タイトル: | 特許公報(B2)_固形製剤用のコーティング剤及びこれを用いた固形製剤 |
出願番号: | 2010502107 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 47/32,A61K 47/04,A61K 47/26,A61K 9/32 |
林 有紀 藤崎 由記 吉井 良二 JP 5609639 特許公報(B2) 20140912 2010502107 20091225 固形製剤用のコーティング剤及びこれを用いた固形製剤 東レ株式会社 000003159 林 有紀 藤崎 由記 吉井 良二 JP 2008329678 20081225 20141022 A61K 47/32 20060101AFI20141002BHJP A61K 47/04 20060101ALI20141002BHJP A61K 47/26 20060101ALI20141002BHJP A61K 9/32 20060101ALI20141002BHJP JPA61K47/32A61K47/04A61K47/26A61K9/32 A61K 47/00 A61K 9/00 特開昭51−057815(JP,A) 特開昭51−057814(JP,A) 特開昭51−070708(JP,A) 特開2009−007295(JP,A) 5 JP2009071573 20091225 WO2010074223 20100701 19 20120720 清野 千秋 本発明は、固形製剤用のコーティング剤及びこれを用いた固形製剤に関する。 医薬品の多くは、酸素や水蒸気に不安定であり、無包装の状態で放置するとその約4割に何らかの変化が生じ、医薬品の品質上、致命的な問題となることが知られている。そのため、市販医薬品、特に固形製剤のほとんどは、PTP(press through pack)シート等の包装材で包装され、酸素や水蒸気から守られている。近年では、水蒸気バリア性(防湿性)と酸素バリア性に優れたポリ塩化ビニリデンを積層したPTPシートが開発され、実用化されている。 固形製剤の酸素や水蒸気に対する安定性を高める手法としては、固形製剤を糖衣する手法や高分子物質でフィルムコーティングする手法が実用化されている。後者のフィルムコーティングする手法では、酸素バリア性を発揮する高分子物質としてポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロースナトリウムが知られ、水蒸気バリア性を発揮する高分子物質としてアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(EudragitEPO(登録商標);デグサ社)が知られている。 最近では、酸素バリア性を改善した高分子物質として、ポリビニルアルコールと重合性ビニル単量体とを共重合させた樹脂組成物(特許文献1)や、ポリビニルアルコールにタルクと界面活性剤とを添加したコーティング剤(特許文献2)が開発され、固形製剤の安定性を高める試みがなされている。また、包装用フィルムの分野では、高湿度下でのガスバリア性(酸素バリア性及び水蒸気バリア性)を向上させる手法として、ポリビニルアルコールに層間化合物を分散させる手法が提案されている(特許文献3〜4)。 一方、医療現場や調剤薬局では、処方された薬の飲み忘れや服用する用量の間違いを防止するため、1回に服用する複数の医薬品をそれぞれPTPシート等の包装材から出し、1つの袋にまとめて提供する一包化調剤が普及している。国際公開05/019286号パンフレット特開2006−188490号公報特開平11―315222号公報特開平9―150484号公報 しかしながら、一包化調剤に使用する医薬品は、市販段階ではPTPシート等の包装材によって酸素や水蒸気に対する安定性が確保されているが、医療現場等では無包装の状態で長期間保管されるため、医薬品の品質低下を引き起こす危険性がある。 この危険性を防ぐために、固形製剤を糖衣する手法があるが、固形製剤の糖衣には長い作業時間を要するだけでなく、固形製剤が大きくなり過ぎて患者の服用が困難になるため、この手法を適用できるケースが制限されてしまうのが現状である。また、現行の固形製剤をフィルムコーティングする手法では、高湿度下では十分な酸素バリア性を発揮できないのが現状であり、特許文献1に記載された樹脂組成物を使用した場合であっても、その酸素バリア性はPTPシート等の包装材には及ばないものである。なお、包装用フィルムの分野では、酸素バリア性に優れたコーティング剤が存在するが、これらは基材フィルムとの積層フィルムであるため、固形製剤には適用できないものである。 そこで本発明の目的は、無包装の状態でも一包化調剤が可能な程度に、固形製剤中の薬効成分の品質を長期間安定的に保持できる固形製剤用のコーティング剤を提供することにある。 