タイトル: | 公表特許公報(A)_架橋ポリマー表面を有する医療装置 |
出願番号: | 2010508511 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61L 31/00,A61F 2/82,A61K 45/00,A61P 35/00 |
スターメイスター デレク ラサット ジェイ JP 2010526642 公表特許公報(A) 20100805 2010508511 20080509 架橋ポリマー表面を有する医療装置 ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド 506192652 BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC. 熊倉 禎男 100082005 小川 信夫 100084009 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 山崎 一夫 100119013 秋澤 慈 100156982 スターメイスター デレク ラサット ジェイ US 11/801,895 20070511 A61L 31/00 20060101AFI20100709BHJP A61F 2/82 20060101ALI20100709BHJP A61K 45/00 20060101ALI20100709BHJP A61P 35/00 20060101ALI20100709BHJP JPA61L31/00 ZA61M29/02A61K45/00A61P35/00 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2008063191 20080509 WO2008141141 20081120 19 20100108 4C081 4C084 4C167 4C081AC06 4C081BA02 4C081CA032 4C081CC01 4C081CC06 4C081DA03 4C081DB07 4C081DC03 4C081EA06 4C084AA17 4C084NA12 4C084ZB262 4C167AA45 4C167AA49 4C167AA50 4C167BB06 4C167CC08 4C167CC09 4C167CC10 4C167CC12 4C167CC20 4C167CC21 4C167CC22 4C167CC23 4C167CC26 4C167EE05 4C167EE08 4C167FF05 4C167GG06 4C167GG16 4C167GG35 本発明は、一般的には、医療装置、より詳しくは、ポリマー表面を有する植込み可能な又は挿入可能な医療装置に関する。 体内に植込む或いは挿入するためのポリマーベースの医療装置が数多く開発されてきた。例えば、最先端の種々の医療装置は、医療装置基体と一つ以上の治療剤のためのリザーバーとして役に立つポリマーコーティングとからなる。具体的な例としては、バルーン血管形成術の後に血管開通性を維持する診療の基準になっている、Boston Scientific Corp.(TAXUS(登録商標))、Johnson & Johnson (CYPHER(登録商標))等から市販されている薬剤溶出冠状動脈ステントが挙げられる。これらの製品は、再狭窄(血管閉塞)と関連している平滑筋増殖を阻止するのに効果的な制御された速度と総投与量で抗増殖剤を放出する生体安定性ポリマーコーティングを有するバルーン拡張型金属ステントに基づく。 Pinchuk et alの米国特許第6,545,097号に記載されている、例えば、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)トリブロックコポリマー(SIBS)のようなポリスチレンコポリマーを含む種々のタイプのポリマー材料が薬剤放出リザーバーとして用いられてきた。 薬剤送達リザーバーとしての使用に加えて、SIBSコポリマーは、その特性が、少なくとも部分的には、SIBSコポリマーが熱可塑性エラストマーであるという事実によるものである、優れた弾性、強度、及び加工可能性を含む、種々の理由のために有益であることがわかった。熱可塑性エラストマーは、例えば、ポリマーを溶解或いは融解することによって、逆転し得るいわゆる“物理的架橋”を形成するエラストマー(即ち、可逆的に変形可能な)ポリマーである。 本発明の態様によれば、少なくとも一つのポリマー領域を含有する医療装置が提供される。ポリマー領域(例えば、他の可能性の中でも、装置全体、分離した装置の構成要素又はコーティングに対応してもよい)は、少なくとも一つの高Tgビニル芳香族モノマーと少なくとも一つの低Tgモノマーを含む少なくとも一つのコポリマーを含有する。更に、ポリマー領域は、架橋されている少なくとも一つの表面小領域と実質的に架橋されていない少なくとも一つのバルク小領域を含んでいる。 本発明の他の態様によれば、医療装置のポリマー領域をエネルギー種にさらして、ポリマー領域の少なくとも一つの表面小領域が架橋され、実質的に架橋されていないバルク小領域が残ることを含む方法が提供される。上記のように、ポリマー領域は、少なくとも一つの高Tgビニル芳香族モノマーと少なくとも一つの低Tgモノマーが含まれる少なくとも一つのコポリマーを含有する。 このことは、例えば、表面の化学的性質及び/又は機械的性質は実質的に変化するがバルクの化学的性質及び/又は機械的性質は変化しないポリマー領域を有する医療装置を提供することができるという点で有利である。 本発明のこれらの及び他の態様及び実施態様、並びに種々の利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を見る際に当業者に直ちに明らかになるであろう。図1Aは、本発明の実施態様によるステントの概略透視図である。図1Bは、線b--bに沿って切った、図1Aのステントの一部の概略断面図である。 本発明のより完全な理解は、本発明の多くの態様及び実施態様の以下の詳細な説明によって得られる。以下の本発明の詳細な説明は、本発明を具体的に説明するものであるが限定するものではない。 本発明の態様によれば、少なくとも一つのポリマー領域を含有する医療装置が提供される。ポリマー領域は、少なくとも一つの高Tgビニル芳香族モノマーと少なくとも一つの低Tgモノマーを含む少なくとも一つのコポリマーを含有する。更に、ポリマー領域は、架橋されている少なくとも一つの表面小領域と実質的に架橋されていない少なくとも一つのバルク小領域を含む。 本明細書に用いられる“小領域”は、ポリマー領域の一部分の性質(例えば、架橋密度)が領域の他の部分の性質と異なる部分である。 本明細書に用いられる“架橋された”小領域は、共有結合して架橋されている小領域である。表面小領域が架橋されているか否かは、特に、原子間力顕微鏡(AFM)、分光法、又は摩擦測定のような方法によって決定され得る。 