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タイトル:特許公報(B2)_メタクリル酸の製造方法及びメタクリル酸製造用触媒
出願番号:2010536690
年次:2014
IPC分類:C07C 51/235,C07C 57/055,B01J 23/88,B01J 37/02,B01J 37/04,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

荒谷 康弘 倉上 竜彦 JP 5574434 特許公報(B2) 20140711 2010536690 20091105 メタクリル酸の製造方法及びメタクリル酸製造用触媒 日本化薬株式会社 000004086 特許業務法人 信栄特許事務所 110001416 荒谷 康弘 倉上 竜彦 JP 2008285291 20081106 20140820 C07C 51/235 20060101AFI20140731BHJP C07C 57/055 20060101ALI20140731BHJP B01J 23/88 20060101ALI20140731BHJP B01J 37/02 20060101ALI20140731BHJP B01J 37/04 20060101ALI20140731BHJP C07B 61/00 20060101ALN20140731BHJP JPC07C51/235C07C57/055 BB01J23/88 ZB01J37/02 301MB01J37/04 102C07B61/00 300 C07C 51/235 C07C 57/055 B01J 23/88 B01J 37/00 国際公開第2004/073857(WO,A1) 国際公開第2004/105941(WO,A1) 特開2006−272151(JP,A) 国際公開第2006/121100(WO,A1) 特開2006−314923(JP,A) 特開2004−082099(JP,A) 特開2008−036527(JP,A) 国際公開第2008/104432(WO,A1) 特開2008−238161(JP,A) 特開平03−109946(JP,A) 16 JP2009005873 20091105 WO2010052909 20100514 17 20120510 斉藤 貴子 本発明は、第1段目において、酸化触媒の存在下にイソブチレンを酸化してメタクロレインとし、得られた反応生成ガスを、第2段目において、酸化触媒の存在下にメタクロレインを酸化してメタクリル酸を得る直結二段接触気相酸化法によるメタクリル酸の製造方法及びそのための、2段目用(メタクロレイン酸化用)酸化触媒に関する。 メタクロレインを接触気相酸化反応しメタクリル酸を製造する方法及び同反応において使用する触媒は数多く提案されており(例えば特許文献1〜5)、その一部は工業的規模の生産に用いられている。 また、メタクリル酸を製造する方法の1つとして、第1段目において、イソブチレンを酸化してメタクロレインとし、得られた反応生成ガスを、第2段目に供給して、メタクロレインを酸化してメタクリル酸を得る直結二段接触気相酸化法も検討されている(非特許文献1)。 直結二段接触気相酸化法によるイソブチレンからのメタクリル酸製造法においては、第1段目及び第2段目を直結して反応を行うと未反応イソブチレンが後段触媒の活性に悪影響を与えるため、未反応イソブチレンを減らすため、前段反応のイソブチレンの転化率は98%を超えて運転されるのが一般的である。特開昭50−101316号公報特開昭57−177347号公報特開平4−63139号公報特開平5−31368号公報特開平6−91172号公報和田正大,触媒,Vol. 32,4,223(1990) しかしながら、モリブデン‐バナジウム系触媒を用いたアクロレインの接触気相酸化反応によるアクリル酸の製造と比較すると、メタクロレインの接触気相酸化反応によるメタクリル酸製造法及びメタクリル酸製造用触媒は一部工業化されているものの、反応収率(活性及び選択性)が低く、触媒寿命も短いため、改良が求められている。特に、イソブチレンからの直結二段接触気相酸化によるメタクリル酸の製造では、第2段目の反応での未反応イソブチレンによる触媒活性の低下、触媒寿命の短命化を避けるため、98%を超えるイソブチレン転化率での反応が好ましいと考えられている。 一方、第一段目反応を99%以上の転化率で、反応を行うと、高温での反応が必要とされ、一段目触媒の寿命が短縮されると共に、メタクロレイン及びメタクリル酸への選択率(有効選択率)も下がる傾向がある。そのため、触媒への熱的負荷も少なく、有効選択率も高い、イソブチレン転化率95〜98モル%程度で行うことは望ましい。そのため、未反応イソブチレンの残存率が2〜5%という比較的高い値においても、未反応イソブチレンでの悪影響の少ない触媒の開発が求められている。イソブチレンの接触気相酸化反応によりメタクロレインを生成させ、又はターシャリーブチルアルコールの脱水反応により生成したイソブチレンの接触気相酸化反応によりメタクロレイン生成させ、該メタクロレインの接触気相酸化反応によりメタクリル酸を製造する直結二段接触気相酸化法によるメタクリル酸製造方法において、後段の触媒として特定の触媒を使用することにより、比較的高い、未反応イソブチレンの残存下においても、イソブチレンでの悪影響が少なく、比較的高いメタクロレイン転化率及びメタクリル酸選択率維持することが出来ることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は下記に関するものである。(1)(a)イソブチレンを、酸化触媒の存在下に、分子状酸素または分子状酸素含有ガスにより気相にてメタクロレインに酸化し(工程(a))、(b)得られた、未反応イソブチレン及びメタクロレインを含む、反応生成ガスを、酸化触媒の存在下に、分子状酸素または分子状酸素含有ガスにより気相にて酸化してメタクリル酸を製造する(工程(b))、方法であって、工程(a)におけるイソブチレンの転化率を95モル%以上、98モル%以下で、反応を行い、工程(b)の酸化触媒が、モリブデン、バナジウム、リン、及び、カリウム、ルビジウム、セシウム及びアンモニア成分からなる群から選ばれる一種又は二種、を含む触媒組成物を成形及び焼成して得られた触媒であることを特徴とするメタクリル酸の製造方法。