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タイトル:特許公報(B2)_アクロレインおよび/またはアクリル酸製造用の触媒および該触媒を用いたアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法
出願番号:2010531832
年次:2014
IPC分類:B01J 23/88,C07C 27/14,C07C 47/22,C07C 45/35,C07C 57/05,C07C 51/25,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

谷本 道雄 箱崎 伸幸 JP 5420556 特許公報(B2) 20131129 2010531832 20090925 アクロレインおよび/またはアクリル酸製造用の触媒および該触媒を用いたアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法 株式会社日本触媒 000004628 植木 久一 100075409 植木 久彦 100129757 菅河 忠志 100115082 伊藤 浩彰 100125243 谷本 道雄 箱崎 伸幸 JP 2008252084 20080930 20140219 B01J 23/88 20060101AFI20140130BHJP C07C 27/14 20060101ALI20140130BHJP C07C 47/22 20060101ALI20140130BHJP C07C 45/35 20060101ALI20140130BHJP C07C 57/05 20060101ALI20140130BHJP C07C 51/25 20060101ALI20140130BHJP C07B 61/00 20060101ALN20140130BHJP JPB01J23/88 ZC07C27/14 AC07C47/22 AC07C45/35C07C57/05C07C51/25C07B61/00 300 B01J 21/00−38/74 JSTPlus(JDreamIII) JST7580(JDreamIII) 特開平09−057106(JP,A) 特開昭53−048095(JP,A) 7 JP2009066657 20090925 WO2010038677 20100408 16 20120509 岡田 隆介 本発明は、プロピレンを分子状酸素により接触気相酸化してアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造するのに好適な触媒、およびその触媒を用いたアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法に関する。 アクリル酸は、各種合成樹脂、塗料、可塑剤の原料として工業的に重要であり、近年では、吸水性樹脂の原料としてその重要性が高まっている。アクリル酸の製法としては、プロピレンの接触気相酸化により主としてアクロレインを得て、さらに得られたアクロレインの接触気相酸化によってアクリル酸とする2段酸化方法が最も一般的である。 このような、プロピレンを分子状酸素含有ガスの存在下で接触気相酸化してアクリル酸を製造する方法において、第1段目の反応であるプロピレンからアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造するために、酸化触媒が用いられている。しかし、この触媒のアクロレインの収率や寿命等の触媒性能は必ずしも充分なものではなく、触媒性能の改善を目的としてモリブデン−ビスマス系を中心に様々な触媒が提案されている。 例えば、特許文献1には、触媒の結晶相が主成分としてβ−X1MoO4、第2成分としてFe2(MoO4)3を有し、MoO3を含有しない触媒が開示されている。特許文献2には、コバルト、モリブデン、ビスマス、および鉄の酸化物からなり、その活性相中にBi2Fe2Mo2O12で表される結晶相を有する触媒が開示されている。特許文献3には、モリブデン、ビスマス、および鉄を必須成分として含有する触媒において、触媒調製時に乾燥粉末状のモリブデン酸鉄−ゲル(Fe(MoO4)3)を用いる方法が開示されている。特許文献4には、モリブデン、ビスマス、および鉄を必須成分として含有する触媒において、触媒活性が低下した触媒を特定の条件下で熱処理することにより、触媒の活性成分における結晶相のBi2Fe2Mo2O12に由来するピークが減少し、Fe2(MoO4)3に由来するピークが再生され、触媒性能が賦活されることが開示されている。特開2000−169149号公報特公昭56−28180号公報特開平1−168344号公報特開昭63−137755号公報 アクリル酸は全世界で現在数百万トン/年の規模で生産されており、また吸水性樹脂の原料としてその需要は伸びている。さらに、近年の原料プロピレン価格の高騰により、工業的規模でアクリル酸の収率が0.1%でも向上すれば経済的に非常に大きな意味を持つことになる。第1段目の反応であるプロピレンからアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する工程においても、その収率向上が望まれている。特許文献1〜4に開示された触媒はいずれも目的とするアクロレインおよび/またはアクリル酸の収率や寿命等の触媒性能において幾分改善は見られているものの、工業的な規模から見てなお改善の余地を残すものである。 特許文献1に記載の触媒では、アクロレインおよびアクリル酸の空時収率(Space-time yield)は比較的高いものの、原料プロピレン濃度が5.5%と低い条件下での評価である。また、このような原料プロピレン濃度が低い条件下でも、高々2000時間運転を行っただけで反応温度を10℃も高める必要があり、経時的な性能低下の抑制は十分とはいえず、長期間反応を継続した場合の触媒性能には疑問が残る。