タイトル: | 特許公報(B2)_ヒアルロン酸誘導体、およびその医薬組成物 |
出願番号: | 2010536794 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C08B 37/08,A61K 47/36,A61K 47/48 |
秋吉 一成 中井 貴士 平倉 泰 下房地 剛 JP 5542687 特許公報(B2) 20140516 2010536794 20091105 ヒアルロン酸誘導体、およびその医薬組成物 国立大学法人 東京医科歯科大学 504179255 中外製薬株式会社 000003311 小野 新次郎 100140109 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 寺地 拓己 100122644 秋吉 一成 中井 貴士 平倉 泰 下房地 剛 JP 2008284103 20081105 20140709 C08B 37/08 20060101AFI20140619BHJP A61K 47/36 20060101ALI20140619BHJP A61K 47/48 20060101ALI20140619BHJP JPC08B37/08 ZA61K47/36A61K47/48 C08B A61K CAplus(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開平07−206903(JP,A) 特開平03−292301(JP,A) 特開2006−291097(JP,A) 特表2008−531148(JP,A) 特表2002−516355(JP,A) 国際公開第2007/043702(WO,A1) 国際公開第96/035721(WO,A1) 国際公開第2008/136536(WO,A1) 18 JP2009068933 20091105 WO2010053140 20100514 106 20121102 福井 悟 本発明は、疎水性基を導入した新規ヒアルロン酸誘導体、当該ヒアルロン酸誘導体を含む医薬組成物、特に薬効を有するタンパク質および/またはペプチドを含む医薬組成物に関する。 近年、組み換え遺伝子技術や化学合成技術の発展により、タンパク質およびペプチドを活性成分とする製剤が実用化されており、その数は年々増え続けている。しかし、タンパク質やペプチドは消化管あるいは粘膜などからは吸収されにくく、また、体内では不安定で血中半減期が短い。そのため、タンパク質製剤およびペプチド製剤は注射による頻回投与が必要となっており、患者にも医療関係者にも負担が大きくなっている。薬理活性を損なうことなくタンパク質やペプチドをカプセル化するための徐放性DDS基材が望まれている。また、投与の効率の観点から、基材に対してできるだけ多量のタンパク質、ペプチドが封入できることが望ましい。 タンパク質やペプチドの薬理活性はそれらの高次構造に起因するところが大きく、有機溶媒や空気界面との接触、圧力や温度、pHといった外部環境に起因する変性および凝集によりタンパク質やペプチドの薬理活性が損なわれることが知られている。また、変性や凝集したタンパク質を体内に投与することにより抗原性などのリスクが高まることも知られている。タンパク質またはペプチドを活性成分とする徐放性製剤においては、製剤化工程から、製剤の貯蔵期間を経て、投与後に生体内で当該活性成分が放出されるまで、タンパク質やペプチドの安定性を確保することが求められる。 ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体(PLGA)などの生分解性高分子を基材にした徐放性製剤について実用化の試みが広く行われているが、基材の疎水性、および製剤化のための操作(乳化、乾燥、酸性化など)に起因するタンパク質の変性または凝集が報告されている(非特許文献1および2)。 一方、親水性のハイドロゲルを基材に用いた徐放性製剤も報告されているが、ゲル化工程中のタンパク質安定性などの問題もあり、やはり実用化には至っていない。 また、安全性の面から、製剤に用いる基材は、非抗原性、非変異原性、無毒性、生分解性を併せ持つものでなければならない。安全性に加えて、タンパク質またはペプチドの封入量および回収率の全てにおいて、実用化レベルに達している徐放性製剤は知られていない。 近年、多糖を薬物担体の基材として用いるという報告がある。その中でも、ヒアルロン酸(HA)は、1934年、K.Meyerによって牛の眼の硝子体から単離された生体材料(多糖)であり、細胞外マトリックスの主成分として古くから知られている。HAは、D−グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとがβ(1→3)グリコシド結合により連結された二糖単位から成るグリコサミノグリカンの一種である。HAは、化学的、物理的構造に種差が無く、ヒトもその代謝系を有しており、免疫性および毒性といった面でも最も安全な医用生体材料(Biomaterial)の一つである。近年、微生物による高分子量HAの大量生産が可能となり、変形性軟骨治療薬、化粧品などの分野でも実用化されている。 このように非抗原性、非変異原性、無毒性、生分解性を併せ持つことから、HAは安全性の面から徐放性製剤の基材として好ましいと考えられる。これまでにも、HAを基材として用いた製剤は数多く報告されており、血中滞留性向上を目的とした修飾したHAの使用(特許文献1)や、膝関節内滞留性向上を目的としたアルキル鎖を導入したHA誘導体の使用(特許文献2)、タンパク質徐放のためのin situ架橋HAゲルの使用(特許文献3)、骨形成タンパク質(BMP)の徐放のためのヒアルロン酸エステル固形物の使用(特許文献4)が報告されている。 一方、有機溶媒を使用することなく水溶液中においてタンパク質やペプチドと自発的に複合化する基材はいくつか報告されており、それら基材は、主に、多糖またはポリアミノ酸を原料として製造されている。 ポリアミノ酸誘導体を基材として使用した医薬製剤の例として、トコフェロールを導入したポリグルタミン酸の基材としての使用が報告されている(特許文献5)。 多糖誘導体の基材に関しては、コレステリル基などを導入したプルラン誘導体が、水溶液中においてナノサイズの微粒子を形成し、疎水性低分子、ペプチド、タンパク質などと複合化するホスト分子として機能することが報告されている(非特許文献3〜10)。タンパク質取り込み後の当該プルラン誘導体についての熱力学的評価により、取り込まれたタンパク質が、プルランのヒドロキシ基との水素結合により安定化されることが示されている(非特許文献11)。 また、カルボキシメチルセルロース(CMC)(特許文献6)およびリノレイン酸を導入したキトサン(非特許文献12)をタンパク質との複合体形成の材料として利用する報告もある。さらに、本願優先日以降に公開された特許文献8には、架橋性基を有するヒアルロン酸誘導体、および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を含む組成物であって、架橋性基を有するヒアルロン酸誘導体が、親水性多糖類誘導体の存在下、ヒアルロン酸または架橋形成が可能な基を有するその誘導体の架橋形成反応により調製される組成物が報告されている。 生体内にはCD44やRHAMM(Receptor for Hyaluronic Acid−Mediated Motility)、LYVE−1(Lymphe Vessel Endothelial HA Receptor−1)、HARE(Hyaluronic acid Receptor for Endocytosis)などのHAレセプターが存在することが報告されている(非特許文献18および非特許文献19)。特にCD44やRHAMMは多くの癌細胞において過剰発現しており、それゆえHAを癌ターゲティングキャリアの基材として用いる試みがなされている。その例として、パクリタキセル−HAコンジュゲート(非特許文献20〜22および特許文献9)、カンプトテシン−HAコンジュゲート(特許文献10)、ドキソルビシン−HPMA[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]−HAコンジュゲート(非特許文献23)、酪酸−HAコンジュゲート(非特許文献24)、ドキソルビシン封入HA−PEG−PLGAナノパーティクル(非特許文献25)、siRNA封入HAゲル(非特許文献26)、ドキソルビシン封入HA被覆リポソーム(非特許文献27)などが挙げられる。さらに本願優先日以降に公開された非特許文献28には、アミド結合により導入したエチレンジアミンリンカーを介してコール酸をコンジュゲートしたHA誘導体について報告されている。これらHAを基材としたキャリアは、in vitroにおけるCD44高発現細胞において効率良く取り込まれることが報告されている(例えば非特許文献20)。しかし、HAは全身投与した場合、肝臓などの類洞内皮に存在するHAREレセプターにより瞬時に取り込まれ、代謝されることが知られており、急速に血中から消失する(非特許文献29〜31)。したがって、HA基材を用いた効率の良い癌ターゲティングには肝臓での取り込みを抑え、血中滞留性を向上させたキャリアーが必要とされている。国際公開第WO2006/028110号国際公開第WO2006/092233号国際公開第WO2004/050712号国際公開第WO2003/099992号国際公開第WO2005/051416号国際公開第WO2002/022154号特開昭62−64802号公報国際公開第WO2008/136536号国際公開第WO2004/035629号国際公開第WO2009/074678号J. Pharm. Sci. 第88巻、第166-173頁、1999年J. Microencapsulation 第15巻、第699-713頁、1998年Macromolecules 第26巻、第3062-3068頁、1993年Macromolecules 第30巻、第857-861頁、1997年Macromolecules 第27巻、第7654-7659頁、1994年J.Am.Chem.Soc. 第118巻、第6110-6115頁、1996年Bioconjugate Chem. 第10巻、第321-324頁、1999年FEBS Letters 第533巻、第271-276頁、2003年Biomacromolecules 第6巻、第1829-1834頁、2005年J.Controlled Release 第54巻、第313-230頁、1998年Colloids and Surfaces 第112巻、第91-95頁、1996年Carbohydrate Polymers 第62巻、第293-298頁、2005年Ki Young Cholら、”Hydrogel Nanoparticles Based on Hyaluronic Acid”, 34th Annual Meeting & Exposition of the Controlled Release Society, July 7-11, 2007, Long Beach, California USA, Poster Session I, No.244(学会発表予稿集CD)Polymer 第47巻、第2706-2713頁、2006年Journal of Biomedical Materials Research Part A 第83A巻、第1号、第184-190頁、2007年Biomacromolecules 第8巻、第2366-2373頁、2007年Carbohydrate Polymers 第62巻、第293-298頁、2005年MOLECULAR PHARMACEUTICS. 第5巻、第474-486頁、2008年Journal of Drug Targeting. 第16巻、第91-107頁、2008年Bioconjugate Chem.第10巻、第755-763頁、1999年Clinical Cancer Research. 第14巻、第3598-3606頁、2008年Bioconjugate Chem.第19巻、第1319-1325頁、2008年Pharmaceutical Research. 第19巻、第396-402頁、2002年Clinical Cancer Research. 第10巻、第4822-4830頁、2004年Nanomedicine: Nanotechnology, Biology, and Medicine. 第3巻、第246-257頁、2007年)Journal of Controlled Release、第119巻、第245-252頁、2007年)Neoplasia 、第6巻、第343-353頁、2004年Journal of Materials Chemistry.第19巻、第4102-4107頁、2009年Cell and Tissue Research.第243巻、第505-510頁、1985年)THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY、第275巻、第37733-37741頁、2000年The Biochemical journal、第200巻、第415-424頁、1981年 タンパク質およびペプチドの徐放性製剤用基材として、これまでに報告された材料は、必ずしも充分な性能を有していなかった。例えば、生体外由来のポリグルタミン酸やキトサン、プルラン、CMCを原料とした基材を使用した場合、生体適合性、生分解性に不安がある。特に反復投与、多量投与が必要な場合、生体への影響が懸念される。また、コレステロール置換プルランは、コレステロールなどの疎水性基の導入量を増加させることにより、水に対する溶解性が低下するため、封入させるタンパク質の量を、より増加させた担体の出現が望まれている。 また、薬物としてタンパク質、ペプチド、低分子、核酸を封入することができ、血中徐放キャリアまたはターゲティングキャリアとして用いることができる担体、特に、血中滞留性に優れた担体が望まれている。 本発明の目的は、安全性に優れた医薬製剤の基材を提供することであり、特に薬効を有するタンパク質またはペプチドを薬物として使用する場合に、薬理活性を維持したまま多くの薬物を効率よく封入できる担体、および血中滞留性に優れた血中徐放キャリアならびにターゲティングキャリアとして用いることができ、薬物を持続的に徐放できる局所(たとえば皮下)徐放キャリアにもなり得る基材を提供することである。 本発明者は、かかる目的を達成する為に鋭意検討を進めたところ、特定の疎水性基を導入したヒアルロン酸誘導体が、薬物、特に薬理活性を有するタンパク質またはペプチドを多量に封入しながら、水溶液中で自発的に会合することを見出した。また、疎水性基の導入率により生理塩濃度下で顕著に凝集して沈殿形成する範囲、および生理塩濃度下でも安定な微粒子を形成し、水中で安定に分散する範囲が存在することを見出した。さらに、特定の分子量のHAを原料としたヒアルロン酸誘導体の血中滞留性が顕著に向上することを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、水溶液中で自発的に会合し、薬物、特に薬効を有するタンパク質やペプチドを、その生物活性を維持したまま効率よく封入することができ、生理塩濃度下で顕著に凝集し(あるいは生理塩濃度下でも分散し)、なおかつ血中滞留性が良好であることを特徴とする、疎水性基を導入したヒアルロン酸誘導体、その製造法、ならびに薬物および該ヒアルロン酸誘導体を含む医薬組成物およびその製造方法に関する。 本発明の1つの側面によれば、疎水性基を導入したヒアルロン酸誘導体であって、式(I):[式中、R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミルおよびC1−6アルキルカルボニルから選択され; Zは、直接結合、または2〜30個の任意のアミノ酸残基からなるペプチドリンカーを表し; X1は、以下の式: −NRb−R、 −NRb−COO−R、 −NRb−CO−R、 −NRb−CO−NRc−R、 −COO−R、 −O−COO−R、 −S−R、 −CO−Ya−S−R、 −O−CO−Yb−S−R、 −NRb−CO−Yb−S−R、および −S−S−R、により表される基から選択される疎水性基であり; Ra、RbおよびRcは、それぞれ独立に、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキルおよびヒドロキシC2−20アルキルから選択され、ここで当該基のアルキル部分は、−O−および−NRf−から選択される1〜3個の基が挿入されていてもよく; Rfは、水素原子、C1−12アルキル、アミノC2−12アルキルおよびヒドロキシC2−12アルキルから選択され、当該基のアルキル部分は−O−および−NH−から選択される1〜2個の基が挿入されていてもよく; Rは、ステリル基であり; Yは、C2−30アルキレン、または−(CH2CH2O)m−CH2CH2−であり、ここで、当該アルキレンは、−O−、−NRg−および−S−S−から選択される1〜5の基が挿入されていてもよく; Rgは、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキルまたはヒドロキシC2−20アルキルから選択され、当該基のアルキル部分は−O−および−NH−から選択される1〜3個の基が挿入されていてもよく; Yaは、C1−5アルキレンであり; Ybは、C2−8アルキレンまたはC2−8アルケニレンであり; mは、1〜100から選択される整数である]で表される繰り返し単位を、1以上含む、前記ヒアルロン酸誘導体が提供される。 本発明の1つの側面において、疎水性基を導入したヒアルロン酸誘導体であって、式(Ia):[式中、R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミルおよびC1−6アルキルカルボニルから選択され; Xは、−NRa−Y−NRb−COO−Rで表される疎水性基であり; RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子およびC1−6アルキルから選択され; Rは、ステリル基であり; Yは、C2−30アルキレン、または−(CH2CH2O)m−CH2CH2−であり、 mは、1〜100から選択される整数である]で表される繰り返し単位を、1以上含む、前記ヒアルロン酸誘導体が提供される。 本発明のヒアルロン酸誘導体に式(I)で表される繰り返し単位が2以上含まれる場合、当該繰り返し単位は同一であっても、異なっていてもよい。当該ヒアルロン酸誘導体は、式(I)の繰り返し単位以外の位置において修飾されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基は−O(C1−6アルキル)、−O(ホルミル)および−O(C1−6アルキルカルボニル)等に変換されていてもよく、カルボキシ基は、アミド、エステルに変換されていても、塩を形成していてもよい。 本発明の別の側面によれば、上記式(I)の基−Z−N(Ra)Y−X1は、以下の式: −NH−(CH2)mz−NH−R; −NH−(CH2)mz−NH−COO−R; −NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−NH−COO−R; −NH−(CH2)mz−COO−R; −NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−COO−R、 −NH−(CH2)mz−O−COO−R; −NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−O−COO−R、 −NH−(CH2)mz−S−R; −NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−S−R; −NH−(CH2)mz−O−CO−CH(R8)−CH2−S−R; −NH−(CH2)mz−NHCO−CH(R8)−CH2−S−R; −NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−NHCO−CH(R8)−CH2−S−R; −NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−O−CO−CH(R8)−CH2−S−R;および −NH−(CH2)mz−S−S−R; −Z−NRa−Y−NRb−COO−R(ここで、mzは、2〜30の整数であり、R8は、水素原子またはメチル基であり、R、およびmは、本明細書で既に定義したとおりである)で表される基から選択される。当該基は、好ましくは、 −NH−(CH2)mz−NH−COO−R; −NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−NH−COO−R;および −NH−(CH2)mz−S−S−R(ここで、mz、R、およびmは、本明細書で既に定義したとおりである)から選択される基である。 本発明の好ましい態様において、Zは直接結合である。また、本発明の1つの態様において、Zがペプチドリンカーの場合、X1は−NRb−COO−Rである。 Yの具体例としては、−CH2CH2O−CH2CH2−S−S−CH2CH2O−CH2CH2−、−(CH2CH2O)2−CH2CH2−S−S−CH2CH2O−CH2CH2−、−CH2CH2O−CH2CH2−S−S−(CH2CH2O)2−CH2CH2−および−(CH2CH2O)2−CH2CH2−S−S−(CH2CH2O)2−CH2CH2−が挙げられる。 Yaとしては、−CH2−および−CH2−CH2−が好ましい。 Ybとしては、−CH2−CH2−、−CH(CH3)CH2−、2−ブテン−1,4−ジイル、ヘプタ−2,4−ジエン−1,6−ジイルおよびオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジイルが好ましく、−CH2−CH2−および−CH(CH3)CH2−がさらに好ましい。 本発明の1つの態様において、Zは、−NH−[CH(−Za)−CONH]n−1−CH(−Za)−CO−で表されるペプチドリンカーであり、ここで、nは2〜30の整数であり、Zaは、それぞれ独立に、H2N−CH(−Za)−COOHとして表されるα−アミノ酸中の置換基を表す。当該ペプチドリンカーは、N末端にてグルクロン酸部分のカルボキシ基に結合し、C末端にて基−N(−Ra)−Y−X1に結合する。当該ペプチドリンカーのアミノ酸残基として利用できるアミノ酸の例としてはα−アミノ酸、例えばアラニン、アルギニン、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン(Gly)、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン(Leu)、リジン、メチオニン、フェニルアラニン(Phe)、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンといった天然型(L型)のアミノ酸、それらのD体などが挙げられ、合成されたアミノ酸を含む全てのα−アミノ酸を用いることができる。すなわち、Zaとしては、例えば、−CH3、H2NC(NH)NH(CH2)3−、H2NCOCH2−などが挙げられる。また、n個のZは、同一でも異なっていてもよい。nは、2〜30の整数であるが、2〜10が好ましく、2〜4がさらに好ましい。ペプチドリンカーの好ましい例としては、例えば、−Gly−Phe−Leu−Gly−、−Asn−Phe−Phe−、−Phe−Phe−、Phe−Gly−などが挙げられる。 