タイトル: | 公表特許公報(A)_高効率エレクトロポレーションバッファー |
出願番号: | 2010506377 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12N 15/09 |
ルビオ テレサ テレフェ ジョセフ JP 2010525817 公表特許公報(A) 20100729 2010506377 20080404 高効率エレクトロポレーションバッファー バイオ−ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド 507190880 清水 初志 100102978 春名 雅夫 100102118 山口 裕孝 100160923 刑部 俊 100119507 井上 隆一 100142929 佐藤 利光 100148699 新見 浩一 100128048 小林 智彦 100129506 渡邉 伸一 100130845 大関 雅人 100114340 川本 和弥 100121072 ルビオ テレサ テレフェ ジョセフ US 11/742,245 20070430 C12N 15/09 20060101AFI20100702BHJP JPC12N15/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2008059457 20080404 WO2008134200 20081106 13 20091211 4B024 4B024AA20 4B024CA01 4B024CA11 4B024DA02 4B024EA04 4B024GA14 4B024GA181. 発明の分野 本発明は、生物細胞、リポソーム、および小胞のような膜状構造物への、構造物にとって外因性である種によるトランスフェクションの分野にある。特に本発明は、エレクトロポレーションに使用される電流がそこを通って伝達されるバッファー溶液を扱い、かつバッファー溶液の選択が、どのように、トランスフェクション効率と、印加された電圧に曝された場合に膜状構造物が生き残る能力とに影響するのかに対処する。発明の背景2. 先行技術の説明 トランスフェクションは、siRNA実験、cDNAライブラリーを用いる研究、ならびに他の臨床的および調査研究を含む、様々な調査ならびに手段の実施において、生物学者および生化学者にとって研究する価値のあるものである。エレクトロポレーションは、最も進歩したトランスフェクション技術の1つであり、外因性の種の液体溶液における膜状構造物の懸濁液を通して、典型的にはパルスで電場を印加することを伴う。電場は、構造物の膜に一時的に孔をあけ、それによって膜への種の侵入が可能となると考えられる。 トランスフェクションの価値が徐々に認識され、広く使用されるにつれ、ある懸念がその適用を制限するようになった。そのような懸念の1つは、手順の効率、すなわち成功裏に外因性の種をトランスフェクトされた膜状構造物の数であり、他の懸念としては、手順の間中、膜状構造物をインタクトかつ生存可能に維持する能力または手順の完了時にインタクトな状態を自発的に取り戻す能力である。これらの懸念の両方に作用する1つの要因は、生物細胞である構造物の場合は特に、構造物が懸濁されているバッファー溶液の組成である。様々な報告が、細胞生存を向上させるようにエレクトロポレーションバッファーを調製したという研究結果を示している。そのような報告の1つはvan den Hoff, M.J.B., et al.,「Electroporation in ‘intracellular’ buffer increases cell survival」Nucleic Acids Research 20 (11), p. 2902 (1992)(非特許文献1)であり、ここでは細胞内のイオン組成に類似するように調製したバッファー溶液を使用している。van den Hoff et al.が用いたバッファー溶液は、120 mM KCl、0.15 mM CaCl2、10 mM K2 HPO4/KH2PO4、pH 7.6、25 mM HEPES、pH 7.6、2 mM EGTA、pH 7.6、5 mM MgCl2、および2 mM ATP、pH 7.6を含み、全てのpHはKOHで調整している。他のアプローチは、Melkonyan, H., et al.,「Electroporation efficiency in mammalian cells is increased by dimethyl sulfoxide (DMSO)」 Nucleic Acids Research 24 (21), 4356-4357 (1996)(非特許文献2)によって報告されており、ここではその他の点では10%FCSを補充したRPMIで構成されるエレクトロポレーション培地への添加物として、ジメチルスルホキシドが使用されており、ここでDMSOは溶液の1.25重量%を構成する。なおさらなるアプローチは、Mussauer, H., et al.,「Trehalose Improves Survival of Electrotransfected Mammalian Cells」Cytometry 45: 161-169 (2001)(非特許文献3)のものであり、ここでは、その他の点では0.85 mM K2HPO4、0.3 mM KH2PO4(pH 7.2)、10 mMまたは25 mMのいずれかのKCl、および100もしくは150 mOsm(低浸透圧状態)または290 mOsm(等浸透圧状態)を達成するよう選択された量のイノシトールを含む培地に、トレハロースを様々な濃度で添加することによって、バッファーは調製されている。