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タイトル:特許公報(B2)_有機リチウム化合物の製造方法および置換芳香族化合物の製造方法
出願番号:2010543919
年次:2014
IPC分類:C07C 217/08,C07C 217/52,C07C 211/14,C07F 1/02,C07F 5/02


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井上 博生 JP 5441923 特許公報(B2) 20131227 2010543919 20091225 有機リチウム化合物の製造方法および置換芳香族化合物の製造方法 日本曹達株式会社 000004307 廣田 雅紀 100107984 東海 裕作 100096482 井上 博生 JP 2008329632 20081225 20140312 C07C 217/08 20060101AFI20140220BHJP C07C 217/52 20060101ALI20140220BHJP C07C 211/14 20060101ALI20140220BHJP C07F 1/02 20060101ALN20140220BHJP C07F 5/02 20060101ALN20140220BHJP JPC07C217/08C07C217/52C07C211/14C07F1/02C07F5/02 C C07C 217/08 C07C 211/14 C07C 217/52 C07F 1/02 C07F 5/02 CAplus/REGISTRY(STN) Scopus 特開2006−241065(JP,A) 独国特許出願公開第10243618(DE,A1) N,N,N′,N′,N”-Pentamethyldipropylenetriamine (PMDPTA): A Versatile Auxiliary for Site Selective Lithiation Reactions,Synthetic Communications ,1998年,443-449頁 Stabilizing N-tosyl-2-lithioindoles with bis(N,N′-dimethylaminoethyl) ether―a non-cryogenic procedure for lithiation of N-tosylindoles and subsequent addition to ketones,Tetrahedron Letters,2009年10月 7日,Volume 50, Issue 40,5667-5669頁 Juliet Cotter, et al.,Development and Application of a DirectVinyl Lithiation of cis-Stilbene and aDirected Vinyl Lithiation of anUnsymmetrical cis-Stilbene,Organic Letters,2007年,Vol.9, No.8,1493-1496 Synthesis of Aryllithium Compounds in a CYTOSR Lab System,Chemfiles,2005年,Vol. 5, No. 7,Pages 12-13,URL,http://www.sigmaaldrich.com/chemistry/chemical-synthesis/learning-center/chemfiles/chemfiles-2004-2005.html 1 JP2009007286 20091225 WO2010073714 20100701 30 20110318 土橋 敬介 本発明は、有機リチウム化合物の製造方法および置換芳香族化合物の製造方法に関し、より詳細には、求電子性化合物との反応に供するのに適した有機リチウム化合物の製造方法および有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応による置換芳香族化合物の製造方法に関するものである。 本願は、2008年12月25日に日本に出願された特願2008−329632号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。 芳香族アミン、芳香族エーテル、芳香族アルドキシム、芳香族アルデヒドなどの置換芳香族化合物は、生理活性物質(医薬、農薬)や機能材料(液晶材料、電子材料、光学材料、写真用添加剤、樹脂、染料など)またはそれらの合成中間体として有用である。 置換芳香族化合物の製造方法としては、芳香族化合物を、リチウム、ナトリウム、マグネシウムなどでメタル化してアリールメタル化合物を得、次いで該アリールメタル化合物と求電子性化合物とを反応させる方法が広く知られている。また、ハロゲン化不飽和脂肪族化合物のメタル化も同様に知られている。 このような芳香族化合物やハロゲン化不飽和脂肪族化合物のメタル化に用いられる金属のなかで、リチウムは適用可能な芳香族化合物やハロゲン化不飽和脂肪族化合物の範囲が広いこと、反応性が高いことなどの観点で、様々な化合物の合成に応用されている。 例えば、特許文献1には、N−(置換)フェニルカルバゾ−ルのジハロゲン化物をアルキルリチウムでリチオ化し、次いで三ハロゲン化ホウ素と反応させる工程を含む有機電荷輸送性重合体の製法が開示されている。 特許文献2には、アセタール基を有する4−置換−2,6−ジフルオロベンゼンをアルキルリチウムでリチオ化し、次いで二酸化炭素と反応させ安息香酸誘導体と酸アミドとを得、これを脱水することを特徴とする製法が記載されている。 ところで、有機リチウム試薬および有機リチウム化合物を活性化するために、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなどの配位性化合物を用いることが知られている。これらの配位性化合物は、有機リチウム化合物にキレート配位し、会合状態を解き、有機リチウム化合物の反応性を向上させることがある(例えば、非特許文献1参照)。しかし、これらの配位性化合物の添加は発生するリチオ体の反応性を向上させる反面、安定性を大きく損ねることがある。例えば、非特許文献2には、1,4−ジフルオロベンゼンとn−ブチルリチウムからリチオ体を発生させているが、テトラメチルエチレンジアミンの添加によりリチオ体の安定性が添加しない場合と比較し大きく低下することが示されている。 また、リチウムによるメタル化およびその後の求電子剤導入においては、高活性な有機リチウム化合物の反応性を抑えるために極低温条件(例えば、−60℃以下など)で反応が行われてきた(例えば、非特許文献3や非特許文献5参照)。なぜなら、リチウムによるメタル化を温和な温度条件(例えば、−20℃〜室温)で行うと有機リチウム化合物または置換芳香族化合物の収率が大幅に減少すると考えられていたからである。現に、温和な温度条件における、テトラメチルエチレンジアミン存在下でのリチウムによるメタル化は、生成物の安定性が低く、収率が低かった(下記の比較例2を参照)。 さらに、有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応は発熱を伴うため、置換芳香族化合物を高収率にするためには、冷却などのために液体窒素吹き込みなどの特殊な設備を要し製造コストが高くなることが大きな課題であった(例えば、非特許文献4参照)。しかも、工業的規模における製造では、有機リチウム化合物の使用量に関する制限や、発熱反応の管理が難しいなど、安全対策上の負担がある(特許文献3の段落[0011]および[0012])。 このように、リチウムによる有機化合物のメタル化および有機リチウム化合物への求電子剤導入による置換芳香族化合物の製造には、極低温条件で行う必要性と、製造コストや安全対策における負担があった。 近年、リチウムによるメタル化をマイクロリアクターなどの管型流通式反応器を使用して行う方法が注目されている。 例えば、特許文献3には、ハロゲン原子又はトリフルオロメトキシ基に対するオルト位に水素原子を有する芳香族化合物の脱プロトン化による又はメタル化剤を用いたハロ芳香族化合物のハロゲンメタル交換によるアリールメタル化合物の製造、およびアリールメタル化合物と親電子試薬との反応を行うにあたって、アリールメタル化合物の製造を連続流通式反応装置中で行う製造方法が記載されている。しかしながら、この方法では連続流通式反応装置内でのアリールメタル化合物の合成やアリールメタル化合物と親電子試薬との反応を−70℃〜−35℃程度の極低温で行う必要があるため冷却コストが大幅にかさむ欠点を有する。 特許文献4には、ハロゲン化合物とリチウム試薬とを非常に短い滞留時間で反応させて芳香環を有する有機リチウム化合物を得、次いで前記有機リチウム化合物が分解などの副反応を起こす前に前記有機リチウム化合物と求電子化合物とを直ぐに反応させることを特徴とする医薬品、農薬、液晶、電子写真、染料等に有用な化合物の製造方法が記載されている。 特許文献5には、リチオ化と求電子置換とをマイクロリアクターで行うo−二置換芳香族化合物の製法が記載されている。この製造方法では、有機リチウム試薬および有機リチウム化合物を活性化するために3級アミン等のキレート化剤を添加することができることを示している。 これらの方法は、極低温条件でないと不安定になる有機リチウム化合物の合成や、それと求電子剤との反応を、場合によっては0℃以上の温和な温度条件で行える可能性を有する方法である。しかし、これらの方法はマイクロミキサーなどの特殊な混合装置を必要とする。また、微細な管内での滞留時間を0.001〜5秒間といった極めて短い時間に精密制御する必要があることや、マイクロリアクターの圧力損失が大きいことなどから、高性能の送液装置を必要とする。 また1つの反応器当たりの製造に使用できる容積が極微小であることから、多量の目的物を製造するためには膨大な数のマイクロリアクターが必要となり多額の設備コストを要する。さらに、管や反応器が閉塞するなどの現象に対する対応策も必要となる可能性がある。 このように連続流通式反応装置(マイクロリアクターを含む)では、滞留時間の精密制御や管の閉塞の懸念といった操作上・安全対策上に係る負担が大きくなる傾向があり、これが企業化の大きな障害となっている。特開2007−262151号公報特開2003−286279号公報特開2000−229981号公報特開2006−241065号公報特開2008−195639号公報野依良治ほか編「大学院講義有機化学I分子構造と反応・有機金属化学」320ページScott, J. P.; Berwer, S. E.; Davies, A. J.; Brands, K. M. J. "Preparation, thermal stability and carbonyl addition reactions of 2,5-difluorophenyl lithium and 2,5-difluorophenyl grignard" Synlett 2004, 1646Zbinden, K.G.; Banner, D. W.; Hilpert, K.; Himber, J.; Lave, T.; Riederer, M. A.; Stahl, M.; Tschopp, T. B.; Obst-Sander, U.; Bioorganic & Medicinal Chemistry 2006, 14, 5357"Process Development and Pilot Plant Synthesis of Methyl 2-Bromo-6-chlorobenzoate" Organic Process Research & Development 2005, 9, 764-767Leroux, F.; Hutschenreuter, T. U.; Charriere, C.; Scopelliti, R.; Hartmann, R. W. Helvetica Chimica Acta 2003, 86, 2671. 