タイトル: | 特許公報(B2)_カンプトテシン誘導体の製造方法 |
出願番号: | 2010514543 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07D 491/22,C07B 61/00 |
豊田 麻子 永井 葉月 ワンヨイケ ジョージ ナガ JP 5376532 特許公報(B2) 20131004 2010514543 20090522 カンプトテシン誘導体の製造方法 日本マイクロバイオファーマ株式会社 311013177 四川協力制葯有限公司 508160439 特許業務法人小田島特許事務所 110000741 豊田 麻子 永井 葉月 ワンヨイケ ジョージ ナガ JP 2008140942 20080529 20131225 C07D 491/22 20060101AFI20131205BHJP C07B 61/00 20060101ALN20131205BHJP JPC07D491/22C07B61/00 300 C07D 491/22 C07B 61/00 CAplus/REGISTRY(STN) 米国特許出願公開第2007/0149783(US,A1) Tsutomu Sugasawa et al.,Chemical & Pharmaceutical Bulletin,1974年,Vol.22, No.4,p.771-781 Jeffery L., Wood et al.,Journal of Organic Chemistry,1995年,Vol.60, No.17,p.5739-5740 5 JP2009059825 20090522 WO2009145282 20091203 12 20120307 大野 晃 本発明は、カンプトテシンまたはカンプトテシン誘導体の選択的水素化による対応する1,2,6,7−テトラヒドロ化合物の製造方法に関する。該1,2,6,7−テトラヒドロ化合物は、例えば、10−ヒドロキシ−20−(S)−カンプトテシンの合成前駆体として利用できる。 10−ヒドロキシ−20−(S)−カンプトテシンは、それ自体が薬理活性を有することが知られており(例えば、非特許文献1:参照)、また、イリノテカン合成における重要中間体である7−エチル−10−ヒドロキシ−20−(S)−カンプトテシンの合成原料となり得る。非特許文献1では、10−ヒドロキシ−20−(S)−カンプトテシンがカンプトテシン−1−オキシドの光反応を介する二段階の手順で製造されている。また、1,2,6,7−テトラヒドロ−20−(S)−カンプトテシンを四酢酸鉛、CAN(硝酸セリウムアンモニウム)、フレミー塩(ニトロソ二スルホン酸カリウム(KSO3)2NO)、クロム酸またはその無水物、ニクロム酸塩、過マンガン酸カリウム、塩化第二鉄およびヨードソベンゼンジアセテートからなる群から選択される酸化剤を用いて酸化することによる10−ヒドロキシ−20−(S)−カンプトテシンの製造方法も提案されている(特許文献1、特許文献2)。特許文献1では、出発原料である1,2,6,7−テトラヒドロ−20−(S)−カンプトテシンが20−(S)−カンプトテシンを酢酸中またはジオキサン−酢酸中において、白金触媒の存在下に常圧、常温で水素添加することにより得られると記載されている。 一方、特許文献2では、特許文献1記載の方法に言及し、「しかしながら、このような方法は、水素化された生成物が反応性であるという事実から、充分に満足できるものではない。それゆえに、水素化は所望のテトラヒドロカンプトテシン生成物の調製を超えて継続し、過剰還元生成物を形成する。さらに、大気圧以上の水素圧の使用は、前記の公開公報には開示されていないが、より迅速に反応物を得たり、および/またはカンプトテシン出発物質の変換率を向上させるという観点からは望ましい反面、このような圧力は、過剰還元生成物の形成がさらに増加するので、この公開公報のような方法では、必ずしも効果的に用いられないことが見出されている。」と指摘している。特許文献2では、このような特許文献1に記載された水素化方法の欠点を改善すべく、当該水素化に際し、貴金属触媒を水素化触媒毒から選択されるジメチルスルホキシドなどの水素化触媒調整剤の存在下で使用するか、例えば、5%白金/スルフイド化炭素のような特殊な担体と貴金属触媒を組合せて使用することが提案されている。 同様に、7−エチル−20−(S)−カンプトテシンを水素化触媒毒から選択されるジメチルスルホキシドなどの水素化触媒調整剤の存在下で、水素および貴金属触媒と接触させることにより7−エチル−1,2,6,7−テトラヒドロ−20−(S)−カンプトテシンが得られることも公知である(特許文献3参照)。 なお、キノリン骨格を有するカンプトテシンの選択的水素化反応のモデル反応ともいえる、キノリンの水素化について多種多様な不均質触媒を用いる反応について検討された結果が報告されている(非特許文献2)。この文献では、特許文献2及び3に記載されたカンプトテシン類の選択的水素化と整合するように、キノリンの複素環(ピリジン環)のみを選択的に水素化するためには、貴金属触媒及びニッケル触媒の使用に際し、硫黄化合物(例えば、CS2、H2S)またはCOの併用が必要であることが示唆されている。