タイトル: | 特許公報(B2)_室温で油剤に溶解するプルラン脂肪酸エステル及びそれを含む化粧料 |
出願番号: | 2010535538 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 8/73,A61Q 1/06,A61Q 1/08,A61Q 1/10,A61Q 17/04,A61K 8/31,A61K 8/37,C08B 37/00 |
井爪 正人 柿坂 雄一 鈴木 建剛 北澤 潤一 JP 5383696 特許公報(B2) 20131011 2010535538 20081028 室温で油剤に溶解するプルラン脂肪酸エステル及びそれを含む化粧料 片倉チッカリン株式会社 000240950 讃岐化学工業株式会社 594099794 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 小瀬村 暁子 100170221 井爪 正人 柿坂 雄一 鈴木 建剛 北澤 潤一 20140108 A61K 8/73 20060101AFI20131212BHJP A61Q 1/06 20060101ALI20131212BHJP A61Q 1/08 20060101ALI20131212BHJP A61Q 1/10 20060101ALI20131212BHJP A61Q 17/04 20060101ALI20131212BHJP A61K 8/31 20060101ALI20131212BHJP A61K 8/37 20060101ALI20131212BHJP C08B 37/00 20060101ALN20131212BHJP JPA61K8/73A61Q1/06A61Q1/08A61Q1/10A61Q17/04A61K8/31A61K8/37C08B37/00 D A61K 8/00−8/99 A61Q 1/00−99/00 C08B 1/00−37/18 CAplus/REGISTRY(STN) 特開昭53−142540(JP,A) 特開昭53−136526(JP,A) 特開昭53−136527(JP,A) 特開昭54−008605(JP,A) 特開昭52−078286(JP,A) 特開昭49−083779(JP,A) 5 JP2008069549 20081028 WO2010049995 20100506 24 20111017 中西 聡 本発明は、プルラン脂肪酸エステル及びこれを含有した化粧料に関する。さらに詳しくは、置換基と置換度を制御することにより室温で油性成分に溶解するように構成されたプルラン脂肪酸エステルに関する。 プルラン脂肪酸エステルの原料であるプルランは、マルトトリオースが規則正しくα‐1,6結合した水溶性の天然多糖類である。プルランに脂肪酸をエステル結合させた化合物は油溶性が高まるため、油溶性化粧料に適用することができる。例えば、炭素数2〜24であり置換度0.0001〜0.5(特許文献1ではグルコース1残基当たり3個の水酸基が全て置換された場合の置換度を1としている)でアシル基を導入したプルランの脂肪酸エステルは、皮膜形成に優れており、パック化粧料に配合すると皮膜強度に優れ、速乾性、良好な剥離性を有するパック化粧料に利用されることが特許文献1に記載されている。 また特許文献2及び3には、プルラン脂肪酸エステルを配合した油溶性クリームが、特許文献4には、プルラン脂肪酸エステルを配合した油溶性仕上化粧料が記載されている。 しかし特許文献1〜4に記載されたプルラン脂肪酸エステル配合化粧料の調製においては、プルラン脂肪酸エステルを油剤に溶解させる際に加熱が必要であった。プルラン脂肪酸エステルを含有する化粧料の製造工程をより単純化するためには加熱しなくても油剤に溶解するプルラン脂肪酸エステルを使用することが望まれるが、そのようなプルラン脂肪酸エステルは未だ知られていない。特開平10−182341号公報特公昭60−26081号公報特公昭60−26082号公報特公昭60−26089号公報 従って、本発明の目的は、加熱しなくても油剤に溶解するプルラン脂肪酸エステル及びその使用法を提供することである。 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ミリスチン酸及び/又はパルミチン酸によりプルランの水酸基を置換し、かつその置換度(ここでは、グルコース1残基当たり3個の水酸基が全て置換された場合の置換度を3とする)を1.6〜2.4の範囲とすることによって得られるプルラン脂肪酸エステルは、加熱時だけでなく室温でも油剤に対して高い溶解性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、室温で油剤に溶解するプルラン脂肪酸エステルに関する。より具体的態様では、本発明は、以下を包含する。[1] プルランの水酸基に導入された置換基がミリストイル基及び/又はパルミトイル基であり、かつ該置換基による水酸基の置換度が1.6〜2.4である、室温で油剤に溶解するプルラン脂肪酸エステル。[2] 上記[1]に記載のプルラン脂肪酸エステルを溶解させた油剤を含有することを特徴とする化粧料。 この化粧料において、油剤は炭化水素油及び/又はエステル油を含むことが好ましい。 好ましい一実施形態では、その炭化水素油及び/又はエステル油は、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、及びリンゴ酸ジイソステアリルからなる群から選択される少なくとも1つである。 好ましい一実施形態では、このような化粧料は耐水性化粧料である。[3] 上記[1]に記載のプルラン脂肪酸エステルを油剤に混合して溶解させ、それを化粧料に配合することを特徴とする、化粧料の製造方法。 この方法において、油剤は炭化水素油及び/又はエステル油を含むことが好ましい。 この方法の一実施形態では、プルラン脂肪酸エステルを油剤に室温で混合することが好適である。 この方法においてプルラン脂肪酸エステルを油剤に室温で混合する場合、プルラン脂肪酸エステルが前記置換基としてミリストイル基を有するものであれば、油剤に含まれる炭化水素油及び/又はエステル油は、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、及びジカプリン酸ネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。 