基−Z−N(Ra)Y−X1の具体例としては、−NH−(CH2)2−NH−CO−コレステリル、−NH−(CH2)4−NH−(CH2)3−NH−(CH2)3−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)3−NH−(CH2)4−NH−(CH2)3−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)4−NH−(CH2)3−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)4−N(−(CH2)3−NH2)−COO−コレステリル、−NH−(CH2)3−NH−(CH2)4−N(−(CH2)3−NH2)−COO−コレステリル、−NH−(CH2)3−NH−(CH2)4−N(−(CH2)3−NH−(CH2)3−NH2)−COO−コレステリル、−NH−(CH2)3−NH−(CH2)4−N(−(CH2)3−NH2)−CO−NH−コレステリル、−NH−(CH2)3−NH−(CH2)4−N(−(CH2)3−NH2)−CO−コレステリル、−NH−(CH2)3−NH−(CH2)4−N(−(CH2)3−NH2)−コレステリルが挙げられる。基−Z−N(Ra)Y−X1の好ましい態様において、Ra、RbおよびRcが、水素原子であり、Yが、直鎖状のC2−30アルキレンまたは−(CH2CH2O)m−CH2CH2−であり、Yaが、直鎖状のC1−5アルキレンであるか、またはYbが、直鎖状のC2−8アルキレンまたは直鎖状のC2−8アルケニレンである。 本発明の別の側面によれば、式(I)で表される繰り返し単位、および式(II):[式中、R1a、R2a、R3a、およびR4aは、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミルおよびC1−6アルキルカルボニルから選択され; Xaは、ヒドロキシおよび−O−Q+から選択され;ここで、Q+は、カウンターカチオンである]で表される繰り返し単位を含むヒアルロン酸誘導体が提供される。本発明のヒアルロン酸誘導体に式(II)で表される繰り返し単位が2以上含まれる場合、当該繰り返し単位は同一であっても、異なっていてもよい。1つの態様において、本発明は、式(I)で表される繰り返し単位、および式(II)で表される繰り返し単位から実質的になるヒアルロン酸誘導体を提供する。 ここで、Q+はカルボキシ基と水中で塩を形成するカウンターカチオンであれば特に限定されず、2価以上の場合は価数に応じて複数のカルボキシ基と塩を形成する。カウンターカチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどの金属イオン;式:N+RjRkRlRm(式中、Rj、Rk、RlおよびRmは、それぞれ独立に、水素原子およびC1−6アルキルから選択される)で表されるアンモニウムイオンなどが挙げられ、好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン(例えば、テトラn−ブチルアンモニウムイオンなど)が挙げられる。Rj、Rk、RlおよびRmは、C1−6アルキルから選択される同一の基であるのが好ましく、n−ブチル基であるのが好ましい。 R1、R2、R3、およびR4、並びにR1a、R2a、R3aおよびR4aは、全て水素原子であるのが好ましい。また、RaおよびRbは、いずれも水素原子であるのが好ましい。 本発明の一態様において、ヒアルロン酸誘導体は、式(I)および(II)の繰り返し単位から実質的に構成される。当該ヒアルロン酸誘導体は、当該誘導体に含まれるD−グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとから成る二糖の繰り返し単位のうちの、例えば80%以上が、好ましくは90%以上が、より好ましくは95%以上が式(I)または(II)の繰り返し単位である。本発明の1つの態様において、上記式(I)および式(II)で表される繰り返し単位のみから構成される。 式(I)で定義したYは、例えば、−(CH2)na−(ここで、naは2〜20、好ましくは2〜15、さらに好ましくは2〜12の整数から選択される)であってもよく、好ましくは、−(CH2)2−、−(CH2)6−、−(CH2)8−および−(CH2)12−であり、さらに好ましくは−(CH2)6−である。これらのYは、後述する、沈殿形成および安定な分散という観点で好ましいものである。 本発明のさらに別の側面によれば、本明細書に定義したヒアルロン酸誘導体であって、水中で会合により微粒子を形成することを特徴とする前記ヒアルロン酸誘導体が提供される。特に限定はされないが、導入された疎水性基の疎水性相互作用により水中において自発的会合が起こり、微粒子を形成すると考えられている。当該微粒子の粒子径は特に限定されないが、例えば、1μm以下、好ましくは500nm、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下、さらにより好ましくは50nm以下である。 本発明のさらに別の側面によれば、本明細書に定義した疎水性基を導入したヒアルロン酸誘導体であって、当該誘導体に存在する二糖の繰り返し単位に対する疎水性基の導入率が7〜42%である、前記ヒアルロン酸誘導体が提供される。 ここで、疎水性基の導入率は、以下の式:により算出される。ここで、「当該誘導体に存在する二糖の繰り返し単位」には、カルボキシ基がアミド基に変換されて疎水性基が導入されている式(I)の繰り返し単位、および疎水性基が導入されていない式(II)、(III)および(IV)の繰り返し単位が含まれる。当該導入率は、反応条件、例えば試薬の比率により制御することができ、例えば、NMR測定などにより決定することができる。 本発明の上記側面の一つの態様によれば、本明細書に定義した疎水性基を導入したヒアルロン酸誘導体であって、当該誘導体に存在する二糖の繰り返し単位に対する疎水性基の導入率が7〜15%である、前記ヒアルロン酸誘導体が提供される。導入率が前記範囲の場合、ヒアルロン酸誘導体は、塩濃度が一定以上の溶液中(例えば、生理塩濃度下)で顕著に凝集し、沈殿を形成するという性質を有する。前記基導入率のヒアルロン酸誘導体を薬物と複合化させて、体内に投与(例えば皮下)することにより、投与後に凝集する特徴を生かした沈殿型の徐放製剤となりうる。 本発明の上記側面の別の態様によれば、本明細書に定義した疎水性基を導入したヒアルロン酸誘導体であって、当該誘導体に存在する二糖の繰り返し単位に対する疎水性基の導入率が18〜42%である、前記ヒアルロン酸誘導体が提供される。導入率が前記範囲の場合、ヒアルロン酸誘導体は、塩濃度が一定以上の溶液中(例えば、生理塩濃度下)であっても安定な微粒子を形成し、水中で安定に分散するという性質を有する。前記導入率のヒアルロン酸誘導体を薬物と複合化させて、体内に投与(例えば静脈内)することにより、血中徐放製剤および目的組織または細胞へのターゲティング製剤となりうる。 本発明の上記側面のさらに別の態様によれば、本明細書に定義した疎水性基を導入したヒアルロン酸誘導体であって、当該誘導体に存在する二糖の繰り返し単位に対する疎水性基の導入率が2〜50%である、前記ヒアルロン酸誘導体が提供される。前記範囲の導入率は、血中滞留性向上の観点で好ましく、さらに好ましくは8〜35%であり、さらに好ましくは15〜22%である。 式(I)で表される繰り返し単位を1以上含む本発明のヒアルロン酸誘導体は、好ましくは式(II)で表される繰り返し単位から実質的になるヒアルロン酸またはその誘導体、さらに好ましくは、式(II)で表される繰り返し単位のみから構成されるヒアルロン酸またはその誘導体を原料として合成される。原料の重量平均分子量は、血中滞留性向上の観点では、27キロダルトン(kDa)以下が好ましく、18kDa以下がさらに好ましい。分子量の下限は5kDa以上あればよい。当該分子量の好ましい範囲は5〜27kDaであり、さらに好ましくは5〜18kDaである。本発明の別の側面によれば、本発明のヒアルロン酸誘導体は、重量平均分子量が27kDa以下である、式(II)で表される繰り返し単位から実質的になるヒアルロン酸またはその誘導体を原料として製造することができる。当該側面の1つの態様において、本発明のヒアルロン酸誘導体は式(I)および(II)の繰り返し単位から実質的に構成されるヒアルロン酸誘導体である。 前記分子量のヒアルロン酸またはその誘導体を用いて前記導入率で疎水性基を導入した本発明のヒアルロン酸誘導体は、重量平均分子量27kDaを超えるヒアルロン酸あるいはその塩を用いた場合と比較して、あるいは前記疎水性基以外の基で修飾した場合と比較して、血中滞留性が顕著に向上するという性質を有する。前記分子量のヒアルロン酸を原料としたヒアルロン酸誘導体を用いることにより、血中滞留性が良好な全身投与型、特に静脈内投与型の血中徐放製剤および目的組織または細胞へのターゲティング製剤が提供できる。 ここで、前記式(I)中のYは、−(CH2)n1−および−(CH2CH2O)m1−CH2CH2−(ここで、n1は、2〜15、好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜6の整数であり、m1は、1〜4の整数である)であるのが好ましい。具体的には、−(CH2)2−、−(CH2)6−、−(CH2)12−および−(CH2CH2O)2−CH2CH2−が好ましく、−(CH2)2−、−(CH2)6−および−(CH2CH2O)2−CH2CH2−がさらに好ましい。 式(I)におけるXである前記疎水性基としては、−NH−(CH2)2−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)6−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)12−NH−COO−コレステリルおよび−NH−(CH2CH2O)2−CH2CH2−NH−COO−コレステリルが好ましく、−NH−(CH2)2−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)6−NH−COO−コレステリルおよび−NH−(CH2CH2O)2−CH2CH2−NH−COO−コレステリルがさらに好ましい。 本発明の別の側面によれば、式(III):[式中、R1b、R2b、R3b、およびR4bは、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミルおよびC1−6アルキルカルボニルから選択され; Xbは、−NRe−Yb−Rdを表し; Reは、水素原子またはC1−6アルキル基であり; Rdは、水素原子、C1−6アルキル基または基−CO−C(R7)=CH2であり、 Ybは、−CH2−(CHR5)l−2−CH2−NH−、−CH2−(CHR6)p−2−CH2−O−、−(CH2)j−S−、−CH2−CH2−(Y3−CH2−CH2)z−S−、−CH2−CH2−(Y4−CH2−CH2)t−NH−または−CH2−CH2−(Y5−CH2−CH2)y−O−であり、 ここで、l、p、およびjは、それぞれ独立に2〜10から選択される整数であり、z、tおよびyは、それぞれ独立に1〜200から選択される整数であり、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子またはヒドロキシであり、R7は、水素原子またはメチル基であり、Y3、Y4およびY5は、それぞれ独立して、酸素原子または−NH−である]で表される繰り返し単位をさらに含む、ヒアルロン酸誘導体が提供される。本発明の1つの態様において、上記式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位から実質的になるヒアルロン酸誘導体が提供され、さらに別の態様において、上記式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位のみから構成されるヒアルロン酸誘導体が提供される。当該ヒアルロン酸誘導体は、血中滞留性向上の観点からは、好ましくは重量平均分子量が27kDa以下、より好ましくは18kDa以下の、式(II)で表される繰り返し単位のみから構成されるヒアルロン酸またはその誘導体を原料として製造されうる。原料の重量平均分子量の下限は5kDa以上あればよい。当該分子量の好ましい範囲は5〜27kDaであり、さらに好ましくは5〜18kDaである。 存在する二糖の繰り返し単位に対する式(II)で表される繰り返し単位の割合は、50%以下であるのが好ましく、30%以下がさらに好ましく、20%以下がさらに好ましい。その割合の下限は0%以上であればよい。ここでは、ヒアルロン酸誘導体のカルボキシ基の50%以上が、−Z−N(Ra)−Y−X1およびXbなどで修飾されているが、前記重量平均分子量のヒアルロン酸またはその誘導体を原料に用い、式(II)で表される繰り返し単位の割合を前記の通りとした場合、前記疎水性基でカルボキシ基の一部または大部分が修飾されることで、前記疎水性基以外の基のみでカルボキシ基が修飾された場合と比較して、血中滞留性が顕著に向上するという性質を有する。その、存在する二糖の繰り返し単位に対する前記疎水性基の導入率は、2〜70%が好ましく、5〜35%がさらに好ましく、15〜22%がさらに好ましい。 Xbは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。例えば、H2N−CH2−CH2−O−CO−C(CH3)=CH2(第1アミン)およびH2N−CH2−CH2−(O−CH2−CH2)2−NH2(第2アミン)である2種類のアミンを、同時に、または相前後してグルクロン酸部分のカルボキシ基と縮合させることができる。第1アミンにより二重結合が導入されたヒアルロン酸誘導体は、アルキレン基の両端にメルカプト基を有する架橋剤(例えば、ジチオスレイトール:DTT)との架橋反応に供することができる。架橋反応を行うことで、本発明のヒアルロン酸誘導体をゲル化することができる。また、ジアミンである第2アミンをグルクロン酸部分のカルボキシ基と縮合させることにより、もう一方の末端アミノ基を、薬物を結合させるために利用してもよい。この時、利用されることなく残存したアミノ基は、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸および無水アジピン酸などのジカルボン酸無水物などで処理するか、マレイン酸、グルタル酸およびアジピン酸などのジカルボン酸を縮合剤共存下で反応させることで、末端の官能基をカルボキシ基に戻してトータル電荷をアニオン性にすることもできる。 あるいは、H2N−CH2−CH2−O−CO−C(CH3)=CH2(第1アミン)およびH2N−CH2−CH2−OH(第2アミン)である2種類のアミンを、同時に、または相前後してグルクロン酸部分のカルボキシ基と縮合させてもよい。第1アミンにより導入される二重結合を前記と同様に架橋反応に供することができ、また、第2アミンにより修飾されたヒアルロン酸誘導体には血中滞留性の向上を期待することができる。 架橋反応の他の事例としては、アミノ基を導入したヒアルロン酸誘導体(HA−AM)と、C2−20アルキレンの両端にスクシンイミジルエステルやその他のイミドエステルを有する架橋剤(例えば、ビス[スルフォスクシンイミジル]スベレート(BS3)、エチレングリコール−ビス[スルフォスクシンイミジル]スクシネート(Sulfo−EGS)、ジメチルアジピミデート塩酸塩(DMA)など)とので縮合反応による架橋;HA−AMと、C2−20アルキレンの両端にホルミル基を有する架橋剤(例えば、グルタルアルデヒドなど)との架橋;ホルミル基を導入したヒアルロン酸誘導体(HA−ALD)と、C2−20アルキレンの両端にアミノ基を有する架橋剤(例えば、エチレンジアミン(EDA)など)との架橋;メルカプト基を導入したヒアルロン酸誘導体(HA−SH)の酸化条件下(例えば、テトラチオネートナトリウム(STT)存在下など)での酸化反応による架橋;HA−SHと、C2−20アルキレンの両端にマレイミド(MAL)基やメタクリロイル基などの不飽和結合を有する架橋剤(例えば、1,4−ビス−マレイミドブタン(BMB)、ジメタクリル酸エチレン(EDMA)など)とのマイケル付加反応による架橋;アクリロイル基およびメタクリロイル基などの不飽和結合を導入したヒアルロン酸誘導体と各種重合開始剤(例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)/N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、Irgacure2959など)とのラジカル重合による架橋;ジアミン化合物(例えば、EDA、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチレンジアミン)など)共存下、縮合剤(例えば、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン)−4−メチルモルホリウムクロライド(DMT-MM)、2−ベンゾトリアゾール−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム4フッ化ホウ酸塩(TBTU)、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HODhbt)、ベンゾトリアゾール−1−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム6フッ化リン酸塩(PyBOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(BOP)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)またはN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)など)による架橋が挙げられる。上記の架橋形成は、ヒアルロン酸誘導体の分子内であっても、複数のヒアルロン酸誘導体の分子間であってもよい。 本発明のヒアルロン酸誘導体のゲルが有する化学架橋構造は、架橋剤、ポリマーに導入した架橋形成が可能な基、結合様式などに、生体内で分解するものを用いてもよい。特に限定されないが、例えば架橋反応に供する基として、エステル結合およびメタクリロイル基を有する基を用いてもよい。また、架橋剤として、Sulfo−EGSやEDMAなど、エステル結合を有する化合物、または生体内の酵素によって分解されるペプチドスペーサーを有する化合物を用いてもよい。また、メルカプト基の酸化によって形成するジスルフィド結合によって架橋したゲルは、ジスルフィド交換反応や還元反応によって生体で分解される。分解性の化学架橋構造を有することで、本発明のヒアルロン酸誘導体のゲルの生体内での分解速度を制御することができ、これによって薬物の放出速度も制御することが可能である。 Xbの好ましい例としては、−NRi−(CH2)n2−OH(式中、Riは、水素原子であり;n2は2〜10から選択される整数である)が挙げられ、さらに好ましくは−NH−(CH2)2−OHおよび−NH−(CH2)3−OHであるのがが挙げられる。 式(III)で表される繰り返し単位からなるヒアルロン酸誘導体は、WO2006/028110に開示されている。また、ヒアルロン酸のカルボキシ基(−COOH)を−COXaに変換する方法は、当該公報に記載されており、または周知の縮合反応を利用して変換することもできる。 本発明の別の側面において、式(IV):[式中、R2c、R3c、およびR4cは、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミルおよびC1−6アルキルカルボニルから選択され; Xcは、ヒドロキシおよび−O−Q+、から選択され;ここで、Q+は、カウンターカチオンであり; R1cは、 −CO−C(R21)=CH2、 −CH2CH(OH)−R22−Y1、 −CH(CH2OH)−R22−Y1、 −CONH−R23−Y1、 −CO−R23−Y1、 −CONH−CH2CH2−(X21−CH2CH2)n3−Y1、および −CO−CH2CH2−(X21−CH2CH2)n4−Y1から選択され、 X21は、OおよびSから選択され: n3およびn4は、それぞれ1〜50の整数を表し; Y1は、アミノ、メルカプト、ホルミル、−X14−CO−C(R18)=CH2から選択され、 R21は、水素原子またはC1−6アルキルから選択され; R22およびR23は、2価のC2−50炭化水素基または2価のC2−50ポリアルキレンオキシ基であり、前記2価のC2−50炭化水素基は、1〜10個の−O−が挿入されて一部にポリアルキレンオキシ部分が形成されていてもよく; X14は、OおよびN(R19)から選択され; R18は水素原子またはC1−6アルキルであり; R19は水素原子またはC1−6アルキルである]で表される繰り返し単位をさらに含む、本明細書で定義したヒアルロン酸誘導体が提供される。当該側面の1つの態様において、当該ヒアルロン酸誘導体は、上記式(I)、式(II)および式(IV)で表される繰り返し単位のみから;または上記式(I)、式(II)、式(III)および式(IV)で表される繰り返し単位のみから構成される。 本発明のさらに別の側面によれば、本発明のヒアルロン酸誘導体は、好ましくは重量平均分子量27kDa以下の、式(II)で表される繰り返し単位のみから構成されるヒアルロン酸またはその誘導体を原料として合成される。当該側面の1つの態様において、式(I)で表される繰り返し単位、式(II)で表される繰り返し単位および式(IV)で表される繰り返し単位から実質的になるヒアルロン酸誘導体;または式(I)で表される繰り返し単位、式(II)で表される繰り返し単位、式(III)で表される繰り返し単位および式(IV)で表される繰り返し単位から実質的になるのヒアルロン酸誘導体が提供される。 R1cは、N−アセチルグルコサミン部分の6位のヒドロキシの置換基であり、主に架橋性の基である。具体例としては、−CO−C(CH3)=CH2、−CO−CH=CH2、−CH2CH(OH)−CH2CH2−O−CO−C(CH3)=CH2、−CONH−CH2CH2−O−CO−C(CH3)=CH2、−CONH−CH2CH2−(O−CH2CH2)2−O−CO−CH=CH2などが挙げられる。存在する二糖の繰り返し単位に対する式(IV)で表される繰り返し単位の割合は、10〜40%であるのが好ましい。式(IV)で表される繰り返し単位からなるヒアルロン酸誘導体はWO2008/136536に開示されており、ヒアルロン酸のN−アセチルグルコサミン部分の6位のヒドロキシ(−OH)の−OR1cへの変換は、WO2008/136536(特許文献8)の実施例10および14ならびにそれが引用する特開2005−298644およびBiomacromolecules 第6巻、第1829−1834頁、2005年(非特許文献9)を参考にして行うことができる。また、周知のエステル化反応およびエーテル化反応により変換することもできる。 本発明のさらに別の側面によれば、本明細書に定義したヒアルロン酸誘導体を担体として含む医薬組成物が提供される。当該医薬組成物に含まれる活性成分は特に限定されず、例えば、タンパク質および/またはペプチド、多糖類、核酸類、低分子化合物などであってもよい。当該側面の一つの態様において、薬理活性を有するタンパク質またはペプチドと共に、本明細書に定義したヒアルロン酸誘導体を担体として含む医薬組成物が提供される。本発明のヒアルロン酸誘導体は、水中で薬物と複合体を形成することを特徴とする。形成されたヒアルロン酸誘導体と薬物との複合体は分散性微粒子であっても沈殿物であってもよい。 分散性微粒子は、全身投与型、特に静脈内投与型の血中徐放製剤やおよび目的組織または細胞へのターゲティング製剤の基材として用いることができ、沈殿物は局所投与型の徐放製剤の基材として用いることができる。 本発明の別の側面によれば、本明細書で定義したヒアルロン酸誘導体であって、水溶液中において前記疎水性基の疎水性相互作用により自発的会合することで系中に存在する薬物と複合体を形成する前記ヒアルロン酸誘導体が提供される。当該側面の一つの態様において、薬物はタンパク質またはペプチドである。 本発明の別の側面によれば、本明細書で定義したヒアルロン酸誘導体に1以上の薬物が結合した、ヒアルロン酸誘導体−薬物結合体が提供される。当該側面の一つの態様において、薬物はタンパク質またはペプチド、あるいは核酸類または低分子化合物である。 本発明のさらに別の側面によれば、本明細書で定義したヒアルロン酸誘導体と薬物との複合体を水中で形成する工程を含む、医薬組成物の製造方法が提供される。