タイトル: | 公表特許公報(A)_アクリロニトリルおよびシアン化水素を同時製造するための改良された方法 |
出願番号: | 2010549868 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 253/32,C07C 255/08 |
ブレント イー.バッシャム リチャード ティー.スティメック JP 2011513425 公表特許公報(A) 20110428 2010549868 20090305 アクリロニトリルおよびシアン化水素を同時製造するための改良された方法 イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー 390023674 E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 110001243 ブレント イー.バッシャム リチャード ティー.スティメック US 12/074,775 20080305 C07C 253/32 20060101AFI20110401BHJP C07C 255/08 20060101ALI20110401BHJP JPC07C253/32C07C255/08 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2009036111 20090305 WO2009111605 20090911 14 20101105 4H006 4H006AA02 4H006AD16 4H006AD18 4H006AD40 4H006BB31 4H006BC31 4H006BC51 4H006BC53 4H006BD84 本発明は、向上した制御および効率を有する、アクリロニトリルおよびシアン化水素の同時製造のための方法に関する。 アクリロニトリル(ACRN)は、アクリル繊維、合成ゴム、ナイロンなどの種々のポリマーの合成に重要なモノマーであり、アクリル酸およびアクリルアミドの出発原料である。アクリロニトリルを製造する方法は周知であり、プロピレン/プロパンがアンモニアおよび酸素(空気)と触媒上で高温にて反応する(「アンモ酸化」)、いわゆる「ソハイオ法」が挙げられる。シアン化水素(HCN)およびアセトニトリル(CH3CN)が副生成物として生成される。 HCNは、出発原料または中間体として広く使用されているため、貴重な副生成物である。HCNは、例えば、ポリアミドなどの様々なポリマーおよび化学製品の合成の出発原料として使用される。HCNは、シアン化ナトリウムおよびシアン化カリウムなどの金属シアン化物の出発原料であり、この2種類の化合物は、冶金における金の回収および鋼の硬化に重要である。 ソハイオ法におけるHCN収率を増加するために、「メタノール注入」と一般に呼ばれる技術が用いられる。メタノール注入は、アクリロニトリル反応器にメタノールガスまたは供給材料を添加して、HCN生成物を増加することを含む。従来のソハイオ法では、アクリロニトリル:HCNの比約9:1となるのに対して、メタノール注入を用いた場合、この比が8:1に低減される。通常のプラントにおいて、メタノール注入を用いることによって、1年につきアクリロニトリル約3億6000万〜4億ポンドが同時生成されると共に、1年につきHCN約1000万ポンド増加する。 メタノール注入にはいくつかの欠点がある。システムに負担がかかるため、アクリロニトリルの全収率が5%も減少する。メタノールによって、反応器のプロピレン含有量が減り、その結果、生成されるアクリロニトリルが少なくなる。メタノールが反応する時に触媒表面上で放出される高熱は、触媒の失活を引き起こし、より頻繁な触媒の交換が必要となる。メタノールは、アンモ酸化中間体とも反応し、ポリマー形成および下流装置における汚損を引き起こし得る反応性中間体を形成する。 メタノールは、システムにおける酸素とも反応し、この反応物を消費し、酸化炭素などの不要な副生成物を形成する。 あまり知られていないメタノール注入法の欠点は、メタンをメタノールに転化する必要があるために、装置およびエネルギーの費用が増加することである。メタノールは通常、「合成ガス」または「合成用原料ガス」と一般に呼ばれる一酸化炭素および水素を生じる、銅触媒上での高温および高圧下での蒸気とメタンの反応によって生成される。次いで、合成ガスは、追加の高温反応を受け、メタノールが生成する。ACRN反応システムにおけるHCNの生産を増加すると同時に、メタンをメタノールに転化する中間工程の非効率を避けることが望ましい。 