特開昭59−5188号公報特許第2848958号公報の特に、第23欄1−28行特表2007−501275号公報【0007】【非特許文献1】Sawada et al.,Chem.Pharm.Bull.39(12)3183−3188(1991)【非特許文献2】Shaw et al.,J.Heterocyclic Chem.,24,1477−1483(1987)【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】 従来のカンプトテシンの水素化は、いずれの場合も高価な白金などの貴金属触媒を用いる上に、例えば、特許文献1に記載された方法では、常圧、常温で水素化反応を実施できることが開示されているが、所望のテトラヒドロカンプトテシンは生成後も更に還元が継続し、過剰還元生成物を形成してしまうという問題があった。 そこでその改良法として提案された特許文献2及び3に記載の方法では、ジメチルスルホキシドなどの水素化触媒調整剤を共存させること等により過剰還元生成物の形成を抑えるか、あるいは回避しながら水素化反応を実施できるとしている。しかし、通常より非常に多量(基質に対して約50重量%)の貴金属触媒を用いなければならないという問題点があった。さらに、これらの還元反応を追試したところ、水素化触媒調整剤を共存させた場合においても撹拌効率、反応圧力や反応温度により過剰反応が起こり易い等の反応制御が難しいということを今回確認した。 したがって、商業的規模で用いることができる安価でかつ反応制御が容易な1,2,6,7−テトラヒドロ−20−(S)−カンプトテシン誘導体の合成法が必要とされていた。 上記課題を解決すべく、本発明者等は鋭意研究を進めてきたところ、意外にも、ニッケル触媒の存在下でカンプトテシンまたはカンプトテシン誘導体を水素と接触させた場合には、上記のような硫黄化合物等を共存させることなく、1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンまたは1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシン誘導体を効率よく製造することができることを見出した。 したがって、本発明は、このような知見に基づくものであり、下記式(I)で表される化合物、具体的には、カンプトテシンまたはカンプトテシン誘導体の還元による下記式(II)で表される対応する1,2,6,7−テトラヒドロ化合物、具体的には、1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンまたは1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシン誘導体の製造方法であって、非反応性溶媒中、水素化触媒としてのニッケル触媒の存在下において式(I)で表される化合物と水素を接触させる工程を含んでなる製造方法を提供する。 式中、Rは水素原子及びC1−C6アルキル基からなる群より選ばれる原子または原子団を表す。 本願発明によれば、貴金属触媒より著しく安価なニッケル触媒を使用して、しかも、硫黄化合物等の水素化触媒調整剤を併用する必要のない単純な反応系で、効率よく目的の上記式(II)で表される1,2,6,7−テトラヒドロ化合物を製造することができる。 式(I)で表される出発原料カンプトテシンは、天然物由来の抽出物、半合成または全合成品であることができ、また、その7位‐アルキル誘導体は、カンプトテシンからそれ自体公知の方法で製造したものを使用できる。アルキル誘導体における、C1−C6アルキルは、直鎖または分岐したアルキルであることができ、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、等を包含する。 ニッケル触媒はニッケル金属の金属粉、他の金属との合金、酸化物、水酸化物、無機塩、有機塩、ラネー触媒等及びこれらの担体担持型のいずれも、本発明の目的に沿い、上記水素化反応を効率よく触媒できる物であれば、本発明で使用できる。限定されるものではないが、担持型触媒の担体には珪藻土、シリカ、アルミナ(Al2O3)複合酸化物、ゼオライト等が挙げられる。担持型触媒は、金属の全使用量を減少させることができ、また、活性化もしくは使用安定化の観点から好ましい。 このような触媒の例として、当該技術分野で公知のニッケル触媒、例えば、金属ニッケル、還元ニッケル、安定化ニッケル、ニッケル‐珪藻土、ラネー型ニッケル、修飾ラネー型ニッケル、ギ酸ニッケル、漆原ニッケル、ホウ化ニッケル、酸化ニッケル、ニッケル錯体、ニッケル‐銅‐珪藻土、ニッケル‐ジルコニア‐珪藻土、ニッケル‐アルミナ、ニッケル‐シリカ‐アルミナ、ニッケル‐コバルト、ニッケル‐銅‐コバルト、ニッケル‐鉄、ニッケル‐鉄‐コバルト、ニッケル‐鉄‐リン、酸化ニッケル‐シリカ、酸化ニッケル‐酸化マグネシウム‐アルミナ及び酸化ニッケル‐三酸化モリブデン‐アルミナ等が挙げられる。 