タイトル: | 特許公報(B2)_プロゾーン現象検出方法、分析方法、プロゾーン現象検出装置および分析装置 |
出願番号: | 2010547892 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 33/543 |
長谷川 洋典 大代 京一 福永 悟志 JP 5714912 特許公報(B2) 20150320 2010547892 20100716 プロゾーン現象検出方法、分析方法、プロゾーン現象検出装置および分析装置 アークレイ株式会社 000141897 辻丸 光一郎 100115255 中山 ゆみ 100129137 吉田 玲子 100146064 伊佐治 創 100154081 長谷川 洋典 大代 京一 福永 悟志 JP 2009185298 20090807 20150507 G01N 33/543 20060101AFI20150416BHJP JPG01N33/543 515JG01N33/543 521 G01N 33/543 特開2006−250787(JP,A) 特許第0376082(JP,B2) 特開2002−122599(JP,A) 国際公開第03/014740(WO,A1) 特表2012−524277(JP,A) 16 JP2010062066 20100716 WO2011016326 20110210 17 20130523 三木 隆 本発明は、プロゾーン現象検出方法、分析方法、プロゾーン現象検出装置および分析装置に関する。 近年、医療分野の診断において、細菌やウイルス等の病原体の検出や妊娠の有無を判定する検体分析用具が普及している。前記検体分析用具の中でも、イムノクロマトグラフィ法を利用した検体分析用具は、簡便かつ迅速に検出可能なため、汎用されている。前記イムノクロマトグラフィ法による検体分析用具の検出原理は、例えば、つぎのとおりである。すなわち、まず、多孔質基材から形成され、前記多孔質基材の検出部に固定化抗体が固定された検体分析用具を準備する。これに、試料(検体)と着色粒子で標識した標識化抗体とを加える。前記試料中に分析対象成分である抗原が存在すると、前記抗原を介して、前記標識化抗体と前記固定化抗体とが複合体を形成し、前記着色粒子により多孔質基材上の検出部が着色する。前記標識としては、着色粒子の他に、酵素と、酵素反応により着色する基質との組み合わせ等もある。前記検出部は、通常、ライン状である。着色が確認された場合は、試料中に分析対象成分が存在するとして陽性と判定し、着色がなければ試料中に分析対象成分が存在しないとして陰性と判定する。前記イムノクロマトグラフィ法においては、前記検出部を複数設けたり、段階的な着色を確認することで、試料中の分析対象成分を半定量的に検出する試みもなされている(例えば、特許文献1参照)。 イムノクロマトグラフィ法を用いた分析対象成分の検出においては、分析対象成分の濃度が高い場合に発生するプロゾーン現象が問題となる。プロゾーン現象とは、実際の試料中の分析対象成分が高濃度であるにも関わらず、見かけ上、存在しない若しくは低濃度と判断される現象である。図5は、イムノクロマトグラフィ法における抗原の濃度と検出部の吸光度(着色の度合い)との関係を示した図である。抗原濃度が高くなるに従い吸光度は上昇するが、一定の濃度以上になると、吸光度が得られない(着色しない)という現象が発生する。そのため、例えば、抗原濃度がZ1の場合に吸光度Xが検出されるが、高濃度領域の濃度Z2においてもプロゾーン現象が発生するために同程度の吸光度しか検出されないことになる。この現象は、試料中の分析対象成分が過剰に存在すると、前記固定化抗体が、標識化抗体と反応していない分析対象成分で埋まってしまい、標識化抗体と反応した分析対象成分は前記固定化抗体に捕捉されないことに起因する。そのため、分析においては、高濃度領域で、見かけ上、陰性(偽陰性)となってしまうことがあり、真に陰性の場合と区別するのが困難である。プロゾーン現象による偽陰性が疑われる場合には、試料を適宜希釈して再検査をする必要があった。一方、プロゾーン現象の発生を検出するために、検体分析用具の固定化抗体として、親和性が異なる複数の抗体を使用したり(例えば、特許文献2参照)、複数の検出部において、抗体の量を段階的に変えたりする試み(例えば、特許文献3参照)が提案されている。特開平8-278305号公報WO2003/014740特許第3644780号公報 しかしながら、前記の方法では、検体分析用具の構造を複雑にしなければならない。また、複数の検出部の最下流の領域で反応が終了するまでプロゾーン現象の発生を検知することができず、検査効率の低下のおそれがある。これらの問題は、検体に含まれる分析対象成分である抗原に特異的に結合する抗体を用いる免疫反応を利用した免疫分析方法に限られず、検体に含まれる分析対象成分に特異的に結合する物質(特異的結合物質)を用いる分析方法全般において起こり得る。 そこで、本発明は、従前の検体分析用具を用いても簡易にプロゾーン現象の発生を検出し、イムノクロマトグラフィ法等を用いた検査を効率よく行うことが可能なプロゾーン現象検出方法、分析方法、プロゾーン現象検出装置および分析装置の提供を目的とする。 前記目的を達成するために、本発明のプロゾーン現象の検出方法は、試料中の分析対象成分に特異的に結合する物質を含む検体分析用具を用い、前記検体分析用具が、多孔質基材に、前記試料の移動方向の上流から下流にかけて、試料供給部、試薬部および検出部が配置された検体分析用具であり、前記試薬部が、前記分析対象成分に対し特異的に結合する標識化物質を含み、前記検出部が、前記分析対象成分に対し特異的に結合する固定化物質を含み、前記検出部において、前記分析対象成分、前記標識化物質および前記固定化物質の複合体を、前記標識化物質の前記標識を検出することで前記分析対象成分が検出され、下記A法およびB法の少なくとも一方を含むことを特徴とする。