他の報告は、Hernandez, J.L., et al.,「A highly efficient electroporation method for the transfection of endothelial cells」Angiogenesis 7: 235-241 (2004)(非特許文献4); Ovcharenko, D., et al., 「High-throughput RNAi screening in vitro: From cell lines to primary cells」RNA 11: 985-993 (2005)(非特許文献5); Golzio, G., et al.,「Control by Osmotic Pressure of Voltage-Induced Permeabilization and Gene Transfer in Mammalian Cells」Biophysical Journal 74: 3015-3022 (1998)(非特許文献6); Cegovnik, U. et al.,「Setting optimal parameters for in vitro electrotransfection of B16F1, SAI, LPB, SCK, L929 and CHO cells using predefined exponentially decaying electric pulses」Bioelectrochemistry 62: 73-82 (2004)(非特許文献7);および22002年4月23日に出願され2005年3月24日に公開されたRiemen, G., et al.,の米国特許出願公開第2005/0064596号A1(特許文献1)のものである。本段落に記載した文書の各々の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。米国特許出願公開第2005/0064596号A1van den Hoff, M.J.B., et al.,「Electroporation in ‘intracellular’ buffer increases cell survival」Nucleic Acids Research 20 (11), p. 2902 (1992)Melkonyan, H., et al.,「Electroporation efficiency in mammalian cells is increased by dimethyl sulfoxide (DMSO)」 Nucleic Acids Research 24 (21), 4356-4357 (1996)Mussauer, H., et al.,「Trehalose Improves Survival of Electrotransfected Mammalian Cells」Cytometry 45: 161-169 (2001)Hernandez, J.L., et al.,「A highly efficient electroporation method for the transfection of endothelial cells」Angiogenesis 7: 235-241 (2004)Ovcharenko, D., et al., 「High-throughput RNAi screening in vitro: From cell lines to primary cells」RNA 11: 985-993 (2005)Golzio, G., et al.,「Control by Osmotic Pressure of Voltage-Induced Permeabilization and Gene Transfer in Mammalian Cells」Biophysical Journal 74: 3015-3022 (1998)Cegovnik, U. et al.,「Setting optimal parameters for in vitro electrotransfection of B16F1, SAI, LPB, SCK, L929 and CHO cells using predefined exponentially decaying electric pulses」Bioelectrochemistry 62: 73-82 (2004) エレクトロポレーションの過程で細胞の完全性と生存能力を保ちつつ高い割合のトランスフェクションを促進するのに特に有効なバッファー溶液が、現在開発されている。バッファー溶液は、イオン強度は低いが、糖濃度を調節することによってバッファー溶液の浸透圧を低浸透圧から等浸透圧まで様々なレベルに調節できる糖成分を含む。バッファー溶液に用いる糖は、トレハロース、スクロース、またはその2つの組み合わせのいずれかである。大半の細胞にとって、低浸透圧状態は、およそ125 mMの糖濃度を有するバッファーを用いて達成され、等浸透圧状態はおよそ275 mMの糖濃度を有するバッファーを用いて達成される。他の成分は、無機リン酸バッファー、有機スルホン酸バッファー、アルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩、キレート剤、アルキルメチルスルホキシド、およびヌクレオチド三リン酸である。