これらのうち、珪藻土などを担体とした安定化ニッケル触媒が当該反応に適当な触媒活性を示し好ましい。 安定化ニッケル触媒とは、酸化ニッケルを一度完全に還元した後、還元ニッケルの表面を酸化し、その酸化表面皮膜によって還元ニッケルを保護したものであり、一般の還元ニッケル触媒と異なり空気中に取り出しても酸化や発熱の心配が少なく、しかもそのまま水素化反応に使用しても十分な水素化活性を発揮するように調製されたものをいう。また、ニッケル触媒にとって致命的な触媒毒となる有機硫黄化合物に対する耐性を高めるために少量の助触媒を共存させたもの(耐硫黄性安定化ニッケル)も包含される。 このような安定化ニッケル触媒の例としては、珪藻土上の触媒中にニッケルをニッケルまたは酸化ニッケルとして5〜80重量%含むか、それに加え助触媒として、銅、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、アルミニウム、モリブデン、タングステンまたはその酸化物から適宜選択される単一または複数種の物質を0.1〜10重量%含むものが好ましい。とりわけ、触媒中にニッケルをニッケルまたはニッケル酸化物として40〜60重量%を含むか、それに加え助触媒として、銅、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、アルミニウム、モリブデン、タングステンまたはその酸化物から適宜選択される単一または複数種の物質を1〜5重量%含むものが好ましい。具体的には、市販されている、安定化ニッケル触媒N111、N112、N113、N113B、N103、N103B、N103K(日揮触媒化成株式会社)、SN−110、SN−150、SN−250、SN−300、SN−750(堺化学株式会社)、Ni−5123P、Ni−5136P、Ni−5256P、Ni−0104T、Ni−3266、Ni−3288E、Ni−3737T、Ni−5256E(エヌ・イーケムキャット株式会社)が好ましく、特に、安定化ニッケル触媒N113(ニッケル18%、酸化ニッケル(II)39%、酸化銅(II)2%、酸化クロム(III)2%を混合し珪藻土26%に担持させた触媒)(日揮触媒化成株式会社)、安定化ニッケル触媒SN−250(ニッケルまたは酸化ニッケル(II)55%を珪藻土に担持させた触媒)(堺化学株式会社)が好ましい。 かようなニッケル触媒の使用量は、本発明に従う目的の反応を触媒するように選択すればよい。例えば、安定化ニッケル触媒N113を水素化触媒として用いる場合、触媒の量は、基質であるカンプトテシンまたはカンプトテシン誘導体に対して、約5〜100重量%、特に10〜40重量%が好ましい。 本発明にいう、非反応性溶媒には、反応体及び触媒に対して直接反応せず、また、本発明の水素化反応に悪影響を及ぼさない溶媒であって、生成物を溶解できる溶媒であれば、いかなる溶媒も包含される。かような溶媒の2種以上を適当な比率で混合した混合溶媒も本発明にいう溶媒に包含される。限定されるものでないが、C1−C3の有機酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、またはC1−C2のアルコール、例えばメタノール、エタノール、またはジオキサン、またはこれらの混合物が好ましく、特にカンプトテシン、カンプトテシン誘導体の高い溶解性及び反応系に悪影響を及ぼさない点で酢酸が好ましい。 使用する溶媒量は基質であるカンプトテシンまたはカンプトテシン誘導体と触媒を良好に分散もしくは拡散することができる容量が適当であり、基質1容量当り約10〜50容量の溶媒が好ましく、例えば、酢酸の場合であれば、特に約10〜20倍使用するのが好ましい。 本発明に従う水素化反応は、適当な水素圧で実施することができるが、約0.5MPa以上の水素圧が好ましく、特に1〜3MPaが好ましい。 反応を実施する温度は使用溶媒、加圧下等の条件を考慮して適当な範囲で実施すればよいが、室温から200℃が好ましく、特に90〜140℃が好ましい。加熱することで室温において実施するより反応の進行を促進することができる。 反応を行う時間は、反応圧、温度等により最適条件が変動するので、限定できないが、一般に、0.5〜24時間が好ましく、特に、1〜10時間が好ましい。 反応溶媒、基質、ニッケル触媒を接触させる順番は、必要に応じて選択することができる。 出発物質を水素化すると、生成物が1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンの場合、B環およびC環によって占有される橋頭炭素原子に結合した水素原子の相対的に位置が異なる4種の立体異性体が生成し得、また、1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンの7‐位にC1−C6アルキルが結合している場合には、8種の立体異性体が生成し得るが、いずれも式(II)で表される化合物に包含される。このような立体異性体のいずれも、例えば、対応する10‐ヒドロキシ‐20−(S)−カンプトテシンの合成原料として使用しうる。 