この方法においてプルラン脂肪酸エステルを油剤に室温で混合する場合、プルラン脂肪酸エステルが前記置換基としてパルミトイル基を有するものであれば、油剤に含まれる炭化水素油及び/又はエステル油は、イソドデカン及びジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。 好ましい一実施形態では、この方法により製造される化粧料は耐水性化粧料である。 本発明によれば、プルラン脂肪酸エステルを含む化粧料をより単純な工程で製造することができる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルは、室温でさえ高い溶解度で油剤に溶解することができるプルラン脂肪酸エステルである。 より具体的には、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルは、プルランの水酸基がミリストイル基及び/又はパルミトイル基で置換されており、かつそのミリストイル基及び/又はパルミトイル基によるプルランの水酸基の置換度が1.6〜2.4の範囲内であることを特徴とする。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルにおける、ミリストイル基及び/又はパルミトイル基によるプルランの水酸基の置換度は、1.6〜2.4であり、より好ましくは2.0〜2.4である。 本発明において「置換度」とは、当該プルラン脂肪酸エステルにおいて、プルランを構成するグルコース環(グルコース残基)1個当たりに存在する水酸基(3個)のうちアシル基(ここでは、ミリストイル基及び/又はパルミトイル基)に置換された水酸基の数をいう。この置換度は、プルラン脂肪酸エステルを構成するグルコース環1個当たりの平均値として算出され、グルコース環に存在する水酸基3個が全て置換されていれば置換度は3となる。置換度は、プルラン脂肪酸エステルについてJIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、下記式に従って算出することができる。 水酸基価= 56.11 × (3−置換度)/((置換基の分子量−1.01)× 置換度+162.14) × 1000 本発明で使用しうるJIS K 0070の試験方法とは、JIS(日本工業規格)に定められている化学製品の酸価、水酸基価等の試験方法である。水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、試験方法は、ここではJIS K 0070のうち、7.3 ピリジン−塩化アセチル法を採用しており、手順の概要は以下の通りである。即ち、試料(ここでは、プルラン脂肪酸エステルであり、予想される水酸基価に応じた量とする)を平底フラスコ200mLに有効数字3桁まで量り取り、ピリジン5mLを加えて溶かす。これに塩化アセチル−トルエン溶液(塩化アセチル100gをトルエン1Lに溶かしたもの)5mLを加える。直ちに平底フラスコに空気冷却管を付けて5分間水浴で65〜70℃に加熱する。空気冷却管の上部から約10mLの水を加えて冷却し、空気冷却管を外した後、平底フラスコに栓をして激しく振る。さらに栓を外した後、空気冷却管を付けて5分間砂浴又は熱板上で煮沸し、過剰の塩化アセチルを加水分解させる。放冷後、約5mLの水で数回空気冷却管を洗う。フェノールフタレイン溶液(フェノールフタレイン1.0gにエタノール(95)90mLを加え、水で100mLとしたもの)を指示薬として数滴加え、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液(水酸化カリウム35gを20mLの水に溶かし、エタノール(95)を加えて1Lとし、二酸化炭素をさえぎって、2〜3日間放置した後、上澄みを取るか又はろ過したものであり、別途ファクターを求めておくこと)で滴定し、指示薬にうすい紅色が30秒間続いたときを終点とする。空試験は、試料を入れないで同様に操作する。さらに、下記式に従って水酸基価を算出する。 水酸基価 = [(空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)) − (滴定に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL))] × (0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター) × 28.05 / (試料の質量(g)) + 酸価 なお酸価は、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、試験方法は、ここではJIS K 0070のうち、3.1 中和滴定法を採用しており、手順の概要は以下の通りである。即ち、試料(ここでは、プルラン脂肪酸エステルであり、予想される酸価に応じた量とする)を三角フラスコに量り取る。溶剤(ジエチルエーテルとエタノール(99.5)を溶剤への溶解度に応じて配合したもの)100mL及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、水浴上で試料が完全に溶け切るまで十分に振り混ぜる。さらに、十分に振り混ぜた溶液を0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを終点とする。さらに、下記式に従って酸価を算出する。なお、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液は、水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エタノール(95)を加えて1Lとし、二酸化炭素をさえぎって、2〜3日間放置した後、上澄みを取るか又はろ過したものであり、別途ファクターを求めておく。 酸価 = (滴定に用いた0.1mol/Lカリウムエタノール溶液の量(mL)) × (0.1mol/Lカリウムエタノール溶液のファクター) × 5.611/ (試料の質量(g)) 上記「ファクター」は、当業者によって通常理解される通り、標定により求められる、正確な濃度とのずれを補正するための係数である。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルの製造原料として使用されうるプルランは、下記一般式I:で表される化合物である。