タイトル: | 特許公報(B2)_イヌ又はヒトの抗原特異的IgEを定量する方法 |
出願番号: | 2010511982 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 33/53 |
増田 健一 石井 保之 安田 伸巨 JP 5334269 特許公報(B2) 20130809 2010511982 20090512 イヌ又はヒトの抗原特異的IgEを定量する方法 独立行政法人理化学研究所 503359821 動物アレルギー検査株式会社 508141391 高島 一 100080791 土井 京子 100125070 鎌田 光宜 100136629 田村 弥栄子 100121212 山本 健二 100122688 村田 美由紀 100117743 増田 健一 石井 保之 安田 伸巨 JP 2008125292 20080512 20131106 G01N 33/53 20060101AFI20131017BHJP JPG01N33/53 NG01N33/53 Q G01N 33/48−33/98 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2006−151880(JP,A) 特開2001−074737(JP,A) 特表2005−538040(JP,A) 特表2001−507792(JP,A) 特開2000−321274(JP,A) 特開2000−266748(JP,A) 特表2005−512091(JP,A) 14 JP2009058831 20090512 WO2009139378 20091119 20 20120222 廣田 健介 本発明は、イヌ又はヒトにおける抗原特異的なイムノグロブリンE(IgE)の定量的測定方法に関し、詳しくは、イヌ又はヒトのアレルギー検査及びアレルギー診断の分野に関するものである。 イヌのアレルギー検査は、抗原に対する陽性もしくは陰性の定性検査又は検査機関で定義したラボラトリーユニットで示すIgEの相対的検査が用いられており、アレルギーの絶対的指標たり得る抗原特異的IgEの定量検査は行われていない。これは、ヒトのアレルギー検査においても同様である。IgEの測定に関する先行技術として、抗原特異的1段階検定(特許文献1)、インビトロアレルギー診断のためのストリップテスト(特許文献2)、食餌性アレルゲン物質の免疫検査法(特許文献3)、ヒトにおけるIgE定性検査の臨床有用性(非特許文献1)、ラボラトリーユニット表示によるイヌIgEの相対的定量化方法(非特許文献2)、ヒトIgE産生ハイブリドーマ作製方法(非特許文献3)、抗原特異的イヌIgEモノクローナル抗体及び作製方法(特許文献4、非特許文献4)、高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)(非特許文献5)等が知られている。かかる先行技術は、IgEの定性的又は相対的定量検査を実現しているが、抗原特異的IgEの絶対的定量方法は実現できていない。抗原特異的IgEの定量を実現するためには、以下に示す問題点を解決しなければならない。(1)表示単位における問題 皮内反応によって抗原Xに対する感作が明らかとなったイヌの血清を、抗原Xに対する特異的IgEを含んでいるとみなすことを前提として、前記血清を「標準血清」として用いることにより標準曲線を作成し、抗原特異的IgE定量検査を構築する方法が、一部の抗原(スギ花粉抗原等)では研究で行われてきた(非特許文献2)。しかし、この方法では、使用する標準血清はそれぞれの実験室で設定するため、抗原特異的IgE定量値はLaboratory Unit/mlと表示することになる。したがって、その表示単位はそれぞれの実験室によってその実験毎に特別に設定したものとなり、実験系や実験室が異なる場合は、測定系が同じであっても使用する標準血清が異なることから、測定値をそのまま比較することができなかった。また、同じ実験室内での抗原特異的IgE測定系であっても、抗原が違った場合にはその抗原の感作血清を用いなければならず、抗原間で表示単位を一致させることは不可能であった。したがって、同じ測定系であっても抗原間で抗原特異的IgE量を比較できていなかった(同じLaboratory Unit/mlでも抗原間で比較できない)。これらは、ヒトについてもほぼ同様である(非特許文献1)。(2)抗原特異的IgE精製における問題 感作イヌの血清から目的の抗原特異的イヌIgEを精製する方法が理論上は考えられる。イヌは総IgE量がもともと多いため、この目的のためには2段階の精製工程が必要となる。まず、IgE吸着カラムで血清中の総IgEを精製し、次に目的抗原吸着カラムで抗原特異的IgEを精製する。しかし、この方法では総IgEを精製することは可能であるが、抗原特異的IgEの精製はIgEの抗原結合力が強いことから、カラムに吸着した抗原特異的IgEをうまく溶出して取り出すことが可能かどうかが大きな課題となる。そのため、総IgEを精製した例はあるが(特許文献4)、実際にイヌやヒトの血清を用いて、上記方法で抗原特異的IgEを精製した実施例はない。(3)抗原特異的イヌIgEを産生するハイブリドーマの作製における問題 抗原特異的イヌIgE産生ハイブリドーマ細胞株を樹立することができれば、血清から抗原特異的イヌIgEを精製する必要はなくなる。そのためには、イヌの場合は、抗原感作イヌを作製し、そのリンパ節もしくは脾臓の細胞、又は目的抗原で刺激培養した末梢血リンパ球を用い、それらとマウスのミエローマ細胞を融合させなければならない。しかしながら、この方法によってうまく融合する確率は非常に少なく、これまでに1つのクローン(線虫抗原に対するイヌIgE)しか作製されていない(非特許文献4)。しかも、たとえ細胞融合に成功しても、目的のクローンを選別して細胞株として樹立する期間は1年間以上を要し、何十種類の抗原を考えた場合には実用的ではない。ヒトの場合は、倫理上、かかるハイブリドーマの作製は困難である。(4)作製費用における問題 (1)で使用する標準血清を実験イヌで作製した場合、その費用がかかることが大きな問題となる。例えば、イヌ1頭購入費10〜20万円とし、感作血清作成期間を2ヶ月として、その飼育費は3万円/イヌ/1ヶ月と算出した場合、標準血清作成には1抗原あたり16〜26万円が最低必要となる。したがって、50抗原の抗原特異的IgE定量検査システムを確立する場合、800万〜1300万円のコストがかかることになる。コストを下げるために1頭のイヌに数種類の抗原感作を行うことも考えられるが、抗原間の交差性を検出してしまう課題を克服することはできない。また、感作イヌ1頭からは100〜200mLの大量の血清が1度に取れるが(毎日測定して300年分に相当)、検査を実施するためにはそれほどの量は必要ない。むしろ血清を長期保管するための冷凍庫スペース等を考えると、感作イヌを作製することは、マウスに比べれば、コストパフォーマンスが非常に悪いこととなる。ヒトの場合は、標準血清を作製することは倫理上不可能である。特表平8-511621号公報特表2002-514306号公報特開平11-142403号公報特開2006-151880号公報Clin Exp Allergy 21, 127-31 (1991)Vet Immunol Immunopathol. 83, 69-77 (2001)J. Immunol Methods 233, 33-40 (2000)Immunology 85, 429-34 (1995)Vet Immunol Immunopathol. 78, 349-55 (2001) 本発明が解決しようとする課題は、イヌ及びヒトの抗原特異的IgEの簡便かつ有効な定量手段の提供である。