特許文献2に記載の触媒では、反応初期のアクリル酸選択率が高くても88%程度であり、アクリル酸収率としては満足できるものではない。また触媒寿命に関する評価もされておらず、長期間継続してアクリル酸を製造する際の触媒性能には疑問が残る。特許文献3では、実施例において、アクリル酸収率がある程度改善することが示されているものの、実験室レベルの反応管を用いた反応結果であり、かつ原料プロピレン濃度が4.5%と低い条件下での評価である。また、触媒寿命に関する評価はされておらず、実用上の触媒性能には疑問が残る。特許文献4は、公知の触媒を用いた触媒の再活性化方法を開示したものであり、触媒性能改善を目的として新たな触媒を提案するものではない。さらに、特許文献1〜4には、触媒活性成分の結晶化度を適切な範囲内に制御して、アクロレインおよび/またはアクリル酸の収率を長期にわたり高めることの技術的思想は、何ら開示されていない。 本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、プロピレンからアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造するに際し、触媒活性、選択性等の触媒性能および触媒寿命に優れ、長期にわたって安定した性能を示す触媒を提供することにある。 前記課題を解決することができた本発明の触媒とは、プロピレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造するための触媒であって、モリブデン、ビスマス、およびコバルトを必須成分として含む触媒活性成分を含有し、触媒活性成分のCu−Kα線を用いたX線回折分析によって測定される2θ=5°以上90°以下の範囲の結晶化度Tが4%以上18%以下の範囲であるところに特徴を有する。本発明の触媒は、前記範囲の結晶化度Tを有することにより、触媒活性、選択性等の触媒性能および触媒寿命に優れ、長期にわたって安定した性能を有するものとなる。 本発明の触媒は、さらに、下記式(1)に示されるように、触媒活性成分のCu−Kα線を用いたX線回折分析によって測定される2θ=26.5±0.5°におけるピークの結晶化度Mの前記結晶化度Tに対する比として算出される結晶化度割合Rが、0.03以上0.20以下の範囲であることが好ましい。結晶化度Tに加え、結晶化度割合Rを前記範囲に調整することで、より触媒性能と触媒寿命に優れ、長期にわたり安定した性能を発揮するアクロレインおよび/またはアクリル酸製造用触媒が得やすくなる。R=M/T (1) また、本発明のアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法は、プロピレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する方法であって、本発明の触媒の存在下に接触気相酸化を行う工程を有するところに特徴を有する。本発明の製造方法によれば、長期間にわたり安定して高収率でアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造できる。 本発明の触媒およびアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法によれば、プロピレンを分子状酸素により接触気相酸化してアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する際に、長期間にわたり安定して高収率でアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造できる。 以下、本発明にかかるアクロレインおよび/またはアクリル酸製造用触媒および該触媒を用いたアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し、実施することができる。 本発明のアクロレインおよび/またはアクリル酸製造用触媒は、プロピレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造するための触媒である。アクロレインおよび/またはアクリル酸を製造するための原料ガスとしては、分子状酸素含有ガスとプロピレンとを少なくとも含有していればよい。分子状酸素含有ガスとしては、分子状酸素を含む限り特に限定されず、例えば、分子状酸素のみからなるガスを用いてもよく、空気を用いてもよい。 本発明の触媒は、モリブデン、ビスマス、およびコバルトを必須成分として含む触媒活性成分を含有し、触媒活性成分のCu−Kα線を用いたX線回折分析によって測定される2θ=5°以上90°以下の範囲の結晶化度Tが4%以上18%以下の範囲にある。前記結晶化度Tは、好ましくは、7%以上であり、15%以下である。本発明の触媒は、触媒活性成分のCu−Kα線を用いたX線回折分析によって測定される2θ=5°以上90°以下の範囲の結晶化度Tを4%以上18%以下の範囲とすることで、触媒活性、選択性等の触媒性能および触媒寿命に優れ、長期にわたって安定した性能を有するようになる。その理由は明らかではないが、結晶化度Tが4%未満であれば、アクロレインおよび/またはアクリル酸の選択率が低下し、結晶化度Tが18%超であれば、触媒の寿命が短く、経時的な性能低下を早期に引き起こすようになる。 本発明における結晶化度とは、X線回折装置を用い、JIS・K−0131に記載の方法(絶対法)に準じて求めることができる。すなわち、結晶化度Tとは、下記式(2)に示されるように、2θ=5°以上90°以下の範囲の全結晶性部分からの回折X線強度と、2θ=5°以上90°以下の範囲の全体の回折X線強度とを求め、全体の回折X線強度に対する全結晶性部分のX線回折強度の比から算出される。なお、全体の回折X線強度とは、2θ=5°以上90°以下の範囲における回折X線の積分強度を意味し、全結晶性部分からの回折X線強度とは、2θ=5°以上90°以下の範囲における結晶性部分の回折X線の積分強度を意味する。