生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_睡眠改善剤および鎮静剤ならびにそれらの使用
出願番号:2010540359
年次:2014
IPC分類:A61K 31/7024,A61P 25/20,A61K 36/18


特許情報キャッシュ

裏出 良博 黄 志力 有竹 浩介 東 朋子 松本 直実 正木 美佳 正山 征洋 田中 宏幸 杜 暁鳴 JP 5610577 特許公報(B2) 20140912 2010540359 20091124 睡眠改善剤および鎮静剤ならびにそれらの使用 国立大学法人 筑波大学 504171134 長谷川 洋 100110973 中谷 智子 100120293 裏出 良博 黄 志力 有竹 浩介 東 朋子 松本 直実 正木 美佳 正山 征洋 田中 宏幸 杜 暁鳴 JP 2008299598 20081125 20141022 A61K 31/7024 20060101AFI20141002BHJP A61P 25/20 20060101ALI20141002BHJP A61K 36/18 20060101ALN20141002BHJP JPA61K31/7024A61P25/20A61K35/78 C A61K 31/00〜31/80 A61K 36/00〜36/9068 PubMed 特開2008−273939(JP,A) Zhongguo Yaoke Daxue Xuebao,2000年,Vol. 31, No. 6,pp. 455-457 Journal of Agricultural and Food Chemistry,2005年 9月 7日,Vol. 53, No. 18,pp. 7302-7306 Biological & Pharmaceutical Bulletin,2005年,Vol. 28, No. 11,pp. 2106-2110 Mol Nutr Food Res, vol.56, p.304-308 (2012) 2 JP2009006316 20091124 WO2010061574 20100603 11 20120530 光本 美奈子 本発明は、新規の睡眠改善剤および鎮静剤ならびにそれらの使用に関し、詳しくは睡眠を改善する睡眠改善剤および鎮静剤に関する。 現代社会ではストレスや24時間型の生活習慣から不眠に悩む人が増加する傾向にある。厚生労働省で2003年から始まった「健康づくりのための睡眠指針検討会」の報告では、「不眠で困っている人」の割合は21.4%にのぼり、深刻な問題となっている。従って快適な睡眠を望む人はこれまで以上に増加し、それと平行して不眠を改善する薬の需要は今後益々高まると考えられる。現在使用されている睡眠薬には、主として、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、抗ヒスタミン系、バルビツール酸塩系等のものが知られている(特許文献1を参照)。特表2007−510733(段落0007) しかし、上記の睡眠薬の多くは覚醒後の頭痛、不快感、身体依存などの副作用を伴うため、必ずしも自然な睡眠を得られるとはいえない。従って、より快適な睡眠を得られる治療薬の開発は重要な事項である。 本発明は、上記課題を解決するために、新規の睡眠改善剤および鎮静剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記目的を達成するために有効成分を検討したところ、カロテノイド色素、詳しくはサフランあるいはクチナシ(山梔子)の成分であるクロシン、およびベニノキ科ベニノキの成分であるノルビキシンに鎮静および睡眠効率の改善に効果があることを見出し、かかる知見に基づいて、本発明を完成させたものである。即ち、本発明は、以下の睡眠改善剤および鎮静剤に関する。項1.以下の化学式I:(I)で表されるクロシンまたはその誘導体を有効成分として含む睡眠改善剤。項2.以下の化学式I:(I)で表されるクロシンの睡眠効率を改善するための使用。項3.以下の化学式I:(I)で表されるクロシンを有効成分として含む鎮静剤。項4.以下の化学式I:(I)で表されるクロシンの鎮静するための使用。項5.以下の化学式II:(II)で表されるノルビキシンまたはその誘導体を有効成分として含む睡眠改善剤。項6.