当該側面の一つの態様によれば、以下の工程:(a)本明細書で定義した疎水性基を有するヒアルロン酸誘導体を製造する工程;(b)得られたヒアルロン酸誘導体を水相に溶解または分散させる工程;(c)得られたヒアルロン酸誘導体水溶液または分散液に薬物を加え、薬物担持微粒子を形成させる工程; を含む、医薬組成物の製造方法が提供される。当該医薬組成物が沈殿物の場合は、さらに以下の工程:(d)塩物質を加え、薬物担持微粒子を沈殿させる工程を加えてもよい。上記各工程は、W/Oエマルション中や噴霧液滴中などの不連続相中で行ってもよい。工程(c)において水相中で形成した微粒子または工程(d)において得られた沈殿を乾燥して(例えば、噴霧乾燥または凍結乾燥などによる)固化し、さらに必要に応じて粉砕、乾燥、洗浄工程などを行って、固体として目的の医薬組成物を得てもよい。 本発明のヒアルロン酸誘導体を用いることで、薬物、特に薬効を有するタンパク質やペプチドをその生物活性を維持したまま多量に封入した徐放性製剤を提供することが可能となる。また、ヒアルロン酸誘導体は安全性の面においても優れており、医薬製剤の担体として特に優れている。また、薬物と本発明のヒアルロン酸誘導体とを結合させたコンジュゲートにすることで、薬物の血中滞留性を向上させることができる。図1は、実施例1−1で調製したコレステリル 6−アミノヘキシルカーバメート塩酸塩の1H−NMRスペクトルの一例である。図2は、実施例1−2で調製したコレステリル 2−アミノエチルカーバメート塩酸塩の1H−NMRスペクトルの一例である。図3は、実施例1−3で調製したコレステリル 8−アミノオクチルカーバメート塩酸塩の1H−NMRスペクトルの一例である。図4は、実施例1−4で調製したコレステリル 12−アミノドデシルカーバメート塩酸塩の1H−NMRスペクトルの一例である。図5は、実施例2−2で調製した、50kDaのヒアルロン酸ナトリウム塩を出発原料とするヒアルロン酸テトラブチルアンモニウム塩の1H−NMRスペクトルの一例である。図6は、実施例2−3−1で調製したコレステリル 6−アミノヘキシルカーバメートを導入したHA誘導体(HA−C6−Chol)の1H−NMRスペクトルの一例である。図7は、実施例2−3−2で調製したコレステリル 2−アミノエチルカーバメートを導入したHA誘導体(HA−C2−Chol)の1H−NMRスペクトルの一例である。図8は、実施例2−3−3で調製したコレステリル 8−アミノオクチルカーバメートを導入したHA誘導体(HA−C8−Chol)の1H−NMRスペクトルの一例である。図9は、実施例2−3−4で調製したコレステリル 12−アミノドデシルカーバメートを導入したHA誘導体(HA−C12−Chol)の1H−NMRスペクトルの一例である。図10−1は、実施例2−3−1で得られたHA誘導体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、保持時間の変化からHA誘導体の会合体形成を観察した結果(実施例3)を表すチャートの一例である。図10−2は、実施例2−3−2で得られたHA誘導体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、保持時間の変化からHA誘導体の会合体形成を観察した結果(実施例3)を表すチャートの一例である。図10−3は、実施例2−3−4で得られたHA誘導体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、保持時間の変化からHA誘導体の会合体形成を観察した結果(実施例3)を表すチャートの一例である。図10−4は、実施例2−3−3で得られたHA誘導体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、保持時間の変化からHA誘導体の会合体形成を観察した結果(実施例3)を表すチャートの一例である。図11−1は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)を添加して、実施例2−3−1で得られた試料をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、保持時間の変化からHA誘導体の会合体の崩壊を観察した結果(実施例4)を表すチャートの一例である。図11−2は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)を添加して、実施例2−3−2で得られた試料をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、保持時間の変化からHA誘導体の会合体の崩壊を観察した結果(実施例4)を表すチャートの一例である。図11−3は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)を添加して、実施例2−3−4で得られた試料をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、保持時間の変化からHA誘導体の会合体の崩壊を観察した結果(実施例4)を表すチャートの一例である。図11−4は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)を添加して、実施例2−3−3で得られた試料をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、保持時間の変化からHA誘導体の会合体の崩壊を観察した結果(実施例4)を表すチャートの一例である。図12は、実施例5および6で行ったサイズ排除クロマトグラフィーの結果を表すチャートの一例である。図13は、実施例7−1で算出した溶液中のHA誘導体の残存率をHA誘導体の疎水性基導入率に対してプロットしたグラフである。図14は、実施例7−2で算出した溶液中のHA誘導体の残存率をNaCl濃度に対してプロットしたグラフである。図15は、実施例8において測定したサイズ排除クロマトグラフィーのチャートである。図16は、実施例9−1で調製したコレステリル 8−アミノ−3,6−ジオキサオクチルカーバメート(Chol−EO2)の塩酸塩の1H−NMRスペクトルの一例である。図17は、実施例9−2で調製したコレステリル 8−アミノ−3、6−ジオキサオクチルカーバメートを導入したHA誘導体(HA−EO2−Chol)の1H−NMRスペクトルの一例である。図18は、実施例10で調製した2−アミノエチル コレステリル ジスルフィドを導入したHA誘導体(HA−SS−Chol)の1H−NMRスペクトルの一例である。図19は、実施例11で調製したコレステリル 2−アミノエチルカーバメートおよびアミノエチルメタクリレートを導入したHA誘導体(HA−C2−Chol/AEMA)の1H−NMRスペクトルの一例である。図20は、実施例13で調製した5−アミノメチルフルオレセイン、コレステリル 6−アミノヘプチルカーバメートおよびエタノールアミンを導入したHA誘導体(HA−C6−Chol/C2−OH/FL)の1H−NMRスペクトルの一例である。図21は、HA誘導体(50k HA−C6−Chol−22%/FL)の粒子サイズを、動的光散乱法(DLS)にて測定した結果を表すチャートの一例である。図22−1は、実施例18−1におけるコレステリル基を導入したHA誘導体とリゾチームとの複合体調製の結果を示すグラフであり、縦軸は(複合体中のLys重量/HA誘導体重量)×100の値(複合化%)、横軸はユニット当たりの疎水基導入率(%)を示す。図22−2は、実施例18−2におけるコレステリル基を導入したHA誘導体とエキセンディン−4との複合体調製の結果を示すグラフであり、縦軸は(複合体中のEx−4重量/HA誘導体重量)×100の値(複合化%)、横軸はユニット当たりの疎水基導入率(%)を示す。図22−3は、実施例18−3におけるコレステリル基を導入したHA誘導体とヒト成長ホルモンとの複合体調製の結果を示すグラフであり、縦軸は(複合体中のhGH重量/HA誘導体重量)×100の値(複合化%)、横軸はユニット当たりの疎水基導入率(%)を示す。図22−4は、実施例18−4におけるコレステリル基を導入したHA誘導体とエリスロポエチンとの複合体調製の結果を示すグラフであり、縦軸は(複合体中のEPO重量/HA誘導体重量)×100の値(複合化%)、横軸はユニット当たりの疎水基導入率(%)を示す。図23−1は、ウシ血清アルブミン(20mg/mL)溶液中におけるコレステリル基を導入したHA誘導体からのエリスロポエチンの放出を示すグラフの一例であり、縦軸はリリースされたエリスロポエチンの量、横軸は経過時間を示す。図23−2は、濃度の異なるウシ血清アルブミン溶液中におけるコレステリル基を導入したHA誘導体(HA−C12−Chol−7%)からのエリスロポエチンの放出を示すグラフの一例であり、縦軸はリリースされたエリスロポエチンの量、横軸は経過時間を示す。図24は、ラットにおける皮下ならびに尾静脈投与時のヒト成長ホルモンの血漿中濃度推移の結果を示すグラフの一例である。図25は、実施例20−4で使用したhGH/HA誘導体複合体の製剤サンプルの写真である。図26−1は、表23−1のサンプル20−1〜サンプル20−4のhGH/HA誘導体複合体投与時のhGHの96時間までの血漿中濃度推移と、比較例1のhGH溶液の血漿中濃度推移を併せて示すグラフである。図26−2は、表23−1のサンプル20−1〜サンプル20−4のhGH/HA誘導体複合体投与時のhGHの24時間までの血漿中濃度推移と、比較例1のhGH溶液の血漿中濃度推移を併せて示すグラフである。図27−1は、表23−1のサンプル20−4〜サンプル20−6のhGH/HA誘導体複合体投与時のhGHの96時間までの血漿中濃度推移と、比較例1のhGH溶液の血漿中濃度推移を併せて示すグラフである。図27−2は、表23−1のサンプル20−4〜サンプル20−6のhGH/HA誘導体複合体投与時のhGHの24時間までの血漿中濃度推移と、比較例1のhGH溶液の血漿中濃度推移を併せて示すグラフである。図28は、表23−1のサンプル20−1〜サンプル20−6のhGH/HA誘導体複合体と、比較例1のhGH溶液の平均滞留時間(MRT)を示すグラフである。図29は、比較例2−1〜2−3で調製した蛍光標識HA誘導体を投与したラットにおける、蛍光標識HA誘導体の血漿中濃度の推移を示すグラフである。図30−1は、実施例12ならびに実施例15で調製した蛍光標識HA誘導体を投与したラットにおける、蛍光標識HA誘導体の血漿中濃度の推移を示すグラフである。図30−2は、表28の血漿中濃度−時間曲線下面積外挿値(AUC∞)と分子量の関係を示すグラフである。縦軸はAUC∞、横軸は原料のHA−Naの分子量である。図31は、表29のサンプル21−2、21−8および21−9の蛍光標識HA誘導体を投与したラットにおける、蛍光標識HA誘導体の血漿中濃度の推移を示すグラフである。図32−1は、表31のサンプル21−2および21−10の蛍光標識HA誘導体を投与したラットにおける、蛍光標識HA誘導体の血漿中濃度の推移を示すグラフである。図32−2は、表31のサンプル21−5、21−11および21−12の蛍光標識HA誘導体を投与したラットにおける、蛍光標識HA誘導体の血漿中濃度の推移を示すグラフである。図33は、表33のサンプル21−13の蛍光標識HA誘導体を投与したラットにおける、蛍光標識HA誘導体の血漿中濃度の推移を示すグラフである。図34−1は、表35の蛍光標識HA誘導体(10k HA−C6−Chol−22%/FL)を皮下投与および静脈内投与したラットにおける、蛍光標識HA誘導体の血漿中濃度の推移を示すグラフである。図34−2は、表35の蛍光標識HA誘導体(10k HA−C6−Chol−19%/C2−OH/FL−95%)を皮下投与および静脈内投与したラットにおける、蛍光標識HA誘導体の血漿中濃度の推移を示すグラフである。図35−1は、表37の蛍光標識HA誘導体(10k HA−C6−Chol−22%/FL)を静脈内投与したラットでの蛍光標識HA誘導体の血漿中濃度の推移において、ヒアルロン酸ナトリウムの先行投与の影響を確認した実験結果を示すグラフである。図35−2は、表34の蛍光標識HA誘導体(50k HA−C6−Chol−27%/FL)を皮下投与および静脈内投与したラットでの蛍光標識HA誘導体の血漿中濃度の推移において、ヒアルロン酸ナトリウムの先行投与の影響を確認した実験結果を示すグラフである。図36−1は、実施例21−1での測定後のサンプル21−2(5分から2時間までの試料)についてSEC分析を行った結果を示すクロマトグラムである。図36−2は、実施例21−1での測定後のサンプル21−2(1日から4日までの試料)についてSEC分析を行った結果を示すクロマトグラムである。図37−1は、比較例2−4の薬物動態試験で用いたラット(比較サンプル2−2)から採取した尿サンプルについてSEC分析を行った結果を示すクロマトグラムである。図37−2は、実施例21−1の薬物動態試験で用いたラット(サンプル21−2)から採取した尿サンプルについてSEC分析を行った結果を示すクロマトグラムである。図37−3は、実施例21−1の薬物動態試験で用いたラット(サンプル21−5)から採取した尿サンプルについてSEC分析を行った結果を示すクロマトグラムである。図37−4は、実施例21−1の薬物動態試験で用いたラット(サンプル21−6)から採取した尿サンプルについてSEC分析を行った結果を示すクロマトグラムである。図37−5は、実施例21−1の薬物動態試験で用いたラット(サンプル21−7)から採取した尿サンプルについてSEC分析を行った結果を示すクロマトグラムである。図38は、実施例22で算出した溶液中のHA誘導体の残存率をHA誘導体の疎水性基導入率に対してプロットしたグラフである。図39は、実施例2−3ならびに実施例14で調製したHA誘導体とドキソルビシンを混合し、限外ろ過したろ液を逆相ロマトグラフィーに供してフリーのドキソルビシン量を観察した結果(実施例23)を表すチャートである。図40は、実施例16で調製したHilyte標識HA誘導体ならびに実施例24で調製した50k HA−Hilyteをゼノグラフトマウスに投与し、腫瘍への集積をin vivo イメージング装置にて評価した写真である。図41は、Hilyte標識HA誘導体ならびに50k HA−Hilyteを投与したゼノグラフトマウスの腫瘍の蛍光強度をプロットしたグラフである。図42は、実施例11で調製したHA−Chol/AEMAをDTTにて架橋させ、ゲル化した状態を撮影した写真である。 以下、本発明を更に具体的に説明する。 本明細書で言及する用語「ステリル基」とは、ステロイド骨格を有する基であれば特に制限されない。ここでステロイドとしては、具体的には、コレステロール、コレスタノール、カンペスタノール、エルゴスタノール、スチグマスタノール、コプロスタノール、スチグマステロール、シトステロール、ラノステロール、エルゴステロール、シミアレノール、胆汁酸、テストステロン、エストラジオール、プロゲステロン、コルチゾール、コルチゾン、アルドステロン、コルチコステロン、デオキシコルチコステロンなどが挙げられる。ステリル基としては、コレステリル基、スチグマステリル基、ラノステリル基、エルゴステリル基などが挙げられ、好ましくはコレステリル基(特に、コレスタ−5−エン−3β−イル基)が挙げられる。 本明細書で言及する用語「C1−20アルキル」とは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチルなどの「C1−4アルキル」が含まれ、さらに、n−ペンチル、3−メチルブチル、2−メチルブチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、4−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチル、3−エチルブチル、および2−エチルブチルなどが含まれる。C1−20アルキルには、炭素数が1〜12のC1−12アルキル、炭素数が1〜6のC1−6アルキル基も含まれる。 本明細書で言及する用語「C1−6アルキルカルボニル」とは、アルキル部分が既に言及したC1−6アルキルであるアルキルカルボニル基を意味し、例えば、アセチル、プロピオニル、n−プロピルカルボニル、i−プロピルカルボニル、n−ブチルカルボニル、s−ブチルカルボニル、i−ブチルカルボニル、t−ブチルカルボニルなどの「C1−4アルキルカルボニル」が含まれる。 本明細書で言及する用語「アミノC2−20アルキル」は、置換基としてアミノ基を有する炭素数2〜20の直鎖状、分岐鎖状のアルキルを意味し、例えば、アミノ基はアルキル基の末端の炭素原子上に位置していてもよい。 本明細書で言及する用語「ヒドロキシC2−20アルキル」は、置換基としてヒドロキシ基を有する炭素数2〜20の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基を意味し、例えば、ヒドロキシ基はアルキル基の末端の炭素原子上に位置していてもよい。 本明細書で言及する用語「C2−30アルキレン」とは、炭素数2〜30の直鎖状または分岐鎖状の2価の飽和炭化水素基を意味し、例えば、エチレン、プロピレンなどを含み、C2−20アルキレン、C2−8アルキレン、基−(CH2)n−(ここで、nは2〜30、好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜15)を含む。 本明細書で言及する用語「C1−30アルキレン」とは、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状の2価の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレンなどを含む。 本明細書で言及する用語「C2−8アルケニレン」とは、炭素数2〜8の直鎖状または分岐鎖状の、1以上の二重結合を含む、2価の飽和炭化水素基を意味し、例えば、−CH=CH−、−C(CH3)=CH−、2−ブテン−1,4−ジイル、ヘプタ−2,4−ジエン−1,6−ジイルおよびオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジイルなどを含む。幾何異性が存在する場合は、それぞれの異性体およびそれらの混合物も含まれる。 本明細書で言及する「2価のC2−50炭化水素基」は特に限定されず、その例として、炭素数2〜50の直鎖状、分岐鎖状、環状および一部が環状のアルキレン基、アルケニレン基およびアルキニレン基が挙げられ、当該基は2価の芳香族環であってもよく、または芳香族環を構造の一部に含んでいてもよい。 本明細書で言及する「2価のC2−50ポリアルキレンオキシ」は特には限定されず、繰り返し単位のアルキレン基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。「2価のC2−50ポリアルキレンオキシ」の例には、2価のC2−50ポリエチレンオキシ基、C3−48ポリプロピレンオキシ基、C3−48ポリブチレンオキシ基などが含まれる。当該基は、酸素原子または炭素原子を介して他の基と連結していてよく、例えばC2−50ポリエチレンオキシ基には、−O(CH2CH2O)1−25−、−(CH2CH2O)1−25−、−(OCH2CH2)1−25−、−(CH2CH2O)1−24−(CH2CH2)−などが含まれる。 本明細書で言及する用語「塩物質」とは、水に可溶な無機物であれば特に限定されず、例えば、塩化カルシウム、リン酸カルシウム等のカルシウム塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等のアルミニウム塩、硫酸カリウム、炭酸カリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等のカリウム塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等のナトリウム塩、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム塩が挙げられ、好ましくは、塩化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。 本発明のヒアルロン酸誘導体を製造するための原料としては、ヒアルロン酸またはその塩もしくはその誘導体を使用することができる。ヒアルロン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩を挙げることができ、特に好ましい塩は、医薬品として繁用されているナトリウム塩である。HAまたはその薬学的に許容される塩は、鶏冠や豚皮下等の生物由来のものを抽出する方法や生物発酵法等の各種公知の方法を用いて製造することができ、あるいは市販のものを購入して(例えば、電気化学工業株式会社、株式会社資生堂、生化学工業株式会社、R&D system社等から)入手することも可能である。 本発明のヒアルロン酸誘導体の分子量は特に限定はされないが、局所投与における拡散遅延由来の徐放機能を期待する場合には粘度および分子量の高いヒアルロン酸が好ましく、最終剤形が溶液製剤の場合、スムーズな投与のため粘度および分子量の低いヒアルロン酸が好ましい。従って、ヒアルロン酸誘導体の分子量は、1kDa〜1,000kDaが好ましく、10kDa〜300kDaがさらに好ましい。目的物の分子量は、一般的には、対応する分子量を有する原料を使用することにより調節することができる。前述した、沈殿形成および安定な分散という観点で好ましい本発明のヒアルロン酸誘導体の原料の分子量は、10kDa〜500kDaであり、さらに好ましくは27kDa〜230kDaであり、さらに好ましくは50kDa〜230kDaであり、さらに好ましくは50kDa〜99kDaである。血中滞留性向上の観点で好ましい本発明のヒアルロン酸誘導体の原料の分子量は、5kDa〜27kDaであり、さらに好ましくは5kDa〜18kDaである。ゲル化の観点で好ましい本発明のヒアルロン酸誘導体の原料の分子量は、5kDa〜300kDaであり、さらに好ましくは5kDa〜50kDaであり、さらに好ましくは5kDa〜27kDaである。 なお、一般的に、ヒアルロン酸およびその誘導体は単一品として得ることが難しいため、その分子量は、数平均分子量または重量平均分子量として算出する。本発明においては、重量平均分子量として算出している。重量平均分子量の測定方法については、例えば、中浜精一他著「エッセンシャル高分子科学」(講談社発行、ISBN4−06−153310−X)に記載された、光散乱法、浸透圧法、粘度法等、各種の公知の方法を利用することができ、本明細書において示される粘度平均分子量もウベローデ粘度計を使用するなど、本発明が属する技術分野において通常用いられる方法により測定することができる。分子量を明示して市販されているヒアルロン酸およびその誘導体を使用する場合は、その明示された数値を分子量とすることもできる。 本発明のヒアルロン酸誘導体は、繰り返し単位を構成する二糖の一つであるグルクロン酸のカルボキシ基をアミドに変換して、疎水性基を導入している。ヒアルロン酸誘導体の修飾の程度を調節することにより、当該誘導体を用いて製造する製剤の体内動態を制御することも可能である。 ヒアルロン酸誘導体のグルクロン酸部分のカルボキシ基修飾率が低い場合、例えば、存在するカルボキシ基のうちの50%以下が修飾されている場合、炎症部位や腫瘍部位に大量に発現しているCD44を始めとするヒアルロン酸レセプターや、ヒアルロン酸の主な代謝系である肝臓、リンパ系へのターゲティング効果を期待できる。例えば、変形性関節症やリウマチ患者の炎症を起こした滑膜細胞へのターゲッティング、レセプター依存型のエンドサイトーシスによる細胞内への取り込み、細胞内での薬物放出による炎症治癒が期待できる。 また、ヒアルロン酸誘導体のグルクロン酸部分のカルボキシ基修飾率が高ければ、ヒアルロン酸レセプターへの結合が抑制され、当該ヒアルロン酸誘導体は体内でステルス効果をもつ滞留性の長い薬物担体となる。この場合、EPR効果(Enhanced Permeation and Retention effect)を利用した腫瘍細胞へのターゲッティング効果も期待できる。