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タイトル:特許公報(B2)_KL−6測定用免疫測定試薬
出願番号:2010540965
年次:2011
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/543,G01N 33/531


特許情報キャッシュ

近藤 純一 山本 光章 金子 智恵 JP 4663822 特許公報(B2) 20110114 2010540965 20100630 KL−6測定用免疫測定試薬 積水メディカル株式会社 390037327 三光純薬株式会社 000175892 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 近藤 純一 山本 光章 金子 智恵 JP 2009155075 20090630 20110406 G01N 33/53 20060101AFI20110317BHJP G01N 33/543 20060101ALI20110317BHJP G01N 33/531 20060101ALI20110317BHJP JPG01N33/53 VG01N33/543 501BG01N33/543 581BG01N33/531 B G01N 33/48-98 特開2005−121441(JP,A) 特公平7−31207(JP,B2) Biochemical and Biophysical Research Communications,2005年,Vol.338,p.1845-1852 5 JP2010061109 20100630 WO2011001999 20110106 15 20101008 山村 祥子 本発明の技術分野は、試料中KL-6の測定試薬及び測定方法に関する。また、本発明の技術分野は、免疫凝集試験の手法に関し、この手法における非特異反応を抑制するための試薬及び方法に関する。 KL-6はシアル化糖鎖抗原であり、肺の線維化に関与している (非特許文献1、特許文献1参照) 。KL-6は間質性肺炎で高値になり、病態を反映して変動することから、間質性肺炎の診断及び治療指針の決定等のために測定されている (特許文献1) 。また、血清中MUC-1/KL-6値を測定することによりインターフェロン投与による間質性肺炎の発症を予測する方法 (特許文献2参照) 、KL-6を測定することにより肺癌患者の予後を検査する方法 (特許文献3参照) 、膵液中のKL-6を測定することにより膵管内乳頭粘液性腺癌又は膵臓癌を検出する方法 (特許文献4参照) なども開示されている。近年、薬剤性間質性肺炎及び膠原病由来の間質性肺炎などの間質性肺炎の診断及び治療指針の決定、肺癌や膵癌などの癌患者の診断方法、並びに、抗体医薬を投与された関節リウマチ、クローン病、全身型若年性特発性関節炎、キャッスルマン病などの患者の間質性肺炎の診断及び治療指針の決定等のためにKL-6測定の必要性が高まっている。 特許文献1から4では、KL-6の測定に酵素免疫測定法 (以下、ELISA法という) が使用されている。ELISA法は信頼のおける方法であるものの、多数の試料を迅速、簡便、かつ、安価に試験するためには、ラテックス免疫凝集法が優れ、微量成分を測定する臨床検査薬として広く普及している。 しかし、ELISA法やラテックス免疫凝集法等の免疫学的測定方法においては、リウマチ因子を含む試料を試験する場合、試料によってはリウマチ因子の干渉による非特異反応の発生が問題となることが知られている (非特許文献2参照) 。また、リウマチ因子同様、ヘテロ親和性抗体 (抗マウスイムノグロブリン抗体:HAMA、抗ヤギイムノグロブリン抗体:HAGA等) の干渉による非特異反応の発生も問題となることが知られている。 ラテックス免疫凝集法において、リウマチ因子の干渉を抑制するために、ラテックスに結合させる抗体のFc部位を除く方法、リウマチ因子に結合する抗体を用いる方法 (特許文献5) などが知られている。 しかし、本発明者らは、上記の既知の方法を用いても依然として非特異反応の発生を十分に抑えることの出来ない試料が存在することを見出した。