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タイトル:特許公報(B2)_液状インジゴカルミン製剤
出願番号:2010524693
年次:2014
IPC分類:A61K 49/00,A61K 9/08,A61K 47/02,A61K 47/12,A61K 47/22


特許情報キャッシュ

梅川 智通 小山 英昭 鈴木 智恵 JP 5449167 特許公報(B2) 20140110 2010524693 20090707 液状インジゴカルミン製剤 マイラン製薬株式会社 508179903 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 梅川 智通 小山 英昭 鈴木 智恵 JP 2008207724 20080812 20140319 A61K 49/00 20060101AFI20140227BHJP A61K 9/08 20060101ALI20140227BHJP A61K 47/02 20060101ALI20140227BHJP A61K 47/12 20060101ALI20140227BHJP A61K 47/22 20060101ALI20140227BHJP JPA61K49/00 ZA61K9/08A61K47/02A61K47/12A61K47/22 A61K 49/00−49/22 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 国際公開第2008/018327(WO,A1) 特開2007−223966(JP,A) 腎機能検査用薬 インジゴカルミン静注20mg「第一三共」,添付文書,第一三共株式会社,2008年 6月 11 JP2009062394 20090707 WO2010018723 20100218 16 20120703 小森 潔 本発明はインジゴカルミンを安定な状態で含有する液状製剤およびその製造方法に関する。また、本発明はインジゴカルミン水溶液の安定化方法に関する。 2002年の全国胃がん受診率は13.0%、また大腸がん受診率は17.1%であり、年々増加傾向にある。また2007年の調査によると、国内の年間胃がん手術数は26,400例、同様に大腸がん手術数は21,600例と報告されている。 かかる消化管の内視鏡検査法の観察に有用な方法として、1972年頃から色素散布法が採用されている。この方法は赤色調を呈する胃粘膜に対照的な青色系の色素を撒布して、胃小区溝など微細な凹面に色素液が留まることを利用して、粘膜の凹凸面を強調して明瞭化する方法である。青色系の色素のなかでもインジゴカルミンは、不染性色素として、胃、十二指腸、小腸および大腸などの広範囲の消化管を対象としたコントラスト法に広く用いられている色素である。 しかしながら、インジゴカルミンを主剤とする内視鏡検査専用の薬剤は市販されておらず、医療現場ではこれに代わるものとして、腎機能検査薬として市販されている日本薬局方インジゴカルミン注射液(例えば、「腎機能検査用薬インジゴカルミン静注20mg「第一三共」、第一三共株式会社)を希釈して適応外使用しているのが現状である。当該インジゴカルミン注射液は、注射用蒸留水1ml中に4mgのインジゴカルミンを溶解し、pH調節剤でpH3〜5に調整してなる0.4w/v%インジゴカルミン水溶液であって、ガラスアンプルに充填されている(非特許文献1参照)。このため、アンプル管をカットしたり、薬液を希釈する煩雑さに加えて、生じたガラス片による危険性の問題があり、従来よりインジゴカルミンを主剤とする内視鏡検査専用の薬剤の開発が求められている。 しかし、インジゴカルミンは酸化されやすく、特に水溶液の状態では空気中の酸素や光の影響をうけて速やかに退色することから(例えば、非特許文献2参照)、上記薬剤の開発には、かかるインジゴカルミン水溶液の安定性の問題を解決する必要がある。