式(II)で表される1,2,6,7−テトラヒドロ化合物の反応混合物からの単離は、常法、例えば、特許文献1に記載の方法に従って実施できる。またニッケル触媒を除去するためのろ過を行い、該化合物を単離することなく、特許文献2に記載されているように、続いて次反応工程の1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンの10−ヒドロキシカンプトテシンへの変換反応に供すことも可能である。 以下、本発明を実施例により説明する。但し、本発明は、以下の態様に限定されるものではない。以下の実施例において、原料及び生成物の検出または定量は、次のHPLC分析条件下で行った。 カラム:カプセルパック C18 MGII(資生堂)(4.6mm I.D.×250mm,5μm) 移動相:A/B=1/1(A:酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.04)、B:5mMヘプタスルホン酸ナトリウムメタノール溶液) 流速:1.0mL/分 カラム温度:40℃ 検出:UV254nm実施例1:1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンの製造 350mL高圧オートクレーブ中でカンプトテシン6g(17.2mmol)を酢酸60mLに懸濁し、安定化ニッケル触媒(N113)2.4gを加え、水素で置換し2.0MPaで110℃にて撹拌しながら3時間加熱したところ原料が消失した。反応液を室温にした後、セライト3g上でろ過し酢酸30mLにて洗浄した。このろ液をヘプタン(80mLx1回、60mLx2回)で洗浄した後、クロロホルム60mLを加え抽出し、有機層を水30mL、飽和食塩水30mLで順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム2gで乾燥後ろ過濃縮した。得られた橙色オイルにクロロホルム10mLを加え35℃で加熱して均一溶液とし、ここへヘプタン10mLを添加したところ沈殿物が生成した。溶媒を減圧留去後、乾燥したところ橙色粉として1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンを5.8g(収率:96.8%)得た(ジアステレオ異性体比*は21:76であった。)。注)*: RRT0.62対RRT0.9の比を意味し、RRTに続く数値は、それぞれ、カンプトテシン(CPT)のリテンションタイムを1としたときの相対的なリテンションタイムを意味する。以下、同じ。1,2,6,7−テトラヒドロ−20−(S)−カンプトテシン(RRT0.62)1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):7.04(1H,t),6.99(1H,d),6.69(1H,t),6.61(1H,s),6.60(1H,d),5.57(1H,d),5.16(1H,d),4.89(1H,t),4.31(1H,d),4.21(1H,dd),4.08(1H,dd),3.63(1H,s),2.88(1H,dd),2.84(1H,m),2.45(1H,dd),1.79(2H,m),0.98(3H,t)1,2,6,7−テトラヒドロ−20−(S)−カンプトテシン(RRT0.90)1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):7.07(1H,t),7.03(1H,d),6.72(1H,t),6.64(1H,d),6.60(1H,s),5.59(1H,d),5.13(1H,d),4.89(1H,t),4.36(1H,d),4.19(1H,dd),4.13(1H,dd),3.65(1H,s),2.88(1H,dd),2.83(1H,m),2.45(1H,dd),1.77(2H,m),0.94(3H,t)9,10,11,12−テトラヒドロ−20−(S)−カンプトテシン(RRT1.24)1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):7.64(1H,s),7.43(1H,s),5.72(1H,d),5.27(1H,d),5.05(2H,s),3.64(1H,s),3.05(2H,t),2.90(2H,t),1.88(6H,m),1.01(3H,t)実施例2:1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンの製造 350mL高圧オートクレーブ中でカンプトテシン6g(17.2mmol)を酢酸60mLに懸濁し、安定化ニッケル触媒(N113)1.2gを加え、水素で置換し2.0MPaで110℃にて撹拌しながら6時間加熱したところ原料が消失した。反応液を室温にした後、セライト0.5g上でろ過し酢酸10mLにて洗浄した。本溶液のHPLC分析より、該実施例は、1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンを97%の収量で取得できることが確認された(ジアステレオ異性体比は23対74であった。)。