(2) 工程(b)における、酸化触媒が、一般式(1)Mo10VaPb(NH4)cXdYeOf (1)(式中Moはモリブデン、Vはバナジウム、Pはリン、(NH4)はアンモニウム基を、XはK、Rb、Csから選ばれる少なくとも一種の元素、YはSb、As、Cu、Ag、Mg、Zn、Al、B、Ge、Sn、Pb、Ti、Zr、Cr、Re、Bi、W、Fe、Co、Ni、Ce、Thからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素をそれぞれ表し、a〜fは、それぞれの元素の原子比を表し、aは0.1≦a≦6.0の正数、bは0.5≦b≦6.0の正数、cは0.1≦c≦10.0の正数、dは0.1≦d≦3.0の正数、eは0≦e≦3.0の正数をそれぞれ表す。)で表される活性成分組成を有する触媒組成物を成型及び焼成することにより得られたメタクリル酸製造用触媒である上記(1)に記載のメタクリル酸の製造方法。(3) 一般式(1)で表される活性成分組成を有する触媒組成物を焼成する温度が300〜400℃未満で焼成することにより得られたメタクリル酸製造用触媒を使用する上記(1)又は(2)に記載のメタクリル酸の製造方法。(4) YがSb、As及びCuからなる群から選ばれる少なくとも2種の元素である上記(2)〜(3)の何れか1項に記載のメタクリル酸の製造方法。(5) YがAs及びCuの両者である上記(4)に記載のメタクリル酸の製造方法。(6) 触媒組成物の成型が、該組成物のスラリー乾燥体を、強度向上剤と共に、水又は炭素数1〜4のアルコールをバインダーとし、球状担体上に被覆して、球状被覆触媒とするものである上記(1)〜(5)の何れか1項に記載のメタクリル酸の製造方法。(7) 触媒組成物の成型が、該組成物のスラリー乾燥体を、強度向上剤及び細孔形成剤と共に、水又は炭素数1〜4のアルコールをバインダーとし、球状担体上に被覆して、球状被覆触媒とするものである上記(1)〜(5)の何れか1項に記載のメタクリル酸の製造方法。(8) 工程(a)において、ビスマス‐モリブデン含有複合酸化物触媒を使用する上記(1)〜(7)の何れか1項に記載のメタクリル酸の製造方法。(9) ビスマス‐モリブデン含有複合酸化物触媒が、モリブデン、ビスマス、鉄及びコバルトの4者、及び、ニッケル、錫、亜鉛、タングステン、クロム、マンガン、マグネシウム、アンチモン、セリウム、チタンからなる群から選択される少なくとも一種、更に、アルカリ金属又はタリウムを含む複合酸化物触媒を使用する上記(8)に記載のメタクリル酸の製造方法。(10) 工程(b)における、未反応イソブチレン及びメタクロレインを含む、反応生成ガスが、反応生成ガスの総量中に、未反応イソブチレンを2〜5モル%含むものである上記(1)〜(9)の何れか1項に記載のメタクリル酸の製造方法。(11)一般式(1)Mo10VaPb(NH4)cXdYeOf (1)(式中Moはモリブデン、Vはバナジウム、Pはリン、(NH4)はアンモニウム基を、XはK、Rb、Csから選ばれる少なくとも一種の元素、YはSb、As、Cu、Ag、Mg、Zn、Al、B、Ge、Sn、Pb、Ti、Zr、Cr、Re、Bi、W、Fe、Co、Ni、Ce、Thから選ばれる少なくとも一種の元素をそれぞれ表し、a〜fは、それぞれの元素の原子比を表し、aは0.1≦a≦6.0の正数、bは0.5≦b≦6.0の正数、cは0.1≦c≦10.0の正数、dは0.1≦d≦3.0の正数、eは0≦e≦3.0の正数をそれぞれ表す。)で表される活性成分組成を有する触媒組成物のスラリー乾燥体を、強度向上剤及び細孔形成剤と共に、水又は炭素数1〜4のアルコールをバインダーとし、球状担体上に被覆して、球状被覆触媒に成形し、100〜450℃で焼成することにより得られた上記(1)における工程(b)用メタクリル酸製造用酸化触媒。(12) YはSb、As及びCuからなる群から選ばれる少なくとも2種の元素である請求項11に記載の工程(b)用メタクリル酸製造用触媒。(13) YがAs及びCuからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素である一般式(1)で表される活性成分組成を有する触媒組成物を成型し、次いで250〜400℃で焼成することにより得られた上記(11)又は(12)に記載の工程(b)用メタクリル酸製造用酸化触媒。(14) 球状被覆触媒全体に対する活性成分の割合が10〜60質量%である上記(11)〜(13)に記載の工程(b)用メタクリル酸製造用酸化触媒。(15) 細孔形成剤の割合が活性成分に対して1〜40質量%である上記(11)〜(14)に記載の工程(b)用メタクリル酸製造用酸化触媒。(16) 工程(b)用の、触媒組成物を成型及び焼成することにより得られた触媒が、下記一般式(a’−1)Mo10VaPb(NH4)c’XddYeOf (a’−1)(式中,Moはモリブデン、Vはバナジウム、Pはリン、(NH4)はアンモニウム基を、XはK、Rb、Csから選ばれる少なくとも一種の元素、YはSb、As、Cu、Ag、Mg、Zn、Al、B、Ge、Sn、Pb、Ti、Zr、Cr、Re、Bi、W、Fe、Co、Ni、Ce、Thから選ばれる少なくとも一種の元素をそれぞれ表し、a、b、c’、dd、g及びfは、それぞれの元素の原子比を表し、aは0.1≦a≦6.0の正数、bは0.5≦b≦6.0の正数、c’は0≦c’≦10の正数、ddは0≦dd≦3.0の正数、eは0≦e≦3.0の正数をそれぞれ表す。)で表される活性成分組成を有する触媒である上記(1)に記載のメタクリル酸の製造方法。(17) 触媒組成物の成型が、該組成物のスラリー乾燥体を、強度向上剤及び細孔形成剤と共に、水又は炭素数1〜4のアルコールをバインダーとし、球状担体上に被覆して、球状被覆触媒とするものである上記(16)に記載のメタクリル酸の製造方法。 (18) YがSb、As及びCuからなる群から選ばれる少なくとも2種の元素である上記(16)又は(17)に記載のメタクリル酸の製造方法。(19) c’が0.01≦c’≦5の正数である上記(16)〜(18)に記載のメタクリル酸の製造方法。 (20) ddが0.1≦dd≦3.0の正数である上記(16)〜(19)の何れか1項に記載のメタクリル酸の製造方法。 本発明によれば、イソブチレンの直結二段接触気相酸化によるメタクリル酸の製造においても、イソブチレンの転化率を98モル%以上、特に99%以上という高い転化率にする必要がなく、最適な転化率での運転が可能であり、更に、高いイソブチレン転化率にする必要がないことから、第1段目(本発明における工程(a))の反応温度を下げることが可能であり、第1段目触媒への熱的負荷が小さく、第1段目触媒の寿命が延び、且つ、第2段目において、イソブチレン被毒に強い触媒を使用することから、長期の安定した運転が可能となる。また、前段反応を有効成分収率の高い範囲で運転することが可能となることから、イソブチレンに対するメタクリル酸の収率を高めることが可能である。 以下、本発明を詳細に説明する。