A法:前記検出部において、前記試料の移動方向に沿って検出結果をプロットし、前記プロットのピークの位置からプロゾーン現象の発生を検出する方法B法:前記検出部において、前記標識の検出を、時間を変えて2回以上実施し、得られた2つ以上の検出結果の大小関係からプロゾーン現象の発生を検出する方法 本発明の分析方法は、分析工程およびプロゾーン現象検出工程を含み、前記分析工程は、検体分析用具を用いて実施され、前記検体分析用具が、多孔質基材に、前記試料の移動方向の上流から下流にかけて、試料供給部、試薬部および検出部が配置された検体分析用具であり、前記試薬部が、前記分析対象成分に対し特異的に結合する標識化物質を含み、前記検出部が、前記分析対象成分に対し特異的に結合する固定化物質を含み、前記検出部において、前記分析対象成分、前記標識化物質および前記固定化物質の複合体を、前記標識化物質の前記標識を検出することで前記分析対象成分が検出され、前記プロゾーン現象検出工程は、前記本発明のプロゾーン現象検出方法により実施されることを特徴とする。 本発明のプロゾーン現象検出装置は、前記本発明のプロゾーン現象検出方法に使用し、前記検出部の検出結果を取得する取得手段と、下記A手段およびB手段の少なくとも一方を含むことを特徴とする。A手段:前記試料の移動方向に沿ってプロットした、前記検出結果のピークの位置によりプロゾーン現象の発生を検出する検出手段B手段:前記標識の検出を、時間を変えて2回以上実施し、得られた2つ以上の検出結果の大小関係からプロゾーン現象の発生を検出する検出手段 本発明の分析装置は、前記本発明の分析方法に使用し、分析手段およびプロゾーン現象検出手段を含み、前記分析手段は、前記検体分析用具の前記検出部において、前記分析対象成分、前記標識化物質および前記固定化物質の複合体を、前記標識化物質の前記標識を検出することで前記分析対象成分を検出し、前記プロゾーン現象検出手段は、前記本発明のプロゾーン現象検出装置であることを特徴とする。 本発明によれば、従前の検体分析用具を用いても簡易にプロゾーン現象の発生を検出し、特異的結合物質を用いて分析するイムノクロマトグラフィ法等を用いた検査を効率よく行うことが可能となる。したがって、本発明は、分析や臨床の分野等において、極めて有用であるといえる。図1は、実施例1における試料の反射光を検出した検出チャートである。図1(A)は、CRP濃度60mg/100mLの試料の結果であり、図1(B)は、CRP濃度6.5mg/100mLの試料の結果である。図2は、実施例1における第2検出部の下流側領域の、10分後の反射率(R10)と、反射率の差(ΔR5−10)との関係を示すグラフである。図3(A)は、本発明に用いる検体分析用具の一例を示す平面図であり、図3(B)は、本発明のプロゾーン現象検出方法の一例を示すフローチャートである。図4(A)は、本発明に用いる検体分析用具のその他の例を示す平面図である。図4(B)は、図4(A)に示す検体分析用具のI−I方向断面図である。図4(C)は、前記検体分析用具をケース体に収容した検体分析チップの平面図である。図5は、プロゾーン現象を説明する説明図である。 本発明において、「プロゾーン現象」とは、実際の試料中の分析対象成分が高濃度であるにも関わらず、見かけ上、存在しない若しくは低濃度と判断される現象を意味し、抗原抗体反応のプロゾーン現象および抗原抗体反応以外の生化学的分野等全般の反応において見られるプロゾーン現象様の現象を含む。 本発明において、前記B法を含むプロゾーン現象検出方法では、予め作成された、前記2つ以上の検出結果の大小関係と、前記プロゾーン現象の発生との関係とを関連づけた判断基準を参照し、前記プロゾーン現象の発生を検出することが好ましい。 さらに、前記検出結果の大小関係が、2つ以上の検出結果の差および2つ以上の検出結果の比の少なくとも一方であることが好ましい。 本発明のプロゾーン現象検出方法および分析方法において、前記A法を含む場合、ならびに、プロゾーン現象検出装置および分析装置において、前記A手段を含む場合、前記プロットのピーク位置が、前記試料の移動方向の下流側にある場合はプロゾーン現象が発生していると判断することができる。 本発明のプロゾーン現象検出方法、分析方法、プロゾーン現象検出装置および分析装置において、前記A法によってプロゾーン現象が発生していると判断されなかった場合には、さらに、前記B法を行うことが好ましい。 本発明のプロゾーン現象検出方法、分析方法、プロゾーン現象検出装置および分析装置において、前記検出部が、試料の移動方向に沿って配置された2つ以上の検出部であり、前記2つ以上の検出部において、試料の移動方向の上流側の検出部が、分析対象成分を検出するための検出部であり、下流側がプロゾーン現象を検出するための検出部であることが好ましい。 本発明のプロゾーン現象検出方法、分析方法、プロゾーン現象検出装置および分析装置では、プロゾーン現象を検出するための検出部において、前記試料の移動方向の下流側の領域の検出結果によりプロゾーン現象を検出することが好ましい。 本発明のプロゾーン現象検出方法、分析方法、プロゾーン現象検出装置および分析装置において、前記検出結果が、光学的シグナルであることが好ましい。 本発明の分析方法では、前記プロゾーン現象の発生を検出したら、偽陰性と判定することが好ましい。 本発明のプロゾーン現象検出方法、分析方法および分析装置において、前記分析対象成分が、抗原である場合は、前記標識化物質および前記固定化物質が、標識化抗体および固定化抗体であればよい。また、前記分析対象成分が抗体である場合は、前記標識化物質および前記固定化物質が、標識化抗体および固定化抗原であればよい。分析対象成分が抗体である場合、固定化抗原に分析対象成分の抗体が連結し、分析対象成分の抗体のFc領域に、標識化抗体のFabの先端が連結する。 つぎに、本発明について、例を挙げて詳細に説明する。 本発明において、分析対象成分を含む試料(検体)としては、液状のものが好ましいが、これに限定されない。本発明において、前記試料が固体状の場合には、例えば、緩衝液等の液体中に溶解または分散した溶液にすればよい。前記緩衝液としては、特に限定されないが、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等が挙げられる。