「腎機能検査用薬インジゴカルミン静注20mg「第一三共」添付文書(第一三共株式会社)第15改正日本薬局方 第一部医薬品各条「インジゴカルミン」 本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、保存安定性に優れたインジゴカルミンの液状製剤およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、インジゴカルミン水溶液の保存安定性を高める方法(安定化方法)を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、インジゴカルミン水溶液を、pH緩衝剤を用いてpH5〜9に調整することにより、より好ましくは上記pH緩衝剤としてリン酸・クエン酸塩緩衝液を用いてpH5〜9に調整し、これを気密性容器に充填密封することによって、インジゴカルミン水溶液の保存安定性を向上させることができることを見出し、しかもかかる状態であれば、インジゴカルミン水溶液を内視鏡検査における最低の使用濃度である0.05w/v%濃度でも安定した状態で長期保存することができることを確認した。 これらの知見から、本発明者らは、かかる技術を用いて調製されるインジコカルミンの液状製剤は、長期保存性に優れ、このためインジゴカルミン・コントラスト法に用いる内視鏡検査専用の薬剤として市場に流通可能であると考え、本件発明を完成するにいたった。 本発明は下記の実施態様を包含するものである:(I)液状インジゴカルミン製剤 (I-1)pH緩衝剤を用いてpH5〜9に調整されてなるインジゴカルミン水溶液が、気密性容器に充填密封されてなる液状インジゴカルミン製剤。 (I-2)上記pH緩衝剤がリン酸・クエン酸塩緩衝剤である、(I-1)に記載の液状インジゴカルミン製剤。 (I-3)インジゴカルミン水溶液中のインジゴカルミンの濃度が0.05〜0.4w/v%である、(I-1)または(I-2)に記載する液状インジゴカルミン製剤。 (I-4)インジゴカルミン水溶液中のpH緩衝剤の濃度が0.1〜1w/v%である、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する液状インジゴカルミン製剤。 (I-5)インジゴカルミン水溶液が、窒素気流下で気密性容器に充填密封されてなることを特徴とする(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する液状インジゴカルミン製剤。 (I-6)気密性容器に充填密封後、脱酸素剤とともに酸素バリア性容器に封入されてなる(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載する液状インジゴカルミン製剤。 (I-7)生体組織マーカーとして使用される、(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する液状インジゴカルミン製剤。 (II)液状インジゴカルミン製剤の製造方法(II-1)インジゴカルミン水溶液を、pH緩衝剤を用いてpH5〜9に調整し、気密性容器に充填密封する工程を有する、液状インジゴカルミン製剤の製造方法。 (II-2)上記pH緩衝剤がリン酸・クエン酸塩緩衝剤である、(II-1)に記載する方法。 (II-3)インジゴカルミン水溶液を、窒素気流下で気密性容器に充填密封することを特徴とする(II-1)または(II-2)に記載する方法。 (II-4)インジゴカルミン水溶液中のインジゴカルミンの濃度が0.05〜0.4w/v%である、(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載する方法。 (II-5)インジゴカルミン水溶液中のpH緩衝剤の濃度が0.1〜1w/v%である、(II-1)乃至(II-4)のいずれかに記載する方法。 (II-6)インジゴカルミン水溶液を気密性容器に充填密封後、脱酸素剤とともに酸素バリア性容器に封入する工程を有する、(II-1)乃至(II-5)のいずれかに記載する方法。 (II-7)保存安定性を有する液状インジゴカルミン製剤を製造する方法である、(II-1)乃至(II-6)のいずれかに記載する方法。 (III)インジゴカルミン水溶液の安定化方法(III-1)インジゴカルミン水溶液を、pH緩衝剤を用いてpH5〜9に調整し、気密性容器に充填密封する工程を有する、インジゴカルミン水溶液の安定化方法。 (III-2)上記pH緩衝剤がリン酸・クエン酸塩緩衝剤である、(III-1)に記載する方法。 (III-3)インジゴカルミン水溶液を、窒素気流下で気密性容器に充填密封することを特徴とする(III-1)または(III-2)に記載する方法。 (III-4)インジゴカルミン水溶液中のインジゴカルミンの濃度が0.05〜0.4w/v%である、(III-1)乃至(III-3)のいずれかに記載する方法。 (III-5)インジゴカルミン水溶液中のpH緩衝剤の濃度が0.1〜1w/v%である、(III-1)乃至(III-4)のいずれかに記載する方法。 (III-6)インジゴカルミン水溶液を気密性容器に充填密封後、脱酸素剤とともに酸素バリア性容器に封入する工程を有する、(III-1)乃至(III-5)のいずれかに記載する方法。 (III-7)(III-1)乃至(III-6)のいずれかに記載する方法で安定化された、インジゴカルミン水溶液が気密性容器に充填密封されてなる液状インジゴカルミン製剤。 本発明の方法によれば、酸素等によって退色しやすいインジゴカルミン水溶液の保存安定性を向上させることができる。より詳細には、本発明の方法によればインジゴカルミン水溶液の保存安定性を向上させることができるため、pH変動やインジゴカルミンの含量の低下を有意に抑制した状態でインジコカルミン水溶液を安定に保存することができる。 かかる本発明の方法を用いて調製された本発明の液状インジゴカルミン製剤は、インジゴカルミン水溶液の保存安定性が向上されてなるため、インジゴカルミン・コントラスト法に用いる内視鏡検査専用の薬剤として提供することが可能である。pH緩衝剤として(1)リン酸水素二ナトリウム・クエン酸塩緩衝剤を用いた場合と、(2)クエン酸ナトリウム・リン酸二水素ナトリウム塩緩衝剤を用いた場合とで、25℃、60%RHの条件下に2週間放置した前後でのインジゴカルミン含量の変動を調べた結果を示す(窒素置換なし)。なお、インジゴカルミン含量の変動は、放置前の含量を100%とした場合の残存率(%)として示す。(1)液状インジゴカルミン製剤およびその製造方法 本発明の液状製剤は、pH緩衝剤を用いてpH5〜9に調整されてなるインジゴカルミン水溶液であって、当該水溶液が気密性容器に充填密封されてなることを特徴とする。 インジゴカルミンは、インジゴをスルホン化したdisodium indigotin-disulfonateである。インジゴカルミンには、シス型とトランス型があるが、好ましくはトランス型である。 本発明においてpH緩衝剤としては、pH5〜9の範囲に緩衝能を有し、インジゴカルミン水溶液のpHが上記範囲になるように調整することができるものを挙げることができる。好ましくはリン酸・クエン酸塩緩衝剤である。 ここでリン酸・クエン酸塩緩衝剤としては、(1)リン酸水素二ナトリウムを緩衝剤とし、クエン酸をpH調整剤とする緩衝液、および(2)クエン酸三ナトリウムを緩衝剤とし、リン酸二水素ナトリウムをpH調整剤とする緩衝液を挙げることができる。なお、これらのリン酸水素二ナトリウム、クエン酸、クエン酸三ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムは、いずれも水和物の形態を有していてもよく、かかる水和物としては、それぞれリン酸水素二ナトリウム十二水和物、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物およびリン酸二水素ナトリウム二水和物を挙げることができる。好ましくは(1)リン酸水素二ナトリウム十二水和物を緩衝剤とし、クエン酸一水和物をpH調整剤とする緩衝液である。 かかるリン酸・クエン酸塩緩衝剤において、緩衝剤の濃度としては、通常0.1〜1w/v%、好ましくは0.3〜0.7w/v%、より好ましくは0.4〜0.6w/v%を挙げることができる。 本発明で用いるインジゴカルミン水溶液は、上記インジゴカルミンを、pH緩衝剤、好ましくは上記リン酸・クエン酸塩緩衝剤の水溶液に溶解し、pH5〜9に調整することによって調製することができる。より具体的には、水、好ましくは注射用水などの滅菌水に、緩衝剤およびインジゴカルミンを溶解し、次いでこれをpH調整剤の水溶液(pH調整剤を滅菌水に溶解したもの)を用いてpH5〜9に調整することによって調製することができる。pHは5〜9の範囲であれば特に制限されないが、好ましくはpH6〜9であり、より好ましくはpH7〜9、特に好ましくはpH7〜8である。かかるpHの調整には、必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液を用いることもできる。 斯くして調製されるインジゴカルミン水溶液は、必要に応じて無菌または滅菌処理を施してもよい。無菌処理としては、孔径0.2μmのメンブランフィルターまたはカートリッジフィルターで濾過する方法を例示することができる。