本発明で対象とするのは、イソブチレンからメタクロレインを経由してメタクリル酸を製造するメタクリル酸製造方法であり、第1段目(工程(a))の酸化反応器と第2段目(工程(b))の酸化反応器の間に精製装置を設けない直結二段接触気相酸化によるメタクリル酸の製造方法である。 原料イソブチレンは、イソブチレンを直接用いても、また、ターシャリーブチルアルコールの脱水反応により生成したイソブチレンであってもよい。 本発明の直結二段接触気相酸化法によるメタクリル酸の製造方法においては、前段(工程(a))のイソブチレンの接触気相酸化反応を、イソブチレンの転化率(モル%:以下同じ)が95%以上で98%以下、より好ましくは96以上で、98%未満、更に好ましくは、97%以上で、98%未満となる条件で行うのが好ましい。また、メタクロレイン及びメタクリル酸の合計選択率(以下前段有効選択率ともいう)が、80%以上、より好ましくは84%以上となるように反応させるのが、メタクリル酸の最終収率を向上させる上で好ましい。上記合計選択率の上限は100%が最も好ましいが、実際は、95%以下、より普通には90%以下である。 前段工程(a)のイソブチレン転化率は、使用触媒、反応温度やガス流量などによって上記の範囲に調節することが出来る。これらは前段反応用触媒の性能及び前段反応器の形状を考慮して、適宜予備的試験を行うことにより、当業者は容易に決定することが出来る。 工程(a)のイソブチレンの接触気相酸化に使用する触媒は、一般に、イソブチレンの接触気相酸化でのメタクロレインの製造用触媒として知られている触媒で、上記の性能を達成するものであればいずれも使用出来る。そのような触媒は一般に多く知られている。 例えば、最も一般的にはビスマス‐モリブデン含有複合酸化物触媒である。それらは、特開2007−61763、特開平10−216523、特開2009−114119等に開示された触媒を挙げることが出来る。好ましい触媒の一例としては、モリブデン、ビスマス及び鉄の3者、及びコバルト、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、タングステン(W)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アンチモン(Sb)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも一種(好ましくはコバルト及びニッケルの何れか一種又は二種)、更に、アルカリ金属(好ましくはカリウム、ルビジウム、及びセシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種)又はタリウムを含む複合酸化物触媒を挙げることが出来る。 該複合酸化触媒の一例としては、下記一般式(2)Mo13 Biaa Febb Cocc XXd’ YYe’ Of’ (2)(式中,Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、 XXはアルカリ金属(好ましくはカリウム、ルビジウム及びセシウムから選ばれる少なくとも一種)又はタリウム、YYはニッケル(Ni)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、タングステン(W)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アンチモン(Sb)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも一種の元素を表し、aa、bb、cc、d’、e’、f’は、それぞれの元素の原子比を表し、aaは0.1≦aa≦10の正数、bbは0.1≦bb≦10.0の正数、ccは1≦cc≦10.0の正数、d’は0.01≦d’≦2の正数、e’は0≦e’≦2.0の正数をそれぞれ表す、また、f’は焼成による各元素の酸化程度により決まる値を表す。)で表される複合酸化触媒を挙げることが出来る。XXとしてはセシウムがより好ましく、YYとしてはニッケルがより好ましい。より好ましい触媒としては、上記式(2)において、XXがカリウム、ルビジウム及びセシウムから選ばれる少なくとも一種(好ましくはセシウム)であり、YYがニッケルである触媒である。 本発明の直結二段接触気相酸化によるメタクリル酸の製造方法の工程(b)で使用するメタクリル酸製造用触媒は、触媒の活性成分(モリブデン、リン、バナジウム、及び、アンモニア、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選ばれる少なくとも一種の元素)の一種又は二種以上を含有する化合物を、全ての活性成分が含まれるように、含む水溶液または該化合物の水分散体(以下、両者をあわせてスラリーという)を乾燥し、得られた乾燥粉末を成型、焼成することにより得ることが出来る。 本発明において使用する触媒は上記の活性成分(モリブデン、リン、バナジウム、及び、アンモニア、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選ばれる少なくとも一種の元素)以外に、活性成分としては、アンチモン、砒素、銅、銀、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、硼素、ゲルマニウム、錫、鉛、チタン、ジルコニウム、クロム、レニウム、ビスマス、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、セリウム、トリウムから選ばれる少なくとも一種の元素を任意成分として含んでもよい。 本発明の工程(b)で使用する好ましい触媒の焼成前の、酸素を除く活性成分元素の組成は、原料化合物の添加割合から、下記一般式(a−1)で表すことができる。Mo10VaPb(NH4)cXddYe (a−1)(式中の、一般式(1)と同じ記号は、何れも、一般式(1)と同じ意味を表し、ddは0≦d≦3.0を表す。) 上記触媒において、XとしてはCsがより好ましく、YとしてはSb、As及びCuからなる群から選ばれる少なくとも2種の元素がより好ましい。また、場合により、上記式(a−1)において、YがAs及びCuの2種である触媒も好ましい。 後段工程(b)で使用する触媒は、スラリー調製時に、アンモニウム基含有化合物を添加して、スラリーを調製し、前記式(a−1)で表される組成とするのが好ましい。従って、この元素組成を有する乾燥組成物を、成形、焼成して得られた触媒は、本発明の後段工程(b)で使用する触媒として好ましい。 