さらにヒアルロン酸誘導体にターゲット素子を導入することにより、各臓器ならびに細胞へターゲッティングすることができる。ターゲット素子としては、例えば、標的組織特異的なペプチド、抗体、断片化抗体、アプタマー、がん細胞に対するRGDペプチド、葉酸、アニサミド、トランスフェリン、肝臓に対するガラクトース、トコフェロールなどがある。 なお、ゲル化する場合は、ヒアルロン酸誘導体のグルクロン酸部分のカルボキシ基修飾率は、低くても、高くてもよい。 ヒアルロン酸誘導体のグルクロン酸部分のカルボキシ基の疎水性基による修飾率、すなわち疎水性基の導入率は、薬物、好ましくはタンパク質との複合体形成の観点では、2〜60%が好ましく、さらに2〜50%、さらに2〜40%、さらに5〜20%、さらに7〜15%が好ましい。前述の沈殿形成の観点では、7〜15%が好ましく、安定な分散という観点では、18〜42%が好ましい。血中滞留性向上の観点では、2〜50%が好ましく、8〜35%がさらに好ましく、15〜22%がさらに好ましい。ゲル化の観点では、2〜30%が好ましく、2〜22%がさらに好ましく、5〜22%がさらに好ましく、7〜22%がさらに好ましい。 本発明のヒアルロン酸誘導体の原料の分子量と疎水性基の導入率の組み合わせとしては、前述の沈殿形成の観点では、27kDa〜230kDaかつ7〜15%が好ましく、50kDa〜230kDaかつ7〜15%がさらに好ましく、50kDa〜99kDaかつ7〜15%がさらに好ましい。安定な分散という観点では、27kDa〜230kDaかつ18〜42%が好ましく、50kDa〜230kDaかつ18〜42%がさらに好ましく、50kDa〜99kDaかつ18〜42%がさらに好ましい。血中滞留性向上の観点では、5kDa〜27kDaかつ2〜50%が好ましく、5kDa〜27kDaかつ8〜35%がさらに好ましく、5kDa〜18kDaかつ8〜35%がさらに好ましく、5kDa〜18kDaかつ8〜35%がさらに好ましく、5kDa〜18kDaかつ15〜22%がさらに好ましい。ゲル化の観点では、5kDa〜300kDaかつ2〜30%が好ましく、5kDa〜50kDaかつ2〜22%がさらに好ましく、5kDa〜27kDaかつ2〜22%がさらに好ましく、5kDa〜27kDaかつ7〜22%がさらに好ましい。 本発明のヒアルロン酸誘導体を製造するために、グルクロン酸のカルボキシ基をアミドに変換し疎水性基を導入する方法としては、例えば、原料のヒアルロン酸またはその誘導体、好ましくは、式(II)で表される繰り返し単位のみから構成されるヒアルロン酸またはその誘導体を、テトラアルキルアンモニウム塩(例えば、テトラブチルアンモニウム(TBA)塩)にイオン交換し、適当な縮合剤存在下、溶媒中で当該ヒアルロン酸塩と式:HNRa−Y−NRb−R、NHRa−Y−NRb−COO−R、HNRa−Y−NRb−COO−R、HNRa−Y−NRb−CO−R、HNRa−Y−NRb−CO−NRc−R、HNRa−Y−COO−R、HNRa−Y−O−COO−R、HNRa−Y−S−R、HNRa−Y−CO−Ya−S−R、HNRa−Y−O−CO−Yb−S−R、HNRa−Y−NRb−CO−Yb−S−R、HNRa−Y−S−S−R、および−Z−NRa−Y−NRb−COO−R(式中、Ra、Rb、Rc、Y、Ya、Yb、ZおよびRは本明細書で既に定義したとおりである)で表される疎水性基を導入したアミンとを反応させる方法が挙げられる。 上記の反応において使用することができる縮合剤は特に限定されず、例えば、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン)−4−メチルモルホリウム(DMT−MM)、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、2−ベンゾトリアゾール−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム4フッ化ホウ酸塩(TBTU)、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HODhbt)、ベンゾトリアゾール−1−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム6フッ化リン酸塩(PyBOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(BOP)または1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)またはN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などを挙げることができる。 特に、限定はされないが、DMT−MMは水および有機溶媒の混合溶媒中でも反応が高効率に進む点において好ましい。また、DMT−MMを縮合剤として使用することにより、多数のヒドロキシが共存する系において、エステル結合形成を抑えつつ、高選択的にアミノ基とカルボキシ基によるアミド結合形成を行うことができる。この縮合剤の使用により、例えば、溶媒であるアルコールがヒアルロン酸部分のカルボキシ基と反応することや、ヒアルロン酸部分に同時に存在するカルボキシ基とヒドロキシとが、分子内もしくは分子間で結合して、望まない架橋を形成してしまうことを防ぐことができる。 疎水性基導入反応において用いる溶媒としては、水、DMSO、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトニトリル、DMF、THF、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。例えば、疎水性基の導入率が18〜42%の時は、疎水性基の導入後に形成する微粒子の沈殿の抑制および溶媒中での分散性の観点から、反応溶媒としてDMSOのみを使用するのが好ましい。 あるいは、原料のヒアルロン酸またはその誘導体を、テトラアルキルアンモニウム塩(例えば、テトラブチルアンモニウム(TBA)塩)にイオン交換し、適当な縮合剤存在下、溶媒中で当該ヒアルロン酸塩とスペーサー部分を反応させ(この際、必要に応じて保護及び脱保護反応を行ってもよい)、原料のヒアルロン酸またはその誘導体のカルボキシ基(−COOH)を変換し、その後に適当な試薬と反応させてもよい。カルボキシ基から誘導される基と、反応試薬の組み合わせの例を以下に示す。 −CONRa−Y−NRbH + Hal−R、 −CONRa−Y−NRbH + Hal−COOR、 −CONRa−Y−NRbH + HOCO−R、 −CONRa−Y−NRbH + Hal−CO−R、 −CONRa−Y−NRb−COOH + HNRc−R、 −CONRa−Y−NRb−CO−NRcH + Hal−R、 −CONRa−Y−NRbH + HOCO−NRc−R、 −CONRa−Y−NRbH + Hal−CO−NRc−R、 −CONRa−Y−COOH + HO−R、 −CONRa−Y−OH + Hal−COO−R、 −CONRa−Y−OCOOH + HO−R、 −CONRa−Y−OCOOH + Hal−R、 −CONRa−Y−OCO−Hal + HO−R、 −CONRa−Y−SH + Hal−R、 −CONRa−Y−Hal + HS−R、 −CONRa−Y−CO−Ya−Hal + HS−R −CONRa−Y−CO−Ya−SH + Hal−R、 −CONRa−Y−O−CO−CH=CH2 + HS−R、 −CONRa−Y−NRb−CO−CH(CH3)=CH2 + HS−R、 −CONRa−Y−SH + HS−R、 −COZ−OH + HNRa−Y−NRb−COO−R、 −COZ−NRa−Y−NRbH + Hal−COO−R(式中、Ra、Rb、Rc、Y、Ya、Yb、およびZは本明細書で既に定義したとおりであり、Halは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素から選択されるハロゲン原子を表す)。 反応様式としては、脱ハロゲン化水素反応、縮合反応、脱水反応、マイケル付加等の求核付加反応、酸化的なジスルフィド形成反応等が挙げられ、これらは周知な反応であり、当業者が適宜選択し、好ましい反応条件を見出して行うことができる。変換体または反応物がカルボキシ基を有する場合は、N−ヒドロキシコハク酸イミド(以下、「NHS」とも称す)エステルとし、反応させてもよい。 また、原料のヒアルロン酸またはその誘導体のカルボキシ基に、2−アミノエチル 2−ピリジル ジスルフィドを反応させて、末端に脱離基で修飾されたメルカプト基を有するスペーサーが導入されたヒアルロン酸誘導体を調製し、これにチオコレステロールを求核置換反応させてジスルフィド結合を形成する方法を挙げることもできる。 さらに、ヒアルロン酸またはその誘導体のカルボキシ基にスペーサーの一部を導入したものと、ステリル基にスペーサーの一部を導入したものを調製し、これらを反応させる方法を挙げることもできる。具体例の一部は上述したが、さらに、Yに−S−S−が挿入されている場合は、ヒアルロン酸のカルボキシ基に、末端にメルカプト基を有するスペーサーが導入されたヒアルロン酸誘導体と、末端にメルカプト基を有するスペーサーが導入されたステリル基をそれぞれ調製し、これらを酸化的に反応させてジスルフィド結合を形成させる方法を挙げることもできる。このとき、一方のメルカプト基を2−メルカプトピリジンと反応させてジスルフィドとした後に、他方のメルカプト基と置換させることもできる。 また、本発明のヒアルロン酸誘導体を調製後、さらに他の置換基を導入してもよい。例えば、式(I)で表される繰り返し単位、および式(II)で表される繰り返し単位から実質的になるヒアルロン酸誘導体におけるカルボキシ基の0.1〜99.5%、好ましくは10〜40%を、−CO−Xz、[ここで、Xzは、以下の基: −NH−(CH2)p1−O−CO−C(R17)=CH2; −NH−(CH2)p1−O−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH; −NH−(CH2)p1−SH; −NH−(CH2)p1−NH−CO−C(R17)=CH2; −NH−(CH2)p1−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH; −NH−(CH2)p1−NH−CO−(CH2)r−SH; −NH−(CH2)p1−NH−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH; −NH−(CH2)p1−NH−CO−CH(NH2)−CH2−SH; −NH−(CH2)p1−NH−CO−CH(NH2)−(CH2)2−SH; −NH−NH−CO−(CH2)4−CO−NH−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−O−CO−C(R17)=CH2; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−O−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−C(R17)=CH2; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−(CH2)r−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−CH(NH2)−CH2−SH; −NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−CH(NH2)−(CH2)2−SH; −NH−CH(CO2H)−(CH2)−SH; −NH−CH(CO2H)−(CH2)2−SH;および −NH−CH(CO2H)−(CH2)2−CONH−CH(CONH−CH2−CO2H)−CH2−SH(ここで、R17は、水素原子またはC1−6アルキル基であり、p1は2〜10の整数、qは1〜200の整数、rは1〜3の整数を、それぞれ表す)から選択される]に変換することで、分子内あるいは他分子を含めた分子間で架橋させてゲル化することもできる。 本発明のヒアルロン酸誘導体を、化学架橋によりゲル化させる工程は、適宜その条件を選択してもよい。架橋の条件とは、架橋方法、ポリマー濃度、架橋剤濃度、溶媒、溶媒pH、塩濃度、温度、時間などがある。 本発明のヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程において、架橋形成の反応条件の中で、例えば化学架橋時のポリマー濃度および架橋形成が可能な基の導入率を高くすることで、生成するゲルの架橋密度を高くすることが可能である。 本発明のヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程における架橋剤濃度は、両端に架橋形成が可能な基を有するものを使用する場合、当該基が過不足なく速やかに架橋反応に関与できるような濃度で添加することが好ましい。例えば、メタクリロイル基を導入したポリマーをDTTを用いてマイケル付加反応により架橋する場合は、MA基:SH基=3:1〜1:3が好ましく、2:1〜1:2が特に好ましい。 本発明のヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程における溶媒は、ポリマーおよび架橋剤を充分に溶解することができるものが好ましく、特に限定されないが、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)およびこれらから選択される混合溶媒を用いることが好ましい。また、これらの溶媒に混和する有機溶媒を混合して使用することも可能である。特に限定されないが、混和する有機溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられる。 本発明のヒアルロン酸誘導体は、水溶液中においてナノ微粒子を形成するため、希薄な条件化において架橋することにより、ナノサイズの微粒子ゲルを形成することができ、血中除放キャリア、ターゲティングキャリアとして用いることができる。希薄な条件とは10mg/mL以下であり、好ましくは5mg/mL以下、さらに好ましくは1mg/mL以下である。一方、高濃度な条件下において架橋することにより、微粒子同士が架橋した、バルク状のゲルを形成することができる。これは皮下徐放型のキャリアとして有用である。高濃度な条件とは5mg/mL以上であり、好ましくは20mg/mL以上、さらに好ましくは40mg/mLである。 本発明のヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程は、バルクで行ってもよく、エマルション中や噴霧液滴中などの不連続相中で行ってもよい。例えば、W/Oエマルション中で行う場合は、ポリマーや架橋剤などを溶解させた水相を、水に混和しない溶媒中に乳化し、ゲル化反応を行えばよい。水に混和しない溶媒とは、特に限定されないが、例えばヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、流動パラフィン、大豆油などが挙げられる。乳化を安定化するための界面活性剤を添加してもよい。また、例えば、超臨界二酸化炭素中やPEG中など脱溶媒が可能な溶媒中で行ってもよい。この場合は、ポリマーや架橋剤などを溶解させた水相や有機溶媒相を、前例の溶媒中に乳化、分散することで、脱溶媒(溶媒拡散)に伴うポリマーの濃縮が成されることから、より高い架橋密度のゲルを得ることが可能になる。 本発明のヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程、およびその後に、架橋反応を停止する操作および残存した架橋性官能基を失活もしくは洗浄する操作を行ってもよい。反応に関与しなかった架橋性官能基、架橋剤の片端のみが結合した基、残存した架橋剤などは、安全性の観点、保存中安定性の観点、封入される薬物との副反応などの観点から除去した方が好ましい。特に限定されないが、例えば、未反応の架橋剤が残存している場合は、過剰の水などで洗浄することで除去してもよい。また、例えばポリマーに置換したメタクリロイル基が残存する場合は、過剰のメルカプトエタノールなどを添加し、メタクリロイル基を失活させた後、過剰の水などで余剰のメルカプトエタノールを洗浄することで除去してもよい。さらには、例えばメルカプト基が残存する場合は、過剰の3−マレイミドプロピオン酸、ヨード酢酸などを添加し、メルカプト基を失活させた後、過剰の水などで余剰の3−マレイミドプロピオン酸、ヨード酢酸を洗浄することで除去してもよい。 本発明のヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程の後に、粉砕工程を行ってもよい。粉砕方法としては、乳棒と乳鉢を用いる粉砕やミルを用いる粉砕が挙げられるが、ミルを用いる粉砕が好ましい。ミル粉砕装置としては、遠心式粉砕機(日本精機製作所)およびインパクトミル(株式会社ダルトン)等の回転円板型の粉砕装置、アトマイザー(東京アトマイザー製造株式会社)、サンプルミル(東京アトマイザー製造株式会社)、バンタムミル(東京アトマイザー製造株式会社)、およびSKミル(トッケン)等のスクリーンミルの粉砕装置、超微少量ラボジェットミル(A−Oジェットミル、セイシン企業)等のジェット粉砕装置、並びに、超低温での粉砕が可能なリンレックスミル(リキッドガス株式会社)等が挙げられるが、SKミルおよびリンレックスミルが好ましい。 本発明のヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程の後に、乾燥工程を行ってもよい。乾燥方法としては、例えば通風乾燥、恒温槽中での乾燥、減圧乾燥、熱風循環式乾燥などが挙げられる。風速、乾燥時間、温度、圧力などは本発明のゲルが分解や変質を生じない範囲で適宜選択される。 本発明のヒアルロン酸誘導体のゲルに薬物を封入することで医薬品組成物とすることができる。 薬物封入方法として、あらかじめ架橋されたヒアルロン酸誘導体ゲルに薬物溶液を添加する方法が挙げられる。当該方法では、まず、膨潤したゲル内部へ拡散によって薬物が吸収され、吸収された薬物は、ヒアルロン酸誘導体ゲルの疎水性相互作用による物理架橋ドメインに保持されることによって薬物が封入される。特に限定されないが、溶媒、塩濃度、pH、温度、時間、変性剤の添加などの条件は、薬物が安定でかつ高収率で封入されるように適宜選択してよい。例えば、薬物封入時の塩濃度やpHによって、ヒアルロン酸誘導体ゲルの膨潤度や密度が変化し、薬物の電離状態なども変わるため、その組み合わせによって適宜、適した条件を使用すればよい。薬物の封入を低塩濃度下で行うことで、ヒアルロン酸誘導体のカルボキシ基同士の静電反発を利用し、ゲル密度を減少させ、薬物封入量を増加させることや、より高分子量の薬物を封入することができる。薬物封入後、塩濃度を上昇させることにより静電反発を弱め、ゲル密度を上昇させ、ゲル網目を薬物サイズより小さくすることにより、強固に薬物を保持し、放出を遅らせることが可能となる。この際、塩濃度を生理塩濃度とすることもできる。 また、薬物封入方法として、本発明のヒアルロン酸誘導体に薬物を複合化させた後、架橋することでゲル化させる方法が挙げられる。特に限定されないが、複合化の際の溶媒、塩濃度、pH、温度、時間、変性剤の添加、前記ヒアルロン酸誘導体濃度、薬物濃度、HPと薬物の比率などの条件は、薬物が安定でかつ高収率でナノゲルと複合化されるように適宜選択してもよい。複合化されなかったフリーの薬物は、透析法やサイズ排除クロマトグラフ(SEC)法などで分離、除去すればよい。架橋の際は、封入された薬物が変性しない架橋条件を用いることが好ましい。 本発明のヒアルロン酸誘導体のゲルに封入された薬物は、薬物のゲル中における単純拡散、ヒアルロン酸誘導体のゲルの分解、および生体成分と薬物の置換によって放出される。薬物の拡散によって薬物放出がなされる場合には、ゲルの架橋密度、および架橋ドメインの量やその疎水性の強さによってその速度を制御することが可能である。ゲルの分解とは、例えば、化学架橋ドメインの分解、ヒアルロン酸誘導体の骨格の分解などがある。これらの分解により、架橋密度の低下(膨潤率の増大)が生じる。架橋密度が低下すると、ゲル中の薬物の拡散速度が加速されるため放出が促進され、また結合が切れることによっても放出が促進される。このため、化学架橋ドメインの分解性、ポリマー骨格の分解性、スペーサーの分解性などを制御することによって、薬物放出速度を制御することが可能である。 生体成分との置換とは、例えば、ゲルを皮下や血中などの生体内に投与した場合、アルブミンなどの血漿タンパク質や脂質などが存在し、これらがゲル中に浸潤、封入されている薬物と置換されることにより薬物が放出される場合を意味する。本発明のヒアルロン酸誘導体のゲルは、疎水性基同士による物理的な架橋だけでなく、前記の化学架橋により、生体成分の浸潤に伴う薬物との置換を抑制することが可能である。生体成分の浸潤は、ゲルの架橋密度、ゲル中の電荷などによってその速度を制御することが可能である。なお、前記の架橋によるゲルの形成後に薬物溶液を添加して薬物封入をする場合は、封入時に薬物はゲル中に吸収されやすく、生体内では生体成分の浸潤が抑制されるように、その封入条件を適宜選択することができる。特に限定されないが、例えば、タンパク質を封入する場合、その等電点付近で封入工程行うことで、ヒアルロン酸誘導体と薬物の静電反発を抑制することができる。また、ヒアルロン酸に含まれるグルクロン酸由来のカルボン酸のpKa(およそ4.0)以下で封入工程を行うことで、ゲルが持つ負電荷を弱めることができるので、その条件で負電荷に帯電しているタンパク質との静電反発が抑制され、封入効率の向上が可能となる。また、例えば生体内よりも低い塩濃度において封入工程を行うことで、生体内よりもゲルの膨潤率が高くなるため、封入が容易となる。 さらに、本発明の疎水性基と架橋性官能基を同時に導入したヒアルロン酸誘導体の化学架橋によるゲル化を、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体の共存下で、行うことができる。具体的には、疎水性基および不飽和結合を有する官能基を導入した本発明のヒアルロン酸誘導体と、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を混合し、架橋することにより、疎水性基を有する親水性多糖類誘導体を物理的に封入した、ヒアルロン酸誘導体ゲルが調製できる。HA−AM、HA−ALD、HA−SHを用いても同様に行える。 疎水性基を有する親水性多糖類誘導体とは、親水性多糖類およびその誘導体に、多糖1分子あたり少なくとも1分子以上の疎水性基を導入して得ることができる親水性多糖類である。親水性多糖類としては特に限定されないが、好ましくはプルラン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、マンナン、レバン、イヌリン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、デキストリンであり、これらは市販されているか、文献記載の方法に従い、種々の平均分子量を有するものを入手することもできる。親水性多糖類として特に好ましいものは、プルラン、ヒアルロン酸、デキストリンである。デキストリンとしてはクラスターデキストリン(登録商標)が好ましい。クラスターデキストリン(登録商標)は、江崎グリコ株式会社から販売されているものを購入して使用することができる。疎水性基としては特に限定されないが、好ましくはC8−50の炭化水素基、ステリル基、ポリ乳酸(PLA)基、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)基などの基またはこれらの基を含む基であり、特に好ましくはコレステリル基を含む基、C8−30の直鎖または分岐アルキルまたは当該基を含む基である。疎水性基はスペーサーを介して導入されていてもよい。 疎水性基を有する親水性多糖類誘導体は各種公知の方法により製造することができる。