本発明の目的は、比較的温和な温度条件にて、操作上、安全対策上の負担を大幅に減じて、有機リチウム化合物または置換芳香族化合物を高い収率で得ることができる方法を提供することである。 本発明は、以下の各態様を包含する。(1)配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物の存在下で、芳香族化合物若しくはハロゲン化不飽和脂肪族化合物とリチオ化剤とを−40℃〜40℃の温度にて反応させる工程を含む有機リチウム化合物の製造方法。(2)前記配位性化合物が式(1)で表される化合物である前記(1)項に記載の有機リチウム化合物の製造方法。 式(1)中、L1、L2およびL3はそれぞれ独立に酸素元素を含む基若しくは窒素元素を含む基(ただし、L1、L2およびL3のうちの少なくとも一つが窒素元素を含む基である。)またはL1、L2およびL3はそれぞれ独立に酸素元素を含む基(ただし、L1およびL3のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基)を表し、n1およびn2はそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、または、へテロアリール基を表し、(R1もしくはR2)と(R3もしくはR4)との間で環を形成していても良く、(R5もしくはR6)と(R7もしくはR8)との間で環を形成していても良く、(R3もしくはR4)と(R5もしくはR6)との間で環を形成していても良く、(R1もしくはR2)とL1との間で環を形成していても良く、(R7もしくはR8)とL3との間で環を形成していても良い。(3)前記配位性化合物が式(2)で表される化合物である前記(1)項に記載の有機リチウム化合物の製造方法。 式(2)中、L2aは、−O−または−N(−CH2−R11)−を表し、R11は水素原子またはC1−6アルキル基を表し、L1aは、−OR12または−N(R13)R14を表し、L3aは、−OR121または−N(R131)R141を表し、R12、およびR121はそれぞれ独立にC1−6アルキル基を表し、R13、およびR131はそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはn−プロピル基を表し、R14、およびR141はそれぞれ独立にC1−6アルキル基を表し(但し、L2aが−O−であり、L1aが−OR12であるとき、L3aは、−N(R131)R141である。また、L2aが−O−であり、L3aが−OR121であるとき、L1aは、−N(R13)R14である)、n1aおよびn2aはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、R1a〜R8aは、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル基またはフェニル基を表し、(R1aもしくはR2a)と(R3aもしくはR4a)との間で環を形成していても良く、(R5aもしくはR6a)と(R7aもしくはR8a)との間で環を形成していても良い。(4)前記工程において、芳香族化合物とリチオ化剤とを反応させる前記(1)〜(3)項のいずれか一項に記載の有機リチウム化合物の製造方法。(5)前記工程において、芳香族化合物とリチオ化剤とを脱プロトンによるリチオ化反応させる前記(4)項に記載の有機リチウム化合物の製造方法。(6)配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物の存在下で、芳香族化合物とリチオ化剤とを40℃以下の温度にて反応させて、有機リチウム化合物を得る工程、および、前記工程で得られた有機リチウム化合物と求電子性化合物とを−40℃〜40℃の温度にて反応させる工程を含む置換芳香族化合物の製造方法。(7)前記配位性化合物が式(1)で表される化合物である前記(6)項に記載の置換芳香族化合物の製造方法。 式(1)中の、L1、L2およびL3はそれぞれ独立に酸素元素を含む基若しくは窒素元素を含む基(ただし、L1、L2およびL3のうちの少なくとも一つが窒素元素を含む基である。)またはL1、L2およびL3はそれぞれ独立に酸素元素を含む基(但し、L1およびL3のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基)を表し、n1およびn2はそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、または、へテロアリール基を表し、(R1もしくはR2)と(R3もしくはR4)との間で環を形成していても良く、(R5もしくはR6)と(R7もしくはR8)との間で環を形成していても良く、(R3もしくはR4)と(R5もしくはR6)との間で環を形成していても良く、(R1もしくはR2)とL1との間で環を形成していても良く、(R7もしくはR8)とL3との間で環を形成していても良い。(8)前記配位性化合物が式(2)で表される化合物である前記(6)項に記載の置換芳香族化合物の製造方法。 式(2)中の、L2aは、−O−または−N(−CH2−R11)−を表し、R11は水素原子またはC1−6アルキル基を表し、L1aは、−OR12または−N(R13)R14を表し、L3aは、−OR121または−N(R131)R141を表し、R12、R121はそれぞれ独立にC1−6アルキル基を表し、R13、R131はそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはn−プロピル基を表し、R14、R141はそれぞれ独立にC1−6アルキル基を表し(但し、L2aが−O−であり、L1aが−OR12であるとき、L3aは、−N(R131)R141である。また、L2aが−O−であり、L3aが−OR121であるとき、L1aは、−N(R13)R14である)、n1aおよびn2aはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、R1a〜R8aは、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル基またはフェニル基を表し、(R1aもしくはR2a)と(R3aもしくはR4a)との間で環を形成していても良く、(R5aもしくはR6a)と(R7aもしくはR8a)との間で環を形成していても良い。(9)有機リチウム化合物と求電子性化合物とを反応させる工程において、求電子性化合物が有機リチウム化合物よりも過剰な状態に保つことを含む前記(6)〜(8)項のいずれか一項に記載の置換芳香族化合物の製造方法。(10)前記有機リチウム化合物を得る工程において、芳香族化合物とリチオ化剤とを反応させる前記(6)〜(9)項のいずれか一項に記載の置換芳香族化合物の製造方法。(11)前記有機リチウム化合物を得る工程において、芳香族化合物とリチオ化剤とを脱プロトンによるリチオ化反応させる前記(10)項に記載の置換芳香族化合物の製造方法。(12)配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物の、連続流通式反応装置における、有機リチウム化合物の製造若しくは有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応による置換芳香族化合物の製造への閉塞防止剤若しくは滞留時間延長剤としての使用。(13)配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物の、有機リチウム化合物の製造若しくは有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応による置換芳香族化合物の製造への反応暴走抑止剤若しくはスケーリング抑止剤としての使用。(14)式(3)で示されることを特徴とする配位子。 式(3)中の、L2bは、−O−または−N(−CH2−R21)−を表し、R21は水素原子またはC1−6アルキル基を表し、L1bは、−OR22または−N(R23)R24を表し、L3bは、−OR221または−N(R231)R241を表し、R22、R221はそれぞれ独立にC1−6アルキル基を表し、R23、R231はそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはn−プロピル基を表し、R24、R241はそれぞれ独立にC1−6アルキル基を表し(但し、L2bが−O−であり、L1bが−OR22であるとき、L3bは、−N(R231)R241である。また、L2bが−O−であり、L3bが−OR221であるとき、L1bは、−N(R23)R24である)、n1bおよびn2bはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、R1bおよびR2bはC1〜6アルキル基を表し、R3b〜R8bは、それぞれ独立に、水素原子またはC1〜6アルキル基を表し(但し、L2bが−N−CH3であり、L1bおよびL3bが−N(CH3)CH3であり、n1bおよびn2bが1であるとき、R1b〜R8bが同時にメチル基であることはない)、(R1bもしくはR2b)と(R3bもしくはR4b)との間で環を形成していても良く、(R5bもしくはR6b)と(R7bもしくはR8b)との間で環を形成していても良い。 本発明の有機リチウム化合物の製造方法によれば、リチウムによるメタル化によって生成する有機リチウム化合物の安定性を大幅に向上させることができる。この方法は、比較的温和な条件において、有機リチウム化合物を高収率で操作上、安全対策上の負担を大幅に減じて製造できる。また、本発明の置換芳香族化合物の製造方法によれば、比較的温和な条件下で、置換芳香族化合物を操作上、安全対策上の負担を大幅に減じて高収率で得ることができる。すなわち、マイクロリアクターなどの管型流通式反応器やカスケード方式で、比較的温和な条件での連続反応において、管・反応器・バッチ間の移送配管の閉塞などの不具合を生じがたい。またバッチ式の反応の場合は反応器のスケーリング発生を防ぐことができ、反応を容易に制御することができる。有機リチウム化合物の安定化効果が非常に大きい場合には連続化自体を回避することができる。さらに、本発明の製造方法によれば、冷却等のために特殊な設備を要しないので製造コストを大幅に抑えることができる。管型流通式反応器においては、管の径を大きくすることができるので製造コストを大幅に抑えることができる。 本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、比較的温和な温度条件において、有機リチウム化合物の関与する分解や、二量化・オリゴマー化や、重合などを大きく抑制する能力を有し、有機リチウム化合物の安定化がはかれる物質として、ペンタメチルジエチレントリアミンなどの配位性化合物を見出した。 さらにこの有機リチウム化合物の安定化は、テトラメチルエチレンジアミンのような2座の配位性化合物には見られず、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物によって特異的に成されることを見出した。 そして、これらの知見に基づいてさらに検討した結果、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物の存在下で、芳香族化合物若しくはハロゲン化不飽和脂肪族化合物とリチオ化剤とを比較的温和な条件で反応させることによって、有機リチウム化合物を操作上、安全対策上の負担を大幅に減じて高収率で製造できること、および、この製造方法で得られた有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応を比較的温和な条件で行うことによって、置換芳香族化合物を操作上、安全対策上の負担を大幅に減じて高収率で得ることができることを見出した。 