バッファーpHは好ましくは、約6.5〜約7.7の範囲内であり、かつバッファーはナトリウムイオンを実質的に欠く。用語「実質的に欠く」とは、ナトリウムイオンが存在する場合、有意な程度の細胞損傷を引き起こすことがないほどその量が少なく、好ましくは多くても微量であることを意味する。 細胞の懸濁液で実施されるエレクトロポレーション手順において哺乳動物細胞の懸濁培地として、およびエレクトロポレーション手順において、表面上で増殖したまたはそうでなければ表面上に付着した哺乳動物細胞へと、電気パルスがそこを通って伝達される溶液として、本発明のバッファー溶液は有用である。図1は、エレクトロポレーション実験の結果の第一のセットを示し、本発明のバッファー溶液とPBSとを比較した棒グラフである。図2は、エレクトロポレーション実験の結果の第二のセットを示し、本発明のバッファー溶液とPBSとを比較した棒グラフである。図3は、エレクトロポレーション実験の結果の第三のセットを示し、本発明のバッファー溶液とPBSとを比較した棒グラフである。発明の詳細な説明および好ましい態様 糖がトレハロース、スクロース、またはトレハロースとスクロースの混合物であっても、バッファー溶液中の糖の量は所望の浸透圧を達成するものであり、かつ上記のように好ましい全糖濃度は、約125 mM〜約300 mM、最も好ましくは約150 mM〜約275 mMの範囲内である。 使用できる有機スルホン酸バッファーの例は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルエタンスルホン酸(HEPES)、3-モルフォリノプロパンスルホン酸(MOPS)、および3-モルフォリノエタンスルホン酸(MES)である。これらの中でHEPESが最も好ましい。有機スルホン酸バッファーの濃度は変動してもよいが、好ましくは約15 mM〜約50 mM、最も好ましくは約3 mM〜約10 mMの範囲内、および約7.2〜約7.6のpHである。 アルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩は、ナトリウム以外の金属のハロゲン化物塩、および好ましくは塩化物塩である。塩化マグネシウム(MgCl2)が特に好ましい。濃度は変動してもよいが、哺乳動物細胞のイオン強度に近似した総イオン強度になるようなものが好ましい。好ましい態様において、ハロゲン化物塩濃度は、約1 mM〜約20 mM、最も好ましくは約1 mM〜約10 mMである。 キレート剤は、ハロゲン化物塩の陽イオンであるアルカリまたはアルカリ土類金属を伴うキレート錯体を形成するものである。適したキレート剤の例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびエチレングリコール四酢酸(EGTA)である。これらの中で、EGTAが好ましい。キレート剤の濃度は同様に変動してもよいが、通常陽イオンに対してキレート化する量、すなわち存在する金属陽イオンの実質的に全量のキレート錯体を生成するのに十分な量である。好ましい態様において、その濃度は、約1 mM〜約20 mM、最も好ましくは約1 mM〜約5 mMの範囲内である。 アルキルメチルスルホキシドは好ましくは、直鎖のC1-C4アルキルメチルスルホキシドであり、この主要な例はジメチルスルホキシド(DMSO)である。アルキルメチルスルホキシドは好ましくは、外因性の種の細胞透過性を向上する量、かつその濃度が変動可能な目安内の量で含まれる。好ましい濃度は、約0.3重量%〜約3重量%の範囲内である。 ヌクレオチド三リン酸は、細胞の生存能力の保持を補助する量で、および多くの場合約1 mM〜約10 mMの範囲内となる量で含まれる。好ましいヌクレオチド三リン酸は、アデノシン三リン酸である。 バッファー溶液のpHは、6.5〜7.7の範囲であってよく、リン酸バッファーにより維持される。バッファー溶液はまた、さらなる成分、例としてグルタチオンを含んでもよい。グルタチオンが存在する場合、その濃度は好ましくは約1 mM〜約10 mM、最も好ましくは約1 mM〜約3 mMの範囲である。最適な量は、細胞の保存を向上する量であり、この成分とその量に対する必要性は、トランスフェクションを行う細胞の選択によって変動する。好ましいバッファー溶液は、上記の成分のみを含み、追加の成分を含まないものである。 全ての成分がバッファー溶液に組み込まれれば、溶液のpHをKOHで調整することができる。溶液の伝導性は、約2 mS/cm〜約4.2 mS/cmの範囲であり得る。次いでトランスフェクションを従来の装置と機器を用いて当技術分野で公知の従来の手順によって実施する。以下の実施例は、厳密に例示を目的として提供する。実施例 試験エレクトロポレーションバッファー用の個々の成分のストック溶液を、以下のように調製した。0.2 Mのリン酸カリウムバッファーは、86.6 mLのK2HPO4(1M、カタログ番号60354-1Kg)と13.4 mLのKH2PO4(1M、カタログ番号P5655-1Kg)を500 mLの水に溶解することによって調製した。スクロースの1M溶液は、171.15 gのスクロースを500 mLの水に溶解することによって調製した。トレハロースの1M溶液は、94.57 gのトレハロースを250 mLの水に溶解することによって調製した。