また、親水性多糖類としてプルランのヒドロキシ基に、疎水性基としてN−[6−(コレステリルオキシカルボニルアミノ)ヘキシル]カルバモイル基を導入した水親水性多糖類誘導体(以下、「コレステロールプルラン」、「CHP」とも称する)は、市販のものを購入して(例えば、日本油脂株式会社)入手することも可能である。疎水性基を有する親水性多糖類誘導体は、水溶液中において疎水性相互作用により数分子が自発的に会合することでナノサイズ(1〜1,000nm)のゲル構造を有する微粒子(ナノゲル)を形成することなどにより、疎水性薬物や薬効を有するタンパク質やペプチドと複合化することがきるものである。 本発明に用いられる疎水性基を有する親水性多糖類誘導体の分子量は、特に限定されないが、好ましくは1kDa〜1,000kDa、さらに好ましくは10kDa〜300kDaである。また前記親水性多糖類誘導体は、薬学的に許容される塩であってもよい。 さらに、例えば、本発明のヒアルロン酸誘導体および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体に含まれるヒドロキシ基もまた架橋形成が可能な基として利用することができる。すなわち、本発明のヒアルロン酸誘導体および疎水性基を有する親水性多糖類誘導体のヒドロキシ基を、特定の架橋剤、例えば、ジビニルスルホン(DVS)、カルボジイミド、またはC2−20アルキレンの両端にグリシジルエーテル基を有する架橋剤などによって架橋することができる。 ヒアルロン酸のカルボキシ基に導入される置換基の種類が複数のときは、それらの置換基は、同時導入しても、順次に導入してもよい。 本発明のヒアルロン酸誘導体は、水溶液中において前記疎水性基の疎水性相互作用により自発的に会合することでナノスケールの微粒子を形成するという特性を有する。望まれるドラッグデリバリーシステムの構築のために、本発明のヒアルロン酸誘導体により形成されるナノ微粒子は非常に有力な手段の一つであり、内部に形成される疎水ドメインに活性成分であるタンパク質、ペプチド、低分子化合物を保持したまま目的の部位に送達するカプセルとして使用することができる。また、薬物をコンジュゲートすることにより目的の部位に薬物を送達することができる。 ナノスケールの微粒子は、全身投与、特に静脈内投与が可能であり、封入(複合化)した薬物を血中で徐放する血中薬物徐放、また、標的臓器および細胞へ薬物を選択的にデリバリーさせる、ターゲティング用の担体として使用できる。ターゲティング用の担体として使用する場合、HA誘導体のグルクロン酸部分のカルボキシ基を高度に修飾しない場合(例えば修飾率54%以下)、前述の様にヒアルロン酸レセプター、CD44やRHAMM、LYVE−1、HAREをターゲットとした薬物のデリバリーが可能となる。特に、CD44やRHAMMをターゲットとすることで、腫瘍へのターゲティングが可能となる。また、HA誘導体のグルクロン酸部分のカルボキシ基を高度に修飾し(例えば修飾率55%以上)、さらに前述の様なターゲット素子をくわえることにより各臓器ならびに細胞へターゲッティングすることもできる。血中での薬物の保持を強固にするために、さらにヒアルロン酸誘導体を化学架橋させることもできる。 なお、高度に修飾されていないHA誘導体を、血中薬物徐放やターゲティング用の担体として用いる場合、肝臓などの類洞内皮に存在するHAREレセプターにより瞬時に取り込まれ、代謝されることが知られており、急速に血中から消失するという問題点がある。しかし、本発明のHA誘導体の血中滞留性には分子量依存性があり、低分子量のHA(5kDa〜27kDa)を原料としたHA誘導体は、良好な血中滞留性能を有する、血中薬物徐放およびターゲティング用の担体として用いることができる。 また、ヒアルロン酸と同様直鎖状のポリマーであるポリエチレングリコール(PEG)が、分子量40kDa以下で腎排泄を受けることが報告されている(European Journal of Cancer. 第31巻、第766-770頁、1995年)など、ある一定の大きさ以下の分子は、腎排泄を受けることが知られている。よって、同程度以下の分子量のヒアルロン酸ならびにヒアルロン酸誘導体も腎排泄され、瞬時に血中から消失する懸念がある。しかし、本発明の疎水性基を導入したHA誘導体は、カルボキシ基の修飾率に関わらず、PEGが腎排泄を受ける分子量以下であっても、血中滞留性が良好であるため、血中薬物徐放およびターゲティング用の担体として用いることができる。 ヒアルロン酸誘導体による微粒子は、水溶液中で自己会合により形成するので、固体のヒアルロン酸誘導体をから水または塩水溶液に溶解することによって形成することができる。また、別の方法では、他の溶媒(例えばDMSO)に溶解したあと、水、または塩水溶液に置換することによっても微粒子を形成することができる。形成した微粒子のサイズを均一化するために超音波処理を行ってもよい。 ヒアルロン酸誘導体の疎水性基導入率が高くなるに従って、水への溶解性が減少する。そのため水溶液中で分散性の微粒子を形成させるためには、共有結合により導入する疎水性基は80%以下、このましくは60%以下になるように調製されたヒアルロン酸誘導体を用いることがこのましい。 ヒアルロン酸誘導体は解離基であるカルボキシ基を有するため、系中のイオン強度が高いほど、溶解性が低くなる。したがって、導入率をコントロールすることにより、低塩濃度下あるいは無塩条件下では溶解し、生理食塩濃度にて凝集・沈殿するヒアルロン酸誘導体の調製が可能であり、これは、皮下での徐放製剤の基材となり得る。また、生理塩濃度下においても安定な微粒子を形成する程度の疎水性基を導入したヒアルロン酸誘導体は、全身投与型の薬物担体となり得る。 本発明のHA誘導体は、生理塩濃度下中で凝集し沈殿形成する、カルボキシ基への疎水性基の導入範囲を持つことが示され、また、タンパク質(エリスロポエチン)を封入(複合化)した状態で沈殿させられることが示された。さらに、ヒト成長ホルモンを封入(複合化)し沈殿させた本発明のヒアルロン酸誘導体からなる医薬品組成物をラットの皮下に投与した場合、徐放効果を示すことが確認された。また、溶液(分散)状態で投与することによっても皮下(生理塩濃度下)で沈殿し、徐放効果を示すことが確認された。 形成される微粒子の粒子径は特に限定されないが、注射による投与の際にニードルを詰まらせずに通過できるようにするため200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。また、静脈投与の場合は、抹消血管を閉塞させないために粒子径500nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。また、細網内皮系への取り込みを回避し、血中滞留性を向上させるために100nm以下であることが好ましい。 本発明ヒアルロン酸誘導体は、医薬製剤における薬物担体として使用することができる。本発明のヒアルロン酸誘導体は、水溶液中で自発的に薬物と複合体を形成するため、特別な操作を必要とせず、当該ヒアルロン酸誘導体と薬物を水溶液中で混合し、インキュベートすることにより、担体−薬物の複合体を容易に形成することができる。複合体形成の駆動力は、主にヒアルロン酸誘導体の疎水性基と薬物との疎水性相互作用であるが、薬物が塩基性の場合、ヒアルロン酸誘導体のカルボン酸との静電的相互作用が寄与する場合がある。生体塩濃度では、静電的相互作用は弱く、疎水性相互作用は強くなるため、主に疎水性相互作用により複合体が形成すると考えられる。 上記式(I)において、基−NRa−Y−X1のYがアルキレンの場合、アルキレンの炭素鎖が長いほど、当該基の疎水性が高くなり、強い疎水性相互作用により強固な微粒子を形成することができる。また、アルキレン基が長いほど分子間での絡み合いが大きくなり、粘度を上昇させることができる。さらに、アルキレン基の長さを変更することで、微粒子のサイズを制御することもできる。 疎水性基中のリンカー(スペーサー)部分がエステルまたはカーボネートである場合(例えば、X1が、−COO−Rおよび−O−COO−Rである場合)、生体内においてエステルまたはカーボネートが分解し、ヒアルロン酸誘導体の疎水性が低下することによってさらに生分解性が高まり、安全性の面から好ましい。また、腫瘍組織周辺ではpHが低下していることが知られており、このようなスペーサーを有している場合、目的薬物を担持した本発明のヒアルロン酸誘導体の会合体は腫瘍周辺にて崩壊し、薬物を腫瘍周辺で放出することができる。 特に、−O−CO−CH2−CH2−S−のようなβチオエステル構造を有するリンカーの場合、わずかなpHの低下(pH6程度)においても分解が促進される。このため、通常のエステルよりもpH応答がシャープである。また、細胞内への薬物の送達を目指す場合、エンドソームにおけるpH低下にも応答し、細胞に取り込まれた後にのみ薬物を放出させることができる。 リンカー(スペーサー)部分がジスルフィド結合を有する場合(例えば、X1が−S−S−Rである場合)、還元状況下においてリンカーが分解し、ヒアルロン酸誘導体の疎水性が低下することによって本発明のヒアルロン酸誘導体の会合体が崩壊する。細胞質は還元環境であることが知られているため、このリンカーを用いたヒアルロン酸誘導体に薬物を封入し、投与することによって、血中では薬物を放出せず、細胞質内でのみ薬物を放出させることができる。 リンカー(スペーサー)部分が酵素特異的に切断されるペプチドを有する場合(例えば、疎水性基が−Z−NRa−Y−NRb−COO−Rである場合)、その酵素が存在する部位でのみリンカーが分解し、疎水性基の一部が脱離することによって本発明のヒアルロン酸誘導体の会合体が崩壊する。たとえば、ライソソームではGly−Phe−Leu−Glyが特異的に切断される。また、腫瘍や炎症部位で発現しているペプチダーゼで切断されるペプチドがリンカー中に含まれる場合、腫瘍で特異的に薬物を放出することができる。 リンカー部分が、エステル結合、カーボネート結合、ジスルフィド結合の様な物理化学的切断を受けるリンカーではない場合、製剤中における保存安定性が良好であるという利点がある。 担体−薬物複合体を形成するときの、溶媒、塩濃度、pH、温度、時間、変性剤の添加などの条件は、用いる薬物により適宜変更することができる。例えば、薬物封入時の塩濃度やpHによって、ヒアルロン酸誘導体は密度が変わるとともに、薬物もその電離状態などが変動する。使用する変性剤の例としては、尿素、塩酸グアニジン、ドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。変性剤を添加した場合は、複合体形成後に、過剰の水などで洗浄することにより余剰の変性剤を除去することができる。 特に限定されないが、例えば、本発明のヒアルロン酸誘導体とタンパク質の複合体を形成する場合、その等電点付近で複合体形成を行うことにより、ヒアルロン酸誘導体とタンパク質の静電反発を抑制することが可能なため、複合体に含まれるタンパク質の量を増加させることができる。また、グルクロン酸部分のカルボキシ基のpKa(およそ4.0)以下の条件で複合体形成工程を行うことにより、ヒアルロン酸誘導体が有する負電荷を弱めることができるので、タンパク質が当該条件下で負電荷に帯電している場合には静電反発を抑制することが可能であり、複合体に含まれるタンパク質の量を増加させることができる。さらに、例えば生体内よりも低い塩濃度において複合体形成工程を行うことにより、水溶液中で形成されるヒアルロン酸誘導体の微粒子の密度が低下するため、複合体に含まれるタンパク質の量を増加させることができる。また、その状態で塩濃度を上げることにより微粒子の密度を向上させ、強固にタンパク質を封入することができる。 ヒアルロン酸誘導体とタンパク質との複合体形成は、タンパク質の分子量にも影響され得る。一般に、タンパク質が低分子量であるほど、当該タンパク質のヒアルロン酸誘導体の微粒子内部へ移行速度は高い。また、疎水性基の導入率に依存する微粒子の密度も、タンパク質との複合体形成の速度、および複合体に含まれるタンパク質の量に影響を与えうる。 ヒアルロン酸誘導体と薬物の複合体からの生体内における薬物放出は、複合体からの薬物の拡散に加えて、生体成分が薬物と置換することにより促進される。微粒子の密度を増減させて、この拡散や置換を制御することにより、薬物の徐放性を制御することが可能となる。 生体内には血漿タンパク質や脂質などの生体成分が存在し、ヒアルロン酸誘導体と薬物の複合体を皮下や血中などの生体内に投与した場合、この生体成分が複合体内の薬物と置換することにより薬物が放出される場合がある。当該置換を生じさせる主な生体内タンパク質としてアルブミンが想定される。本発明のヒアルロン酸誘導体の疎水性基の導入率を低くすることにより、グルクロン酸部分のカルボキシ基の負電荷を高くすることができ、負電荷を有するアルブミン(pI=4.6)との置換を抑制することができる。 また、本発明のヒアルロン酸誘導体を薬物担体として使用する方法としては、前述の水溶性液中で自発的に薬物と複合体を形成させる方法の他、薬物と本発明のヒアルロン酸誘導体とを結合させたコンジュゲートにする方法を挙げることもできる。 本発明のヒアルロン酸誘導体と薬物とからなるコンジュゲートの調製方法は、既知のポリマーと薬物とのコンジュゲートの調製で使用されている方法を用いることができ、例えば、以下の反応を利用することができる。 ヒアルロン酸誘導体のグルクロン酸部分のカルボキシ基と、薬物のアミノ基、ヒドロキシ基、ヨード基、ブロモ基または、薬物に導入したアミノ基、ヒドロキシ基、ブロモ基、ヨード基との反応; ヒアルロン酸誘導体のN−アセチルグルコサミン部分の6位のヒドロキシと、薬物のカルボキシ基または薬物に導入したカルボキシ基との反応; ヒアルロン酸誘導体に導入したアミノ基と、薬物のカルボキシ基または薬物に導入したカルボキシ基との反応; ヒアルロン酸誘導体に導入したアミノ基と、修飾によりイソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、NHSエステルおよびエポキシドなどに変換された薬物との反応; 薬物のアミノ基または薬物に導入したアミノ基と、修飾によりイソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、カルボニル、NHSエステルおよびエポキシドに変換されたヒアルロン酸誘導体との反応; ヒアルロン酸誘導体のアミノ基と、カルボニル基を有するまたは導入された薬物(アルデヒドおよびケトンなど)とのシッフ塩基形成ならびに還元的アミノ化反応; 薬物のアミノ基または薬物に導入したアミノ基と、修飾によりカルボニル基が導入されたヒアルロン酸誘導体とのシッフ塩基形成ならびに還元アミノ化反応; ヒアルロン酸誘導体に導入したメルカプト基と、不飽和結合を有する化合物(マレイミド、アクリルエステル、アクリルアミド、メタクリルエステル、メタクリルアミド、アリル化物、ビニルスルホンなど)、ハロゲン化物(クロロ酢酸エステル、ブロモ酢酸エステル、ヨード酢酸エステル、クロロ酢酸アミド、ブロモ酢酸アミド、ヨード酢酸アミドなど)またはチオールである薬物または修飾により当該化合物に変換された薬物との反応;および 薬物に導入したメルカプト基と、修飾により、不飽和結合を有する化合物(マレイミド、アクリルエステル、アクリルアミド、メタクリルエステル、メタクリルアミド、アリル化物、ビニルスルホンなど)、ハロゲン化物(クロロ酢酸エステル、ブロモ酢酸エステル、ヨード酢酸エステル、クロロ酢酸アミド、ブロモ酢酸アミド、ヨード酢酸アミドなど)またはチオールに変換されたヒアルロン酸誘導体との反応。 さらに、前述の疎水性基をHA誘導体に導入する際に用いたエステルまたはカーボネート、βチオエステル、ジスルフィド、特定の部位で切断するペプチドを含むリンカー(スペーサー)を、薬物とのコンジュゲート用のリンカーとして使用することもできる。これらのリンカーは前述の通り、標的部位において切断され、薬物が放出される。 コンジュゲートの調製のためにヒアルロン酸誘導体または薬物の修飾に使用する試薬は、コンジュゲートの調製において不都合な反応を生じさせないものであれば、特に限定されない。該化合物は試薬として入手可能であるか、または文献公知の方法を参考にして合成してもよい。 具体的には、本発明のヒアルロン酸誘導体を合成し、さらにアミノ基を有する薬物またはアミノ基を導入した薬物をDMT−MMなどの縮合剤を用いて反応させ、アミド結合により薬物をコンジュゲートすることができる。この際、薬物をコレステリル 6−アミノへキシルカーバメート塩酸塩などと一緒に加えて、疎水性基を同時に導入してもよい。また、薬物の後もしくは前に当該化合物を加えてもよい。また、本発明のヒアルロン酸誘導体を合成・精製後に薬物を反応させても、薬物を導入したヒアルロン酸誘導体を合成・精製後に疎水性基誘導体を導入してもよい。 また、本発明のヒアルロン酸誘導体を合成し、さらにヒドロキシ基を有する薬物またはヒドロキシ基を導入した薬物をDMT−MM、1,3−ジクロロヘキシルカルボジイミト゛(DCC)などの縮合剤を用いて反応させ、エステル結合によりヒアルロン酸誘導体に薬物をコンジュゲートすることができる。この際、薬物をコレステリル 6−アミノへキシルカーバメート塩酸塩などと一緒に加えて、疎水性基を同時に導入してもよい。また、薬物の後もしくは前に当該化合物を加えてもよい。しかし、エステルの加水分解を回避するためには、疎水性基を導入後、薬物をコンジュゲートすることが望ましい。上記の方法は、例えば、パクリタキセルがHAにエステルで導入された報告(Bioconjugate 第19巻、第1319−1325項、2008年)などを参考にして行うことができる。 また、本発明のヒアルロン酸誘導体を合成し、さらに臭化物もしくはヨウ化物である薬物または、修飾により臭化物もしくはヨウ化物に変換された薬物を反応させ、グルクロン酸部分のカルボキシ基をエステルに変換することにより薬物をコンジュゲートすることができる。エステルの加水分解を回避するためには、疎水性基を導入後、薬物をコンジュゲートすることが望ましい。 本発明のヒアルロン酸誘導体を合成し、さらにカルボキシ基を有する薬物またはカルボキシ基を導入した薬物をNHSエステルとし、N−アセチルグルコサミン部分の6位のヒドロキシと反応させ、エステル結合により薬物をコンジュゲートすることができる。この際、コレステリル6−アミノへキシルカーバメート塩酸塩などにより疎水性基をHAに導入した後に薬物を加えても、導入の前に加えてもよい。また、本発明のヒアルロン酸誘導体を合成・精製後に薬物を反応させても、薬物を導入したヒアルロン酸誘導体を合成・精製後に疎水性基誘導体を導入してもよい。エステル結合の加水分解を回避するためには、疎水性基誘導体を導入後、薬物をコンジュゲートすることが望ましい。上記の方法は、例えば、カンプトテシンがHAにエステルで導入された報告(国際公開第WO2009/074678号)などを参考にして行うことができる。 1つの態様において、本発明のヒアルロン酸誘導体を合成後、グルクロン酸部分のカルボキシ基をエチレンジアミンなどのジアミンと脱水縮合させ、アミノ基を導入することができる。さらに、N−スクシンイミジル ヨードアセテート(PIERCE社)やN−スクシンイミジル [4−ヨードアセチル]アミノベンゾエート(PIERCE社)をアミノ基に反応させ、ヨードアセチル基が導入されたヒアルロン酸誘導体を合成することができる。このヒアルロン酸誘導体に対して、チオール基を有する薬物を、コンジュゲートすることができる。この方法はタンパク質、ペプチド、核酸などのアミノ基などの反応性基を多く含む高分子薬物においてもチオール選択的にコンジュゲートできるため特に有効である。この際、薬物の導入は疎水基誘導体をHAに導入する前でも後でもよい。 X1が−NH2−COO−Rである、本発明のヒアルロン酸誘導体を合成し、ここで、グルクロン酸部分のカルボキシ基の一部を2−アミノエチル 2−ピリジル ジスルフィド塩酸塩と反応させる。このヒアルロン酸誘導体に対してメルカプト基を有する薬物ならびにメルカプト基を導入した薬物をジスルフィド結合交換反応、すなわち置換反応により導入することが可能である。 ここで、当該コンジュゲートの生物活性を有効に保つために、薬物とヒアルロン酸誘導体間のリンカーの長さを調節することもできる。また、生体内の特定部位にて酵素等で切断されるペプチドリンカーを導入することもできる。例えば、メトトレキセートがHAにペプチドを含むリンカーを介して導入された報告(国際公開第WO2005/095464号)、ドキソルビシンがHPMA(N-(2-hydroxypropyl)methacrylamide)およびペプチドを含むリンカーを介して導入された報告(国際公開第WO2002/090209号)などを参考にして行うことができる。 また、抗体に低分子化合物をコンジュゲートさせたADC(Antibody Drug Conjugate)に関する報告(国際公開第WO2009/026274号;Expert Opinion. 第15巻、第1087-1103頁、2005年;Bioconjugate Chem. 第19巻、第1960-1963頁、2008年;Bioconjugate Chem. in press、Bernhard Stumpら、Antibody-Drug Conjugates: Linking Cytotoxic Payloads to Monoclonal Antibodies)が多数あり、これらを参考にして、ヒアルロン酸誘導体と低分子化合物とのコンジュゲートを調製することもできる。 本発明のヒアルロン酸誘導体と1以上の薬物とを含む医薬組成物および本発明のヒアルロン酸誘導体と1以上の薬物とが結合したコンジュゲートは、ナノ微粒子、ミクロ微粒子、溶液、エマルジョン、懸濁液、ゲル、ミセル、インプラント、粉末、またはフィルムの形態にあってよい。粉末は、凍結乾燥または噴霧乾燥により得た固体を粉砕して製造してもよく、沈殿物を乾燥したものから製造してもよい。 本発明の医薬組成物およびコンジュゲートは、経口、腸管外、鼻腔内、膣内、眼内、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、脳内または口腔内の経路を経て投与されてよい。 本発明の医薬組成物およびコンジュゲートは、特に局所における徐放を目的とした場合、ニードルを詰まらせずに通過できるようにするため200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。 本発明の医薬組成物およびコンジュゲートは、特にCD44をはじめとするヒアルロン酸レセプターへのターゲティングを目的とした場合、そのサイズは5μm以下であることが好ましい。この際に用いるヒアルロン酸誘導体は、ヒアルロン酸レセプターへの結合が抑制されないように、疎水性基の導入率が10%以下であることが好ましい。 本発明の医薬組成物およびコンジュゲートは、特に血中滞留性延長、ならびに腫瘍組織または炎症組織への集積性を目的とする場合、そのサイズは500nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは200nm以下である。また、細網内皮系への取り込みを回避し、血中滞留性を向上させるためには100nm以下であることが好ましい。この際に用いるヒアルロン酸誘導体は、ヒアルロン酸レセプターへの結合が抑制されるように、グルクロン酸部分のカルボキシ基の多くが変換されたヒアルロン酸誘導体を用いることが好ましい。 本発明の医薬組成物およびコンジュゲートは、粘膜付着性を持ち非侵襲投与用途を目的とした場合、そのサイズは200μm以下であることが好ましい。粘膜付着性の観点からは、用いるヒアルロン酸誘導体の疎水性基導入率は低い方が好ましい。 本発明のヒアルロン酸誘導体と複合体を形成する薬物は、担持可能な薬物であれば特に限定されない。また、本発明のヒアルロン酸誘導体と結合させる薬物は、コンジュゲートが調製可能であれば特に限定されない。当該薬物の例としては、タンパク質および/またはペプチド、多糖類、核酸類、低分子化合物が挙げられ、好ましくは、タンパク質および/またはペプチドが挙げられる。 