可能となる。[第四実施形態] 図8は、本発明に係るホルボールエステル除去法の第四実施形態に関連するヤトロファの油の生産性を説明する図であり、また図9は、本発明に係るホルボールエステル除去法の第四実施形態に関連するヤトロファの搾油絞り粕の発生量を説明する図となっている。この第四実施形態では、ホルボールエステル成分を含んだ有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas.L)の種子を搾油した後の絞りかすを使うことを特徴としている。 ここでこれら図8、図9を用いて、本発明に係るホルボールエステル除去法を、ヤトロファ種子の搾油後の絞りかすに適用することの利点について説明してゆく。図8は、世界各地で栽培されている代表的な油糧作物各種について、単位耕地面積あたりの油の年間生産量を比較したものである。この図8によれば、パームの油生産量が突出して大きく、次いでヤトロファとなっている。しかし、パームは栽培可能地域が降水量が豊富で比較的肥沃な熱帯地方に限られていること、およびパーム油は食糧としての用途が可能なために、燃料や工業用途として多量に使用することは、近年世界的なコンセンサスが得にくい状況になってきている。このため、パーム油を再生エネルギー資源として生産拡大してゆくことは困難になっている。一方、ヤトロファはパームに次ぐ高い油生産量を持ちながら、ヤトロファ油には発がん性を有するホルボールエステル類が含まれているために食用とすることができず、それゆえパーム油のように食糧用途との競合を起こさない。さらにヤトロファは、パームが栽培可能な多雨の熱帯地域はもちろんのこと、降水量が少なく乾燥していて食糧用の作物が育たない土地でも栽培が可能であるため、有望な再生エネルギー資源として世界中で注目されている。 図9は、ヤトロファ栽培耕地の単位面積あたりから生産されるヤトロファ種子量と、その種子を搾油することによって発生する油と搾油絞り粕の発生量を比較したものである。図9だけでなく図8にも示してあるように、ヤトロファは単位耕地面積あたり年間約1.5トンの油を生産する能力があるが、この量の油の生産と同時に油の発生量の2倍以上の単位耕地面積あたり年間3.5トンもの搾油絞り粕が付随的に発生してしまうことになる。このように油を生産すると大量に発生する搾油絞り粕には、油と同様の発がん性を有するホルボールエステル類が含まれる。このため、このままでは動物用の飼料原料とすることができず、付加価値の低い肥料としての利用や、単価の低い固形燃料としての利用に限られてしまい、ヤトロファを栽培することによって得られる再生可能な資源全体を有効に活用することが困難であった。 上述のように、ホルボールエステル成分を含んだ有機物として、ヤトロファの種子を搾油した後の絞りかすを使うという第四実施形態であれば、ヤトロファ栽培によって食糧と競合しない油を大量に生産した場合でも、副産物として油以上に大量に発生する搾油絞り粕中のホルボールエステル成分を分解除去することができる。このため、ホルボールエステル成分を除去した搾油絞り粕を、動物用飼料原料として価値を高めて市場に出すことが可能となる。その結果、ヤトロファ栽培を事業とする際の事業の収益性を大幅に改善でき、より低コストの油を市場に供給できるようになるとともに、植物としてのヤトロファが生長することによって生産された再生可能なバイオマス資源をより有効に活用することが可能となる。[第五実施形態] 図10は、本発明に係るホルボールエステル除去法の第五実施形態に関連するヤトロファ種子核搾油絞りかすの、飼料原料としての優位性を説明する図である。この第五実施形態では、ホルボールエステル成分を含んだ有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas.L)の種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞りかすを使うことを特徴としている。 この図10を用いて、本発明に係るホルボールエステル除去法を、ヤトロファ種子核の搾油後の絞りかすに適用することの利点について説明してゆく。図10はヤトロファ種子核の搾油後絞りかすと、代表的な飼料原料である大豆搾油後絞りかすとについて、飼料原料として重要な組成項目について比較した結果を示したものである。この図から、飼料原料として最重要の組成であるたんぱく質含有率は、大豆が約45%程度なのに対して、ヤトロファは60%以上となっていることがわかる。脂質含有率、灰分含有率については、ヤトロファは大豆と大差はなく、繊維分含有率では大豆よりヤトロファの方が少ないことが示されている。これらから、発がん性を有するホルボールエステル成分が除去できさえすれば、高たんぱく質で低繊維分のヤトロファ種子核搾油後絞りかすは、大豆絞りかすよりも優れた飼料原料になりえることがわかる。 以上説明してきたように、ホルボールエステル成分を含んだ有機物として、ヤトロファの種子を脱殻して内部の種子核を取り出したものを搾油した後の絞りかす(ヤトロファ種子核搾油絞りかす)を使うという第五実施形態であれば、ホルボールエステル成分を分解除去することによって、ヤトロファ種子自体を搾油した場合に発生する搾油絞りかすよりも、飼料原料としての栄養素の濃度を格段に高め、大豆絞りかすよりも優れた飼料原料とすることができる。