HEPESは、Sigmaのカタログ番号H0887から1Mで得た。塩化マグネシウムも同様に、Sigmaのカタログ番号M1028から1Mで得た。EGTAも同様に、Sigmaのカタログ番号E4318-10Gから得て、4.7 gを25 mLの水に溶解し、10N KOHを含む10 mLの水を加えてpHを8にすることによって、0.5M溶液を調製した。溶液は-20℃で保存した。希釈していないDMSOも同様に、Sigmaのカタログ番号02650-100Hから得た。 一連の試験バッファーを、表Iに示す組成で調製した。(表I)試験バッファーの組成濃度は全てmMであり、DMSOのみ重量%で表す。 エレクトロポレーションは、これらのバッファー溶液の各々を用いて実施し、これらをリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Invitrogenカタログ番号14190-144)と比較した。細胞は、Cos7細胞(SV40形質転換腎臓細胞)および5F2C細胞(ルシフェラーゼ遺伝子で安定に形質転換したCHO細胞株)であり、細胞にトランスフェクトする種はプラスミドDNA(pCMVi-Luc)またはsiRNAのいずれかであった。通常の手順と条件は以下の通りであった。細胞の収集と計数 細胞は、エレクトロポレーションの前日に継代し、収集するために活発に増殖する条件に置く。接着性細胞でこの条件を達成するため、細胞をトリプシン処理して表面から剥がし、増殖培地を添加して、細胞をペレット化する。浮遊した細胞でこの条件を達成するためには、細胞を単にペレット化する。両方の場合、ペレット化の後培地は除去し、これらの細胞を次いで、細胞を注意深くピペッティングすることによりPBSで一回洗浄する。一定分量を取り出し、それを計数する。エレクトロポレーション用の細胞の調製 実験の実施に必要な数の細胞を含む一定分量を取り出す。接着性細胞に対して、1×106細胞/mLを含むが、0.01〜20×106細胞/mLの範囲内であり得る一定分量が推奨される。浮遊細胞に対して、2〜3×106細胞/mLを含む一定分量が推奨される。いずれの場合も、一定分量中の細胞を次いでペレット化し、PBSを吸引して、ペレット化した細胞を適切な容量のエレクトロポレーションバッファー試薬(接着性細胞1×106細胞につき1 mL、および浮遊細胞2〜3×106細胞につき1 mL)に再懸濁する。これらの実験では核酸である外因性の種を、次いで適切な濃度で添加する。siRNAの場合、5〜500 nMを用いることができる。プラスミドDNAの場合、1〜100μg/mLを用いることができる。エレクトロポレーション 核酸を含有するエレクトロポレーションバッファー試薬中に細胞を含む100〜200μLの懸濁液を、0.2 cmサイズのキュベットに入れる。0.4 cmキュベットの場合、400〜800μLの懸濁液を用いる。次いでエレクトロポレーションを最適な条件で実施する。次いで増殖培地を含む組織培養ディッシュに細胞を移し、そこで加湿CO2インキュベーター中37℃でアッセイまでインキュベートする。増殖培地は24時間毎に変える。トランスフェクション効率の評価 蛍光標識したsiRNAを用いて、siRNA送達に関するトランスフェクション効率を判定することができる。トランスフェクション効率は、蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーによって測定することができる。プラスミド送達の場合、トランスフェクション効率は、GFP(緑色蛍光タンパク質)、ルシフェラーゼ、またはβガラクトシダーゼなどのレポーター遺伝子を発現するプラスミドを用いることで判定できる。 ルシフェラーゼ遺伝子を発現するプラスミドpCMVi-Lucを、Cos7細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、1%Triton X-100、2 mM EDTA、および1 mM DTTを含むpH 7.8の0.1 Mリン酸バッファー中、40℃で15〜20分間インキュベーションすることで、細胞を溶解した。溶解物の一部を次いでルミノメータープレートにロードし、プレートをルミノメーター内に配置し、そこで3 mM ATP、15 mM MgSO4、30 mMトリシンバッファー、および10 mM DTTからなる100μLの試薬A(pH 7.8)が自動的に添加される。1 mM LH2(ルシフェリン)と脱イオン水からなる100μLの試薬B(pH 6.0〜6.4)を次いで添加し、光出力を10〜30秒間測定した。 スクランブル陰性対照とルシフェラーゼ遺伝子をサイレンシングするルシフェラーゼsiRNAとの2つのsiRNAのそれぞれ一方により、2つのグループで5F2C細胞へのトランスフェクションを行った。スクランブルトランスフェクションを参照して発現したサイレンシングの程度を、上記のCos7細胞実験と同様の様式で測定し、トランスフェクション効率の測定値として用いた。 表Iで列挙した試験バッファー全ての様々な組み合わせに対する結果を図に示す。実験の1つのセットに関してトランスフェクションを行ったCos7細胞におけるルシフェラーゼ活性の相対蛍光単位(RLU)を図1に示し、他のセットに関して図2に示し、トランスフェクションを行った5F2C細胞におけるルシフェラーゼサイレンシングを図3に示し、図中2つのバーは各試験バッファー溶液を示し、左のバーはスクランブル陰性対照によるトランスフェクションを表し、右のバーはルシフェラーゼsiRNAによるトランスフェクションを表す。