低分子化合物の例としては、例えば、制癌剤(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アルカロイドなど)、免疫抑制剤、抗炎症剤(ステロイド剤、非ステロイド剤系抗炎症剤など)、抗リウマチ剤、抗菌剤(β−ラクタム系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、新キノロン系抗生物質、サルファ剤など)などを挙げることができる。 タンパク質およびペプチドの例としては、例えば、エリスロポエチン(EPO)、グラニュロサイトコロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロン−α、β、γ、(INF−α、β、γ)、トロンボポエチン(TPO)、シリアリーニュートロフィクファクター(CNTF)、チューマーネクローシスファクター(TNF)、チューマーネクローシスファクター結合タンパク質(TNFbp)、インターロイキン−10(IL−10)、FMS類似チロシンカイネース(Flt−3)、成長ホルモン(GH)、インシュリン、インシュリン類似成長因子−1(IGF−1)、血小板由来成長因子(PDGF)、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト(IL−1ra)、ブレイン由来ニューロトロフィクファクター(BDNF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、幹細胞因子(SCF)、メガカリオサイト成長分化因子(MGDF)、オステオプロテゲリン(OPG)、レプチン、副甲状腺ホルモン(PTH)、塩基性フィブロブラスト成長因子(b−FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、抗体、ダイアボディー、ミニボディー、断片化抗体などを挙げることができる。 核酸類の例としては、例えば、DNA、RNA、アンチセンス、デコイ、リボザイム、低分子干渉RNA、RNAアプタマーなどを挙げることができる。 なお、本発明においては、式(I)における−NRaは、カルボニル(CO)とアミド結合を形成しており、ステリル基を有する疎水性基は、ヒアルロン酸またはその塩のカルボキシ基をアミドに変換することにより導入されている。一方、カルボキシ基をエステルに変換することにより疎水性基を導入することもできる。具体的には、ヒアルロン酸またはその塩に含まれる−COOHを−COOA;ここで、Aは、 −R、 −Y−NRb−R、 −Y−NRb−COO−R、 −Y−NRb−CO−R、 −Y−NRb−CO−NRc−R、 −Y−COO−R、 −Y−O−COO−R、 −Y−S−R、 −Y−CO−Ya−S−R、 −Y−O−CO−Yb−S−R、 −Y−NRb−CO−Yb−S−R、および −Y−S−S−R(R、Y、Rb、Rc、YaおよびYbは、前記にて定義した通りである)に変換することもできる。 また、カルボキシ基ではなく、ヒアルロン酸またはその塩のヒドロキシ基(−OH)を−OAa;ここで、Aaは、 −R、 −CO−Y−NRb−COO−R、 −OCO−Y−NRb−COO−R、 −CO−NRa−Y−NRb−COO−R、 −CO−Y−COO−R、 −OCO−Y−COO−R、 −CO−NRa−Y−COO−R、 −CO−Y−OCOO−R、 −OCO−Y−OCOO−R、 −CO−NRa−Y−OCOO−R、 −CH2CH(OH)−O−R、 −CH(CH2OH)−OR、および −CH2CHRh−SO2−OR(R、Y、Ra、Rbは、前記にて定義した通りであり、Rhは、水素原子またはC1−6アルキルである)に変換することにより、ヒアルロン酸またはその塩にステリル基を有する疎水性基を導入することもできる。 上記式(I)において、Zが、2〜30個の任意のアミノ酸残基からなるペプチドリンカーである場合、基−Z−N(Ra)−Y−X1を、基−N(Ra)−Y−NRb−Z−X1a(Ra、Y、Rb、R、RcおよびYbは明細書中に定義されたとおりであり、X1aは、以下の式: −R、 −COO−R、 −CO−R、 −CO−NRc−R、又は −CO−Yb−S−R、を表す)に変換することもできる。当該ペプチドリンカーは、N末端にて基X1aに結合する。 以下、本発明の好適な具体的態様を実施例として説明する。 また、以下の記載中のHAユニットとは、ヒアルロン酸中のN−アセチルグルコサミン−グルクロン酸の繰り返し単位(1ユニット)を意味する。〔実施例1〕コレステリル基を導入したHA誘導体の調製(実施例1−1)コレステリル 6−アミノヘキシルカーバメート塩酸塩の調製 コレステリルクロロホルメート(3.37g、7.5mmol)の無水ジクロロメタン(20mL)の溶液に、アルゴン雰囲気下、トリエチルアミン(TEA、1.05mL)を加えて撹拌した。氷冷下で、6−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−1−アミノヘキサン(1.12mL、5mmol)を滴下して加え、そのまま氷冷下で30分間攪拌後、室温まで昇温し、当該混合物を一晩撹拌した。反応混合物を、超純水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:4)で精製し、目的物のフラクションを合わせて溶媒を減圧下留去した。 得られた残渣を酢酸エチル(40mL)に溶解し、4N塩酸/酢酸エチル溶液(40mL)を加えて室温で一晩撹拌した。生じた沈殿物を遠心分離により回収した。得られた固体を酢酸エチルにて4回洗浄後、減圧下で乾燥し、コレステリル 6−アミノヘキシルカーバメート(Chol−C6)の塩酸塩(1.2g)を得た。生成物の1H−NMRスペクトル(JNM−ECA500 日本電子株式会社製;EtOH−d6)を図1に示す。(実施例1−2)コレステリル 2−アミノエチルカーバメート塩酸塩の調製 6−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−1−アミノヘキサンの代わりに2−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−1−アミノエタン(0.79mL、5mmol)を用い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーの溶離液に酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2を用いたこと以外は実施例1−1と同様の方法で行い、コレステリル 2−アミノエチルカーバメート(Chol−C2)の塩酸塩(2.3g)を得た。生成物の1H−NMRスペクトル(JNM−ECA500 日本電子株式会社製;EtOH−d6)を図2に示す。(実施例1−3)コレステリル 8−アミノオクチルカーバメート塩酸塩の調製 8−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−1−アミノオクタン(1.21g、5mmol)の無水ジクロロメタン(100mL)および無水トルエン(200mL)の溶液に、アルゴン雰囲気下、TEA(0.7mL)を加えて撹拌した。氷冷下、コレステリルクロロホルメート(2.66g、6mmol)の無水ジクロロメタン溶液を滴下し、そのまま氷冷下で30分間攪拌後、室温に昇温して一晩撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:4)で精製し、目的物のフラクションを合わせて溶媒を減圧下留去した。 得られた残渣をジクロロメタン(1.5mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(1.5mL)を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:メタノール:アンモニア水=9:1:0.5)で精製し、目的物のフラクションを合わせて溶媒を減圧下留去した。得られた残渣に4N塩酸/ジオキサンを加えて、さらに酢酸エチルを加えて生じた固体を回収し、酢酸エチルで洗浄し、減圧下乾燥し、コレステリル 8−アミノオクチルカーバメート(Chol−C8)の塩酸塩(0.5g)を得た。生成物の1H−NMRスペクトル(JNM−ECA500 日本電子株式会社製;EtOH−d6)を図3に示す。(実施例1−4)コレステリル 12−アミノドデシルカーバメート塩酸塩の調製 6−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−1−アミノヘキサンの代わりに12−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−1−アミノドデカン(1.59g、5mmol)を用いたこと以外は実施例1−1と同様の方法で行い、コレステリル 12−アミノドデシルカーバメート(Chol−C12)の塩酸塩(1.0g)を得た。生成物の1H−NMRスペクトル(JNM−ECA500 日本電子株式会社製;EtOH−d6)を図4に示す。〔実施例2〕コレステリル基を導入したHA誘導体の調製(実施例2−1)カチオン交換樹脂のテトラブチルアンモニウム(TBA)塩化 DOWEX(登録商標)50WX−8−400(アルドリッチ社製)を超純水に懸濁させ、デカンテーションにより樹脂を超純水で3回程度洗浄した。40wt%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TBA−OH)(アルドリッチ社製)を樹脂のカチオン交換能に対し約1.5倍モル等量加え、30分間撹拌した。余剰のTBA−OH溶液をデカンテーションにより除去した後、さらに過剰の超純水で洗浄することで、TBA塩化したカチオン交換樹脂を得た。(実施例2−2)HAのTBA塩の調製 分子量27kDa、50kDaおよび100kDaのヒアルロン酸ナトリウム塩(HA−Na、資生堂株式会社製)をそれぞれ15mg/mLの濃度で超純水に溶解した。実施例2−1でTBA塩化したカチオン交換樹脂の懸濁液をHAユニット(ユニット分子量401.3)のモル数に対し樹脂のイオン交換能換算で5倍モル等量添加した。15分間撹拌した後、0.45μmのフィルターを用いて濾過を行い、濾液を凍結乾燥し、ヒアルロン酸のTBA塩(HA−TBA)を白色固体として得た。 代表例として50kDaのHA−Naを出発原料とする生成物の1H−NMRスペクトル(JNM−ECA500 日本電子株式会社製;EtOH−d6)を図5に示す。グルコサミンのアセチル基(COCH3、2.0ppm;3H)の積分値と、TBAの二つのメチレン(N(CH2CH2CH2CH3)4、1.3〜1.8ppm;16H)の積分値より、HAユニットに対するTBAの量比を算出し、この比からHA−TBAのユニット平均分子量を算出した。例えば50kDaのHA−Naを出発原料とするHA−TBAの場合、ユニット平均分子量は692.5であった。(実施例2−3)コレステリル基を導入したHA誘導体の調製(実施例2−3−1)コレステリル 6−アミノヘキシルカーバメートを導入したHA誘導体の調製 実施例2−2で調製した、HA−Na(50kDa)を出発原料とするHA−TBAの、無水DMSO溶液(10mg/mL)を調製した。その後、実施例1−1で調製したChol−C6塩酸塩をHA−TBAユニットに対して以下の表1に示す比率で各溶液に添加した。次に、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)をHA−TBAユニットに対して以下の表1に示す比率で加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液は、0.3M 酢酸アンモニア/DMSO溶液、0.15M NaCl水溶液、超純水の順で透析(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k〜14kDa)し、得られた透析液を凍結乾燥して目的物(HA−C6−Chol)を白色固体として得た。 測定溶媒として0.02N DCl DMSO−d6/D2O混液(2N DCl D2O:DMSO−d6=1:99)を用いた生成物(導入率7%)の1H−NMRスペクトル(JNM−ECA500 日本電子株式会社製)を図6に示す。グルコサミンのアセチル基由来のピーク(COCH3、1.6〜2.0ppm;3H)の積分値と、コレステリル基中のメチル基由来のピーク(CH3、0.7ppm;3H)の積分値より、下に示す式からHAユニットに対するコレステリル基の導入率を算出した(表1)。なおグルコサミンのアセチル基由来のピークが含まれる1.6〜2.0ppm付近のピークにはコレステリル基由来のピーク(5H)が重なっているため、1.6〜2.0ppm付近のピークの積分値からコレステリル基メチル由来のピーク(0.7ppm)の積分値を5/3したものを差し引いて算出した値(即ち、積分値(1.6〜2.0ppm)−積分値(0.7ppm)×5/3)をHA由来のアセチル基の積分値として、導入率の計算に使用した。(実施例2−3−2)コレステリル 2−アミノエチルカーバメートにより修飾したHA誘導体の調製 実施例2−2で調製した、HA−Na(50kDa)を出発原料とするHA−TBAを10mg/mLで無水DMSOに溶解した。その後、実施例1−2で調製したChol−C2塩酸塩をHA−TBAユニットに対して以下の表2に示す比率で各溶液に添加した。次に、DMT−MMをHA−TBAユニットに対して以下の表2に示す比率で加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液に0.3Mとなるように硝酸ナトリウムを加え、イソプロピルアルコール(IPA)を加えて生じた沈殿を回収し、IPA、エタノール洗浄後に、超純水に溶解し、0.15M NaCl水溶液、超純水の順で透析(スペクトラポア4、分画分子量(MWCO):12k−14kDa)した。得られた透析液を凍結乾燥してHA−C2−Cholを白色固体として得た。なお、HA−C2−Cholは、上記反応溶液に、実施例2−3−1と同様の処理(0.3M 酢酸アンモニア/DMSO溶液、0.15M NaCl水溶液、超純水の順で透析して得られた透析液を凍結乾燥すること)を施すことによっても得ることができる。実施例2−3−1に記載と同じ条件で測定した生成物(導入率8%)の1H−NMRスペクトルを図7に示す。また、実施例2−3−1記載の式にて算出したHAユニットに対するコレステリル基の導入率を表2に示す。(実施例2−3−3)コレステリル 8−アミノオクチルカーバメートにより修飾したHA誘導体の調製 Chol−C2塩酸塩の代わりに実施例1−3で調製したChol−C8塩酸塩を用い、以下の表3に示す比率でChol−C8塩酸塩ならびにDMT−MMを添加したこと以外は実施例2−3−2と同様の方法で行い、HA−C8−Cholを白色固体として得た。実施例2−3−1記載と同じ条件で測定した生成物(導入率7%)の1H−NMRスペクトルを図8に示す。また、実施例2−3−1に記載の式にて算出したHAユニットに対するコレステリル基の導入率を表3に示す。(実施例2−3−4)コレステリル 12−アミノドデシルカーバメートにより修飾したHA誘導体の調製 Chol−C2塩酸塩の代わりに実施例1−4で調製したChol−C12塩酸塩を用い、以下の表4に示す比率でChol−C12塩酸塩ならびにDMT−MMを添加したこと以外は実施例2−3−2と同様の方法で行い、HA−C12−Cholを白色固体として得た。実施例2−3−1記載と同じ条件で測定した生成物(導入率7%)の1H−NMRスペクトルを図9に示す。また、実施例2−3−1に記載の式にて算出したHAユニットに対するコレステリル基の導入率を表4に示す。〔実施例3〕PBS系サイズ排除クロマトグラフィーによる会合体形成の確認 実施例2−3−1〜2−3−4で得られたHA誘導体を1mg/mL濃度で蒸留水(超純水)に溶解した。それぞれをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供してHA誘導体の保持時間の変化から会合体形成を観察した(図10−1〜10−4)。SECの条件を以下に示す。 カラム:G3000SWXL(東ソー株式会社製) 溶離液:PBS(pH7.4) 流速:1mL/分 注入量:50μL 検出:示差屈折率。〔実施例4〕ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン添加PBS系サイズ排除クロマトグラフィーによる会合体崩壊の確認 実施例2−3−1〜2−3−4で得られたHA誘導体を1mg/mL濃度で蒸留水(超純水)に溶解した。それぞれ70μLに対してヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)PBS溶液(33mM、30μL)加え、37℃にて1時間インキュベートした。各試料をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供して、保持時間の変化からHA誘導体の会合体の崩壊を観察した(図11−1〜11−4)。 SECの条件を以下に示す。 カラム:G3000SWXL(東ソー株式会社製) 溶離液:10mM HP−β−CD/PBS(pH7.4) 流速:1mL/分 注入量:50μL 検出:示差屈折率 HA誘導体の溶出が、PBS系SEC(実施例3)においては原料であるHAに比べて早く、HP−β−CD系SEC(実施例4)においては一致していることから、本発明のHA誘導体は水溶液中においてCHP同様にコレステリル基の疎水性相互作用を駆動力とした多分子会合性微粒子を形成していると考えられる。HA−C6−Cholでは18%以上(図11−1)、HA−C2−Cholでは16%以上(図11−2)、HA−C12−Cholでは19%以上(図11−3)のHP−β−CD系SECにおいて溶出時間が早いピークが確認されるが、これは多分子性会合微粒子に対応するピークと考えられる。この結果から、本発明のHA誘導体は、今回のHP−β−CD添加条件では完全に崩壊しないほどの強固な会合性微粒子を形成しうることが確認され、当該微粒子が、血中ならびに皮下において薬物を安定に保持するための担体として有用であることが示唆される。〔実施例5〕コレステリル基を導入したHA誘導体とタンパク質(エリスロポエチン)との複合体の調製 実施例2−3−1〜2−3−4で得られたHA誘導体を1mg/mL濃度で蒸留水(超純水)に溶解した。また、比較例として、実施例2−2において原料として用いたHA−Na(分子量:50kDa)、ならびにプルラン(分子量100kDa)の100単糖あたり1.38個の−CONH−(CH2)6−NHCOO−コレステリル基が、そのヒドロキシに導入されているコレステリル導入プルラン(CHP;商品名PUREBRIGHT CP−100T、日本油脂株式会社製)を1mg/mL濃度で蒸留水(超純水)に溶解した。 エリスロポエチン(EPO)水溶液(2mg/mL、50μL)に対して最終濃度が1×PBSとなるように濃縮PBS(50μL)を加え、さらにHA誘導体(1mg/mL、100μL)を加えた。37℃にて24時間インキュベート後、2000Gにて遠心分離し、フリーEPOの全て、および分散性複合体が存在する上澄みをサイズ排除クロマトグラフィーに供した。クロマトグラフィーの結果から複合体中に取り込まれずに水溶液中に残存するフリーEPOの量を求め、複合体に含まれるEPOの量を算出した。さらに、HA誘導体の単位重量当たりの複合体に含まれるEPOの量(複合化%;(複合体中のEPO重量/HA誘導体重量)×100)を求めた。結果を以下の表5に示し、代表的なクロマトグラムを図12上段に示す。 SECの測定条件1 カラム:G4000SWXL(東ソー株式会社製) 溶離液:PBS(pH7.4) 流速:1mL/分 注入量:50μL 検出:UV(280nm)。 SECの測定条件2 カラム:QC−PAK−GFC300(東ソー株式会社製) 溶離液:PBS(pH7.4) 流速:1.2mL/分 注入量:20μL 検出:UV(280nm)。 なお、コレステリル導入プルラン(CHP)の導入率は、HA誘導体との比較のために、プルランの二糖を1ユニットとしてみたときの各ユニットへの導入率を示した。当該導入率は、購入品に示された100単糖あたりに導入されたコレステリル基の数(1.38個)から算出した。 本発明のHA誘導体の複合化%の値はCHPに比べて約3倍程度高く、本発明のHA誘導体が効率よくEPOと複合体を形成することが確認された。〔実施例6〕複合体から放出されたエリスロポエチンの分析 実施例5において37℃にて24時間インキュベートした試料(200μL)に対し、それぞれヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)PBS溶液(50mM、50μL)加え、さらに37℃にて1時間インキュベートした。各試料をサイズ排除クロマトグラフィーに供した。複合体から放出されたEPOを含むフリーEPO濃度(算出にはEPO標準試料から作成した検量線を用いた)をEPOピーク面積から算出し、回収率(%;フリーEPO重量/当初EPO重量×100)を以下に示す表6に記載した。代表的なクロマトグラムを図12下段に示す。 SECの測定条件 カラム:G4000SWXL(東ソー株式会社製) 溶離液:10mM HP−β−CD/PBS(pH7.4) 流速:1mL/分 注入量:50μL 検出:UV(280nm) HP−β−CD添加によるHA誘導体の会合性微粒子崩壊により放出されたEPOがインタクトな状態であることがサイズ排除クロマトグラフィーにより確認された。したがって、本発明のHA誘導体は、タンパク質を安定な状態に保ったまま、複合体を形成し、複合体中で保持し、その後放出することが確認された。〔実施例7〕コレステリル基を導入したHA誘導体の沈殿性および分散性(実施例7−1)生理塩濃度下中での挙動 実施例2−3−1で得られたHA誘導体を6mg/mL濃度で蒸留水(超純水)に溶解した。最終緩衝液組成が10mM PB(pH7.4)、150mM NaClとなるように濃縮緩衝液を加え、HA誘導体濃度を4.5mg/mLとした。37℃にて20分間インキュベート後、2000Gにて1分間遠心分離し、上澄みをHP−β−CD/PBS溶液(250mM)にて二倍希釈し、2時間インキュベート後、SECに供した。検出されたHA誘導体のピーク面積から当初使用量に対するHA誘導体の溶液中の残存率を算出した。HA誘導体の疎水性基導入率に対して残存率をプロットしたものを図13に示す。 SECの測定条件 カラム:QC−PAK−GFC200(東ソー株式会社製) 溶離液:10mM HP−β−CD/PBS(pH7.4) 流速:1.2mL/分 注入量:20μL 検出:示差屈折率 疎水性基導入率が7〜15%であるHA誘導体は、生理塩濃度にて凝集し、沈殿形成することが確認された。これは、当該HA誘導体が、生理塩濃度条件下で凝集することにより皮下において長時間存在し、タンパク質やペプチドを徐放する長期徐放性製剤の担体となりうることを示唆する。18〜42%においては生理塩濃度条件下でも安定に分散していることが確認された。これは全身投与型のタンパク質担体となりうることを示す。(実施例7−2)HA誘導体の分散性におけるNaCl濃度の影響 実施例2−3−1で得られたHA誘導体を6mg/mL濃度で蒸留水(超純水)に溶解した。最終緩衝液組成が10mM PB、0mM NaClならびに10mM PB,50mM NaClとなるように濃縮緩衝液を加え、HA誘導体濃度を4.5mg/mLとした。37℃にて20分間インキュベート後、2000Gにて1分間遠心し、上澄みをHP−β−CD/PBS溶液(250mM)にて二倍希釈し、2時間インキュベート後、SECに供した。検出されたHA誘導体のピーク面積から当初使用量に対するHA誘導体の溶液中の残存率を算出した。塩濃度に対して残存率を各HA誘導体についてプロットしたものを図14に示す。なお、SECの測定条件は実施例7−1と同じである。 導入率7%のHA誘導体は、塩の濃度が低い条件(10mM PB pH7.4, 0または50mM NaCl)では均一に分散し、生理塩濃度(150mM)では析出するという塩濃度依存的な挙動を示すことが確認された。この結果は、糖などにより等張化した低塩濃度溶液を調製することにより投与後皮下で沈殿する製剤において本発明のHA誘導体が担体として使用されうる可能性を示唆する。 一方、導入率21%のHA誘導体は、実施例7−1と同様、生理塩濃度でも沈殿せず、安定に分散していることが確認された。