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、マウスIgEを認識するラットモノクローナル抗体の中から、イヌIgEも認識する抗体を見出し、かかる抗体を用いて、抗原特異的IgEの総量を把握した抗原感作マウスの血清で標準曲線を作成することによって、イヌの抗原特異的IgEを定量できることを実証し、さらに、ヒトの抗原特異的IgEも同様に定量可能であることを示し、本発明を完成させるに至った。 即ち、本発明は以下に示すとおりである。[1] 下記の工程(A)〜(D)を含む、抗原特異的イヌIgEを定量する方法:(A)被験イヌの生体試料と抗原とを接触させ、当該試料中のIgEと当該抗原とを結合させる工程、(B)イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質を用いて、工程(A)の抗原で感作した当該実験動物の標準試料中のIgEを測定し、標準曲線を作成する工程、(C)工程(A)で形成された結合体を、工程(B)で使用したイヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質を用いて検出する工程、及び(D)工程(C)で検出された結合体量と工程(B)で作成した標準曲線とを用いて被験イヌの生体試料中のIgE量を定量する工程。[2] 下記の工程(A)〜(E)を含む、アレルギー疾患の診断方法:(A)被験イヌの生体試料と抗原とを接触させ、当該試料中のIgEと当該抗原とを結合させる工程、(B)イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質を用いて、工程(A)の抗原で感作した当該実験動物の標準試料中のIgEを測定し、標準曲線を作成する工程、(C)工程(A)で形成された結合体を、工程(B)で使用したイヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質を用いて検出する工程、(D)工程(C)で検出された結合体量と工程(B)で作成した標準曲線とを用いて被験イヌの生体試料中のIgE量を定量する工程、及び(E)工程(D)の定量結果に基づいて、アレルギー疾患の有無又は程度を判定する工程。[3] 工程(A)、(B)、(C)及び(D)が抗原毎に同時に又は別々に繰り返される、[1]又は[2]に記載の方法。[4] 工程(B)が工程(A)、(C)及び(D)と同時に又は別々に行われる、[1]又は[2]に記載の方法。[5] アレルギー疾患が花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、ワクチン接種後アレルギー、アナフィラキシー、食物アレルギー、高IgE血症を引き起こす疾患、及びIgEが病態に関与していると推測される疾患からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[2]〜[4]のいずれかに記載の方法。[6] 被験イヌの生体試料が血液、血清、血漿、鼻汁、涙液、唾液、尿又は糞便である、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。[7] 前記抗原が植物の花粉、葉茎の乾燥物又はラテックス、食物の抽出物、カビの抽出物及び節足動物の虫体抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。[8] 前記抗原がハンノキ、ゴムノキ、ギョウギシバ、シラカンバ、ヒナギク、タンポポ、アキノキリンソウ、カモガヤ、ブタクサ、ハルガヤ、オオアワガエリ、スギ及びヒノキの花粉、葉茎の乾燥物又はラテックス;小麦、七面鳥、大豆、鮭、ライ麦、米、ジャガイモ、豚肉、牛乳、羊肉、卵黄、卵白、トウモロコシ、果物、タラ、鶏肉、ナマズ、牛肉、シシャモ、カニ、エビ及びホヤの食物抽出物;アルテリナリア属、ペニシリウム属及びクラドスポリウムのカビ抽出物;ならびにダニ、ノミ、蚊、ゴキブリ及びガの虫体抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。[9] 前記物質がイヌのIgE及びイヌを除く実験動物のIgEの両方を認識する抗体である[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。[10] 前記実験動物がマウス、ラット、モルモット、ハムスター及びウサギからなる群より選ばれる動物である[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。[11] イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質、抗原及び当該抗原で感作した当該実験動物の標準試料を別々の容器に含む、抗原特異的イヌIgEの定量キット。[12] イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質、抗原、当該抗原で感作した当該実験動物の標準試料及びアレルギー疾患に罹患していない当該実験動物の対照試料を別々の容器に含む、イヌのアレルギー疾患の診断キット。[13] アレルギー疾患が花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、ワクチン接種後アレルギー、アナフィラキシー、食物アレルギー、高IgE血症を引き起こす疾患及びIgEが病態に関与していると推測される疾患からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[12]に記載のキット。[14] 前記抗原が植物の花粉、葉茎の乾燥物又はラテックス、食物の抽出物、カビの抽出物及び節足動物の虫体抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[11]〜[13]のいずれかに記載のキット。[15] 前記物質がイヌのIgE及びイヌを除く実験動物のIgEの両方を認識する抗体である[11]〜[14]のいずれかに記載のキット。[16] 前記実験動物がマウス、ラット、モルモット、ハムスター及びウサギからなる群より選ばれる動物である[11]〜[15]のいずれかに記載のキット。[17] 下記の工程(A)〜(D)を含む、抗原特異的ヒトIgEを定量する方法:(A)被験者の生体試料と抗原とを接触させ、当該試料中のIgEと当該抗原とを結合させる工程、(B)ヒトのIgEを認識し、かつ実験動物のIgEを認識する物質を用いて、工程(A)の抗原で感作した当該実験動物の標準試料中のIgEを測定し、標準曲線を作成する工程、(C)工程(A)で形成された結合体を、工程(B)で使用したヒトのIgEを認識し、かつ実験動物のIgEを認識する物質を用いて検出する工程、及び(D)工程(C)で検出された結合体量と工程(B)で作成した標準曲線とを用いて被験者の生体試料中のIgE量を定量する工程。[18] 工程(A)、(B)、(C)及び(D)が抗原毎に同時に又は別々に繰り返される、[17]に記載の方法。[19] 工程(B)が工程(A)、(C)及び(D)と同時に又は別々に行われる、[17]に記載の方法。[20] 被験者の生体試料が血液、血清、血漿、鼻汁、涙液、唾液、尿又は糞便である、[17]〜[19]のいずれかに記載の方法。[21] 前記抗原が植物の花粉、葉茎の乾燥物又はラテックス、食物の抽出物、カビの抽出物及び節足動物の虫体抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[17]〜[20]のいずれかに記載の方法。