さらに、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物の存在下で、フローリアクターなどの管型流通式反応器を用いて比較的温和な条件で反応させることによって、管・反応器の閉塞などの不具合が生じないことを見出した。 本発明はこれらの知見に基づき完成するに至ったものである。 次に、本発明の第1の態様の有機リチウム化合物の製造方法について説明する。 有機リチウム化合物の製造方法は、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物の存在下で、芳香族化合物若しくはハロゲン化不飽和脂肪族化合物とリチオ化剤とを−40℃〜40℃の温度にて反応させる工程を含むものである。 本態様に用いられる配位性化合物は、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有する、リチウム元素に対して配位可能な化合物である。配位能を持つ元素としては、窒素元素、酸素元素、リン元素、硫黄元素などが挙げられるが、本態様に用いられる配位性化合物は、配位能を持つ元素のうち少なくとも一つが窒素元素である。 本態様に用いられる別の配位性化合物は、配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有する、リチウム元素に対して配位可能な化合物である。そして該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である。 本態様に好適な配位性化合物は、配位能を有する基が三座あるもの、すなわち三座配位性化合物が好ましい。三座配位性化合物には三脚型のもの(3つの配位能を有する基が一つの元素から放射状に繋がっているもの)と、直列型のもの(3つの配位能を有する基が直列に繋がっているもの)がある。本態様では直列型三座配位性化合物が好ましい。さらに、直列型三座配位性化合物としては、式(1)または式(2)で表されるものが好ましい。 式(1)中、 L1、L2およびL3はそれぞれ独立に酸素元素を含む基若しくは窒素元素を含む基(ただし、L1、L2およびL3のうちの少なくとも一つが窒素元素を含む基である。)またはL1、L2およびL3はそれぞれ独立に酸素元素を含む基(但し、L1およびL3のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基)を表し、 n1およびn2はそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、 R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、へテロアリール基を表し、(R1もしくはR2)と(R3もしくはR4)との間で環を形成していても良く、(R5もしくはR6)と(R7もしくはR8)との間で環を形成していても良く、(R3もしくはR4)と(R5もしくはR6)との間で環を形成していても良く、(R1もしくはR2)とL1との間で環を形成していても良く、(R7もしくはR8)とL3との間で環を形成していても良い。 アルキル基は、アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基であることがより好ましい。 アリール基は、6〜14員環の単環式または多環式のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フェロセニル基等であることが好ましい。。 ヘテロアリール基は、窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個の原子を含有する5〜14員の単環式または多環式のヘテロアリール基、例えば、チオフェニル基、フリル基、ピリジル基、ピロリル基、ピロリニル基、ピラジニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基(例えば、4H−1,2,4−トリアゾリル基、1H−1,2,3−トリアゾリル基、2H−1,2,3−トリアゾリル基など)、テトラゾリル基(例えば、1H−テトラゾリル基、2H−テトラゾリル基など)、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾチオフェニル基等であることが好ましい。 なお、アルキル基、アリール基、およびへテロアリール基には、本態様の効果を損ねない範囲で、置換基を有していてもよい。 また、(R1もしくはR2)と(R3もしくはR4)との間で形成される環、(R5もしくはR6)と(R7もしくはR8)との間で形成される環、(R3もしくはR4)と(R5もしくはR6)との間で形成される環、(R1もしくはR2)とL1との間で形成される環、または、(R7もしくはR8)とL3との間で形成される環は、脂環、芳香環およびヘテロ環のいずれでもよい。 脂環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。 芳香環としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェロセン等が挙げられる。 ヘテロ環としては、チオフェン、フラン、ピラン、ピリジン、ピロール、ピラジン、アゼピン、オキサゾール、チアゾール、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール、テトラゾール、イミダゾール、ピラゾール、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、キノキサリン、フタラジン、キノリジン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、キヌクリジン、トロパン、フェノチアジン等が挙げられる。 酸素元素を含む基としてはオキシ基、カルボニル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素原子数1〜10のアルコキシ基)、フェノキシ基等が挙げられる。 窒素を含む基としては三級のアミノ基、ピリジル基などが挙げられる。 第三級アルコキシ基としては、1,1−ジメチルエトキシ基(=t−ブトキシ基)、1,1−ジメチルプロポキシ基、1−メチル−1−エチルプロポキシ基、1,1−ジエチルプロポキシ基などが挙げられる。 式(2)中、 L2aは、−O−または−N(−CH2−R11)−を表し、 R11は水素原子またはC1−6アルキル基を表し、 L1aは、−OR12または−N(R13)R14を表し、 L3aは、−OR121または−N(R131)R141を表し、 R12、R121はそれぞれ独立にC1−6アルキル基を表し、 R13、R131はそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはn−プロピル基を表し、 R14、R141はそれぞれ独立にC1−6アルキル基を表し(但し、L2aが−O−であり、L1aが−OR12であるとき、L3aは、−N(R131)R141である。また、L2aが−O−であり、L3aが−OR121であるとき、L1aは、−N(R13)R14である)、 n1aおよびn2aはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、 R1a〜R8aは、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル基またはフェニル基を表し、(R1aもしくはR2a)と(R3aもしくはR4a)との間で環を形成していても良く、(R5aもしくはR6a)と(R7aもしくはR8a)との間で環を形成していても良い。 また、(R1aもしくはR2a)と(R3aもしくはR4a)との間で形成される環、または、(R5aもしくはR6a)と(R7aもしくはR8a)との間で形成される環は、脂環、芳香環およびヘテロ環のいずれでもよい。 脂環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。 芳香環としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェロセン等が挙げられる。 ヘテロ環としては、チオフェン、フラン、ピラン、ピリジン、ピロール、ピラジン、アゼピン、オキサゾール、チアゾール、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール、テトラゾール、イミダゾール、ピラゾール、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、キノキサリン、フタラジン、キノリジン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、キヌクリジン、トロパン、フェノチアジン等が挙げられる。 本態様に用いられる好適な配位性化合物としては、ビス〔2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル〕エーテル、1−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)−N,N,2−トリメチルプロパン−2−アミン、1,1’−オキシビス(N,N,2−トリメチルプロパン−2−アミン、2−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)−N,N−ジメチルシクロヘキサンアミン、2−(2−(ジメチルアミノ)−2−メチルプロポキシ)−N,N−ジメチルシクロヘキサンアミン、2,2’−オキシビス(N,N−ジメチルシクロヘキサンアミン)、1,1’−オキシビス(メチレン)ビス(N,N−ジメチルシクロヘキサンアミン)、2,2’−オキシビス(N,N−ジメチル−1,2−ジフェニルエタンアミン)、N,N’−(2,2’−オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(N,2−ジメチルプロパンー1−アミン)、1,1’−(テトラヒドロフラン−2,5−ジイル)ビス(N,N−ジメチルメタンアミン)、1,1’−(フラン−2,5−ジイル)ビス(N,N−ジメチルメタンアミン)、N,N−ジメチル−2−((1−メチルピロリジン−2−イル)メトキシ)エタンアミン、2,2’−オキシビス(メチレン)ビス(1−メチルピロリジン)、1,1’−(2,2’−オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ジピロリジン、2−(2−メトキシフェノキシ)−N,N−ジメチルエタンアミン、2,2’−オキシビス(N,N−ジメチルアニリン)、N4,N4,N6,N6−テトラメチルジベンゾ[b,d]フラン−4,6−ジアミン、2,2’−チオビス(N,N−ジメチルアニリン)、2−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)−N−(2−メトキシエチル)−N−メチルエタンアミン、3,3’−オキシビス(N,N,2,3−テトラメチルブタン−2−アミン)、ビス〔2−(N,N−ジメチルアミノ)−1−メチルエチル〕エーテル、ビス〔3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル〕エーテル、ビス〔2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル〕エーテル、ビス〔2−(N,N−ジエチルアミノ)−1−メチルエチル〕エーテル、ビス〔2−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル〕エーテル、ビス〔2−(N,N−ジメチルアミノ)−1−メチルプロピル〕エーテル、(2−ジメチルアミノエチル−3−ジメチルアミノプロピル)エーテル、3−(2−(ジメチルアミノ)−2−メチルプロポキシ)−N,N,2,2−テトラメチルプロパン−1−アミン、o−エトキシ−2−(N,N−ジメチルアミノ)エトキシベンゼン、1−(2−メトキシフェノキシ)−N,N,2−トリメチルプロパン−2−アミンなどが挙げられる。