〔実施例8〕HA誘導体/タンパク質(エリスロポエチン)複合体の沈殿・分散性 表7に示した、実施例2−3−1で得られたHA誘導体を、4mg/mL濃度で蒸留水(超純水)に溶解した。エリスロポエチン水溶液(1mg/mL、25μL)に対して最終濃度が1×PBSとなるように濃縮PBS(50μL)を加え、さらにHA誘導体(4mg/mL、25μL)を加えた。37℃にて2時間インキュベート後、2000Gにて遠心分離し、上澄みをサイズ排除クロマトグラフィーに供し、上澄みに存在するHA誘導体・EPO複合体のピーク面積、および複合体に取り込まれなかったフリーのEPOのピーク面積を求めた。さらに、本実験で添加したEPO単独のピーク面積およびHA誘導体単独のピーク面積を求めるために、別途溶液を調製しサイズ排除クロマトグラフィーに付した。添加したEPO単独のピーク面積およびHA誘導体単独のピーク面積の和に対する、上澄みに存在するHA誘導体・EPO複合体のピーク面積およびフリーのEPOのピーク面積の和の割合を残存率として算出した(表7)。なお、この実験系においては、EPOは、フリーの状態では、遠心後でも、全て上澄み中に存在し、沈殿することはない。 クロマトグラフを図15に示す。 SECの測定条件 カラム:QC−PAK−GFC300(東ソー株式会社製) 溶離液:PBS(pH7.4) 流速:1.2mL/分 注入量:20μL 検出:UV(215nm) HA−C6−Chol−2%ならびにHA−C6−Chol−21%においては残存率が約100%であることから、HA誘導体/タンパク複合体も安定な分散性微粒子であり、HA−C6−Chol−7%においては残存率が32%であることからHA誘導体/タンパク複合体が沈殿性であることが確認された。すなわち、本発明のHA誘導体の沈殿・分散性能はタンパク質との複合体形成後も維持されることが確認された。〔実施例9〕コレステリル 8−アミノ−3,6−ジオキサオクチルカーバメートにより修飾したHA誘導体の調製(実施例9−1)コレステリル 8−アミノ−3,6−ジオキサオクチルカーバメート塩酸塩の調製 コレステリルクロロホルメート(1.7g、4.7mmol)の無水ジクロロメタン(50mL)の溶液に、アルゴン雰囲気下、トリエチルアミン(TEA、0.53mL)を加えて撹拌した。氷冷下で、8−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−3,6−ジオキサオクチルアミン(0.59mL、2.5mmol)を滴下して加え、そのまま氷冷下で30分間攪拌後、室温まで昇温し、当該混合物を一晩撹拌した。反応混合物を、超純水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)で精製し、目的物のフラクションを合わせて溶媒を減圧下留去した。 得られた残渣を酢酸エチル(40mL)に溶解し、4N塩酸/酢酸エチル溶液(40mL)を加えて室温で一晩撹拌した。生じた沈殿物を遠心分離により回収した。得られた固体を酢酸エチルにて5回洗浄後、減圧下で乾燥し、コレステリル 8−アミノ−3,6−ジオキサオクチルカーバメート(Chol−EO2)の塩酸塩(1.3g)を得た。生成物の1H−NMRスペクトル(JNM−ECA500 日本電子株式会社製;MeOH−d4)を図16に示す。(実施例9−2)コレステリル 8−アミノ−3,6−ジオキサオクチルカーバメートにより修飾したHA誘導体の調製 Chol−C6塩酸塩の代わりに実施例9−1で調製したChol−EO2塩酸塩を用い、以下の表8に示す比率でChol−EO2塩酸塩ならびにDMT−MMを添加したこと以外は実施例2−3−1と同様の方法で行い、HA−EO2−Cholを固体として得た。実施例2−3−1記載と同じ条件で測定した生成物(導入率7%)の1H−NMRスペクトルを図17に示す。また、実施例2−3−1に記載の式にて算出したHAユニットに対するコレステリル基の導入率を表8に示す。〔実施例10〕2−アミノエチル コレステリル ジスルフィドにより修飾したHA誘導体の調製 分子量10kDaのHA−Na(資生堂社製)を原料とし、実施例2−2と同様の方法で調製したHA−TBAの、無水DMSO溶液(10mg/mL)を調製した。その後、2−アミノエチル 2−ピリジル ジスルフィド塩酸塩(Py−SS−AM、トロント社製)をHA−TBAユニットに対して以下の表9に示す比率で各溶液に添加した。次に、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)をHA−TBAユニットに対して以下の表9に示す比率で加え、室温で一晩撹拌した。さらに、チオコレステロール(Chol−SH、シグマアルドリッチ社製)を以下の表9に示す比率で加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液に0.3Mとなるように硝酸ナトリウムを加え、イソプロピルアルコール(IPA)を加えて生じた沈殿を回収し、IPA洗浄後、減圧乾燥し、目的物(HA−SS−Chol)を白色固体として得た。実施例2−3−1に記載と同じ条件で測定した1H−NMRスペクトルを図18に示す。また、実施例2−3−1に記載の式にて算出したHAユニットに対するコレステリル基の導入率を表9に示す。〔実施例11〕コレステリル 2−アミノエチルカーバメートおよびアミノエチルメタクリレートにより修飾したHA誘導体の調製 実施例2−2で調製した、HA−Na(50kDa)を出発原料とするHA−TBAを10mg/mLで無水DMSOに溶解した。その後、実施例1−2で調製したChol−C2塩酸塩をHA−TBAユニットに対して以下の表10に示す比率で各溶液に添加した。次に、DMT−MMをHA−TBAユニットに対して以下の表10に示す比率で加え、室温で4時間撹拌した。さらにアミノエチル メタクリレート(AEMA、ポリサイエンス社製)塩酸塩、DMT−MMを以下の表10に示す比率で加え、室温で一晩撹拌した。以降は実施例2−3−1と同様の方法によって処理し、HA−C2−Chol/AEMAを白色固体として得た。実施例2−3−1に記載と同じ条件で測定した1H−NMRスペクトルを図19に示し、実施例2−3−1に記載の式にて算出したHAユニットに対するコレステリル基の導入率を表10に示す。また、5.6ppmと6.0ppmにおけるメタクリロイル基由来のシグナルの平均値から下式により算出したHAユニットに対するメタクリル基の導入率を表10に示す。〔実施例12〕5−アミノメチルフルオレセインおよびコレステリル 6−アミノヘプチルカーバメートにより修飾したHA誘導体の調製 以下の方法により、本発明のHA誘導体に低分子化合物を導入し、蛍光標識化HA誘導体を得た。実施例2−2で調製した、HA−Na(50kDa)を出発原料とするHA−TBAを10mg/mLで無水DMSOに溶解した。その後、実施例1−1で調製したChol−C6塩酸塩をHA−TBAユニットに対して以下の表11に示す比率で各溶液に添加した。次に、DMT−MMをHA−TBAユニットに対して以下の表11に示す比率で加え、室温で4時間撹拌した。さらに5−アミノメチルフルオレセイン(FL、インビトロジェン社製)塩酸塩、DMT−MMを以下の表11に示す比率で加え、室温で一晩撹拌した。以降は実施例2−3−1と同様の方法によって処理し、目的物(HA−C6−Chol/FL)を黄色固体として得た。実施例2−3−1に記載と同じ条件で測定した1H−NMRスペクトルから実施例2−3−1に記載の式にて算出したHAユニットに対するコレステリル基の導入率を表11に示す。また、フルオレセインの導入率は494nmにおけるモル吸光係数80000M−1cm−1から算出した。なお、FLによる標識は、FLのアミノ基とHA−TBAのカルボキシ基とのアミド結合形成により行われた。〔実施例13〕5−アミノメチルフルオレセイン、コレステリル 6−アミノヘプチルカーバメートおよびエタノールアミンもしくはプロパノールアミンにより修飾したHA誘導体の調製 分子量10kDaのHA−Naを原料とし、実施例2−2と同様の方法で調製したHA−TBAの、無水DMSO溶液(10mg/mL)を調製した。その後、実施例1−1で調製したChol−C6塩酸塩をHA−TBAユニットに対して以下の表12に示す比率で各溶液に添加した。次に、DMT−MMをHA−TBAユニットに対して以下の表12に示す比率で加え、室温で2時間撹拌した。さらに5−アミノメチルフルオレセイン(FL)塩酸塩、DMT−MMを以下の表12に示す比率で加え、室温で一晩撹拌した。さらにエタノールアミン(HO−C2)塩酸塩もしくはプロパノールアミン(HO−C3)塩酸塩、DMT−MMを以下の表12に示す比率で加え、室温で5時間撹拌した。以降は実施例2−3−1と同様の方法によって処理し、HA−C6−Chol/C2−OH/FLもしくはHA−C6−Chol/C3−OH/FLを黄色固体として得た。測定溶媒としてDMSO−d6を用いた1H−NMRスペクトル(JNM−ECA500 日本電子株式会社製)を図20(HA−C6−Chol/C2−OH/FL)に示す。実施例2−3−1に記載の式にて算出したHAユニットに対するコレステリル基の導入率ならびに、グルコサミンのアミド基由来NHCOとChol−C6、HO−C2もしくはHO−C3、FLのアミド基由来(NH)からChol−C6、HO−C2もしくはHO−C3、FLの総導入率を算出した。これを表12に示す。〔実施例14〕分子量の異なるヒアルロン酸TBA塩を各種コレステリルカーバメートにより修飾したHA誘導体の調製 実施例2−3−1と同じ条件にて、各種分子量のHA−TBAを用い、各種コレステリルカーバメートにより修飾したHA誘導体を調製した。コレステリル基を導入したHA誘導体の試薬使用量と合成結果を表13に示す。原料のヒアルロン酸は、すべて資生堂社製のものを用いた。〔実施例15〕分子量の異なるヒアルロン酸TBA塩を各種コレステリルカーバメートおよび5−アミノメチルフルオレセインにより修飾したHA誘導体の調製 実施例12と同じ条件にて各分子量のHA−TBAを用い、各種コレステリルカーバメートと5−アミノメチルフルオレセイン(FL)により修飾したHA誘導体を調製した。FLの使用量も実施例12と同様とした。原料のヒアルロン酸は、5kDaのみR&Dシステム社製を用い、それ以外は資生堂社製のものを用いた。 コレステリル基を導入したHA誘導体の試薬使用量と合成結果を表14に示す。〔実施例16〕Hilyte FluorTM750 amineおよび6−アミノヘキシルカーバメートにより修飾したHA誘導体の調製(in vivo imaging用) 実施例12の5−アミノメチルフルオレセイン(FL)塩酸塩の代わりにHilyte FluorTM750 amine(Hilyte)TFA塩を用いた以外は同様の条件にて操作を行い、標題のHA誘導体(HA−C6−Chol/Hilyte)を調製した。添加したモル比は表15に示す。また、Hilyte FluorTM750 amine TFA塩添加後に実施例13と同様にエタノールアミン塩酸塩を反応させ、HA−C6−Chol/C2−OH/Hilyteを調製した。添加したモル比は表15に示す。導入率は実施例12ならびに実施例13と同様の方法にて算出した。なお、Hilyte FluorTM750 amineによる標識は、Hilyte FluorTM750 amineのアミノ基がHA−TBAのカルボキシ基とアミド結合を形成することにより行われた。〔実施例17〕コレステリル基を導入したHA誘導体のDLS測定 実施例12ならびに実施例15で合成したHA誘導体のPBS溶液(0.25mg/mL)を調製し、粒子サイズを動的光散乱法(DLS)にて測定した。測定装置にはゼータサイザーナノZS(Malvern社製)を用いた。z平均粒子サイズを表16に示す。また、50k HA−C6−Chol−22%/FLの サイズ分布を図21に示す。 これにより、HA誘導体はPBS中において50nm以下の非常に小さな微粒子を形成していることが確認された。上記サイズの微粒子は生体内において細網内皮系からの取り込みを回避できため、薬物キャリアとして適している。〔実施例18〕コレステリル基を導入したHA誘導体とタンパク質との複合体の調製(実施例18−1)リゾチーム 実施例5と同様にして、リゾチーム(Lys:Lysozyme from chicken egg white、シグマ社製)を、表17に示すHA誘導体およびCHPと複合化させた。Lys水溶液(4mg/mL、25μL)に対して最終濃度が1×PBSとなるように濃縮PBS(50μL)を加え、さらにHA誘導体またはCHP(4mg/mL、25μL)を加えた。37℃にて24時間インキュベート後、6000Gにて遠心分離し、フリーLysの全て、および分散性複合体が存在する上澄みをサイズ排除クロマトグラフィーに供した。クロマトグラフィーの結果から複合体中に取り込まれずに水溶液中に残存するフリーLysの量を求め、複合体に含まれるLysの量を算出した。さらに、HA誘導体およびCHPの単位重量当たりの複合体に含まれるLysの量(複合化%;(複合体中のLys重量/HA誘導体重量)×100)を求めた。結果を以下の表17に示し、グラフを図22−1に示す。 SECの測定条件 カラム:G3000PWXL(東ソー株式会社製) 溶離液:2×PBS(pH7.4) 流速:1mL/分 注入量:50μL 検出:UV(280nm)。 本発明のHA誘導体の複合化%の値はCHPに比べて約5〜12倍程度高く、本発明のHA誘導体が効率よくLysと複合体を形成することが確認された。(実施例18−2)エキセンディン−4 実施例5と同様にしてエキセンディン−4(Ex−4、アメリカンペプタイド社製)と表18に示すHA誘導体およびCHPを複合化させた。Ex−4水溶液(3.31mg/mL、30.2μL)に対して最終濃度が1×PBSとなるように濃縮PBS(44.8μL)を加え、さらにHA誘導体またはCHP(4mg/mL、25μL)を加えた。37℃にて24時間インキュベート後、6000Gにて遠心分離し、フリーEx−4の全て、および分散性複合体が存在する上澄みをサイズ排除クロマトグラフィーに供した。クロマトグラフィーの結果から複合体中に取り込まれずに水溶液中に残存するフリーEx−4の量を求め、複合体に含まれるEx−4の量を算出した。さらに、HA誘導体およびCHPの単位重量当たりの複合体に含まれるEx−4の量(複合化%;(複合体中のEx−4重量/HA誘導体重量)×100)を求めた。結果を以下の表18に示し、グラフを図22−2に示す。 SECの測定条件 カラム:QC−PAK−GFC200(東ソー株式会社製) 溶離液:PBS(pH7.4) 流速:1.2mL/分 注入量:50μL 検出:UV(280nm)。 本発明のHA誘導体の複合化%の値はCHPに比べて約3〜11倍程度高く、本発明のHA誘導体が効率よくエキセンディン−4と複合体を形成することが確認された。(実施例18−3)ヒト成長ホルモン 実施例5と同様にしてヒト成長ホルモン(hGH:ジェノトロピン(登録商標)注射用)と表19に示すHA誘導体およびCHPを複合化させた。hGHはジェノトロピン(登録商標)を透析によりリン酸緩衝液(10mM、pH7.4)に溶媒置換したものを用いた。hGH水溶液(3.5mg/mL、14.3μL)に対して最終濃度が1×PBSとなるように濃縮PBS(60.4μL)を加え、さらにHA誘導体またはCHP(4mg/mL、25μL)を加えた。37℃にて24時間インキュベート後、6000Gにて遠心分離し、フリーhGHの全て、および分散性複合体が存在する上澄みをサイズ排除クロマトグラフィーに供した。クロマトグラフィーの結果から複合体中に取り込まれずに水溶液中に残存するフリーhGHの量を求め、複合体に含まれるhGHの量を算出した。さらに、HA誘導体の単位重量当たりの複合体に含まれるhGHの量(複合化%;(複合体中のEx−4重量/HA誘導体重量)×100)を求めた。結果を以下の表19に示し、グラフを図22−3に示す。 SECの測定条件 カラム:QC−PAK−GFC300(東ソー株式会社製) 溶離液:PBS(pH7.4) 流速:1.2mL/分 注入量:30μL 検出:UV(280nm)。 本発明のHA誘導体の複合化%の値はCHPに比べて約2〜5倍程度高く、本発明のHA誘導体が効率よくhGHと複合体を形成することが確認された。(実施例18−4)HA修飾物のEPO複合化量2 実施例5と同様の方法にて表20に示すHA誘導体のEPO複合化を行い、複合化%を算出した。グラフを図22−4に示す。 本発明のHA誘導体の複合化%の値はCHPに比べて最大5倍程度高く、本発明のHA誘導体が効率よくEPOと複合体を形成することが確認された。〔実施例19〕EPO in vitroリリース(実施例19−1)Alexa−EPOの調製 炭酸緩衝液(0.3M、pH9.0)に緩衝液置換したEPO水溶液にAlexa Fluor(登録商標)488 5−TFP(インビトロジェン社製)を1mg滴下し、室温にて1時間攪拌した。PD−10カラムによるゲルろ過精製の後、リン酸緩衝液(10mM、pH7.4)にて透析精製(7000MWCO透析膜)を行い、Alexa Fluor(登録商標)488で蛍光標識されたEPO(Alexa−EPO)溶液を得た。なお、Alexa Fluor(登録商標)488による標識は、Alexa Fluor(登録商標)488のカルボキシ基とEPOのアミノ基がアミド結合することで達成されている。(実施例19−2)HA誘導体のAlexa−EPO徐放効果 実施例19−1で得られたAlexa−EPO溶液(3.34mg/mL、10μL)に対して最終濃度が1×PBSとなるように濃縮PBS(90μL)を加え、さらにHA誘導体(6mg/mL、100μL)を加えた。HA誘導体にはHA−C6−Chol−7%、HA−C6−Chol−15%およびHA−C12−Chol−7%を用いた(原料として用いたHA−Naの分子量は、いずれも50kDaである)。37℃にて24時間インキュベートし、そのまま凍結乾燥した。凍結乾燥品全量に対して20mg/mL ウシ血清アルブミン(BSA:シグマ社製)/PBS溶液(200μL)を加え、経時的に遠心後、上澄み(100μL)を採り、フレッシュなBSA/PBS溶液(100μL)を加えた。上澄みをHP−β−CD水溶液(100mM)にて二倍希釈し、37℃にて1時間インキュベート後、SECに供し、Alexa−EPOの濃度を算出し、Alexa−EPOのリリース量を計算した。結果を図23−1に示す。 SEC分析条件 カラム:G3000SWXL(東ソー株式会社製) 溶離液:10mM HP−β−CD/PBS(pH7.4) 流速:1mL/分 注入量:50μL 検出:蛍光検出494/525 いずれのHA誘導体においても徐放効果があることが示され、さらにコレステリル基の導入率は7%よりも15%、スペーサーはC6よりもC12の方が徐放効果があることが明らかとなった。(実施例19−3)リリース溶液のBSA濃度の影響 実施例19−1で得られたAlexa−EPO溶液(3.34mg/mL、10μL)に対して最終濃度が1×PBSとなるように濃縮PBS(133.3μL)を加え、さらにHA−C12−Chol−7%(6mg/mL、16.7μL)を加えた(原料として用いたHA−Naの分子量は、50kDaである)。37℃にて24時間インキュベートし、そのまま凍結乾燥した。凍結乾燥品全量に対して20mg/mL、10mg/mL、0mg/mL ウシ血清アルブミン(BSA:シグマ社製)/PBS溶液(200μL)を加え、経時的に遠心後、上澄み100μLを採り、フレッシュなBSA/PBS溶液(100μL)を加えた。上澄みをHP−β−CD水溶液(100mM)にて二倍希釈し、37℃にて1時間インキュベート後、SECに供し、Alexa−EPOの濃度を算出し、Alexa−EPOのリリース量を計算した。結果を図23−2に示す。SEC条件は実施例19−2と同じである。 この結果より、本発明のHA誘導体に封入(複合化)されたEPOの放出速度は、BSA濃度に依存することが明らかとなった。〔比較例1〕hGHのラットにおける薬物動態試験 表21に示した用量で、hGH溶液を25G針を用いて正常ラット(SD、6週齢、オス)の皮下ならびに尾静脈に投与した。投与後、経時的にへパリン処理をしたシリンジで頸静脈採血を行い、プロテアーゼ阻害剤としてアプロチニンを加えた。得られた血液は血漿分離し、hGH濃度をELISAキット(ロシュアプライドサイエンス社製)にて測定した。皮下ならびに尾静脈投与時のhGHの血漿中濃度推移を図24に示した。また、薬物動態パラメーター(血漿中濃度−時間曲線下面積外挿値(AUC∞)および平均滞留時間(MRT))をWinNonlin Ver.5.0.1(Pharsight社製)によって解析し、その値を表21に示した。〔実施例20〕hGH in vivoリリース(実施例20−1)hGHとHA誘導体との複合体の沈殿凍結乾燥品の調製 実施例2−3−1および実施例14で得られたHA誘導体(6mg/mL、3.375mL)にhGH(4.31mg/mL、0.940mL)を加え、37℃にて1時間インキュベートした。さらに最終濃度が1×PBSとなるように濃縮PBS(0.185mL)を加え、室温にて1時間インキュベートした。沈殿が確認された。30分間遠心後、上澄み(2.25mL)を取り除き、スクロース水溶液(150mg/mL、1.125mL)を加え、よく分散した後に凍結乾燥した。上澄みに含まれるフリーのhGH量をSECから算出し、複合化%を算出した。また、凍結乾燥品を一定量採り、そこに含まれるhGH量から回収率を算出した。結果を表22に示す。 この結果より、本発明のHA誘導体は、効率良くhGHを封入(複合化)することが明らかとなった。 (実施例20−2)hGH/HA誘導体複合体(沈殿品)の調製 HA−C6−Chol−14%(6mg/mL、0.583mL;原料として用いたHA−Naの分子量は50kDa)にhGH(4.84mg/mL、0.145mL)を加え、37℃にて1時間インキュベートした。さらに最終濃度が1×PBSとなるように濃縮PBS(0.147mL)を加え、室温にて1時間インキュベートした。沈殿が確認された。4℃にて保存した。(実施例20−3)hGH/HA誘導体複合体(溶液)の調製 HA−C6−Chol−14%(6mg/mL、0.583mL;原料として用いたHA−Naの分子量は50kDa)にhGH(4.84mg/mL、0.145mL)ならびに最終濃度が82mg/mLとなるようにスクロース水溶液(0.147mL)を加え、37℃にて1時間インキュベートした。沈殿は確認されなかった。4℃にて保存した。 この製剤は溶液状態で投与し、投与後、皮下におけるイオン強度の上昇により沈殿を生じさせることを目的とした製剤である。(実施例20−4)hGH/HA誘導体複合体のラット皮下投与での徐放試験 実施例20−1〜20−3で調製したhGH/HA誘導体複合体を表23−1に示す容量で25G針を用いて正常ラット(SD、6週齢、オス)の皮下に投与した。実施例20−1で調製した凍結乾燥品は、投与直前にPBSに懸濁させて投与した。投与前の製剤を図25に示す。投与後、経時的にへパリン処理をしたシリンジで頸静脈採血を行い、プロテアーゼ阻害剤としてアプロチニンを加えた。得られた血液は血漿分離し、hGH濃度をELISAキット(ロシュアプライドサイエンス社製)にて測定した。各種hGH/HA誘導体複合体投与時のhGHの血漿中濃度推移−および比較例1のhGH溶液の血漿中濃度推移を併せて図26−1〜27−2に示した。また、薬物動態パラメーター(血漿中濃度−時間曲線下面積外挿値(AUC∞)および平均滞留時間(MRT))をWinNonlin Ver.5.0.1(Pharsight社製)によって解析し、その値を表23−2に示した。またMRTのグラフを図28に示す。 この結果、hGH/HA誘導体沈殿製剤からのhGH放出挙動はin vivoにおいても徐放性を有するものであり、また、溶液製剤も皮下にて沈殿を形成することにより徐放性を示すことが確認された。特に実施例20−3で得られた溶液製剤(サンプル20−6)は0.2μmのフィルターによる滅菌が可能であり、シリンジ針への目詰まりの可能性が低いことから医薬品製剤として有用である。