アクリロニトリルプロセスにおけるHCNの生産を増加するために、他のアルコールおよびケトンが添加されている。かかるプロセスでは、HCN:ACRNの比が増加されるが、アクリロニトリルの総ポンド数が減少し、反応器に追加のアルコールおよびケトンを添加することによって、触媒の失活がさらに促進される。 HCNは高い毒性かつ引火性のガスである。高濃度では、重合および分解による発熱暴走反応のリスクが高まり、潜在的に爆発し易い状態である。したがって、HCNを使用かつ/または生成するいずれのプロセスにおいても、安全性が最優先でなければならないことが重要である。したがって、プロセスにおいてHCNの濃度を増加する場合、プロセスの安全な操作を確保するために、細心の注意を払う必要がある。 アクリロニトリルシステムにおける高濃度のHCNは比較的不安定であり、固体重合体HCNがヘッドカラム中に形成し、カラム圧力が低下する。ヘッドカラムは、その中でHCNおよびACRNが分離される蒸留カラムである。圧力低下によって、カラム温度が上昇し、さらにHCN重合に有利となる。固体重合体生成物は、リリーフシステム、バルブ、機器、および配管などの装置を詰まらせ、その結果として、HCNに伴うリスクが増加する。 固体重合体HCNおよび他の下流プロセス装置のクリーニングに伴うダウンタイムは、アクリロニトリルシステムにおける高濃度のHCNと共に増加し、その結果、かなりの費用がかかり、ACRNおよびHCNの生産が低下する。米国特許第6,296,739号明細書および米国特許第6,793,776号明細書において、Godboleは、ヘッドカラムにおける水層の量を低減することに基づく、HCN重合のリスクを低減する方法を開示している。Godboleの方法は特に、再循環HCNまたは純粋なHCNをヘッドカラムに添加することによって、HCNとACRNの還流比を増加し、ポリマー形成の可能性を低減することを含む。一般的には、カラム圧力を低減し、したがってカラム温度が低下する。 ACRN:HCNの比が従来のソハイオ法で得られる比よりも低い、アクリロニトリルおよびHCNの同時製造が依然として必要とされている。この比を変えることができることがさらに望ましい。触媒失活などのアクリロニトリルプロセスおよび下流回収および精製作業に対する悪影響を避けることがさらに望ましい。HCNへのメタンの効率的な転化を有すること、または少なくとも、メタノールを精製する装置およびエネルギーの費用を省くことがさらに望ましい。酸素消費の効率を維持すること、および不要な副生成物の形成を最小限に抑えることがさらに望ましい。既存のアクリロニトリル回収および精製装置を使用することがさらに望ましい。安定性を損なわない方法でHCN濃度の増加が果たされることがさらに重要である。本発明はこれらの要求を満たす。 本発明は、(a)吸収カラムにおいて、シアン化水素を含む流れとアクリロニトリル反応器生成物流れとを、水と合わせ、シアン化水素に対するアクリロニトリルの比が、1に対して約9以下である複合生成物流れを生成する工程と;(b)その複合生成物流れを逐次、回収カラム、水層および有機層を有するデカンター、およびヘッドカラムにおいて処理する工程であって、pHが、酸を添加することによって、吸収カラムおよび回収カラムにおいてpH7.0以下に制御され、デカンターおよびヘッドカラムにおいてpH4.5未満に制御される工程とを含む、アクリロニトリルとシアン化水素を同時製造する方法である。複合生成物流れにおける、シアン化水素に対するアクリロニトリルの比は一般に、1に対して2から、1に対して9であり、1に対して2から、1に対して5であってもよい。シアン化水素を含む流れは好都合なことに、シアン化水素合成反応器からシアン化水素生成物流れとして提供することができる。 したがって、従来のソハイオアクリロニトリル法に比べて、多い量のシアン化水素が回収される、シアン化水素およびアクリロニトリルを回収および精製する方法が提供される。アクリロニトリルとシアン化水素の相対比は、プロセスにおけるシアン化水素を含むストリームの供給量を調整することによって制御することができる。 本質的に、本発明に従って、アクリロニトリルプロセスおよびシアン化水素プロセスは、並行して操作することができ、個々のプロセスからの生成物流れは、1回の回収/精製操作で結合される。意外なことに、プロセスにおける比較的高濃度のシアン化水素では、HCN重合が実質的に防止され、プロセスは安全に操作される。