この化合物は、典型的にはデンプン等を原料として黒酵母の一種であるアウレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)を培養することによりその培養液中に分泌させて得られる、マルトトリオースが規則正しくα‐1,6結合した水溶性の天然多糖類である。本発明で使用されるプルランは、重量平均分子量(Mw)が通常は5万以上、好ましくは5万〜30万であるものが好ましい。すなわち、上記一般式Iにおけるnは、100以上であり、好ましくは102〜618である。本発明において原料として使用されうるプルランは、任意の方法で製造されたプルランであってよく、任意の市販のプルランを入手して使用することができる。好適に使用可能な市販のプルランとしては、例えば林原商事株式会社が販売する株式会社林原生物化学研究所製の商品名「食品添加物プルラン P−10」(重量平均分子量約10万)、商品名「食品添加物プルラン」(重量平均分子量約20万)などが挙げられる。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルは、本発明に係る上記のようなプルランと、脂肪酸であるミリスチン酸及び/若しくはパルミチン酸、又はそのハロゲン化物(ハライド)とを、反応(ミリストイル化及び/又はパルミトイル化)させることにより、製造することができる。例えば、プルラン100部とジメチルホルムアミド(DMF)800部とピリジン(適宜量)とを混合して溶解させ、この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに脂肪酸であるミリスチン酸及び/若しくはパルミチン酸又はそのハロゲン化物(ハライド)とトルエン1000部の混合液を徐々に(例えば1時間かけて)滴下し、撹拌した後、メタノール等による再沈殿及び洗浄を行うことにより、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを調製できる。洗浄後の沈殿は、乾燥させて粉砕化してもよい。 ここでミリスチン酸及び/若しくはパルミチン酸のハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物を含む)としては、特に限定するものではないが、好ましい例として塩化ミリストイル、塩化パルミトイルが挙げられる。ミリスチン酸、パルミチン酸のハロゲン化物は、当業者であれば常法により容易に調製することができるが、それ自体を市販品として入手することもできる。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルにおける水酸基の置換度は、プルランと、反応させるミリスチン酸及び/若しくはパルミチン酸又はそのハロゲン化物との量比を調節することにより制御することができる。具体的には、例えば実験的には、それらの量比を少しずつ変えた反応系で得られるプルラン脂肪酸エステルについて置換度を算出し、それによって置換度が1.6〜2.4の範囲になるような、プルランとミリスチン酸及び/若しくはパルミチン酸又はそのハロゲン化物との混合量比を決定することができる。一実施形態では、プルランに対して塩化ミリストイルを2.48〜3.73倍の重量比で混合すればよい。別の実施形態では、プルランに対して塩化パルミトイルを2.77〜4.15倍の重量比で混合すればよい。 このようにして得られる本発明に係るプルラン脂肪酸エステルは、油剤に対して易溶解性(良好な溶解性)を示す。本発明において油剤(oil agent)とは、1種以上の油性成分又はそれを含む油性組成物を意味する。本発明において、プルラン脂肪酸エステルの溶解性は、後述の実施例に記載するように、プルラン脂肪酸エステル5部に油剤95部を添加し、攪拌後の溶液を観察することにより確認することができる。本発明に係るプルラン脂肪酸エステルの高い溶解性(極めて良好な溶解性)は、油剤と混合した際に混合物が透明の外観を示すことによって確認することができる。その油剤との混合物が僅かに白濁する場合には、溶解性は少し低下するがまだ良好な溶解性を示す状態ということができ、明らかに白濁又はほとんど溶解していないと見られる場合(難溶)には、溶解性を示さないということができる。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルは、好適には15℃〜90℃の範囲で油剤に対して溶解性を示し、50℃〜90℃の範囲で油剤に対して優れた溶解性を示すが、特に、室温(本願発明では「室温」を15℃〜30℃と定義する)でも油剤に容易に溶解する点で有利な性質を有する。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルが易溶解性を示す油剤は、特に限定されないが、例えば動植物油、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、高級アルコール、シリコーン類などの油性成分、又はそれらのうち2種以上の混合物が挙げられる。本発明に係るプルラン脂肪酸エステルは、特に炭化水素油やエステル油への溶解性に優れる。本発明のプルラン脂肪酸エステルが易溶解性を示す油性成分としては、具体的には、流動パラフィン(例えば、軽質流動パラフィン)、イソドデカン、スクワランなどの炭化水素油や、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、及びジカプリン酸ネオペンチルグリコールミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、トリミリスチン酸グリセリン、リンゴ酸ジイソステアリルなどのエステル油が挙げられる。これらの油性成分は化粧品に広く使用されている。なお、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリルは、日本化粧品工業連合会が定める表示名称ではトリオクタノインと呼ばれ、INCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient names;この名称は米国Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Associationにより割り当てられる)ではTRIETHYLHEXANOINと呼ばれている。またジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールは、日本化粧品工業連合会が定める表示名称ではジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、INCI名でもNEOPENTYL GLYCOL DIETHYLHEXANOATEと呼ばれている。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルが易溶解性を示す油性成分としては、炭化水素油ではイソドデカンなど、エステル油ではトリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールなどが特に好適な例として挙げられる。 そこで本発明は、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを溶解させた油剤を含有することを特徴とする化粧料も提供する。このような化粧料は、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを溶解させた油剤を、他の配合成分との混合等により化粧料に配合して得られるものである。ここでプルラン脂肪酸エステルを溶解させる油剤は、一般に化粧品に使用されるものであれば特に限定されず、上述のような、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルが易溶解性を示す油剤を、好適に用いることができる。そのような油剤は、例えば動植物油、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、高級アルコール、シリコーン類などの油性成分を1種以上含有するものであってよい。本発明において油剤は、好ましくは液体油である。本発明に係る油剤は、特に炭化水素油やエステル油を含有することが好ましく、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、及びリンゴ酸ジイソステアリルからなる群から選択される少なくとも1つを含有することがさらに好ましい。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルの油剤への配合量は、限定されるものではないが、プルラン脂肪酸エステルと油剤の合計量に対してプルラン脂肪酸エステルが通常は0.01%〜40%、好ましくは0.1〜20%、さらに好ましくは1〜15%となる量が好ましい。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを配合した化粧料には、油剤を構成する前記のような油性成分以外にも、化粧料に一般的に使用される添加剤などの任意の配合成分が必要に応じて添加されうる。例えば、顔料、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、皮膜形成剤、保湿剤、防腐剤、防藻剤、ラメ剤、香料、美容成分、色素などを添加することも好ましい実施形態である。また、精製水などの水性成分も配合してもよい。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを配合した化粧料は、目的に応じ、様々な製品形態へと調製することができる。例えば、固形状、ペースト状、液状などの形態に調製され、具体的には口紅、リップクリーム、リップグロス、ファンデーション、頬紅、アイカラー、アイライナー、マスカラ、オイルクレンジング、ネイルトリートメント、整髪料などの頭髪化粧料、サンスクリーン剤などに使用される。なお、本発明に係る化粧料は、一般の化粧料製造方法に従って製造されるものであってよく、特に制限されない。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを配合した化粧料は、油性化粧料であることが好ましい。また本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを配合した化粧料は、好適には、良好な耐水性を示す耐水性化粧料である。本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを配合した化粧料は、使用感(例えば、滑らかさ)、その持続性、均一性なども良好である。 さらに本発明は、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを上記のような化粧品に用いる油剤に混合して溶解させ、それを化粧料に配合することを特徴とする、化粧料の製造方法も提供する。この方法において、化粧料に用いる好適な油剤は上述の通りであり、特に炭化水素油及び/又はエステル油を含むことが好ましい。 この化粧料の製造方法では、プルラン脂肪酸エステルを油剤に溶解させるためのそれら成分の混合を、好ましくは15℃〜90℃の広い範囲で行うことができ、室温で行うこともできる。例えば、プルラン脂肪酸エステルと油剤の混合は、加熱(例えば、60℃以上、好ましくは70〜90℃で)して行ってもよいが、例えば製造工程を単純化しつつ高品質な化粧料組成物を調製する上では、室温(15℃〜30℃)で行うことが好適である。 この方法において、置換基としてミリストイル基を有するプルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)を油剤に室温で混合する場合には、油剤に含まれる炭化水素油及び/又はエステル油は、限定するものではないが、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、及びジカプリン酸ネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つであることが特に好ましい。 また、この方法において、置換基としてパルミトイル基を有するプルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)を油剤に室温で混合する場合には、油剤に含まれる炭化水素油及び/又はエステル油は、限定するものではないが、イソドデカン及びジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つであることが特に好ましい。 