[22] 前記抗原がハンノキ、ゴムノキ、ギョウギシバ、シラカンバ、ヒナギク、タンポポ、アキノキリンソウ、カモガヤ、ブタクサ、ハルガヤ、オオアワガエリ、スギ及びヒノキの花粉、葉茎の乾燥物又はラテックス;小麦、七面鳥、大豆、鮭、ライ麦、米、ジャガイモ、豚肉、牛乳、羊肉、卵黄、卵白、トウモロコシ、果物、タラ、鶏肉、ナマズ、牛肉、シシャモ、カニ、エビ及びホヤの食物抽出物;アルテリナリア属、ペニシリウム属及びクラドスポリウムのカビ抽出物;ならびにダニ、ノミ、蚊、ゴキブリ及びガの虫体抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[17]〜[20]のいずれかに記載の方法。[23] 前記物質がヒトのIgE及び実験動物のIgEの両方を認識する抗体である[17]〜[22]のいずれかに記載の方法。[24] 前記実験動物がマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ及びサルからなる群より選ばれる動物である[17]〜[23]のいずれかに記載の方法。[25] ヒトのIgEを認識し、かつ実験動物のIgEを認識する物質、抗原及び当該抗原で感作した当該実験動物の標準試料を別々の容器に含む、抗原特異的ヒトIgEの定量キット。[26] ヒトのIgEを認識し、かつ実験動物のIgEを認識する物質を含有してなるヒトのアレルギー疾患の診断薬。[27] ヒトのIgEを認識し、かつ実験動物のIgEを認識する物質、抗原、当該抗原で感作した当該実験動物の標準試料及びアレルギー疾患に罹患していない当該実験動物の対照試料を別々の容器に含む、ヒトのアレルギー疾患の診断キット。[28] アレルギー疾患が花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、ワクチン接種後アレルギー、アナフィラキシー、食物アレルギー、高IgE血症を引き起こす疾患及びIgEが病態に関与していると推測される疾患からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[26]に記載の診断薬又は[27]に記載のキット。[29] 前記抗原が植物の花粉、葉茎の乾燥物又はラテックス、食物の抽出物、カビの抽出物及び節足動物の虫体抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[25]又は[27]に記載のキット。[30] 前記物質がヒトのIgE及び実験動物のIgEの両方を認識する抗体である[25]若しくは[27]に記載のキット又は[26]に記載の診断薬。[31] 前記実験動物がマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ及びサルからなる群より選ばれる動物である[25]若しくは[27]に記載のキット又は[26]に記載の診断薬。 本発明の定量方法によれば、イヌ又はヒトの抗原特異的IgE量を正確に把握することができ、獣医学及び臨床医学の分野において、アレルギーの季節性の追跡や治療効果のモニタリングが可能となる。本発明の定量方法、診断方法又は診断薬によれば、異なった抗原間で当該抗原特異的IgE量を比較することができるため、アレルギー疾患に罹患した個々のイヌ又はヒトにおいて、どの抗原が現在問題となっているかを判定することができる。また、本発明のキットによれば、本発明の定量方法及び診断方法を簡便かつ迅速に実施することができる。ラット抗イヌIgE抗体(クローン)がマウスIgEを認識することをELISA法を用いて調べたグラフである。縦軸、横軸はそれぞれ吸光度、抗体標品の希釈倍率を示す。ラット抗イヌIgE抗体(クローン)がイヌIgEを認識することをELISA法を用いて確認したグラフである。縦軸、横軸はそれぞれ吸光度、抗体標品の希釈倍率を示す。精製途中及び精製後の、マウス及びイヌのIgEを交差認識する抗体の電気泳動の写真である。M、マーカー。1、DEAEセルロースクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー後フロースルー液。2、プロテインGカラム後フロースルー液(プロテインGで目的抗体を吸着して除く)。3、プロテインGカラムから目的抗体を溶出した液(精製ラットIgG抗体)。Cry j 1感作マウス血清を用いて作成した標準曲線によるスギ花粉感作イヌ血清中のスギ花粉特異的IgE濃度の測定を示す。Cry j 1感作マウス血清を用いて標準曲線を作成し、それに基づいてスギ花粉で感作したイヌの血清中のスギ花粉特異的IgEの絶対量を測定した。縦軸、横軸はそれぞれCry j 1特異的IgE濃度、蛍光強度を示す。ノミ感作マウス血清を用いて作成した標準曲線による症例イヌ血清中のノミ抗原特異的IgE濃度の測定を示す。縦軸、横軸はそれぞれ抗原特異的IgE濃度、ELISA法によって得られた蛍光強度を示す。牛肉感作マウス血清を用いて作成した標準曲線による症例イヌ血清中の牛肉抗原特異的IgE濃度の測定を示す。縦軸、横軸はそれぞれ抗原特異的IgE濃度、ELISA法によって得られた蛍光強度を示す。アスペルギルス感作マウス血清を用いて作成した標準曲線による症例イヌ血清中のアスペルギルス抗原特異的IgE濃度の測定を示す。縦軸、横軸はそれぞれ抗原特異的IgE濃度、ELISA法によって得られた蛍光強度を示す。 本発明において「抗原」とは、少なくともイヌ又はヒトに対して免疫原性を有する物質をいい、好ましくはイヌ及びイヌを除く実験動物、又はヒト及び実験動物に対して免疫原性を有する物質をいう。抗原は、タンパク質又は糖タンパク質であることが多いが、これに限定されるものではない。抗原の例としては、ハンノキ、ゴムノキ、ギョウギシバ、シラカンバ、ヒナギク、タンポポ、アキノキリンソウ、カモガヤ、ブタクサ、ハルガヤ、オオアワガエリ、スギ及びヒノキの花粉、葉茎の乾燥物又はラテックス;小麦、七面鳥、大豆、鮭、ライ麦、米、ジャガイモ、豚肉、牛乳、羊肉、卵黄、卵白、トウモロコシ、果物、タラ、鶏肉、ナマズ、牛肉、シシャモ、カニ、エビ及びホヤの食物抽出物;アルテリナリア属、ペニシリウム属及びクラドスポリウムのカビ抽出物;ならびにダニ、ノミ、蚊、ゴキブリ及びガの虫体抽出物等があげられる。これらは、現在アレルギーを引き起こす原因物質として知られている抗原であるが、本発明においては、将来アレルギー原因物質として見出される抗原も使用することができる。 前記抗原は、市販品をそのまま使用してもよいし、常法により植物又は動物由来の物質から抽出、精製して用いてもよい。 本発明において「IgE」とは、免疫グロブリンの1種であり、生体内に侵入してきた各種抗原の情報を受容したヘルパーT細胞等のはたらきかけによってB細胞が産生し、肥満細胞や好塩基球の細胞表面のIgE受容体と結合する能力を有するタンパク質分子である。IgEは当該各種抗原と特異的に結合する性質を有し、それによって肥満細胞、好塩基球等から脱顆粒を惹起し、ヒスタミン遊離等を引き起こす性質を有するタンパク質分子である。 本発明において「生体試料」とは、生体から単離可能であってIgEが存在する可能性がある生体由来の成分又は組織であれば特に限定されるものではなく、生体の組織の一部(気管支粘膜、鼻粘膜、胃粘膜、腸粘膜、口腔粘膜等)、体液(血液、血清、血漿、鼻汁、涙液、唾液、尿、糞便、痰、胃液等)等があげられる。生体試料は、被験イヌ又は被験者から常法に従って採取したそのものを、或いは所望により採取物を常法に従って前処理したものを用いることができる。 本発明において「感作した」実験動物とは、特定の抗原に接触させて当該抗原を認識するIgEを産生するようになった動物をいう。抗原との接触は、吸引、摂取、生体内注入(皮下投与等)等があげられる。感作した実験動物は、抗原との接触によって、血液中の当該抗原特異的IgE量と総IgE量が等しくなったとみなすことのできる場合もあるが、当該抗原特異的IgE量が総IgE量よりも少ない場合もある。本発明においては、事前に「感作した」実験動物中の抗原特異的IgE量と総IgE量とを測定することによって、いずれの実験動物由来の生体試料であっても標準試料として用いることができる。 