以下の化学式II:(II)で表されるノルビキシンの睡眠効率を改善するための使用。項7.以下の化学式II:(II)で表されるノルビキシンを有効成分として含む鎮静剤。項8.以下の化学式II:(II)で表されるノルビキシンの鎮静するための使用。 本発明によれば、カロテノイド色素、詳しくはサフランあるいはクチナシ(山梔子)の成分であるクロシン、あるいはベニノキ科ベニノキの成分であるノルビキシンを摂取することで、睡眠を促進し、自然で快適な睡眠を得ることが出来る。特に本発明の睡眠改善剤は、ノンレム睡眠を有意に延長することができる。また、本発明の睡眠改善剤は、優れた睡眠改善作用に加え、優れた鎮静作用をも有しているので、鎮静剤としても有用である。図1は、クロシン経口投与によるマウスの行動量の変化(A;80mg/kgのクロシンによる行動量減少の経時変化、 B;クロシン40、80および160mg/kg投与時のマウス行動量の変化)を示す。図2は、クロシン腹腔内投与によるマウスの睡眠・覚醒量の変化(A;睡眠・覚醒量の経時変化、B;12時間の累積睡眠・覚醒量の変化)を示す。図3は、野生型マウスおよびヒスタミンH1受容体遺伝子を欠損させたマウスに対して、クロシンおよび生理食塩水をそれぞれ腹腔内投与したときのノンレム睡眠量を比較して示す。 「睡眠改善剤」とは、起床時の眠気を改善する、入眠をスムーズにする、中途覚醒を減らす等の作用によって、安眠を誘発して良好な睡眠状態を導くために使用されるものである。また、「鎮静剤」とは、人や動物の精神を鎮静させることにより、リラックスさせ、又は睡眠を改善させるために使用されるものである。 本実施の形態の睡眠改善剤および鎮静剤は、下記化学式(I)で表されるクロシン、あるいは下記化学式(II)で表わされるノルビキシンを有効成分として含むものである。クロシンは、クロセチンが2分子のゲンチオビオースと縮合したジエステルであって、その分子式はC44H64O24である。ノルビキシンは、セスターテルペン(C24)の両サイドにカルボン酸が結合した構造を持つ化合物である。(I)(II) クロシンの製造方法は、特に限定はされないが、例えば、植物、より具体的には大分県竹田市で栽培される薬用あるいは食用植物であるサフラン(Crocus sativus L)あるいは中国の四川省、江蘇省、雲南省、河北省等で栽培されるクチナシ(山梔子、Gardenia jasminoides)を原料として抽出単離することによって調製することができる。 サフランからクロシンを単離調製する場合、原料として使用するサフランは、めしべに限定される(植物のサフラン(Crocus sativus L)のめしべを集めて乾燥させたものをサフランと称し、めしべ以外の部分はサフランとは呼ばない)。当該クロシンの調製は、上記のめしべを、有機溶媒を含む溶媒で抽出および分画する工程を経て行うことができる。 例えば、乾燥サフランを細かくし、有機溶媒で室温にて1−5日ほど抽出し、その後、これらを濾過して濾液を濃縮し、得られた溶媒抽出物を、各種カラムクロマトグラフィーを組み合わせて分離することにより、クロシンを得ることができる。ここで、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトン、酢酸エチルなどが挙げられる。好ましい有機溶媒は、メタノール、エタノール、ブタノールなどである。さらに、水、および水とこれら有機溶媒との混液などで抽出することも可能である。 また、カラムクロマトグラフィーとしては、オープンカラムクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、分取リサイクルHPLCなどが挙げられ、それらに各種カラムクロマトグラフ用の担体、即ち順相シリカゲル、逆相シリカゲル(ODS)、ゲル濾過(Sephadex)、イオン交換樹脂 (Diaion HP−20))などを組み合わせることができる。好ましいカラムクロマトグラフィーの組み合わせとしては、オープンカラムクロマトグラフにはイオン交換樹脂(Diaion HP−20)、順相シリカゲル、逆相シリカゲル(ODS)、ゲル濾過(Sephadex、GS)などであり、分取リサイクルHPLCにはゲル濾過(Sephadex、GS)、HPLCには逆相シリカゲル(ODS)などが挙げられる。 