上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ね、高水素結合性樹脂中で膨潤性粘土が特定の積層構造をとるコーティング剤が、PTPシートと同等又はそれ以上のガスバリア性(酸素透過係数:1×10−4cm3・mm/cm2・24hr・atm未満;水蒸気透過度:1×10−4g・mm/cm2・24hr・atm未満)を固形製剤に付与することを見出した。 すなわち本発明は、高水素結合性樹脂と、膨潤性粘土とを含む固形製剤用のコーティング剤を提供する。このコーティング剤は、固形製剤に被覆(コーティング)して乾燥させると、上記膨潤性粘土の積層構造体が面配向し、網目状に分散している皮膜を形成するため、コーティング剤のガスバリア性をPTP包装材と同等又はそれ以上に高めることができ、さらに、形成される皮膜は糖衣と比べて薄いため、患者の服用に悪影響をもたらすこともない。 上記コーティング剤は、上記皮膜の縦断面の面積に対する、面配向している上記積層構造体の占める面積の割合が30%以上であることが好ましく、高水素結合性樹脂と膨潤性粘土との質量比が、4:6〜6:4であることがより好ましい。この場合には、膨潤性粘土の積層構造体同士の絡み合いが起こりやすくなり、生じた皮膜のガスバリア性をさらに高めることができる。 また上記コーティング剤は、糖アルコール誘導体型界面活性剤を含むことが好ましく、この場合には、上記高水素結合性樹脂と上記膨潤性粘土との質量比は、2:8〜5:5であることが好ましく、上記糖アルコール誘導体型界面活性剤の含有率は、7〜35%であることが好ましい。上記コーティング剤が糖アルコール誘導体型界面活性剤を含んでいれば、形成された皮膜の酸素透過係数及び水蒸気透過度をより低くすることができ、固形製剤中の薬効成分の酸素や水蒸気に対する安定性をさらに高めることができる。 上記高水素結合性樹脂は、ポリビニルアルコールであることが好ましく、上記膨潤性粘土は、ベントナイトであることが好ましい。ポリビニルアルコールは、低湿度下での酸素バリア性を高め、ベントナイトは、高水素結合性樹脂層の表面方向と平行に面配向して迷路効果を生じさせ、高湿度下でのガスバリア性を高めることができる。 上記糖アルコール誘導体型界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルであることが好ましい。上記コーティング剤がソルビタン脂肪酸エステルを含有すれば、膨潤性粘土の分散性を高め、高湿度下でのガスバリア性を高めることができる。 また本発明は、上記コーティング剤で被覆された固形製剤を提供する。この固形製剤は、無包装の状態でも一包化調剤が可能な程度に、固形製剤中の薬効成分の安定性を長期間保持できる。 本発明によれば、服用に悪影響をもたらさない程度の薄い皮膜として固形製剤を被覆でき、PTPシート等の包装材と同等又はそれ以上のガスバリア性を固形製剤に付与できる。このため、上記コーティング剤で被覆した固形製剤は、無包装の状態であっても固形製剤中の薬効成分の安定性を長期間保持でき、医薬品の品質低下をもたらすことなく一包化調剤に使用できる。 また本発明のコーティング剤は、防湿性に優れていながら崩壊性にも優れているため、徐放性製剤のみならず、速放性製剤への被覆にも適用できる。さらに、本発明のコーティング剤は、当業者に一般的に使用されるコーティング装置、例えば、連続通気式コーティング装置、流動層コーティング装置、パンコーター等を用いて製造できるため、汎用性があり、固形製剤への被覆作業を容易に行うことができる。実施例1の皮膜の集束イオンビーム透過型電子顕微鏡像である。実施例2の皮膜の集束イオンビーム透過型電子顕微鏡像である。実施例3の皮膜の集束イオンビーム透過型電子顕微鏡像である。比較例4の皮膜の集束イオンビーム透過型電子顕微鏡像である。比較例5の皮膜の集束イオンビーム透過型電子顕微鏡像である。アスコルビン酸錠剤の薬物残存率の推移を示したグラフである。臭化プロパンテリン錠剤の薬物残存率の推移を示したグラフである。 以下、本発明を実施するための好ましい実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、特に明記することがない限り、「%」は「質量対質量百分率(w/w%)」を表す。 本発明のコーティング剤は、高水素結合性樹脂と、膨潤性粘土とを含むことを特徴としており、固形製剤に被覆して乾燥させると、上記膨潤性粘土の積層構造体が面配向し、網目状に分散している皮膜を形成するため、コーティング剤のガスバリア性をPTP包装材と同等又はそれ以上に高めることを可能にするものである。 「コーティング剤」とは、固形製剤に被覆して薄い皮膜を作ることにより、固形製剤に含まれる薬効成分が、酸素、水蒸気、光等によって分解等されるのを防ぐために使用する組成物のことである。上記コーティング剤は、使用目的に合わせて、適当な溶媒に分散させて調製し、固形製剤を被覆したり、皮膜やフィルム製剤を製造したりするのに使用できる。