本発明において、前記試料としては、例えば、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、鼻腔ぬぐい液、鼻汁、咽頭ぬぐい液、含漱液、唾液、全血、血清、血漿、便、尿、髄液等の生体試料、動物および植物等の食物や加工食品等の食品、環境検査における河川の水等が挙げられ、特に限定されない。本発明において、分析対象成分が抗原または抗体(以下、「抗原等」と言うことがある)である場合、例えば、前記試料から、抽出液等により抗原または抗体を抽出して作製した試料を用いて分析してもよい。前記抽出液としては、特に限定されず、例えば、前述の緩衝液等が挙げられる。また、前記抽出液には、界面活性剤、安定化剤、抗菌剤等を適宜添加してもよい。 本発明において、分析対象成分や適用する試料は何ら制限されない。本発明は、例えば、血液中のC反応性タンパク質(CRP)、HbA1c、TSH、FT3、FT4、hCG、HBs抗原、HBc抗体、HCV抗体、TY抗原、アンチ−ストレプトリシン O(ASO)、IV型コラーゲン、マトリックスメタロプロテナーゼ(MMP−3)、PIVAK−II、α1マイクログロブリン、β1マイクログロブリン、アミロイドA(SAA)、エラスターゼ1、塩基性フェトプロテイン(BFP)、カンジダ抗原、子宮頸管粘液中顆粒球エラスターゼ、ジゴキシン、シスタチンC、第XIII因子、尿中トランスフェリン、梅毒、ヒアルロン酸、フィブリンモノマー複合体(SFMC)、フォン・ウィルブランド因子(第VIII因子様抗原)、プロテインS、リウマチ因子(RF)、IgD、α1アシドグリコプロテイン(α1AG)、α1アンチトリプシン(α1AT)、α2マクログロブリン、アルブミン(Alb)、セルロプラスミン(Cp)、ハプトグロビン(Hp)、プレアルブミン、レチノール結合蛋白(RBP)、β1C/β1Aグロブリン(C3)、β1Eグロブリン(C4)、IgA、IgG、IgM、βリポ蛋白(β−LP)、アポ蛋白A−I、アポ蛋白A−II、アポ蛋白B、アポ蛋白C−II、アポ蛋白C−III、アポ蛋白E、トランスフェリン(Tf)、尿中アルブミン、プラスミノーゲン(PLG)、リポ蛋白(a)(LP(a))等の検出に、適用されることが好ましい。 本発明において、前記標識化物質として、前記標識化抗体を使用する場合、前記標識化抗体は、特に限定されない。前記標識化抗体は、例えば、着色不溶性担体粒子を結合させた抗体でもよく、酵素を結合させた抗体でもよい。 本発明において、前記着色不溶性担体粒子としては、特に限定されず、例えば、着色ラテックス粒子、金属コロイド粒子、着色ポリメチルメタクリレート粒子、着色ポリ乳酸粒子、着色多孔性ガラス粒子、着色シリカ粒子、着色アガロース粒子、着色デキストラン粒子等が挙げられる。前記着色ラテックス粒子としては、特に限定されないが、例えば、青色ラテックス粒子、赤色ラテックス粒子等が挙げられる。前記金属コロイド粒子としては、特に限定されないが、例えば、金コロイド粒子、白金コロイド粒子等が挙げられる。前記着色不溶性担体粒子の平均粒子径は、特に限定されず、前記着色ラテックス粒子の場合には、例えば、0.05μm〜5μmの範囲であり、好ましくは、0.1μm〜1μmの範囲であり、前記金属コロイド粒子の場合には、例えば、2nm〜100nmの範囲であり、好ましくは、10nm〜50nmの範囲である。 本発明において、前記酵素としては、例えば、反応して基質を着色させるものが用いられ、例えば、パーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等が挙げられる。 本発明において、前記基質としては、前記酵素に反応して着色するものであれば特に限定されない。前記基質としては、例えば、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンチジン(TMB)、ジアミノベンチジン(DAB)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、4−メチルウムベリフェニル−β−D−ガラクトシド(4MUG)、3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3’’−β−D−ガラクトピラノシル)フェニル−1,2−ジオキセタン(AMGPD)等が挙げられる。 本発明において、前記標識化抗体の抗体としては、分析対象成分である抗原または抗体と特異的に結合するものであれば特に限定されず、例えば、前述の各種抗原等に対する抗体が挙げられる。前記抗体は、例えば、生体由来の抗体であってもよいし、人工合成された抗体であってもよい。前記生体由来の抗体としては、例えば、免疫グロブリン(Ig)、抗体フラグメント、キメラ抗体等が挙げられる。前記免疫グロブリンとしては、例えば、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEおよびIgY等が挙げられる。前記抗体フラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab’)2等が挙げられる。前記キメラ抗体としては、例えば、ヒト化抗体等が挙げられる。また、本発明において、前記抗体は、例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ等由来の血清から、従来公知の方法により作製してもよく、あるいは市販の各種抗体を利用してもよく、特に制限されない。さらに、本発明において、前記抗体としては、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれを用いてもよく、前記抗原などに応じて適宜設定できる。前記人工合成された抗体としては、例えば、アフィボディー等が挙げられる。アフィボディー(affibody)とは、人工抗体の一種で、標的物質と特異的に結合させることができるように、ライブラリーの中からスクリーニングして取得したものである。アフィボディーは、抗体と比べてサイズが小さく、また、熱やアルカリなどに対する耐性をもつ。