これらのうち、ビス〔2−(N,N−ジアルキルアミノ)アルキル〕エーテル、2,2’−オキシビス(N,N−ジアルキルシクロアルキルアミン)、2−(2−(ジアルキルアミノ)アルコキシ)−N,N−ジアルキルシクロアルキルアミンが好ましく、ビス〔2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル〕エーテル、1−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)−N,N,2−トリメチルプロパン−2−アミン、1,1’−オキシビス(N,N,2−トリメチルプロパン−2−アミン、2−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)−N,N−ジメチルシクロヘキサンアミン、2,2’−オキシビス(N,N−ジメチルシクロヘキサンアミン)、(2−ジメチルアミノエチル−3−ジメチルアミノプロピル)エーテルが特に好ましい。 本態様に用いられる別の好適な配位性化合物としては、N−(2−アミノエチル)−1,2−エタンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジアミジノピリジン、3,5−ジ(2−ピリジル)ピリジン、2,6−ジ(2−ピリジル)ピリジン、N−メチル−ジ(N,N−2−メトキシエチル)アミン、N,N−ビス(2−メトキシエチル)ブタン−1−アミン、7−メチル−1,4,7−ジオキサゾナン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアゾナン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアゼカン、N1−(2−(ジメチルアミノ)−2−メチルプロピル)−N1,N2,N2,2−テトラメチルプロパン−1,2−ジアミン、N2−(3−(ジメチルアミノ)ブタン−2−イル)−N2,N3,N3−トリメチルブタン−2,3−ジアミン、N1−(2−(ジメチルアミノ)−1,2−ジフェニルエチル)−N1,N2,N2−トリメチル−1,2−ジフェニルエタン−1,2−ジアミン、N2−(3−(ジメチルアミノ)−2,3−ジメチルブタン−2−イル)−N2,N3,N3,2,3−ペンタメチルブタン−2,3−ジアミン、2,6−ビス(2−メトキシプロパン−2−イル)ピリジン、ビス(2−t−ブトキシエチル)エーテル、N1−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−N1,N2,N2−トリメチルエタン−1,2−ジアミンなどが挙げられる。これらのうち、N,N−ビス(2−メトキシエチル)ブタン−1−アミン、N1−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−N1,N2,N2−トリメチルエタン−1,2−ジアミンが特に好ましい。 本態様に用いられる配位性化合物の他の例としては、1,1,1−トリス(ジメチルアミノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジフェニルアミノメチル)エタン;トリス(1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジイソプロピル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジフェニル−1−ピラゾリル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)プロパン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)ブタン、トリス(2−ピリジル)メタン、トリス(6−メチル−2−ピリジル)メタン、トリス(2−ピリジル)アミン、トリス(2−ピリジル)ホスフィン、トリス(2−ピリジル)ホスフィンオキシド、トリス(2−ピリジル)ヒドロキシメタン、トリス(1−イミダゾリル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジエチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,4,5−トリメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−4−n−ブチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−トリル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−アニシル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(2−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(3−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン、1−メチル−トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン、メチル−トリス(3−エチル−1−ピラゾリル)メタン、メチル−トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン、メチル−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−トリル)−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−アニシル)−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−プロピル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−エチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−t−ブチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス((2-ジメチルアミノ)エチル)アミン;N,N’,N”,N'''−ヘキサメチル−トリエチレンテトラアミン;N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7,1,4−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルピペラジン、ビス(N,N−ジエチルアミノエチル)アジペート、2−[N−(ジメチルアミノエトキシエチル)−N−メチルアミノ]エタノール;エチレンジアミン四酢酸;ポルフィン、ポルフィリン、フタロシアニンなどが挙げられる。 前記配位性化合物は、リチオ化剤中のリチウム元素に対して、通常、0.01モル%〜溶媒量、好ましくは1〜500モル%、より好ましくは50〜200モル%、特に好ましくは90〜120モル%で反応系中に存在させる。 本態様に用いられる芳香族化合物は、(4n+2)個(但し、nは整数を表わす。)のπ電子を有する環を有する化合物である。本態様に用いられる芳香族化合物に含まれる環としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の単環式または多環式の6〜10員の芳香族炭化水素環;チオフェン、フラン、ピラン、ピリジン、ピロール、ピラジン、アゼピン、アゾシン、アゾニン、アゼシン、オキサゾール、チアゾール、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール、テトラゾール、イミダゾール、ピラゾール、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、キノキサリン、フタラジン、キノリジン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、クロメン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等の5〜10員の単環式または多環式の窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個の原子を含有する芳香族ヘテロ環が挙げられる。これらのうち、単環式の芳香環が好ましい。すなわち、本態様に用いられる芳香族化合物は単環芳香族化合物であることが好ましい。 また、環は更に置換基を有していても良い。置換基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素等のハロゲン原子;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等の直鎖、分岐または環状の炭素数1〜20のアルキル基(シクロアルキルによって置換されたアルキルも含む);ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘキサジエニル、ドデカトリエニル等の直鎖、分岐、または環状の炭素数2〜20のアルケニル基;エチニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、シクロオクチニル、シクロノニニル、シクロデシニル等の直鎖、分岐または環状の炭素数2〜20のアルキニル基;フェニル、ナフチル、アントラニル等の5〜10員の単環式または複環式アリール基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ等の炭素数1〜20のアルコキシ基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ、ヘキサデシルチオ、オクタデシルチオ等の炭素数1〜20のアルキルチオ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基; アセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル等の炭素数2〜20のアシル、ベンゾイル、ナフトイル等の置換カルボニル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、フェノキシカルボニル等の置換オキシカルボニル基;アセチルオキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ヘプタノイルオキシ等の炭素数2〜20のアシルオキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ等の置換カルボニルオキシ基;メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル等の置換スルホニル基;N−メチルカルバモイル、N,N−ジフェニルカルバモイル等のアルキル、アルケニルおよびアリールから選択される1または2個の基によって置換されたカルバモイル基;N−フェニルスルファモイル、N,N−ジエチルカルバモイル等のアルキル、アルケニルおよびアリールから選択される1または2個の基によって置換されたスルファモイル基;アセチルアミノ、tert−ブチルカルボニルアミノ、n−ヘキシルカルボニルアミノ等の炭素数2〜20のアシルアミノ、ベンゾイルアミノ、ナフトイルアミノ等の置換カルボニルアミノ基;N−メチルウレイド、N,N−ジエチルウレイド等のアルキル、アルケニルおよびアリールから選択される1または2個の基によって置換されたウレイド基;メチルスルホニルアミノ、tert−ブチルスルホニルアミノ、n−オクチルスルホニルアミノ等の炭素数1〜20のスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、ナフチルスルホニルアミノ等の置換スルホニルアミノ基;メチルアミノ、フェニルアミノ、tert−ブトキシカルボニルアミノ、ピバロイルアミノ、ベンジルアミノ、フタロイルアミノ、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等のモノ置換またはジ置換アミノ基;ニトロ基;シアノ基;トリメチルシリル、トリエチルシリル等の置換シリル基;t−ブチルジメチルシリルオキシ基などのシリルオキシ基; チオフェン、フラン、ピラン、ピリジン、ピロール、ピラジン、アゼピン、アゾシン、アゾニン、アゼシン、オキサゾール、チアゾール、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール、テトラゾール、イミダゾール、ピラゾール、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、キノキサリン、フタラジン、キノリジン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、クロメン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等の5〜10員の単環式または多環式の窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個の原子を含有するヘテロ環残基;ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロジフルオロメトキシ基、ブロモジフルオロメトキシ基、2−フルオロエトキシ基、2−クロロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルオキシ基、1,1,2,3,3,3−ヘキサフロオロプロピルオキシ基などのハロアルキルオキシ基、メトキシテトラフルオロエトキシ基などのアルコキシハロアルキルオキシ基;トリフルオロメトキシエトキシ基などのハロアルコキシアルキルオキシ基;トリフルオロメトキシテトラフルオロエトキシ基などのハロアルコキシハロアルキルオキシ基;ジフルオロ(メトキシ)メチル基などのハロアルコキシアルキル基;2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル基などのハロアルコキシハロアルキル基; 液晶などの電子材料分野や医農薬などで公知である全てのハロアルキル基(例えば、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ジフルオロメチル基、クロロフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ブロモフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ジクロロフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、ブロモクロロフルオロメチル基、ジブロモフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2−クロロ−2−フルオロエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2−ブロモ−2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−クロロ−2,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジクロロ−2−フルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−ブロモ−2,2−ジフルオロエチル基、2−ブロモ−2−クロロ−2−フルオロエチル基、2−ブロモ−2,2−ジクロロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、1,2−ジクロロ−1,2,2−トリフルオロエチル基、2−ブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2−フルオロプロピル基、2−クロロプロピル基、2−ブロモプロピル基、2−クロロ−2−フルオロプロピル基、2,3−ジクロロプロピル基、2−ブロモ−3−フルオロプロピル基、3−ブロモ−2−クロロプロピル基、2,3−ジブロモプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−ブロモ−3,3−ジフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、2,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−フルオロ−1−メチルエチル基、2−クロロ−1−メチルエチル基、2−ブロモ−1−メチルエチル基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基、1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基、2−フルオロブチル基、2−クロロブチル基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、4−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブチル基、2−フルオロ−2−メチルプロピル基、1,2,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(トリフルオロメチル)プロピル基、2−クロロ−1,1−ジメチルエチル基、2−ブロモ−1,1−ジメチルエチル基、5−クロロ−2,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基等が挙げられる。 これらの置換基は更に置換基を有していてもよい。更なる置換基は反応に関与しないものであれば特に制限されない。更なる置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等の低級アルキル基やフェニル、ナフチル等のアリール基、塩素、フッ素等のハロゲン原子が挙げられる。更なる置換基としてハロゲン原子を含むものが好ましく、例えば、他の置換基を有してもよいハロアルキルハロベンゼン等が挙げられる。具体的には、o−ジフロロベンゼン、3,4−ジフロロ−ベンゾトリフロリド、3,4−ジフロロ−ニトロベンゼン、2,6−ジブロモ−ピリジンなどが挙げられる。 本態様に用いられる芳香族化合物は、好ましくは他の置換基を有してもよいハロゲン化芳香族化合物であり、より好ましくは、他の置換基を有してもよいモノフルオロベンゼン、他の置換基を有してもよいジフルオロベンゼン、他の置換基を有してもよいトリフルオロベンゼン、他の置換基を有してもよいモノクロロベンゼン、他の置換基を有してもよいジクロロベンゼン、若しくは他の置換基を有してもよいトリクロロベンゼンであり、特に好ましくは、トリフルオロメチルフルオロベンゼン若しくはトリフルオロメチルジフルオロベンゼンである。 本態様に用いられるハロゲン化不飽和脂肪族化合物は、炭素−炭素二重結合を有する炭化水素のハロゲン誘導体である。ハロゲンは炭素−炭素二重結合を構成する少なくとも一つの炭素元素に結合しているものが好ましい。例えば、ビニルブロマイド、ビニルクロライド、ビニルフルオライドなどのハロゲン化ビニル;1−ブロム−1−シクロヘキセン、1−ブロム−1−シクロオクテンなどが挙げられる。 前記芳香族化合物若しくはハロゲン化不飽和脂肪族化合物は、リチオ化剤中のリチウム元素に対して、通常、20〜2000モル%、好ましくは20〜500モル%、より好ましくは50〜200モル%、特に好ましくは90〜120モル%で反応させる。 本態様に用いられるリチオ化剤は、従来公知のものである。例えば、リチウム金属;メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、メトキシメチルリチウム、エトキシメチルリチウム等のアルキルリチウム;ビニルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウム等のアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウム等のアルキニルリチウム;ベンジルリチウム、フェニルエチルリチウム等のアラルキルリチウム;リチウムジイソプロピルアミド等のリチウムアミド等が挙げられる。これらの中でアルキルリチウム、アルケニルリチウム、アルキニルリチウムが好ましく、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、n−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、ビニルリチウム、メトキシメチルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、2−チエニルリチウム、トリ(n−ブチル)マグネシウムリチウムがより好ましい。入手の容易さや操作性からn−ブチルリチウム、メチルリチウムが好ましく、n−ブチルリチウムがさらに好ましい。 本態様における、芳香族化合物若しくはハロゲン化不飽和脂肪族化合物とリチオ化剤との反応には、必要に応じて溶媒を用いることができる。溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、トリエチルアミン、ピリジンなどが挙げられ、特にテトラヒドロフラン、n−ヘキサン、トルエンが好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独でまたは2種以上の溶媒を混合して用いることができる。 本態様における溶媒使用量は、芳香族化合物若しくはハロゲン化不飽和脂肪族化合物とリチオ化剤とを反応させる工程においては、芳香族化合物若しくはハロゲン化不飽和脂肪族化合物1モルに対し、100リットル〜0リットル、好ましくは10リットル〜0.001リットル、さらに好ましくは5リットル〜0.01リットルである。 本態様におけるリチオ化剤による反応には、脱プロトンによるリチオ化反応と、ハロゲン−リチウム置換によるリチオ化反応とがある。本態様では、芳香族化合物とリチオ化剤とを、脱プロトンによるリチオ化反応させることが好ましい。ここで、「脱プロトンによるリチオ化反応させる」とは、n−ブチルリチウムやリチウムジイソプロピルアミドなどの高い塩基性を持つ有機リチウム、リチウムアミドなどにより芳香族化合物のプロトンを引抜き、プロトンとリチウムが交換した型の芳香族リチウム化合物を生成させることを意味する。 従来技術における芳香族化合物若しくはハロゲン化不飽和脂肪族化合物とリチオ化剤との反応は、有機リチウム化合物の収率を低下させないために極低温で行う必要があったが、本態様では極低温にしなくても有機リチウム化合物を高収率で得ることができる。すなわち、本態様における芳香族化合物若しくはハロゲン化不飽和脂肪族化合物とリチオ化剤との反応は、−40〜40℃、より好ましくは−40℃〜20℃、好ましくは−20℃〜10℃の温度条件で行うことができる。