タイトル: | 特許公報(B2)_アポトーシス誘導薬 |
出願番号: | 2010514368 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07K 14/46,A61K 38/00,A61P 43/00,G01N 33/53 |
世古 義規 藤村 務 村山 季美枝 JP 5578522 特許公報(B2) 20140718 2010514368 20090527 アポトーシス誘導薬 世古 義規 512137278 藤村 務 512137289 村山 季美枝 512137290 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 世古 義規 藤村 務 村山 季美枝 JP 2008137824 20080527 20140827 C07K 14/46 20060101AFI20140807BHJP A61K 38/00 20060101ALI20140807BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140807BHJP G01N 33/53 20060101ALI20140807BHJP JPC07K14/46A61K37/02A61P43/00 105G01N33/53 D C07K 14/00−14/825 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/ WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) PubMed 国際公開第2006/060823(WO,A2) Amino Acids,2007年,vol.33, no.2,pp.351-358 12 JP2009002344 20090527 WO2009144933 20091203 44 20120525 戸来 幸男 本発明は、アポトーシス、特に酸化ストレスに起因するアポトーシスを抑制するタンパクおよびこれを含む診断薬および医薬に関する。 哺乳類の細胞は、多くの遺伝子を発現することによって環境刺激(例えば、機械的負荷、代謝的変化、虚血および再灌流等)に迅速に応答、順応することが知られている。特に、種々の外部ストレス(例えば、虚血およびその後の再灌流、UV日焼け、放射線照射など)によって誘導される酸化ストレスは、炎症、アテローム性動脈硬化および老化等を促進させ、細胞傷害の発症において重要な役割を果たすことが知られている。 特に、心筋細胞は、虚血/再灌流に応答して成長因子、サイトカイン、細胞接着分子などをコードする種々の遺伝子を発現し、これらのストレスに順応するか、再灌流障害として知られるさらなる細胞傷害をもたらす。外部ストレスから非分裂性細胞である心筋細胞を保護するため、心筋細胞がアポトーシスを起こす閾値はかなり高くなっていると考えられる。例えば、心筋細胞におけるFasおよび浸潤リンパ球におけるFasLの発現が強く誘導される急性心筋炎のような状況においてさえ、アポトーシスを受け得る心筋細胞はごく一部である(非特許文献1)。しかし、唯一の例外が再灌流障害のケースである。虚血性組織の再灌流は、酸素フリーラジカルの大量生成、過剰な細胞内カルシウム流入、および好中球浸潤を引き起こし、結果として急性炎症が起こり、これには広範な細胞のアポトーシスを伴う。虚血再灌流誘導性アポトーシス性細胞死は、虚血のみによって誘導されるわけではなく、好中球枯渇によって防止することができなかった(非特許文献2)ことから、再灌流によって惹起され、好中球浸潤に先立ち且つそれと独立な複数の機序が、アポトーシス・シグナル伝達経路を媒介しているということが提唱されている(非特許文献3)。 一方、真核生物翻訳開始因子(eIF)5Aは、その名のとおり翻訳開始因子として同定された物質である。eIF5Aは、細胞質内において発現し、デオキシハイプシンシンターゼ(DHS)によりデオキシハイプシン化され(デオキシハイプシンeIF5A)、次いでデオキシハイプシンハイドロキシラーゼ(DOHH)によりハイプシン化され(ハイプシン化eIF5A)、このハイプシン化eIF5Aが細胞増殖作用を示すことが知られている(非特許文献4)。しかしながら、eIF5Aが細胞外に分泌されること、さらには分泌されたeIF5Aがアポトーシス誘導にどのような役割を果たしているかについては全く知られていない。J.Am.Coll.Cardiol.39,1399−1403(2002)J.Clin.Invest.94,1621−1628(1994)Am.J.Pathol.151,1257−1263(1997)Amino Acids 20,91−104(2001) 本発明の目的は、酸化ストレスによって誘導される種々の疾患の診断、予防および治療に有用な薬剤を提供することにある。 そこで本発明者は、酸化ストレスによって細胞傷害、すなわちアポトーシスが生じることが知られている虚血およびその後の再灌流のインビトロモデルとして、低酸素−再酸素化に供した培養細胞を採用した。この低酸素−再酸素条件の培養細胞から放出される何らかの液性因子がアポトーシスに関与すると考え、当該液性因子を解析した。その結果、従来細胞質内にのみ存在すると報告されていたeIF5Aが、低酸素−再酸素条件下で、すなわち酸化ストレス条件下で細胞外に分泌されていること、さらにこの分泌されたeIF5Aは、細胞質内に存在するeIF5Aとは等電点において明確に相違することから、新規なタンパク質であることを見出した。 そして、当該分泌型eIF5Aは、細胞が低酸素−再酸素化、すなわち酸化ストレスを受けた際に細胞から分泌され、かつアポトーシス誘導性リガンドとして作用し、酸化ストレスを受けた細胞のアポトーシスを誘導していること、さらにこれを測定すれば酸化ストレスが診断できることを見出した。 さらに、このアポトーシスは、分泌型eIF5Aを抑制する物質の代表例としての抗eIF5A中和抗体を作用させることにより有意に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、分泌型eIF5Aタンパク質を提供するものである。 また、本発明は、分泌型eIF5Aタンパク質を含有する医薬を提供するものである。 また、本発明は、液体または組織検体の分泌型eIF5Aタンパク質を測定することを特徴とする酸化ストレスの判定方法を提供するものである。 また、本発明は、分泌型eIF5Aタンパク質測定試薬を含有する酸化ストレス診断薬を提供するものである。 さらに、本発明は、分泌型eIF5Aタンパク質抑制剤を含有するアポトーシス抑制薬を提供するものである。 さらに、本発明は、分泌型eIF5Aタンパク質のアポトーシス誘導薬製造のための使用を提供するものである。 さらに、本発明は、分泌型eIF5Aタンパク質抑制剤のアポトーシス抑制薬製造のための使用を提供するものである。 さらに、本発明は、分泌型eIF5Aタンパク質を投与することを特徴とするアポトーシスの誘導方法を提供するものである。 さらに、本発明は、分泌型eIF5Aタンパク質抑制剤を投与することを特徴とするアポトーシスの抑制方法を提供するものである。 本発明の分泌型eIF5Aタンパク質は、哺乳類の細胞に酸化ストレスが負荷された際に細胞から分泌されてくる全く新しいタンパク質であるから、これを測定すれば、ヒトを含む哺乳類の酸化ストレス状態が判定、診断できる。すなわち、酸化ストレスによる細胞傷害が生じる状態またはすでに細胞傷害が生じている状態か否かの診断が可能となる。 また、分泌型eIF5Aタンパク質は、酸化ストレスに起因するアポトーシスのみならず、正常酸素濃度下においてもアポトーシスを誘導するので、癌、浸潤性疾患に代表される疾患の治療薬として有用である。 また分泌型eIF5Aタンパク質の抑制剤は、酸化ストレスに起因するアポトーシスを抑制するので、虚血−再灌流傷害、紫外線・放射線障害のみならず、酸化ストレスによって促進されるアテローム性動脈硬化、老化等の予防治療用の医薬として有用である。培養心筋細胞由来の、再酸素化条件PBS(RCP;上パネル)およびコントロール条件PBS(CCP;下パネル)のクロマトフォーカシング。黒色バーは、培養心筋細胞の各画分のERK活性化活性を示す。RCP(左パネル)およびCCP(右パネル)由来活性画分(画分49−52)の、銀染色二次元ゲル電気泳動を示す。RCP(左パネル)における矢印はタンパク質スポット(1,2)を示す。これらのうち1に相当するスポットはCCP(右パネル)では存在しない。2に相当するスポットはCCP(右パネル)ではごくわずかに存在する(2’)。未処理トランスフェクション細胞由来リコンビナントeIF5Aの細胞質内画分(cytosolic;左パネル)、およびRCP由来リコンビナントeIF5A(右パネル)のウェスタン分析を示す。抗FLAG mAbでブロットされている。培養心筋細胞に対するリコンビナントeIF5Aタンパク質(10μg/ml)のアポトーシス誘導を、TUNEL(茶色)および心筋ミオシン(青色)による二重免疫染色で示す。TUNEL染色によって決定された、リコンビナントeIF5A(RCP)、リコンビナント変異型eIF5A(K50A)、およびリコンビナント(サイトゾル)eIF5Aにより誘導されたアポトーシス性心筋細胞のパーセンテージの時間経過を示す。AIF(apoptosis−inducing factor)の細胞内での細胞質から核への移行に対するリコンビナントeIF5A(RCP)の影響についての代表的共焦点画像を示す。抗チトクロームc mAb(7H8.2C12;Lab Vision Corp.)を用いた、ミトコンドリアからのチトクロームc放出に対するリコンビナントeIF5A(RCP)の影響についてのウェスタンブロット分析を示す。抗カスパーゼ−3 ポリクローナル抗体(H−277;Santa Cruz Biotechnology)を用いた、カスパーゼ−3の活性化に対するリコンビナントeIF5A(RCP)の影響についてのウェスタンブロット分析を示す。annexin−V(上パネル、FITC標識)および心筋ミオシン(下パネル、TRITC標識)による二重免疫染色で同定された、心筋細胞のアポトーシス誘導を示す。リコンビナントeIF5A(RCP)によって誘導された核クロマチン異常凝縮の電子顕微鏡観察を示す。リコンビナントeIF5A(RCP)添加の1時間前に添加されたPARP−1インヒビター(3−アミノベンズアミド、2mM)またはカスパーゼインヒビター(Z−VAD.fmk、100μM)の、心筋細胞アポトーシス誘導に対する影響を、TUNEL(茶色)および心筋ミオシン(青色)による二重免疫染色で示す。:*P<0.001(n=4)。リコンビナントeIF5A(RCP)添加72時間後におけるTUNEL染色によって決定された、アポトーシスを起こした心筋細胞のパーセンテージを示す。データは、(mean±s.d.)で表されている。心筋細胞の再酸素化条件培地(RCM)誘導性アポトーシスに対するeIF5Aの免疫枯渇の影響を、RCM添加30時間後のTUNEL(茶色)および心筋ミオシン(青色)による二重免疫染色によって示す。心筋細胞の再酸素化条件培地(RCM)誘導性アポトーシスに対するeIF5Aの免疫枯渇の影響を、RCM添加30時間後のTUNELおよび心筋ミオシンの二重免疫染色により決定された、アポトーシス性心筋細胞のパーセンテージを示す。