T=(全結晶性部分からの回折X線強度)/(全体の回折X線強度)×100 (2) 結晶化度Tの具体的な求め方は次の通りである。X線回折分析により得られる回折プロファイルから、バックグラウンドを除いた後、非晶質部分によるハローパターンを分離し、その結果得られる結晶性部分の回折線をピーク毎に分離する。非晶質部分によるハローパターンの積分強度(Sn)と、結晶性部分の各ピークの積分強度(Sc1,Sc2,Sc3・・・)とを算出し、結晶性部分の各ピークの積分強度の総和(Sc1+Sc2+Sc3+・・・)から全結晶性部分の回折X線強度Scを算出する。結晶化度Tは、T=Sc/(Sn+Sc)×100から求める。 本発明の触媒は、また、下記式(1)で表されるように、触媒活性成分のCu−Kα線を用いたX線回折分析によって測定される2θ=26.5±0.5°におけるピークの結晶化度Mと前記結晶化度Tとの比として算出される結晶化度割合Rが、0.03以上0.20以下の範囲であることが好ましい。結晶化度割合Rは、より好適には、0.05以上0.13以下の範囲である。R=M/T (1) 上記式(1)において、Mは、触媒活性成分のCu−Kα線を用いたX線回折分析によって測定される2θ=26.5±0.5°におけるピークの結晶化度を表す。Mは、X線回折装置を用い、JIS・K−0131に記載の方法(絶対法)に準じて求めることができる。すなわち、Mは、下記式(3)に示されるように、2θ=26.5±0.5°にピークを有する結晶性部分の回折X線強度と、2θ=5°以上90°以下の範囲の全体の回折X線強度とを求め、全体の回折X線強度に対する2θ=26.5±0.5°の回折X線強度の比から算出される。なお、2θ=26.5±0.5°にピークを有する結晶性部分の回折X線強度とは、2θ=26.5±0.5°にピークを有する回折X線の積分強度を意味する。M=(ピークの結晶性部分からの回折X線強度)/(全体の回折X線強度)×100 (3) 結晶化度割合Rは、2θ=5°以上90°以下の範囲の全結晶性部分の回折X線強度に対する、2θ=26.5±0.5°にピークを有する結晶性部分の回折X線強度の比に相当する。すなわち、結晶化度割合Rを規定することにより、全結晶性部分に占める特定の結晶性部分の割合が規定され、触媒性能と触媒寿命により優れ、長期にわたり安定した性能を発揮するアクリル酸製造用触媒が得やすくなる。 本発明のアクロレインおよび/またはアクリル酸製造用触媒は、モリブデン、ビスマス、およびコバルトを必須成分として含む触媒活性成分を含有する。本発明のアクロレインおよび/またはアクリル酸製造用触媒は、その結晶化度Tが前記範囲を満たすことが重要であり、本発明は、触媒活性成分としてモリブデン、ビスマス、およびコバルトを必須成分として含む触媒に適用される。モリブデン、ビスマス、およびコバルトを必須成分として含む触媒については、触媒活性成分の組成や調製法が各社から種々提案されているが、本発明においては、触媒活性成分の組成として下記一般式(4)で表される触媒であることが好ましい。下記式(4)で表される組成を有する触媒活性成分を含有する触媒であれば、結晶化度Tを適正範囲に調整することで、活性、すなわちプロピレン転化率、アクロレインおよび/またはアクリル酸収率、ならびに触媒寿命等の触媒性能に優れた触媒が得やすくなる。MoaBibCocX1dX2eX3fX4gOz (4)(ここで、Moはモリブデン、Biはビスマス、Coはコバルト、X1は鉄およびニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、X2はアルカリ金属、アルカリ土類金属、ホウ素、およびタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、X3はタングステン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、およびチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、X4はリン、テルル、アンチモン、スズ、セリウム、鉛、ニオブ、マンガン、砒素、および亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、Oは酸素を表し、またa、b、c、d、e、f、gおよびzはそれぞれMo、Bi、Co、X1、X2、X3、X4およびOの原子比を表し、a=12のとき、0.1≦b≦10、0.1≦c≦20、0.1≦d≦20、0.001≦e≦10、0≦f≦30、0≦g≦10であり、zは各元素の酸化状態によって定まる数値である。) 本発明の触媒は、モリブデン、ビスマス、およびコバルトを必須成分として含む触媒活性成分に加え、触媒活性成分を担持するための不活性担体を有していてもよい。不活性担体としては、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、マグネシア、ステアタイト、コージェライト、シリカ−マグネシア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ゼオライト等を用いることができる。担体の形状は特に制限はなく、球状、円柱状、リング状等の形状のものが使用できる。 次に、本発明の触媒の調製方法について説明する。触媒調製方法については種々提案されているが、例えば、以下の方法を採用すればよい。 触媒活性成分の原料として、触媒活性成分を構成する各元素の酸化物、水酸化物、アンモニウム塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、または有機酸塩等の塩類や、それらの水溶液、それらのゾル、あるいは、複数の元素を含む化合物等を、例えば、水に混合して水溶液あるいは水性スラリー(以下、「出発原料混合液」と称する)を得る。 得られた出発原料混合液を、必要に応じて、加熱や減圧等の方法により乾燥させて触媒前駆体を得る。