該反応は、バッチ式反応器、連続バッチ式(カスケード式)反応器、連続流通式反応器(マイクロリアクターを含む)などで行うことができる。 なお、詳細は不明だが、本態様における芳香族化合物若しくはハロゲン化不飽和脂肪族化合物とリチオ化剤との反応で生成した有機リチウム化合物を含む液には、反応時に存在させた配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物が有機リチウム化合物中のリチウム元素にキレート配位していると考えられる。そして、本態様の製造方法によって有機リチウム化合物を温和な条件においても高収率で得ることができるのは、有機リチウム化合物に該配位性化合物がキレート配位することによって、有機リチウム化合物の安定性が特異的に増し、有機リチウム化合物の分解や二量化・オリゴマー化が抑制されているからであろうと推測される。 次に、本発明の第2の態様の置換芳香族化合物の製造方法について説明する。ただし、前記第1の態様と同様の事項については、その説明を省略する。 本態様の置換芳香族化合物の製造方法は、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物の存在下で、芳香族化合物とリチオ化剤とを40℃以下(好ましくは、−60〜40℃、より好ましくは、−40〜40℃)の温度にて反応させて、有機リチウム化合物を得る工程、および前記工程で得られた有機リチウム化合物と求電子性化合物とを−40℃〜40℃の温度にて反応させる工程を含むものである。 配位性化合物としては、前記式(1)または式(2)で表される化合物であることが好ましい。 芳香族化合物としては、前記第1の態様で記載のものを用いることができ、単環芳香族化合物であることが好ましい。 リチオ化剤として、各々、前記第1の態様で記載のものを用いることができる。 前記芳香族化合物とリチオ化剤とは、脱プロトンによるリチオ化反応させることが好ましい。 有機リチウム化合物を得る工程において、芳香族化合物とリチオ化剤との反応には、必要に応じて溶媒を用いることができる。溶媒としては、前記第1の態様で記載のものを、前記第1の態様で記載の使用量と同程度の使用量で用いることができる。 本態様に用いられる求電子性化合物は、電子受容能を有する官能基をもつ化合物(即ち、求電子剤として作用し得る化合物)であれば特に制限されないが、電子密度の大きい官能基や非共有電子対と反応する化合物が好ましい。また当該化合物には既知の有機リチウム試薬を使用したハロゲン−金属交換反応および脱プロトンによるリチオ化反応で使用される求電子性化合物が全て含まれる。 本態様で用いられる求電子性化合物としては、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン;固体状硫黄、二酸化硫黄、酸素等の無機物類;二酸化炭素;トリフルオロメチルスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸類;ジメチル硫酸;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ベンゾフェノンイミン、アセトフェノンイミン等のイミン類;クロロトリメチルシラン、クロロジメチルフェニルシラン、クロロジメチルシラン、ブロモトリメチルシラン等のハロゲン化シリコン類;クロロジアルキルヒドロシラン等のクロロシラン化合物;トリクロロボラン、トリブロモボラン等のハロゲン化ホウ素類;ピナコールボロン酸エステル、トリメチルボロン酸エステル、トリイソプロピルボロン酸エステル等のボロン酸エステル類;トリス(イソプロポキシ)ボラン、メトキシジエチルボラン、トリス(ジメチルアミノ)ボラン、ビス(ピナコレート)ジボラン等のホウ素化合物;二塩化ジブチルスズ、二臭化ジフェニルスズ等のスズ化合物類;パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ニコチンアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、2−ブタノン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、tert−ブチル−4−オキソ−1−ピペリジンカルボキシレート等のケトン類;N,N−メチルフェニルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のホルムアミド類;オルト蟻酸エチル、オルト蟻酸メチル等のオルトエステル類; 蟻酸メチル、亜燐酸トリメチル、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン;トリフルオロ酢酸エチル、クロロ蟻酸エチル、クロロ蟻酸フェニル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸オクチル、酢酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル等のエステル類;無水酢酸、無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等の酸無水物類;アセチルクロライド、ベンゾイルクロライド、2−ピリジンカルボニル クロライド等のハロゲン化アシル類;オキシラン、2−メチル−オキシラン等のオキシラン類;6−アザビシクロ[3,1,0]ヘキサン、7−アザビシクロ[4,1,0]ヘプタン等のアジリジン類;3−オキソ−1,3−ジフェニル−1−プロペン、2−メチル−3−オキソ−3−ジフェニル−1−プロペン等のα、β−不飽和ケトン類;ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化ヘキシル、臭化オクチル、1,2−ジヨードエタン、1,2−ジブロモエタン、1,6−ジヨードヘキサン、1,8−ジブロモオクタン、1,2−ジブロモシクロペンテン等のハロゲン化アルキル類;N−ブロモコハク酸イミド、N−ヨードコハク酸イミド、N−クロロコハク酸イミド、N−ブロモフタル酸イミド等の酸イミド類;ジメチルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド等のジスルフィド類;クロロジフェニルホスフィン、クロロジメチルホスフィン等のホスフィン類;クロロジフェニルホスフィンオキシド、クロロジメチルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;重水、水;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;オキセタンなどの4員環化合物;チオエステル;ホスゲン・トリホスゲンなどのホスゲン様化合物;チオホスゲン;クロロギ酸メチルなどのハロギ酸エステル;ベンジルクロリドなどのハロゲン化ベンジル;イソシアネート・イソチオシアネートなどのヘテロクムレン(ブチルイソシアネート、ブチルイソチオシアネートなど);ニトロソ化合物;マグネシウム化合物(塩化マグネシウムなど);カルシウム化合物(塩化カルシウムなど);バリウム化合物(塩化バリウムなど);アルミ化合物(塩化アルミ、ジエチルアルミニウムクロリド、トリブチルアルミなど);チタン化合物(塩化チタン、トリイソプロポキシクロロチタンなど);亜鉛化合物(塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、トリエチルアルミなど);マンガン化合物(塩化マンガンなど);銅化合物(塩化銅、ヨウ化銅、シアン化銅など);鉄化合物(塩化鉄など);パラジウム、ルテニウムなどの遷移金属化合物(塩化パラジウム、塩化ロジウム、塩化イリジウム、塩化ニッケル、塩化コバルト、塩化タングステン、塩化モリブデン、塩化バナジウムなど)などが挙げられる。 本態様における、有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応には、必要に応じて溶媒を用いることができる。溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、トリエチルアミン、ピリジンなどが挙げられる。これらの溶媒は単独でまたは2種以上の溶媒を混合して用いることができる。これらの溶媒のうち、安定性と反応性とのバランスが良好な観点から、極性溶媒が好ましく、特にテトラヒドロフランが好ましい。 有機リチウム化合物と求電子性化合物とを反応させる工程における溶媒使用量は、有機リチウム化合物1モルに対し、100リットル〜0リットルであることが好ましく、10リットル〜0.001リットルであることがより好ましく、5リットル〜0.01リットルであることがより更に好ましい。 従来技術における有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応は、収率を低下させないために極低温で行う必要があったが、本態様では極低温にしなくても置換芳香族化合物を高収率で得ることができる。本態様における有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応は、−40〜40℃、好ましくは−40℃〜20℃、より好ましくは−20℃〜10℃の温度条件で行うことができる。該反応は、バッチ式反応器、連続バッチ式(カスケード式)反応器、連続流通式反応器(マイクロリアクターを含む)などで行うことができる。 本態様における有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応は、求電子性化合物が有機リチウム化合物よりも過剰な状態に保って行うことが好ましい。ここで、「過剰な状態」とは、別途合成した有機リチウム化合物を、少量ずつ多量の求電子化合物と接触させることを意味する。具体的には求電子性化合物を含む液に有機リチウム化合物を含む液を滴下して反応させることが好ましい。滴下速度は特に制限されないが、滴下した有機リチウム化合物が、溶媒と反応したり、二量化・オリゴマー化したり、生成した置換芳香族化合物とさらに反応したりしない程度にするのが好ましく、求電子化合物との接触から短時間で完全に消費される程度であるのがより好ましい。なお、前述のリチオ化反応と、この滴下による求電子反応とを連続的に行う場合には、求電子反応において滴下に必要な量の有機リチウム化合物を連続管型流通式反応器等を用いて順次リチオ化反応で得、生成した有機リチウム化合物をできるだけ溜めずに直ぐに求電子反応に供することが好ましい(例えば、実施例4)。 なお、詳細は不明だが、本態様の製造方法によって置換芳香族化合物を温和な条件においても高収率で得ることができるのは、有機リチウム化合物に本態様で特定する前記の配位性化合物がキレート配位することによって、有機リチウム化合物の安定性が増し、有機リチウム化合物の分解や二量化・オリゴマー化などが抑制され、求電子性化合物と反応する有機リチウム化合物が多くなるからであろうと推測される。 次に、本発明の第3の態様について説明する。ただし、前記第1または第2の態様と同様の事項については、その説明を省略する。 本発明の第3の態様は、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物の、連続流通式反応装置における、有機リチウム化合物の製造若しくは有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応による置換芳香族化合物の製造への閉塞防止剤若しくは滞留時間延長剤としての使用である。 配位性化合物は、前記式(1)または(2)で表される化合物であることが好ましい。 有機リチウム化合物の製造は、前記第1の態様に基づいてなされることが好ましい。 