myc−タグおよびFLAG−タグ化リコンビナントeIF5Aの二次元電気泳動結果を示す図である。上段が細胞質内型eIF5A、下段が分泌型eIF5Aである。Aは非ハイプシン化、Bはハイプシン化である。抗eIF5A抗体(J−M)と抗心筋ミオシン(CMA19)による二重免疫染色で決定された、低酸素/再酸素化に応答した培養心筋細胞におけるeIF5A タンパク質の免疫蛍光局在を示す。抗eIF5A抗体(J−M)およびProtein A標識金コロイドを用いた免疫電顕による、低酸素/再酸素化に応答した培養心筋細胞におけるeIF5A タンパク質の細胞下局在を示す。偽処置ラットおよびインビボ心筋虚血/再灌流に供したラット由来心筋組織における、eIF5Aタンパク質の免疫蛍光を示す。リコンビナントeIF5A(re−eIF5A)の各種細胞に対するアポトーシス誘導能(TUNEL染色)を示す図である。リコンビナントeIF5A(re−eIF5A)のHela細胞に対するアポトーシス誘導能の経時変化を示す図である。DHSの阻害薬(GC7)のラット心筋虚血灌流障害に対する抑制効果を示す図である。右側に、心筋組織全断面積に対する梗塞巣の割合を示す。抗eIF5A中和モノクローナル抗体のラット心筋虚血再灌流障害に対する抑制効果を示す図である。右側に心筋組織全断面積に対する梗塞巣の割合を示す。心筋虚血再灌流障害における分泌型eIF5Aの血中レベルを示す図である。p値は対比t−テスト(n=5)で算出した。 本発明の分泌型eIF5Aタンパク質(以下、分泌型eIF5Aともいう)は、酸化ストレスを受けた細胞から、当該細胞外に分泌される新規なタンパク質である。従来、eIF5Aは、細胞質内で産生され、デオキシハイプシンシンターゼによりデオキシハイプシン化eIF5Aに変化し、さらに、デオキシハイプシンヒドロキシラーゼの作用により活性体であるハイプシン化eIF5Aになるとされているタンパクである。そして、その作用としては、細胞増殖に関与するmRNAの翻訳を促進するとされている(Amino Acids 2001;20:91−104)。しかし、このeIF5Aは、細胞質内だけに存在するタンパクであり、細胞外に分泌されることは全く知られていなかった。 本発明の分泌型eIF5Aは、細胞質内に存在するeIF5Aとは、機能はもちろん、物質としても明確に相違する。すなわち、細胞質内eIF5Aの等電点が、5.5〜5.4であるのに対し、分泌型eIF5Aの等電点は5.4〜5.3であり、分泌型eIF5Aの等電点は細胞質内eIF5Aに比べて0.1低いものである。 また、本発明の分泌型eIF5Aには、非ハイプシン化体とハイプシン化体とが含まれる。分泌型ハイプシン化eIF5Aの等電点は、約5.4であり、分泌型非ハイプシン化eIF5Aに比べて0.1程度高いものである。ここで、上記等電点は、二次元ゲル電気泳動法により測定した値である。 より詳細には、本発明の分泌型eIF5Aのうち、分泌型非ハイプシン化eIF5Aの等電点は細胞質内非ハイプシン化eIF5Aに比べて0.1程度低く、約5.3である。また分泌型ハイプシン化eIF5Aの等電点は、分泌型非ハイプシン化eIF5Aに比べて0.1高く、約5.4である。 分泌型非ハイプシン化eIF5Aおよび分泌型ハイプシン化eIF5Aのうち、分泌型ハイプシン化eIF5Aはアポトーシス誘導活性が極めて強く、特に好ましい。 本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aは、例えば低酸素−再酸素条件の培養細胞から分泌されるので、当該培養細胞の培地から採取することができる。ここで用いられる培養細胞としては、培養可能な哺乳類由来の細胞であれば特に限定されず、心筋細胞の他、各種の株化細胞等が挙げられる。低酸素−再酸素条件としては、酸素濃度0.1%未満の条件で20〜60分培養後、正常酸素濃度20%の条件で培養する条件が挙げられる。再酸素条件で10〜15分間培養後の培養上清から、本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aを分離すればよい。 また、細胞質内型の(ハイプシン化)eIF5Aは、既にクローニングされているから、組み換えDNA技術により(ハイプシン化)eIF5A遺伝子を導入した細胞を低酸素−再酸素化条件で培養し、その培養上清から採取することによっても本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aを製造することができる。ここで、細胞質内型のeIF5A遺伝子の塩基配列および細胞質内型eIF5Aのアミノ酸配列を配列番号1に示す。なお、本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aも細胞質内型(ハイプシン化)eIF5Aと同じ遺伝子が発現したものであるから、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する。また、本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aには、同じ機能を有する限り、配列番号1で示されるアミノ酸配列の1または複数個が欠失、置換または付加したアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。 本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aは、アポトーシス誘導作用、特に酸化ストレスに起因するアポトーシスを誘導する作用を有する。細胞質内型のeIF5Aを培養細胞に添加した系では、アポトーシス誘導は起こらなかったことから、当該アポトーシス誘導能は、分泌型(特にハイプシン化)eIF5Aに特異的である。 また、本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aのアポトーシス誘導作用は、カスパーゼ依存性経路とカスパーゼ非依存性経路との両経路に関与している。 本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aは、酸化ストレスに起因するアポトーシスのみならず、正常酸素濃度下においてもアポトーシスを誘導するため、癌、浸潤性疾患(例えばサルコイドーシス)等の予防治療薬として有用である。 本発明の医薬は、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aを当該技術分野においてよく知られる薬学的に許容しうる担体とともに、混合、溶解、顆粒化、錠剤化、乳化、カプセル封入、凍結乾燥等により、製剤化することができる。 経口投与用には、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aを、薬学的に許容しうる溶媒、賦形剤、結合剤、安定化剤、分散剤等とともに、錠剤、丸薬、糖衣剤、軟カプセル、硬カプセル、溶液、懸濁液、乳剤、ゲル、シロップ、スラリー等の剤形に製剤化することができる。 非経口投与用には、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aを、薬学的に許容しうる溶媒、賦形剤、結合剤、安定化剤、分散剤等とともに、注射用溶液、懸濁液、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、吸入剤、坐剤等の剤形に製剤化することができる。注射用の処方においては、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aを水性溶液、好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理的食塩緩衝液等の生理学的に適合性の緩衝液中に溶解することができる。さらに、組成物は、油性または水性のベヒクル中で、懸濁液、溶液、または乳濁液等の形状をとることができる。あるいは、治療剤を粉体の形態で製造し、使用前に滅菌水等を用いて水溶液または懸濁液を調製してもよい。吸入による投与用には、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aを粉末化し、ラクトースまたはデンプン等の適当な基剤とともに粉末混合物とすることができる。坐剤処方は、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aをカカオバター等の慣用の坐剤基剤と混合することにより製造することができる。さらに、本発明の治療剤は、ポリマーマトリクス等に封入して、持続放出用製剤として処方することができる。 投与量および投与回数は、剤形および投与経路、ならびに患者の症状、年齢、体重によって異なるが、一般に、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aは、1日あたり体重1kgあたり、約0.001mgから1000mgの範囲、好ましくは約0.01mgから10mgの範囲となるよう、1日に1回から数回投与することができる。 本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aは、酸化ストレス状態の細胞から分泌されるので、酸化ストレスの診断または判定に用いることができる。すなわち、体液または組織検体の分泌型(ハイプシン化)eIF5A濃度を測定し、その濃度が非酸化ストレス状態の場合に比べて高ければ、その体液は組織検体の被験者は酸化ストレス状態にあると診断することができる。さらに被験者が、酸化ストレスに起因する疾患の治療中である場合、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aの濃度を測定することにより、治療の経過が良好であるか否かを判定することができる。 本発明の測定対象である分泌型(ハイプシン化)eIF5Aは、酸化ストレスにより細胞から分泌されるため、検体は体液であるのが好ましく、特に血液、血清または血漿を検体とするのが好ましい。 本発明の診断または判定を行う様態としては、被験者から得られた血液、血清、または血漿を試料として、免疫学的測定法を行うことができる。例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、免疫沈降法、免疫比濁法、ウェスタンブロット、免疫拡散法などを挙げることができるが、好ましくはエンザイムイムノアッセイであり、特に好ましいのは酵素結合免疫吸着定量法(enzyme−linked immunosorbent assay:ELISA)(例えば、sandwich ELISA)である。ELISAなどの上述した免疫学的方法は当業者に公知の方法により行うことが可能である。 血液、血清、または血漿を検体とした酸化ストレス診断方法としては、例えば、抗分泌型(ハイプシン化)eIF5A抗体(以下、単に抗eIF5A抗体という)を支持体に固定し、ここに被検試料を加え、インキュベートを行い抗eIF5A抗体とタンパク質を結合させた後に洗浄して、抗eIF5A抗体を介して支持体に結合した分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質の検出を行う方法を挙げることができる。 本発明において抗eIF5A抗体を固定するために用いられる支持体としては、例えば、アガロース、セルロースなどの不溶性の多糖類、シリコン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネイト樹脂などの合成樹脂や、ガラス、フェライトなどの不溶性の支持体を挙げることができる。これらの支持体は、ビーズやプレートなどの形状で用いることが可能である。ビーズの場合、これらが充填されたカラムなどを用いることができる。プレートの場合、マルチウェルプレート(96穴マルチウェルプレート等)やバイオセンサーチップなどを用いることができる。抗AMIGO2抗体と支持体との結合は、化学結合や物理的な吸着などの通常用いられる方法により結合することができる。これらの支持体はすべて市販のものを用いることができる。 抗eIF5A抗体と試料中の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質の結合は、通常、緩衝液中で行われる。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液などが使用され、通常用いるpHの範囲であればよい。また、インキュベーションの条件としては、すでによく用いられている条件、例えば、4℃〜37℃にて1時間〜24時間のインキュベーションが行われる。インキュベート後の洗浄は、抗eIF5Aと分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質の結合を妨げないものであれば何でもよく、例えば、Tween−20等の界面活性剤を含む緩衝液などが使用される。 本発明による分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質の検出方法においては、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を検出したい被検試料の他に、コントロール試料を設置してもよい。コントロール試料としては、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を含まない陰性コントロール試料や分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を含む陽性コントロール試料などがある。この場合、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を含まない陰性コントロール試料で得られた結果と、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を含む陽性コントロール試料で得られた結果と比較することにより、被検試料中の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を検出することが可能である。また、濃度を段階的に変化させた一連のコントロール試料を調製し、各コントロール試料に対する検出結果を数値として得て、標準曲線を作成し、被検試料の数値から標準曲線に基づいて、被検試料に含まれる分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を定量的に検出することも可能である。 抗eIF5A抗体を介して支持体に結合した分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質の検出の好ましい態様として、標識物質で標識された抗eIF5A抗体を用いる方法を挙げることができる。例えば、支持体に固定された抗eIF5A抗体に被検試料を接触させ、洗浄後に、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を特異的に認識する標識抗体を用いて検出する。 抗eIF5A抗体の標識は通常知られている方法により行うことが可能である。標識物質としては、蛍光色素、酵素、補酵素、化学発光物質、放射性物質などの当業者に公知の標識物質を用いることが可能であり、具体的な例としては、ラジオアイソトープ(32P、14C、125I、3H、131Iなど)、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロリド、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ビオチン、ルテニウムなどを挙げることができる。標識物質としてビオチンを用いる場合には、ビオチン標識抗体を添加後に、ペルオキシダーゼなどの酵素を結合させたストレプトアビジンをさらに添加することが好ましい。標識物質と抗eIF5A抗体との結合には、グルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法、過ヨウ素酸法、などの公知の方法を用いることができる。 具体的には、抗eIF5A抗体を含む溶液をプレートまたはビーズなどの支持体に加え、抗eIF5A抗体を支持体に固定する。プレート、またはビーズを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSA、ゼラチン、アルブミンなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートまたはビーズに加える。インキュベートの後、洗浄し、標識抗eIF5A抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートまたはビーズを洗浄し、支持体に残った標識抗eIF5A抗体を検出する。検出は当業者に公知の方法により行うことができ、例えば、放射性物質による標識の場合には液体シンチレーションやRIA法により検出することができる。酵素による標識の場合には基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出することができる。基質の具体的な例としては、2,2−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)、1,2−フェニレンジアミン(オルソ−フェニレンジアミン)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)などを挙げることができる。蛍光物質または化学発光物質の場合にはルミノメーターにより検出することができる。 本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質検出方法の特に好ましい態様として、ビオチンで標識された抗eIF5A抗体と、ストレプトアビジンを用いる方法を挙げることができる。 具体的には、抗eIF5A抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗eIF5A抗体を固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSAなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、ビオチン標識抗eIF5A抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼなどの酵素と結合したアビジンを加える。インキュベーション後、プレートを洗浄し、アビジンに結合している酵素に対応した基質を加え、基質の酵素的変化などを指標に分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を検出する。 本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質検出方法の他の態様として、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を特異的に認識する一次抗体を一種類以上、および該一次抗体を特異的に認識する二次抗体を一種類以上用いる方法を挙げることができる。 例えば、支持体に固定された一種類以上の抗eIF5A抗体に被検試料を接触させ、インキュベーションした後、洗浄し、洗浄後に結合している分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を、一次抗eIF5A抗体、および該一次抗体を特異的に認識する一種類以上の二次抗体により検出する。この場合、二次抗体は好ましくは標識物質により標識されている。 本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質の検出方法の他の態様としては、凝集反応を利用した検出方法を挙げることができる。該方法においては、抗eIF5A抗体を感作した担体を用いて分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を検出することができる。抗体を感作する担体としては、不溶性で、非特異的な反応を起こさず、かつ安定である限り、いかなる担体を使用してもよい。例えば、ラテックス粒子、ベントナイト、コロジオン、カオリン、固定羊赤血球等を使用することができるが、ラテックス粒子を使用するのが好ましい。ラテックス粒子としては、例えば、ポリスチレンラテックス粒子、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス粒子、ポリビニルトルエンラテックス粒子等を使用することができるが、ポリスチレンラテックス粒子を使用するのが好ましい。感作した粒子を試料と混合し、一定時間攪拌する。試料中に分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質が高濃度で含まれるほど粒子の凝集度が大きくなるので、凝集を肉眼でみることにより分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を検出することができる。また、凝集による濁度を分光光度計等により測定することによっても検出することが可能である。 本発明のタンパク質の検出方法の他の態様としては、例えば、表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーを用いた方法を挙げることができる。表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーはタンパク質−タンパク質間の相互作用を微量のタンパク質を用いてかつ標識することなく、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することが可能である。例えば、BIAcore(Biacore International AB社製)等のバイオセンサーを用いることにより抗eIF5A抗体と分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質との結合をそれぞれ検出することが可能である。具体的には抗eIF5A抗体を固定化したセンサーチップに、被検試料を接触させ抗eIF5A抗体に結合する分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を共鳴シグナルの変化としてそれぞれ検出することができる。 