本発明において「実験動物」とは、実験用に供せられる動物であって、イヌIgE定量の場合は測定対象のイヌを除く動物をいう。実験動物は、好ましくは遺伝的背景が明確であってSPF条件下に飼育されている小動物であり、具体的には、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等のゲッ歯動物があげられる。また、実験動物は、その生体試料中の総IgE量を別途測定する手段が既にあるものがより好ましい。ヒトIgE定量の場合は、「実験動物」は、ヒトを除く動物であってIgE産生可能な動物であれば特に限定されることはなく、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、サル等が挙げられる。ヒトを除く動物の中でも、遺伝的背景が明確であってSPF条件下に飼育されている小動物が好ましく、その生体試料中の総IgE量を別途測定する手段が既にあるものがより好ましい。 本発明において「実験動物の標準試料」とは、感作した実験動物由来の生体試料であって本発明の方法における標準曲線を作成するための試料をいう。標準試料は、IgEの測定に通常用いられる血液、血清、血漿が好ましい。ある抗原に対するモノクローナルIgE(たとえば、マウス抗オブアルブミンIgE等)が存在する場合は、標準試料として使用できる。 本発明において「標準曲線」とは、抗原特異的IgEの測定方法に応じて当該IgEの濃度を把握するために近似式で決定される曲線をいう。標準曲線は、前記標準試料を段階希釈した試料濃度を横軸(縦軸)とし、標準試料中の抗原結合IgEの量を任意の単位で示した縦軸(横軸)として、測定値をプロットして各プロットの位置関係を曲線で連結したものである。標準曲線は、両軸を対数表示することにより、近似的に直線として表すことができる。本発明においては、標準曲線は、原則として抗原毎に作成されるが、交差性のある抗原間では共通の標準曲線を作成して、複数の抗原特異的IgEの濃度決定に用いてもよい。 本発明において「イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質」とは、イヌIgEとイヌを除く実験動物のIgEとを交差認識可能な性質を有する1つの物質をいう。「ヒトのIgEを認識し、かつ実験動物のIgEを認識する物質」とは、ヒトIgEと実験動物のIgEとを交差認識可能な性質を有する1つの物質をいう。かかる物質としては、イヌIgEとイヌを除く実験動物のIgEの両方を認識する抗体(以下、「抗イヌIgE抗体」と省略する場合がある)、ヒトIgEと実験動物のIgEの両方を認識する抗体(以下、「抗ヒトIgE抗体」と省略する場合がある)、IgE結合部位を有する高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)、核酸(例、アプタマー)等があげられるが、IgEに対する特異性が高く、イヌ(ヒト)IgEと実験動物のIgEとを同等に認識する性質を有するものが望ましいことから、前記抗イヌIgE抗体及び抗ヒトIgE抗体が好ましい。かかる物質は、本発明において診断薬として有用である。 前記抗体は、IgGが好ましい。抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の他、キメラ抗体、単鎖抗体又はFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメント等のように抗原結合性を有する上記IgGの一部が包含される。 本発明の方法で用いる抗イヌ(ヒト)IgE抗体は、イヌ(ヒト)及び少なくとも1種類の実験動物に由来するIgEを交差認識し、他のイムノグロブリンを認識しなければその形態に特に制限はなく、IgEを免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。ただし、高精度のIgE定量のためには、抗原の種類に関係なく、各抗原特異的IgEに対して均一で、安定した結合部位を有するモノクローナル抗体が好ましい。さらに、当該モノクローナル抗体をコードする遺伝子に基づいて作製されたキメラ抗体、単鎖抗体又はFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントであってもよい。 本発明の方法で用いる抗イヌ(ヒト)IgE抗体は、交差認識する実験動物としてマウスを選択した場合、マウス以外のラット、モルモット、ハムスター又はウサギで作製することが好ましい。同様に、前記抗体は、交差認識する実験動物としてラットを選択した場合、ラット以外のマウス、モルモット、ハムスター又はウサギで作製することが好ましい。 前記抗IgEモノクローナル抗体は、交差認識する実験動物としてマウスを選択した場合、例えば、次のようにして得ることができる。まず、精製した総イヌ(ヒト)IgEで免疫したラットから脾臓を摘出して脾臓細胞を単離する。単離された脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させてハイブリドーマ細胞を調製し、ハイブリドーマの培養上清を用いて、イヌ(ヒト)IgEを認識する複数のクローンをスクリーニングする。次に、スクリーニングしたハイブリドーマをさらにマウスIgEを交差認識するか否かについて再びスクリーニングし、イヌ(ヒト)及びラットIgEを交差認識する抗体を産生するハイブリドーマクローンを選択する。最後に、ハイブリドーマをラットの腹腔内で増殖させ、腹水を採取してクロマトグラフィー等により精製する。 抗体の作製において免疫原として使用されるIgEは、IgEの力価が高い血液等を採取し、クロマトグラフ法によって精製することにより、得ることができる。また、GenBank等により提供される遺伝子の配列情報に基づいて、オリゴペプチドを合成するか、又はDNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養及び培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、或いは文献記載の方法(Molecular Cloning, T. Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))等に準じて行うことができる。 前記FcεRIαは、例えば、Vet ImmunolImmunopathol. 78, 349-55 (2001)に記載の方法に準じて得ることができる。前記アプタマーは、例えば、既報(例えば、Ellington et al., (1990) Nature, 346, 818-822; Tuerk et al., (1990) Science, 249, 505-510)に記載の方法に準じて得ることができる。 本発明において「アレルギー疾患」とは、一定レベルを超えるIgEによって発症する疾患をいい、例えば、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、ワクチン接種後アレルギー、アナフィラキシー、食物アレルギー、高IgE血症を引き起こす疾患及びIgEが病態に関与していると推測される疾患等があげられる。アレルギー疾患に罹患しているか否かの判定は、従来は抗原を皮内に接種して皮内反応が陽性になることを指標にしていたが、本願においても皮内反応の陽性又は陰性によって確認することができる。 本発明の抗原特異的イヌIgEを定量する方法は、下記の工程(A)、(B)、(C)及び(D)を含むことを特徴とする。本発明の抗原特異的ヒトIgEを定量する方法は、「被験イヌの生体試料」の代わりに「ヒトの生体試料」とし、「イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質」の代わりに「ヒトのIgEを認識し、かつ実験動物のIgEを認識する物質」を用いることを除けば、抗原特異的イヌIgEの定量方法と同様の工程を含む。