置換芳香族化合物の製造は、前記第2の態様に基づいてなされることが好ましい。 「連続流通式反応装置」とは、連続的に反応試剤を管型の反応器に導入し、反応器を通過する間に所望の反応を起こさせ、連続的に管型の反応器から反応物を取り出す装置一般を意味し、例えば、マイクロリアクターやフローリアクター等が挙げられる。 「閉塞防止剤」とは、反応試剤を通過させる連続流通式反応装置や反応槽同士を繋ぐ移送配管等に、副生物、オリゴマー、ポリマーや粘性の高いスラリーなどが付着・蓄積することにより、管が閉塞し反応試剤の流通が困難になることを防止するために用いられる添加剤を意味する。 「滞留時間延長剤」とは、連続流通式反応装置や移送配管等に反応試剤が滞留する時間を長くしたり、長時間移送を停止した後に反応試剤の流通を再開したりする際に、移送する反応試剤の流通を妨げる管の閉塞や反応試剤の粘度の上昇等の悪影響が現れるのを防止するために用いられる添加剤を意味する。 次に、本発明の第4の態様について説明する。ただし、前記第1〜第3の態様と同様の事項については、その説明を省略する。 本発明の第4の態様は、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物の、有機リチウム化合物の製造若しくは有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応による置換芳香族化合物の製造への反応暴走抑止剤若しくはスケーリング抑止剤としての使用である。 「反応暴走抑止剤」とは、反応試剤の反応速度の上昇を抑制することにより、発熱反応を制御し、発泡、沸騰などを抑制し、反応の暴走による製品の品位低下などの悪影響を抑止するために用いられる添加剤を意味する。 「スケーリング抑止剤」とは、バッチ式の反応槽などにおいて、オリゴマー化、ポリマー化、および不溶化などが原因で、反応試剤が反応槽に付着することにより、撹拌効率や伝熱効率の低下、洗浄操作性の悪化、製品品位の低下などの悪影響を抑止するために用いられる添加剤を意味する。 次に、本発明の第5の態様の配位子について説明する。ただし、前記第1または第2の態様と同様の事項については、その説明を省略する。 本態様の配位子は、下記式(3)で示される。 式(3)中、 L2bは、−O−または−N(−CH2−R21)−を表し、 R21は水素原子またはC1−6アルキル基を表し、 L1bは、−OR22または−N(R23)R24を表し、L3bは、−OR221または−N(R231)R241を表し、 R22、R221はそれぞれ独立にC1−6アルキル基を表し、 R23、R231はそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはn−プロピル基を表し、 R24、R241はそれぞれ独立にC1−6アルキル基を表し(但し、L2bが−O−であり、L1bが−OR22であるとき、L3bは、−N(R231)R241である。また、L2bが−O−であり、L3bが−OR221であるとき、L1bは、−N(R23)R24である)、 n1bおよびn2bはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、 R1bおよびR2bはC1−6アルキル基を表し、 R3b〜R8bは、それぞれ独立に、水素原子またはC1−6アルキル基を表し(但し、L2bが−N−CH3であり、L1bおよびL3bが−N(CH3)CH3であり、n1bおよびn2bが1であるとき、R1b〜R8bが同時にメチル基であることはない)、 (R1bもしくはR2b)と(R3bもしくはR4b)との間で環を形成していても良く、(R5bもしくはR6b)と(R7bもしくはR8b)との間で環を形成していても良い。 (R1bもしくはR2b)と(R3bもしくはR4b)との間で形成される環、または、(R5bもしくはR6b)と(R7bもしくはR8b)との間で形成される環は、脂環、芳香環、またはヘテロ環であることができる。 以下に、実施例および比較例を示し、それによって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 実施例1〜2および比較例1〜6(試験方法A) 窒素雰囲気下で滴下ロートと撹拌機を備えた反応容器に、テトラヒドロフラン30mL(o−キシレンを内部標準として6g含む)、表1に示す配位性化合物(比較例1は配位性化合物を使用していない。)35.0mmol、3,4−ジフロロ−ベンゾトリフルオリド6.06g(33.3mmol)を入れ、−50℃に冷却した。n−ブチルリチウム(1.6mol/L ヘキサン溶液)15.1g(35.0mmol)を−50℃にて滴下し、滴下後同温度で1時間撹拌して2,3−ジフロロ−6−トリフルオロメチル−フェニルリチウムを含む溶液を得た。 次に、この溶液を0℃に昇温し、同温度で5時間撹拌した。該溶液から試料を少量抜き取りメタノールに溶解させた。このメタノールへの溶解によって、2,3−ジフロロ−6−トリフルオロメチル−フェニルリチウムがプロトン化され、3,4−ジフロロ−ベンゾトリフルオリド(DFBT)を主成分として含むものが得られた。DFBTの生成量(%)を、高速液体クロマトグラフィー(以下HPLCと略す)を用いて定量分析した。その結果を表1に示す。 さらに該溶液を−15℃で表1に示す時間放置した。そして、3,4−ジフロロ−ベンゾトリフルオリド(DFBT)の残量(%)を前記と同じ手法にて定量分析した。その結果を表1に示す。 実施例1〜2と比較例1〜6との比較から、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物を用いた場合は、他の配位性化合物を用いた場合に比べて、オリゴマーなどの副生成物に変成する量を抑制していることがわかる。このことから、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物が、温和な条件(0℃、−15℃)下であってもリチオ体の安定性を大幅に向上させていることがわかる。実施例3 窒素雰囲気下、ヘキサン2mLにビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテル1.60g(10mmol)を加え溶解した。−15℃に冷却し、n−ブチルリチウム(1.6mol/L ヘキサン溶液)6.25mL(10mmol)を−15℃〜−5℃に保って滴下し、15分間撹拌した。これに4−フルオロ−ベンゾトリフルオリド820mg(5mmol)を−15℃〜−5℃に保って滴下した。滴下終了後、−15℃で1.5時間反応させて2−フルオロ−(5−トリフルオロメチル)−フェニルリチウムを含む液を得た。 この溶液にトリメトキシボラン1.56g(15mmol)を−15℃〜−10℃で滴下した。滴下終了後、この反応液を室温に昇温し、これに1mol/Lの塩酸10mLを加え、酢酸エチルにて抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。これをろ過、濃縮して1−フルオロ−(4−トリフルオロメチル)フェニルボロン酸を収率69%で得た。比較例7 ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテルをテトラヒドロフランに替えた以外は、実施例3と同じ手法にて反応を試みた。反応液は褐色に着色し、反応開始から30分間経過後にHPLCで分析したところ、同定不能な副生成物が多量に生成し、4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドは43%しか存在していなかったので、単離操作を断念した。 実施例3と比較例7との対比から、ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテルの使用は、極低温でない温和な条件下でのリチオ化および求電子剤の導入が可能であることがわかる。実施例3のような温和な反応条件(−15℃)でも収率が高く維持できるのは、ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテルがリチオ化によって生成する2−フルオロ−(5−トリフルオロメチル)−フェニルリチウムなどのリチオ体の安定性を向上させているからであると考えられる。したがって、実施例1および2に示したような、リチオ体の安定性を向上させる配位性化合物、すなわち配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物は、極低温でない温和な条件下でのリチオ化および求電子剤の導入を可能にするものであると考えられる。実施例4 温度を−4℃に調整された1.0mmφ管型流通式反応器Aに、濃度1.76mol/Lの3,4−ジフロロ−ベンゾトリフロリドおよび濃度1.60mol/Lのビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテルのテトラヒドロフラン溶液と、濃度1.6mol/Lのn−ブチルリチウムとを1:1の体積比率で滞留時間が6.6分間となるように連続的に該反応器Aのインレット(混合部の内径3.6mm)を通して供給し、反応させて、反応器Aのアウトレットを通して2,3−ジフロロ−6−トリフルオロメチル−ベンゼンリチウムを含む液を連続的に取り出した。 一方、反応器Bには、ギ酸メチル6.01g(100mmol)をテトラヒドロフラン5mLに溶解させ且つ温度を−8℃に調整されたものが仕込まれている。そして、前述の−4℃の2,3−ジフロロ−6−トリフルオロメチル−フェニルリチウムを含む液を反応器Aから取り出し後すぐに該反応器Bに1分間当たり0.1mLの割合で滴下した。 この操作を4時間続けた。管型流通式反応器Aに詰まりなどのトラブルは生じず、4時間連続して反応を行うことができた。 反応器Bでは、滴下終了後30分間撹拌し、2,3−ジフロロ−6−トリフルオロメチルベンズアルデヒドを含む液を得た。2,3−ジフロロ−6−トリフルオロメチルベンズアルデヒドの3,4−ジフロロ−ベンゾトリフロリドからの転化率は82%であった。 反応器Bで得られた液に、エタノール20mLおよびヒドロキシルアミン塩酸塩2.28g(32.8mmol)を添加して1.5時間還流した。還流終了後、反応液をろ過・濃縮し、目的物である2,3−ジフロロ−6−トリフルオロメチル−ベンズアルドキシムの粗結晶を得た。この粗結晶をHPLCで分析したところ、該粗結晶は転化した原料基準で収率77%および純度97%であった。比較例8 ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテルを用いなかった以外は、実施例4と同じ操作を行った。操作開始から1.6時間経過時に管型流通式反応器Aが閉塞し、反応を中断せざるを得なかった。閉塞の詳細な原因は不明だが、2,3−ジフロロ−6−トリフルオロメチル−ベンゼンリチウムの安定性が低く、オリゴマーなどができたからであろうと思われる。 以上の結果から、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物の存在下で芳香族化合物若しくはハロゲン化不飽和脂肪族化合物とリチオ化剤とを比較的温和な条件で反応させても、有機リチウム化合物を高収率で得られることがわかる。さらに前記方法で得られた有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応を比較的温和な条件で行っても置換芳香族化合物を高収率で得られることがわかる。 従来の手法で、芳香族化合物とリチオ化剤との反応を管型流通式反応器で行うと、反応器が閉塞し、反応を継続することができない(比較例8)が、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物の存在下で、芳香族化合物とリチオ化剤との反応を管型流通式反応器で行うと、反応器の閉塞が生じにくいので、該反応を効率的に長時間連続操業することができる(実施例4)。 