このため、処理後の搾油絞り粕を、動物用飼料原料としてさらに一層価値を高めて市場に出すことが可能となる。その結果、ヤトロファ栽培を事業とする際の事業の収益性の更なる改善に貢献でき、それにより再生可能エネルギー資源としてのヤトロファ油の市場価格を、より安価なレベルに安定させる効果が期待できる。[第六実施形態] 次に、第一実施形態〜第五実施形態のホルボールエステル除去法を利用した、高タンパク質含有有機物の製造方法について、図11−13を参照して説明する。図11−13は、それぞれ本実施形態の工程(1)〜(3)を示す概略図である。 本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法は、図11に示される通り、ホルボールエステル成分を含む有機物に納豆菌を混合かく拌して発酵させることで、ホルボールエステル成分が分解された有機物を含有する高タンパク質含有有機物を製造するものである。 このホルボールエステル成分を含む有機物としては、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas.L)の種子を搾油した後の絞りかす、又は、この種子を脱殻して内部の種子核(kernel、カーネル部)を取り出したものを搾油した後の絞りかすを用いることができる。 ここで、高タンパク質含有有機物とは、タンパク質含有率の高い有機物を意味する。例えば図10に示すように、ヤトロファは、タンパク質含有率の高い大豆よりもさらに高いタンパク質含有率を有しており、ヤトロファに含まれるホルボールエステル成分を分解した得られた有機物は、タンパク質含有率の高いものとなっている。具体的には、タンパク質含有率が40〜65%、又はそれ以上の有機物を高タンパク質含有有機物ということができる。 納豆菌を混合して発酵させることで、ホルボールエステル成分を分解する対象の有機物は、ヤトロファに限定されるものではない。本実施形態の技術的思想は、ホルボールエステル成分を含む高タンパク質含有有機物であれば同様に適用でき、そのホルボールエステル成分を納豆菌により分解することで、高タンパク質含有有機物を好適に製造することが可能である。 本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法は、図11に示すように、ホルボールエステル成分を含む有機物に納豆菌を混合かく拌して発酵させ、高タンパク質含有有機物を製造し得るものであれば特に限定されるものではないが、図12及び図13に示すように、(A1)混合工程、(A2)高温高圧滅菌工程、(A3)かく拌工程、(A4)発酵工程を含むものとすることができる。(A1)混合工程 まず、ホルボールエステルを含んだ有機物に、水を混合する。このとき、混合割合としては、ホルボールエステルを含んだ有機物4質量部に対して、水0.5〜3質量部を混合することが好ましい。水の混合割合をこのようにすれば、発酵の効率が高まるためである。また、このような観点から、水の混合割合を2〜3質量部とすることがより好ましい。(A2)高温高圧滅菌工程 次に、ホルボールエステルを含んだ有機物と水との混合液を高温高圧滅菌する。これにより、納豆菌による発酵を阻害し得る微生物を死滅させる。これは、オートクレーブにより、一般的な方法で行うことができる。(A3)かく拌工程 次に、図12に示すように、滅菌水に納豆菌を加えたものを、上述の滅菌した混合液に添加してかく拌する。このとき、滅菌水0.5〜1質量部に対して納豆菌0.004〜0.2質量部を添加することが好ましい。納豆菌の混合割合をこのようにすれば、均一な発酵を実現できるためである。また、このような観点から、納豆菌の混合割合を、0.04〜0.12質量部とすることがより好ましい。 また、滅菌水に納豆菌を加えたものを混合液に添加するのではなく、図13に示すように、本実施形態の製造方法により得られた高タンパク質含有有機物を滅菌水に加え、これを上述の滅菌した混合液に添加してかく拌することも好ましい。この高タンパク質含有有機物は、図11〜図13のいずれにより製造されたものでも良い。このようにすれば、毎回新たに納豆菌を準備する必要性がなく、高タンパク質含有有機物の製造に必要なコストを低減させることが可能となる。 このとき、滅菌水0.5〜1質量部に対して、高タンパク質含有有機物0.02〜1質量部を添加することが好ましい。高タンパク質含有有機物の混合割合をこのようにすれば、低コストで高い発酵効率を実現できるためである。また、このような観点から、高タンパク質含有有機物の混合割合を、0.2〜0.4質量部とすることがより好ましい。(A4)発酵工程 次に、納豆菌を含有する滅菌水又は高タンパク質含有有機物を含有する滅菌水を添加してかく拌した混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間としては、第二実施形態において上述した通り、2〜4週間とすることが好ましい。 