本発明の検出方法は、種々の自動検査装置を用いて自動化することもでき、一度に大量の試料について検査を行うことも可能である。 本発明の酸化ストレス診断薬は、キットの形態であってもよい。本発明の酸化ストレス診断薬は少なくとも抗eIF5A抗体を含む。該診断薬がELISA法等のEIA法に基づく場合は、抗体を固相化する担体を含んでいてもよく、抗体があらかじめ担体に結合していてもよい。該診断薬がラテックス等の担体を用いた凝集法に基づく場合は抗体が吸着した担体を含んでいてもよい。また、該診断薬は、適宜、ブロッキング溶液、反応溶液、反応停止液、試料を処理するための試薬等を含んでいてもよい。 本発明の診断薬に用いられる抗eIF5A抗体は、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質にそれぞれ特異的に結合すればよく、その由来、種類(モノクローナル、ポリクローナル)および形状を問わない。具体的には、マウス抗体、ラット抗体、トリ抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などの公知の抗体を用いることができる。抗体はポリクローナル抗体でもよいが、モノクローナル抗体であることが好ましく、高感度で特異的な測定が可能であれば、市販されている抗体を使用してもよい。 また、支持体に固定される抗eIF5A抗体と標識物質で標識される抗eIF5A抗体は、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質の同じエピトープを認識してもよいが、異なるエピトープを認識することが好ましく、部位は特に制限されない。 本発明で使用される抗eIF5A抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗eIF5A抗体として、哺乳動物由来あるいはトリ由来モノクローナル抗体が好ましい。特に、哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマにより産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。 モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法に従って免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。 具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。 精製分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を感作抗原として用いる。あるいは、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質の部分ペプチドを感作抗原として使用することもできる。この際、部分ペプチドはヒト分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質のアミノ酸配列より化学合成により得ることもできるし、ヒト分泌型(ハイプシン化)eIF5A遺伝子の一部を発現ベクターに組込んで得ることもでき、さらに天然のヒト分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質をタンパク質分解酵素により分解することによっても得ることができる。部分ペプチドとして用いるヒト分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質の部分および大きさは限られない。 感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはトリ、ウサギ、サル等が使用される。 感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法に従って行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。特に分子量の小さい部分ペプチドを感作抗原として用いる場合には、アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン等の担体タンパク質と結合させて免疫することが望ましい。 このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。 前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J.Immnol.(1979)123,1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81,1−7)、NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.Eur.J.Immunol.(1976)6,511−519)、MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell(1976)8,405−415)、SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature(1978)276,269−270)、FO(de St.Groth,S.F.et al.,J.Immunol.Methods(1980)35,1−21)、S194(Trowbridge,I.S.J.Exp.Med.(1978)148,313−323)、R210(Galfre,G.et al.,Nature(1979)277,131−133)等が好適に使用される。 前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler.G.and Milstein,C.、Methods Enzymol.(1981)73,3−46)等に準じて行うことができる。 より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、さらに所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。 免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。 細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000〜6000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。 このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングを行う。 目的とする抗体のスクリーニングおよび単一クローニングは、公知の抗原抗体反応に基づくスクリーニング方法で行えばよい。例えば、ポリスチレン等でできたビーズや市販の96ウェルのマイクロタイタープレート等の担体に抗原を結合させ、ハイブリドーマの培養上清と反応させ、担体を洗浄した後に酵素標識二次抗体等を反応させることにより、培養上清中に感作抗原と反応する目的とする抗体が含まれるかどうか決定できる。目的とする抗体を産生するハイブリドーマを限界希釈法等によりクローニングすることができる。この際、抗原としては免疫に用いたものを用いればよい。 このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。 当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法に従い培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。 本発明で使用される抗体は、抗体の全体分子に限られず、分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質に結合する限り、抗体の断片またはその修飾物であってもよく、二価抗体も一価抗体も含まれる。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab’)2、Fv、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co,M.S.et al.,J.Immunol.(1994)152,2968−2976、Better,M.& Horwitz,A.H.Methods in Enzymology(1989)178,476−496,Academic Press,Inc.、Plueckthun,A.& Skerra,A.Methods in Enzymology(1989)178,476−496,Academic Press,Inc.、Lamoyi,E.,Methods in Enzymology(1989)121,652−663、Rousseaux,J.et al.,Methods in Enzymology(1989)121,663−669、Bird,R.E.et al.,TIBTECH(1991)9,132−137参照)。 scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1988)85,5879−5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12〜19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。 scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部または所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。 また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。 これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。 抗体の修飾物として、標識物質等の各種分子と結合した抗eIF5A抗体を使用することもできる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。 さらに、本発明で使用される抗体は、二重特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。二重特異性抗体は分子上の異なるエピトープを認識する抗原結合部位を有する二重特異性抗体であってもよいし、一方の抗原結合部位が分泌型(ハイプシン化)eIF5Aタンパク質を認識し、他方の抗原結合部位が標識物質等を認識してもよい。二重特異性抗体は2種類の抗体のHL対を結合させて作製することもできるし、異なるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを融合させて二重特異性抗体産生融合細胞を作製し、得ることもできる。さらに、遺伝子工学的手法により二重特異性抗体を作製することも可能である。 本発明の分泌型(ハイプシン化)eIF5Aは、酸化ストレスに起因するアポトーシスを誘導するので、その抑制剤を用いればアポトーシス抑制薬とすることができる。