特公平7-31207号公報特開2005-121441号公報特許第4083855号公報特開2006-308576号公報特開平7-12818号公報New serum indicator of interstitial pneumonitis activity. Sialylated carbohydrate antigen KL-6. Kohno N, Kyoizumi S, Awaya Y, Fukuhara H, Yamakido M, Akiyama M. Chest. 1989 Jul;96 (1) :68-73.Interference by rheumatoid factor with the detection of C-reactive protein by the latex agglutination method. Deyo RA, Pope RM, Persellin RH. J Rheumatol. 1980 May-Jun;7 (3) :279-87. 本発明は、KL-6を正確に測定する測定試薬及び測定方法、特に、リウマチ因子及び/又はリウマチ因子以外の非特異物質を含む試料中におけるKL-6を正確に測定する測定試薬及び測定方法の提供を課題とする。 本発明者が鋭意検討したところ、驚くべきことに、リウマチ因子干渉抑制剤を含有するpHが4.0〜5.5の溶液と抗KL-6抗体が担持された不溶性担体の溶液を含む免疫測定試薬を用いることでリウマチ因子及び/又はリウマチ因子以外の非特異物質を含む試料中のKL-6を正確に測定することができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下の構成を有する。 (1) リウマチ因子干渉抑制剤を含有するpHが4.0〜5.5の溶液及び抗KL-6抗体が担持された不溶性担体を含有する溶液を含むKL-6の免疫測定試薬。 (2) 不溶性担体がラテックス粒子である、上記 (1) の免疫測定試薬。 (3) 試料、リウマチ因子干渉抑制剤及び抗KL-6抗体が担持された不溶性担体を用いて、pHが4.0〜5.5の溶液中で、試料中のKL-6と不溶性担体に担持された抗KL-6抗体との免疫反応により生じる不溶性担体の凝集に伴う吸光度変化を測定する、KL-6の免疫測定方法。 (4) 試料に、リウマチ因子干渉抑制剤が含有されたpHが4.0〜5.5の溶液及び抗KL-6抗体が担持された不溶性担体を含有する溶液を添加し、試料中のKL-6と不溶性担体に担持された抗KL-6抗体との免疫反応により生じる不溶性担体の凝集に伴う吸光度変化を測定する、KL-6の免疫測定方法。 (5) 不溶性担体がラテックス粒子である、上記 (3) 又は (4) の免疫測定方法。 本発明で使用されるリウマチ因子干渉抑制剤としては、免疫測定の際にリウマチ因子の干渉を抑制するものであれば特に限定されず、例えば、HBR (Scantibodies Lab社製) 、リウマチ因子と反応する動物由来のIgM、IgG、IgAなどの免疫グロブリンが挙げられる。 上記、動物由来の免疫グロブリンはモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。 上記リウマチ因子干渉抑制剤の使用量は、好ましくは、10μg/mL〜200μg/mLである。 本発明で使用されるリウマチ因子干渉抑制剤が含有されたpHが4.0〜5.5の溶液としては、クエン酸、酢酸、グリシン、グッド等の緩衝液にリウマチ因子干渉抑制剤を添加したものが挙げられ、該緩衝液の濃度は、好ましくは5〜200mMである。 本発明で使用される抗KL-6抗体は、特許文献1に記載されているごとく、肺腺癌由来の細胞株VMRC-LCRを抗原としてマウスに免疫し、常法のモノクロナール抗体の作製法に準じて作製することができる (Derivation of specific antibody-producing tissue culture and tumor lines by cell fusion. Kohler G, Milstein C. Eur J Immunol. 1976 Jul;6 (7) :511-9.) 