滅菌処理としては、γ線照射処理やオートクレーブ処理(高圧蒸気滅菌処理)やプレート殺菌処理などを例示することができる。 これらの操作は、制限はされないものの、酸素の影響をできるだけ避けてインジゴカルミンの劣化(分解および退色)を予防するためには、窒素気流下で行うことが好ましい。 斯くして得られるインジゴカルミン水溶液は、次いで気密性容器に充填され密封されて液状インジゴカルミン製剤として調製される。ここで気密性容器としては、容器内への空気侵入を遮断する性質および構造を有するものであればよく、例えば素材としてガラス製、アルミ製、ポリプロピレン製(PP)、ポリエチレン製(PE)、エチレン−ビニルアルコール共重合体製(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート製(PET)、ポリエチレンナフタレート製(PEN)、ポリアクリロニトリル製(PAN)からなるものを挙げることができる。また、容器の形状も気密性が保たれるものであれば特に制限されず、例えば気密性のキャップのついたボトル、バイアル、およびシリンジ、ならびにアンプルなどが挙げられる。 なお、これらの容器は滅菌処理されていることが好ましく、また光の影響を避けるために遮光処理が施されていても良い。かかる容器への充填は、上記と同様に、酸素の影響を避けるために窒素気流下で行うことが好ましい。気密性容器への充填後、キャップをして密封することによって液状インジゴカルミン製剤が調製できる。 このようにして調製される容器入り液状製剤は、さらに酸素の影響を避けるために、酸素バリア性容器に脱酸素剤とともに装入し封緘されてもよく、こうすることで酸素および光の影響をより厳重に遮断することができ、より保存安定性に優れ、インジゴカルミンの劣化(分解よび退色)が防止された液状インジゴカルミン製剤を調製することができる。なお、酸素バリア性容器としては、酸素透過性が低い密封容器であればよく、例えばアルミ箔製のバック、アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム製のバック、アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム/ポリエチレンフィルムラミネートが施されたフィルムからなるバックなどの、いわゆるアルミニウム袋;ならびにシリカ蒸着ポリエステル製のバック、エチレンビニルアルコール製のバック、バリアナイロン製のバック、およびポリ塩化ビニリデン製のバックなどを例示することができる。 上記本発明の液状インジゴカルミン製剤は、生体組織マーカーとして、特に内視鏡検査用のマーカーとして好適に使用することができる。具体的には、インジゴカルミン・コントラスト法において生体組織マーカーとして使用することができる。例えば、本発明の液状インジゴカルミン製剤を、生体組織マーカーとして、内視鏡直下に消化管壁に注射し、点状の目印を入れることにより、治療範囲の決定、または治療後の部位の追跡が可能となる。また、本発明の液状インジゴカルミン製剤を、生体組織マーカーとして、注射針を用いて組織に注入し、染色を行う。斯くして、病巣が確実に染色され、その後の内視鏡を用いた外科的切除手術で確実に病巣などの病理組織を採取することができる。 なお、生体組織マーカー、特に内視鏡検査用のマーカーとして使用されるインジゴカルミン水溶液のインジゴカルミン濃度は、適用組織やその部位によって異なるが、通常0.05〜0.4w/v%である。好ましくは0.05〜0.3w/v%、より好ましくは0.1〜0.2w/v%である。 本発明の液状インジゴカルミン製剤は、インジゴカルミンを上記濃度で含むものであってもよいし、また上記濃度の1.5〜5倍程度、好ましくは1.5〜2.5倍程度の濃い濃度(例えば、0.3〜1w/v%程度)でインジゴカルミンを含むものであってもよい。後者の場合、使用に際しては、液状インジゴカルミン製剤中のインジゴカルミン濃度が上記濃度範囲になるように、例えば注射用蒸留水などを用いて適宜希釈調整して用いられる。 (2)インジゴカルミン水溶液の安定化方法 本発明の安定化方法は、インジゴカルミン水溶液を、pH緩衝剤を用いてpH5〜9に調整し、これを気密性容器に充填密封することによって実施することができる。 