なお、睡眠改善剤および鎮静剤の有効成分として用いられるクロシンには、上記化学式(I)に包括的に含まれる構造異性体も含まれる。 ノルビキシンの製造方法も、また特に限定はされないが、例えば、植物、より具体的にはベニノキ科ベニノキ(Bixa orellane LINNE)を原料として抽出単離することによって調製することができる。 ベニノキからノルビキシンを単離調製する場合、ベニノキの種子の被覆物から抽出するのが好ましい。当該ノルビキシンの調製は、上記種子の被覆物を、有機溶媒を含む溶媒で抽出および分画する工程を経て行うことができる。 例えば、乾燥したベニノキの種子の被覆物を細かくし、有機溶媒で室温にて1−5日ほど抽出し、その後、これらを濾過して濾液を濃縮し、得られた溶媒抽出物を、各種カラムクロマトグラフィーを組み合わせて分離することにより、ノルビキシンを得ることができる。ここで、有機溶媒としては、プロピレングリコール等のポリオール、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサン、アセトン、酢酸エチルなどが挙げられる。好ましい有機溶媒は、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサンなどである。さらに、水、および水とこれら有機溶媒との混液などで抽出することも可能である。なお、カラムクロマトグラフィーは、上記クロシンの場合と同様である。 睡眠改善剤および鎮静剤は、カロテノイド色素、更に詳しくは上記化学式(I)で表されるクロシン、上記化学式(II)で表わされるノルビキシンまたはそれらの各誘導体のみから構成されていてもよいが、使用形態に応じて、担体、基材又は添加物等の他の成分を含有していてもよい。睡眠改善剤および鎮静剤において、上記化学式(I)で表されるクロシン、上記化学式(II)で表わされるノルビキシンまたはそれらの各誘導体の配合割合としては、該睡眠改善剤および鎮静剤の使用形態、期待される効果の程度、使用者の性別や年齢等によって異なるが、一例として、該睡眠改善剤および鎮静剤の総重量に対して、化学式(I)で表されるクロシン、化学式(II)で表わされるノルビキシンまたはそれらの各誘導体が0.01〜100重量%、好ましくは0.1〜10重量%となる割合が挙げられる。 睡眠改善剤および鎮静剤は、医薬、食品等などとして用いることができる。睡眠改善剤および鎮静剤の投与形態・剤型は、経口投与、非経口投与のいずれでもよく、経口投与剤としては、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、チュアブル剤などの固形剤、溶液剤、シロップ剤などの液剤が、また、非経口投与剤としては、注射剤、スプレー剤などが挙げられる。好ましい投与形態は、錠剤およびカプセル剤などによる経口投与である。 睡眠改善剤および鎮静剤は、公知の製剤化方法、特に経口摂取に適した製剤化技術を使用して製剤化することができる。例えば、睡眠改善剤および鎮静剤を医薬として用いる場合、当該医薬組成物は活性成分として遊離または酸付加塩の形態にある有効な量のクロシン、ノルビキシンまたはそれらの各誘導体を、医薬的に受容しうる担体と均一に混合することにより製造できる。この担体は投与に対して望ましい製剤の形態に応じて、広い範囲の形態を取ることができる。これらの医薬組成物は、経口投与に対して適する単位服用形態にあることが望ましい。経口服用形態にある組成物の調製においては、何らかの有用な薬理的に受容しうる担体が使用できる。例えば、懸濁液及びシロップ剤の如き経口液体調製物は水およびシュクロース、ソルビトール、フルクトース等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、アルキルパラヒドロキシベンゾエート等の防腐剤、ストロベリー・フレーバー、ペパーミント等のフレーバー類を使用して製造できる。 散剤、丸薬、カプセルおよび錠剤はラクトース、グルコース、シュクロース、マニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の表面活性剤、グリセリン等の可塑剤を用いて製造できる。錠剤およびカプセルが、投与が容易であるという理由で最も有用な単位経口投与剤である。錠剤やカプセルを製造する際には、固体の医薬担体が用いられる。