本発明において、前記固定化抗体の抗体としては、前記分析対象成分である抗原に対する特異的な抗体であり、例えば、前記標識化抗体と同じ抗原に結合可能な抗体であってもよい。前記固定化抗体の種類や調製方法は、例えば、前記標識化抗体と同様である。 本発明において、前記固定化抗原の抗原としては、特に限定されず、前記分析対象成分である抗体に対する特異的な抗原であり、例えば、前述の各種抗原などが挙げられる。本発明において、前記固定化抗原の作製方法は、例えば、従来公知の方法等が挙げられ、特に制限されない。これ以降、前記固定化抗体または前記固定化抗原を、「固定化抗体等」と言うことがある。 つぎに、本発明のプロゾーン現象検出方法について、免疫分析方法を例に挙げて説明する。ただし、本発明のプロゾーン現象検出方法は、下記の例に限定されない。 図3(A)の平面図に、免疫分析方法に用いる前記検体分析用具の一例を示す。図示のとおり、この検体分析用具10は、多孔質基材11に、前記試料の移動方向(矢印)の上流から下流にかけて、試料供給部1、試薬部2、第1検出部(L1)、第2検出部(L2)およびコントロール用検出部(C)を有する。この検体分析用具10においては、前記第1検出部(L1)、前記第2検出部(L2)および前記コントロール用検出部(C)を含む領域が、前記検出部である。前記試薬部2は、標識化抗体(例えば、青色ラテックス標識抗CRP抗体)を担持している。前記第1検出部(L1)は、分析対象成分である抗原(例えば、CRP)を検出するための検出部であり、抗CRP抗体が固定化されている。前記第2検出部(L2)は、プロゾーン現象を検出するための検出部であり、例えば、抗CRP抗体が固定化されている。前記L1とL2には、同一の抗体が同一量固定化されている。前記コントロール用検出部(C)は、例えば、抗IgG抗体が固定化されたコントロール検出部である。 本発明において、前記多孔質基材11は、毛細管作用を奏する多孔質構造を有していれば特に限定されない。前記多孔質基材11としては、例えば、セルロース膜、酢酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース誘導体膜、ガラスフィルター、濾紙等が挙げられる。本発明において、前記多孔質基材の形状は、特に限定されず、例えば、長方形、円形等が挙げられる。本発明において、前記多孔質基材の大きさは、特に制限されず、例えば、分析装置の規格等に応じて適宜設定できる。 本例の検体分析用具では、前記多孔質基材の幅方向に伸びる三本のライン状に検出部を形成したが、本発明はこれに限定されない。前記検出部の個数は、1〜10個の範囲で自由に設定でき、また検出部の形状も、ライン状以外に、例えば、矩形、円形等が挙げられる。 つぎに、本例の検体分析用具を用いた免疫分析方法におけるプロゾーン現象検出方法の一例について、図3(A)および(B)に基づき説明する。(A法のプロゾーン現象検出) まず、血清(試料)を採取する(ステップS1)。つぎに、前記試料供給部1に、前記試料を滴下する(ステップS2)。前記滴下により、前記試料は、前記試薬部2に供給され、前記試薬部2に担持された前記標識化抗体を溶解する。前記試料が分析対象成分である抗原を含む場合には、抗原抗体反応により、前記標識化抗体と前記抗原とが結合し、抗原−標識化抗体結合体を形成する。そして、前記抗原−標識化抗体結合体は、前記多孔性基材に展開され、前記検出部の前記固定化抗体に結合して複合体を形成する。前記複合体の形成により、前記第1検出部(L1)、前記第2検出部(L2)および前記コントロール用検出部(C)が前記標識により発色する。 つぎに、時間(t1)において、前記検出部における発色の有無および程度を示す反射光を検出する。具体的には、まず、前記検出部において、前記試料の移動方向(矢印)に沿って前記反射光の検出結果をプロットしたチャートを準備する(ステップS3)。つぎに、前記コントロール用検出部(C)の座標付近における谷型ピークを検出する。この谷型ピークが検出できない場合は、前記試料および前記標識化抗体が正常に移動していないと考えられるため、測定不能とする。つぎに、前記第1検出部(L1)および前記第2検出部(L2)の座標付近において、二つの谷型ピークを検出する。ここで、前記二つの谷型ピークの境界にある山型ピークを、前記第1検出部(L1)と前記第2検出部(L2)との境界とする。この境界の座標を、前記第2検出部(L2)の上流側末端の座標とし、他方、この境界の座標から、下流側に所定の値プラスとなる座標を、前記第2検出部(L2)の下流側末端の座標とする。そして、前記上流側末端の座標の検出値プロットと、前記下流側末端の座標の検出値プロットとを線分で結び、前記線分と前記谷型プロットとで囲まれる領域を、前記第2検出部(L2)全体のピークとする。本発明においては、検出部のプロットの形状(ピーク位置)からプロゾーン現象の発生を検出する。前記ピーク位置が前記第2検出部(L2)全体のピークの前半(上流側)にあるか後半(下流側)にあるかで、プロゾーン現象が発生しているか否かを判断することが好ましい。具体的には、まず、前記ピーク位置が前記第2検出部(L2)全体のピークの後半(下流側)にあるか否かを判断する(ステップS4)。下流側にない場合(No)は、後述のB法のプロゾーン現象検出のようにして、プロゾーン現象の発生を検出する。下流側にある場合(Yes)は、プロゾーン現象が発生していると判断する(ステップS5)。例えば、前記第2検出部(L2)において、例えば、さらに、前記線分の中点を通る基準線で前記ピークを二分し、前記ピークを、「前半」および「後半」に分ける。ついで、それぞれの範囲での検出値プロットの最小値(前半:L2f−min、後半:L2l−min)を求める。そして、L2f−min≧L2l−minであれば、プロゾーン現象が発生していると判断する。 上記においては、前記ピーク位置が前記第2検出部(L2)全体のピークの後半(下流側)にあるか否かを、前記線分の中点を通る基準線で前記ピークを二分して判断を行ったが、これに制限されない。前記基準線は、例えば、前記線分の下流側三分の一の点を通るもの等とし、この基準線を境に上流側および下流側を定義してもよい。