さらに、意外なことに、プロセスにおける添加されたHCNは、別個の精製システムを必要とすることなく、回収および精製のために、ACRN生成物流れと簡単に合わせることができる。本発明の方法のフローチャートを表す。 別個の反応器システムからシアン化水素とアクリロニトリルを同時製造し、1つの回収/精製システムにおいて合わせる方法が本明細書において提供される。この方法は、シアン化水素反応器生成物流れなどのシアン化水素を含む流れをアクリロニトリル反応器生成物流れと合わせ、複合生成物流れを生成する工程であって、複合生成物流れにおける、シアン化水素に対するアクリロニトリルの比が、1に対して9以下、好ましくは1に対して2から、1に対して9である工程と、アクリロニトリルおよびシアン化水素を回収および精製するために、複合生成物流れをシステムに導入する工程とを含む。アクリロニトリル反応器生成物流れ アクリロニトリルは本発明において、例えば、好ましくはソハイオ法によって生成される。このプロセスにおいて、プロピレン、プロパンまたはその組み合わせが、触媒上で高温にてアンモニアおよび酸素と反応する。シアン化水素およびアセトニトリルは、副生成物として生成される。任意の酸素源を使用することができる。一般に、酸素源は空気である。有用な触媒は公知であり、一般にモリブデン酸ビスマスをベースとする。 反応は、約260℃〜600℃、好ましくは310℃〜510℃、さらに好ましくは400℃〜510℃の温度で行われる。圧力は一般に、5〜30psig(34〜207kPa)である。接触時間は一般に、0.1〜50秒の範囲である。 アクリロニトリル生成物流れ(反応器流出物)は、未反応反応物、アクリロニトリル、シアン化水素、アセトニトリルおよび水を含む気体流れである。アクリロニトリル生成物流れが、水がその中に供給される失活剤を通過し、この流れの温度が低下し、未反応アンモニアが除去される。未反応アンモニアは、反応物としてプロセスに再循環される。あるいは、硫酸を水と共に添加して、硫酸アンモニウムを生成することができ、これは水性流れとして除去される。 アクリロニトリル製造の他の方法も可能であり、本発明は、上述のソハイオ法に限定されないことを理解されたい。シアン化水素を含む流れ シアン化水素を含む流れは、いずれかのシアン化水素源から得ることができる。好都合なことに、シアン化水素流れは、シアン化水素合成反応器からシアン化水素生成物流れとして提供される。 シアン化水素は、独立型のプロセスとして、金網状の白金、白金−ロジウム合金、または白金−イリジウム合金触媒上で気圧および1000℃より高い温度にてアンドルソフ法において、天然ガス(メタン)、アンモニア、および酸素を反応させることから生成することができる。あるいは、デグサBMA法において約1300℃にて、白金で内張りまたは被覆された多孔質セラミック管に通されたメタンおよびアンモニアから、シアン化水素を生成することができる。これらのプロセスの詳細な説明は、例えばEncyclopedia of Chemical Technology(第4版、第7巻、p 753〜782)(Kirk−Othmer(編))に記載されている。HCN製造の代替法が存在し、本発明は上文に参照される方法に限定されないことを理解されたい。 シアン化水素生成物流れはシアン化水素を含み、かつ限定されないが、メタン、酸素、窒素などの未反応反応物、および限定されないが水素などの他の不純物も含み得る。複合生成物流れ 本発明において、アクリロニトリル生成物流れとシアン化水素を含む流れを合わせて、複合生成物流れが形成される。複合生成物流れにおける各成分の濃度を変化させて、標準ソハイオ法で生成されるシアン化水素に対するアクリロニトリルの一般的な比である、1に対して9から、1に対して2の範囲の、シアン化水素に対するアクリロニトリルの比を形成することができ、1に対して2から、1に対して5であることができる。好都合なことには、この比は、供給されるHCNの割合を増加または減少することによって、例えばHCN合成反応器からの生成速度を増加または減少することによって調節することができる。複合生成物流れは、回収および精製システム内に導入される。 アクリロニトリル生成物流れとシアン化水素を含む流れは、回収/精製操作の吸収カラム中で合わされる。流れを吸収カラム中で水と合わせ、シアン化水素に対するアクリロニトリルの比が、1に対して約9以下である、シアン化水素とアクリロニトリルを含む水性流れが得られる。 本発明の一般的な方法によって、1年につきアクリロニトリル約3億6000万〜4億ポンド(163,000〜181,000メートルトン)およびシアン化水素4000万〜1億5000万ポンド(18,000〜68,000メートルトン)が生産される。