この焼成後の触媒組成は、下記一般式(a’−1)Mo10VaPb(NH4)c’XddYeOf (a’−1)(式中,c’は0≦c’≦10の正数を表し、fは焼成による各元素の酸化程度により決まる値を表し、他の記号は、上記一般式(a−1)と同じ意味を表す)で表すことができる。 上記式において好ましいc’は0.01≦c’≦5の正数であり、好ましいddは0.1≦d≦3.0の正数である。 また、焼成温度を400℃以下にして、焼成後の触媒中にアンモニウム成分が含まれるようにした触媒は、より好ましい。 本発明の工程(b)で使用する触媒のより好ましい態様一つは、活性成分含有化合物の添加割合から、焼成後の触媒組成を表すと、一般式(1)Mo10VaPb(NH4)cXdYeOf (1)(式中Moはモリブデン、Vはバナジウム、Pはリン、(NH4)はアンモニウム基を、XはK、Rb、Csから選ばれる少なくとも一種の元素、YはSb、As、Cu、Ag、Mg、Zn、Al、B、Ge、Sn、Pb、Ti、Zr、Cr、Re、Bi、W、Fe、Co、Ni、Ce、Thから選ばれる少なくとも一種の元素をそれぞれ表し、a〜hは、それぞれの元素の原子比を表し、aは0.1≦a≦6.0、好ましくは0.3≦a≦2.0、bは0.5≦b≦6.0、好ましくは0.7≦b≦2.0、cは0.1≦c≦10.0、好ましくは0.5≦c≦5.0、dは0.1≦d≦3.0、好ましくは0.4≦d≦1.5、eは0≦e≦3.0、好ましくは0.01≦e≦0.5、fは焼成後の酸化状態により決まる値である)で表される。 しかし、触媒を焼成した際に、アンモニウム成分は、300〜400℃程度の高温での焼成ではかなり失われ、420℃を超える焼成においては、ほぼ完全に失われることが知られている(特開平4−63139)ので、実際の焼成後の触媒でのアンモニウム成分の量は、焼成条件により、上記式(1)におけるcは0〜10の範囲となる。焼成後の好ましいcの値は痕跡(0.001)程度から、5程度までであり、最も好ましくは0.01〜1程度と考えられる。 従って、上記より好ましい態様における焼成後の組成は、下記一般式(1’)Mo10VaPb(NH4)c’XdYeOf (1’)(式中、c’は0≦c’≦10の正数を表し、他の記号は、上記一般式(1)と同じ意味を表す)で表される元素組成を有し、c’が0.01〜5の時より好ましく、0.01〜1の時、更に好ましい。 上記式(1)及び(1’)の触媒において、XとしてはCsがより好ましく、YとしてはSb、As及びCuからなる群から選ばれる少なくとも2種の元素がより好ましい。また、場合により、上記式(a−1)において、YがAs及びCuの2種である触媒も好ましい。 上記何れの式で表される触媒においても、スラリーの乾燥粉体を成形した後、焼成して、本発明の工程(b)で使用する触媒とされる。成形は触媒として使用出来る形態であれば何れでも良い。好ましい形態としては、粒状単体を、スラリーの乾燥粉体で被覆して得られる被覆触媒が好ましい。また、上記の被覆の際に、後記するバインダーを使用するのが好ましい。更に、触媒の強度向上剤及び細孔形成剤を配合して得られる被覆触媒は、本発明の工程(b)用触媒として、更に好ましい。特に、細孔形成剤を使用した触媒は、未反応イソブチレンでの被毒を受けにくく、直結二段接触気相酸化によるメタクリル酸の製造に適しており、メタクリル酸の収率向上、及び、触媒寿命の延長に好ましい。 本発明の工程(b)で使用する触媒は、上記の条件を満たす触媒であれば、未反応イソブチレンの存在下においても、被毒が少なく、前段工程(a)を前記した最適条件下において、反応させても、未反応イソブチレン被毒によるメタクロレインの転化率の低下が少なく、メタクリル酸の収率向上を図ることが出来る。 上記のような特定の酸化触媒を、工程(b)で使用すると、他の触媒を使用した場合に比して、未反応イソブチレンでの被毒による、メタクロレイン転化率の低下が少なく、メタクリル酸の収量を多くできると共に、被毒による触媒寿命の短命化が少なくて済むことから、触媒寿命を長くすることが出来る。 例えば、未反応イソブチレンの存在による悪影響(被毒とも言う)を、(1)前段工程(a)をイソブチレン転化率を99%より高い転化率で反応させた、未反応イソブチレンがほとんど存在しない状態の反応生成ガスと、(2)前段工程(a)をイソブチレン転化率を96%より高く、98未満の転化率で反応させた、未反応イソブチレンが2%より多く、4%未満である反応生成ガスを用いて、その他の条件を全く同一として、直結二段接触気相酸化反応行い、両者のメタクロレイン転化率及びメタクリル酸の選択率の違いを見た結果、下記の事実が判明した。1.上記工程(b)用酸化触媒を用いても、最も好ましい実施例2を除き、実施例1,3〜4では、未反応イソブチレンの存在する反応生成ガスを用いた場合は、未反応イソブチレンの存在しない反応生成ガスを用いた場合に比して、メタクリル酸の選択率は多少上がっているが、何れもメタクロレイン転化率はそれ以上に低下している。即ち、未反応イソブチレンが2%より多く3%より少ない量で存在する反応生成ガスを用いた場合、メタクロレイン転化率は8〜12%低下し、メタクリル酸の選択率の1〜2%の上昇では、到底補い得ない、低下である。更に、未反応イソブチレンの多い方が、メタクロレイン転化率の低下が大きい。未反応イソブチレンが3%より多く4%より少ない量で存在する反応生成ガスを用いた場合、メタクロレイン転化率は19〜23%低下し、メタクリル酸の選択率の4〜8%の上昇では、到底補い得ない、低下である。 このように、本発明で使用する特定な触媒を用いても、未反応イソブチレンの悪影響(被毒)を避けることができないが、一応、その転化率の低下が、25%以内である点で、評価することが出来る。一方、実施例4の触媒は、実施例1及び3の触媒が、その低下率は19%程度と、20%以内にとどまっているのに対して23%と、20%を超えて低下していることから、本発明の他の触媒に比して、未反応イソブチレンの悪影響(被毒)を受けやすいことが判明した。即ち、本発明の上記工程(b)で使用する触媒においても、アンモニウム成分を、触媒調製時に用いていない触媒は、アンモニウム成分を用いた触媒に比して、被毒し易いと考えられる。 なお本発明中に記載されている触媒活性成分の原子比は、特に断りの無い限り、原料仕込み量から算出されたものである。また、一般式(1)における酸素のfは焼成条件等により、自然に決まる値である。 以降、上記の工程に従って実施形態を説明する。これらは、前記の工程(b)用の触媒全てに共通である。工程1:スラリーの調製 本発明において、触媒調製用に用いられる活性成分含有化合物としては、活性成分元素の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酸化物又は酢酸塩等が挙げられる。