基準線をどの位置に設けるかは、例えば、分析対象成分の検出特性、検出部の大きさ、試料供給部と検出部との距離、測定に要する時間等に基づき決定することができる。 また、複数の検出部がある場合には、上流側の検出部と下流側の検出部とのピーク高さを比較し、下流側の検出部でピーク高さが高い場合に、プロゾーン現象が発生していると判断することもできる。 プロゾーン現象の要因の一つとして、試薬部に担持された標識化抗体と反応し得る量以上に抗原が試料中に過剰に存在するため、標識化抗体と未反応の抗原が検出部に流れ出し、検出部に固定化された抗体と反応することが考えられる。この場合、標識化抗体と未反応の抗原が、検出部に固定された抗体をマスクするため、後から流れてくる標識化抗体と反応した抗原が検出部に固定化された抗体と反応できず、発色が薄くなる。この現象は、検出部の上流側の方が下流側よりも顕著に見られる。そのため、検出部の後半においてピークが存在すれば、プロゾーン現象が発生していると判断できる。 上記においては、前記第2検出部(L2)においてプロゾーン現象を検出する一例を示したが、前記第1検出部(L1)において検出を行ってもよい。また、検体分析用具が検出部を3個以上有する場合は、他の任意の検出部において行ってもよい。(B法のプロゾーン現象検出) 前記A法のプロゾーン現象検出において、プロゾーン現象が発生していないと判断された場合、つぎに、時間(t1)の経過より前の時点である時間(t2)において予め取得しておいた、時間(t1)の場合と同様に前記検出部における発色の有無および程度を示す反射光を検出した結果をプロットする(ステップS4−1)。そして、例えば、前記第2検出部(L2)の反射率の時間(t2)から時間(t1)の変化量によってプロゾーン現象を検出する。その際には、前記第2検出部(L2)全体のピークによりプロゾーン現象を検出してもよいが、例えば、さらに、前記線分の中点を通る座標で前記ピークを二分し、前記第2検出部(L2)の下流側の領域によりプロゾーン現象を検出することが好ましい。まず、時間(t1)において、前記第2検出部(L2)の下流側の領域の検出結果について、カウント値を前記線分からの比率(%)に換算し、積算を行い、反射率Rt1(%)を求める。同様に、時間(t2)において、前記検出部における反射光を検出し、反射率Rt2(%)を求める。検出開始から、前記時間(t1)までの時間は、特に制限されないが、例えば、5〜20分の範囲であり、好ましくは、5〜15分の範囲であり、より好ましくは、8〜12分の範囲である。前記時間(t1)および前記時間(t2)の時間差(t1−t2)も、特に制限されないが、例えば、2〜8分の範囲であり、好ましくは、3〜7分の範囲であり、より好ましくは、4〜6分の範囲である。得られた2つの反射率の差(ΔRt2−t1(%)=Rt2−Rt1)からプロゾーン現象の発生を検出する。前記反射光の検出および前記反射率の算出は、前記時間(t1)および前記時間(t2)に限らず、3回以上行ってもよい。また、前記反射光の検出を、例えば、1分ごとに経時的に行い、前記時間(t2)における検出結果を、例えば、前記時間(t2)−1分、前記時間(t2)、前記時間(t2)+1分の3つの検出結果の平均値としてもよい。 ここで、予め作成された、前記反射率の差と、プロゾーン現象の発生との関係とを関連付けた判断基準を参照し、前記プロゾーン現象の発生を検出することが好ましい。前記判断基準としては、例えば、前記反射率の差と前記プロゾーン現象の発生との関係をプロットしたグラフにおける基準線、前記反射率の差と前記プロゾーン現象の発生との関係を示す表などがあげられる。前記反射率の差と前記プロゾーン現象の発生との関係をプロットしたグラフにおける基準線を用いる場合、最小二乗法により境界線を作成し、これを基準線として用いてもよい。具体的には、まず、前記反射率の差(ΔRt2−t1)が、基準線を下回るか否かを判断する(ステップS4−2)。基準線を下回る場合(Yes)は、プロゾーン現象が発生すると判断する(ステップS5)。基準線を下回らない場合(No)は、プロゾーン現象が発生しないと判断する(ステップS6)。 本発明においては、前記反射率の差に加え若しくは代えて、前記反射率の比から前記プロゾーン現象の発生を検出してもよいし、前記反射率の差および比以外の前記反射率の大小関係から前記プロゾーン現象の発生を検出してもよい。また、本例においては、標識の検出を光学的シグナルである反射率を用いて行ったが、透過率、吸光度等を用いてもよい。 前記分析対象成分を酸化可能な場合には、前記プロゾーン現象の発生の検出を、前述のような標識化抗体の発色に起因した反射率の大小関係による検出に加え若しくは代えて、酸化電流値の大小関係により検出してもよい。この場合、前記標識化抗体等として、酸化還元酵素を結合させた抗体または抗原を用い、前記検出部に電子受容体および電極(陰極および陽極)を配置する。前記酸化還元酵素としては、前記分析対象成分を酸化可能なものであればよい。このような酸化還元酵素を用いた場合、例えば、つぎのようにしてプロゾーン現象の発生を検出できる。すなわち、前記第2検出部(L2)において、前記酸化還元酵素の触媒反応により、前記分析対象成分が酸化され、同時に、前記電子受容体が還元される。そして、前記還元された電子受容体を電気化学的手法により再酸化する。この再酸化により得られる酸化電流値が、前記分析対象成分量に対応することから、前記電流を測定することによって、間接的に前記分析対象成分を定量できる。前記電極としては、特に限定されないが、例えば、金電極、カーボン電極、銀電極等があげられる。なお、前記検体分析用具において、前記電極は、任意の構成部材である。前記電極は、例えば、前記検体分析用具の使用時に、前記検出部に配置されてもよい。 上記においては、前記A法のプロゾーン現象検出において、プロゾーン現象が発生していないと判断された場合、さらに前記B法のプロゾーン現象検出を実施する形態について説明したが、本発明においては、前記A法および前記B法のうち、前記A法のみ、あるいは、前記B法のみを採用してプロゾーン現象検出を行なうこともできる。 