加熱による乾燥方法としては、例えば、スプレードライヤー、ドラムドライヤー等を用いればよく、その結果、粉末状の触媒前駆体が得られる。また、箱型乾燥機、トンネル型乾燥機等を用いて、出発原料混合液を気流中で加熱して、ブロック状またはフレーク状の触媒前駆体を得ることもできる。さらに、一旦、出発原料混合液を濃縮および蒸発乾固してケーキ状の固形物を得て、この固形物をさらに上記加熱処理する方法も採用できる。減圧による乾燥方法としては、例えば、真空乾燥機を用いて、ブロック状または粉末状の触媒前駆体を得てもよい。 得られた触媒前駆体は、必要に応じて、適当な粒度の粉体を得るための粉砕工程や分級工程を経て、続く成形工程に送られる。場合によっては、触媒前駆体を一旦焼成した後に、成形工程に送ってもよい。成形工程に送られる前の触媒前駆体の粒度は、特に限定されないが、成型性に優れる点で、目開き500μmの篩の通過粒分が90質量%以上となる粒度が好ましい。 成形工程では、触媒前駆体を押し出し成形法や打錠成形法等により一定の形状に成形して成形体を得てもよい。あるいは、触媒活性成分である出発原料混合液または触媒前駆体を、一定の形状を有する任意の不活性担体上に担持して、担持体を得てもよい(担持法)。 押し出し成形法や打錠成形法等により得られる成形体の形状に特に制限はなく、球状、円柱状、リング状、不定形等のいずれの形状でもよい。もちろん球状の場合、真球である必要はなく実質的に球状であればよく、円柱状およびリング状についても同様である。 担持法としては、例えば、一定の形状を有する不活性担体に、出発原料混合液を乾燥させずに水溶液あるいは水性スラリーのまま、加熱しながら塗布あるいは付着させて、乾燥して、担持させる蒸発乾固法や、不活性担体に触媒前駆体を粉体状で担持させる造粒法等を採用できる。中でも、特に特開昭63−200839号公報に記載の遠心流動コーティング法、特開平8−299797号公報に記載の転動造粒法、または特開2004−136267号公報に記載のロッキングミキサー法を用いて、触媒活性成分を不活性担体に担持する造粒法が好ましい。担持法で使用できる不活性担体の材料や形状は、前記説明したとおりである。 成形工程においては、成形性を向上させるための成形補助剤やバインダー、触媒に適度な細孔を形成させるための気孔形成剤等を用いてもよい。これらの具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、プロピオン酸、マレイン酸、ベンジルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、およびフェノール類の有機化合物;水;硝酸、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機塩類等が挙げられる。 また、触媒の機械強度を向上させる目的で、シリカ、アルミナ、ガラス繊維、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の補強剤を用いることもできる。補強剤は、出発原料混合液に添加してもよいし、触媒前駆体に配合してもよい。 成形工程で得られた成形体あるいは担持体は、続く焼成工程に送られ、焼成される。焼成温度としては、350℃〜600℃の範囲が好ましく、より好ましくは400℃〜550℃の範囲である。焼成時間としては好ましくは1〜10時間である。焼成工程で使用される焼成炉としては特に制限はなく、一般的に使用される箱型焼成炉あるいはトンネル型焼成炉等を用いればよい。 本発明の触媒は特定の結晶化度Tを有し、さらに好ましくは特定の結晶化度割合Rを有するが、そのような触媒を得るためには、次の方法を採用することが好ましい。すなわち、上記の触媒調製方法において、出発原料混合液を調製する際に、原料を分割投入したり、原料の投入時間および原料を混合する際の混合液の温度を調節する;あるいは、焼成後の触媒を特定条件下で水熱処理すればよい。具体的には、出発原料混合液を調製する際に、モリブデン、ビスマス、コバルト等の原料を2回以上に分割して投入する、あるいはコバルトやビスマス等を含有する溶液(B液)をモリブデン等を含有する溶液(A液)に投入する際に、B液を30秒〜10分、好ましくは1分〜5分の時間をかけて加えればよい。原料を混合する際の混合液の温度は、その投入する原料によって適宜設定すればよい。焼成後の触媒を特定条件下で水熱処理する場合は、オートクレーブ内に飽和水蒸気となる水分とともに焼成後の触媒を仕込み、加圧下、温度150℃〜250℃、より好ましくは190℃〜240℃の範囲で2時間〜48時間処理すればよい。また、前記方法において、触媒活性成分におけるモリブデン、ビスマス、およびコバルトの組成比率を適宜調整することにより結晶化度割合Rを変えることもできる。 次に、本発明のアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法について説明する。本発明のアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法は、プロピレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する方法であって、本発明の触媒の存在下で接触気相酸化を行う工程を有することを特徴とする。本発明のアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法によれば、長期間にわたり安定して高収率でアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造できる。 本発明のアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法は、本発明の触媒を用いて接触気相酸化反応を行う限り、使用される反応器は特に限定されない。反応器としては、固定床反応器、流動床反応器、移動床反応器のいずれも用いることができる。