好ましい化合物をより具体的に例示すると硝酸カリウム又は硝酸コバルト等の硝酸塩、酸化モリブデン、五酸化バナジウム、三酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化亜鉛又は酸化ゲルマニウム等の酸化物、酢酸セシウム、酢酸アンモニウム等の酢酸塩、水酸化セシウム、水酸化アンモニウム等の水酸化物、正リン酸、リン酸、硼酸、リン酸アルミニウム又は12タングストリン酸等の酸(又はその塩)等が挙げられる。これら活性成分を含む化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。スラリーは、各活性成分含有化合物と水とを均一に混合して得ることができる。スラリーを調製する際の活性成分含有化合物の添加順序は、モリブデン、バナジウム、リン及び必要により他の金属元素を含有する化合物を十分に溶解し、その後、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物及びアンモニウム化合物をスラリーに添加する方が好ましい。この場合の必須活性成分以外の金属化合物として例えば、銅化合物としては酢酸銅(酢酸第一銅、酢酸第二銅、又は塩基性酢酸銅等、好ましくは酢酸第二銅)または酸化銅(酸化第一銅、酸化第二銅)を使用すると好ましい効果を奏する場合がある。 アンモニウム成分のためには、アンモニウム基を有する化合物であればよいが、水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウム等が好ましく、酢酸アンモニウムが最も好ましい。 スラリーを調製する際の温度は、モリブデン、リン、バナジウム及び必要により他の金属元素を含有する化合物を充分溶解できる温度まで加熱することが好ましい。カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物及びアンモニウム化合物を添加する際の温度は、通常0〜35℃、好ましくは10〜30℃程度の範囲が好ましい。この場合、得られる触媒が高活性になる傾向がある。スラリーにおける水の使用量は、用いる化合物の全量を完全に溶解できるか、または均一に混合できる量であれば特に制限はない。 乾燥方法や乾燥条件等を勘案して、水の使用量を適宜決定すれば良い。通常、スラリー調製用化合物の合計質量100質量部に対して、200〜2000質量部程度である。水の量は多くてもよいが、多過ぎると乾燥工程のエネルギーコストが高くなり、又完全に乾燥できない場合も生ずるなどデメリットが多い。工程2:乾燥 次いで上記で得られたスラリーを乾燥し、乾燥粉体(複合酸化物)とする。乾燥方法は、スラリーが完全に乾燥できる方法であれば特に制限はないが、例えばドラム乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾固などが挙げられる。これらのうち本発明においては、スラリー状態から短時間に粉末又は顆粒に乾燥することができる噴霧乾燥が特に好ましい。 噴霧乾燥の乾燥温度はスラリーの濃度、送液速度等によって異なるが、概ね乾燥機の出口における温度が70〜150℃である。また、この際得られるスラリー乾燥体の平均粒径が30〜700μmとなるように乾燥するのが好ましい。工程3:成型 工程2で得られた乾燥粉体(活性成分粉体)は、酸化反応において反応ガスの圧力損失を小さくするために、柱状物、錠剤、リング状、球状等に成型し使用する。このうち選択性の向上や反応熱の除去が期待できることから、不活性担体にこれらを被覆し、被覆触媒とするのが特に好ましい。 この被覆工程は以下に述べる転動造粒法が好ましい。この方法は、例えば固定容器内の底部に、平らなあるいは凹凸のある円盤を有する装置中で、円盤を高速で回転することにより、容器内の担体を自転運動と公転運動の繰返しにより激しく撹拌させ、ここにバインダーと乾燥粉体並びにこれらに、必要により、他の添加剤例えば成型助剤、強度向上剤及び細孔形成剤を添加した被覆用混合物を担体に被覆する方法である。バインダーの添加方法は、1)前記被覆用混合物に予め混合しておく、2)被覆用混合物を固定容器内に添加するのと同時に添加、3)被覆用混合物を固定容器内に添加した後に添加、4)被覆用混合物を固定容器内に添加する前に添加、5)被覆用混合物とバインダーをそれぞれ分割し、2)〜4)を適宜組み合わせて全量添加する等の方法が任意に採用しうる。このうち5)においては、例えば被覆用混合物の固定容器壁への付着、被覆用混合物同士の凝集がなく担体上に所定量が担持されるようオートフィーダー等を用いて添加速度を調節して行うのが好ましい。 バインダーは水及び1気圧下での沸点が150℃以下の有機化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であれば特に制限はない。水以外のバインダーの具体例としてはメタノール、エタノール、プロパノール類、ブタノール類等のアルコール、好ましくは炭素数1〜4のアルコール、エチルエーテル、ブチルエーテル又はジオキサン等のエーテル、酢酸エチル又は酢酸ブチル等のエステル、アセトン又はメチルエチルケトン等のケトン等並びにそれらの水溶液が挙げられ、特にエタノールが好ましい。バインダーとしてエタノールを使用する場合、エタノール/水=10/0〜0/10(質量比)、好ましくは水と混合し9/1〜1/9(質量比)とすることが好ましい。これらバインダーの使用量は、被覆用混合物100質量部に対して通常2〜60質量部、好ましくは10〜50質量部である。 上記被覆触媒における担体の具体例としては、炭化珪素、アルミナ、シリカアルミナ、ムライト、アランダム等の直径1〜15mm、好ましくは2.5〜10mmの球形担体等が挙げられる。これら担体は通常は10〜70%の空孔率を有するものが用いられる。担体と被覆用混合物の割合は通常、被覆用混合物/(被覆用混合物+担体)=10〜75質量%、好ましくは15〜60質量%となる量使用する。 被覆用混合物の割合が大きい場合、被覆触媒の反応活性は大きくなるが、機械的強度が小さくなる傾向にある。逆に、被覆用混合物の割合が小さい場合、機械的強度は大きいが、反応活性は小さくなる傾向がある。 なお、前記において必要により使用する成型助剤としては、シリカゲル、珪藻土、アルミナ粉末等が挙げられる。成型助剤の使用量は、乾燥粉体100質量部に対して通常1〜60質量部である。 また、更に必要により触媒活性成分及び反応ガスに対して不活性な無機繊維(例えば、セラミックス繊維又はウイスカー等)を強度向上剤として用いることは、触媒の機械的強度の向上に有用であり、好ましい。