上記の方法により本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを溶解させた油剤は、化粧料の他の配合成分を加えて混合(例えば、混合攪拌)することによって、化粧料に配合すればよい。プルラン脂肪酸エステルを溶解させた油剤は、任意の温度、例えば15℃〜90℃で、化粧料の他の配合成分と混合することができる。プルラン脂肪酸エステルを溶解させた油剤に他の配合成分を添加した後、限定するものではないが、例えば50℃〜90℃に加熱して混合してもよい。 この製造方法によって得られる化粧料は、上記に述べた通りのものである。 以下、本発明を実施例により説明するが、本実施例によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。[製造例1] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(1)置換基:ミリストイル基置換度:1.0 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン(林原商事株式会社、商品名:食品添加物プルラン)100部(ここでは「部」は重量部を意味する;以下同じ)とジメチルホルムアミド(DMF)800部とピリジン51部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル155部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度(ここでは、プルランを構成するグルコース環1個当たりの、アシル基に置換された水酸基の数を意味する;以下同じ)は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、1.0であった。[製造例2] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(2)置換基:ミリストイル基置換度:1.5 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン77部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル233部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、1.5であった。[製造例3] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(3)置換基:ミリストイル基置換度:1.6 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン82部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル248部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、1.6であった。[製造例4] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(4)置換基:ミリストイル基置換度:2.0 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン102部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル311部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.0であった。[製造例5] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(5)置換基:ミリストイル基置換度:2.4 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン123部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル373部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.4であった。[製造例6] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(6)置換基:ミリストイル基置換度:2.5 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン128部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル388部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.5であった。[製造例7] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(7)置換基:ミリストイル基置換度:2.8 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン143部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル435部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.8であった。[製造例8] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(1)置換基:パルミトイル基置換度:1.0 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン51部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル173部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、1.0であった。[製造例9] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(2)置換基:パルミトイル基置換度:1.5 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン77部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル259部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、1.5であった。