結果は、試験バッファーの全てまたは本質的に全てが、PBSより優れた性能を有したことを示す。pHの点では、最良の性能は、7.2を超えるpH、具体的には7.2〜7.5の範囲で達成された;バッファー(2)をバッファー(1)と比較されたい。ATPとグルタチオンの存在の点では、最良の性能はATP単独の場合に達成された;バッファー(5)、(6)、および(7)をバッファー(3)および(4)と比較されたい。同様に、6つの成分全て、すなわち糖、リン酸カリウム、HEPES、MgCl2、EGTA、DMSO、およびATPを含むバッファーは、成分の1つ(DMSO)を欠くバッファーより優れていた;バッファー(5)、(6)、および(7)をバッファー(8)および(9)と比較されたい。 本明細書に添付の特許請求の範囲において、用語「ある(aまたはan)」とは、「1つまたは複数の」を意味することを意図し、用語「含む(comprise)」ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などその変化形は、工程または要素の詳細に先行する場合、さらなる工程または要素の追加が最適であり、排除されないことを意味するよう意図される。本明細書に引用した全ての特許、特許出願、および他の刊行された参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に引用したいずれかの参考文献と本明細書の明確な教示との間に矛盾があれば、本明細書の教示を支持して解消されることが意図される。これには、当技術分野で理解される単語または用語の定義と、同じ単語または用語について本明細書で明確に提供した定義との間のいかなる矛盾も含む。 哺乳動物細胞にとって外因性である種を該細胞にトランスフェクトするエレクトロポレーション手順において、該細胞に対して電気パルスを伝達する物質としておよび該外因性の種に対する溶媒として使用するためのバッファー溶液であって、 (i)該細胞に関して少なくともほぼ等張な濃度のトレハロースおよびスクロースからなる群より選択される糖; (ii)約6.5〜約7.7のpHの無機リン酸バッファー; (iii)緩衝する量の有機スルホン酸バッファー; (iv)トランスフェクションを促進する量の、ナトリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩; (v)該アルカリまたはアルカリ土類金属をキレート化する量のキレート剤; (vi)細胞透過性を向上させる量のアルキルメチルスルホキシド;および (vii)細胞を保持する量のヌクレオチド三リン酸を含み、ナトリウムイオンを実質的に欠く、バッファー溶液。 糖濃度が約125 mM〜約300 mMである、請求項1記載のバッファー溶液。 有機スルホン酸バッファーが、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルエタンスルホン酸、3-モルフォリノプロパンスルホン酸、および3-モルフォリノエタンスルホン酸からなる群より選択されるメンバーであり、かつ約15 mM〜約50 mMの濃度である、請求項1記載のバッファー溶液。 ナトリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩が、塩化物塩であり、かつ約1 mM〜約20 mMの濃度である、請求項1記載のバッファー溶液。 ナトリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩が、塩化マグネシウムであり、かつ約1 mM〜約10 mMの濃度である、請求項1記載のバッファー溶液。 キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸およびエチレングリコール四酢酸からなる群より選択されるメンバーであり、かつ約1 mM〜約20 mMの濃度である、請求項1記載のバッファー溶液。 キレート剤がエチレングリコール四酢酸であり、かつ約1 mM〜約5 mMの濃度である、請求項1記載のバッファー溶液。 アルキルメチルスルホキシドが、ジメチルスルホキシドであり、かつ約0.3重量%〜約3重量%の濃度で存在する、請求項1記載のバッファー溶液。 ヌクレオチド三リン酸が、約1 mM〜約10 mM濃度のアデノシン三リン酸である、請求項1記載のバッファー溶液。 糖が約125 mM〜約300 mMのトレハロースであり、無機リン酸バッファーが約7.2〜約7.6のpHおよび約3 mM〜約10 mMの濃度のリン酸カリウムであり、有機スルホン酸バッファーが約15 mM〜約50 mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルエタンスルホン酸であり、ナトリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩が約1 mM〜約10 mMの塩化マグネシウムであり、キレート剤が約1 mM〜約5 mMのエチレングリコール四酢酸であり、かつアルキルメチルスルホキシドがジメチルスルホキシドでありかつ約0.3重量%〜約3重量%の濃度である、請求項1記載のバッファー溶液。 