以下、イヌを例にして各工程を説明するが、当業者であれば、生体試料を「ヒトの生体試料」とし、「ヒトのIgEを認識し、かつ実験動物のIgEを認識する物質」を用いれば抗原特異的ヒトIgEも同様に定量できることを理解できるであろう。(A)被験イヌの生体試料と抗原とを接触させ、当該試料中のIgEと当該抗原とを結合させる工程。 工程(A)において、上記生体試料中のIgEと抗原との接触は、双方が溶媒中に溶解した状態で行ってもよく、抗原が固相化された状態で行ってもよいが、前者においては、IgEが抗原の全表面と反応できる反面、IgEと抗原との結合が完了するまでに長時間を要することから、固相化された抗原と生体試料との接触が好ましい。 抗原の固相化は、測定に用いる測定容器等の当該技術分野で一般に用いられる固相の表面に自体公知の方法により結合させることにより行うことができる。固相への結合は通常、抗原をクエン酸緩衝液等の適当な緩衝液に溶解し、固相表面と抗原溶液を適当な時間(1〜2日)接触させることにより行うことができる。抗原の固相化に適した固相担体の例としては、マイクロプレートウェル、プラスチックビーズ、磁気ビーズ、クロマトグラフィー用担体(例、SepharoseTM)等があげられる。固相化が終了した固相担体はその後抗原液を捨て、乾燥させた状態で冷蔵あるいは常温で保存することも可能である。 さらに、非特異的吸着や非特異的反応を抑制するためにフィッシュゼラチン、牛血清アルブミン(BSA)又は牛ミルクタンパク質等のリン酸緩衝溶液を固相と接触させ、抗原によってコートされなかった固相表面部分を当該フィッシュゼラチン、BSA又は牛ミルクタンパク質等でブロッキングすることが一般に行なわれる。 被験イヌの生体試料は、生体から単離した試料そのままの状態で抗原と接触させてもよく、水等の溶媒で適宜希釈して抗原と接触させてもよい。接触は、通常、測定手段に応じた反応容器内で行われる。生体試料として血液、血清、血漿を用いた場合は、IgE以外の妨害成分(IgG等)の影響を最小にするため、希釈して用いることが好ましい。希釈の度合いは、IgEと抗原との結合体の測定感度に応じて適宜設定することができる。ELISA法で生体試料として血液、血清、血漿を用いた場合の採取量は、通常、0.5〜2mlで十分であり、かかる量で40〜50抗原の定量が可能である。 被験イヌの生体試料と抗原との結合は、通常、0〜40℃、好ましくは4〜30℃で、0.5分〜24時間、好ましくは1分〜1時間静置しておくことで完了する。また、結合工程中に攪拌操作を適宜行ってもよい。 被験イヌの生体試料と抗原との結合が完了した後、反応系全体を適切な緩衝液等によって洗浄することで当該抗原特異的IgE以外の生体試料由来の物質を反応系から除去することができる。(B)イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質を用いて、工程(A)の抗原で感作した当該実験動物の標準試料中のIgEを測定し、標準曲線を作成する工程。 工程(B)は、イヌの抗原特異的IgEを定量するための検量線となる標準曲線を作成する工程である。本工程は、工程(A)と同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。別々に行う場合は、工程(A)の前でも後でもよく、工程(A)と工程(C)の終了後でもよい。 工程(B)は、1つの抗原毎に行うことが原則であり、抗原の数と同数回繰り返すが、抗原間で交差性を有し標準曲線を共有できる抗原同士であれば1回の工程で終了してもよい。交差性を有する抗原の組み合わせとしては、分類学上の同じ門もしくは綱もしくは目(モク)に属する動物種どうし、又は植物種どうしの組合せを含み、例えば、牛肉と羊肉、牛肉と豚肉、スギ花粉とヒノキ花粉、ダニとエビ、ラテックスと果物等があげられる。 工程(B)及び後述する工程(C)で用いられる測定方法としては、具体的には、免疫測定、例えば、酵素結合免疫吸着法(ELISA法)、イムノクロマト法、放射免疫測定法(RIA法)、蛍光免疫測定法(FIA法)、ルミネッセンス免疫測定法、エバネッセンス波分析法等があげられる。これらの中でも、ELISA法が操作の容易性の観点からして好適である。 1実施形態として、工程(B)におけるIgEの測定は、ELISA法を応用して行う。標準曲線を作成するための実験動物の標準試料は、抗原を感作してIgEの抗体価が上昇した実験動物由来の生体試料である。実験動物の感作は常法により行う。標準試料は、血清又は血漿が好ましい。標準試料を緩衝液等で希釈した試料を固相化した抗原に接触させ、抗原と抗原特異的IgEとの結合体を形成させる。標準試料と抗原との結合は、工程(A)と同様に行い、通常、0〜40℃、好ましくは4〜30℃で、0.5分〜24時間、好ましくは1分〜1時間静置しておくことで完了する。また、結合反応中に攪拌操作を適宜行ってもよい。 次いで、酵素や蛍光色素等で標識した1次抗体として、前述した抗イヌIgE抗体を用いる。抗イヌIgE抗体は実験動物由来のIgEも交差認識するので、当該抗体を実験動物由来のIgEと抗原との結合体と反応させ、結合体の検出を行う。1次抗体が酵素や蛍光色素等で標識されていない場合には、その検出のための2次抗体として、酵素あるいは蛍光色素で標識した標識抗体(抗イヌIgE抗体に結合する抗体)を用い、1次抗体に結合させる。次いで反応系全体を洗浄し、当該酵素とその基質とを反応させる。1次抗体と結合体との結合及び1次抗体と2次抗体との結合は、通常、0〜40℃、好ましくは4〜30℃で、0.5分〜2時間、好ましくは1分〜2時間静置しておくことで完了する。また、結合反応中に攪拌操作を適宜行ってもよい。 ELISA法を利用した工程(B)におけるIgEの測定は、酵素と基質の組み合わせに応じて蛍光シグナル又は発色シグナルを分光光度計又は(マイクロ)プレートリーダー等で検出することにより行う。なお、抗原感作していない対照の実験動物由来の生体試料も同様に測定し、前記シグナルからバックグランドとして差し引く。 前記抗体を標識する酵素としては、酵素反応によって蛍光物質を生成することを目的とする場合は、例えば、β-D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルクロニダーゼ、β-D-グルコシダーゼ等が挙げられる。発色物質を生成することを目的とする場合は、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ等が挙げられる。用いる基質剤としては、例えば、酵素としてβ-D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルクロニダーゼ又はβ-D-グルコシダーゼを選択した場合においては、それぞれ4-メチルウンベリフェロン(4-MU)等、7-アミド-4-メチルクマリン等又は4-トリフルオロ-メチルウンベリフェロン(4-TMU)等が使用される。また、酵素としてペルオキシダーゼを選択した場合においては、テトラメチルベンジジン(TMB)、o-フェニレンジアミン(OPD)等が使用され、アルカリホスファターゼを選択した場合においては、ジアミノベンジジン、o-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール、p-ニトロフェニルホスフェート(PNPP)、p-ニトロアニリン(PNA)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル、6-クロロ-3-インドリル、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル-マゼンタ、6-クロロ-3-インドキシル、N-メチルインドキシル等が使用される。