架橋の典型的な深さは、使われる技術によっては、例えば、1nmから10nmまで100nmまで1ミクロンまで10ミクロンまで100ミクロンまで1mmまで2mmまでの範囲にあってもよい。 本明細書に用いられる所定のバルク小領域は、“実質的に架橋されていない”であり、架橋が小領域において検出可能でないか或いは、検出可能である場合には、架橋密度が表面において5%以下の架橋密度であり、5%から2%まで1%以下までの範囲にある。 このことは、例えば、表面の化学的性質及び/又は機械的性質が実質的に変化するがバルクの化学的性質及び/又は機械的性質は変化しないポリマー領域を有する医療装置を提供することができるという点で有利である。この利点は、図1A及び図1Bと共に以下に記載される本発明の個々の実施態様を見る際により良く理解することができる。 図1A及び図1Bの具体的な実施態様は血管ステントに関するものであるが、本発明の実施のための医療装置の例は、広く異なり、植込み可能な又は挿入可能な医療装置、例えば、ステント(冠状動脈血管ステント、末梢血管ステント、大脳ステント、尿道ステント、尿管ステント、胆管ステント、気管ステント、胃腸ステント、食道ステントを含む)、ステント被覆、ステント移植片、血管移植片、腹部大動脈瘤(AAA)装置(例えば、AAAステント、AAA移植片)、血管アクセスポート、透析ポート、カテーテル(例えば、バルーンカテーテルや種々の中心静脈カテーテルのような泌尿器科的カテーテル又は血管カテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ(例えば、滴下防御装置用の大静脈フィルタやメッシュフィルタ)、脳動脈瘤フィラーコイル(Guglilmi着脱可能コイルや金属コイルを含む)を含む塞栓装置、中隔欠損閉鎖装置、心筋プラグ、パッチ、ペースメーカー、ペースメーカーリード、除細動リード、又はコイル用コーティングを含むリードコーティング、左心補助心臓・ポンプを含む補助人工心臓、完全人工心臓、シャント、心臓弁や血管バルブを含むバルブ、吻合クリップ、吻合リング、人工内耳、組織バルキング装置、又は軟骨、骨、皮膚又は他の生体内組織再生のための再生医療骨格、外科手術部位における縫合、縫合固定、組織ステープル又は結紮クリップ、カニューレ、金属線結紮、尿道スリング、ヘルニア“メッシュ”、人工靭帯、整形外科プロテアーゼ、例えば、骨移植片、骨プレート、フィン又は融合装置、人工関節、足首、膝又は手の領域における干渉スクリューのような整形外科固定具、靭帯付着部や半月板修復のタック、骨折固定のための棒やピン、頭蓋顎顔面修復のためのネジやプレート、歯科インプラント、又は体内に植込まれるか又は挿入され且つ治療剤が放出される他の装置が挙げられる。 上述したように、本発明に従って提供される医療装置は、架橋されている少なくとも一つの表面小領域と実質的に架橋されていない少なくとも一つのバルク小領域を備える、少なくとも一つのポリマー領域を含有する。バルク小領域は、例えば、表面小領域の下に配置されてもよく、表面小領域は、例えば、他の可能な空間的関係の中でも、バルク小領域の下に配置されてもよい。 一部の実施態様において、本発明のポリマー領域は、医療装置全体に対応する。他の実施態様において、ポリマー領域は、医療装置の一つ以上の部分に対応する。例えば、ポリマー領域は、分離した医療装置構成要素の形、医療装置に組み込まれる一つ以上の繊維の形、下にある基体の全部又は一部だけの上に形成される一つ以上のポリマー層の形等であり得る。下にある医療装置基体として用いられる材料としては、セラミック基体、金属基体及びポリマー基体だけでなく、これらの材料のハイブリッドから形成される基体が挙げられる。種々の位置に種々の形状で(例えば、一連の矩形、縞文様、又は他の任意の連続した又は連続しないパターンの形で)下にある基体の上に層を設けることができる。本明細書に用いられる所定の材料の“層”は、厚さが長さと幅の双方に比べて小さい材料の領域である。本明細書に用いられる層は、平面であることを必要とせず、例えば、下にある基体の輪郭に載せられる。層は、不連続(例えば、パターン形成)であり得る。 本明細書に用いられる“ポリマー領域”は、ポリマー、例えば、50wt%以下から75wt%まで90wt%まで95wt%まで97.5wt%まで99wt%以上までのポリマーを含有する領域(例えば、装置全体、装置構成要素、装置コーティング層等)である。 本明細書に用いられる“ポリマー”は、一般にモノマーと呼ばれる一つ以上の構成単位の複数のコピー(例えば、2から5まで10まで25まで50まで100まで250まで500まで1000以上までのコピー)を含有する分子である。本明細書に用いられる用語“モノマー”は、遊離モノマーやポリマーに組み込まれるものを意味してもよく、違いは用語が用いられる状況から明らかである。 ポリマーは多くの構造を取ってもよく、例えば、特に、環状、直鎖、分枝鎖の構造より選ばれてもよい。分枝鎖構造としては、星型構造(例えば、三連鎖以上が単一の枝分かれ部位から放射する構造)、櫛型構造(例えば、主鎖と複数の側鎖を有する構造、“グラフト”構造とも呼ばれる)、樹枝状構造(例えば、樹枝状ポリマーや高分岐ポリマー)、網状構造(例えば、架橋構造)等が挙げられる。 本明細書に用いられる“ホモポリマー”は、単一構成単位の複数のコピーを含有するポリマーである。“コポリマー”は、少なくとも2つの異なる構成単位(即ち、モノマー)の複数のコピーを含有するポリマーであり、例としては、ランダムコポリマー、統計コポリマー、周期コポリマー(例えば、交互ポリマー)及びブロックコポリマーが挙げられる。 本明細書に用いられる“ブロックコポリマー”は、例えば、構成単位(即ち、モノマー)が一つのポリマーブロックに見られ他のポリマーブロックに見られないことから、組成が異なる二つ以上のポリマーブロックを含有するコポリマーである。本明細書に用いられる“ポリマーブロック”又は“ブロック”は、構成単位(例えば、5から10まで25まで50まで100まで250まで500まで1000以上までの単位)のグループ化である。ブロックは、非分枝鎖又は分枝鎖であり得る。ブロックは、単一タイプの構成単位(本明細書では“ホモポリマーブロック”とも呼ぶ)又は複数タイプの構成単位(本明細書では“コポリマーブロック”とも呼ぶ)を含有することができ、例えば、ランダム、統計、勾配、又は周期(例えば、交互)の分布で存在してもよい。 本明細書に用いられる“連鎖”は、直鎖ポリマー又はその一部、例えば、直鎖ブロックである。 上述したように、本発明のポリマー領域は、少なくとも一つの高Tgビニル芳香族モノマーと少なくとも一つの低Tgモノマーを含む少なくとも一つのコポリマーを含んでいる。ある種の実施態様において、コポリマーは、(a)少なくとも一つの高Tgビニル芳香族モノマーを含有する少なくとも一つの高Tgポリマーブロックと(b)少なくとも一つの低Tgモノマーを含有する少なくとも一つの低Tgポリマーブロックを含有する。 “低Tgポリマーブロック”は、示差走査熱量測定法(DSC)のような多くの技術のいずれによっても測定されるように、体温未満、典型的には37℃から35℃まで30℃まで25℃まで0℃まで-25℃まで-50℃以下までであるガラス転移温度(Tg)を示すポリマーブロックである。“体温”は、治療される患者により、ヒトの場合には平均37℃である。低ガラス転移温度の結果として、低Tgポリマーブロックは、典型的には、体温において軟らかく弾性である。“低Tgモノマー”は、ホモポリマーの形である場合、体温未満、より典型的には37℃から35℃まで30℃まで25℃まで0℃まで-25℃まで-50℃以下までであるガラス転移温度(Tg)を示すモノマーである。 逆に、“高Tgポリマーブロック”は、体温を超え、典型的には、37℃から40℃まで45℃まで50℃まで60℃まで75℃まで100℃以上までであるガラス転移温度を示すポリマーブロックである。高ガラス転移温度の結果として、高Tgポリマーブロックは、典型的には、体温において硬く剛性である。“高Tgモノマー”は、ホモポリマーの形である場合、体温を超え、典型的には、37℃から40℃まで45℃まで50℃まで60℃まで75℃まで100℃以上までであるガラス転移温度(Tg)を示すモノマーである。 本発明に用いられるブロックコポリマー構造の例としては、(a) (HL)m、L(HL)m及びH(LH)m (ここで、Lは、低Tgポリマーブロックであり、Hは、高Tgポリマーブロックであり、mは、1以上の正の整数である)型の交互ブロックを有するブロックコポリマー、及び(b)マルチアーム形状、例えば、X(LH)n、X(HL)n (ここで、nは、2以上の正の整数であり、Xは、ハブ種(例えば、開始剤分子残基、予備形成ポリマー鎖が結合されている分子の残基等)である)を有するブロックコポリマーが挙げられる。ハブ種や他の非ポリマー鎖種は、通常は、ブロックコポリマーを記載する際に無視されることは留意されたい。例えば、X(LH)2は、通常は、HLHトリブロックコポリマーとして示される。コポリマーに一般に存在する他の非ポリマー鎖種の例としては、キャッピング分子、及び結合残基が挙げられる。ブロックコポリマーの他の例としては、L鎖骨格鎖と複数のH側鎖を有する櫛型コポリマー、及びH鎖骨格鎖と複数のL側鎖を有する櫛型コポリマーが挙げられる。 高Tgポリマーブロックの具体的な例としては、例えば、以下より選ばれるものを含む、ビニル芳香族モノマーの一つ以上の種類を含有するホモポリマー及びコポリマーブロックが挙げられる(これらのホモポリマーについて発表されたTgと共に記載する): (1)無置換ビニル芳香族化合物、例えば、スチレン(Tg 100℃)、2-ビニルナフタレン(Tg 151℃)、(2)ビニル置換芳香族化合物、例えば、α-メチルスチレン、(3) (a)環アルキル化ビニル芳香族化合物、例えば、3-メチルスチレン(Tg 97℃)、4-メチルスチレン(Tg 97℃)、2,4-ジメチルスチレン(Tg 112℃)、2,5-ジメチルスチレン(Tg 143℃)、3,5-ジメチルスチレン(Tg 104℃)、2,4,6-トリメチルスチレン(Tg 162℃)、4-tert-ブチルスチレン(Tg 127℃)、(b)環アルコキシル化ビニル芳香族化合物、例えば、4-メトキシスチレン(Tg 113℃)、4-エトキシスチレン(Tg 86℃)、(c)環ハロゲン化ビニル芳香族化合物、例えば、2-クロロスチレン(Tg 119℃)、3-クロロスチレン(Tg 90℃)、4-クロロスチレン(Tg 110℃)、2,6-ジクロロスチレン(Tg 167℃)、4-ブロモスチレン(Tg 118℃)、4-フルオロスチレン(Tg 95℃)、(d)環エステル置換ビニル芳香族化合物、例えば、4-アセトキシスチレン(Tg 116℃)、(e)環ヒドロキシル化ビニル芳香族化合物、例えば、4-ヒドロキシスチレン(Tg 174℃)、(f) 4-アミノスチレンを含む環アミノ置換ビニル芳香族化合物、(g)環シリル置換スチレンを含む環置換ビニル芳香族化合物、(4)無置換ビニルピリジン、置換ビニルピリジン、例えば、2-ビニルピリジン(Tg 104℃)、4-ビニルピリジン(Tg 142℃)、及び(5)他のビニル芳香族モノマー、例えば、ビニルカルバゾール(Tg 227℃)、ビニルフェロセン(Tg 189℃)。本発明の高Tgブロックは、また、高Tgビニル芳香族モノマーに加えて、特に、高Tgビニルエステル、高Tgビニルアミン、高Tgビニルハロゲン化物、高Tgアルキルビニルエーテル、高Tgアクリルモノマー、高Tgメタクリルモノマーを含むモノマーを含有することもできる。 低Tgポリマーブロックの具体的な例としては、以下の一つ以上を含有するホモポリマー及びコポリマーブロックが挙げられる: (1)エチレン、プロピレン(Tg -8〜13℃)、イソブチレン(Tg -73℃)、1-ブテン(Tg -24℃)、4-メチルペンテン(Tg 29℃)、1-オクテン(Tg -63℃)、他のα-オレフィン、ジエン、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチルl-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、4-ブチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジブチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、塩化ビニリデン(Tg -18℃)、フッ化ビニリデン(Tg -40℃)、シスクロロブタジエン(Tg -20℃)、トランスクロロブタジエン、(Tg -40℃)を含むハロゲン化アルケンモノマーを含む無置換及び置換のアルケンモノマー; (2) (a)アルキルアクリレート、例えば、メチルアクリレート(Tg 10℃)、エチルアクリレート(Tg -24℃)、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート(Tg -11℃、アイソタクチック)、ブチルアクリレート(Tg -54℃)、sec-ブチルアクリレート(Tg -26℃)、イソブチルアクリレート(Tg -24℃)、シクロヘキシルアクリレート(Tg 19℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(Tg -50℃)、ドデシルアクリレート(Tg -3℃)、(b)アリールアルキルアクリレート、例えば、ベンジルアクリレート (Tg 6℃)、(c)アルコキシアルキルアクリレート、例えば、2-エトキシエチルアクリレート(Tg -50℃)、2-メトキシエチルアクリレート(Tg -50℃)、(d)ハロアルキルアクリレート、例えば、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート(Tg -10℃)、(e)シアノアルキルアクリレート、例えば、2-シアノエチルアクリレート(Tg 4℃)を含むアクリルモノマー; (3) (a)アルキルメタクリレート、例えば、ブチルメタクリレート(Tg 