ここでpH緩衝剤の種類およびその使用量は上記「(1)液状インジゴカルミン製剤およびその製造方法」の欄に記載の通りであり、かかる記載を援用することができるが、好ましくはリン酸・クエン酸塩緩衝剤である。その濃度としては、通常0.1〜1w/v%、好ましくは0.3〜0.7w/v%、より好ましくは0.4〜0.6w/v%を挙げることができる。pH5〜9への調整は、水、好ましくは注射用水などの滅菌水に、緩衝剤およびインジゴカルミンを溶解し、次いでこれをpH調整剤の水溶液を用いて調整することができる。pHとして好ましくはpH6〜9であり、より好ましくはpH7〜9、特に好ましくはpH7〜8である。 斯くして調製されるインジゴカルミン水溶液は、さらに気密性容器に充填密封することが好ましい。ここで使用される気密性容器の種類および当該容器への充填密封の方法も上記「(1)液状インジゴカルミン製剤およびその製造方法」の欄に記載の通りであり、かかる記載を援用することができる。 気密性容器への充填は、酸素の影響を避けるために窒素気流下で行うことが好ましい。 このようにして調製される容器入り液状製剤は、さらに酸素の影響を避けるために、酸素バリア性容器に脱酸素剤とともに装入し封緘されてもよい。こうすることで酸素および光の影響をより厳重に遮断することができ、インジゴカルミン水溶液の劣化(分解よび退色)が防止されて、より保存安定性に優れたインジゴカルミン水溶液、液状インジゴカルミン製剤を得ることができる。 以下、本発明の内容を以下の実験例を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実験例に何ら制限されるものではない。 実験例1 pH緩衝剤として表1に記載する2種類のリン酸・クエン酸塩緩衝剤を用いて、各種pH値を有するインジゴカルミン水溶液(最終濃度0.2w/v%)を含有する液状製剤を調製した。なお、各液状製剤は、窒素気流の非存在下で調製したもの(窒素置換なし)と、全ての工程を窒素気流下で行って調製したもの(窒素置換あり)の2種類作成した。これらの各液状製剤を25℃、60%RHの条件下に2週間放置して、放置前後でのpH変動ならびにインジゴカルミンの含量の変動を調べた。なお、インジゴカルミン水溶液中のインジゴカルミン含量は、後述する方法に従って測定した。 また、比較対照として、インジゴカルミンの最終濃度が0.2w/v%となるように注射用水に溶解した水溶液(pH未調整)についても、同様に2種類の液状製剤(窒素置換なし、窒素置換あり)を作成して、同様に25℃、60%RHの条件下に2週間放置して、放置前後でのpH変動ならびにインジゴカルミンの含量の変動を調べた。 <液状製剤の調製方法>(a)注射用水に、緩衝剤の最終濃度が0.5w/v%となるように、またインジゴカルミンの最終濃度が0.2w/v%となるように、緩衝剤およびインジゴカルミンを入れて溶解する。(b)pH調整剤を注射用水に溶解して調製した水溶液を用いて、上記溶液のpHを調整する。また、pHの調整には、必要に応じて注射用水に溶解して調製した水酸化ナトリウム水溶液を使用する。なお、pH緩衝剤として(1)リン酸水素二ナトリウム・クエン酸塩緩衝剤を使用したときはインジゴカルミン水溶液のpHを5〜9の範囲に、また(2)クエン酸ナトリウム・リン酸二水素ナトリウム塩緩衝剤を使用したときはインジゴカルミン水溶液のpHを6〜8の範囲に調整した。(c) 注射用水を用いて全量を調整し、これを孔径0.22μmのセルロース製カートリッジフィルターを用いて無菌濾過する。(d)上記で調製した無菌溶液を容器に充填し、キャップを装栓して気密性を担保する。 <インジゴカルミン含量の測定方法> インジゴカルミン水溶液1.5mL(インジゴカルミン3mgに対応する量)を正確に量り、酢酸アンモニウム溶液(酢酸アンモニウム1gを水に溶かし650mLに調整した水溶液)を加えて正確に200mLとし、試料溶液とする。紫外可視吸光度測定法により試験を行い、波長610nmにおける吸光度を測定する。 pH変動およびインジゴカルミン含量の変動を調べた結果を表2(窒素置換なし)および表3(窒素置換あり)に示す。なお、インジゴカルミン含量の変動は、放置前の含量を100%とした場合の残存率(%)として示す。 表2の結果をグラフ化したものを図1に示す。 これらの結果からわかるように、pH緩衝剤を用いてインジゴカルミン水溶液をpH5〜9の範囲に調整することによって、インジゴカルミンの含量の変動を小さくすることができること、すなわちインジゴカルミン水溶液の安定性が高くなることが判明した。