[製造例10] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(3)置換基:パルミトイル基置換度:1.6 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン82部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル277部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、1.6であった。[製造例11] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(4)置換基:パルミトイル基置換度:2.0 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン102部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル346部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.0であった。[製造例12] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(5)置換基:パルミトイル基置換度:2.4 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン123部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル415部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.4であった。[製造例13] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(6)置換基:パルミトイル基置換度:2.5 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン128部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル432部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.5であった。[製造例14] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(7)置換基:パルミトイル基置換度:2.8 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン143部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル484部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.8であった。[製造例15] プルラン脂肪酸エステル(ステアロイル化プルラン)の製造置換基:ステアロイル基置換度:2.0 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン102部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ステアロイル381部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたステアロイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.0であった。[製造例16] プルラン脂肪酸エステル(ラウロイル化プルラン)の製造置換基:ラウロイル基置換度:2.0 容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン102部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ラウロイル275部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。 こうして得られたラウロイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.0であった。[実施例1] 製造例1〜16で得られたプルラン脂肪酸エステル5部に各種油剤95部を添加し、室温(ここでは25℃)で攪拌後の溶液の状態を観察した。 表1に製造例1〜7で得たプルラン脂肪酸エステル、表2に製造例8〜14で得たプルラン脂肪酸エステルを用いて観察された結果をそれぞれ示す。 表1に示される通り、ミリストイル基を置換基として有する製造例3〜5で得られたプルラン脂肪酸エステル(置換度1.6〜2.4)は、各種油剤に対して、室温でも極めて良好な溶解性又は良好な溶解性を示した。一方、製造例1、2、6、7で得られたミリストイル化プルラン(置換度1.5以下又は2.5以上)は、室温での油剤に対する溶解性が高く低下する傾向にあった。 また表2に示される通り、パルミトイル基を置換基として有する製造例10〜12で得られたプルラン脂肪酸エステル(置換度1.6〜2.4)は、イソドデカン及びジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールに対して、室温でも極めて良好な溶解性を示し、また他の表2に挙げた油剤に対しても良好な溶解性を示した。一方、それらと比較すると、製造例8、9、13、14で得られたパルミトイル化プルラン(置換度1.5以下又は2.5以上)では、室温での油剤に対する溶解性が大きく低下する傾向にあった。 また表3には、製造例4、11で得たミリストイル化プルラン及びパルミトイル化プルランについての本実施例の観察結果を、製造例15、16で得たステアロイル化プルラン及びラウロイル化プルランのものと比較して示した。これらのプルラン脂肪酸エステルは、いずれも置換度は2.0であるが、置換基が異なっている。 表3に示すように、製造例4で得たミリストイル化プルラン及び製造例11で得たパルミトイル化プルランは、室温でも油剤に対する良好な溶解性が観察された。