本発明で使用される不溶性担体としては、例えば、有機高分子粉末、無機物質粉末、微生物、血球及び細胞片等が挙げられる。 上記有機高分子粉末としては、例えば、不溶性アガロース、セルロース、不溶性デキストラン等の天然高分子粉末、ポリスチレン、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体等の合成高分子粉末などが挙げられ、特に合成高分子粉末を均一に懸濁させたラテックスが好ましい。 上記無機物質粉末としては、例えば、金、チタン、鉄、ニッケル等の金属片、シリカ、アルミナ、炭素粉末などが挙げられる。 上記不溶性担体の平均粒子径は、測定方法、測定機器によって異なるが、0.05〜1.0μmのものが通常用いられる。 上記不溶性担体に抗KL-6抗体を担持させる方法としては、例えば、化学的又は物理的に結合させる方法が挙げられる。 上記抗KL-6抗体が担持された不溶性担体は、通常は溶液に含有され、用いられる溶液としては、トリス、グリシン、グッド等の緩衝液が挙げられる。 本発明の測定方法における測定対象の「試料」としては、主に生体 (生物) 由来の体液を挙げることができ、具体的には血液、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、涙液、耳漏又は前立腺液を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。 上記試薬を用いて抗原抗体反応を測定する際の測定系としては、例えば、ラテックス凝集反応、血球凝集反応等が利用される。上記反応により生じた凝集を測定する方法としては、凝集の程度を光学的に観察する方法が採用できる。 具体的には、光学的に観察する方法においては、測定は試料、上記リウマチ因子干渉抑制剤を含有するpHが4.0〜5.5の溶液及び上記抗KL-6抗体を担持する不溶性担体の溶液を混合した後、試料中のKL-6と不溶性担体に担持された抗KL-6抗体の免疫反応により生じる不溶性担体の凝集に伴う散乱光強度、吸光度、又は透過光強度を測定する。ここで、該混合液のpHは、好ましくは4.0〜5.5の範囲である。測定の波長は300nm〜1000nmが使用でき、測定方法は公知の方法に従い、用いる不溶性担体の粒径、濃度、反応時間によって散乱光強度、吸光度又は透過光強度の増加もしくは減少を測定する。 また、本発明の免疫測定方法を実施するためには、試料、リウマチ因子干渉抑制剤、及び、抗KL-6抗体を担持する不溶性担体がpH4.0〜5.5の溶液中に存在した状態で、試料中のKL-6と不溶性担体に担持された抗KL-6抗体との免疫反応が行われればよい。 上記pH4.0〜5.5の溶液としては、好ましくは5〜200mMのクエン酸、酢酸、グリシン、グッド等の緩衝液が挙げられる。 本発明によれば、ラテックス免疫凝集法などの不溶性担体の凝集反応を利用した免疫測定方法において、リウマチ因子やヘテロ親和性抗体に起因する非特異反応、リウマチ因子に結合する抗体や各種動物由来の抗体で干渉が抑制されない非特異反応、リウマチ因子やヘテロ親和性抗体以外に起因する非特異反応及び抗体医薬の使用による非特異反応等の発生又は増強が懸念される場合でも、多数の試料を迅速、簡便、安価、かつ正確に試験することが可能となった。 [実験材料及び方法] <抗KL-6抗体> 抗KL-6抗体は、特許文献1に記載の方法(特に、実施例1) で得られた抗体を使用した。特許文献1に記載されている抗体の作製方法は以下の通りである。 --------- 1) 免 疫8週齢の雌BALB/cマウスを5×106個の肺腺癌由来の細胞株 (以下VMRC−LCRという) で皮下に免疫し、その後2週間の間隔で2回腹腔内に8×106個の細胞を注入した。 2) 細胞融合最終免疫より3日後に脾臓を取り出し、ステンレスメッシュを通すことにより細胞懸濁液を作製した。この8.4×107個の脾細胞と4.2×107個の8アザグアニン耐性骨髄腫細胞P3−NSI−Ag4/1 (NSI) を混合し、遠沈後沈渣に1mLの45%ポリエチレングリコール (平均分子量6000) を加え、2分間ゆるやかに攪拌した。