睡眠改善剤および鎮静剤を経口投与する場合、その有効投与量は、対象患者の年齢・体重・病態、投与方法などによっても異なるが、通常、有効成分(クロシン、ノルビキシンまたはそれらの各誘導体)を1〜10000mg/kg/日程度、好ましくは10〜1000mg/kg/日程度となるように投与する。また、その投与時期は通常就寝前の1〜6時間であり、より好ましくは2〜5時間である。 以下に、本発明を具体的に説明するため、本発明の睡眠改善剤および鎮静剤の有効成分の製造例、本発明の睡眠改善および鎮静の効果を明確にするために実施例、並びに本発明の睡眠改善剤および鎮静剤の製剤例を記載する。但し、本発明は、これらの実施例等により何ら限定されるものではない。実施例1クロシンの製造方法 生あるいは乾燥サフラン、特にはめしべを細かくし、メタノールを溶媒として室温で一週間抽出した。その後、これらを濾過して濾液を濃縮し、得られた固体(以下「メタノール抽出物」と呼ぶ)を、オープンカラムクロマトグラフにはイオン交換樹脂 (Diaion HP−20)、順相シリカゲル、ゲル濾過(Sephadex、GS)を組み合わせ、分取リサイクルHPLCにはゲル濾過(Sephadex、GS)を組み合わせて分離を行い、クロシンを得た。試験例11.方法(i)動物 行動量測定には、10週齢のICR系雄性マウス(体重40g、日本エスエルシー株式会社)を使用し、脳波測定には、10週齢のC57BL/6系雄性マウス(体重:25−28g、株式会社オリエンタル バイオサービス)を使用した。マウスは、温度22℃(プラスマイナス2℃)、湿度55%(プラスマイナス5%)、12時間の明暗周期で放射線滅菌飼料(ラボMRストック)と水を自由に摂取させた。(ii)行動量測定と解析 行動量を測定するために、マウスを動物行動量測定用チャンバー内で7日間環境に馴化させた後、水を投与した。投与後すぐにマウスを個別のケージに入れ行動量測定を開始した。測定終了後、再度グループで2日間の飼育後、クロシンを投与し、その後マウスを個別ケージに入れ行動量を測定した。行動量は、クロシンをそれぞれ40mg/kg、80mg/kgおよび160mg/kg投与して測定した。行動量は、動物から放出される赤外線を検出するセンサー(Biotex Japan社)とソフトウェアBiotex 16CH Act Monitor BAI2216(Biotex Japan社)を用いて12時間記録した(Nakamura et al. In vivo monitoring of circadian timing in freely moving mice. Current Biology 2008, 18: 381−385)。行動量は、投与後1時間毎の累積量と12時間の累積量を算出し、対照群と比較した。2.結果 図1Aおよび図1Bに示すように、マウスに40、80、160mg/kgのクロシンを経口投与すると、いずれの投与量の場合にも、水投与に比べて、有意に行動量が減少した。特に、80mg/kg以上を投与した場合には、統計学的有意に行動量が減少した。試験例21.方法(i)脳波測定と解析 ソムノペンチル(一般名ペントバルビタール、50mg/kg、腹腔内投与)麻酔下でマウスに脳波・筋電位測定用の電極を埋め込み、施術後は回復用チャンバーにおいて10日間回復させた後、記録用チャンバーへ移しケーブルを接続して3日間馴化させた。脳波・筋電位は、増幅、フィルター(脳波:0.5−30Hz、筋電位:20−200Hz)処理後、128Hzのサンプリング速度でデジタル化し記録した。脳波解析は、ソフトウェアSleepSign(登録商標)(キッセイコムテック社製)を用いて10秒間のデータを1エポックとし、向當らの方法(Kohtoh et al. Sleep and Biological Rhythms 2008, 6: 163−171)により、脳波と筋電位の周波数成分・波形によって各エポックを覚醒、ノンレム睡眠・レム睡眠のいずれかに判定した。具体的には、以下の方法により判定した。まず、周波数分析によりデルタ波(0.65−4.0Hz)成分とシータ波(6.0−10.0Hz)成分を抽出した。次に、これらの成分を含まず、筋電位が観察されるものを覚醒と判定した。また、デルタ波とシータ波が含まれているものを睡眠と判定し、その中でもシータ波を主成分として含むものをレム睡眠それ以外のものをノンレム睡眠と判定した。