更なるシアン化水素が生産されるが、意外なことに、アクリロニトリル収量の実質的な低下はない。すなわち、HCNおよびアクリロニトリルは、アクリロニトリルの収量を低減すると考えられる付加物を形成し得るが、HCNの所定の高濃度で、収量の低下が起こらないことは意外なことである。さらに、メタノール注入と異なり、アクリロニトリル反応器の容量への影響はない。回収および精製 本発明の方法は、吸収カラム、回収カラム、デカンターおよびヘッドカラム中に複合生成物流れを通すことを含む。当業者には公知のように、本明細書における「カラム」とは、蒸留カラムを意味する。ヘッドカラムにおいて、粗製HCNが、粗製ACRNから分離され、さらに精製するためにHCN蒸留カラムに送られ、次いでさらに反応させるために、かつ/または保管するために送られる。粗製ACRNは、ヘッドカラムから乾燥カラムへと送られ、次いでさらに精製および保管するために生成物カラムへと送られる。一般的な回収および精製プロセスの詳細な説明は当業者には公知であり、米国特許第4,234,510号明細書およびEncyclopedia of Chemical Technology(第4版、第7巻、p.753〜782)(Kirk−Othmer(編))に開示されている。 当業者には理解されるように、従来のソハイオアクリロニトリル法と比較して高濃度のHCNに対して装置を保護するために、回収および精製装置において、炭素鋼よりもステンレス鋼などの適切な構成材料が使用されるべきである。 標準ACRN生成物流れに関係するメタンおよび水素などの引火性ガスは、複合生成物流れの一部として吸収カラム中に存在する。水素、メタン、および酸素、ならびに他の非吸収性ガスが、複合生成物流れから分離され、灰化または更なる分離のために、吸収カラムの上部からオフガスとして除去される。本発明の一部として、吸収カラムにおける酸素の濃度は高くなり、例えばアクリロニトリル反応器内に供給される空気とプロピレンの比を調節することによって、爆発限界未満に酸素濃度を維持することに注意を払うべきであることは、当業者によって理解されよう。センサーおよび制御システムは公知であり、これらの調整を加えるために市販されている。 本発明において、吸着カラムに存在するHCNの濃度は、同位置でのHCNの濃度が1重量%である一般的なソハイオ法と比較して、例えば約3重量%まで増加する。さらに、デカンターにおけるHCN濃度は、20〜30重量%と高くなる。したがって、高いHCN濃度で安全に操作するために、条件を維持して、HCN重合および/または分解を防止しなければならない。 より高い濃度のHCNを収容する本発明の方法において、回収/精製システムに沿ってpHおよび温度をモニターするための制御システムが提供される。具体的には、温度制御およびpH制御の組み合わせによって、HCN重合が起こらないように条件が維持される。さらに具体的には、吸収カラム、回収カラム、およびデカンター中に存在する時に循環水性ストリームは、pH7以下で維持される。吸収カラムへの水性供給材料は一般に、pH5.5〜7.0を有する。吸収カラムは好ましくは、pH5.0〜6.5で維持され、次いで回収カラムに供給される。pHは、吸収カラムにおいてモニターされ、以下に記述されるように、必要であれば、pHを下げるために酸が添加される。 好ましくは、回収カラムのpHは、システム中のアクロレインを制御するために、中性pHに近く、すなわちpH6.8〜7、例えばpH6.8である。必要であれば、pHを上げるために、ソーダ灰などの塩基が回収カラムに添加される。 HCN重合がpHと温度の組み合わせによって影響を受けるため、pHに基づいて温度も調節される。 同様に、デカンター、ヘッドカラムおよび粗製HCNがそこから回収されるHCNカラムなどにおける、有機ストリームにおいて、pHは、pH4.5未満、好ましくはpH3.8〜4.2に制御される。温度は同様に、pHと併せて制御される。例えば、デカンターは好ましくは、温度約50℃未満、pH3.8〜4.2を有する。 制御システムは、分散制御システムなどの標準制御システムまたは他のフィードバック制御システムであることができる。デバイスは、温度およびpHをモニターおよび制御するために、回収/精製システムに、特にデカンター上に制御システムの一部として取り付けられる。