なお、皮膜は、コーティング剤又はコーティング剤を含む溶液から溶媒(水分等)を乾燥させれば得ることができ、フィルム製剤は、コーティング剤に薬効成分を加え、同様に乾燥させれば得ることができる。 上記の溶媒としては、水、炭素数1〜5以下の鎖式(低級アルコール)又はこれらの混合溶媒を例示できるが、水が特に好ましい。 「高水素結合性樹脂」とは、樹脂中の水素結合性基の含有量が多い樹脂をいい、例えば、樹脂単位質量当りの水素結合性基の質量が5〜60%の割合を満足する高水素結合性樹脂が挙げられる。水素結合性基としては、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられ、上記コーティング剤に使用される高水素結合性樹脂としては、水酸基の含有量が高い樹脂がより適している。上記の高水素結合性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、多糖類が挙げられ、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましく、ポリビニルアルコールがより好ましい。ポリビニルアルコールは、その誘導体も含んでいてもよい。なお、上記の高水素結合性樹脂は、ガスバリア性が低下しない範囲内であれば、これらを組み合わせて使用してもよい。 上記のポリビニルアルコールとは、一般にポリ酢酸ビニルをケン化して得られるもののことをいい、酢酸基が数10%残存している部分ケン化ポリビニルアルコールから酢酸基が数%しか残存していない完全ケン化ポリビニルアルコールまでを含む。ポリビニルアルコールのケン化度は、70〜97モル%が好ましい。平均重合度は、200〜3000が好ましく、600〜2400がより好ましい。なお、上記のポリビニルアルコールには、ケン化度及び平均重合度の異なる2種類以上のポリビニルアルコールを混合して使用してもよい。2種類以上のポリビニルアルコールを混合する場合には、例えば、低重合度グレードのものを添加し、続いて高重合度グレードのものを混合する方法がある。ポリビニルアルコールとしては、各種のポバール(クラレ社)、ゴーセノール(日本合成化学工業)等を例示できる。 「膨潤性粘土」とは、膨潤性を有する粘土のことであるが、より詳細には、適量の水を含んでいるときに粘性と可塑性を示す微粉の物質のうち、膨潤性を有している物質のことをいう。 膨潤性粘土は、金属塩種の組成バランスにより、負の電荷に帯電しているものが好ましく、3層構造を有する含水ケイ酸アルミニウムのようなスメクタイトが例示できる。 負の電荷に帯電とは、膨潤性粘土がカチオン交換性を有する状態をいい、その帯電量はカチオン交換容量(CEC:Cation Exchange Capacity)として表記される。なお、カチオン交換容量の単位はミリグラム当量/100グラム(通常、meq/100gと表記される。)であり、一般的には1価のイオンのモル濃度に相当する当量数として表される。 スメクタイトには、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、ベントナイト、ケイ酸マグネシウムアルミニウム等があり、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。スメクタイトの中では、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ベントナイトが好ましく、ベントナイトがより好ましい。なお、上記の膨潤性粘土は、ガスバリア性が低下しない範囲内であれば、これらを組み合わせて使用してもよい。 「固形製剤」とは、固形の製剤のことであり、例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、フィルム剤等が挙げられる。 固形製剤への被覆方法としては、例えば、錠剤状であれば、コーティングパン、錠剤用コーティング機等を使用した被覆方法が挙げられ、顆粒状や粉末状であれば、流動層コーティング機、転動流動層コーティング機等を使用した被覆方法が挙げられる。 「積層構造体」とは、層状の構造物が複数積み重なってできる積層された構造体のことをいい、「面配向」とは、基準とする面に対して平行に配置することをいう。すなわち、「膨潤性粘土の積層構造体が面配向し、網目状に分散している皮膜」とは、膨潤性粘土の帯状物が10〜100層積み重なって積層構造体を形成し、この積層構造体が皮膜の横断面(皮膜表面に対して平行な断面)に対してほぼ平行に並び、各帯状物が皮膜中で網目状に分散している皮膜のことをいう。この場合、各帯状物は、完全に平行に配向しているだけでなく、うねりをもって配向したり、前後左右を走る帯状物と接近したり離れたりしながら配向していてもよい。 上記の固形製剤用のコーティング剤は、固形製剤の表面に酸素や水蒸気の透過を防ぐ薄い被膜を形成できるため、PTPシート等の包装材と同等又はそれ以上のガスバリア性(酸素透過係数:1×10−4cm3・mm/cm2・24hr・atm未満;水蒸気透過度:1×10−4g・mm/cm2・24hr・atm未満)を固形製剤に付与することが可能となる。 