このようにして得られた高タンパク質含有有機物は、このまま鶏などの家畜の飼料として用いることができる。また、従来の飼料に添加して用いることもできる。添加割合は特に限定されないが、実施例において後述するように、例えば高タンパク質含有有機物を飼料に10重量%添加しても、特に問題なく鶏を飼育できることが確認されている。 本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法によれば、ホルボールエステル成分を含んだ有機物中からホルボールエステル成分を低コストかつ高い処理能力で分解除去することができ、家畜の飼料に好適に用いることができる高タンパク質含有有機物を製造することが可能となる。[第七実施形態] 次に、第七実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法について、図14を参照して説明する。 本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法は、図14に示すように、まずホルボールエステル成分を含む有機物に納豆菌を混合して予め前培養し、次いで得られた前培養産物を、ホルボールエステル成分を含む有機物に添加して混合し、本発酵させることで、ホルボールエステル成分が分解された高タンパク質含有有機物を製造するものである。<前培養>(B1)第一混合工程 まず、ホルボールエステルを含んだ有機物に、水を混合する。このとき、ホルボールエステルを含んだ有機物2質量部に対して、水0.5〜1.5質量部を混合することが好ましい。水の混合割合をこのようにすれば、発酵の効率が高まるためである。また、このような観点から、水の混合割合を1〜1.5質量部とすることがより好ましい。(B2)第一高温高圧滅菌工程 次に、第六実施形態における高温高圧滅菌工程と同様に、ホルボールエステルを含んだ有機物と水との混合液を高温高圧滅菌する。(B3)第一かく拌工程 次に、滅菌水に納豆菌を加えたものを、上述の滅菌した混合液に添加してかく拌する。このとき、滅菌水0.5質量部に対して、納豆菌0.002〜0.1質量部を添加することが好ましい。納豆菌の混合割合をこのようにすれば、均一な発酵を実現できるためである。また、このような観点から、納豆菌の混合割合を0.02〜0.06質量部とすることがより好ましい。(B4)前培養工程 次に、第一かく拌工程により得られた混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間は、1〜7日間とすることが好ましい。<本発酵>(B5)第二混合工程 次に、ホルボールエステルを含んだ有機物に、水を混合する。このとき、ホルボールエステルを含んだ有機物5質量部に対して、水2〜4質量部を混合することが好ましい。水の混合割合をこのようにすれば、発酵の効率が高まるためである。また、このような観点から、水の混合割合を3〜4質量部とすることがより好ましい。(B6)第二高温高圧滅菌工程 次に、第一高温高圧滅菌工程と同様に、ホルボールエステルを含んだ有機物と水との混合液を高温高圧滅菌する。(B7)第二かく拌工程 次に、前培養により得られた前培養産物を滅菌水に加える。そして、この前培養産物を加えた滅菌水を、第二高温高圧滅菌工程により滅菌した混合液に添加してかく拌する。 このとき、滅菌水1質量部に対して、前培養産物1〜4質量部を加えることが好ましい。前培養産物の混合割合をこのようにすれば、低コストで高い発酵効率を実現できるためである。また、このような観点から、前培養産物の混合割合を2〜4質量部とすることがより好ましい。(B8)本発酵工程 次に、納豆菌含有水を添加してかく拌した混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間は、第二実施形態において上述した通り、2〜4週間とすることが好ましい。 以上説明したように、本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法によれば、前培養により納豆菌を効率的に増殖させ、得られた前培養産物をホルボールエステル成分を含む有機物に添加して本発酵させることができるため、発酵作用を促進させることが可能となる。 これにより、有機物中のホルボールエステル成分をより効率的に分解することが可能となる。以下、本発明の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法についての実施例と比較例、並びにこれらにより得られた高タンパク質含有有機物及び飼料の有用性に関する評価について説明する。(実施例1) 高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程に先立って、以下の工程により、ヤトロファから油を抽出して、ヤトロファ残渣を得た。 まず、ヤトロファの種子24kgを脱皮機にかけてカーネル部と種皮部とに分離し、カーネル部のみを集めた。集められたカーネル部の量は、約14.4kgであった。次に、粉砕機を用いて、カーネル部を直径2mm程度の大きさになるように粉砕した。 