好ましくは、反応器としては、固定床反応器が用いられる。 固定床反応器としては、管式のものが好ましく、多管式のものがより好ましい。この場合、固定床反応器は、1本または2本以上の反応管を有し、触媒が反応管内に充填される。反応管は、一般に、固定床反応器内で、鉛直方向に配置される。反応管の内径は触媒を充填できる限り特に限定されないが、通常15〜50mmであり、より好ましくは20〜40mm、さらに好ましくは22〜38mmである。 反応管内に充填される触媒は、単一な触媒であってもよく、2種類以上であってもよいが、反応管内に充填される触媒は、反応管内の触媒層を管軸方向に2層以上に分割して設けた複数個の反応帯に、各反応帯に充填される触媒の結晶化度割合Rがそれぞれ異なるように充填する方が好ましい。つまり、反応管は、管軸方向に分割された複数個の反応帯を有し、各反応帯は、結晶化度割合Rが互いに異なる触媒が充填されていることが好ましい。より好ましくは、プロピレンと分子状酸素含有ガスとを含む原料ガスの入口側から出口側に向かって、複数個の反応帯の触媒の結晶化度割合Rが順次小さくなるように、反応管に触媒を充填する。この場合、いずれの反応帯に充填される触媒も、結晶化度割合Rが0.03〜0.20の範囲であることが好ましい。さらに、前記触媒の充填方法に、触媒の占有容積が原料ガスの入口側から出口側に向かって小さくなるように充填する方法や、触媒の一部を不活性担体等で希釈する方法等を組み合わせてもよい。 反応帯の数は、反応条件や反応器の規模により適宜決定される。しかし、反応帯の数が多すぎると触媒の充填作業が煩雑になる等の問題が発生するため、反応帯の数は工業的には2〜6程度が好ましい。 本発明のアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法の反応条件には特に制限はなく、この種の反応に一般に用いられている条件であれば、いずれも実施することが可能である。例えば、原料ガスとしては、1〜15容量%(好ましくは4〜12容量%)のプロピレン、0.5〜25容量%(好ましくは2〜20容量%)の分子状酸素、0〜30容量%(好ましくは0〜25容量%)の水蒸気、残部が窒素等の不活性ガスからなる混合ガスを用いればよい。そして、前記原料ガスを、280〜450℃の温度範囲で、0.1〜1.0MPaの圧力下、300〜5,000h-1(STP)の空間速度で、触媒に接触させればよい。 以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例により何ら制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」、と記すことがある。 プロピレン転化率、アクロレインとアクリル酸の合計収率は次式によって求めた。プロピレン転化率(モル%)=(反応したプロピレンのモル数)/(供給したプロピレンのモル数)×100アクロレイン+アクリル酸収率(モル%)=(生成したアクロレインおよびアクリル酸のモル数)/(供給したプロピレンのモル数)×100 X線回折測定は、スペクトリス株式会社製X’PertProを用いて行った。X線回折測定用試料は、触媒活性成分を篩い分け、目開き150μmの通過分の粉体約0.5gを、直径16mm、厚み2mmのタブレット状に圧縮成型して作製した。X線回折測定用試料を、Cu−Kα線を用いて、X線出力40mA,45kV、X線照射幅15mm、測定温度25℃の条件下、2θ=5°以上90°以下の範囲でX線回折強度を測定した。得られたX線回折プロファイルから、JIS・K0131に記載の方法(絶対法)に準じて、結晶化度Tおよび結晶化度割合Rを算出した。 (1)実験例1 (1−1)触媒の調製 蒸留水3000部を60℃に維持しながら攪拌し、そこにパラモリブデン酸アンモニウム300部、硝酸カリウム1.7部を溶解して、A液を調製した。別に蒸留水300部を60℃に維持しながら攪拌し、65質量%硝酸50部、硝酸ビスマス137部、硝酸コバルト412部、硝酸鉄114部、および硝酸ニッケル206部を添加して、B液を調製した。得られたB液を、質量比で1:1になるように2つに分け、B液−1とB液−2とを得た。A液を撹拌しながら、A液にB液−1を2分間かけて添加し、さらに30分攪拌し続けた。その後、B液−2を同様に2分間かけて添加し、30分攪拌し続け懸濁液を得た。得られた懸濁液に再度パラモリブデン酸アンモニウム200部を添加し、30分攪拌し続け出発原料混合液を得た。この出発原料混合液を蒸発乾固して、ケーキ状の固形物とし、得られた固形物を空気雰囲気下200℃で約5時間乾燥を行った。乾燥後の固形物を250μm以下に粉砕し、粉体の触媒前駆体を得た。転動造粒装置に平均粒径4.5mmのシリカ−アルミナ球形担体500部を投入し、次いで結合剤として15質量%の硝酸アンモニウム水溶液と共に触媒前駆体を投入して担体に担持させた後、空気雰囲気下470℃で6時間焼成して触媒1を得た。この触媒1の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成は次のとおりであった。触媒1:Mo12Bi1.2Co6Fe1.2Ni3K0.07 担持率は、下記式により求めた。担持率(質量%)=(触媒の質量(g)−用いた担体の質量(g))/用いた担体の質量(g)×100 触媒1の触媒活性成分のX線回折測定による2θ=5°以上90°以下の範囲の結晶化度Tは7.1%であり、触媒1の結晶化度割合Rは0.10であった。 (1−2)反応 全長3000mm、内径25mmのSUS製反応管、およびこれを覆う熱媒体を流すためのシェルからなる反応器を鉛直方向に用意した。反応管上部より得られた触媒1を落下させて、層長が2900mmとなるように充填した。熱媒体温度(反応温度)を310℃に保ち、触媒を充填した反応管下部より、プロピレン6容量%、酸素11容量%、水蒸気15容量%、残部が窒素等の不活性ガスからなる混合ガスを、空間速度1650hr-1(STP)で導入し、プロピレン酸化反応を行った。