つぎに、本発明の分析方法について説明する。前述のとおり、本発明の分析方法は、分析工程およびプロゾーン現象検出工程を含む。前記分析工程は、検体分析用具を用いて実施される。前記検体分析用具は、前記本発明のプロゾーン現象検出方法におけるのと同様である。前記プロゾーン現象検出工程は、前記本発明のプロゾーン現象検出方法により実施される。 本発明の分析方法では、前記プロゾーン現象検出工程において、プロゾーン現象の発生を検出した場合、試料中の分析対象成分の分析が、正確に判定されていないものとして、偽陰性と判定することが好ましい。偽陰性と判定することで、陰性と区別され、分析をより的確に行うことが可能である。また、プロゾーン現象の発生が検出されているので、試料を希釈しての再度の分析を行う必要もない。 つぎに、本発明のプロゾーン現象検出装置について説明する。前述のとおり、本発明のプロゾーン現象検出装置は、前記本発明のプロゾーン現象検出方法に使用するプロゾーン現象検出装置であって、前記検出部の検出結果を取得する取得手段と、下記A手段およびB手段の少なくとも一方を含むことを特徴とする。ここで、A手段は、前記試料の移動方向に沿ってプロットした、前記検出結果のピークの位置によりプロゾーン現象の発生を検出する検出手段であり、B手段は、前記標識の検出を、時間を変えて2回以上実施し、得られた2つ以上の検出結果の大小関係からプロゾーン現象の発生を検出する検出手段である。 前記本発明のプロゾーン現象検出方法において、前述のように反射光を検出する場合には、前記取得手段は、例えば、光源部および受光部を備える。前記光源部から、前記検体分析用具10の前記第1検出部(L1)、前記第2検出部(L2)および前記コントロール用検出部(C)を含む多孔質基材上に照射光を照射し、前記受光部により反射光を検出する。前記光源部は、例えば、発光ダイオード(LED)や半導体レーザーダイオード(LD)等で構成される。前記受光部は、例えば、フォトダイオード、光電子増倍管(フォトマル)、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等から構成される。 前記本発明のプロゾーン現象検出方法において、前述のように酸化電流値を検出する場合には、前記取得手段は、例えば、電源および電流計を含む。まず、前記電極(陰極および陽極)を、前記電源に接続し、前記電極と前記電源との間に前記電流計を配置する。ついで、前記電極に電圧を印加する。つぎに、前記試料が前記第2検出部(L2)に到達した後、前記酸化電流値を検出する。最後に、前記酸化電流値をもとに、前記分析対象成分の定量を行う。 前記取得手段は、本発明のプロゾーン現象検出装置の一部であってもよいし、外部の機器であってもよい。 前記検出手段は、例えば、中央処理装置(CPU)、メモリー、入力端末および出力端末から構成される。前記入力端末としては、例えば、キーボードやタッチパネルが挙げられる。前記出力端末は、例えば、ディスプレイやプリンターが挙げられる。なお、前記検出手段は、全部がプロゾーン現象検出装置本体の中に配置されていてもよいし、全部または一部が、装置本体外部に配置されていてもよい。例えば、パーソナルコンピュータ(PC)内に、検出手段を構成してもよい。なお、前記検出手段で用いる前述の各種の判断基準は、予めメモリーに記憶させて検出の際に参照してもよいし、前記入力端末で前記CPUに入力して参照してもよい。前記プロゾーン現象検出結果は、前記出力端末により出力される。 つぎに、本発明の分析装置について説明する。前述のとおり、本発明の分析装置は、分析手段およびプロゾーン現象検出手段を含み、前記分析手段は、前記検体分析用具の前記検出部において、前記分析対象成分、前記標識化物質および前記固定化物質の複合体を、前記標識化物質の前記標識を検出することで前記分析対象成分を検出し、前記プロゾーン現象検出手段は、前記本発明のプロゾーン現象検出装置であることを特徴とする。 前記分析手段は、中央処理装置(CPU)、メモリー、入力端末および出力端末から構成される。前記入力端末としては、例えば、キーボードやタッチパネルが挙げられる。前記出力端末は、例えば、ディスプレイやプリンターが挙げられる。なお、前記検出手段は、全部が分析装置本体の中に配置されていてもよいし、全部または一部が、装置本体外部に配置されていてもよい。例えば、パーソナルコンピュータ(PC)内に、分析手段を構成してもよい。前記分析対象成分の検出結果は、前記出力端末により出力される。 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。[実施例1] 様々な濃度でCRPを含む試料を準備し、検体分析用具を用いたイムノクロマトグラフィにおけるプロゾーン現象の発生の検出と、前記B法を含むプロゾーン現象検出に好適に用いることのできる判断基準の作成の具体例を以下に述べる。(CRP検体) 複数の患者および健常者から採取した血清を、試料として使用した。なお、各血清について、ラテックス免疫比濁法により、予め、CRP濃度を決定しておき、そのCRP濃度に基づいて、正常な抗原抗体反応を生じる試料と、プロゾーン現象が発生する試料とに分類した。具体的には、CRP濃度0.6mg/100mL、2.5mg/100mL、および、6.5mg/100mLの各試料を、正常な抗原抗体反応を生じる試料、CRP濃度25mg/100mL以上の試料を、プロゾーン現象が発生する試料とした。(検体分析用具) CRP測定用の検体分析用具として、商品名「スポットケム i−Line CRP」(アークレイ(株)製)を使用した。この検体分析用具の概略を図4に示す。図4(A)は、検体分析用具20の平面図であり、図4(B)は、前記図4(A)のI−I方向断面図であり、図4(C)は、前記検体分析用具20をケース体31に収容した検体分析チップ30の平面図である。同図において、図3と同一部分には同一符号を付している。