20℃)、ヘキシルメタクリレート(Tg -5℃)、2-エチルヘキシルメタクリレート(Tg -10℃)、オクチルメタクリレート(Tg -20℃)、ドデシルメタクリレート(Tg -65℃)、ヘキサデシルメタクリレート(Tg 15℃)、オクタデシルメタクリレート(Tg -100℃)、(b)アミノアルキルメタクリレート、例えば、ジエチルアミノエチルメタクリレート(Tg 20℃)、2-tert-ブチルアミノエチルメタクリレート(Tg 33℃)を含むメタクリルモノマー; (4) (a)アルキルビニルエーテル、例えば、メチルビニルエーテル(Tg -31℃)、エチルビニルエーテル(Tg -43℃)、プロピルビニルエーテル(Tg -49℃)、ブチルビニルエーテル(Tg -55℃)、イソブチルビニルエーテル(Tg -19℃)、2-エチルヘキシルビニルエーテル(Tg -66℃)、ドデシルビニルエーテル(Tg -62℃)を含むビニルエーテルモノマー; (5)テトラヒドロフラン(Tg -84℃)、トリメチレンオキシド(Tg -78℃)、エチレンオキシド(Tg -66℃)、プロピレンオキシド(Tg -75℃)、メチルグリシジルエーテル(Tg -62℃)、ブチルグリシジルエーテル(Tg -79℃)、アリルグリシジルエーテル(Tg -78℃)、エピブロモヒドリン(Tg -14℃)、エピクロロヒドリン(Tg -22℃)、1,2-エポキシブタン(Tg -70℃)、1,2-エポキシオクタン(Tg -67℃)、1,2-エポキシデカン(Tg -70℃)を含む環状エーテルモノマー; (6)エチレンマロネート(Tg -29℃)、酢酸ビニル(Tg 30℃)、ビニルプロピオネート(Tg 10℃)を含むエステルモノマー(上記のアクリレートやメタクリレート以外); 及び(7)ジメチルシロキサン(Tg -127℃)、ジエチルシロキサン、メチルエチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン(Tg -86℃)、ジフェニルシロキサンを含むシロキサンモノマー。 本明細書に用いられる“ポリ(ビニル芳香族)ブロック”は、ビニル芳香族モノマーの一つ以上の種類の複数のコピーを含有するポリマーブロックであり、“ポリアルケンブロック”は、アルケンモノマーの一つ以上の種類の複数のコピーを含有するブロック等である。 当業者が理解するように、本発明に従って使われるコポリマーは、特に、カチオン法、アニオン法、ラジカル重合法、具体的には、制御/リビングカチオン重合、アニオン重合、ラジカル重合、これらの組み合わせを含む既知の方法に従って合成することができる。 少なくとも一つのビニル芳香族コポリマーに加えて、本発明の医療装置に用いられるポリマー領域は、必要により、一つ以上の補助ポリマーを含有してもよい。補助ポリマーの例としては、環状、直鎖、又は分枝鎖(例えば、ポリマーは、星型構造、櫛型構造又は樹枝状構造を有することになる)であってもよく、天然又は合成であってもよく、且つ生体安定性又は生分解性であってもよい、種々のホモポリマー及びコポリマー(交互コポリマー、ランダムコポリマー、統計コポリマー、勾配コポリマー、ブロックコポリマーを含む)が挙げられる。 本発明の医療装置に用いられるポリマー領域は、更に、少なくとも一つの治療剤を含有してもよく、多くの例を下で示す。 ここで、本発明の特定の一実施態様を、図面と共に記載する。図1Aは、多くの相互接続した支柱100sを含有するステント100の概略斜視図である。図1Bは、図1Aのステント100の支柱110sを線b--bに沿って切った概略断面図(一定の比率でない)であり、基体110を封入し且つ架橋されている表面小領域120sを備え、その下に実質的に架橋されていないバルク小領域120bがある、金属ステント基体110とポリマーコーティング領域120を示す図である。図示した実施態様において架橋された小領域210sが実質的に架橋されていないバルク小領域120bに隣接して示されているが、通常は、小領域120s、120bの間に遷移領域がある。隣接した架橋された小領域と実質的に架橋されていない小領域210s、120bの間の遷移の境目は、通常は、使われる処理条件の関数である。ポリマーコーティング120は、例えば、SIBSコポリマーを含有してもよく、これは表面小領域120sにおいて架橋されている。ポリマーコーティング120は、更に、例えば、再狭窄を防止するパクリタキセルのような抗増殖剤を含有してもよい。 上述したように、SIBSは、例えば、ポリマーを溶解又は融解することによって、逆転し得るいわゆる“物理的架橋”を形成する熱可塑性エラストマーである。この点に関して、SIBSは、軟質弾性低Tg中間ブロックと硬質高Tg末端ブロックを有するトリブロックコポリマーである。多くのブロックコポリマーのように、SIBSは、相分離する傾向があり、エラストマーブロックエラストマーは、凝集して相ドメインを形成し、硬質ブロックは、凝集して硬質相ドメインを形成する。各エラストマーブロックがそれぞれの端に硬質ブロックを有することから、また、同じトリブロックコポリマーの中の異なる硬質ブロックが二つの異なる硬質相ドメインを占めることができることから、硬質相ドメインは、軟質ブロックを介して互いに“物理的に架橋される”と仮定される。下にある分子基礎と無関係に、SIBSは、優れた弾性、強度、及び加工可能性を有する。例えば、図1A及び図1Bのステントのコーティングは、溶媒ベースの手法(例えば、噴霧)を用いてステント基体に容易に適用され、処理中に生じる封入のために、また、SIBSの本来の強度のために、ステント基体に充分に固定される。更に、弾性であると、ステントとして容易に変形するコーティングは、生体内の血管内で拡張/配置される。SIBSに弾性を与えるポリイソブチレン低Tgブロックは、また、硬質ポリスチレンブロックをかなり粘着性にする。表面粘着は、ステントが生体内で拡張/配置される場合に高表面粘着がコーティングの欠陥を引き起こし得るので、ステントコーティングには重要な性質である。SIBSコーティングを本発明に従って表面で架橋することによって、SIBSコーティングの表面特性は変わる(即ち、表面粘着が低下する)が、SIBSコーティングのバルク特性は実質的に変化していない。 “治療剤”、“薬剤”、“医薬的に活性な物質”、“医薬的に活性な材料”、及び他の関係した用語は、本明細書に同じ意味で用いることができる。様々な疾患や病気の治療(即ち、疾患又は病気の予防、疾患又は病気と関連している症状の減少又は排除、又は疾患又は病気の実質的な又は完全な排除)に用いられるものを含む様々な治療剤を本発明と共に使うことができる。多くの治療剤をここに記載する。 