また上記結果から、インジゴカルミン水溶液の安定性という点から、好ましいpH範囲はpH6〜9、より好ましくはpH7〜9であることが判明した。 またインジゴカルミン水溶液および液状製剤を、窒素置換条件で調製することによって、より一層インジゴカルミン水溶液の安定性を高めることができることが確認された。 実験例2 表4に記載する4種類のpH緩衝剤を用いて、実験例1と同様にして各種のインジゴカルミン水溶液(pH6−7)を含有する液状製剤を調製した(窒素置換なし)。次いでこれらの各液状製剤を、実験例1と同様に、25℃、60%RHの条件下に2週間放置して、放置前後でのpH変動ならびにインジゴカルミンの含量の変動を調べた。 また、比較対照として、実験例1と同様に、インジゴカルミンの最終濃度が0.2w/v%となるようにインジゴカルミン水溶液を調製して(窒素置換なし)、同様に25℃、60%RHの条件下に2週間放置して、放置前後でのpH変動ならびにインジゴカルミンの含量の変動を調べた。 pH変動およびインジゴカルミン含量の変動を調べた結果を表5に示す。なお、インジゴカルミン含量の変動は、放置前の含量を100%とした場合の残存率(%)として示す。 この結果からわかるように、pH緩衝剤として、(1)リン酸水素二ナトリウム・クエン酸塩緩衝剤、(2)クエン酸ナトリウム・リン酸二水素ナトリウム塩緩衝剤、(3)クエン酸塩緩衝剤、および(4)リン酸塩緩衝剤を用いて、インジゴカルミン水溶液のpHを6〜7の範囲に調整することにより、pH未調整のインジゴカルミン水溶液に比して、インジゴカルミン含量の変動が少なく、インジゴカルミン水溶液の安定性が高くなることが判明した。特に(1)リン酸水素二ナトリウム・クエン酸塩緩衝剤を用いてpH6〜7、好ましくはpH6.5〜7に調整するか、または(2)クエン酸ナトリウム・リン酸二水素ナトリウム塩緩衝液を用いてpH7およびそのpH前後に調整した場合にインジゴカルミン含量の変動が少なく、インジゴカルミン水溶液の安定性が高くなることが判明した。 実験例3 pH緩衝剤として、(5)リン酸塩緩衝剤(表6参照)、ならびに実験例2で最も効果の高かった(1)リン酸水素二ナトリウム・クエン酸塩緩衝剤を用いて、実験例1と同様にして、インジゴカルミンを含有する液状製剤を調製した。 また、比較対照例として、上記pH緩衝剤を用いずに、1w/v%のインジゴカルミン試液(武藤化学(株)製)を注射用水で5倍に希釈した0.2w/v%のインジゴカルミン水溶液(pH4.01)を用いて、実験例1と同様にして、インジゴカルミンを含有する液状製剤を調製した。なお、各液状製剤は、実験例1と同様に窒素気流の非存在下で調製したもの(窒素置換なし)と、全ての工程を窒素気流下で行って調製したもの(窒素置換あり)の2種類作成した。 これらの各液状製剤を、25℃、60%RHの条件下に2週間放置して、実験例1と同様にして、放置前後でのpH変化ならびにインジゴカルミンの含量変化を調べた。 pH変動およびインジゴカルミン含量の変動を調べた結果を表7(窒素置換なし)および表8(窒素置換あり)に示す。 この結果からわかるように、pH緩衝剤として、(5)リン酸塩緩衝剤を用いてインジゴカルミン水溶液のpHをpH6〜7の範囲に調整することによっても、pH未調整のインジゴカルミン水溶液に比して、インジゴカルミン含量の変動が少なく、インジゴカルミン水溶液の安定性が高くなることが判明した。 以上、実験例1〜3の結果から、pH緩衝剤として、リン酸水素二ナトリウム十二水和物を緩衝剤とし、クエン酸一水和物をpH調整剤とする(1)リン酸水素二ナトリウム・クエン酸塩緩衝液、およびクエン酸三ナトリウム二水和物を緩衝剤とし、リン酸二水素ナトリウム二水和物をpH調整剤とする(2)クエン酸ナトリウム・リン酸二水素ナトリウム塩緩衝液、なかでも好ましくは(1)リン酸水素二ナトリウム・クエン酸塩緩衝液を用いてインジゴカルミン水溶液をpH5〜9に調整した液状製剤は、窒素置換の有無にかかわらずpHの変動が少なく、また保存によるインジゴカルミンの含量低下が少なく、安定性に優れていることが判明した。 実験例4 pH緩衝剤として、実験例2で最も効果の高かった(1)リン酸水素二ナトリウム・クエン酸塩緩衝剤(0.5w/v%、pH7.0)を用いて、実験例1と同様にして、インジゴカルミンを0.05w/v%、0.1 w/v%、0.2 w/v%および0.4 w/v%の濃度で含有する液状製剤を調製した。