分泌型(ハイプシン化)eIF5A抑制剤としては、例えば抗eIF5A中和抗体が挙げられる。抗eIF5A中和抗体は、その由来、種類(モノクローナル、ポリクローナル)および形状を問わない。具体的には、マウス抗体、ラット抗体、トリ抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などの公知の抗体を用いることができる。抗体はポリクローナル抗体でもよいが、生体内に投与することを考慮すれば大量に生成可能なモノクローナル抗体であることが好ましく、生体内で分泌型(ハイプシン化)eIF5Aを中和しその作用を阻害することが可能であればよい。 ここで本発明のアポトーシス抑制薬は酸化ストレスに起因するアポトーシスを抑制するから、酸化ストレスに起因する種々の疾患、例えば、虚血−再灌流障害、紫外線・放射線障害のみならず、酸化ストレスによって促進されるアテローム性動脈硬化、老化等の予防治療薬として有用である。「虚血」性疾患としては、虚血性心疾患(狭心症・急性心筋梗塞)、脳梗塞、肺血栓塞栓症、虚血性腸疾患(急性腸間膜動脈閉塞症・虚血性大腸炎)、腎塞栓症、また、心臓移植や開心術など人工心肺装置を用いて心臓停止をおこなう場合、等があげられる。 本発明の医薬は、分泌型(ハイプシン化)eIF5A抑制剤を当該技術分野においてよく知られる薬学的に許容しうる担体とともに、混合、溶解、顆粒化、錠剤化、乳化、カプセル封入、凍結乾燥等により、製剤化することができる。 経口投与用には、分泌型(ハイプシン化)eIF5A抑制剤を、薬学的に許容しうる溶媒、賦形剤、結合剤、安定化剤、分散剤等とともに、錠剤、丸薬、糖衣剤、軟カプセル、硬カプセル、溶液、懸濁液、乳剤、ゲル、シロップ、スラリー等の剤形に製剤化することができる。 非経口投与用には、分泌型(ハイプシン化)eIF5A抑制剤を、薬学的に許容しうる溶媒、賦形剤、結合剤、安定化剤、分散剤等とともに、注射用溶液、懸濁液、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、吸入剤、座剤等の剤形に製剤化することができる。注射用の処方においては、分泌型ハイプシン化eIF5A抑制剤を水性溶液、好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理的食塩緩衝液等の生理学的に適合性の緩衝液中に溶解することができる。さらに、組成物は、油性または水性のベヒクル中で、懸濁液、溶液、または乳濁液等の形状をとることができる。あるいは、治療剤を粉体の形態で製造し、使用前に滅菌水等を用いて水溶液または懸濁液を調製してもよい。吸入による投与用には、分泌型ハイプシン化eIF5A抑制剤を粉末化し、ラクトースまたはデンプン等の適当な基剤とともに粉末混合物とすることができる。坐剤処方は、分泌型(ハイプシン化)eIF5A抑制剤をカカオバター等の慣用の坐剤基剤と混合することにより製造することができる。さらに、本発明の治療剤は、ポリマーマトリクス等に封入して、持続放出用製剤として処方することができる。 投与量および投与回数は、剤形および投与経路、ならびに患者の症状、年齢、体重によって異なるが、一般に、分泌型(ハイプシン化)eIF5A抑制剤は、1日あたり体重1kgあたり、約0.001mgから1000mgの範囲、好ましくは約0.01mgから10mgの範囲となるよう、1日に1回から数回投与することができる。急性心筋梗塞や脳梗塞などの急性期治療として発症早期に血栓溶解剤(ウロキナーゼや組織プラスミノゲン活性化因子[tPA],、等)やバルーンカテーテルを用いて閉塞血管を再開通させる再灌流療法が一般的におこなわれるが、再灌流の前又は同時(できれば5〜10分前)に抗(分泌型)eIF5A中和抗体を静脈内に(one shotで)投与することができる。バルーンカテーテルによる閉塞血管の拡張とともにステント挿入をおこなう場合においても同様に再灌流(血管拡張)の前又は同時に投与することができる。薬剤投与型バルーンカテーテルでは血管拡張により血流が再開される前もしくは同時に投与することが望ましい。 次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。 まず、実験方法について説明する。(細胞培養) Circ.Res.78,82−90(1996)の記載に従い、新生仔ラット心室心筋細胞の初代培養を調製した。これらを2日間、コンフルエントになるまで培養した。(低酸素および再酸素化) Circ.Res.78,82−90(1996)の記載に従い、低酸素条件(N2 95%,CO2 5%およびO2 0.1%未満)を作った。低酸素条件で60分間(心筋細胞)または20分間(ウズラ筋細胞)インキュベートした後、直ちに低酸素PBSを正常酸素PBSに10分間置き換えることによって、細胞を再酸素化した。再酸素化10分後、上清PBSを再酸素化条件PBS (RCP)として回収した。また、正常酸素状態下の非刺激心筋細胞のインキュベーション10分後、上清PBSをコントロール条件PBS (CCP)として回収した。RCPおよびCCPを濃縮し、centripreps(YM−10;Millipore Corporation)により分子量>10kDの画分を回収した。(クロマトフォーカシング) RCPおよびCCPの両方を同数の細胞から回収し、GILSON HPLC systemと接続したMONO−P(5mm×200mm)カラム(GE Healthcare)上に流速1ml分間でローディングし、Solution A(0.025M BisTris,pH7.1)で平衡化し、Solution B(10% Poly Buffer74、pH4.0)で溶出し、次いでSolution C(1M NaCl/10% Poly Buffer74,pH4.0)でカラム結合成分を洗浄した。(クローニングおよびプラスミド構築) ヒトeIF5A cDNAを、SaSO2細胞(ヒト骨芽細胞様細胞株)から単離した全RNAからRT−PCRによって増幅し、pcDNA4/myc−Hisベクター(Invitrogen)のEcoRI/Xho Iサイトにサブクローニングした。次いで、FLAG plus His−タグ化(tagged)eIF5A構築物を以下のプライマーを用いて作製した。フォワード 5’−CACCGAATTCAAAATGGCAGATGACT−3’(配列番号2)およびリバース 5’−ATATACTCGAGTCAGTGATGGTGATGGTGGTGCTTGTCATCGTCGTCCTTGTAATCTTTTGCCATGGCCTTGATTG−3’(配列番号3) そして、pcDNA3.1 Directional TOPOベクター(Invitrogen)にサブクローニングした。(リコンビナントeIF5Aタンパク質) ウズラ筋細胞株(clone CRL−1962, ATCC)において、Flag plus His−タグ化eIF5Aおよび突然変異eIF5A(K50A)を、FuGENE HD Transfection Reagent(Roche)を用いて一過性に発現させた。トランスフェクションの48時間後、細胞を20分間低酸素に供しその後10分間再酸素化した。再酸素化PBSを回収、濃縮し、リコンビナントタンパク質をNi−NTA Purification System(Invitrogen;製造者の説明書に従った)を用いて精製した。また、通常条件(正常酸素濃度)下のトランスフェクション細胞から細胞質内のリコンビナントeIF5Aを回収した。(ポリクローナル抗eIF5A抗体) ウサギ抗eIF5Aポリクローナル抗体(J−M)および(J−C)を、ヒトeIF5Aペプチド(各々アミノ酸残基38〜57(ハイプシン化部位を含む)、およびアミノ酸残基138〜154;これらはキーホールリンペットヘモシアニンに結合させた)に対して作製した。(培養心筋細胞のウェスタンブロット分析) 培養心筋細胞をリコンビナントeIF5A(RCP)で5分間処理し、直ちに培地を吸引し、細胞を液体窒素で冷凍した。別記されるように細胞を氷上でbuffer Aによって溶解し、細胞溶解物を遠心分離した。上清をLemli’s sample bufferに懸濁した。サンプルの一部を、ウサギポリクローナルリン酸化特異的抗ERK1/2(Thr202/Tyr204)抗体(Cell Signaling,Inc.)を用いたウェスタン分析に供した。同じサンプルの一部をまた、ウサギポリクローナルコントロール抗ERK1/2(Cell Signaling,Inc.)を用いたウェスタン分析に供した。抗体−抗原複合体をアルカリホスファターゼ(New England Biolabs,Inc.)を用いた化学発光システムで発色させた。(免疫蛍光) 培養心筋細胞および心筋組織の免疫蛍光染色を、蛍光(TSATM Biotin System,NEN Life Science Products,PerkinElmer;製造者の指示書に従った)に対して、Tyramide Signal Amplification (TSA)技術によって行った。心筋ミオシンの二重免疫染色は、Biochem.Biophys.Res.Commun.317,162−168(2004)に記載された手順と同じである。(免疫電子顕微鏡法) 培養心筋細胞を、60分間の低酸素とその後の10分間の再酸素化に供し、4%パラホルムアルデヒドで2時間固定し、PBSで洗浄し、一連の段階的な(50−100%)冷エタノールで脱水した。これらをLR White resin(Nisshin EM,Co.Ltd.,Japan)/100%エタノール(1:1)に2時間包埋し、次いで純粋なLR White resinに包埋し、これを4℃で一晩、UV照射下で重合させた。超薄切片を作製し、PBS中で1%ウシ血清アルブミンでブロックし、抗eIF5A抗体(J−M)とともに一晩インキュベートした。PBS中で洗浄し、切片をProtein A conjugated gold colloidal particles−20nm(EY Laboratories,Inc.)とともにインキュベートし、そして電子顕微鏡(H−7000,HITACHI,Japan)で検査した。(電子顕微鏡) 心筋細胞を、リコンビナントeIF5Aで所定の時間処置した。細胞は、2%グルタルアルデヒドで固定し、2%四酸化オスミウムで後固定(postfix)し、エタノールで脱水し、レジンに包埋した。超薄切片を作製し、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色し、電子顕微鏡(H−7000,HITACHI,Japan)で検査した。(ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼニック−エンド(Terminal deoxynucleotidyl transferase nick−end labeling(TUNEL)染色) In Situ Apotosis Detection Kit(TAKARA BIO Inc.,Shiga,Japan;製造者の説明書に従った)を用いてTUNEL染色を行い、その後ジアミノベンジジン(DAB)反応を行った。