検体分析用具20は、上基板(図示せず)、下基板21、検出用多孔質体22、2つのサンプル用多孔質体23および24、青色ラテックス標識抗CRP抗体が担持された標識化抗体用多孔質体25、および、余剰の検体を吸収する吸収用多孔質体26を備える。下基板21の上には、その長手方向の中央に、検出用多孔質体22が積層されている。検出用多孔質体22の一端(同図において左側)には、青色ラテックス標識抗CRP抗体が担持された標識化抗体用多孔質体25が積層されている。標識化抗体用多孔質体25には、二層のサンプル用多孔質体23、24が積層されている。検出用多孔質体22の他端(同図において右側)には、吸収用多孔質体26が積層されている。検出用多孔質体22は、試料の移動方向に基づいて、サンプル用多孔質体23および24が積層された側(同図において左側)を上流、吸収用多孔質体26が積層された側(同図において右側)を下流として、上流から、抗CRP抗体が固定化された第1検出部(L1)および第2検出部(L2)、ならびに、抗IgG抗体が固定化されたコントロール用検出部(C)を有する。第1検出部(L1)および第2検出部(L2)およびコントロール用検出部(C)を含む領域を、検出部27という。そして、下基板21の上に積層された各種多孔質体を覆うように、上基板(図示せず)が配置されている。なお、上基板は、サンプル用多孔質体24の試料供給部に対応する箇所に貫通孔を有し、また、第1検出部(L1)、第2検出部(L2)およびコントロール用検出部(C)に対応する箇所が、露出している。前記貫通孔の中心から、前記第1検出部(L1)の中央部までの距離は30mm、前記第2検出部(L2)の中央部までの距離は33.5mm、前記コントロール用検出部(C)の中央部までの距離は38mmである。(光学シグナル測定) 前記検体分析用具に、各試料5μLを添加し、添加後、1分以内に反射光測定装置(商品名SPOTCHEM(登録商標)IL、アークレイ(株)製)にセットし、発色の有無および程度を示す反射光を検出した。反射光は、装置にセットした時点を検出開始時(0秒)とし、1分ごと経時的に検出した。また、反射光の検出は、試料の移動方向において、検出部27について行った。 前記各種試料のうち、CRP濃度が60mg/100mLである1試料、および、CRP濃度が6.5mg/100mLである1試料について、検出開始時から10分後における反射光を検出した検出チャートを、それぞれ図1(A)および(B)に示す。図1(A)は、CRP濃度60mg/100mLの試料の結果であり、図1(B)は、CRP濃度6.5mg/100mLの試料の結果である。両図において、X軸は、前記検体分析用具の検出部における、上流から下流方向に向かう座標を示し、1目盛は、約0.167mmである。両図において、Y軸は、前記反射測定装置による検出値(単位カウント)を示し、値が小さい程、発色程度が強い、つまり、反射率が低いことを示す。 ここで、図1(A)の検出チャートでは、プロットのピーク位置が試料の移動方向の下流側にあり、前記A法のプロゾーン現象検出において、「プロゾーン現象が発生」と判断される。図1(B)の検出チャートでは、プロットのピーク位置が試料の移動方向の上流側にあり、前記A法のプロゾーン現象検出において、「プロゾーン現象が発生」とは判断されない。 つぎに、各試料の検出結果から、第2検出部について、検出開始から5分後および10分後の反射率、前記5分後の反射率から10分後の反射率の増加程度を算出した。具体的には、各試料について、前記図1(A)および(B)に例示した、座標と検出値との関係を示すチャートを準備し、まず、コントロール用検出部の座標付近(Y80〜Y110)における谷型ピーク(C)を検出した。この谷型ピークが検出できない場合は、試料および青色ラテックス標識抗CRP抗体が正常に移動していないと考えられるため、検出不能として、評価の対象から除外した。つぎに、第1検出部(L1)および第2検出部(L2)の座標付近(Y30〜Y80)において、二つの谷型ピークを検出した。前記二つの谷型ピークの境界にある山型ピークを、第1検出部(L1)と第2検出部(L2)の境界として決定した。この境界の座標を、第2検出部(L2)の上流側末端の座標(U)とし、他方、前記境界の座標から、下流側にプラスY20となる座標を、第2検出部(L2)の下流側末端の座標(D)として決定した。そして、前記上流側末端の座標(U)の検出値プロットと、前記下流側末端の座標(D)の検出値プロットとを線分で結び、前記線分と谷型プロットとに囲まれる領域が、第2検出部(L2)の全体のピークとなる。本実施例においては、さらに、前記線分の中点を通る座標(M)を決定し、第2検出部(L2)の下流側領域の結果(両図の斜線部)を使用した。この第2検出部(L2)の下流側領域の結果について、カウント値を前記線分からの比率(%)に換算し、積算を行い、反射率(%)を求めた。このようにして、各試料について、第2検出部(L2)の下流側領域における、5分後の反射率(R5)および10分後の反射率(R10)を求め、さらに、5分後の反射率(R5)と10分後の反射率(R10)との差(ΔR5−10)を下記式より算出した。 ΔR5−10(%)=R5−R10 ここで、「5分後の反射率」としては、検出開始から5分後の検出値から算出された値を用いてもよいが、例えば、「4分、5分、6分の検出値から算出された値の平均値」を用いることもできる。 これらの結果を、図2に示す。同図は、10分後の反射率(R10)と、反射率の差(ΔR5−10)との関係を示すグラフである。同図において、X軸は、反射率の差(ΔR5−10)であり、Y軸は、10分後の反射率(R10)であり、○は、正常な抗原抗体反応が可能な試料を示し、◆は、プロゾーン現象を生じる可能性のある試料を示す。同図に示すように、プロゾーン現象を生じる可能性のある試料(◆)は、グラフの左下にプロットが密集しているのに対して、正常な抗原抗体反応が可能な試料(○)は、グラフの右上にプロットが密集した。両集団を分離するための解析を行ったところ、同図に示すように、Y=−4.52x+0.75との式が得られた。この式を検量線とすることで、CRP濃度が未知の試料であっても、10分後の反射率(R10)と反射率の差(ΔR5−10)とから、プロゾーン現象の発生の有無を判断することができる。 以上のように、本発明によれば、従前の検体分析用具を用いても簡易にプロゾーン現象の発生を検出し、例えば、イムノクロマトグラフィ法等を用いた検査を効率よく行うことが可能となる。本発明のプロゾーン現象検出方法、分析方法、プロゾーン現象検出装置および分析装置は、臨床検査、生化学検査、医学研究等の分野に適用可能であり、その用途は限定されず、広い分野に適用可能である。1 試料供給部2 試薬部10、20 検体分析用具11 多孔質基材21 下基板22 検出用多孔質体23、24 サンプル用多孔質体25 標識化抗体用多孔質体26 吸収用多孔質体27 検出部30 検体分析チップ31 ケース体L1 第1検出部L2 第2検出部C コントロール用検出部試料中の分析対象成分に特異的に結合する物質を含む検体分析用具を用い、前記検体分析用具が、多孔質基材に、前記試料の移動方向の上流から下流にかけて、試料供給部、試薬部および検出部が配置された検体分析用具であり、前記試薬部が、前記分析対象成分に対し特異的に結合する標識化物質を含み、前記検出部が、前記分析対象成分に対し特異的に結合する固定化物質を含み、前記検出部において、前記分析対象成分、前記標識化物質および前記固定化物質の複合体を、前記標識化物質の前記標識を検出することで前記分析対象成分が検出され、下記A法を含むことを特徴とするプロゾーン現象検出方法。A法:前記検出部において、前記試料の移動方向に沿って検出結果をプロットし、1個の前記検出部における前記プロットのピーク位置からプロゾーン現象の発生を検出する方法さらに、下記B法を含む請求項1記載のプロゾーン現象検出方法。B法:前記検出部において、前記標識の検出を、時間を変えて2回以上実施し、得られた2つ以上の検出結果の大小関係からプロゾーン現象の発生を検出する方法前記B法において、予め作成された、前記2つ以上の検出結果の大小関係と、プロゾーン現象の発生との関係とを関連づけた判断基準を参照し、前記プロゾーン現象の発生を検出することを特徴とする請求項2記載のプロゾーン現象検出方法。前記B法において、前記検出結果の大小関係が、2つ以上の検出結果の差および2つ以上の検出結果の比の少なくとも一方であることを特徴とする請求項2または3記載のプロゾーン現象検出方法。前記A法において、前記プロットのピーク位置が、試料の移動方向の下流側にある場合はプロゾーン現象が発生していると判断することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のプロゾーン現象検出方法。請求項5記載のプロゾーン現象検出方法において、プロゾーン現象が発生していると判断されなかった場合には、さらに、前記B法を行うことを特徴とするプロゾーン現象検出方法。前記検出部が、試料の移動方向に沿って配置された2つ以上の検出部であり、前記2つ以上の検出部において、試料の移動方向の上流側の検出部が、分析対象成分を検出するための検出部であり、下流側の1個の検出部が前記A法によるプロゾーン現象を検出するための検出部であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のプロゾーン現象検出方法。前記A法によるプロゾーン現象を検出するための検出部において、前記試料の移動方向の下流側の領域の検出結果によりプロゾーン現象を検出することを特徴とする請求項7記載のプロゾーン現象検出方法。前記検出結果が、光学的シグナルであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のプロゾーン現象検出方法。前記分析対象成分が、抗原であり、前記標識化物質および前記固定化物質が、標識化抗体および固定化抗体であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のプロゾーン現象検出方法。前記分析対象成分が、抗体であり、前記標識化物質および前記固定化物質が、標識化抗体および固定化抗原であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のプロゾーン現象検出方法。分析工程およびプロゾーン現象検出工程を含み、前記分析工程は、検体分析用具を用いて実施され、前記検体分析用具が、多孔質基材に、前記試料の移動方向の上流から下流にかけて、試料供給部、試薬部および検出部が配置された検体分析用具であり、前記試薬部が、前記分析対象成分に対し特異的に結合する標識化物質を含み、前記検出部が、前記分析対象成分に対し特異的に結合する固定化物質を含み、前記検出部において、前記分析対象成分、前記標識化物質および前記固定化物質の複合体を、前記標識化物質の前記標識を検出することで前記分析対象成分が検出され、前記プロゾーン現象検出工程は、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法により実施されることを特徴とする分析方法。前記プロゾーン現象検出工程において、プロゾーン現象の発生を検出したら、偽陰性と判定する、請求項12記載の分析方法。請求項1から11のいずれか一項に記載のプロゾーン現象検出方法に使用し、前記検出部の検出結果を取得する取得手段と、下記A手段を含むことを特徴とするプロゾーン現象検出装置。A手段:前記試料の移動方向に沿ってプロットした、1個の前記検出部における前記検出結果のピーク位置によりプロゾーン現象の発生を検出する検出手段さらに、下記B手段を含む請求項14記載のプロゾーン現象検出装置。B手段:前記標識の検出を、時間を変えて2回以上実施し、得られた2つ以上の検出結果の大小関係からプロゾーン現象の発生を検出する検出手段請求項12または13記載の分析方法に使用し、分析手段およびプロゾーン現象検出手段を含み、前記分析手段は、前記検体分析用具の前記検出部において、前記分析対象成分、前記標識化物質および前記固定化物質の複合体を、前記標識化物質の前記標識を検出することで前記分析対象成分を検出し、前記プロゾーン現象検出手段は、請求項14または15記載のプロゾーン現象検出装置であることを特徴とする分析装置。