本発明と共に用いられる例示的な治療剤としては、以下が挙げられる: (a)抗血栓剤、例えば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、クロピドグレル、PPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン); (b)抗炎症剤、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミン; (c)抗新生物剤/抗増殖剤/抗有糸分裂剤、例えば、パクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を遮断できるモノクローナル抗体、チミジンキナーゼ阻害剤; (d)麻酔剤物質、例えば、リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン; (e)抗凝固剤、例えば、D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、ダニ抗血小板物質ペプチド; (f)血管細胞増殖促進剤、例えば、成長因子、転写活性化因子、翻訳促進剤; (g)血管細胞増殖阻害剤、例えば、成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗薬、転写リプレッサ、翻訳リプレッサ、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対向する抗体、成長因子と細胞毒素からなる二官能性分子、抗体と細胞毒からなる二官能性分子; (h)タンパク質キナーゼ阻害剤及びチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、チルホスチン、ゲニステイン、キノキサリン); (i)プロスタサイクリン類似体; (j)コレステロール低下剤; (k)アンギオポイエチン; (l)抗菌剤、例えば、トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ニトロフラントイン; (m)細胞毒性薬、細胞増殖抑制剤、細胞増殖影響因子; (n)血管拡張剤; (o)内在性血管作用機序を妨害する薬剤; (p)白血球動員阻害剤、例えば、モノクローナル抗体; (q)サイトカイン; (r)ホルモン; (s)HSP 90タンパク質阻害剤(即ち、熱ショックタンパク、これは分子シャペロン又はハウスキーピングタンパクであり、細胞の増殖及び生存の原因である他のクライアントタンパク質/シグナル伝達タンパク質の安定性と機能に必要である)、ゲルダナマイシンを含む; (t)α受容体拮抗薬(例えば、ドキサゾシン、タムスロシン)、β受容体作動薬(例えば、ドブタミン、サルメテロール)、β受容体拮抗薬(例えば、アテノロール、メタプロロール、ブトキサミン)、アンギオテンシンII受容体拮抗薬(例えば、ロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン)、及び鎮痙薬(例えば、塩化オキシブチニン、フラボキサート、トルテロジン、硫酸ヒオスシアミン、ジサイクロミン)、(u) bARKct阻害剤、(v)ホスホランバン阻害剤、(w) Serca 2遺伝子/タンパク質、(x)免疫応答調節物質、アミノキゾリン、例えば、レシキモドやイミキモドのようなイミダゾキノリンを含む、及び(y)ヒトアポリポタンパク質(例えば、AI、AII、AIII、AIV、AV等)。 必ずしも上で挙げたものだけでない多くの治療剤は、血管治療法のための候補物質として、例えば、再狭窄を標的にする薬剤として確認されている。このような薬剤は、本発明の実施に有効であり、以下の一つ以上を含んでいる:(a)ジルチアゼムやクレンチアゼムのようなベンゾチアゼピン、ニフェジピン、アムロジピン、ニカルダピンのようなジヒドロピリジン、ベラパミルのようなフェニルアルキルアミンが含まれるCa-チャンネル遮断薬、(b)ケタンセリンやナフチドロフリルのような5-HT拮抗薬、フルオキセチンのような5-HT取り込み阻害剤が含まれるセロトニン経路モジュレーター、(c)シロスタゾールやジピリダモールのようなホスホジエステラーゼ阻害剤、フォルスコリンのようなアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ賦活薬、アデノシン類似体が含まれる環状ヌクレオチド経路薬、(d)プラゾシンやブナゾシンのようなα-拮抗薬、プロプラノロールのようなβ-拮抗薬及びラベタロールやカルベジロールのようなα/β-拮抗薬を含むカテコールアミンモジュレーター、(e)エンドセリン受容体拮抗薬、(f)ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、亜硝酸アミルのような有機硝酸塩/亜硝酸塩、ニトロプルシドナトリウムのような無機ニトロソ化合物、モルシドミンやリンシドミンのようなシドノンイミン、ジアゼニウムジオラートやアルカンジアミンのNO付加物のようなノノエート、低分子量化合物(例えば、カプトプリル、グルタチオン、N-アセチルペニシラミンのS-ニトロソ誘導体)や高分子量化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖類、多糖類、合成ポリマー/オリゴマー、天然ポリマー/オリゴマーのS-ニトロソ誘導体)を含むS-ニトロソ化合物、C-ニトロソ化合物、O-ニトロソ化合物、N-ニトロソ化合物、L-アルギニンが含まれる一酸化窒素供与体/放出分子、(g)シラザプリル、フォシノプリル、エナラプリルのようなACE阻害薬、(h)サララシンやロサルチンのようなATII-受容体拮抗薬、(i)アルブミンやポリエチレンオキシドのような血小板接着阻害剤、(j)シロスタゾール、アスピリン、チエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバンのようなGP IIb/IIIa阻害剤が含まれる血小板凝集阻害剤、(k)ヘパリン、低分子量ヘパリン、硫酸デキストラン、β-シクロデキストリンテトラデカスルフェートのようなヘパリノイド、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D-phe-L-プロピル-L-arg-クロロメチルケトン)、アルガトロバンのようなトロンビン阻害剤、アンチスタチンやTAP(ダニ抗凝固ペプチドのようなFXa阻害剤、ワルファリンのようなビタミンK阻害剤、活性化プロテインCが含まれる凝固経路モジュレーター、(l)アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、スルフィンピラゾンのようなシクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、(m)デキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロンヒドロコルチゾンのような天然コルチコステロイドや合成コルチコステロイド、(n)ノルジヒドログアヤレト酸、カフェ酸のようなリポキシゲナーゼ経路阻害剤、(o)ロイコトリエン受容体拮抗薬、(p)E-セレクチンとP-セレクチンの拮抗薬、(q)VCAM-1とICAM-1の相互作用の阻害剤、(r)PGE1やPGI2のようなプロスタグランジン、シプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロスト、ベラプロストのようなプロスタサイクリン類似体が含まれるプロスタグランジンやその類似体、(s)ビスホスホネートが含まれるマクロファージ活性化予防剤、(t)ロバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチンのようなHMG-CoA還元酵素阻害剤、(u)魚油及びω-3脂肪酸、(v)プロブコール、ビタミンC、ビタミンE、エブセレン、トランスレチノイン酸、SODミミックスのようなフリーラジカルスカベンジャー/抗酸化剤、(w) bFGF抗体やキメラ融合タンパク質のようなFGF経路薬、トラピジルのようなPDGF受容体拮抗薬、アンギオペプチンやオクレオチドのようなソマトスタチン類似体を含むIGF経路薬、ポリアニオン性薬剤(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、TGF-β抗体のようなTGF-β経路物質、EGF抗体、受容体拮抗薬、キメラ融合タンパク質のようなEGF経路薬、サリドマイドやその類似体のようなTNF-α経路薬、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベン、リドグレルのようなトロンボキサンA2(TXA2)経路モジュレーター、チロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン誘導体のようなタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤が含まれる種々の成長因子に影響する薬剤、(x)マリマスタット、イロマスタット、メタスタットのようなMMP経路阻害剤、(y)サイトカラシンBのような細胞運動阻害剤、(z)プリン類似体(例えば、塩素化プリンヌクレオシド類似体である、6-メルカプトプリン又はクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、シタラビン、5-フルオロウラシル)、メトトレキセートのような代謝拮抗薬、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソ尿素、シスプラチン、微小管動態に影響する薬剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、Epo D、パクリタキセル、エポチロン)、カスパーゼ活性化剤、プロテアソーム阻害剤、血管形成阻害剤(例えば、エンドスタチン、アンギオスタチン、スクアラミン)、ラパマイシン(シロリムス)やその類似体(例えば、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス等)、セリバスタチン、フラボピリドール及びスラミンが含まれる抗増殖剤/抗新生物剤、(aa)ハロフギノン又は他のキナゾリノン誘導体、トラニラストのようなマトリックス沈着/組織化経路阻害剤、(bb)VEGFやRGDペプチドのような内皮化促進剤、(cc)ペントキシフィリンのような血液レオロジーモジュレーター。 特に有益な治療剤としては、特に、パクリタキセル(その微粒子形態、例えば、アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子のようなタンパク結合パクリタキセル粒子、例えば、ABRAXANEを含む)のようなタキサン、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、Epo D、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT-578(Abbott Laboratories)、トラピジル、リプロスチン、アクチノマイシンD、レステン-NG、Ap-17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、β遮断薬、bARKct阻害剤、ホスホランバン阻害剤、Serca 2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒトアポリポタンパク質(例えば、AI-AV)、成長因子(例えば、VEGF-2)、及びこれらの誘導体が挙げられる。 広範囲の治療剤装填は、本発明の医療装置と共に用いることができる。典型的な装填は、例えば、ポリマー領域の1wt%以下から2wt%まで5wt%まで10wt%まで25wt%以上までの範囲にある。 本発明のポリマー領域を形成するのに多くの技術が利用可能である。 例えば、ポリマー領域が熱可塑性特性を有する一つ以上のポリマーから形成される場合、種々の標準熱可塑性処理技術を用いて、ポリマー領域を形成することができる。これらの技術を用いて、例えば、(a)最初に一つ又は複数のポリマーと任意の補助剤、例えば、一つ以上の治療剤を含有する溶融物を準備し、(b)続いて溶融物を冷却することにより、ポリマー領域を形成することができる。熱可塑性処理技術の例としては、特に、圧縮成形、射出成形、吹込み成形、噴霧、真空成形及びカレンダー操作、種々の長さのシート、繊維、ロッド、チューブ及び他の断面プロファイルへの押出、及びこれらのプロセスの組み合わせが挙げられる。これらの及び他の熱可塑性処理技術を用いて、装置全体又はその一部が製造され得る。 溶媒ベースの技術を含む、熱可塑性処理技術のほかに他の処理技術を用いて、本発明のポリマー領域を形成してもよい。これらの技術を用いて、例えば、(a)最初に一つ又は複数のポリマーと一つ又は複数の治療剤のような任意の補助剤を含有する溶液又は分散液を準備し、(b)続いて溶媒を除去することによりポリマー領域を形成し得る。最終的に選ばれる溶媒は、一つ以上の溶媒種を含有し、通常は、乾燥速度、表面張力等を含む他の要因に加えて、ポリマー領域を形成するポリマーの少なくとも一つを溶解する能力に基づいて選ばれる。ある種の実施態様において、溶媒は、同様に、一つ又は複数の治療剤のような任意の補助剤を溶解する能力に基づいて選ばれる。従って、治療剤と他の任意の補助剤は、コーティング溶液に溶解されても又は分散されてもよい。好ましい溶媒ベースの技術としては、特に、溶媒注型技術、スピンコーティング技術、ウェブコーティング技術、溶媒噴霧技術、浸漬技術、空気サスペンション、インクジェット技術、静電技術を含む機械式サスペンションによるコーティングを含む技術、これらのプロセスの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。 本発明の一部の実施態様において、ポリマー含有溶液(溶媒ベースの処理が使われる場合)又はポリマー溶融物(熱可塑性処理が使われる場合)を基体に適用して、ポリマー領域を形成する。例えば、基体は、植込み可能な又は挿入可能な医療装置の全部又は一部に対応することができ、それにポリマーコーティングが、例えば、噴霧、押出等によって適用される。