次に、電動搾油機(品番S100-200、株式会社サン精機製)を用いて、粉砕したカーネル部を搾油して、油を抽出し、搾油機から排出されたカーネル絞りかす(=ヤトロファ残渣)を集めて、自然冷却させた。集められたヤトロファ残渣は、約7.2kgであった。 次に、以下の工程により、前培養と本発酵を行って、ホルボールエステル成分を分解した高タンパク質含有有機物を得た。 まず、ヤトロファ残渣2kgに水1.5Lを入れ、オートクレーブにより105℃、15分間滅菌した。次いで、納豆菌の菌液15mlを加えた滅菌水0.5Lを添加し、よくかく拌してから42℃で3日間前培養した。 次に、ヤトロファ残渣5kgに水4Lを入れ、オートクレーブにより105℃、15分間滅菌した。次いで、前培養して得られた培養液(培養産物)2kgを加えた滅菌水1Lを添加してよくかく拌するとともに、5日間毎によくかく拌し、42℃で3週間本発酵させた。そして、この発酵産物として、ホルボールエステル成分が分解された高タンパク質含有有機物である発酵ヤトロファを得た。 最後に、この高タンパク質含有有機物を鶏用試験飼料(日本配合飼料株式会社製、ブロイラー肥育前期用標準飼料SDBNo1)に10重量%添加し、本実施例の飼料を製造した。(比較例1) 実施例1におけるヤトロファ残渣を、ホルボールエステル成分の分解処理を行うことなくそのまま用いて、比較例1のヤトロファを得た。 そして、このヤトロファを実施例1と同じ鶏用試験飼料に10重量%添加し、本比較例の飼料とした。(比較例2) 脱脂大豆粕(日本配合飼料株式会社製 飼料用汎用大豆ミール)を実施例1と同じ鶏用試験飼料に10重量%添加し、本比較例の飼料とした。(評価)<1.マウスに対する急性毒性試験(経口LD50)> 実施例1により得られた発酵ヤトロファの急性毒性試験を、社団法人東京都食品衛生協会東京食品技術研究所により以下の方法で行った。(1)試験方法(i)投与液の調整 まず、実施例1により得られた発酵ヤトロファに精製水を加えて10%懸濁液とし、これを投与液として用いた。(ii)使用動物及び投与方法 マウス(ddY系、雄、10匹)を投与前4時間絶食させ、経口ゾンデ針を用いて胃内に1回強制投与した。(iii)観察方法と期間 投与後の死亡例及び異常の有無について、1週間観察した。(2)観察結果 その結果、2g以上/kg(経口LD50)の量の経口投与による死亡率はゼロであった。投与後、マウスの体重は順調に増加し、遅延毒性も観察されなかった。<2.重金属分析試験> 実施例1により得られた発酵ヤトロファの重金属分析試験を、財団法人日本食品分析センターにより行った。飼料の有害物質の指導基準「飼料分析基準」(平成7年11月15日付け7畜B第1660号)によれば、重金属等の含有量が、次の基準を超えた飼料は販売できないものとされている。(基準)ヒ素 2.0ppm、鉛 3.0ppm、カドミウム 1.0ppm、水銀 0.4ppm この試験結果を図15に示す。同図に示されるように、実施例1により得られた発酵ヤトロファは、上記指導基準を超える重金属を含むものではないことが明らかとなった。<3.鶏の雛の成長試験> 実施例1及び比較例1,2により得られた飼料を用いて、鶏の雛の成長試験を株式会社食環境衛生研究所(群馬県前橋市荒口町561−21)において以下の方法で行った。(1)試験方法 孵化後8日目の鶏の雛を1群7羽に群分けし、実施例1及び比較例1,2により得られた飼料、並びに対照区として無添加の飼料(実施例1と同じ鶏用試験飼料を無添加で用いたもの)を給与して、孵化後21日まで飼育した。どの試験区も試験終了時まで不断給与し、飲水は自由飲水とした。そして、期間中の1羽あたりの平均体重、及びその増加量、平均飼料摂取量、及び各群の健康状態を比較した。 使用した鶏の雛は、株式会社松本鶏園にて飼育されたブロイラー種鶏(銘柄:チャンキー)由来の種卵より孵化したワクチン歴のない28羽の雌雛であり、これを株式会社食環境衛生研究所の実験鶏舎にて7日間予備飼育したものである。 その結果を図16−図19に示す。図16−図19は、それぞれ本発明に係る高タンパク質含有有機物の製造方法に関する実施例1、比較例1,2、及び対照区の飼料により飼育した鶏の体重、体重増加量、飼料摂取量、及び飼育結果を示す図である。 図16及び図17に示される通り、実施例1の発酵ヤトロファを添加した飼料により飼育した鶏の雛は、比較例2の脱脂大豆粕を添加した飼料により飼育した鶏の雛、及び無添加の飼料により飼育した鶏の雛に対して遜色なく、順調に成長していることがわかる。 比較例1のホルボールエステル成分の分解処理を行っていないヤトロファを添加した飼料により飼育した鶏の雛は、試験開始5日目から全羽に食欲及び活力の低下が確認された。これらの雛の7日目の平均体重は、各試験区の中で最も小さく、21日目までに全羽が死亡した。なお、これらの雛を剖検し病理学的検査を行ったところ、皮下及び腹腔内にゼリー状浸出液が確認され、肝臓の点状出血が確認された。病変部の菌検査を実施した結果、クロストリジウム属の菌が分離されたことから、死亡はこの菌を原因とするものであり、ホルボールエステル成分の影響によるものではないと考えられる。 