洗浄後、細胞混合液を10%牛胎児血清を含むRPMI培地 (完全RPMI培地) に懸濁し、96穴マイクロ培養プレートに1穴当り106個の割合で0.1mLずつまいた。24時間後、ヒポキサンチン100μM,アミノプテリン0.4μM,チミジン16μMを含む完全RPMI培地 (HAT培地) を0.1mLを加えた。培養開始後2日目,3日目,5日目,7日目,10日目に培養上清0.1mLを捨て、HAT培地0.1mLを加えた。12日後に全ての穴にハイブリドーマが増殖するのが観察された。 3) ハイブリドーマの選択VMRC−LCR細胞に対して抗体を産生しているハイブリドーマを酵素抗体法により選択した。酵素抗体法は以下の如く行なった。 VMRC−LCR細胞を96穴マイクロ培養プレートで増殖限界に達するまで培養し、0.25%グルタルアルデヒドで5〜7分間固定し、5回洗浄した。ハイブリドーマの培養上清0.1mLを加え、室温で1時間反応させた。5回洗浄した後、第2抗体として50μLの西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウス免疫グロブリンを加え、1時間反応させた。6〜7回洗った後、1.1%過酸化水素水と150μg/mLの2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルフォン酸) (ABTS) を含む50mMクエン酸緩衝液を100μL加え、10分間室温で発色させた。停止液として10%シュウ酸を50μL加え、405nmの吸光度をマイクロプレート用の分光光度計により測定し、0.02以上吸光度のあるハイブリドーマを選択した。 選択されたハイブリドーマはあらかじめBALB/cマウスの胸腺細胞 (フィーダー細胞) をまかれた24穴培養プレートに移され、100μMヒポキサンチンと16μMチミジンを含む完全RPMI培地 (HT培地) で培養した。増殖限界に達した後、再び酵素抗体法によりVMRC−LCR細胞に対して抗体産生を行なっているハイブリドーマを選んだ。 次に、選択されたハイブリドーマを限界希釈法によりクローニングした。即ち、細胞を50個/mLあるいは10個/mLに希釈し、あらかじめフィーダー細胞をまかれた96穴マイクロ培養プレートに0.1mLずつ分注し、HT培地により2週間培養した。1穴に1個のハイブリドーマコロニーが形成された場合をクローンとして取り出した。酵素抗体法によりVMRC−LCR細胞に対して反応し、正常ヒト肺腺維芽細胞に対して反応しない抗体を分泌しているハイブリドーマクローンを選択した。 更に、これらのクローンのうち、ヒト肺腺癌組織に反応するクローンを凍結切片の免疫パーオキシダーゼ染色により選択した。つまり、ヒトの肺癌、その他の臓器癌及び正常組織を手術材料により得、その4μm凍結切片を作製した。アセトン固定後、ハイブリドーマクローンの培養上清を加え、室温で30分反応させた。よく洗った後、ビオチン標識抗マウスIgG抗体 (γ鎖,λ鎖,κ鎖と反応する) と室温で30分反応させた。更に洗浄後、アビジンとビオチン標識西洋ワサビパーオキシダーゼを加え室温で1時間反応させ、よく洗った後基質として0.5mg/mLのジアミノベンチジンと0.01%H2O2を含む50mMトリス−塩酸緩衝液 (pH7.0) を加え発色させた。 このようにして、肺胞上皮,細気管支上皮,気管支腺漿液細胞,甲状腺濾胞細胞,食道上皮,噴門腺細胞,膵管上皮,尿細管上皮,膀胱移行上皮,子宮内膜,肺腺癌,肺扁平上皮癌,肺小細胞癌,胃・十二指腸乳頭部・胆管・膵・結腸・直腸・甲状腺・乳腺の腺癌,食道扁平上皮癌には反応するが、気管支上皮,胃表層粘膜細胞,幽門腺,十二指腸上皮,結腸上皮,直腸上皮,肝細胞,膵外分泌細胞,膵内分泌細胞,腎糸球体細胞,子宮頸部扁平上皮細胞,皮膚上皮,子宮扁平上皮癌,肝細胞癌には反応しないモノクローナル抗体を産生するバイブリドーマが得られ、これをKL-6細胞と名付け、その産生するモノクローナル抗体をKL-6抗体と命名した。 4) モノクローナル抗体の作製 in vivo移植法 ハイブリドーマを移植するBALB/cマウスにあらかじめ (5〜10日前) 2,6,10,14−テトラメチルペンタデカンを腹腔中に0.5mL注射しておく。