基体は、例えば、鋳型、例えば、金型でもあり得、固化後にポリマー領域がそこから除去される。他の実施態様、例えば、押出技術や同時押出技術において、一つ以上のポリマー領域は、基体を援助せずに形成される。具体的な例において、医療装置全体が押出される。他の例において、下にある医療装置本体と一緒にポリマーコーティング層が共押出される。 本発明の態様によれば、医療装置のポリマー領域をエネルギー種にさらして、ポリマー領域の少なくとも一つの表面小領域が架橋され、その下に実質的に架橋されていないバルク小領域がある方法が提供される。上記のように、ポリマー領域は、少なくとも一つの高Tgビニル芳香族モノマーと少なくとも一つの低Tgモノマーを含む、少なくとも一つのコポリマーを含有する。 前に示したように、このことは、例えば、表面の機械的性質及び/又は化学的性質は実質的に変化するがバルクの化学的性質及び/又は機械的性質は変化しないポリマー領域を提供することができるという点で有利である。従って、本発明は、高エネルギー/電離放射線、例えば、ガンマ線、X線、電子ビームを使うバルク化学架橋技術又はバルク架橋技術を使わない。 理論で縛られることを望まないが、種々のエネルギー種がポリマーにおいてラジカルを形成させることができ(例えば、ポリマーから水素原子を除去することによって)、その後にラジカルが鎖の切断又は架橋を受けることができると考えられる。例えば、N. Inagaki, Ph.D., Plasma Surface Modification and Plasma Polymerization, Technomic Publishing Company, Inc. (C)1996, p. 24を参照のこと。一部のポリマーが優先的に架橋を受けることが知られ、他のポリマーは優先的に鎖の切断を受ける。例えば、炭素-炭素主鎖を有するポリマーについて、炭素が結合した一つ以上の水素原子を有する場合には通常は架橋が起こるが、四置換炭素において通常は鎖-切断が起こることが見られた。例えば、“Polymer Materials Selection for Radiation-Sterilized Products" by Karl J. Hemmerich, Medical Device & Diagnostic Industry Magazine, Feb. 2000, pp. 78-89を参照のこと。 一部の実施態様において、ポリマー領域の表面は、光子、特に、例えば、UV-A(320-400nm)、UV-B(320〜280nm)及びUV-C(280〜200nm)より選ばれる紫外(UV)光子と衝突させることによって架橋する。光子の用量は、適用によって異なり、当業者が決定し得る。 例えば、理論によって縛られることを望まないが、ポリスチレンをUV照射にさらすと、ポリスチレンのC-H結合が切断され、鎖中ベンジル型ラジカル、の形成につながることが報告されている。例えば、N. Inagaki, Ph.D., Plasma Surface Modification and Plasma Polymerization, at p. 51を参照のこと。隣接した鎖についてこのような二つのラジカルを再結合することにより架橋が生じる。 UV照射時のC-H結合切断のプロセスは、本発明の一部の実施態様において水素引き抜き光開始剤、例えば、ベンゾフェノンを使うことによって増強させてもよい。同文献pp. 56-57。このために、特に、イソプロピルチオキサントン、アントラキノン、アセトフェノン、ベンジル、キサントンを含む他の既知の芳香族ケトンが用いられてもよい。例えば、上記の光開始剤の一つ以上を溶媒に溶解し、ポリマー領域の表面に適用することができる。UV照射によって、これらの開始剤は、ポリマー領域面でポリマーから水素を引き抜き、それによって、架橋につながるポリマーラジカルが形成される。 一部の実施態様において、イオン、例えば、一つ以上の不活性種(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等)のイオンと衝突させることによってポリマー領域の表面が架橋される。 例えば、ある実施態様において、ポリマー領域は、イオン注入によって架橋される。L. Hanley et al., Surface Science 500 (2002) 500-522に見られるように、不活性種によるイオン注入は、材料のバルク特性を同時に維持しつつ硬質架橋表面につながることが知られている。注入エネルギーを増加すると、浸透深さは増大するが架橋量は増加しないことが報告されている。同文献。イオン注入は、他のポリマーの中でも、ポリスチレンを硬化するために用いられている。同文献。 一部の実施態様において、ポリマー領域は、プラズマ処理によって架橋されている。プラズマは、イオン、電子及び中性種を含有することができるイオン化気体である。ポリマーのプラズマ処理は、通常、大気圧未満で行われ、処理が大気圧プラズマより低い温度で(例えば、場合によっては、ほぼ室温で)行われることを可能にする。更に、真空チャンバの使用は、プラズマを形成するガスを厳重に制御することを可能にする。プラズマは、通常、所定の周波数でエネルギー場を適用することによって生成される。プラズマとしては、特に、高周波プラズマ(例えば、容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、ヘリコンプラズマ等)及びマイクロ波プラズマ(例えば、電子サイクロトロン共鳴プラズマ等)が挙げられる。所定のプラズマの特性は、他の要因の中でも、プラズマ用ワーキングガス(例えば、ガスが窒素、ヘリウム又はアルゴンのような不活性ガスにしても、酸素のような反応性ガスにしても)、ワーキングガス流量、放電出力(その増加は、例えば、プラズマ中のイオンの密度と速度を上げることができる)、圧力(その上昇は、例えば、ガス濃度を上げ、電子密度を減少させ、基体に衝突するイオンのエネルギーを減少させることになる)が挙げられる多くの要因によって決定される。場合によっては、基体表面とイオンとの衝撃を増強するためにバイアスが印加される。 イオン、電子、光子(UV光子を含む)を含む、種々のエネルギー種は、プラズマと関連している。プラズマからのエネルギー移動の大きさがポリマーにおけるある種の軌道電子の結合エネルギーより大きい場合には、ポリマーはイオン化され、フリーラジカルを含有する小断片への分子フラグメンテーションにつながる。一方、プラズマからのエネルギー移動の大きさが結合エネルギーより小さい場合には、ポリマーのある種の電子は、励起された上の軌道まで上がり、続いて解離され、ポリマー面でラジカルが生じ(例えば、N. Inagaki, Ph.D., Plasma Surface Modification and Plasma Polymerization, at pp. 56-57を参照のこと)、上述したように、それが架橋につながり得る。不活性ガスを使うプラズマの架橋は、CASING(即ち、不活性ガスの活性種による架橋)としばしば呼ばれる。