また、反応停止液、基質溶解液についても、選択した酵素に応じて、従来公知のものを特に制限なく適宜使用することができる。酵素と基質との反応条件は、選択した組合せに応じて適宜設定することができる。 標準曲線は、前記標準試料を段階希釈した試料濃度を横軸(縦軸)とし、標準試料中の抗原結合IgEのシグナルを任意の単位で示した縦軸(横軸)として、測定値をプロットして近似式で表す。標準曲線は、両軸を対数表示することにより、近似的に直線として表すことができる。 一方、標準試料として用いた実験動物の試料中の総IgEの濃度を別途測定する。マウス等の実験動物の総IgEの測定キットは市販されており、かかる市販品を用いて同一希釈系列のシグナルに相当するIgEの濃度が決定される。抗原で感作された実験動物における大多数の抗原特異的IgE濃度は総IgE濃度に等しいので、このような標準曲線と総IgEの濃度を決定することにより、抗原特異的IgEを定量するための標準曲線を作成することができる。 抗原で感作された実験動物の血清中における抗原特異的IgE量と総IgE量とが等しくない場合は、当該抗原特異的IgEの標準曲線(1)を作成した後、以下のようにして抗原特異的IgEの濃度を決定することができる。入手可能な特定の抗原に対するマウスのモノクローナルIgE(例えば、スギ花粉抗原Cryj1に対するマウスのモノクローナルIgEやオブアルブミンに対するマウスのモノクローナルIgE)を用いて同じ測定系で標準曲線(2)を別途作成し、検出限界値を算出しておく。仮に標準曲線(2)における検出限界値が10pg/mlであったとすると、標準曲線(1)のシグナルがゼロ又はマイナスになる点を検出限界とし、標準曲線(1)の検出限界点の抗原特異的IgE濃度を10pg/mlとみなすことができる。このようにして、各抗原に対する特異的IgEの標準曲線が準備される。 マウスのモノクローナルIgEを用いない場合においても、標準曲線(1)と総IgE量測定用の標準曲線を直線化したとき、それらが平行に推移するときには、標準曲線(1)のシグナルがゼロ又はマイナスになる点をIgE分子が1分子であるとし、その時の総IgE量を抗原非特異的IgE量とし、その分子数を算出する(例えば、このときの抗原非特異的IgEの分子数が1000とする)。このことにより、感作血清に含まれる抗原特異的IgEと抗原非特異的IgEの相対比を計算することが可能であり(例えば1:1000)、総IgE量から感作血清中の抗原特異的IgE量を推定することができる。標準曲線(1)と総IgE量測定用の標準曲線を直線化したときにそれらが平行に推移しない場合には、先の相対比にさらに2つの直線の傾きの比を乗じた比率を用いることにより、同様に総IgE量から抗原特異的IgE量を推定することができる。(C)工程(A)で形成された結合体を、工程(B)で使用したイヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質を用いて検出する工程。 1実施形態として、工程(C)における結合体の検出は、ELISAを応用して行う。1次抗体として前述した抗イヌIgE抗体を用いる。工程(A)で形成された結合体を検出するための2次抗体として、酵素で標識した標識抗体(抗イヌIgE抗体に結合する抗体)を用い、1次抗体に結合させる。次いで反応系全体を洗浄し、当該酵素とその基質とを反応させる。以下、工程(B)と同様にして、工程(A)で形成された結合体の量に相当する蛍光シグナル又は発色シグナルを分光光度計又は(マイクロ)プレートリーダー等で検出する。 IgE量の測定においては、測定系内の物質による非特異的結合等に由来するシグナルの影響を除外するために、無感作イヌの生体試料を用いた対照標品を用意し、バックグラウンド値を測定して、被験イヌの測定値から差し引いておくことが望ましい。(D)工程(C)で検出された結合体量と工程(B)で作成した標準曲線とを用いて被験イヌの生体試料中のIgE量を定量する工程。 工程(C)で検出された結合体量は、ELISA法では蛍光単位又は吸光度のシグナルとして検出され、得られたシグナルを工程(B)で作成した標準曲線に当てはめ、被験イヌの抗原特異的IgEの濃度を求めることができる。被験イヌの生体試料中の抗原特異的IgEの濃度は、標準曲線より求めた濃度に希釈倍率を乗じることによって定量することができる。 本発明の定量方法は、抗原特異的IgEの濃度を絶対量で表すことができるので、検査機関や測定日毎に大きく変動するものではないことから、抗原特異的IgEのモニタリングに好適である。したがって、アレルギーの本質を根本的に追跡することができる。また、本発明の定量方法は、抗原特異的IgEの検出試薬である抗イヌ(ヒト)IgE抗体を作製した実験動物(マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等)を軸として、イヌとヒトとの間のIgEの定量的比較が可能であり、創薬研究のための測定方法としても役立つ。 また、抗原特異的イヌIgE定量の別の好ましい実施形態には、固相化された前記イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質及び標識物質により標識された抗原を用いる方法も含まれる。 本発明の定量方法は、工程(A)、(B)、(C)及び(D)が抗原毎に同時に又は別々に繰り返されてもよい。本発明の定量方法は、工程(B)が工程(A)、(C)及び(D)と同時に又は別々に行われてもよい。すなわち、工程(B)は標準曲線を作成するための工程であり、当該工程は対象とする抗原毎に作成することもできるし、複数の抗原に共通する1つの標準曲線として作成し、工程(D)に供せられてもよい。 本発明のアレルギー疾患の診断方法は、下記の工程(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)を含む方法によって実施することができる:(A)被験イヌの生体試料と抗原とを接触させ、当該試料中のIgEと当該抗原とを結合させる工程、(B)イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質を用いて、工程(A)の抗原で感作した当該実験動物の標準試料中のIgEを測定し、標準曲線を作成する工程、(C)工程(A)で形成された結合体を、工程(B)で使用したイヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質を用いて検出する工程、(D)工程(C)で検出された結合体量と工程(B)で作成した標準曲線とを用いて被験イヌの生体試料中のIgE量を定量する工程、及び(E)工程(D)の定量結果に基づいて、アレルギー疾患の有無又は程度を判定する工程。 本発明の診断方法における工程(A)〜(D)は、前述した定量方法における工程(A)〜(D)と同様である。本発明の診断方法は、工程(A)〜(D)に加えて、工程(E)を含む。 実験的にイヌ(例、ビーグル犬)を抗原感作した場合、当該抗原に対する皮内反応が陽性になるときの抗原特異的IgE濃度が疾患の有無(この場合は「発症の有無」の意味)を判断する値になりうる。前記濃度未満の値であれば、「アレルギー性疾患予備軍」(すなわち、当該抗原に対するIgEが低値で検出されることから、当該抗原に対して感作されているが、発症までにはIgEの蓄積が必要な段階であると判断することができ、これからアレルギーが発症する可能性の高いもの)と定義することができる。 一方、IgEが検出されているが症状がない場合には、「アトピー」と判断することができる。「アレルギー疾患の有無を判定する」という概念を「アトピーの有無を判断する」とすると、IgEを検出可能な程度の一定値で検出すればよい。 