例えばカラムへの冷却液を増加または減少することによって、温度を調節するために、かつ例えば吸収カラム、回収カラム、デカンター、ヘッドカラムおよびHCNカラムの1つまたは複数への酸の流れを添加、増加または減少することによって、pHを調節するために、デバイスは、熱電対、pHメーター、フィードバックコントローラー、および制御デバイスを含み得る。従来の操作下では、HCN濃度が比較的低く、酸の添加は、ヘッドカラムおよびHCN蒸留カラムでのみ行われた。 酸は、pHを4.5未満、好ましくは3.8未満に下げることができる酸であることができる。好ましくは、酸は、グリコール酸、酢酸、リン酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、グリセリン酸、クエン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸、スルファミン酸、これらの酸のエステル、およびその2種類以上の組み合わせである。さらに好ましくは、酸はグリコール酸である。 pHの他には、温度が制御される。デカンターの温度は、50℃未満、好ましくは38℃〜42℃であるべきである。プロセスの冷却は通常、デカンターなどにおける、冷却水の循環によって制御される。他の冷却方法が許容可能に提供され、冷却方法は、構成材料と適合し、回収および精製を妨げないことを理解されたい。 本発明は、現在実施されているアクリロニトリルとシアン化水素の同時製造と比較して、様々な利点を有する。第1の利点は、生産されるACRNおよびHCNの量である。ACRN反応器の生産は減少しておらず、プラントの秘めた可能性が最大限に実現され、HCNの生産は、通常の非メタノール注入プロセスにおけるHCN4000万ポンド(18,000メートルトン)から、かつメタノール注入プロセスにおける1年当たり5000万ポンド(23,000メートルトン)から、1年当たり1億1000万〜1億5000万ポンド(50,000〜68,000メートルトン)の範囲に増加する。 HCNの量は、市場のニーズに基づいて選択的に生産することもでき、ACRN触媒またはプロセス条件に影響を及ぼすことなく低減または増加することができる。 その他の利点は、メタンをメタノールに転化し、次いでHCNに転化する必要が無くなり、最終生成物に対する原料の総炭素バランスが改善されることである。 本発明の他の利点は、回収および精製プロセスにおける高濃度のHCNを処理する能力であると同時に、さらにHCNの重合が防止されることである。HCN重合のリスクは、HCN濃度が増加するにしたがって増加するため、本発明の方法において比較的高濃度のHCNが、HCN重合を実質的に起こすことなく達成され、安全な操作が維持されることは意外なことである。 重合を防ぐ以前の試みでは、著しく装置および費用が増え、または圧力が減少し、それによって総生産量も減少した。本発明の方法を用いて、ダウンタイムが低減され、プラント生産量は、装置費用が最低限の一般的なアクリロニトリルプロセスと一致する。図面の詳細な説明 図1は、本発明のシアン化水素(HCN)とアクリロニトリル(ACRN)プロセスの一般的な線図である。ACRN生成物流れ4は、ACRN反応器1におけるプロピレン、アンモニア、および空気のアンモ酸化によって得られる。HCN生成物流れ3は、アンドルソフ反応器などのHCN反応器2におけるメタン、アンモニア、および空気の反応によって得られる。ACRN生成物流れ4は、クエンチカラム5に移され、そこで熱いACRN生成物流れは、ライン6を通して供給される硫酸を含有する水スプレーで冷却され、ACRN生成物流れ中の未反応アンモニアが中和されて硫酸アンモニウムが生成され、ライン8を通じてクエンチカラム5カラムから廃水カラム9へと、硫酸アンモニウムが除去される。回収されたHCN/ACRNは、ライン7を通してクエンチカラム5に再び循環される。廃水パージ流れ10は、廃水カラム9から引き出される。 次いで、冷却されたACRN生成物流れ11が、吸収カラム12においてHCN生成物流れ3と合わせられ、そこでHCNおよびACRNは、水溶液中に吸収されるにしたがって複合成物流れ14を形成する。水が、ライン13を通して吸収カラムに提供される。非吸収化合物が、オフガス15として分離かつ除去される。 次いで、複合生成物流れ14を含有する水溶液が、生成物を精製するために回収カラム16に移される。複合生成物流れ21は、デカンター22に供給される。ストリッパーカラム18からの水が、ライン13を通じて吸収カラム12に供給される。 