(ii)サンプル投与 行動量を測定するために、クロシン(各40、80、160mg/kg)をマウスに経口投与用ゾンデを用いて10ml/kgの容量で投与した。対照群には水を投与した。投与時間は、暗期開始時の19:00とした。また、脳波測定のために、クロシン(各10、30、100mg/kg)をマウスの腹腔内に20ml/kgの容量で投与した。対照群には生理食塩水を投与した。投与時間は、暗期開始時の20:00とした。2.結果 図2Aおよび図2Bに示すように、脳波測定においてマウスに各10、30および100mg/kgのクロシンを腹腔内投与すると、いずれの投与量の場合にも、生理食塩水の投与に比べて、有意にノンレム睡眠量がした。特に、30mg/kg以上を投与した場合には、統計学的有意にノンレム睡眠量が増加した。試験例3 クロシンの睡眠改善作用機構を調べるため、マウスへのクロシン投与後の睡眠・覚醒の詳細な解析を行った。1.方法(i)動物 解析には、野生型マウスを使用した。(ii)脳波測定と解析 野生型マウスに、100mg/kgのクロシンを腹腔内投与し、覚醒への移行回数、レム睡眠への移行回数およびノンレム睡眠への移行回数、1回あたりの覚醒・睡眠の持続時間(秒/4時間)を調べた。睡眠・覚醒の解析において、各種睡眠のステージおよび覚醒の判定は、試験例2の脳波測定・解析と同一の方法により行った。クロシン投与との比較のため、クロシンに代えて生理食塩水の投与も行った。2.結果 表1に、生理食塩水およびクロシンをそれぞれ野生型マウスに投与したときの覚醒・睡眠の各ステージへの移行回数を比較して示す。また、表2に、生理食塩水およびクロシンをそれぞれ野生型マウスに投与したときの1回あたりの覚醒・睡眠の持続時間を比較して示す。 表1に示すように、クロシンを投与すると、生理食塩水を投与した場合と比較して、レム睡眠あるいはノンレム睡眠からの覚醒への移行回数と、覚醒からのノンレム睡眠への移行回数がともに有意に増加することがわかった。また、表2に示すように、クロシンを投与すると、生理食塩水を投与した場合と比較して、覚醒の持続時間が有意に減少することがわかった。試験例4 クロシンの睡眠・覚醒調節作用を調べるため、覚醒に関与するヒスタミンH1受容体遺伝子を欠損させたマウスにクロシンを投与して、その効果を調べた。1.方法(i)動物 解析には、ヒスタミンH1受容体遺伝子を欠損させたマウスと、その比較として野生型マウスとを使用した。(ii)脳波測定と解析 ヒスタミンH1受容体遺伝子を欠損させたマウスおよび野生型マウスに、それぞれ、100mg/kgのクロシンを腹腔内投与し、ノンレム睡眠量を比較した。睡眠・覚醒の解析において、各種睡眠のステージおよび覚醒の判定は、試験例2の脳波測定・解析と同一の方法により行った。クロシン投与との比較のため、クロシンに代えて生理食塩水の投与も行った。2.結果 図3に、野生型マウスおよびヒスタミンH1受容体遺伝子を欠損させたマウスに対して、クロシンおよび生理食塩水をそれぞれ腹腔内投与したときのノンレム睡眠量を比較して示す。 図3に示すように、生理食塩水を投与した場合には、野生型マウスとヒスタミンH1受容体遺伝子を欠損させたマウスとの間に、ノンレム睡眠量に有意な差は認められなかった。一方、クロシンを投与した場合には、ヒスタミンH1受容体遺伝子を欠損させたマウスのノンレム睡眠量は、野生型マウスのノンレム睡眠量に比べて、有意に減少した。この結果から、クロシンの睡眠・覚醒調節作用の一部は、ヒスタミンH1受容体を介した作用であると考えられる。製剤例1:錠剤常法によって、次の組成により錠剤を調製する。クロシン 200mg乳糖 60mgバレイショデンプン 30mgポリビニルアルコール 2mgステアリン酸マグネシウム 1mgタール色素 微量製剤例2:散剤常法によって、次の組成により散剤を作成する。クロシン 200mg乳糖 275mg 本発明は、睡眠改善剤および鎮静剤として用いることができる。以下の化学式I:で表されるクロシンを有効成分として含む、睡眠改善剤。 レム睡眠またはノンレム睡眠から覚醒への移行回数、及び、覚醒からノンレム睡眠への移行回数を増加させ、かつ、覚醒の持続時間を減少させることを特徴とする、請求項1に記載の睡眠改善剤。


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