糖が約125 mM〜約300 mMのスクロースであり、無機リン酸バッファーが約7.2〜約7.6のpHおよび約3 mM〜約10 mMの濃度のリン酸カリウムであり、有機スルホン酸バッファーが約15 mM〜約50 mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルエタンスルホン酸であり、ナトリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩が約1 mM〜約10 mMの塩化マグネシウムであり、キレート剤が約1 mM〜約5 mMのエチレングリコール四酢酸であり、かつアルキルメチルスルホキシドがジメチルスルホキシドでありかつ約0.3重量%〜約3重量%の濃度である、請求項1記載のバッファー溶液。 以下の段階を含む、エレクトロポレーションによって外因性の種を哺乳動物細胞にトランスフェクトするための方法:(a)(i)該細胞に関して少なくともほぼ等張な濃度のトレハロースおよびスクロースからなる群より選択される糖; (ii)約7.2〜約7.6のpHの無機リン酸バッファー; (iii)緩衝する量の有機スルホン酸バッファー; (iv)トランスフェクションを促進する量の、ナトリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩; (v)該アルカリまたはアルカリ土類金属をキレート化する量のキレート剤; (vi)細胞透過性を向上させる量のアルキルメチルスルホキシド;および (vii)細胞を保持する量のヌクレオチド三リン酸を含み、ナトリウムイオンを実質的に欠くバッファー溶液中で、該細胞を外因性の種の溶液と接触させる段階、ならびに (b)パルス状電圧を該溶液に印加して、該外因性の種による該細胞のトランスフェクションを達成する段階。 糖濃度が約125 mM〜約300 mMである、請求項12記載の方法。 有機スルホン酸バッファーが、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルエタンスルホン酸、3-モルフォリノプロパンスルホン酸、および3-モルフォリノエタンスルホン酸からなる群より選択されるメンバーであり、かつ約15 mM〜約50 mMの濃度である、請求項12記載の方法。 ナトリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩が、塩化物塩であり、かつ約1 mM〜約20 mMの濃度である、請求項12記載の方法。 ナトリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩が、塩化マグネシウムであり、かつ約1 mM〜約10 mMの濃度である、請求項12記載の方法。 キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸およびエチレングリコール四酢酸からなる群より選択されるメンバーであり、かつ約1 mM〜約20 mMの濃度である、請求項12記載の方法。 キレート剤がエチレングリコール四酢酸であり、かつ約1 mM〜約5 mMの濃度である、請求項12記載の方法。 アルキルメチルスルホキシドが、ジメチルスルホキシドであり、かつ約0.3重量%〜約3重量%の濃度で存在する、請求項12記載の方法。 ヌクレオチド三リン酸が、約1 mM〜約10 mM濃度のアデノシン三リン酸である、請求項12記載の方法。 糖が約125 mM〜約300 mMのトレハロースであり、無機リン酸バッファーが約7.2〜約7.6のpHおよび約3 mM〜約10 mMの濃度のリン酸カリウムであり、有機スルホン酸バッファーが約15 mM〜約50 mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルエタンスルホン酸であり、ナトリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩が約1 mM〜約10 mMの塩化マグネシウムであり、キレート剤が約1 mM〜約5 mMのエチレングリコール四酢酸であり、かつアルキルメチルスルホキシドがジメチルスルホキシドでありかつ約0.3重量%〜約3重量%の濃度である、請求項12記載の方法。 糖が約125 mM〜約300 mMのスクロースであり、無機リン酸バッファーが約7.2〜約7.6のpHおよび約3 mM〜約10 mMの濃度のリン酸カリウムであり、有機スルホン酸バッファーが約15 mM〜約50 mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルエタンスルホン酸であり、ナトリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩が約1 mM〜約10 mMの塩化マグネシウムであり、キレート剤が約1 mM〜約5 mMのエチレングリコール四酢酸であり、かつアルキルメチルスルホキシドがジメチルスルホキシドでありかつ約0.3重量%〜約3重量%の濃度である、請求項12記載の方法。 無機リン酸バッファー、有機スルホン酸バッファー、アルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩、キレート剤、アルキルメチルスルホキシド、およびヌクレオチド三リン酸に加えて、トレハロース、スクロース、またはその両方を含み、実質的にナトリウムを含まないバッファー溶液の使用により、哺乳動物細胞のエレクトロポレーションを高効率で実施する。本バッファー溶液は、バッファー溶液に懸濁された細胞のエレクトロポレーションと、表面に固定された細胞のエレクトロポレーションの両方において有効である。