これら繊維の使用量は、乾燥粉体100質量部に対して通常1〜30質量部である。 また、前記において必要により使用する細孔形成剤としては、小麦粉、精製デンプンやセルロース等の有機高分子化合物が挙げられ、好ましくは分解点もしくは転移点が430℃未満のものを使用する。更に好ましくは小麦粉又は精製デンプン等デンプン類であり、最も好ましくは小麦粉である。細孔形成剤の使用量は、前記乾燥粉体(活性成分粉体)100質量部に対して通常1〜40質量部、好ましくは1〜30質量部である。 細孔形成剤を加えて焼成した触媒は、前記した何れの触媒であっても、未反応イソブチレンの残存下においても、悪影響を受けにくくなることから、細孔形成剤の添加は好ましい。 このようにして乾燥粉体を担体に被覆するが、この際得られる被覆品は通常直径が3〜15mm程度である。工程4:焼成 前記のようにして得られた被覆触媒はそのまま触媒として接触気相酸化反応に供することができるが、焼成すると触媒活性が向上する場合があり好ましい。この場合の焼成温度は通常100〜450℃、好ましくは250〜420℃、より好ましくはアンモニウム成分を残存させるため、250〜400℃未満であり、更に好ましくは300〜400℃未満である。焼成時間は1〜20時間である。 上記のようにして得られた被覆触媒全体に対する、活性成分の割合は、10〜60質量%である。 以下、本発明の直結二段接触気相反応によるメタクリル酸の製造法について説明する。 本発明の直結二段接触気相反応によるメタクリル酸の製造方法においては、前段(工程(a))の反応器に、イソブチレンをメタクロレインに酸化する酸化触媒を充填し、それと直結した、後段(工程(b))の反応器に、後段用の前記触媒を充填し、イソブチレン、酸素及び希釈ガスの混合ガスを、前段の反応器に供給して、前段の酸化反応及び後段の酸化反応を行うことにより、目的のメタクリル酸を製造することが出来る。上記酸素としては、純酸素ガス、及び空気等の酸素を含むガスが挙げられる。また、上記希釈ガスの例としては、窒素、二酸化炭素、水蒸気及びこれらの混合ガス等が挙げられる。 前段の接触気相酸化反応は、イソブチレン、酸素及び希釈ガスの混合ガス、例えば、イソブチレン:酸素:水蒸気:窒素をモル比で、イソブチレン1:酸素2−5:水蒸気1:窒素10−20からなる混合ガスを、前段反応器に供給し、前段反応浴温度200℃〜450℃で、前記した、イソブチレン転化率95〜98%となるように、調製して反応させる。この場合好ましくは前段有効選択率が80%以上になるよう反応させるのが好ましい。原料ガスの供給速度は、通常空間速度400〜4000/hr[常温常圧(NTP)条件下]で供給し、上記イソブチレン転化率を維持すればよい。次いで、反応生成ガスは、そのまま後段の反応器に供給される。該反応生成ガスは、2%〜5%の未反応イソブチレンを含む。 後段の酸化反応は、反応浴温度200〜450℃、好ましくは250〜400℃、更に好ましくは、260℃〜360℃程度である。メタクロレインの転化率が50%以上で85%以下、好ましくは60%以上85%以下、更に好ましくは70%以上85%以下程度で反応させるのが好ましい。 また、上記前段及び後段における接触気相酸化反応は加圧下または減圧下でも可能ではあるが、一般的には大気圧付近の圧力が適している。 以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが本発明は実施例に限定されるものではない。 なお下記において転化率、選択率及び収率は次のとおりに定義される。イソブチレン転化率=(反応したイソブチレンのモル数/供給したイソブチレンのモル数)×100メタクロレイン転化率=(後段で反応したメタクロレインのモル数/後段に供給されたメタクロレインのモル数)×100前段有効選択率={(前段で生成したメタクロレインのモル数+前段で生成したメタクリル酸のモル数)/反応したイソブチレンのモル数}×100後段メタクリル酸選択率=(後段で生成したメタクリル酸のモル数/後段で反応したメタクロレインのモル数)×100メタクリル酸収率=(前段及び後段において生成したメタクリル酸の合計モル数/供給したイソブチレンのモル数)×100 以下の実施例における触媒組成は、酸素を除く活性成分組成で示す。実施例11)触媒の調製 純水5680mlに三酸化モリブデン800g、五酸化バナジウム40.43g、85質量%正燐酸73.67g及び60質量%砒酸水溶液26.29gを添加し、92℃で3時間加熱撹拌して赤褐色の透明溶液を得た。続いて、この溶液を15〜20℃に冷却して、撹拌しながら9.1質量%の水酸化セシウム水溶液944.8gを徐々に添加し、15〜20℃で1時間熟成させて黄色のスラリーを得た。 続いて、さらにそのスラリーに酢酸アンモニウム89.87gを添加し、さらに15〜20℃で30分熟成した。 続いて、さらにそのスラリーに酢酸第二銅44.37gを添加し、さらに15〜20℃で30分熟成した。 続いて、このスラリーを噴霧乾燥し複合酸化物を得た。得られた複合酸化物の組成はMo10V0.8P1.15As0.2Cu0.4Cs1.0(NH4)2.1 である。次いで複合酸化物144g、強度向上剤(セラミック繊維)24gを均一に混合して、球状多孔質アルミナ担体(粒径4.0mm)166gに90質量%エタノール水溶液約80gをバインダーとして被覆成型した。次いで得られた成型物を空気流通下において360℃で5時間かけて焼成を行い目的とする被覆触媒を得た。得られた触媒の組成はアンモニウム成分が焼成により、大部分失われて、0.01〜1.0程度となっていると考えられる以外は、上記組成と同じである。2)イソブチレンの二段酸化反応 2本の反応管を直列に配置し、それぞれにメタクロレイン製造用触媒及びメタクリル酸製造用触媒を充填し、原料ガスを供給することによりメタクリル酸を得る反応を行った。以下に詳細を示す。 前段酸化反応用の触媒としてビスマス‐モリブデン系複合酸化物を上記実施例1の触媒と同様に成型して得られた被覆触媒を用いた。この触媒の活性成分組成はMo12Bi1.7Fe1.8Co7.0Ni0.8Cs0.1である。触媒を内径22.2mmのステンレス反応管に17ml充填し、原料ガス(組成(モル比);イソブチレン:酸素:水蒸気:窒素=1:2.2:1:12.5)を空間速度(SV)1200h−1の条件でイソブチレンの酸化反応を実施した。 前段酸化反応においては、イソブチレン転化率を最初に約99%を超えるように調整し、順次同転化率を、97%台、及び96%台へ下げて、反応を行った。この際の反応浴温度は、イソブチレン転化率が99%以上の場合は、360〜 370 ℃、イソブチレン転化率が97%台の場合は、345〜350℃、イソブチレン転化率が96%台の場合は、340〜342℃であった。 