飼料の摂取量については、図18に示される通り、実施例1の発酵ヤトロファの摂取量は、比較例2の脱脂大豆粕、及び対照区の無添加飼料の摂取量に比較してやや少ない。しかし、図19に示される通り、実施例1の雛の健康状態は、比較例2及び対照区の雛と同様に良好であった。また、飼料摂取量あたりの体重増加量は、実施例1の雛が最も大きかった。 以上の結果をまとめると次の通りとなる。・体重増加量 脱脂大豆粕>発酵ヤトロファ≒無添加・飼料摂取量 脱脂大豆粕≒無添加>発酵ヤトロファ・飼料摂取量あたりの体重増加量 発酵ヤトロファ>脱脂大豆粕>無添加 このように、実施例1の発酵ヤトロファは、飼料として好適に使用できることが明らかとなった。 なお、実施例1の発酵ヤトロファは、鶏の雛がもっと摂取するような工夫(風味など)を加えることで、飼料摂取量をさらに増加させ、より有効に活用する可能性を持っていると考えられる。 本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。 例えば、上記の実施例ではヤトロファを用いているが、ホルボールエステル成分を含有するその他の有機物に、本発明を適用することも可能である。また、上記の評価は、鶏の雛について行ったものであるが、本発明により製造された高タンパク質含有有機物を、豚や牛、馬、その他の家畜の飼料として使用することも可能である。 本発明は、鶏などの家畜の飼料を製造するために、好適に利用することが可能である。 ホルボールエステル成分を含んだ有機物と、納豆菌(Bacillus subtilis var.natto)を混合した後、当該混合物を発酵させることにより、前記混合物中のホルボールエステル成分を微生物を使って分解させる ことを特徴とするホルボールエステル除去法。 前記ホルボールエステル成分を含んだ有機物の重量がAkgであるとき、前記ホルボールエステル成分を含んだ有機物と、A/2kgの水とを混合した後、当該混合物を高温高圧滅菌し、Akgの滅菌水に納豆菌体を1重量%溶かしたものを、前記高温高圧滅菌した後の混合物中にかく拌しながら添加し、十分混合されたものを、温度37〜50℃で期間2〜4週間発酵させる ことを特徴とする請求項1記載のホルボールエステル除去法。 前記ホルボールエステル成分を含んだ有機物の重量がAkgであるとき、前記ホルボールエステル成分を含んだ有機物と、A/2kgの水とを混合した後、当該混合物を高温高圧滅菌し、 Akgの滅菌水に請求項1又は2記載のホルボールエステル除去法にて前もって処理された有機混合物を5重量%溶かしたものを、前記高温高圧滅菌した後の混合物中にかく拌しながら添加し、十分混合されたものを、温度37〜50℃で期間2〜4週間発酵させる ことを特徴とするホルボールエステル除去法。 前記ホルボールエステル成分を含んだ有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas.L)の種子を搾油した後の絞りかすを使う ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のホルボールエステル除去法。 前記ホルボールエステル成分を含んだ有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas.L)の種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞りかすを使う ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のホルボールエステル除去法。 ホルボールエステルを含んだ有機物と納豆菌(Bacillus subtilis var.natto)を混合し、発酵させることにより、ホルボールエステルを分解する ことを特徴とする高タンパク質含有有機物の製造方法。 ホルボールエステルを含んだ有機物4質量部と、水0.5〜3質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、水0.5〜1質量部に納豆菌0.004〜0.2質量部を加えたものを添加して、30〜50℃で2〜4週間発酵させる ことを特徴とする請求項6記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。 ホルボールエステルを含んだ有機物4質量部と、水0.5〜3質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、水0.5〜1質量部に請求項6又は7記載の製造方法により得られた高タンパク質含有有機物0.02〜1質量部を加えたものを添加し、30〜50℃で2〜4週間発酵させる ことを特徴とする高タンパク質含有有機物の製造方法。 ホルボールエステルを含んだ有機物と納豆菌を混合して前培養し、次いでホルボールエステルを含んだ有機物と納豆菌を混合し、この混合物に前培養産物を添加して本発酵させることにより、ホルボールエステルを分解する ことを特徴とする請求項6記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。 