以上のように、配位能を持つ元素を1分子中に3以上有し且つそのうちの少なくとも一つが窒素元素である配位性化合物または配位能を持つ酸素元素を1分子中に3以上有し且つ該配位能を持つ酸素元素を含む基のうち少なくとも一つが第三級アルコキシ基である配位性化合物は、有機リチウム化合物の製造若しくは有機リチウム化合物と求電子性化合物との反応による置換芳香族化合物の製造において、配管等の閉塞防止剤、連続流通式反応装置における滞留時間延長剤、または反応暴走抑止剤若しくはスケーリング抑止剤として使用できる。実施例5〜6および比較例9〜14(試験方法B) 窒素雰囲気下で滴下ロートと撹拌機を備えた反応容器に、テトラヒドロフラン30mL(o−キシレンを内部標準として6g含む)、表2に示す配位性化合物(比較例9は配位性化合物を使用していない。)35.0mmol、3,4−ジフロロ−ベンゾトリフルオリド6.06g(33.3mmol)を入れ、−50℃に冷却した。n−ブチルリチウム(1.6mol/L ヘキサン溶液)15.1g(35.0mmol)を−50℃にて滴下し、滴下後同温度で1時間撹拌して2,3−ジフロロ−6−トリフルオロメチル−フェニルリチウムを含む溶液を得た。−50℃にて、該溶液から試料を少量抜き取り、これを別途調製したヨウ素(過剰量)のテトラヒドロフラン/ヘキサン溶液に添加した。 このヨウ素溶液への添加によって、2,3−ジフルオロ−6−トリフルオロメチル−フェニルリチウム(LDFBT)がヨウ素化され、2−ヨード−3、4−ジフルオロ−ベンゾトリフルオリド(IDFBT)を主成分として含むものが得られた。IDFBTの生成量(%)をHPLCにて定量分析した。 次にこの液を0℃に昇温し、同温度で4時間撹拌した。その後、IDFBTの残存量(%)を前記と同じ手法にて定量分析した。さらに該溶液を−15℃で表2に示す時間放置した。その後、IDFBTの残存量(%)を前記と同じ手法にて定量分析した。 以上の分析結果から、以下の式により2,3−ジフルオロ−6−トリフルオロメチル−フェニルリチウム(LDFBT)の残存量(%)を算出した。「LDFBTの残存量(%)」=「昇温後所定時間経過後のIDFBTの残存量(%)」÷「−50℃でのIDFBTの生成量(%)」×100 その結果を表2に示す。実施例7〜10 IDFBTの生成量(%)を定量分析した後の溶液を0℃に昇温し、同温度で4時間撹拌し、さらに該溶液を0℃で表3に示す時間放置した以外は、試験方法Bと同様の方法で、反応を行った。その結果を表3に示す。実施例11〜13および比較例15 IDFBTの生成量(%)を定量分析した後の溶液を20℃に昇温し、同温度で1時間撹拌し、さらに該溶液を20℃で表4に示す時間放置した以外は、試験方法Bと同様の方法で、反応を行った。その結果を表4に示す。実施例14 反応をヘキサン溶媒中で行った以外は、試験方法Bと同様の方法で、反応を行った。 その結果を表5に示す。 実施例5、実施例14との比較から、テトラヒドロフラン等の非プロトン性極性溶媒中だけでなく、ヘキサン等の非極性溶媒中においても、リチオ体を安定に保つことができることがわかる。実施例15 窒素雰囲気下、スターラーチップ、温度計を備えたガラス製の100mL丸底フラスコ(反応器A)に3,4−ジフロロ−ベンゾトリフルオリド(DFBT)(6.06g,33.3mmol)、ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテル(5.87g,36.6mmol)、を30mLのテトラヒドロフランに溶解させた。10℃に冷却し、n−ブチルリチウム(1.6mol/Lヘキサン溶液)(21.9mL,14.5g,35.0mmol)を8〜10℃に保って34分かけて滴下し、60分間撹拌した。 一方、反応器Bには、ヨウ素(16.8g,66.2mmol)およびo−キシレン(内部標準,6.01g)をテトラヒドロフラン(60mL,53.2g)に溶解させ且つ温度を−15℃に調整されたものが仕込まれている。そして、前述の10℃の2,3−ジフロロ−6−トリフルオロメチル−フェニルリチウム(LDFBT)を含む液全量を反応器Aから取り出し後すぐに、該反応器Bに内温を−13〜−17℃を保って50分かけて滴下した。さらに10分間同温度範囲で撹拌した。この反応液をHPLCにより定量分析したところ目的の2−ヨード−3,4−ジフルオロ−ベンゾトリフルオリド(IDFBT)の収率は74%であった。1H−NMR(CDCl3)7.27ppm(q,J=8.3Hz,1H),7.48(ddd,J=8.9,4.8,1.7Hz,1H).沸点49−55℃/7mmHg比較例16 ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテルを加えない以外は、実施例15と同様に反応を行った。反応後、HPLCにより定量分析したところ目的の2−ヨード−3,4−ジフルオロ−ベンゾトリフルオリド(IDFBT)の収率は1.4%であった。実施例161−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]−N,N,2−トリメチルプロパン−2−アミンの製造 トルエン(100mL)に水酸化ナトリウム(16.7g,418mmol)および2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール(23.4g,200mmol)を添加し、2時間加熱還流した。70℃まで冷却後、β−ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩(28.8g,200mmol)を添加した。その後、5.5時間加熱還流した。室温まで冷却後、不溶物をろ別し、有機相を減圧濃縮した。残渣を減圧蒸留し、目的化合物を無色液体として10.3g(収率27%)得た。1H−NMR(CDCl3)1.03ppm(s,6H),2.27(s,12H),2.53(t,J=6.0Hz,2H),3.29(s,2H),3.54(t,J=6.0Hz,2H).沸点75−77℃/6mmHg実施例171,1’−オキシビス(N,N,2−トリメチルプロパン−2−アミン)の製造 テトラヒドロフラン(100mL)に、油性水素化ナトリウム(純度60wt%,6.6g,99mmol)を添加した後、0℃にて2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール(11.7g,99.8mmol)を滴下した。還流まで昇温後、3時間撹拌した。還流温度で、p−トルエンスルホンニルクロリド(9.53g,50mmol)のテトラヒドロフラン(25mL)溶液を滴下した。その後、ヨウ化カリウム(3.75g,22.6mmol)とトルエン(100mL)を添加し、一終夜還流した。室温まで放冷後、水を添加し、酢酸エチルで抽出した。有機相を水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウム粉末で乾燥し、減圧濃縮した。残渣を減圧蒸留して目的化合物を無色液体として4.69g(43%)得た。1H−NMR(CDCl3)1.06ppm(s,12H),2.29(s,12H),3.27(s,4H).沸点 85−88℃/7mmHg実施例182−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)−N,N−ジメチルシクロヘキサンアミンの製造 テトラヒドロフラン(100mL)に油性水素化ナトリウム(純度60wt%,18g,450mmol)を添加し、0℃にて、2−(ジメチルアミノ)エタノール(16.1g,180mmol)を滴下した後、3時間還流させた。この懸濁液にトルエン(80mL)とテトラヒドロフラン(25mL)を加えた。0〜5℃にて、p−トルエンスルホンニルクロリド(37.2g,195mmol)のトルエン(200mL)/テトラヒドロフラン(25mL)混合溶液を滴下した後、同温度で1時間撹拌した。加熱還流下、さらに1時間撹拌した後、室温まで放冷した。室温にて、2−(ジメチルアミノ)シクロヘキサノール(21.5g,150mmol)を滴下した後、ヨウ化カリウム(29.9g,180mmol)を添加した。その後、加熱還流下、9時間撹拌した後、室温まで放冷した。水を添加し、酢酸エチルで抽出した後、有機相を水および飽和食塩水で洗浄した。この有機相を無水硫酸マグネシウム粉末で乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣を減圧蒸留し、目的化合物を黄色液体として2.3g(収率7%)で得た。1H−NMR(CDCl3)1.11−1.26ppm(m,4H),1.67−1.78(m,3H),2.09−2.12(m,1H),2.26(s,6H),2.36(s,6H),2.39−2.42(m,1H),2.51(td,J=6.4,1.3Hz,2H),3.25(td,J=9.4,4.1Hz,1H),3.53(dt,J=9.5,6.4Hz,1H),3.68(dt,J=9.5,6.4Hz,1H).沸点91−93℃/5mmHg本発明の有機リチウム化合物の製造方法によれば、リチウムによるメタル化によって生成する有機リチウム化合物の安定性を大幅に向上させることができる。この方法は、比較的温和な条件において、有機リチウム化合物を高収率で操作上、安全対策上の負担を大幅に減じて製造できる。また、本発明の置換芳香族化合物の製造方法によれば、比較的温和な条件下で、置換芳香族化合物を操作上、安全対策上の負担を大幅に減じて高収率で得ることができる。すなわち、マイクロリアクターなどの管型流通式反応器やカスケード方式で、比較的温和な条件での連続反応において、管・反応器・バッチ間の移送配管の閉塞などの不具合を生じがたい。またバッチ式の反応の場合は反応器のスケーリング発生を防ぐことができ、反応を容易に制御することができる。有機リチウム化合物の安定化効果が非常に大きい場合には連続化自体を回避することができる。さらに、本発明の製造方法によれば、冷却等のために特殊な設備を要しないので製造コストを大幅に抑えることができる。管型流通式反応器においては、管の径を大きくすることができるので製造コストを大幅に抑えることができる。 式(3)で示されることを特徴とする配位子。 式(3)中、 L2bは、−O−または−N(−CH2−R21)−を表し、 R21は水素原子またはC1−6アルキル基を表し、 L1bは、−OR22または−N(R23)R24を表し、 L3bは、−OR221または−N(R231)R241を表し、 R22、R221はそれぞれ独立にC1−6アルキル基を表し、 R23、R231はそれぞれ独立にメチル基、エチル基またはn−プロピル基を表し、 R24、R241はそれぞれ独立にC1−6アルキル基を表し(但し、L2bが−O−であり、L1bが−OR22であるとき、L3bは、−N(R231)R241である。また、L2bが−O−であり、L3bが−OR221であるとき、L1bは、−N(R23)R24である)、 n1bおよびn2bはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、 R1bおよびR2bはC1〜6アルキル基を表し、 R3b〜R8bは、それぞれ独立に、水素原子またはC1〜6アルキル基を表し(但し、L2bが−N−CH3であり、L1bおよびL3bが−N(CH3)CH3であり、n1bおよびn2bが1であるとき、R1b〜R8bが同時にメチル基であることはない)、 (R1bもしくはR2b)と(R3bもしくはR4b)との間で環を形成していても良く、(R5bもしくはR6b)と(R7bもしくはR8b)との間で環を形成していても良い。


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