別の流れ17が、回収カラム16から引き出され、ストリッパーカラム18に供給され、そこから粗製アセトニトリル19が回収され、残りの水性流れ20が回収カラム16に再び供給される。粗製アセトニトリル19は回収されるか、または灰化のために送られる。 回収カラム16からの生成物流れ21は、デカンター22に移され、そこで流れが分離し、有機層と水層が形成される。水層が分離され、還流フロー29として回収カラム16に戻される。有機層は、ライン28を通じてヘッドカラム30に移され、そこで粗製ACRN31および粗製HCN32に分離される。 粗製HCN32はHCNカラム33に送られ、そこでHCNはさらに精製され、保管のために(図示せず)ライン40を通じて送られる。HCNカラム33から回収されたACRN41は、クエンチカラム5に戻される(HCNカラム33からクエンチカラム5までの、回収ACRN41が戻るラインは図示されていない)。 粗製ACRN31は、乾燥カラム34に送られ、そこから水がライン37を通して除去される。乾燥ACRN35は、保管のために(図示せず)ライン39を通じて送られる前にさらに精製するために、ACRN生成物カラム36に移され、廃棄物がACRN生成物カラム36からライン38を通じて除去される。 アセトニトリル廃水流れ42は、結合廃水流れ43として他の廃水流れと合わせられ、回収され、必要に応じて処理される。 pH3.8〜4.4にpHを制御するための酸が、ライン23、24、25、26、または27のいずれかを通じて、デカンター22、ヘッドカラム30、吸収カラム12、回収カラム16、およびHCNカラム33に添加される。HCN濃度が十分に高い、すなわち1重量%を超える場合、HCN重合のリスクが高くなるため、適切な制御システム(図示せず)を用いて、各位置でpHおよび温度をモニターする。 図1に図示するように、フローシステムにおいて以下の実施例を行った。比較例については、HCN合成反応器およびHCN生成物ストリームは存在しない。ACRN生成物流れ(アクリロニトリル合成反応器からの反応器流出物)をクエンチカラム中で処理して、温度を46℃に下げ、次いで吸収カラムに供給した。HCN生成物流れ(実施例1および2のみ)を同様に、温度約55℃に急冷し、吸収カラム中でACRN生成物流れと合わせた。生成物流れ(ACRNまたは複合流れ)が、吸収カラムから回収カラム、デカンターへと通過し、水層が有機層から分離され、その水層は回収カラムに再循環され、有機層はヘッドカラムに供給され、そこで粗製HCNが、粗製ACRNから分離された。粗製ACRNは、ヘッドカラムの下部から除去され、乾燥カラムに送られ、次いでさらに精製され、パッケージされる。粗製HCNは、ヘッドカラムの上部から除去され、さらに精製、反応のために、所望の場合にはパッケージするために、HCN蒸留カラム(HCNカラム)に送られた。比較例 1年にアクリロニトリルを1億8000万ポンド(8200万kg)、シアン化水素を2000万ポンド(900万kg)生産することができる公称(nominal)ACRN設備については、その設備によって、ソハイオアンモ酸化法においてアクリロニトリル約50,000ポンド/時間(pph)(23,000kg/時,kgph)およびHCN6000pph(3000kgph)が生産された。ACRN設備からの流出物は、温度約450℃を有するACRN生成物流れであり、クエンチカラムに供給された。未反応アンモニアを除去するために硫酸および水を添加した後、温度46℃の流れを吸収カラム、回収カラム、デカンターに供給し、水層が有機層から分離され、その水層は回収カラムに再循環され、有機層はヘッドカラムに供給され、そこで粗製HCNが、粗製ACRNから分離された。粗製ACRNは、ヘッドカラムの下部から除去され、乾燥カラムに送られ、さらに精製され、パッケージされる。粗製HCNは、ヘッドカラムの上部から除去され、さらに精製、反応のために、所望の場合にはパッケージするために、HCN蒸留カラムに送られた。 この比較例において、グリコール酸をカラムに添加することによって、ヘッドカラム、HCNカラムおよび乾燥カラムでのpHをモニターおよび制御した。 精製後のACN:HCNの生成物比は9:1であった。実施例1 以下の変更を加えて、比較例のプロセスを繰り返した。シアン化水素反応器を操作して、HCN生成物流れを生成し、比較例で使用され、かつ上述のようなACRN回収/精製システムにおいてACRNプロセスからの急冷流れとそれを合わせた。ACRNは、比較例において生成されたのと同じ割合で生成された。ACRN反応器およびシアン化水素反応器から生成されたHCNの量は、比較例で生成された量の約2.5倍であった。 