ある程度の件数の症例について、本発明の診断方法の工程(A)〜(D)によって抗原特異的IgE量を測定し、かつ当該抗原に対する皮内反応も試験することにより、経験的に、皮内反応を陽性にする抗原特異的IgE量のレベルを決定することができる。 よって、本発明のアレルギー疾患の診断方法においては、工程(E)において、アレルギー疾患の有無を、前記レベル以上のIgEの測定値が算定されることによって、またアレルギー疾患の程度を、IgEの測定値の大小を比較することによって判定することができる。 また、本発明の診断方法により検出限界を上回る抗原特異的IgE量を検出した場合は、その被験イヌは、症状の有無にかかわらず、当該抗原を原因とするアトピー性疾患に罹患していると診断することもできる。 本発明のアレルギー疾患の診断方法においては、工程(A)〜(D)を複数種の抗原について実施し、得られた抗原特異的IgEの濃度に基づいて、どの抗原に対するアレルギー疾患が深刻かを総合的に判定することができる。判定結果に基づいて、深刻なアレルギー疾患の治療のために、薬物療法又は免疫療法等の適切な処置を施すことができる。 本発明のアレルギー疾患の診断方法は、アレルギー疾患の診断のみならず、アレルギー疾患の治療効果の追跡、治癒又は寛解の判定、アレルゲン回避のための道具(防ダニ布団、空気清浄器、通気孔フィルター、掃除機、アレルゲン除去スプレー等)や抗アレルギー薬の開発の際に必要な有効性判定及びその追跡等にも適用することができる。 本発明のイヌの抗原特異的IgEを定量する方法及びイヌのアレルギー疾患の診断方法は、被験イヌの生体試料及びイヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質に代えて、被験者の生体試料及びヒトのIgEを認識し、かつ実験動物のIgEを認識する物質を用いることによって、ヒトの抗原特異的IgEを定量する方法及びヒトのアレルギー疾患の診断方法としてそのまま実施できる。 別の局面において、本発明は、抗原特異的イヌIgEを定量するためのキットを提供する。定量キットは、イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質、抗原及び当該抗原で感作した当該実験動物の標準試料を別々の容器に含む。本発明の定量キットは、前記抗原で感作していない前記実験動物由来の生体試料を対照試料としてさらに別の容器に含んでいてもよい。定量キットは、パッケージで販売することができるので、本発明の定量方法を簡便に実施するための試薬として有用である。定量キットの使用方法は、本明細書中、上述のとおりである。 さらに、別の局面として、本発明は、イヌのアレルギー疾患の診断キットを提供する。診断キットは、イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質、抗原、当該抗原で感作した当該実験動物の標準試料及びアレルギー疾患に罹患していない当該実験動物の対照試料を別々の容器に含む。本発明の診断キットは、アレルギー疾患に罹患していないイヌの対照試料としてさらに別の容器に含んでいてもよい。本発明の診断キットは、診断試薬としてパッケージで販売され得、本発明の診断方法を簡便に実施するための試薬として有用である。診断キットの使用方法は、本明細書中、上述のとおりである。 本発明のキットは、イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質に代えて、ヒトのIgEを認識し、かつ実験動物のIgEを認識する物質を含むことによって、抗原特異的ヒトIgEの定量キット及びヒトのアレルギー疾患の診断キットとして提供することができる。 以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。[実施例1]イヌ抗体とマウスIgEに交差反応を示すモノクローナル抗体のスクリーニング イヌIgEを定量するための抗体として、抗イヌIgEモノクローナル抗体含有ラット腹水(クローン1-2腹水、クローン1-10腹水及びクローン1-13腹水)を日本全薬工業株式会社から購入した。 マウスIgE(BethylLaboratories, Inc. USA)を96穴マイクロタイタープレートに20ng/wellで4℃で1晩固相化した。次いで、上記3種類のクレーン腹水の希釈液をマイクロタイタープレートに入れ、4℃で1時間インキュベートし、洗浄後にペルオキシダーゼ標識したヤギ抗ラットIgE抗体(Bethyl Laboratories, Inc. USA)を加え、常法に従って発色させ、その吸光度を測定した(図1)。クローン1-2腹水は、希釈にしたがって吸光度が低下した。クローン1-10腹水とクローン1-13腹水は、マウスIgEを認識しなかった(コントロール腹水)。 イヌIgE(BethylLaboratories, Inc. USA)を前記マウスIgEと同様にして測定した(図2)。クローン1-2腹水及びクローン1-13腹水は、希釈にしたがって吸光度が低下した。クローン1-13腹水は、イヌIgEを認識しなかった。 上記の結果から、クローン1-2腹水中にマウスIgEとイヌIgEの両方を認識するラットIgGが存在することがわかった。[実施例2]抗マウス×イヌIgE抗体の精製 次に、DEAEセルロースクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、プロテインGカラムクロマトグラフィーの3つの段階を用いて、イヌとマウスのIgEに交差性を確認したクローン1-2腹水液より、ラットIgGを精製した(図3)。精製ラットIgGをNHS-PEO4-Biotin(PIERCE社)を用いてビオチン標識した。その後、Sephadex G25カラム(NAP-5 Columns、GEヘルスケアバイオサイエンス社)を用いたゲル濾過法によって未反応のビオチンを除いた。ビオチン化ラットIgG(ビオチン化抗マウス×イヌIgE抗体)を、以下の実施例に使用した。[実施例3]スギ花粉特異的IgEの定量 スギ花粉粗抗原(400μg)と水酸化アルミニウム(20mg)をビーグル犬(メス、5ヶ月齢)に2週間間隔で2回皮下投与して、スギ花粉感作イヌを作製した。このイヌからスギ花粉-IgE上昇イヌ血清を採取して被検体サンプルとした。 一方、標準曲線作成用に使用するためにCryj1(スギ花粉主要抗原)感作マウスを作製した。マウス(BALB/c、メス、8週齢)にCryj1(5μg)と水酸化アルミニウム(2mg)を1週間間隔で投与した。このマウスから血清を採取し、血清中のCryj1-IgE濃度を別途定量した。マウスのCryj1-IgEの定量には、マウスCryj1-IgE(株式会社医学生物学研究所から市販)で標準曲線を作成した抗原特異的マウスIgE測定用ELISA法を用いた。 ELISA測定用平底96穴マイクロプレートをCry j 1抗原液(3μg/ml)を100μL/wellで添加して4℃で1晩、固相化した。その後、1%フィッシュゼラチンPBSでブロッキング後、洗浄し、Cryj1(スギ花粉主要抗原タンパク)特異的IgE濃度が6958ng/mlのCryj1感作マウス血清を段階希釈して添加した。一方、Cryj1感作イヌ血清を8100倍希釈したものも同時に作製し、測定に用いた。 ビオチン化抗マウス×イヌIgE抗体(0.25μg/ml)を加えて室温で2時間インキュベート後、洗浄し、ストレプトアビジン結合ベータガラクトシダーゼを添加し、さらに室温1時間でインキュベート後、ベータガラクトシダーゼの基質(4-Methylumbelliferyl β-D-galactopyranoside)を加えて室温で30分後に各ウェルの蛍光強度を蛍光プレートリーダー(Spectra Max Gamini XPS, Molecular Devices)を用いて測定した。 その結果、Cryj1感作マウス血清を用いて標準曲線を作成することができた(図4)。