後段酸化反応用には上記1)で調製した触媒を用いた。触媒を内径18.4mmのステンレス反応管に25ml充填し、上記前段酸化反応の生成ガスを導入し、後段酸化反応を実施した。後段反応浴温度は275℃で一定とし、前段酸化反応で生成した反応ガス組成が、上記前段酸化反応でのイソブチレン転化率の相違により変わる以外は、後段反応条件を一定とし、前段でのイソブチレンの転化率の相違(未反応イソブチレン量の相違)で、後段におけるメタクロレインの転化率、メタクリル酸選択率がどのように変化するか反応成績の測定を行った。結果を表1に示す。実施例2 実施例1において複合酸化物144g、強度向上剤(セラミック繊維)24g及び細孔形成剤(小麦粉)14gを混合したこと以外は実施例1と同様の方法で被覆触媒を調製した。焼成前の複合酸化物における活性成分組成はMo10V0.8P1.15As0.2Cu0.4Cs1.0(NH4)2.1 である。焼成後の触媒の組成は、アンモニウム成分が焼成により、大部分失われて、0.01〜1.0程度となっていると考えられること以外は、上記組成と同じである。 この被覆触媒を使用したことと後段酸化反応の反応浴温度を280℃としたこと以外は、実施例1と同様にイソブチレンの二段酸化反応を行った。結果を表1に示す。実施例3 純水5680mlに三酸化モリブデン800g、五酸化バナジウム40.43g及び85質量%正燐酸73.67gを添加し、92℃で3時間加熱撹拌して赤褐色の透明溶液を得た。続いて、この溶液を15〜20℃に冷却して、そこに、撹拌しながら9.1質量%の水酸化セシウム水溶液283.4gを徐々に添加した。得られた混合物を15〜20℃で1時間熟成させて黄色のスラリーを得た。 続いて、さらにそのスラリーに酢酸アンモニウム89.87gを添加し、さらに15〜20℃で30分熟成した。 続いて、さらにそのスラリーに酢酸第二銅44.37gを添加し、さらに15〜20℃で30分熟成した。 続いて、このスラリーを噴霧乾燥し複合酸化物を得た。得られた複合酸化物の組成はMo10V0.8P1.15As0.2Cu0.4Cs0.3(NH4)2.1 である。 次いで、この複合酸化物顆粒を空気流通下310℃で5時間かけて焼成し、予備焼成顆粒を得た。予備焼成により約4%の質量減があった。この予備焼成顆粒131gに三酸化アンチモン10g、強度向上剤(セラミック繊維)7gを均一に混合した。得られた顆粒を、球状多孔質アルミナ担体(粒径4.0mm)179g上に、50質量%エタノール水溶液約70gをバインダーとして、被覆成型した。次いで得られた成型物を空気流通下において380℃で5時間かけて焼成を行い目的とする被覆触媒を得た。得られた触媒の組成は、アンモニウム成分が焼成により、大部分失われて、0.01〜1.0程度となっていると考えられる以外は、上記組成と同じである。 この被覆触媒を使用したことと後段酸化反応の反応浴温度を300℃としたこと以外は、実施例1と同様にイソブチレンの二段酸化反応を行った。結果を表1に示す。実施例4 純水5680mlに三酸化モリブデン800g、五酸化バナジウム40.43g、85質量%正燐酸73.67g及び60質量%砒酸水溶液65.73gを添加し、92℃で3時間加熱撹拌して赤褐色の透明溶液を得た。 続いて、さらにその溶液に酢酸第二銅44.37gを添加し、さらに92℃で30分熟成した。 続いて、このスラリーを噴霧乾燥し複合酸化物を得た。得られた複合酸化物の組成はMo10V0.8P1.15Cu0.4As0.5である。次いで複合酸化物214g、強度向上剤(セラミック繊維)30gを均一に混合して、球状多孔質アルミナ担体(粒径4.0mm)200gに90質量%エタノール水溶液約50gをバインダーとして被覆成型した。次いで得られた成型物を空気流通下において310℃で5時間かけて焼成を行い目的とする被覆触媒を得た。得られた触媒の組成は上記と同じである。 この被覆触媒を使用したことと後段酸化反応の反応浴温度を305℃としたこと以外は、実施例1と同様にイソブチレンの二段酸化反応を行った。結果を表1に示す。 上記の結果より、下記の事項が判明した。 イソブチレン転化率を下げることによるメタクロレイン転化率の低下が少ない触媒ほどイソブチレンの吸着被毒の影響を受けにくいといえる。 実施例1のようにモリブデン10に対してX成分の添加量が0.4〜1.5である触媒はイソブチレンの吸着被毒の影響を受けにくい。 実施例2のように細孔形成剤を適宜添加することにより、イソブチレンの吸着被毒の影響は大幅に低減する。 また、実施例3のように、請求項2に記載した組成を満たしている触媒であれば、イソブチレンの吸着被毒の影響を低減する効果がある。 なお、上表では、未反応残存イソブチレンの、メタクロレイン転化率への悪影響を見ている関係で、メタクリル酸収率が記載されていないが、上記実施例におけるメタクリル酸収率は、前段で生成したメタクリル酸及び後段で生成したメタクリル酸を合わせて、供給したイソブチレンに対して48モル%〜59モル%弱であった。実施例1、3及び4の何れにおいても、イソブチレン転化率が99%以上の場合に、最も高いメタクリル酸収率を達成したが、イソブチレン転化率99%以上では、第1段目触媒が熱的負荷が大きいことから、触媒寿命が短くなることを考慮すると、イソブチレン転化率95モル%以上、98モル%以下、特に96モル%以上、98モル%未満での反応が最も好ましいと考えられる。特に、実施例2においては、未反応イソブチレンの存在での悪影響が見られず、イソブチレン転化率が、99.01モル%の場合に比して、イソブチレン転化率97.92モル%及び96.43モル%の場合、後段におけるメタクロレイン転化率はむしろ、向上している。即ち、メタクリル酸の収率も、それぞれ、54.65モル%(イソブチレン転化率が、99.01モル%の場合)、56.10モル%(イソブチレン転化率が、97.92モル%の場合)及び55.41モル%(イソブチレン転化率が、96.43モル%の場合)となっており、アンモニウム成分及び細孔形成剤の共存は、特に好ましいことを示している。産業上の利用の可能性 直結二段接触気相酸化法において、前記本発明で使用する特定の触媒を使用すると、未反応イソブチレン含有メタクロレインガスであっても、メタクロレインのメタクリル酸への転化率の下げが小さいので、反応生成ガス前段イソブチレンの転化率を下げて、前段有効選択率が向上する好ましい条件で反応させた場合でも、メタクリル酸を高収率で得ることができ、前段イソブチレンの転化率を下げる結果、反応温度が低く済み、触媒への熱負荷が減り、第一段目の触媒寿命を長くできる。また、二段目も触媒も、未反応イソブチレン被毒が少ないことから、触媒寿命を延ばすことができる。