表面特性だけが変わることから、プラズマ処理時間が比較的短くなることになる。 この点に関して、S. Guruvenket et al.,“Plasma surface modification of polystyrene and polyethylene,” Applied Surface Science 2004, 236(1-4) 278-284には、マイクロ波電子サイクロトロン共鳴(ECR)を用いて生成されたアルゴンプラズマによるポリスチレンの処理が記載されている。ポリマーを不活性ガスプラズマにさらすことにより、上述したように、水素を引き抜くとともに表面フリーラジカルを形成するのに充分であり、その後、架橋を形成するか又は鎖の切断を引き起こすことが報告された。低分子量材料は、そのプラズマによって除去されるか又はプラズマが架橋反応によって高分子量生成物に変換させると考えられた。 イオン衝撃がないときのポリスチレンのプラズマ改質については、処理中に生じる鎖の切断と架橋事象との比率は、イオン衝撃があるときに行われる改質より非常に大きいことが提唱された。F.D. Egitto, IBM J. Res. Develop., Vol. 38, No. 4 July, 1994, 423-439 and S . F. Tead et al. J. Appl. Phys. 68, No. 6, 2972 (1990)を参照のこと。上述したように、プラズマ処理中にイオンを基体に衝突させるためにバイアスを印加することが知られている。 前に示したように、エネルギー種にさらした場合、ある種のポリマー、例えば、ポリスチレンは主に架橋を受ける。他のポリマー、例えば、水素原子が結合していない四置換炭素を有するもの、例えば、ポリイソブチレンは、主に鎖の切断を受ける。従って、例えば、SIBS(ポリスチレンブロックとポリイソブチレンブロックを含有する)を含有するポリマー領域が処理される、ある種の実施態様において、ポリスチレン領域の架橋が起こることになり、ポリイソブチレン領域の鎖の分解と関連するエッチングが起こることになる。双方の作用とも、ポリマー領域の表面粘着を低下させることが予想される。 従って、一部の実施態様において、ブロックコポリマーの一つ以上のブロックは、相対する一つ以上の他のブロックを優先的にエッチングする。例えば、SIBSの中のポリイソブチレン相ドメインは、反応性プラズマガスを用いて優先的にエッチングされることになり、それはポリスチレン相ドメインを架橋するためにも作用する。 種々の実施態様が本明細書に詳細に示され説明されているが、本発明の修正及び変更が上記教示によって包含され、本発明の真意及び意図した範囲を逸脱することなく添付の特許請求の範囲の範囲内にあることは理解される。 コポリマーを含むポリマー領域を備える医療装置であって、前記コポリマーが、高Tgビニル芳香族モノマーと低Tgモノマーを含み、前記ポリマー領域が、架橋されている表面小領域と実質的に架橋されていないバルク小領域を備える、前記医療装置。 低Tgモノマーが、アルケンモノマーである、請求項1に記載の医療装置。 コポリマーが、ビニル芳香族モノマーを含む高Tgブロックと低Tgモノマーを含む低Tgポリマーブロックを含むブロックコポリマーである、請求項1に記載の医療装置。 低Tgモノマーが、アルケンモノマーである、請求項3に記載の医療装置。 ビニル芳香族モノマーがスチレンであり、低Tgモノマーがイソブチレンである、請求項3に記載の医療装置。 コポリマーが、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)トリブロックコポリマーである、請求項3に記載の医療装置。 表面小領域が、1μm以下の深さまで伸びている、請求項1に記載の医療装置。 ポリマー領域が、下にある基体上に配置されているポリマーコーティングである、請求項1に記載の医療装置。 医療装置が、ステントである、請求項1に記載の医療装置。 医療装置が、治療剤を更に含む、請求項1に記載の医療装置。 治療剤が、抗増殖剤である、請求項10に記載の医療装置。 治療剤が、パクリタキセルである、請求項10に記載の医療装置。 ポリマー領域が、下にあるステント基体上に配置されているポリマーコーティングであり、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)トリブロックコポリマーと抗増殖剤を含む、請求項1に記載の医療装置。 医療装置のポリマー領域をエネルギー種にさらして、ポリマー領域内の表面小領域が架橋され、前記エネルギー種の供給源に相対する表面小領域の下のバルク小領域が実質的に架橋されないことを含む方法であって、前記ポリマー領域が、高Tgビニル芳香族モノマーと低Tgモノマーを含むコポリマーを含んでいる、前記方法。 前記方法が、前記医療装置の表面粘着を低下させる、請求項14に記載の方法。 エネルギー種が、光子を含む、請求項14に記載の方法。 光子の波長が、200nm〜320nmの範囲にある、請求項16に記載の方法。 前記ポリマー領域の表面に水素引き抜き光開始剤を適用した後に、ポリマー領域を光子にさらす、請求項17に記載の方法。 水素引き抜き光開始剤が、ベンゾフェノン、イソプロピルチオキサントン、アントラキノン、アセトフェノン、ベンジル、キサントン、及びこれらの組み合わせより選ばれる芳香族ケトンである、請求項18に記載の方法。 エネルギー種が、不活性イオンである、請求項14に記載の方法。 不活性イオンが、窒素イオン、ヘリウムイオン、アルゴンイオン、及びこれらの組み合わせより選ばれる、請求項20に記載の方法。 イオン注入プロセスにおいてポリマー領域に衝突させる、請求項20に記載の方法。 エネルギー種が、光子とイオンを含む、請求項14に記載の方法。 ポリマー領域が、不活性ワーキングガスを用いて形成される不活性イオンを含むプラズマにさらされる、請求項23に記載の方法。 ワーキングガスが、窒素、ヘリウム、アルゴン及びこれらの組み合わせより選ばれる、請求項24に記載の方法。 イオンをポリマー領域の表面へ加速させる、請求項24に記載の方法。 【課題】熱可塑性エラストマーを用いた架橋ポリマー表面を有する医療装置の提供。【解決手段】本発明の態様によれば、少なくとも一つのポリマー領域を含有する医療装置が提供される。ポリマー領域は、少なくとも一つの高Tgビニル芳香族モノマーと少なくとも一つの低Tgモノマーが含まれる、少なくとも一つのコポリマーを含有する。更に、ポリマー領域は、架橋されている少なくとも一つの表面小領域と実質的に架橋されていない少なくとも一つのバルク小領域を含有する。本発明の他の態様によれば、医療装置のポリマー領域をエネルギー種にさらして、ポリマー領域の少なくとも一つの表面小領域が架橋され、少なくとも一つのバルク小領域が実質的に架橋されないままであることを含む方法が提供される。ポリマー領域は、少なくとも一つの高Tgビニル芳香族モノマーと少なくとも一つの低Tgモノマーが含まれる、少なくとも一つのコポリマーを含有する。【選択図】図1B