プロピレン転化率およびアクロレイン+アクリル酸収率の結果を表1に示す。また、反応温度を適宜変更しながら4000時間反応を継続した結果も表1に示す。実験例1では、初期の収率が92.8mol%と高い値を示し、4000時間経過後も収率の低下はわずか0.2mol%に抑えられた。実験例1では、長期間にわたり安定して高収率でアクロレインとアクリル酸を製造できた。 (2)実験例2 実験例1において、A液およびB液の保持温度を70℃に変更したこと、A液および懸濁液に添加するパラモリブデン酸アンモニウムの量をそれぞれ500部、0部に変更したこと、B液を2つに分けなかったこと、A液にB液を添加する際10秒以内に添加したこと以外は、実験例1と同様に調製し、触媒2を得た。この触媒2の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成は実験例1と同じであった。触媒2の結晶化度Tは18.9%であり、結晶化度割合Rは0.02であった。 得られた触媒2を実験例1と同様に充填し、同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。また、反応温度を適宜変更しながら4000時間反応を継続した結果も表1に示す。実験例2では、触媒2の結晶化度Tが18%を超え、結晶化度割合Rが0.02と低い値であったため、初期の収率は90.7mol%と低い結果となった。4000時間経過後はさらに収率が低下し、初期に比べ1.5mol%も収率が低下した。 (3)実験例3 実験例1において、A液およびB液の保持温度を70℃に変更したこと、A液および懸濁液に添加するパラモリブデン酸アンモニウムの量をそれぞれ500部、0部に、硝酸ビスマスの量を206部に、硝酸コバルトの量を481部に、硝酸鉄の量を191部に、硝酸ニッケルの量を103部に変更したこと、A液にB液−1およびB液−2をそれぞれ添加する際の時間を1分に変更したこと以外は、実験例1と同様に調製し、触媒3を得た。この触媒3の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成は次のとおりであった。触媒3:Mo12Bi1.8Co7Fe2Ni1.5K0.07 触媒3の結晶化度Tは14.3%であり、結晶化度割合Rは0.06であった。 得られた触媒3を実験例1と同様に充填し、同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。実験例3では、初期の収率が93.0mol%と高い値を示した。 (4)実験例4 実験例1において、A液および懸濁液に添加するパラモリブデン酸アンモニウムの量をそれぞれ100部、400部に、硝酸ビスマスの量を172部に、硝酸コバルトの量を343部に、硝酸ニッケルの量を137部に、硝酸カリウムの量を1.2部に変更したこと、B液を2つに分けなかったこと、A液にB液を添加する際の時間を12分に変更したこと、転動造粒装置に投入するシリカ−アルミナ球形担体の量を450部に変更したこと以外は、実験例1と同様に調製し、触媒4を得た。この触媒4の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成は次のとおりであった。触媒4:Mo12Bi1.5Co5Fe1.2Ni2K0.05 触媒4の結晶化度Tは4.5%であり、結晶化度割合Rは0.21であった。 得られた触媒4を実験例1と同様に充填し、同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。また、反応温度を適宜変更しながら4000時間反応を継続した結果も表1に示す。実験例4では、触媒4の結晶化度Tが4.5%とやや低く、結晶化度割合Rも0.21と高い値であったため、収率は実験例1,3よりも低下し、初期で91.7mol%、4000時間後で90.9mol%であった。 (5)実験例5 実験例4において、A液および懸濁液に添加するパラモリブデン酸アンモニウムの量をそれぞれ0部、500部に変更したこと、A液にB液を添加する際の時間を20分に変更したこと以外は、実験例4と同様に調製し、触媒5を得た。この触媒5の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成は実験例4と同じであった。触媒5の結晶化度Tは3.4%であり、結晶化度割合Rは0.22であった。 得られた触媒5を実験例1と同様に充填し、同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。また、反応温度を適宜変更しながら4000時間反応を継続した結果も表1に示す。実験例5では、触媒5の結晶化度Tが4%未満であり、結晶化度割合Rが0.22と高い値であったため、初期の収率は89.6mol%と低い結果となった。4000時間経過後はさらに収率が低下し、初期に比べ1.9mol%も収率が低下した。 (6)実験例6 実験例3において、硝酸ビスマスの量を183部に、硝酸鉄の量を114部に変更したこと、A液にB液−1およびB液−2をそれぞれ添加する際10秒以内に添加したこと以外は、実験例3と同様に調製し、触媒6を得た。この触媒6の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成は次のとおりであった。触媒6:Mo12Bi1.6Co7Fe1.2Ni1.5K0.07 触媒6の結晶化度Tは17.1%であり、結晶化度割合Rは0.02であった。 得られた触媒6を実験例1と同様に充填し、同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。実験例6では、触媒6の結晶化度Tが17.1%とやや高く、結晶化度割合Rも0.02と低い値であったため、収率は実験例1,3よりも低下し、初期で91.4mol%であった。 (7)実験例7 実験例6において、A液およびB液の保持温度を50℃に変更したこと、A液および懸濁液に添加するパラモリブデン酸アンモニウムの量をそれぞれ0部、500部に変更したこと、B液を2つに分けなかったこと以外は、実験例6と同様に調製し、触媒7を得た。この触媒7の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成は実験例6と同様であった。触媒7の結晶化度Tは3.4%であり、結晶化度割合Rは0.01であった。 得られた触媒7を実験例1と同様に充填し、同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。実験例7では、触媒7の結晶化度Tが4%未満であり、結晶化度割合Rが0.01と低い値であったため、初期の収率は90.4mol%と低い結果となった。 (8)実験例8 実験例4において、A液およびB液の保持温度を70℃に変更したこと、A液および懸濁液に添加するパラモリブデン酸アンモニウムの量をそれぞれ400部、100部に、硝酸ビスマスの量を145部に、硝酸鉄の量を95.4部に変更し、硝酸ニッケルを添加しなかったこと、A液にB液を添加する際の時間を30秒に変更したこと、転動造粒装置に投入するシリカ−アルミナ球形担体の量を430部に変更したこと以外は、実験例4と同様に調製し、触媒8を得た。この触媒8の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成は次のとおりであった。触媒8:Mo12Bi1.3Co5Fe1K0.05 触媒8の結晶化度Tは9.7%であり、結晶化度割合Rは0.04であった。 得られた触媒8を実験例1と同様に充填し、同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。実験例8では、初期の収率が92.6mol%と高い値を示した。 (9)実験例9 実験例1において、A液およびB液の保持温度を70℃に変更したこと、A液および懸濁液に添加するパラモリブデン酸アンモニウムの量をそれぞれ350部、150部に、硝酸ビスマスの量を229部に、硝酸コバルトの量を481部に、硝酸鉄の量を143部に変更し、硝酸ニッケルを添加しなかったこと、A液にB液−1およびB液−2をそれぞれ添加する際の時間を1分に変更したこと以外は、実験例1と同様に調製し、触媒9を得た。この触媒9の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成は次のとおりであった。触媒9:Mo12Bi2Co7Fe1.5K0.07 触媒9の結晶化度Tは7.9%であり、結晶化度割合Rは0.12であった。 得られた触媒9を実験例1と同様に充填し、同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。実験例9では、初期の収率が93.0mol%と高い値を示した。 (10)実験例10 実験例1において、A液および懸濁液に添加するパラモリブデン酸アンモニウムの量をそれぞれ0部、500部に、硝酸ビスマスの量を80.1部に、硝酸コバルトの量を378部に、硝酸鉄の量を143部に、硝酸カリウムの量を1.2部に変更し、硝酸ニッケルを添加しなかったこと、A液にB液−1およびB液−2をそれぞれ添加する際の時間を4分に変更したこと、転動造粒装置に投入するシリカ−アルミナ球形担体の量を430部に変更したこと以外は、実験例1と同様に調製し、触媒10を得た。この触媒10の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成は次のとおりであった。触媒10:Mo12Bi0.7Co5.5Fe1.5K0.05 触媒10の結晶化度Tは5.9%であり、結晶化度割合Rは0.14であった。 得られた触媒10を実験例1と同様に充填し、同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。実験例10では、初期の収率が92.2mol%と比較的高い値を示した。 (11)実験例11 実験例6において、硝酸ビスマスの量を229部に、硝酸コバルトの量を412部に、硝酸鉄の量を172部に、硝酸ニッケルの量を137部に変更したこと、A液にB液−1およびB液−2をそれぞれ添加する際の時間を30秒に変更したこと以外は、実験例6と同様に調製し、触媒11を得た。この触媒11の担持率は104質量%であり、酸素を除く金属元素組成は次のとおりであった。触媒11:Mo12Bi2Co6Fe1.8Ni2K0.07 触媒11の結晶化度Tは16.2%であり、結晶化度割合Rは0.03であった。 得られた触媒11を実験例1と同様に充填し、同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。実験例11では、初期の収率が92.2mol%と比較的高い値を示した。 (12)実験例12 (12−1)触媒の調製 実験例1において用いたシリカ−アルミナ球状担体の平均粒径を6.5mmのものに変更した以外は、実験例1と同様に調製し、触媒12を得た。この触媒12の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成、結晶化度Tおよび結晶化度割合Rは触媒1と同じであった。 (12−2)反応 全長3000mm、内径25mmのSUS製反応管、およびこれを覆う熱媒体を流すためのシェルからなる反応器を鉛直方向に用意した。反応管上部より触媒12、触媒3を順次落下させて、それぞれ触媒12の層長が800mm、触媒3の層長が2100mmとなるように充填した。 熱媒体温度(反応温度)を315℃に保ち、触媒を充填した反応管下部より、プロピレン8容量%、酸素15容量%、水蒸気8容量%、残部が窒素等の不活性ガスからなる混合ガスを、空間速度1950hr-1(STP)で導入し、プロピレン酸化反応を行った。実験例12では、混合ガスの流れに対し、触媒12が反応管の入口側に配置され、触媒3が反応管の出口側に配置されていた。反応温度を適宜変更しながら4000時間反応を継続した。