なお、各液状製剤は、実験例1と同様に、窒素気流の非存在下で調製したもの(窒素置換なし)と、全ての工程を窒素気流下で行って調製したもの(窒素置換あり)の2種類作成した。 これらの各液状製剤を、25℃、60%RHの条件下に2週間放置して、実験例1と同様にして、放置前後でのpH変化ならびにインジゴカルミンの含量変化を調べた。 pH変動およびインジゴカルミン含量の変動を調べた結果を表9(窒素置換なし)および表10(窒素置換あり)に示す。 この結果からわかるように、リン酸・クエン酸塩緩衝剤を用いることにより、0.05〜0.4w/v%もの低濃度のインジゴカルミン水溶液を、pH変動やインジゴカルミンの含量の低下を有意に抑制した状態で、安定に保存することができることが判明した。 実験例5 pH緩衝剤として、実験例2で最も効果の高かった(1)リン酸水素二ナトリウム・クエン酸塩緩衝剤(pH7.0)を、濃度0.1w/v%、0.25 w/v%、0.5 w/v%および1.0 w/v%で含む、インジゴカルミン(0.2w/v%)含有液状製剤を調製した。なお、各液状製剤は、実験例1と同様に、窒素気流の非存在下で調製したもの(窒素置換なし)と、全ての工程を窒素気流下で行って調製したもの(窒素置換あり)の2種類作成した。 これらの各液状製剤を、25℃、60%RHの条件下に2週間放置して、実験例1と同様にして、放置前後でのpH変化ならびにインジゴカルミンの含量変化を調べた。 pH変動およびインジゴカルミン含量の変動を調べた結果を表11(窒素置換なし)および表12(窒素置換あり)に示す。 この結果からわかるように、リン酸・クエン酸塩緩衝剤を0.1〜1w/v%濃度で用いることにより、pH変動やインジゴカルミンの含量の低下を有意に抑制した状態で、インジコカルミン水溶液を安定に保存することができることが判明した。 本発明の液状インジゴカルミン製剤は、インジゴカルミン水溶液の保存安定性が向上されてなるため、インジゴカルミン・コントラスト法に用いる内視鏡検査専用の薬剤として有用である。 リン酸・クエン酸塩緩衝剤として、リン酸水素二ナトリウム・クエン酸塩緩衝剤を用いてpH6〜9に調整されてなるか、またはリン酸ナトリウム・クエン酸二水素ナトリウム塩緩衝剤を用いてpH7〜9に調整されてなるインジゴカルミン水溶液が、気密性容器に充填密封されてなる液状インジゴカルミン製剤。液状インジゴカルミン製剤中のインジゴカルミンの濃度が0.05〜0.4w/v%である、請求項1に記載の液状インジゴカルミン製剤。液状インジゴカルミン製剤中のリン酸・クエン酸塩緩衝剤の濃度が0.1〜1w/v%である、請求項1または2に記載する液状インジゴカルミン製剤。インジゴカルミン水溶液が、窒素気流下で気密性容器に充填密封されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載する液状インジゴカルミン製剤。気密性容器に充填密封後、脱酸素剤とともに酸素バリア性容器に封入されてなる請求項1乃至4のいずれかに記載する液状インジゴカルミン製剤。生体組織マーカーである、請求項1乃至5のいずれかに記載する液状インジゴカルミン製剤。インジゴカルミン水溶液を、リン酸・クエン酸塩緩衝剤として、リン酸水素二ナトリウム・クエン酸塩緩衝剤を用いてpH6〜9に調整するか、またはリン酸ナトリウム・クエン酸二水素ナトリウム塩緩衝剤を用いてpH7〜9に調整し、気密性容器に充填密封する工程を有する、液状インジゴカルミン製剤の製造方法。インジゴカルミン水溶液を、窒素気流下で気密性容器に充填密封することを特徴とする請求項7に記載する方法。インジゴカルミン水溶液を、リン酸・クエン酸塩緩衝剤として、リン酸水素二ナトリウム・クエン酸塩緩衝剤を用いてpH6〜9に調整するか、またはリン酸ナトリウム・クエン酸二水素ナトリウム塩緩衝剤を用いてpH7〜9に調整し、気密性容器に充填密封する工程を有する、インジゴカルミン水溶液の安定化方法。インジゴカルミン水溶液を、窒素気流下で気密性容器に充填密封することを特徴とする請求項9に記載する方法。インジゴカルミン水溶液を気密性容器に充填密封後、脱酸素剤とともに酸素バリア性容器に封入する工程を有する、請求項9または10に記載する方法。


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