心筋細胞を非筋細胞から区別するため、細胞をマウス抗心筋ミオシン(clone CMA19)mAb、およびalkaline phosphatase−labeled anti−mouse IgG(Santa Cruz Biotechnology,Inc.)とともにインキュベートし、次に基質(alkaline phosphatase substrate kit III,Vector Laboratories,Inc.)(青色反応産物を生成する)と反応させた。(培養心筋細胞におけるアポトーシス誘導因子(AIF)の細胞下局在の分析) 蛍光(TSATM Biotin System,NEN Life Science Products,PerkinElmer;製造者の説明書に従った)については、Tyramide Signal Amplification(TSA)技術を用いた。心筋細胞をリコンビナントeIF5A(RCP)で所定時間処理し、PBS中4%パラホルムアルデヒドで15分間固定した。PBSで洗浄後、細胞をウサギ抗AIF mAb (E20;Epitomics Inc.)とともに1時間インキュベートした。洗浄し、細胞をビオチン化抗ウサギIgG(Chemicon International,Inc.)とともに1時間インキュベートし、洗浄し、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(Vector)とともに30分間インキュベートした。TNT buffer(0.1 M Tris−HCl,pH7.5,0.15 M NaCl,0.05% Tween 20)で洗浄後、細胞をビオチン化−tyramideとともに適切な時間(3〜10分)インキュベートした。TNT bufferで洗浄した後、細胞をFITC labeled avidin−D(Vector)とともに30分間インキュベートした。核を1μgml−1 Hoechst 33342(DOJINDO Laboratories,Kumamoto,Japan)で染色した。共焦点レーザー顕微鏡法は、LSM510 laser scanning microscope(Zeiss)で行った。(ミトコンドリアによるチトクロームc放出の分析) 培養心筋細胞は、リコンビナントeIF5Aで所定時間処理された。細胞の核、ミトコンドリアおよび細胞質の画分は、非特許文献1および2に記載のとおり調製した。換言すると、3×106細胞をPBSで洗浄し、250μlのlysis buffer(250mM sucrose,50mM Pipes/KOH,pH7.4,50mM KCl,5mM EGTA,2mM MgCl2,1mM DTT,および1mM PMSF)に懸濁させた。氷上に30分置いた後、Dounce ホモジナイザー中pestle Bを用いて40ストロークで細胞を溶解させ、80gで10分遠心分離した。核画分としてペレットを回収した。次に、上清を20,000g、20分の遠心分離により細胞溶解物から調製した。ペレットをミトコンドリア画分として回収し、上清を細胞質画分とした。核、ミトコンドリアおよび細胞質の画分は、ウサギ抗AIF mAb(E20;Epitomics Inc.,CA,USA)またはマウス抗チトクロームc mAb(7H8.2C12;Lab Vision Corp.,CA,USA)を用いたウェスタンブロット分析に供した。抗体−抗原複合体は、アルカリホスファターゼ(New England Biolabs,Inc.)を用いた化学発光法で発色させた。(培養心筋細胞のAnnexin V染色) 心筋細胞をリコンビナントeIF5A(RCP)で所定時間処理した。細胞をビオチン化−annexin Vとともに、1×binding buffer(Annexin V−Biotin Apotosis Detection Kit,BioVision Inc.)中で5分間インキュベートし、PBS中2%パラホルムアルデヒドで15分間固定した。PBS中で洗浄後、細胞をストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(Vector)とともに30分間インキュベートした。TSA技術による免疫蛍光についてのその後の手順は、AIFと同じである。心筋細胞を非心筋細胞と区別するため、細胞をさらに、マウス抗心筋ミオシン(clone CMA19)mAb(非特許文献1)とともにインキュベートし、その後テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)結合抗マウスIgG抗体とともにインキュベーションし、蛍光顕微鏡写真を撮影した。(虚血および再灌流) ラット(雄性、250〜280g)を、J Pathol 180,305−310(1996)に従って、冠動脈結紮に供した。すなわち、ラットをペントバルビタール・ナトリウム(40mg Kg−1、腹腔内)で麻酔し、挿管し、レスピレータ(SN−480−7、Shinano Manufacturing Co.,Ltd,Tokyo,Japan)により室内空気で換気した(換気量、20ml/Kg、60分間)。外側開胸術(lateral thoracotomy)および心膜切除術の後、6−0絹糸を心筋内の左冠動脈の位置の近く左心耳下に配置した。短いチューブを糸の端の上から押し付け、心臓に対して固くクランプすることによって冠動脈閉塞を作製した。再灌流は、クランプを除去することによって行った。標準肢誘導II(standard limb lead II)心電図を継続的にモニターした。心電図のSTセグメントレベルの変化を追跡すること、および心筋の色の変化を観察することによって限局的な心筋の虚血および再灌流を確認した。(免疫組織化学) ラットを、心筋虚血/再灌流後の各時点で屠殺した。心室のクリオスタット切片(6−μm厚)を作製し、風乾し、アセトンで5分間固定した。切片をウサギポリクローナル抗eIF5A抗体(J−M)とともに37℃で1時間インキュベートし、その後ビオチン化抗ウサギIgG抗体(Vector Laboratories,Inc.,CA)とともに37℃で1時間インキュベーションした。免疫蛍光についてのTSA法によるその後の手順は、Annexin Vと同様である。(免疫細胞化学) 心筋細胞を非心筋細胞と区別するため、Annexin Vと同様にマウス抗心筋ミオシン(CMA19)mAbを用い、その後TRITC結合抗マウスIgG抗体とインキュベーションすることで、心筋ミオシンおよびeIF5Aについての二重染色を行った。eIF5Aの染色についての手順は、組織サンプルの手順と同じである。(myc−タグ−およびFLAGタグ化リコンビナントeIF5Aタンパク質の二次元電気泳動) ウズラ筋肉細胞に(eIF5A−myc−His)ベクターを形質導入し、形質転換細胞の細胞質からmyc−およびHis−タグ化リコンビナントeIF5Aタンパク質を採取した。また、同様にしてウズラ筋肉細胞に(eIF5A−FLAG−His)ベクター形質導入し、低酸素負荷後再酸素化条件PBS(RCP)で培養し、その培養上清よりFLAG−およびHis−タグ化リコンビナントeIF5Aタンパク質を採取した。方法としてNi−NTA精製システム(lnvitrogen社)で処理した後、Superdex 200TM 10−300GL(GEヘルスケア社、1.0×30cm、ベッド容量24ml)を用い、0.15MのNaClを含むリン酸緩衝液pH7.4でゲル濾過を行いmyc−タグ−およびFLAGタグ化リコンビナントeIF5Aタンパク質を精製した。1次元目等電点電気泳動は、7M urea,2M thiourea,4% CHAPS,65mM dithioerythritol[DTE],2% IPG buffer pH4−7(GEヘルスケア社),bromophenol blue[BPB]に溶解したサンプルをImmobiline DryStrip(pH4−7,GEヘルスケア社)に一晩膨潤させ、電圧30Vで7時間、60Vで7時間、60−200Vで30分、200−500Vで30分、500−1000Vで30分、1000−8000Vで30分、8000Vで2時間行った(計19.4kVh)。2次元目SDS−PAGEは(濃縮ゲル4% acrylamide,2.6% piperazine diacrylamide[PDA]、分離ゲル12% acrylamide,2.6% PDA)ゲルを用いて12mA、2時間電気泳動を行った。ゲルをPVDF膜に転写後myc−タグ−およびFLAGタグ化リコンビナントeIF5Aタンパク質をそれぞれウェスタンブロット法によって解析した。最初は抗mycモノクローナル抗体(Invitrogen社)、ビオチン化抗マウスIgGおよびベクタステインABC−APキット(Vector社)を使用し、アルカリホスファターゼを用いてケミルミネセンスで検出し、次に抗FLAGモノクローナル抗体(M2,シグマ)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)ラベル抗マウスIgGを使用し、コニカイムノスティンHRR−1000kit(コニカ社)で検出した。(リコンビナントeIF5Aによる、種々の癌細胞のアポトーシス誘導) ウズラ筋肉細胞(ATCC;CRL−1962)、Hala細胞、ヒト肝細胞カルシノーマ細胞(ATCC;HB−8064)およびヒトグリオブラストーマ細胞(ATCC;CRL−1690)をコンフルエントになるまでカルチャースライド(BDファルコン社)上で培養した。それらの細胞をリコンビナントeIF5A(10μg/ml)で所定時間処理し、固定した。アポトーシスディネクションキット(タカラバイオ社)を用いてインサイチュ(in situ)で、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ開裂エンド標識(TUNEL)染色を行った。実施例1(低酸素/再酸素化培養細胞から分泌される液性因子の同定)(1)低酸素/再酸素化条件培地由来のアポトーシス誘導性液性因子を同定するため、60分の低酸素の後10分間再酸素化された心筋細胞の上清PBSから、再酸素化条件(reoxygenation−conditioned)PBS(RCP)として、相対分子量(Mr)>10kDの画分を回収、濃縮した。 この画分がERK活性化(activating)活性およびアポトーシス誘導(inducing)活性を有するからである。 また、非刺激心筋細胞と正常酸素状態下で10分間インキュベートした上清PBSを、コントロール条件PBS(CCP)として回収、濃縮した。RCPおよびCCPにおけるタンパク質を、クロマトフォーカシングによって分離した(図1)。(2)培養ラット心筋細胞を用いて、各画分の、標的因子の最も高感受性なマーカーの1つと考えられるERK活性化活性を、リン酸化特異性抗ERK1/2抗体(Cell Signaling,Inc.)を用いたウェスタンブロットによりモニターし、そしてRCPおよびCCP群の両方において、画分49−52(高塩[1M NaCl]画分)が強い活性を有したこと(活性:RCP>CCP;図1)、およびRCPの画分5−8(通過画分)が弱〜中程度の、しかし画分49−52よりはるかに低い活性を有したことを見出した。そして各群の最も活性な画分(49−52)を、二次元電気泳動に供した(図2a;左パネル、RCP;右パネル、CCP)。これらの活性成分はSolution Bによって溶出されなかったので、これらは酸性と考えられる。