直結二段接触気相酸化法において、特定の触媒を使用する本発明のメタクリル酸製造方法は、直結二段接触気相酸化法でのメタクリル酸の収率を向上させるために非常に有用である。 (a)イソブチレンを、ビスマス‐モリブデン含有複合酸化物触媒の存在下に、分子状酸素または分子状酸素含有ガスにより気相にてメタクロレインに酸化し(工程(a))、 (b)得られた、未反応イソブチレン及びメタクロレインを含む、反応生成ガスを、酸化触媒の存在下に、分子状酸素または分子状酸素含有ガスにより気相にて酸化してメタクリル酸を製造する(工程(b))、第1段目(工程(a))の酸化反応器と第2段目(工程(b))の酸化反応器の間に精製装置を設けない直結二段接触気相酸化によるメタクリル酸の製造方法であって、工程(a)におけるイソブチレンの転化率を95モル%以上、98モル%以下で、反応を行い、工程(b)の酸化触媒が、一般式(a−1) Mo10VaPb(NH4)cXddYe (a−1)(式中Moはモリブデン、Vはバナジウム、Pはリン、(NH4)はアンモニウム基を、XはK、Rb、Csから選ばれる少なくとも一種の元素、YはSb、As、Cu、Ag、Mg、Zn、Al、B、Ge、Sn、Pb、Ti、Zr、Cr、Re、Bi、W、Fe、Co、Ni、Ce、Thからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素をそれぞれ表し、a、b、c、dd、及びeは、それぞれの元素の原子比を表し、aは0.1≦a≦6.0の正数、bは0.5≦b≦6.0の正数、cは0.1≦c≦10.0の正数、ddは0≦dd≦3.0の正数、eは0≦e≦3.0の正数をそれぞれ表す。)で表される活性成分組成を有する触媒組成物を細孔形成剤と共に成型及び焼成することにより得られたメタクリル酸製造用触媒であることを特徴とするメタクリル酸の製造方法。 一般式(a−1)で表される活性成分組成を有する触媒組成物を焼成する温度が300〜400℃未満で焼成することにより得られたメタクリル酸製造用触媒を使用する請求項1に記載のメタクリル酸の製造方法。 YがSb、As及びCuからなる群から選ばれる少なくとも2種の元素である請求項1又は2に記載のメタクリル酸の製造方法。 YがAs及びCuの両者である請求項3に記載のメタクリル酸の製造方法。 一般式(a−1)で表される活性成分組成を有する触媒組成物の成型が、該組成物のスラリー乾燥体を、強度向上剤と共に、水又は炭素数1〜4のアルコールをバインダーとし、球状担体上に被覆して、球状被覆触媒とするものである請求項1から4のいずれか1項に記載のメタクリル酸の製造方法。 一般式(a−1)で表される活性成分組成を有する触媒組成物の成型が、該組成物のスラリー乾燥体を、強度向上剤及び細孔形成剤と共に、水又は炭素数1〜4のアルコールをバインダーとし、球状担体上に被覆して、球状被覆触媒とするものである請求項1から4のいずれか1項に記載のメタクリル酸の製造方法。 前記工程(a)におけるビスマス‐モリブデン含有複合酸化物触媒が、モリブデン、ビスマス及び鉄の3者、及びコバルト、ニッケル、錫、亜鉛、タングステン、クロム、マンガン、マグネシウム、アンチモン、セリウム、チタンからなる群から選択される少なくとも一種、更に、アルカリ金属又はタリウムを含む複合酸化物触媒である、請求項1から6のいずれか1項に記載のメタクリル酸の製造方法。 工程(b)における、未反応イソブチレン及びメタクロレインを含む、反応生成ガスが、反応生成ガスの総量中に、未反応イソブチレンを2〜5モル%含むものである請求項1から7のいずれか1項に記載のメタクリル酸の製造方法。 一般式(a−1)Mo10VaPb(NH4)cXddYe (a−1)(式中Moはモリブデン、Vはバナジウム、Pはリン、(NH4)はアンモニウム基を、XはK、Rb、Csから選ばれる少なくとも一種の元素、YはSb、As、Cu、Ag、Mg、Zn、Al、B、Ge、Sn、Pb、Ti、Zr、Cr、Re、Bi、W、Fe、Co、Ni、Ce、Thから選ばれる少なくとも一種の元素をそれぞれ表し、a、b、c、dd、及びeは、それぞれの元素の原子比を表し、aは0.1≦a≦6.0の正数、bは0.5≦b≦6.0の正数、cは0.1≦c≦10.0の正数、ddは0≦dd≦3.0の正数、eは0≦e≦3.0の正数をそれぞれ表す。)で表される活性成分組成を有する触媒組成物のスラリー乾燥体を、強度向上剤及び細孔形成剤と共に、水又は炭素数1〜4のアルコールをバインダーとし、球状担体上に被覆して、球状被覆触媒に成形し、100〜450℃で焼成することにより得られた請求項1から8のいずれか1項に記載の製造方法における工程(b)用メタクリル酸製造用酸化触媒。 YはSb、As及びCuからなる群から選ばれる少なくとも2種の元素である請求項9に記載の工程(b)用メタクリル酸製造用触媒。 YがAs及びCuからなる群から選ばれる2種の元素である一般式(1)で表される活性成分組成を有する触媒組成物を成型し、次いで250〜400℃で焼成することにより得られた請求項10に記載の工程(b)用メタクリル酸製造用触媒。 球状被覆触媒全体に対する活性成分の割合が10〜60質量%である請求項9から11のいずれか1項に記載の工程(b)用メタクリル酸製造用触媒。 細孔形成剤の割合が活性成分に対して1〜40質量%である請求項9から12のいずれか1項に記載の工程(b)用メタクリル酸製造用触媒。 工程(b)用の、触媒組成物を細孔形成剤と共に成型及び焼成することにより得られた触媒が、下記一般式(a’−1)Mo10VaPb(NH4)c’XddYeOf (a’−1)(式中,Moはモリブデン、Vはバナジウム、Pはリン、(NH4)はアンモニウム基を、XはK、Rb、Csから選ばれる少なくとも一種の元素、YはSb、As、Cu、Ag、Mg、Zn、Al、B、Ge、Sn、Pb、Ti、Zr、Cr、Re、Bi、W、Fe、Co、Ni、Ce、Thから選ばれる少なくとも一種の元素をそれぞれ表し、a、b、c’、dd、及びfは、それぞれの元素の原子比を表し、aは0.1≦a≦6.0の正数、bは0.5≦b≦6.0の正数、c’は0≦c’≦10の正数、ddは0≦dd≦3.0の正数、eは0≦e≦3.0の正数、fは焼成による各元素の酸化程度により決まる値をそれぞれ表す。)で表される活性成分組成を有する触媒である請求項1から8のいずれか1項に記載のメタクリル酸の製造方法。 c’が0.01≦c’≦5の正数である請求項14に記載のメタクリル酸の製造方法。 ddが0.1≦dd≦3.0の正数である請求項14又は15に記載のメタクリル酸の製造方法。


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