〔比較例2〕5−アミノメチルフルオレセインにより修飾したHA誘導体(HA−FL)、および5−アミノメチルフルオレセインとエタノールアミンにより修飾したHA誘導体(HA−C2−OH/FL)の薬物動態試験(比較例2−1)10kDaおよび50kDaのHA−Naを用いたHA−FLの調製 分子量10kDaのHA−Naおよび分子量50kDaのHA−Naを原料とし、実施例2−2と同様の方法で調製したHA−TBAの、無水DMSO溶液(10mg/mL)を調製した。その後、5−アミノメチルフルオレセイン(FL)塩酸塩、DMT−MMをHA−TBAユニットに対してそれぞれ4.4%、4.0%の比率(モル%)で加え、室温で一晩撹拌した。以降は実施例2−3−1と同様の方法によって処理し、目的物(10k HA−FLおよび50k HA−FL)を、それぞれ黄色固体として得た。(比較例2−2)10kDaのHA−Naを用いたHA−C2−OH/FLの調製(その1) 分子量10kのHA−Naを原料とし、実施例2−2と同様の方法で調製したHA−TBAの、無水DMSO溶液(10mg/mL)を調製した。その後、エタノールアミン(HO−C2)塩酸塩、DMT−MMを以下の表24に示す比率で加え、室温で4時間撹拌した。さらに、5−アミノメチルフルオレセイン(FL)塩酸塩、DMT−MMを以下の表24に示す比率で加え、室温で一晩撹拌した。以降は実施例2−3−1と同様の方法によって処理し、目的物(10k HA−C2−OH/FL)を黄色固体として得た。測定溶媒としてDMSO−d6を用いた1H−NMRスペクトル(JNM−ECA500 日本電子株式会社製)から実施例13に記載の式にて算出したグルコサミンのアミド基由来NHCOと、C2−OH、FLのアミド基由来NHCOからC2−OH、FLの総導入率を算出した。これを表24に示す。(比較例2−3)10k HA−C2−OH/FLの調製(その2) 分子量10kのHA−Naを原料とし、実施例2−2と同様の方法で調製したHA−TBAの、無水DMSO溶液(10mg/mL)を調製した。その後、5−アミノメチルフルオレセイン(FL)塩酸塩、DMT−MMを以下の表25に示す比率で加え、室温で一晩撹拌した。さらにエタノールアミン(C2−OH)塩酸塩、DMT−MMを以下の表25に示す比率で加え、室温で5時間撹拌した。以降は実施例2−3−1と同様の方法によって処理し、目的の10k HA−C2−OH/FLを黄色固体として得た。比較例2−2と同様の方法にてC2−OH、FLの総導入率を算出した。これを表25に示す。(比較例2−4)薬物動態試験 表26に示した用量で、比較例2−1〜2−3で調製した蛍光標識HA誘導体を、25G針を用いて正常ラット(SD、6週齢、オス)の尾静脈に投与した。投与後、経時的にへパリン処理をしたシリンジで頸静脈採血を行った。得られた血液は血漿分離し、HP−β−CD(100mM)/トリス緩衝液(500mM、pH9.0)溶液にて2倍希釈し、37℃にて1時間インキュベート後、96穴プレートリーダー(ARVO)にて蛍光標識HA誘導体濃度を測定した。蛍光標識HA誘導体の血漿中濃度推移を図29に示した。また、薬物動態パラメーター(血漿中濃度−時間曲線下面積外挿値(AUC∞))をWinNonlin Ver.5.0.1(Pharsight社製)によって解析し、その値を表26に示した。 この結果より、10kのHA−Naを原料としたサンプルは、C2−OHの導入率が低いHA誘導体(比較例2−3)のみならず、高度に修飾されたHA誘導体(比較例2−4)においても血中から瞬時に消失することが明らかとなった。〔実施例21〕HA−Chol−FLの薬物動態試験(実施例21−1)血漿中濃度推移におけるHA分子量の影響 表27に示した用量で、実施例12ならびに実施例15で調製した蛍光標識HA誘導体を25G針を用いて正常ラット(SD、6週齢、オス)の尾静脈に投与した。投与後、経時的にへパリン処理をしたシリンジで頸静脈採血を行った。得られた血液は血漿分離し、HP−β−CD(100mM)/トリス緩衝液(500mM、pH9.0)溶液にて2倍希釈し、37℃にて1時間インキュベート後、96穴プレートリーダー(ARVO)にて蛍光標識HA誘導体濃度を測定した。蛍光標識HA誘導体の血漿中濃度推移を図30−1に示した。また、薬物動態パラメーター(血漿中濃度−時間曲線下面積外挿値(AUC∞))をWinNonlin Ver.5.0.1(Pharsight社製)によって解析し、その値を表28に示した。表28のAUC∞を原料のHA−Naの分子量に対してプロットしたグラフを図30−2に示す。 カルボキシ基を高度に修飾していない(例えば修飾率54%以下の)HA誘導体は分子量にかかわらず、静脈内投与時、瞬時に血中から消失することが知られている。本発明のHA−Cholは最大で23%しか置換基を導入していないにもかかわらず(FLを勘案しても27%以下)、予想外にも低分子量(5k〜18kDa)のヒアルロン酸を原料としたHA−Cholに限ってのみ良好な血中滞留性を示した。(実施例21−2)血漿中濃度推移におけるリンカーの影響 表29に示す実施例15で調製したリンカーの異なる蛍光標識HA誘導体を実施例21−1と同様の方法で薬物動態試験を行い、血漿中濃度推移を図31に示した。また、実施例21−1と同様の方法にて薬物動態パラメーター(AUC∞)を算出し、その値を表30に示した。 リンカーの種類によらず低分子量のヒアルロン酸を原料としたHA−Cholは良好な血中滞留性を有することが明らかとなった。(実施例21−3)血漿中濃度推移におけるChol導入率の影響 表31に示す実施例12および実施例15で調製したChol導入率の異なる蛍光標識HA誘導体を実施例21−1と同様の方法で薬物動態試験を行い、血漿中濃度推移を図32−1、図32−2に示した。また、実施例21−1と同様の方法にて薬物動態パラメーター(AUC∞)を算出し、その値を表32に示した。 コレステリル基の導入率はHA−Cholの血中滞留性に大きな影響を与えないことが明らかとなった。(実施例21−4)血漿中濃度推移(HA−Chol/C2−OH/FL) 表33に示す実施例13で調製したC2−OHとCholにて高度に修飾した蛍光標識HA誘導体を実施例21−1と同様の方法で薬物動態試験を行い、血漿中濃度推移を図33に示した。また、実施例21−1と同様の方法にて薬物動態パラメーター(AUC∞)を算出し、その値を表34に示した。 C2−OHのみで高度に修飾した(例えば修飾率96%以上)10kHA−C2−OHは比較的早く血中から消失するが、ほぼ同じ修飾率であっても、その一部にコレステリル基が導入されている本発明の10kHA−Chol/C2−OHは意外にも良好な血中滞留性を示した。 ヒアルロン酸のカルボキシ基を高度に修飾した場合、血中滞留性が向上することが知られている(特許文献8)が、10kDa程度の低分子量のヒアルロン酸およびその誘導体(塩)を原料にした場合、血中滞留性(AUC)を向上させることは困難であり(実施例21−4;比較サンプル2−4)、それは、腎排泄によるものと推測される。同じ分子量のヒアルロン酸およびその誘導体(塩)を原料にし、同等の修飾率でヒアルロン酸のカルボキシ基を高度に修飾した場合であっても、その修飾が前記疎水性基を含んで行われた場合は、血中滞留性が顕著に向上し、低分子量のヒアルロン酸誘導体であっても、薬物の担体として実用性の高いものが供給できることが明らかとなった(実施例21−4;サンプル21−13)。(実施例21−5)皮下投与後のHA誘導体の血漿中濃度推移 表35に示す蛍光標識HA誘導体を皮下から投与したことを除くと実施例21−1と同様の方法で薬物動態試験を行い、血漿中濃度推移を図34−1、34−2に示した。また、実施例21−1と同様の方法にて薬物動態パラメーター(AUC∞)を算出し、その値を表36に示した。 HA誘導体は皮下投与も可能であることが示唆された。(実施例21−6)ヒアルロン酸先行投与による血漿中濃度推移の影響 投与する20分前に30mgのヒアルロン酸ナトリウム(1000k、300k、100k、50k、10kをそれぞれ6mg含む混合物)を尾静脈から投与した後に、表34に示す蛍光標識HA誘導体を尾静脈から投与したことを除くと実施例21−1と同様の方法で薬物動態試験を行い、血漿中濃度推移を図35−1および図35−2に示した。また、実施例21−1と同様の方法にて薬物動態パラメーター(AUC∞、MRT)を算出し、その値を表38に示した。 サンプル21−2はHAによる動態への変化がほとんど確認されなかったことから、肝臓におけるHA特有の代謝を回避していることが明らかになった。一方、サンプル21−5はHAのプレ投与により動態が改善したことから、ヒアルロン酸誘導体の消失にHAの代謝系が関与していることが明らかとなった。 SECの測定条件 カラム:G5000PWXL(東ソー株式会社製) 溶離液:HP−β−CD(10mM)/トリス緩衝液(500mM、pH9.0) 流速:0.5mL/分 注入量:50μL 検出:蛍光494/515 血漿サンプルのピークが投与前サンプルのピーク位置と同じであることから、プレートリーダーで検出された蛍光はHA−Chol−FLの分解物に由来するものではないことが示唆された。(実施例21−8)尿サンプルのSEC分析 実施例21−1ならびに比較例2−4のラット薬物動態試験と同時に尿サンプルも採取した。尿サンプル50μLに対し、HP−β−CD(100mM)/トリス緩衝液(500mM、pH9.0)溶液(50μL)を加え、37℃にて1時間インキュベート後、SEC分析を行った。クロマトグラムを図37−1〜37−5に示す。 SECの測定条件 カラム:G5000PWXL(東ソー株式会社製) 溶離液:HP−β−CD(10mM)/トリス緩衝液(500mM、pH9.0)溶液 流速:0.5mL/分 注入量:50μL 検出:蛍光494/515 尿サンプルのピークが投与前サンプルのピーク位置より後ろで溶出していることから、HA−Chol−FLは何らかの経路によって、分解されていることが示唆された。よってHA−Chol−FLは生分解性かつ血中滞留性の良い粒子を形成することが示された。生分解性であることは安全性の観点から非常に有用である。〔実施例22〕コレステリル基を導入したHA誘導体の沈殿性および分散性(その2) 実施例2−3−2〜2−3−4で得られたHA誘導体を用いたほかは実施例7と同じ方法によって残存率を算出した。HA誘導体の疎水性基導入率に対して残存率をプロットしたものを図38に示す。 リンカーがC2、C8、C12においてもC6と同様に沈殿する範囲と安定に分散する範囲があることが明らかとなった。〔実施例23〕コレステリル基を導入したHA誘導体と低分子薬物との複合体の調製 実施例14で調製した10k HA−C6−Chol−15%、ならびに実施例2−3−1で調製した50k HA−C6−Chol−15%の水溶液(6mg/mL、100μL)に対し、ドキソルビシン(DOX)水溶液(10mg/mL、4μL、和光純薬製)を加え、最終濃度が1×PBSとなるように濃縮PBS溶液を96μL加えた。DOX水溶液の代わりに超純水を加えたものをコントロールとした。室温にて1時間インキュベート後、限外ろ過器(マイクロコン、分画分子量10,000)にて遠心ろ過し、ろ液をHPLC(逆相、RP)に供した。HA誘導体と複合化していないフリーのDOXが検出される。クロマトグラムを図39に示す。 RPの測定条件 カラム:cadenza CD−C18(インタクト社製) 溶離液A:超純水、0.1% TFA 溶離液B:アセトニトリル、0.1% TFA グラジエント:B5%→B95%(8分) 流速:0.75mL/分 注入量:10μL 検出:UV480 本発明のHA誘導体をドキソルビシンと混合することによって、複合体を形成することが明らかとなった。 〔実施例24〕HA−Chol in vivoイメージング ヌードマウス(BALB−nu/nu、メス、7週齢)にヒト乳癌由来MDA−MB−213細胞切片(2mm×2mm×2mm)を皮下移植し、ゼノグラフトマウスを作成した。17日後、腫瘍サイズ、体重にて群分けし(解析ソフト:ANTES、体重18.8〜24.3g、腫瘍サイズ215mm3〜360mm3)、実施例16で調製したHilyte標識HA誘導体および50k HA−Hilyte(FL塩酸塩の代わりにHilyte TFA塩を用いた以外は比較例2−1と同様の方法で調製)を表39に示す容量で尾静脈投与した。In vivo イメージング装置(NightOWL983、ベルトールド社製)を用いて、6時間後にゼノグラフトマウスを撮影した(700/780nm、0.5msec)。また24時間後に腫瘍を取り出し、同様にIn vivo imaging装置で撮影した。撮影したデータはすべて解析ソフト(Indigo)にて解析した。6時間後のIn vivo イメージング図を図40に示す。また、腫瘍から得られた光量をグラフ化したものを図41に示す。 この結果より、10k HA−C6−Chol(サンプル24−2)は、修飾していないHA(サンプル24−1)もしくは50k HA−C6−Chol(サンプル24−3)と比べて、腫瘍に集積しやすい特性を有していることが明らかとなった。本発明のHA誘導体に抗がん効果のある薬物を封入(複合化)もしくはコンジュゲートすることにより、腫瘍特異的なターゲティングが可能となる可能性が示された。〔実施例25〕コレステリル基とメタクリロイル基を導入したHA誘導体(HA−Chol/AEMA)のゲル化 実施例11で調製した(50k)HA−C2−Chol−8%/AEMA−27%を超純水にて溶解し(40mg/mL、100μL)、トリエタノールアミン(TEA、1.3μL)を加えて混合後、ジチオトレイトール(DTT、100mg/mL、2.0μL)を加え、500μLチューブにて37℃でインキュベートした。24時間後、チューブから取り出したところ、ゲル化していることが確認された。これを図42に示す。 この結果より、HA−Chol/AEMAは、DTTによりゲル化させることが可能であり、コレステリル基による疎水性相互作用による物理架橋と化学架橋の両方を有するデュアルゲルを調製することが可能であることが明らかとなった。このデュアルゲルは物理架橋のみのHA−Cholよりも封入した薬物をより強固に保持する機能を有することが予想される。 なお、調製したHA−C2−Chol−8%/AEMA−27%ゲルを0.93mg/ml CyTM3標識hGH溶液(赤色)2mL中に加え、室温にて4日間インキュベートしところ、(CyTM3標識hGH溶液はCy3 Mono−Reactive Dye Pack(GE Healthcare社製)とhGH溶液を用い、説明書に従い調製した。)ゲルが周囲の溶液よりも濃い赤色で染まっていることが確認された(データは示さず)。この結果より、HA−Chol/AEMAのゲルは、ゲル化後に自発的にhGHを封入することが示された。HA−Chol/AEMAのゲルは、タンパク質を安定に封入するという観点から医薬品基材として有用である。〔実施例26〕ヒアルロン酸のN−アセチルグルコサミン部分の6位のヒドロキシ基にコレステリル基を導入したヒアルロン酸誘導体の合成 実施例2−2で調製した、HA−Na(50kDa)を出発原料とするHA−TBA 68.26mgを無水DMSOに溶解した。そこに脱水ピリジンに溶解させたコレステリル N−(6−イソシアネートヘキシル)カーバメート(CHI、4.15mg)を滴下し、窒素下、80℃にて9.5時間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルにて再沈殿後、遠心分離にて回収した。得られた白色固体を再度DMSOに溶解し、0.3M NaCl溶液、蒸留水、10mM HCl溶液、蒸留水に対して透析し(Slide−A−Lyzer、分画分子量3500Da、PIERCE社製)、得られた透析液を凍結乾燥し、50k HA−O−C6−Cholを得た。測定溶媒としてDMSO−d6を用いた1H−NMRスペクトル(500MHz Bruker社製)から実施例2−3−1記載の式にて算出したHAユニットに対するコレステリル基の導入率を表40に示す。 また、99kDa HA−TBA(102.68mg)を用い、4.99mgのCHIを用いた他は同様の方法で合成した99k HA−O−C6−Cholを得た。コレステリル基の導入率を表40に示す。〔実施例27〕ヒアルロン酸のN−アセチルグルコサミン部分の6位のヒドロキシ基にコレステリル基を導入したヒアルロン酸誘導体のDLS測定 実施例26で調製した50k HA−O−C6−Chol−1%および99k HA−O−C6−Chol−2%を用い、溶媒として超純水に溶解した他は実施例17と同様の方法にてDLS測定を行った。z平均粒子サイズを表41に示す。 疎水性基を導入したヒアルロン酸誘導体であって、式(I):[式中、R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミルおよびC1−6アルキルカルボニルから選択され; Zは、直接結合、または2〜30個の任意のアミノ酸残基からなるペプチドリンカーを表し; X1は、以下の式: −NRb−R、 −NRb−COO−R、 −NRb−CO−R、 −NRb−CO−NRc−R、 −COO−R、 −O−COO−R、 −S−R、 −CO−Ya−S−R、 −O−CO−Yb−S−R、 −NRb−CO−Yb−S−R、および −S−S−R、により表される基から選択される疎水性基であり; Ra、RbおよびRcは、それぞれ独立に、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキルおよびヒドロキシC2−20アルキルから選択され、ここで当該基のアルキル部分は、−O−および−NRf−から選択される1〜3個の基が挿入されていてもよく; Rfは、水素原子、C1−12アルキル、アミノC2−12アルキルおよびヒドロキシC2−12アルキルから選択され、当該基のアルキル部分は−O−および−NH−から選択される1〜2個の基が挿入されていてもよく; Rは、コレステリル基であり; Yは、C2−30アルキレン、または−(CH2CH2O)m−CH2CH2−であり、ここで、当該アルキレンは、−O−、−NRg−および−S−S−から選択される1〜5の基が挿入されていてもよく; Rgは、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキルまたはヒドロキシC2−20アルキルから選択され、当該基のアルキル部分は−O−および−NH−から選択される1〜3個の基が挿入されていてもよく; Yaは、C1−5アルキレンであり; Ybは、C2−8アルキレンまたはC2−8アルケニレンであり; mは、1〜100から選択される整数である]で表される繰り返し単位を1以上含む、前記ヒアルロン酸誘導体。 式(II):[式中、R1a、R2a、R3a、およびR4aは、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミルおよびC1−6アルキルカルボニルから選択され;Xaは、ヒドロキシおよび−O−Q+、から選択され;ここで、Q+は、カウンターカチオンである]で表される繰り返し単位さらに含む、請求項1に記載のヒアルロン酸誘導体。 存在する二糖の繰り返し単位に対する前記疎水性基の導入率が7〜42%である、請求項1または2に記載のヒアルロン酸誘導体。 存在する二糖の繰り返し単位に対する前記疎水性基の導入率が7〜15%、または18〜42%である、請求項3に記載のヒアルロン酸誘導体。 Yが、−(CH2)2−、−(CH2)6−、−(CH2)8−、および−(CH2)12−から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒアルロン酸誘導体。 重量平均分子量が27kDa以下である、請求項2の式(II)で表される繰り返し単位から実質的になるヒアルロン酸またはその誘導体を原料として製造することを特徴とする、請求項1〜5に記載のヒアルロン酸誘導体。 存在する二糖の繰り返し単位に対する前記疎水性基の導入率が2〜50%である、請求項6に記載のヒアルロン酸誘導体。 Yが、−(CH2)n1−または−(CH2CH2O)m1−CH2CH2−であり、ここでn1は2〜15の整数であり、m1は1〜4の整数である、請求項6または7に記載のヒアルロン酸誘導体。 式(III):[式中、R1b、R2b、R3b、およびR4bは、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミルおよびC1−6アルキルカルボニルから選択され; Xbは、−NRe−Yb−Rdを表し; Reは、水素原子またはC1−6アルキルであり; Rdは、水素原子、C1−6アルキルまたは基−CO−C(R7)=CH2であり; Ybは、−CH2−(CHR5)l−2−CH2−NH−、−CH2−(CHR6)p−2−CH2−O−、−(CH2)j−S−、−CH2−CH2−(Y3−CH2−CH2)z−S−、−CH2−CH2−(Y4−CH2−CH2)t−NH−または−CH2−CH2−(Y5−CH2−CH2)y−O−であり、 l、p、およびjは、それぞれ独立に2〜10から選択される整数であり、z、tおよびyは、それぞれ独立に1〜200から選択される整数であり、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子またはヒドロキシであり、R7は、水素原子またはメチルであり、Y3、Y4およびY5は、それぞれ独立して、−O−または−NH−である]で表される繰り返し単位をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のヒアルロン酸誘導体。 Xbが、−NRi−(CH2)n2−OHであり、ここで、RIは、水素原子であり、n2は2〜10から選択される整数である、請求項9に記載のヒアルロン酸誘導体。 存在する二糖の繰り返し単位に対する式(II)で表される繰り返し単位の割合が50%以下である、請求項9または10に記載のヒアルロン酸誘導体。 式(IV):[式中、R2c、R3c、およびR4cは、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミルおよびC1−6アルキルカルボニルから選択され; Xcは、ヒドロキシおよび−O−Q+、から選択され;ここで、Q+は、カウンターカチオンであり; R1cは、 −CO−C(R21)=CH2、 −CH2CH(OH)−R22−Y1、 −CH(CH2OH)−R22−Y1、 −CONH−R23−Y1、 −CO−R23−Y1、 −CONH−CH2CH2−(X21−CH2CH2)n3−Y1、および −CO−CH2CH2−(X21−CH2CH2)n4−Y1から選択され、 X21は、OおよびSから選択され: n3およびn4は、それぞれ1〜50の整数を表し; Y1は、アミノ、メルカプト、ホルミル、−X14−CO−C(R18)=CH2から選択され、 R21は、水素原子またはC1−6アルキルから選択され; R22およびR23は、2価のC2−50炭化水素基または2価のC2−50ポリアルキレンオキシ基であり、前記2価のC2−50炭化水素基は、1〜10個の−O−が挿入されて一部にポリアルキレンオキシ部分が形成されていてもよく; X14は、OおよびN(R19)から選択され; R18は水素原子またはC1−6アルキルであり; R19は水素原子またはC1−6アルキルである]で表される繰り返し単位をさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のヒアルロン酸誘導体。 式(I)で表される1以上の繰り返し単位;および式(II)、式(III)または式(IV)で表される1以上の繰り返し単位から実質的になる、請求項1〜12のいずれか1項に記載のヒアルロン酸誘導体。 水中で会合により微粒子を形成する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のヒアルロン酸誘導体。 請求項1〜14のいずれか1項に記載のヒアルロン酸誘導体を担体として含む医薬組成物。 薬物がヒアルロン酸誘導体と複合体を形成する、請求項15に記載の医薬組成物。 請求項1〜14のいずれか1項に記載のヒアルロン酸誘導体に、1以上の薬物が結合した、ヒアルロン酸誘導体−薬物結合体。 薬物が、薬理活性を有するタンパク質またはペプチドである、請求項15または16に記載の医薬組成物。