実施例3‐14及び比較例1−12:1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンの製造 実施例2と同様な操作で反応温度、触媒量、反応圧等を変更したところ下表の結果が得られた。 比較例1〜8は既知法の追試実験例であり、比較例1のように水素化触媒としてPtO2を用い、ジメチルスルホキシドを水素化触媒調整剤として共存させる方法では、過剰還元は抑えられ目的の1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンが定量的に得られたが、比較例2の水素化触媒調整剤非共存下の方法では過剰還元により原料のカンプトテシンは消失したが目的物は1%しか得られなかった。 比較例3〜8では同様の方法で水素化触媒として10%Pt/C、5%Pt/Cまたは5%Pd/Cを用い水素化触媒調整剤共存下と非共存下で反応を行った。水素化触媒調整剤の共存下では比較例3のように原料のカンプトテシンが残存し反応が完結しない場合や比較例7のように原料は残存しているが、過剰還元も進行している場合があった。一方、水素化触媒調整剤非共存下の比較例4、比較例6,比較例8では、何れも過剰還元が進行して目的の1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンの収率が低下した。これらの結果から既知法では、反応制御が困難である場合があることが示唆された。 比較例9〜12は、他の触媒を用いる公知方法を参考に溶媒として酢酸を用いて実施した結果を示す。 実施例3〜14は本発明に従う方法であるニッケル触媒を用いた還元反応であり、基質に対しニッケル触媒量20〜40%、反応圧1〜2MPa、反応温度100〜120℃、反応時間2〜10時間で過剰還元はほぼ完全に回避されかつ1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンが収率よく生成した。N103;ニッケル18%、酸化ニッケル(II)39%、酸化銅(II)2%、酸化クロム(III)2%を混合し珪藻土26%に担持させた触媒(日揮化学株式会社)N113;ニッケル27%、酸化ニッケル(II)33%、を混合し珪藻土30%に担持させた触媒(日揮化学株式会社)SN250;ニッケルまたは酸化ニッケル(II)55%を珪藻土に担持させた触媒(堺化学工業株式会社)実施例15:7−エチル−1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンの製造 高圧オートクレーブ中で7−エチル−カンプトテシン0.5g(0.13mmol)を酢酸0.5mLに懸濁し、ニッケル触媒N113 20mgを加え、水素で置換し2.0MPaで110℃にて攪拌しながら6時間加熱したところ原料が消失した。反応液を室温にした後、PTFEフィルター(アドバンテック東洋株式会社DISMIC 13JP020AN)にてろ過し酢酸0.5mLにて洗浄した。本溶液はHPLC分析より7−エチル−1,2,6,7−テトラヒドロカンプトテシンを96%の収率で取得できることが確認された。7−エチル−1,2,6,7−テトラヒドロ−20−(S)−カンプトテシン1H−NMR(500MHz,DMSO−d6)δ(ppm):7.0−6.8(2H,m),6.6−6.5(2H,m),6.30(1H,s),5.21(1H,s),4.91(1H,m),4.06(1H,m),3.91(1H,m),3.17(1H,m),3.01(1H,m),1.90(3H,m),1.72(2H,m),1.02(3H,t),0.78(3H,t) 下記式(I)で表される化合物の還元による下記式(II)で表される対応する1,2,6,7−テトラヒドロ化合物の製造方法であって、非反応性溶媒中、水素化触媒としてのニッケル触媒の存在下において式(I)で表される化合物と水素を接触させる工程を含んでなる、上記製造方法。 式中、Rは水素原子及びC1−C6アルキル基からなる群より選ばれる原子または原子団を表す。 Rが水素原子である請求項1記載の製造方法。 ニッケル触媒が、金属ニッケル、還元ニッケル、安定化ニッケル、ニッケル‐珪藻土、ラネー型ニッケル、修飾ラネー型ニッケル、ギ酸ニッケル、漆原ニッケル、ホウ化ニッケル、酸化ニッケル、ニッケル錯体、ニッケル‐銅‐珪藻土、ニッケル‐ジルコニア‐珪藻土、ニッケル‐アルミナ、ニッケル‐シリカ‐アルミナ、ニッケル‐コバルト、ニッケル‐銅‐コバルト、ニッケル‐鉄、ニッケル‐鉄‐コバルト、ニッケル‐鉄‐リン、酸化ニッケル‐シリカ、酸化ニッケル‐酸化マグネシウム‐アルミナ及び酸化ニッケル‐三酸化モリブデン‐アルミナからなる群より選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。 ニッケル触媒がラネー型ニッケル、修飾ラネー型ニッケル、安定化ニッケルであることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。 ニッケル触媒が安定化ニッケルであることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。