この標準曲線から同時に測定したスギ花粉感作イヌの希釈血清の蛍光強度は2417FUであったことから、本希釈血清に含まれるCryj1特異的IgE濃度は53.7ng/mlであることがわかり(図4矢頭)、その希釈倍率(8100倍)から、本血清中のCryj1特異的IgE量は434700ng/mlと算出することができた。[実施例4] 典型的なイヌアトピー性皮膚炎と診断した野外症例イヌ4頭(下記参照)の血清中におけるノミ、牛肉、アスペルギルス(カビ、Aspergillus Nidulans)特異的IgE量を測定した。 症例1 チワワ 雄 9歳 症例2 ヨークシャテリア 避妊雌 7歳 症例3 柴犬 雄 5歳 症例4 柴犬 去勢雄 7歳 使用した標準曲線は、各抗原液感作マウス4頭のプール血清を用いた。マウスの抗原感作には1抗原あたり4匹のマウスを使用した。各抗原液をGreer社(USA)から購入し、Balb/cマウス(雌、8〜10週齢)に抗原50μg/mouseをアラム2mg/mouseと共に腹腔内注射して行った。1週間毎に2回注射し、感作開始3〜4週目に血清を採取した。 各抗原感作マウスのプール血清はMouse IgE ELISA Quantitation Kit (BethylLaboratories, Inc. USA)を用いて総IgE量を測定した。各プール血清のIgE濃度は下記のとおりであった。 ノミ感作血清 17171.9ng/ml 牛肉感作血清 5937.7ng/ml アスペルギルス感作血清 4666.2ng/ml また、正常イヌ(ビーグル犬)の血清も同時に測定し、その蛍光強度を症例イヌ血清の蛍光強度実測値から引いて症例イヌの蛍光強度とした。 その結果、各症例イヌの各抗原特異的IgE量は次のような値を示した。(症例イヌの蛍光強度の実測値が正常イヌ血清の蛍光強度より低い場合はnot detected (ND)と標記した。) 上記結果から、各症例イヌのアレルギー疾患の主たる原因を判定することができる。症例1についてはノミ抗原、症例2及び3についてはアスペルギルス抗原、症例4については牛肉抗原が主たる原因であることが予想されうる。 マウス等の小動物で感作血清を作製した場合、1匹あたり購入価格は2000円以内で飼育期間も2ヶ月程度であり、1抗原あたりの血清作製費用は5000円以内となる。したがって、50抗原の測定系の構築は20万円前後(イヌの場合の約40分の1のコスト)で可能となる。また、測定に必要な血清量は1回の測定に1〜2μLであり、マウス1匹からはおおよそ1000〜2000回分の検査が可能である(毎日測定してもおおよそ3年分に相当する)。 本発明によれば、イヌ又はヒトの抗原特異的IgEの絶対量を正確に把握することができ、アレルギーの季節性の定量的な追跡や治療効果の定量的なモニタリングが可能となる。また、異なった抗原間でその抗原特異的IgE絶対量を比較することができるため、個々の患イヌ又は患者でどの抗原によるアレルギー疾患が現在問題となっているかを総合的に判定できる。それに基づいて、アレルギー疾患の治療のための有用な情報の提供が可能となる。 本発明は、2008年5月12日出願の日本国特許出願、特願2008-125292を基礎としており、その内容は全て本明細書に包含される。 下記の工程(A)〜(D)を含む、抗原特異的イヌIgEを定量する方法:(A)被験イヌの生体試料と抗原とを接触させ、当該試料中のIgEと当該抗原とを結合させる工程、(B)イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質を用いて、工程(A)の抗原で感作した当該実験動物の標準試料中のIgEを測定し、標準曲線を作成する工程、(C)工程(A)で形成された結合体を、工程(B)で使用したイヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質を用いて検出する工程、及び(D)工程(C)で検出された結合体量と工程(B)で作成した標準曲線とを用いて被験イヌの生体試料中のIgE量を定量する工程。 下記の工程(A)〜(E)を含む、アレルギー疾患の診断方法:(A)被験イヌの生体試料と抗原とを接触させ、当該試料中のIgEと当該抗原とを結合させる工程、(B)イヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質を用いて、工程(A)の抗原で感作した当該実験動物の標準試料中のIgEを測定し、標準曲線を作成する工程、(C)工程(A)で形成された結合体を、工程(B)で使用したイヌのIgEを認識し、かつイヌを除く実験動物のIgEを認識する物質を用いて検出する工程、(D)工程(C)で検出された結合体量と工程(B)で作成した標準曲線とを用いて被験イヌの生体試料中のIgE量を定量する工程、及び(E)工程(D)の定量結果に基づいて、アレルギー疾患の有無又は程度を判定する工程。 工程(A)、(B)、(C)及び(D)が抗原毎に同時に又は別々に繰り返される、請求項1又は2に記載の方法。 工程(B)が工程(A)、(C)及び(D)と同時に又は別々に行われる、請求項1又は2に記載の方法。 アレルギー疾患が花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、ワクチン接種後アレルギー、アナフィラキシー、食物アレルギー、高IgE血症を引き起こす疾患及びIgEが病態に関与していると推測される疾患からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。 被験イヌの生体試料が血液、血清、血漿、鼻汁、涙液、唾液、尿又は糞便である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 前記物質がイヌのIgE及びイヌを除く実験動物のIgEの両方を認識する抗体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 前記実験動物がマウス、ラット、モルモット、ハムスター及びウサギからなる群より選ばれる動物である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。 下記の工程(A)〜(D)を含む、抗原特異的ヒトIgEを定量する方法:(A)被験者の生体試料と抗原とを接触させ、当該試料中のIgEと当該抗原とを結合させる工程、(B)ヒトのIgEを認識し、かつ実験動物のIgEを認識する物質を用いて、工程(A)の抗原で感作した当該実験動物の標準試料中のIgEを測定し、標準曲線を作成する工程、(C)工程(A)で形成された結合体を、工程(B)で使用したヒトのIgEを認識し、かつ実験動物のIgEを認識する物質を用いて検出する工程、及び(D)工程(C)で検出された結合体量と工程(B)で作成した標準曲線とを用いて被験者の生体試料中のIgE量を定量する工程。 工程(A)、(B)、(C)及び(D)が抗原毎に同時に又は別々に繰り返される、請求項9に記載の方法。 工程(B)が工程(A)、(C)及び(D)と同時に又は別々に行われる、請求項9に記載の方法。 被験者の生体試料が血液、血清、血漿、鼻汁、涙液、唾液、尿又は糞便である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。 前記物質がヒトのIgE及び実験動物のIgEの両方を認識する抗体である請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。 前記実験動物がマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ及びサルからなる群より選ばれる動物である請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。