その結果を表2に示す。実験例12では、結晶化度割合Rが0.03〜0.20の範囲の2種類の触媒3と触媒12とを反応管に充填し、入口側に結晶化度割合Rが高い触媒12を配し、出口側に結晶化度割合Rが低い触媒3を配した。その結果、初期および4000時間経過後のいずれにおいても、92.5mol%以上の高収率となった。 (13)実験例13 実験例3において用いたシリカ−アルミナ球状担体の平均粒径を6.5mmのものに変更した以外は、実験例3と同様に調製し、触媒13を得た。この触媒13の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成、結晶化度Tおよび結晶化度割合Rは触媒3と同じであった。 実験例12と同様の反応管に、反応管上部より触媒13、触媒1を順次落下させて、それぞれ触媒13の層長が800mm、触媒1の層長が2100mmとなるように充填し、実験例12と同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。実験例13では、混合ガスの流れに対し、触媒13が反応管の入口側に配置され、触媒1が反応管の出口側に配置されていた。その結果を表2に示す。実験例13では、結晶化度割合Rが0.03〜0.20の範囲の2種類の触媒1と触媒13とを反応管に充填し、入口側に結晶化度割合Rが低い触媒13を配し、出口側に結晶化度割合Rが高い触媒1を配した。実験例13でも、初期および4000時間経過後のいずれにおいても高い収率を維持したが、実験例12よりは性能が落ちた。 (14)実験例14 実験例2において用いたシリカ−アルミナ球状担体の平均粒径を6.5mmのものに変更した以外は、実験例2と同様に調製し、触媒14を得た。この触媒14の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成、結晶化度Tおよび結晶化度割合Rは触媒2と同じであった。 実験例12と同様の反応管に、反応管上部より触媒14、触媒2を順次落下させて、それぞれ触媒14の層長が800mm、触媒2の層長が2100mmとなるように充填し、実験例12と同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。実験例14では、混合ガスの流れに対し、触媒14が反応管の入口側に配置され、触媒2が反応管の出口側に配置されていた。その結果を表2に示す。実験例14では、結晶化度割合Rが0.03〜0.20の範囲外で同じ結晶化度割合Rを有する触媒2と触媒14とを、反応管に充填した。実験例14では、実験例12,13よりも収率が落ちた。 (15)実験例15 実験例5において用いたシリカ−アルミナ球状担体の平均粒径を6.5mmのものに変更した以外は、実験例5と同様に調製し、触媒15を得た。この触媒15の担持率は100質量%であり、酸素を除く金属元素組成、結晶化度Tおよび結晶化度割合Rは触媒5と同じであった。 実験例12と同様の反応管に、反応管上部より触媒15、触媒2を順次落下させて、それぞれ触媒15の層長が800mm、触媒2の層長が2100mmとなるように充填し、実験例12と同様の条件でプロピレン酸化反応を行った。実験例15では、混合ガスの流れに対し、触媒15が反応管の入口側に配置され、触媒2が反応管の出口側に配置されていた。結果を表2に示す。実験例15では、結晶化度割合Rが0.03〜0.20の範囲外の2種類の触媒2と触媒15とを反応管に充填し、入口側に結晶化度割合Rが高い触媒15を配し、出口側に結晶化度割合Rが低い触媒3を配した。実験例15では、実験例12,13よりも収率が落ちた。 プロピレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造するための触媒であって、 モリブデン、ビスマス、およびコバルトを必須成分として含む触媒活性成分を含有し、 触媒活性成分のCu−Kα線を用いたX線回折分析によって測定される2θ=5°以上90°以下の範囲の結晶化度Tが4%以上18%以下の範囲であることを特徴とするアクロレインおよび/またはアクリル酸製造用の触媒。 下記式(1)で表される触媒の結晶化度割合Rが0.03以上0.20以下の範囲である請求項1に記載のアクロレインおよび/またはアクリル酸製造用の触媒。R=M/T (1)(Mは、触媒活性成分のCu−Kα線を用いたX線回折分析によって測定される2θ=26.5±0.5°におけるピークの結晶化度を表す。) 前記触媒は、さらに、前記触媒活性成分を担持するための不活性担体を有する請求項1または2に記載のアクロレインおよび/またはアクリル酸製造用の触媒。 プロピレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する方法であって、 請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒の存在下に接触気相酸化を行う工程を有することを特徴とするアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法。 前記触媒が充填された反応管を有する固定床反応器を用いる請求項4に記載のアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法。 前記反応管は、管軸方向に分割された複数個の反応帯を有し、 各反応帯は、前記結晶化度割合Rが互いに異なる触媒が充填されている請求項5に記載のアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法。 前記複数個の反応帯の結晶化度割合Rは、プロピレンと分子状酸素含有ガスとを含む原料ガスの入口側から出口側に向かって順次小さくなる請求項6に記載のアクロレインおよび/またはアクリル酸の製造方法。


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