低pI値のスポットの中で、RCP(図2a、左パネル)において矢印で示されるスポット1(Mr 14.4kDおよびpI 4.8)は、CCP(図2a、右パネル)においては存在しておらず、スポット2(Mr 16.8kDおよびpI 5.1)はCCPにおいてごくわずかに存在した(スポット2’)。したがって、これらのスポットは主として低酸素/再酸素化に応答して新たに出現したと考えられる。タンパク質スポット1および2のLC−MS/MS分析により、各々、チオレドキシンおよび真核生物翻訳開始因子(eIF)5Aを同定した。実施例2(分泌型eIF5Aのアポトーシス誘導能)(1)チオレドキシンは、他のタンパク質を還元することによって抗酸化剤として作用すること、および酸化ストレス誘導性細胞傷害に対する保護的役割を果たすであろうことがが知られていたことから、eIF5Aをアポトーシス誘導性液性因子の候補であると考えた。eIF5Aは、二段階の酵素反応によって翻訳後に形成される独特のアミノ酸、ハイプシンを含む、唯一知られたタンパク質である。eIF5Aは、通常条件下では主に細胞質内に局在することが知られており、細胞質内において、ハイプシン化eIF5Aは、細胞増殖に関与するmRNAの翻訳を促進する。しかし、これまでのどの研究も、eIF5Aが細胞外に放出されてアポトーシス誘導因子として作用するということは報告していない。eIF5Aが実際に低酸素/再酸素化に応答して心筋細胞から放出され、放出されたeIF5Aが心筋細胞のアポトーシスを誘導し得るということを確認するため、ウズラ筋細胞(CRL−1962,ATCC)にFLAGおよびHisタグ化ヒトeIF5A遺伝子を含む発現ベクターをトランスフェクトし、低酸素PBSとインキュベートした後、正常酸素PBSとインキュベートすることにより再酸素化条件PBS(RCP)を回収して濃縮し、Ni−NTA Purification System(Invitrogen)を用いて精製した後、ゲルろ過を行うことによってリコンビナントタンパク質([RCP]re−eIF5A)を抽出した。(2)同様に未処理トランスフェクト細胞の細胞質画分からリコンビナントヒトeIF5A([cytosolic]re−eIF5A)を抽出した。(3)これらのリコンビナントeIF5Aタンパク質を二次元電気泳動にて展開した後、抗FLAG M2 mAb(Sigma)を用いたウェスタンブロットにより、分析した(図2b)。抗FLAG M2 mAbによるブロットは、細胞質内型(cytosolic)・分泌型(RCP)ともに主として2つの形態のリコンビナントeIF5A タンパク質を示した(図2b;[A,B]および[A’,B’])。すなわち、ハイプシン化eIF5Aのようなより高いpI値を有するスポット(図2b中のスポットBおよびB’)、および非ハイプシン化eIF5Aのようなより低いpI値を有するスポット(図2b中のスポットAおよびA’)を同定した。デオキシハイプシン化中間体についての検出可能なスポットは存在しなかった(参考文献 Taylor,C.A.,et al.Exp.Cell Res.(2007)313,437−449)。RCP由来のリコンビナントeIF5A(低酸素/再酸素化に応答した分泌形態のもの)は、主としてハイプシン化形態からなり(図2b、右パネル,スポットB’)、一方未処理トランスフェクト細胞の細胞質画分由来リコンビナントeIF5Aは、大部分が非ハイプシン化形態から構成されていた(図2b、左パネル,スポットA)。ここで細胞質内型のスポットAとBの等電点はそれぞれ(5.3)と(5.4)であり、分泌型のスポットA’とB’の等電点はそれぞれ(5.2)と(5.3)であったことから、細胞質内から分泌型に変換される際に等電点が約0.1低下していると考えられた。これについては、同一ゲルを用いた2重発色によるウェスタンブロットにより(0094)実施例4においてさらに確認した。(4)RCP由来リコンビナントeIF5A(主にハイプシン化eIF5Aを含む)は、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼニック−エンド標識(TUNEL;茶色)および心筋ミオシン(青色)による二重染色によって示されるように、培養心筋細胞のアポトーシスを強力に誘導した(図3a)、一方RCP由来リコンビナント突然変異eIF5A(K50A)(未ハイプシン化eIF5A)は、心筋細胞のアポトーシスを一部誘導したのみであった(図3a)。対照的に、未処理コントロール群および細胞質(ほぼ非ハイプシン化)eIF5A処理群においては、アポトーシスを起こした心筋細胞はほとんどなかった(図3a)。リコンビナントeIF5A(RCP)、リコンビナント変異(K50A)eIF5A(RCP),およびリコンビナント(cytosolic)eIF5Aによって誘導されたアポトーシス心筋細胞のパーセンテージの時間経過を、図3bに示す。リコンビナントeIF5A(RCP)はまた、AIFおよびHoechst 33342による二重染色で検出されるように、培養心筋細胞において、細胞質(ミトコンドリア)から核へのアポトーシス誘導性因子(AIF)の移行を誘導した(1μg ml−1、図3c)。リコンビナントeIF5A(RCP)は、培養心筋細胞におけるチトクロームcの細胞質画分、およびカスパーゼ−3の活性型を顕著に増加させ、そのピークは48時間(図3d、矢印,および図3e)であった。リコンビナントeIF5A(RCP)による心筋細胞のアポトーシスの誘導は、さらに、Annexin−V染色(図3f)および電顕による核クロマチンの過剰濃縮(図3g)によって確認された。実施例3 哺乳類細胞のアポトーシスが、カスパーゼ依存性経路とカスパーゼ非依存性経路とに分類できること、およびポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ−1(PARP−1)の活性化がミトコンドリアに伝達されて、AIFを放出させ、それがその後カスパーゼ−非依存性経路におけるアポトーシスシグナルカスケードを媒介することが知られている。そこで、カスパーゼ依存性経路およびカスパーゼ非依存性経路のリコンビナントeIF5A (RCP)により誘導される心筋細胞のアポトーシスに対する関与を調べるため、PARP−1阻害薬3−アミノベンズアミド(Sigma)および広域のカスパーゼ阻害薬Z−VAD.fmk(BIOMOL International,LP)のアポトーシス誘導に対する影響を分析した。図3hおよびiに示すように、PARP−1阻害薬(3−アミノベンズアミド)およびカスパーゼ阻害薬(Z−VAD.fmk)は、アポトーシス誘導を各々約30%および70%有意に抑制し、このことは、両経路の関与を示す。分泌型eIF5Aが実際に心筋細胞の低酸素/再酸素化誘導性アポトーシスを媒介していることを確認するため、再酸素化条件培地(RCM)からeIF5Aを中和抗体によって除去することによる、心筋細胞のRCM誘導性アポトーシスに対する影響を分析した。図3jおよびkは、抗eIF5A抗体(J−C)によるRCM由来eIF5Aの除去により心筋細胞のアポトーシスが有意に(約55%)低下したことを示しており、このことは、RCM誘導性アポトーシスが、少なくとも部分的には分泌eIF5Aによって媒介されることを示している。RCM由来eIF5Aの免疫枯渇がなぜアポトーシス誘導を完全に抑制できなかったかについての理由として、eIF5Aのアミノ酸配列は哺乳類間で高度に保存的であるために抗体の中和活性がRCM由来eIF5Aを完全に除去させるには十分強力でないからと考えられる。実施例4(分泌型[ハイプシン化]eIF5Aの等電点) myc−タグおよびFLAG−タグ化リコンビナントeIF5Aの二次元電気泳動の結果を図4に示す。図中、Aは非ハイプシン化eIF5Aであり、Bは、ハイプシン化eIF5Aである。すなわち、mycおよびHis−タグ化リコンビナントeIF5AのRCP非処理形質転換細胞についての細胞フラクションのウェスタンブロット結果を図4の上段に示す。図4の上段から、細胞質内型eIF5A、すなわち従来既知のeIF5Aの等電点は、細胞質内型非ハイプシン化eIF5Aが約5.4、細胞質内型ハイプシン化eIF5Aが約5.5であった。すなわち、eIF5Aはハイプシン化により等電点が0.1高くなる。 また、再酸素化条件PBS(RCP)処理したFLAGおよびHis−タグ化リコンビナントeIF5Aのウェスタンブロット結果を図4の下段に示す。図4の下段から、分泌型のeIF5Aの等電点は、非分泌型(細胞質内型)eIF5Aに比べて0.1低下することが判明した。すなわち、分泌型非ハイプシン化eIF5(A’)の等電点は約5.3、分泌型ハイプシン化eIF5A(B’)の等電点は約5.4であった。実施例5 抗eIF5A抗体(J−M)および抗心筋ミオシン(CMA19)抗体を用いた二重免疫染色によって、培養心筋細胞におけるeIF5Aの細胞下局在を分析した。心筋ミオシンの免疫染色は、ほとんどの細胞が心筋細胞であることを示した(図5a、下パネル)。正常酸素状態下の心筋細胞は、eIF5Aを核周辺領域において弱く発現するのみである(図5a,上左パネル)。60分の低酸素とその後の10分間の再酸素化に供された心筋細胞は、抗eIF5A抗体(J−M)によって、周辺細胞質および核周囲領域において多くの顆粒状染色を明らかに示した(図5a、上中および上右パネル、矢印)。さらに、抗eIF5A抗体(J−M)による免疫電顕は、細胞膜の近傍(図5b、左パネル)または細胞膜上(図5b、中パネル)、あるいは細胞膜から離れたところの顆粒中にeIF5Aが存在することを明らかにし、まるで、それらは心筋細胞から分泌されたかのようであった(図5b、右パネル)。このことは、eIF5Aが低酸素/再酸素化に応じて分泌顆粒のように心筋細胞から分泌され得ることを強く示唆する。非免疫ウサギ血清によっては明らかなシグナルは検出されなかった。心インビボ虚血/再灌流に応じた筋細胞におけるeIF5Aの発現を確認するため、偽処置(sham−operated)ラット由来および心筋虚血/再灌流に供されたラット由来の心室組織のeIF5Aを免疫染色した。偽処置ラットおよび30分間心筋虚血ラットにおいて、心筋細胞におけるeIF5Aの発現はほとんどなかった(図5c、各々上左および右パネル)。30分間心筋虚血とその後の15分間再灌流は、一部の心筋細胞の細胞膜におけるeIF5Aの弱い発現を誘導した(図5c、下左パネル)。30分間心筋虚血とその後の30分間の再灌流は、多くの心筋細胞の細胞膜でeIF5Aの発現を明らかに増加させており(図5c、下右パネル)、このことは、インビボ虚血/再灌流に対する心臓応答に、インビトロ低酸素/再酸素化の機序と同じ機序が関与することを強く示唆する。実施例6 酸化ストレスへの細胞応答に対する細胞内分子機序については、UVに応答する哺乳類細胞においては、最初の工程はSrcチロシンキナーゼの活性化であり、その後にRasおよびRaf−1の活性化が続くことが報告されている(Cell 71,1081−1091(1992))。インビトロ低酸素/再酸素化に応答した心筋細胞における、これらの細胞内シグナル伝達カスケードを確認した(Circ.Res.78,82−90(1996)、Biochem.Biophys.Res.Commun.226,530−535(1996))。