流れにおいて、特に回収カラムおよびデカンターにおいてHCNの濃度が高いことによって、安全に対する最大の問題が生じ、有機相において高濃度のHCNが存在する場合、重合を受けやすい。この実施例1において、重合に対して安定化する必要に応じて、グリコール酸をカラムまたはデカンターに添加することによって、吸収カラム、回収カラム、デカンター、ヘッドカラム、および乾燥カラムでのpHをモニターおよび制御した。 各容器の冷却システムへの冷却水のフローを制御することによって、これらの容器のそれぞれにおいて、温度もモニターおよび制御した。 精製後、HCNが実質的に重合することなく、アクリロニトリル:HCNの比は3:1であった。実施例2 実施例1のプロセスを繰り返したが、生成されたHCNの量は変動し、ACRN:HCNの比2:1、4:1および5:1が得られ、HCNとACRNの同時製造の割合を変化させる能力が示された。この実施例において、重合に対して安定化する必要に応じて、グリコール酸をカラムまたはデカンターに添加することによって、吸収カラム、回収カラム、デカンター、ヘッドカラム、および乾燥カラムでのpHをモニターおよび制御した。したがって、本発明の方法は、回収および精製作業において追加の投資をする必要性を最小限にしながら、ACRNに対して変動量のHCNを提供することができる。HCNの重合は実質的に防止された。 アクリロニトリルとシアン化水素を同時製造する方法であって、(a)吸収カラムにおいて、シアン化水素を含む流れとアクリロニトリル反応器生成物流れとを、水と合わせ、シアン化水素に対するアクリロニトリルの比が、1に対して約9以下である複合生成物流れを形成する工程と;(b)回収カラム、水層および有機層を有するデカンター、およびヘッドカラムにおいて、前記複合生成物流れを逐次処理する工程であって、pHが、吸収カラムおよび回収カラムにおいて酸を添加することによってpH7.0以下に制御され、かつデカンターおよびヘッドカラムにおいてpH4.5未満に制御される工程とを含む方法。 前記複合生成物流れにおけるシアン化水素に対するアクリロニトリルの比が、1に対して2、から1に対して9である、請求項1に記載の方法。 前記複合生成物流れにおけるシアン化水素に対するアクリロニトリルの比が、1に対して2から、1に対して5である、請求項1に記載の方法。 シアン化水素を含む前記流れが、シアン化水素合成反応器からシアン化水素生成物流れとして提供される、請求項2に記載の方法。 工程(b)が、ヘッドカラムにおいて粗製アクリロニトリル流れから粗製HCN流れを分離し、HCN蒸留カラムにおいて前記粗製HCN流れを処理し、乾燥カラムにおいて前記粗製アクリロニトリル流れを処理することをさらに含み、pHが、前記HCN蒸留カラムにおいてpH4.5未満に制御される、請求項1または4に記載の方法。 pHが、前記吸収カラムにおいてpH5.5〜7.0に制御され、pHが、前記回収カラムにおいてpH6.8〜7.0に制御され、かつpHが、前記デカンターにおいてpH3.8〜4.2に制御される、請求項5に記載の方法。 前記デカンターにおける温度が50℃未満である、請求項6に記載の方法。 前記吸収カラムにおけるシアン化水素の濃度が1〜3重量%であり、かつ前記デカンターにおけるシアン化水素の濃度が20〜30重量%である、請求項2に記載の方法。 前記酸が、グリコール酸、酢酸、リン酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、グリセリン酸、クエン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸、スルファミン酸、これらの酸のエステル、またはその2種類以上の組み合わせである、請求項1または4に記載の方法。 前記酸がグリコール酸である、請求項9に記載の方法。 アクリロニトリルとシアン化水素を同時製造する方法は、シアン化水素を含む流れとアクリロニトリル反応器生成物流れとを合わせて、変化し得る、シアン化水素に対するアクリロニトリルの比が、1に対して約9以下である、複合生成物流れを生成する工程と;アクリロニトリルプロセスの回収/精製システムにおいて複合生成物流れを処理する工程であって、HCN重合を防ぐために、酸を添加することによって、pHが制御される工程とを含む。アクリロニトリル:シアン化水素の比は一般に、2:1〜9:1である。シアン化水素を含む流れは有利なことには、シアン化水素合成反応器からのシアン化水素生成物流れである。