それらの溶解性と比較すると、製造例15で得たステアロイル化プルラン及び製造例16で得たラウロイル化プルランは、室温での油剤に対する溶解性が大きく低下する傾向にあった。[実施例2] 製造例1〜16で得られたプルラン脂肪酸エステル5部に各種油剤95部を添加し、80℃で加熱攪拌した後の溶液の状態を観察した。 表4に製造例1〜7で得たプルラン脂肪酸エステル、表5に製造例8〜14で得たプルラン脂肪酸エステルを用いて観察された結果をそれぞれ示す。 表4に示される通り、加熱した場合、ミリストイル基を置換基として有する製造例3〜5で得られたプルラン脂肪酸エステル(置換度1.6〜2.4)は、用いた全ての油剤に対して、極めて良好な溶解性を示した。一方、製造例1、2、6、7で得られたミリストイル化プルラン(置換度1.5以下又は2.5以上)は、加熱しても、油剤に対して製造例3〜5の場合よりも明らかに低い溶解性しか示さなかった。 また表5に示される通り、加熱した場合、パルミトイル基を置換基として有する製造例10〜12で得られたプルラン脂肪酸エステル(置換度1.6〜2.4)は、用いた全ての油剤に対して、極めて良好な溶解性を示した。一方、製造例8、9、13、14で得られたパルミトイル化プルラン(置換度1.5以下又は2.5以上)は、加熱しても、油剤に対して製造例10〜12の場合よりも明らかに低い溶解性しか示さなかった。 また表6には、製造例4、11で得たミリストイル化プルラン及びパルミトイル化プルランについての本実施例の観察結果を、製造例15、16で得たステアロイル化プルラン及びラウロイル化プルランのものと比較して示した。これらのプルラン脂肪酸エステルは、いずれも置換度は2.0であるが、置換基が異なっている。 表6に示すように、製造例4で得たミリストイル化プルラン及び製造例11で得たパルミトイル化プルランは、加熱した場合、用いた全ての油剤に対して極めて良好な溶解性を示した。一方、製造例15で得たステアロイル化プルラン及び製造例16で得たラウロイル化プルランは、加熱しても、油剤に対して製造例4、11の場合よりも明らかに低い溶解性しか示さなかった。[実施例3] 製造例4で得られたプルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン、置換度2.0)を用い、表7に示す処方に従って、サンスクリーン組成物の被験サンプルを調製した。まず、成分(2)と(16)を25℃で混合攪拌し、そこに成分(1)、(3)〜(11)、(14)を順次添加した後、80℃で混合攪拌した。さらに、成分(12)、(13)、(15)を別途混合攪拌したものを添加し、80℃で混合攪拌することにより、被験サンプル1を調製した。 比較のため、製造例4で得られたプルラン脂肪酸エステル[成分(16)]に代えて、製造例2で得られたプルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン、置換度1.5)[成分(17)]及び製造例7で得られたプルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン、置換度2.8)[成分(18)]をそれぞれ用いて、同様の処方及び手順で比較サンプル1及び2を調製した。 さらに陰性対照として、プルラン脂肪酸エステルを含有しないサンプルを調製した。 なお、製造例4で得られたプルラン脂肪酸エステルは、エステル油であるトリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル[成分(2)]への溶解性が極めて優れていた。 上記のようにして調製したサンスクリーン組成物サンプルを用いて、耐水性試験を実施した。まず、スライドガラスにサンスクリーン組成物サンプルを塗布し、乾燥後、重量を測定した。これに流水を一定時間当てた後、乾燥させて再度重量を測定した。流水処理後の乾燥重量の、流水処理前の乾燥重量に対する比率(流水処理後のサンプル残存割合)によって、サンスクリーン組成物の耐水性を評価した。結果を表8に示した。 表8から明らかなように、製造例4で得られたプルラン脂肪酸エステルを添加したサンスクリーン組成物(被験サンプル1)は流水処理後も9割近くが残存しており、その耐水性は比較サンプル1及び2、並びに対照サンプルのサンスクリーン組成物と比べて格段に優れていた。 さらに、これらのサンスクリーン組成物サンプルについて、使用感、その持続性、均一性における官能試験を行った。その結果、被験サンプル1は、その何れについても、比較サンプル1及び2、並びに陰性対照サンプルよりも良好な結果を示した。[実施例4] 製造例11で得られたプルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン、置換度2.0)を用い、表9に示す処方に従って、マスカラ用組成物の被験サンプルを調製した。まず、成分(1)と(4)を60℃で混合攪拌し、そこに成分(5)〜(10)を順次添加して60℃で混合攪拌することにより、被験サンプル2を調製した。 比較のため、製造例11で得られたプルラン脂肪酸エステル[成分(1)]に代えて、製造例9で得られたプルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン、置換度1.5)[成分(2)]及びパルミトイル化デキストリン[成分(3)]をそれぞれ用いて、同様の処方及び手順で比較サンプル3及び4を調製した。 なお、製造例11で得られたプルラン脂肪酸エステルは、炭化水素油である軽質流動パラフィンへの溶解性が極めて優れていた。一方、比較サンプルに用いたパルミトイル化デキストリンは、軽質流動パラフィンに混合した際の溶解性が優れていたが、製造例9で得られたプルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)では、軽質流動パラフィンに混合した際、僅かに濁りが認められた。 上記のようにして調製したマスカラ用組成物サンプルを用いて、耐水性試験を実施した。まず、毛束にマスカラサンプルを塗布し、乾燥後、重量を測定した。これを脱塩水中で一定時間攪拌した後、乾燥させて再度重量を測定した。この流水処理後の乾燥重量の、流水処理前の乾燥重量に対する比率(流水処理後のサンプル残存割合)によって、マスカラ用組成物の耐水性を評価した。結果を表10に示した。 