PARP−1は、NADおよびATPを枯渇させることによってDNA障害の修復に役割を果たすことが知られている核の酵素であり、細胞死をもたらす。酸素フリーラジカルは、DNA障害を引き起こし、よってPARP−1活性化する。従って、PARP−1は、酸素フリーラジカルの生成を通じて前に虚血した組織の再灌流障害に関与しているようである。実際、PARP−1活性の抑制は、心筋を含む種々の組織の再灌流障害を軽減する(Proc.Natl.Acad.Sci.94,679−683(1997))。実施例7(本発明分泌型eIF5Aの癌細胞に対するアポトーシス誘導能) 種々の細胞に対する本発明分泌型eIF5Aのアポトーシス誘導能を検討した結果(TUNEL染色)を図6および7に示す。図6から、本発明リコンビナント分泌型eIF5A(10μg/ml、30〜36hr)は、Hela、肝癌細胞およびグリオブラストーマに対してアポトーシスを誘導した。一方、正常細胞であるウズラ筋肉細胞に対しては72hrまでアポトーシスを示さなかった。実施例8 リコンビナント(分泌型、主にハイプシン化)eIF5Aが、カスパーゼ依存性経路およびPARP−1依存性経路を通じて心筋細胞のアポトーシスを誘導したことを見出した。酸素フリーラジカルの産生は、心臓の再灌流の数分以内に発生することが知られている(Circ.Res.61,757−760(1987))。一方で、再酸素化から1分程度でRCPにおいて顕著な量の分泌性eIF5Aを検出した。従って、虚血/再灌流(または低酸素/再酸素化)によって誘導されるPARP−1活性化は、酸素フリーラジカル産生およびハイプシン化eIF5Aの分泌によって、独立に媒介されると考えられる。 機械的負荷の場合、心筋細胞の機械的伸展がアンジオテンシンIIのオートクリン放出を引き起こし、次いでこれが心筋細胞における多数の細胞内シグナル伝達経路の活性化を誘導し、細胞肥大をもたらすことが報告されている(Cell.75,977−984(1993))。このことは、インビボでのアンジオテンシンII放出を介した機械的負荷に対する収縮性コンポーネントの増大により、心筋細胞が外部ストレスに対して応答、順応する精妙なオートクリン機序を提供していると考えられる。これに対し、本発明は、心筋細胞が、分泌型ハイプシン化eIF5Aの分泌を介してアポトーシスを受けることによって、強い酸化ストレスのような何らかの外部ストレスに応答するが、順応しないことを明らかにした。酸化ストレスに対する細胞応答には、アポトーシス誘導性因子(例えば、ハイプシン化eIF5Aおよび酸素フリーラジカル)および抗アポトーシス因子(例えば、チオレドキシン、サイクロフィリンA、熱ショックタンパク質など)との間のバランスが存在するのであろうと考えられた。 酸化ストレスが心筋細胞アポトーシスを引き起こすのに十分な量のハイプシン化eIF5Aを分泌するのに十分に強い場合、このバランスは失われ得る。従って、分泌型ハイプシン化eIF5Aの中和または分泌型ハイプシン化eIF5Aに特異的な細胞表面レセプターのブロックは、完全な虚血とその後の再灌流のような過剰な(あるいは致死的な)酸化ストレスから心筋細胞を保護する。ここで、分泌型ハイプシン化eIF5Aの細胞表面レセプターを同定する。 eIF5Aは、真核生物翻訳開始因子の1つとして同定されているが(J.Biol.Chem.251,5551−5557(1976))、その機能は部分的に理解されているのみである。リジン/ハイプシン変換の阻害は、翻訳開始機能および細胞増殖を阻害したことから(Mol.Cell.Biol.11,3105−3114(1991)、J.Biol.Chem.266,7988−7994(1991))、eIF5Aの翻訳開始活性は、その特定のリジン残基のハイプシン化(独特の翻訳後修飾)と相関があることが知られている。より最近では、非ハイプシン化eIF5Aが細胞質から核に速やかに移行し、TNF(腫瘍壊死因子)−αに応答したアポトーシスを媒介することが報告されている(Exp.Cell.Res.313,437−449(2007))。eIF5A発現アデノウイルスのトランスフェクションによる癌細胞におけるeIF5Aの過剰発現は、ハイプシン化eIF5Aと比べて非ハイプシン化およびデオキシハイプシン化eIF5Aの劇的な蓄積を生じ、細胞の顕著なアポトーシスを誘導した。eIF5A発現アデノウイルス(K50A)のトランスフェクションは、非ハイプシン化eIF5Aの大量蓄積を生じ、やはり細胞の顕著なアポトーシスを誘導した。従って、これらの細胞のアポトーシスの誘導は、ハイプシン化eIF5Aの減少から生じたのではなく、むしろアポトーシス誘導性であるようにみえる非ハイプシン化eIF5Aの蓄積から生じたと結論した。従って、細胞質のハイプシン化eIF5Aは細胞増殖に寄与する一方、核に移行した非ハイプシン化eIF5Aはアポトーシス誘導を媒介すると考えられた。 従って、ハイプシン化eIF5Aが低酸素/再酸素化に応答して心筋細胞から迅速に分泌され、そして心筋細胞上の何らかの細胞表面レセプターに結合することによってアポトーシス誘導性リガンドとして働くことが、本発明により初めて示された。分泌された非ハイプシン化eIF5Aは、分泌されたハイプシン化eIF5Aに対してアポトーシス誘導の活性を有意に減少させたことから、ハイプシン化は、レセプター結合およびレセプター刺激に重要な役割を果たすと思われる。従って、本発明は、eIF5Aが、細胞外空間においてオートクリン形式でアポトーシス誘導性リガンドとして機能する、第3の機序を明らかにした。eIF5Aは通常のタンパク質合成に必須でないことから、eIF5Aは特定のmRNAの翻訳のために必要とされているか、むしろ他の細胞代謝に関与しているのであろうと考えられていた。従って、本発明で明らかにされたアポトーシス誘導性リガンドとしての細胞外機能が、この独特のタンパク質の主な機能であろうと考える。 eIF5Aは種々の細胞タイプの間に遍在しており、かつ豊富に存在することから、このオートクリン機序が、種々の環境刺激によって誘導される酸化ストレス誘導性細胞傷害の発症に重要な役割を担っており、かつアテローム性動脈硬化、老化および癌を含む多くの酸化ストレスによる一般的疾患に関与していることが明らかである。実施例9(DHSの阻害薬を用いてeIF5Aのハイプシン化を阻害することによるラット心筋虚血再灌流障害の抑制効果の検討) eIF5Aは細胞質内においてデオキシハイプシンシンターゼ(DHS)によりデオキシハイプシン化され(デオキシハイプシンeIF5A)、次いでデオキシハイプシンハイドロキシラーゼ(DOHH)によりハイプシン化される(ハイプシン化eIF5A)。さらに酸化ストレス刺激により細胞外に分泌されて分泌型eIF5Aとなり、アポトーシス誘導活性を獲得する。したがってDHSの阻害薬によりeIF5Aのハイプシン化を阻害することによりアポトーシス誘導活性を抑制できると考えられる。そこで、(1)DHSの阻害薬であるGC7(N1−guanyl−1,7−diaminoheptane)を心筋虚血再灌流の5日前から前日まで投与(1mg/Kg、毎日、腹腔注)し、心筋梗塞の抑制効果を検討した。GC7の溶媒を同様に投与した群をコントロールとした。前記のラット心筋虚血再灌流の実験系において、左冠状動脈を30分間クランプすることにより完全閉塞させた後クランプを解除して再灌流を行い、24時間後に屠殺した。心臓を心尖部から心基部に向かって水平に切片化して1% TTC(trimethyltetrazolium chloride)溶液にて染色することにより心筋梗塞の範囲を計測した。図8に示すように、心筋梗塞の範囲はコントロール群で約35.6%(代表例;図9左上パネル)であったのに対し、GC7の投与は約13.4%(代表例;図8左下パネル)と有意(約1/2.7)に抑制した。このことから(心筋)虚血再灌流障害にはeIF5Aのハイプシン化が重要な役割を果たしていることが示された。実施例10(抗eIF5A中和モノクローナル抗体を用いたラット心筋虚血再灌流障害の抑制効果の検討)(抗eIF5A中和モノクローナル抗体の作成) 細胞質内型リコンビナントeIF5AをBALB/cマウスに免疫することによってハイブリドーマを作成し、心筋細胞の再酸素化条件培地(RCM)誘導性(心筋細胞に対する)アポトーシスに対する抑制効果を指標としてスクリーニングすることによって細胞質内型および分泌型eIF5Aを認識する抗体を産生する単一クローンを得た(YSC−1と命名)。抗eIF5A中和モノクローナル抗体(YSC−1)を心筋虚血開始20分後(再灌流10分前)に投与(3mg/Kg、静注)し、心筋梗塞の抑制効果を検討した。マウスIgGを同様に投与した群をコントロールとした。図9に示すように、抗eIF5A中和モノクローナル抗体(YSC−1)の投与は心筋梗塞の範囲をコントロール群(約34.3%)(代表例;図9左上パネル)に比べ約4.2%(代表例;図9左下パネル)と著明(約1/8)に抑制した。以上より、分泌型eIF5Aが虚血再灌流障害を決定的に媒介すること、抗eIF5A中和モノクローナル抗体療法がその予防にきわめて有効であることが示された。実施例11 心筋虚血再灌流障害における分泌型eIF5Aの作用を検討するため、検出抗体としてのビオチン化抗分泌型eIF5A(J−M)抗体とストレプトアビジンセイヨウワサビパーオキシダーゼ(HRP)を用いた直接ELISA系を開発し、ラット心筋虚血再灌流を施したラットにおける血中分泌型eIF5Aレベルを検討した。コントロール(虚血前)と虚血後30分(再灌流前)間で血中分泌型eIF5Aレベルに有意な変化は認められなかった。血中分泌型eIF5Aレベルは、虚血前(4.04±2.22ng/ml(平均±SE):p=0.005)及び虚血後30分(4.00±1.90ng/ml:p=0.007)に比べて、再灌流後5分(64.47±11.18ng/ml)は有意に増加した。また再灌流15分後には徐々に減少した(図10)。 細胞質内型eIF5Aタンパク質よりも0.1低い等電点を有する分泌型eIF5Aタンパク質。 ハイプシン化されているものである請求項1記載の分泌型eIF5Aタンパク質。 ハイプシン化されているものの等電点が、非ハイプシン化分泌型eIF5Aタンパク質よりも0.1高いものである請求項2記載の分泌型eIF5Aタンパク質。 請求項1〜3のいずれか1項記載の分泌型eIF5Aタンパク質を含有する医薬。 アポトーシス誘導薬である請求項4記載の医薬。 アポトーシスが、酸化ストレスに起因するアポトーシスである請求項5記載の医薬。 体液または組織検体の請求項1〜3のいずれかに記載の分泌型eIF5Aタンパク質を測定することを特徴とする酸化ストレスの判定方法。 請求項1〜3のいずれかに記載の分泌型eIF5Aタンパク質の測定が、請求項1〜3のいずれかに記載の分泌型eIF5Aタンパク質に対する抗体を用いる免疫学的測定である請求項7記載の酸化ストレスの判定方法。 請求項1〜3のいずれかに記載の分泌型eIF5Aタンパク質測定試薬を含有する酸化ストレス診断薬。 請求項1〜3のいずれかに記載の分泌型eIF5Aタンパク質に対する抗体を含有する免疫学的測定試薬を含有する請求項9記載の酸化ストレス診断薬。 請求項1〜3のいずれかに記載の分泌型eIF5Aタンパク質に対する中和抗体を含有するアポトーシス抑制薬。 アポトーシスが、酸化ストレスに起因するアポトーシスである請求項11記載のアポトーシス抑制薬。配列表