次にハイブリドーマ5×106個を腹腔内に移植する。移植されたマウスを3週間飼育すると、腹腔内にハイブリドーマの腫瘍が形成され、腹部が肥大してくる。 この結果、腹水及び血清中に高濃度のモノクローナル抗体が生成され、それらを採取した。 --------- <ラテックス粒子の作製> 攪拌機、還流用冷却器、温度検出器、窒素導入管及びジャケットを備えたガラス製反応容器 (容量2L) に、蒸留水1100g、スチレン200g、スチレンスルホン酸ナトリウム0.2g、及び、蒸留水50gに過硫酸カリウム1.5gを溶解した水溶液を仕込み、容器内を窒素ガスで置換した後、70℃で攪拌しながら48時間重合した。 重合終了後、上記溶液をろ紙にてろ過処理し、ラテックス粒子を取り出した。得られたラテックス粒子の粒子径を透過型電子顕微鏡装置 (日本電子社製、「JEM-1010型」) を用いて10000倍の倍率でラテックス粒子を撮影し、最低100個以上の粒子について画像解析することにより粒子径を測定した。得られた平均粒子径は0.2μmであった。 [実施例1] (抗KL-6抗体感作ラテックス粒子含有溶液 (抗KL-6抗体を感作させたラテックス粒子を含有する溶液;以下、第2試薬という) の調製) 平均粒子径0.2μmの1.0%ラテックス粒子含有溶液 (5mM Tris-HCl pH8.0) に、0.7mg/mLに調整した抗KL-6抗体溶液 (5mM Tris-HCl pH8.0) を等量添加して4℃で2時間攪拌後、2.0% BSA溶液 (5mM Tris-HCl pH8.0) を等量添加して4℃で1時間攪拌した。これを遠心して上清を除去した後、沈殿を5mM Tris-HCl pH8.0で再懸濁し、波長600nmでの吸光度が4.5Absとなるように5mM Tris-HCl pH8.0で希釈して第2試薬とした。 (リウマチ因子干渉抑制剤含有溶液 (以下、第1試薬という) の調製) 1000mMの塩化ナトリウム、1.0% BSA、50μg/mLのHBR (Scantibodies Lab、3KC533) を含む30mM クエン酸緩衝液 (pH4.0) を調製して第1試薬とした。 (試料) リウマチ患者試料のリウマチ因子濃度をN-アッセイ TIA RF ニットーボー(ニットーボーメディカル社製) を用いて、また、KL-6濃度を ピコルミ (登録商標) KL-6 (三光純薬社製) を用いて、それぞれ添付文書及びメーカー推奨の方法に従って測定した。このKL-6の測定値を100%として表し、本発明の免疫測定方法による測定値と比較した。 (KL-6濃度の測定方法) 第1試薬と第2試薬を組合せ、日立7170形自動分析装置を用いて、リウマチ因子を含む試料中のKL-6濃度を測定した。具体的には、試料2.5μLに第1試薬150μLを加えて37℃で5分間保温した後、第2試薬50μLを加えて攪拌した。凝集形成に伴う吸光度変化を、その後5分間にわたり、主波長570nm、副波長800nmで測定し、その吸光度変化量を濃度既知の標準物質を測定して得られる検量線にあてはめ、KL-6濃度を算出した。 (混合液のpH測定方法) 上記KL-6濃度測定方法と同じ比率で試料、第1試薬及び第2試薬を混合した後、カスタニーLAB pHメーター F-21 (堀場製作所) を用いてpHを測定した。 [実施例2〜4] 実施例1の第1試薬の30mM クエン酸緩衝液 (pH4.0) に代えて、pH4.5 (実施例2) 、pH5.0 (実施例3) 及びpH5.5 (実施例4) の30mM クエン酸緩衝液を用いたこと以外は、実施例1と同様の試薬を用いて、実施例1と同様の測定方法で測定を行った。 (比較例1〜6) 実施例1の第1試薬の30mM クエン酸緩衝液 (pH4.0) に代えて、pH3.5の30mM グリシン緩衝液 (比較例1) 、並びにpH6.0 (比較例2) 、pH6.5 (比較例3) 、pH7.0 (比較例4) 、pH7.5 (比較例5) 及びpH8.0 (比較例6) の30mM リン酸緩衝液を用いたこと以外は、実施例1と同様の試薬を用いて、実施例1と同様の測定方法で測定を行った。 [結果及び考察] リウマチ因子を高濃度で含む試料 (リウマチ因子高値試料) について、第1試薬のpHを変動させた場合の非特異反応抑制効果の検討を行った。リウマチ因子高値試料A及びB、並びに通常試料Cについて、第1試薬のpHをpH3.5〜8.0にして測定した結果 (実施例1〜4、比較例1〜6) を表1に示す。 ピコルミ (登録商標) KL-6のKL-6濃度を100%として表した場合に、本発明の測定方法によるKL-6測定値が85%未満または115%を超える場合は非特異反応が起きていると判断し、一方、85−115%の範囲内であれば、当該方法においても十分な正確性を有すると判断して、非特異反応の抑制効果を確認した。 リウマチ因子高値試料Bでは、従来技術のpH範囲 (pH6.0〜8.0) において、リウマチ因子干渉抑制剤を用いることで、測定値はピコルミ (登録商標) KL-6の測定値に対し85-115%の範囲内であった。一方、リウマチ因子高値試料Aでは、従来技術のpH範囲において (比較例2〜6) 、測定値はピコルミ (登録商標) KL-6の測定値に対し115%を上回り、リウマチ因子干渉抑制剤を用いても十分に抑制することができない非特異反応が認められた。 驚いたことに、第1試薬のpHを4.0〜5.5にすることで、リウマチ因子高値試料A及びBいずれも測定値がピコルミ (登録商標) KL-6測定値の85−115%の範囲内になり、非特異反応が抑制された (実施例1〜4) 。この結果は、本発明によれば、リウマチ因子及びリウマチ因子以外の非特異反応を抑制し、正確に測定値が得られることを示している。なお、試料Cにおいて、pH又は緩衝剤依存的な測定値の変動が認められなかったことから、pH変動又は緩衝剤の違いによるKL-6測定値に対する影響はないことが確認された。 また、試料、第1試薬及び第2試薬を上記KL-6濃度の測定方法と同じ比率で混合したときのpHの測定結果を表2に示す。 上記のごとく、非特異反応の抑制が認められた第1試薬pH4.0〜5.5において、混合後のpHも4.0〜5.5であった (実施例1〜4) 。このことから、非特異反応の抑制効果は、KL-6濃度測定時のpHを4.0〜5.5にすることによっても同様の効果が得られることが示唆された。 [実施例5〜6及び比較例7〜10] (第1試薬の調製) <実施例5〜6> リウマチ因子干渉抑制剤含有溶液として1000mMの塩化ナトリウム、1.0%BSA、50μg/mLのHBR (Scantibodies Lab、3KC533) を含む、30mMクエン酸緩衝液 (実施例5:pH4.0、4.5、5.0、5.5) 及び30mM酢酸緩衝液 (実施例6:pH4.0、4.5、5.0、5.5) を調製した。 <比較例7> リウマチ因子干渉抑制剤非含有 (HBRを含まない) 溶液として1000mMの塩化ナトリウム、1.0%BSAを含む、30mMリン酸緩衝液 (pH6.0、6.5、7.0、7.5、8.0) 、30mMグリシン緩衝液 (pH3.5) 及び30mMクエン酸緩衝液 (pH4.0、4.5、5.0、5.5、6.0) を調製した。 <比較例8> リウマチ因子干渉抑制剤含有溶液として1000mMの塩化ナトリウム、1.0%BSA、50μg/mLのHBR (Scantibodies Lab、3KC533) を含む、30mMリン酸緩衝液 (pH6.0、6.5、7.0、7.5、8.0) 、30mMグリシン緩衝液 (pH3.5) 及び30mMクエン酸緩衝液 (pH6.0) を調製した。 <比較例9> リウマチ因子干渉抑制剤非含有溶液として1000mMの塩化ナトリウム、1.0%BSAを含む、30mMリン酸緩衝液 (pH6.0、6.5、7.0、7.5、8.0) 、30mMグリシン緩衝液 (pH3.5) 及び30mM酢酸緩衝液 (pH4.0、4.5、5.0、5.5、6.0) を調製した。 <比較例10> リウマチ因子干渉抑制剤含有溶液として1000mMの塩化ナトリウム、1.0%BSA、50μg/mLのHBR (Scantibodies Lab、3KC533) を含む、30mMリン酸緩衝液 (pH6.0、6.5、7.0、7.5、8.0) 、30mMグリシン緩衝液 (pH3.5) 及び30mM酢酸緩衝液(pH6.0) を調製した。 (試料の測定) 前記の実施例5〜6及び比較例7〜10の欄に記載の各緩衝液をそれぞれ第1試薬とし、かつ、実施例1記載の第2試薬を第2試薬として、実施例1と同様の測定方法でKL-6濃度測定を実施した。 [結果及び考察] リウマチ因子干渉抑制剤を含有しない又は含有する溶液のpHを変動させた場合の、非特異反応抑制効果の検討を行った。結果を表3、4及び5に示す。また、各条件下での検体ごとの挙動から表のように試料をa、b、cの3群に分類した。 表3、4のc群において、いずれのpHでもリウマチ因子干渉抑制剤の有無にかかわらずピコルミ (登録商標) KL-6に対し±15%内と良好な測定値が得られたことから、リウマチ因子干渉抑制剤それ自体は測定値に悪影響を与えないことが示唆された。 一方、表3のa及びb群に含まれる検体のように、リウマチ因子干渉抑制剤を含まない溶液を用いて測定すると、測定値がピコルミ (登録商標) KL-6に対し115%を上回る、非特異反応が起きる検体が存在することを確認した。 リウマチ因子干渉抑制剤を添加した場合には、表4のb群の検体ではpHによらず良好な測定値が得られ、リウマチ因子干渉抑制剤によって非特異反応が抑制されることが確認された。一方、表4のa群の検体ではリウマチ因子干渉抑制剤を添加してもpH3.5及びpH6.0から8.0の間では非特異反応の抑制効果が認められず、pH4.0から5.5の間でのみ強い非特異反応の抑制効果が認められた。 更に、pH4.0〜6.0の緩衝液をクエン酸 (トリカルボン酸) から酢酸 (モノカルボン酸) に変更した場合であっても、リウマチ因子干渉抑制剤を含まない溶液では、測定値がピコルミ (登録商標) KL-6に対し115%を上回る、非特異反応が起きる検体が存在したのに対し (表5 (1)) 、リウマチ因子干渉抑制剤を含む溶液では、pH4.0から5.5の間で、クエン酸緩衝液の場合と同様の非特異反応の抑制効果が認められた (表5 (2)) 。一方、表3〜5のa群においては、緩衝液の種類としてクエン酸緩衝液又は酢酸緩衝液のいずれを用いても、pH6.0では非特異反応の抑制効果が認められなかったことから、KL-6を測定する際には緩衝液の種類によらず、リウマチ因子干渉抑制剤を使用し、かつ、試料希釈液のpHをpH4.0から5.5の間に調整することが、非特異反応を最も効果的に抑制することが示唆された。 本発明は、間質性肺炎の診断及び治療指針の決定等に役立てるためにKL-6を測定する方法、当該方法を実施するための測定試薬又は試薬のキットを提供する。本発明は、特に、薬剤性間質性肺炎及び膠原病由来の間質性肺炎などの間質性肺炎の診断及び治療指針の決定、肺癌や膵癌などの癌患者の診断方法、並びに抗体医薬を投与された関節リウマチ、クローン病、全身型若年性特発性関節炎、キャッスルマン病などの患者の間質性肺炎の診断及び治療指針の決定等のために有用である。なお、本発明は必要に応じて試薬、試薬のキット又はこれらの製造における使用として保護されるので、産業上の利用可能性を有し、かつ、不特許事由には該当しない。 リウマチ因子干渉抑制剤を含有するpHが4.0〜5.5の溶液及び抗KL-6抗体が担持された不溶性担体を含有する溶液を含むことを特徴とするKL-6の免疫測定試薬。 不溶性担体がラテックス粒子である、請求項1に記載の免疫測定試薬。 試料、リウマチ因子干渉抑制剤及び抗KL-6抗体が担持された不溶性担体を用いて、pHが4.0〜5.5の溶液中で、試料中のKL-6と不溶性担体に担持された抗KL-6抗体との免疫反応により生じる不溶性担体の凝集に伴う吸光度変化を測定することを特徴とする、KL-6の免疫測定方法。 試料に、リウマチ因子干渉抑制剤が含有されたpHが4.0〜5.5の溶液及び抗KL-6抗体が担持された不溶性担体を含有する溶液を添加し、試料中のKL-6と不溶性担体に担持された抗KL-6抗体との免疫反応により生じる不溶性担体の凝集に伴う吸光度変化を測定することを特徴とする、KL-6の免疫測定方法。 不溶性担体がラテックス粒子である、請求項3又は4に記載の免疫測定方法。


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