ホルボールエステルを含んだ有機物2質量部と、水0.5〜1.5質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、水0.5質量部に納豆菌0.002〜0.1質量部を加えたものを添加して、30〜50℃で1〜7日間前培養し、 ホルボールエステルを含んだ有機物5質量部と、水2〜4質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、水1質量部に前培養により得られた前培養産物1〜4質量部を加えたものを添加し、30〜50℃で2〜4週間本発酵させる ことを特徴とする請求項9記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。 前記ホルボールエステル成分を含んだ有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas.L)の種子を搾油した後の絞りかす、又は、この種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞りかすを用いる ことを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。 ホルボールエステル成分を含んだ有機物と、納豆菌(Bacillus subtilis var.natto)とを混合して発酵させ、前記ホルボールエステル成分を分解して得られた発酵産物を含有する ことを特徴とする高タンパク質含有有機物。 前記ホルボールエステル成分を含んだ有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas.L)の種子を搾油した後の絞りかす、又は、この種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞りかすを用いる ことを特徴とする請求項12記載の高タンパク質含有有機物。 ホルボールエステルを含んだ有機物と納豆菌(Bacillus subtilis var.natto)を混合し、発酵させることにより、ホルボールエステルを分解する ことを特徴とする飼料の製造方法。 ホルボールエステルを含んだ有機物4質量部と、水0.5〜3質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、水0.5〜1質量部に納豆菌0.004〜0.2質量部を加えたものを添加して、30〜50℃で2〜4週間発酵させる ことを特徴とする請求項14記載の飼料の製造方法。 ホルボールエステルを含んだ有機物4質量部と、水0.5〜3質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、水0.5〜1質量部に請求項14又は15記載の製造方法により得られた飼料0.02〜1質量部を加えたものを添加し、30〜50℃で2〜4週間発酵させる ことを特徴とする飼料の製造方法。 ホルボールエステルを含んだ有機物と納豆菌を混合して前培養し、次いでホルボールエステルを含んだ有機物と納豆菌を混合し、この混合物に前培養産物を添加して本発酵させることにより、ホルボールエステルを分解する ことを特徴とする請求項14記載の飼料の製造方法。 ホルボールエステルを含んだ有機物2質量部と、水0.5〜1.5質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、水0.5質量部に納豆菌0.002〜0.1質量部を加えたものを添加して、30〜50℃で1〜7日間前培養し、 ホルボールエステルを含んだ有機物5質量部と、水2〜4質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、水1質量部に前培養により得られた前培養産物1〜4質量部を加えたものを添加し、30〜50℃で2〜4週間本発酵させる ことを特徴とする請求項17記載の飼料の製造方法。 前記ホルボールエステル成分を含んだ有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas.L)の種子を搾油した後の絞りかす、又は、この種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞りかすを用いる ことを特徴とする請求項14〜18のいずれかに記載の飼料の製造方法。 ホルボールエステル成分を含んだ有機物と、納豆菌(Bacillus subtilis var.natto)とを混合して発酵させ、前記ホルボールエステル成分を分解して得られた発酵産物を含有する ことを特徴とする飼料。 前記ホルボールエステル成分を含んだ有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas.L)の種子を搾油した後の絞りかす、又は、この種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞りかすを用いる ことを特徴とする請求項20記載の飼料。