表10から明らかなように、製造例11で得られたプルラン脂肪酸エステルを添加したマスカラ用組成物(被験サンプル2)は流水処理後も8割以上が残存しており、その耐水性は比較サンプル3及び4よりも優れていた。 さらに、これらのマスカラ用組成物サンプルについて、使用感、その持続性、均一性における官能試験を行った。その結果、被験サンプル2は、その何れについても、比較サンプル3及び4よりも良好な結果を示した。[実施例5] 製造例5で得られたプルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン、置換度2.4)を用い、表11に示す処方に従って、口紅用組成物の被験サンプルを調製した。まず、成分(1)〜(7)、(10)、(15)、(16)を60℃で加熱しながら混合攪拌して、A相を調製した。また別途、成分(8)、(9)、(17)を混合攪拌したところに成分(11)を練り込み、次にそこに成分(12)〜(14)を練り込み60℃で加熱して、B相を調製した。B相にA相を加え、60℃で加熱しながら混合攪拌し、型に流し込んで冷却し、固化させて被験サンプル3を調製した。 比較のため、製造例5で得られたプルラン脂肪酸エステル[成分(17)]に代えて、製造例2で得られたプルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン、置換度1.5)[成分(18)]及び製造例7で得られたプルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン、置換度2.8)[成分(19)]をそれぞれ用いて、同様の処方及び手順で比較サンプル5及び6を調製した。 なお、製造例5で得られたプルラン脂肪酸エステルは、エステル油であるリンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールへの溶解性が極めて優れていた。一方、比較サンプルに用いた製造例2で得られたプルラン脂肪酸エステル及び製造例7で得られたプルラン脂肪酸エステルは、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールに混合した際、僅かに濁りが認められた。 上記のようにして調製した口紅用組成物サンプルを用いて、女性モニター50名による官能試験を実施した。評価は下記の項目について5段階の評点評価を実施した。 滑らか・・・・・・・・5点 やや滑らか・・・・・・4点 普通・・・・・・・・・3点 やや滑らかでない・・・2点 滑らかでない・・・・・1点 評点の平均を表12に示した。 表12から明らかなように、製造例5で得られたプルラン脂肪酸エステルを添加した口紅用組成物(被験サンプル3)は、比較サンプル5及び6の口紅用組成物よりも滑らかな感触が得られるものであった。[実施例6] 製造例10で得られたプルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン、置換度1.6)を用い、表13に示す処方に従って、ファンデーション用組成物の被験サンプルを調製した。まず、成分(3)、(4)、(17)を25℃で混合攪拌し、そこに成分(1)、(2)、(5)〜(9)順次添加した後、60℃で混合攪拌した。そこに、成分(10)〜(16)を別途60℃で混合攪拌したものを添加して、60℃で混合攪拌することにより、被験サンプル4を調製した。なお油剤として成分(3)のジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、成分(4)のイソドデカンを用いた。 こうして得られた被験サンプル4について、使用感、その持続性、均一性における官能試験を行った結果、何れも良好であった。[実施例7] 製造例12で得られたプルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン、置換度2.4)を用い、表14に示す処方に従って、アイクリーム用組成物の被験サンプルを調製した。まず、成分(5)と(12)を25℃で混合攪拌し、そこに、成分(1)〜(4)、(6)〜(8)を順次添加した後、80℃で混合攪拌した。さらに成分(9)〜(11)、(13)を別途80℃で混合攪拌したものを添加し、80℃で混合攪拌することにより、被験サンプル5を調製した。なお油剤として成分(5)のジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールを用いた。 こうして得られた被験サンプル5について、使用感、その持続性、均一性における官能試験を行った結果、何れも良好であった。 本発明に係るプルラン脂肪酸エステルは、油性成分に対して高い溶解性を示し、特に室温などの非加熱条件下でも良好な溶解性を示すことから、化粧料の使用感などを損なうことなく、温和な環境下で化粧料にプルラン成分を配合するために有利に用いることができる。本発明に係るプルラン脂肪酸エステルはまた、化粧料に耐水性を付与するために有利に使用することができる。 本明細書で引用する全ての刊行物、特許および特許出願はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。 プルランの水酸基に導入された置換基がミリストイル基及び/又はパルミトイル基であり、かつ該置換基による水酸基の置換度が1.6〜2.4であるプルラン脂肪酸エステルを、油剤に室温で混合して溶解させ、それを化粧料に配合することを特徴とする、化粧料の製造方法。 油剤が炭化水素油及び/又はエステル油を含む、請求項1に記載の方法。 プルラン脂肪酸エステルが前記置換基としてミリストイル基を有するものであり、かつ油剤に含まれる炭化水素油及び/又はエステル油が、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、及びジカプリン酸ネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の方法。 プルラン脂肪酸エステルが前記置換基としてパルミトイル基を有するものであり、かつ油剤に含まれる炭化水素油及び/又はエステル油が、イソドデカン及びジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の方法。 化粧料が耐水性化粧料である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。