上記コーティング剤は、上記皮膜の縦断面(皮膜表面に対して垂直な断面)の面積に対する、面配向している上記積層構造体の占める面積の割合が、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、42%以上であることがさらに好ましい。い。 また上記コーティング剤は、高水素結合性樹脂と膨潤性粘土との質量比が、4:6〜6:4であることが好ましい。高水素結合性樹脂と膨潤性粘土の質量比が3:7以下になるとコーティング剤の粘度が高くなり、スプレーが困難になる場合がある。この場合、コーティング剤の濃度を下げることでスプレーが可能となり得るが、製造時間が長くなる等の別の問題が生じる場合がある。また、高水素結合性樹脂と膨潤性粘土の質量比が7:3以上になると、PTPシート等の包装材と同等又はそれ以上のガスバリア性が得られなくなる場合がある。 「糖アルコール誘導体型界面活性剤」とは、分子内に糖アルコール骨格を有する界面活性剤のことをいう。糖アルコールの種類としては、マンニトール、キシリトール、マルチトール、トレハロース、イノシトール、ソルビトール等が挙げられる。糖アルコールに疎水基がエステル結合した構造を有するものとしては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、ポリグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。 上記コーティング剤に使用される糖アルコール誘導体型界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが好ましく、ソルビタン脂肪酸エステルがより好ましい。また、ソルビタン脂肪酸エステルの中では、モノエステル体の比率が高いものが好ましく、HLB(Hydrophilic Lypophilic Balance)は4〜10の範囲のものが好ましい。さらに、その疎水基を構成するアシル基は、飽和、不飽和、直鎖、分岐鎖の何れでもよいが、炭素数12〜18であることが好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエートを例示でき、上記コーティング剤に好適に使用できる。なお、上記の糖アルコール誘導体型界面活性剤は、ガスバリア性が低下しない範囲内であれば、これらを組み合わせて使用してもよい。 上記コーティング剤が糖アルコール誘導体型界面活性剤を含む場合、高水素結合性樹脂と膨潤性粘土との質量比は、2:8〜5:5が好ましく、2:8〜4:6がより好ましく、2:8〜3:7がさらに好ましい。高水素結合性樹脂と膨潤性粘土の質量比が1:9以下になると被覆剤の粘度が高くなり、被覆操作が困難になる。この場合、溶媒を加えてコーティング剤の濃度を下げることで被覆可能となり得るが、製造時間が長くなるといった別の問題が生じる。また、高水素結合性樹脂と膨潤性粘土の質量比が6:4以上になると、PTPシート等の包装材と同等又はそれ以上のガスバリア性が得られなくなる場合がある。 上記糖アルコール誘導体型界面活性剤の含有率は、上記高水素結合性樹脂と上記膨潤性粘土との比率によって異なるが、7〜35%であることが好ましく、10〜30%であることがより好ましく、12〜24%であることがさらに好ましい。ここで、「糖アルコール誘導体型界面活性剤の含有率」とは、高水素結合性樹脂と膨潤性粘土に糖アルコール誘導体型界面活性剤を加えて得られる混合物全体に対する糖アルコール誘導体型界面活性剤の割合(%)を示している。糖アルコール誘導体型界面活性剤を添加することにより、固形製剤への被覆が容易となり、得られた皮膜のガスバリア性が向上するが、高水素結合性樹脂と膨潤性粘土との質量比によっては、糖アルコール誘導体型界面活性剤の含有率が6%以下又は36%以上になると、PTPシート等の包装材と同等又はそれ以上のガスバリア性が得られない場合がある。 上記コーティング剤には、ガスバリア性が低下しない範囲内であれば、薬学的に許容される添加剤を加えてもよい。例えば、マルトース、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、ブドウ糖、ラクチトール、イソマルトース、乳糖、エリスリトール、マンニトール、トレハロース若しくはショ糖などの糖類若しくは糖アルコール類、クロスカルメロースナトリウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを膨潤性崩壊剤として添加すれば皮膜の崩壊性を向上させることができ、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール又はグリセリンを可塑剤として添加すれば皮膜の強度を向上させることができる。 また上記コーティング剤には、当業者がフィルムコーティングに通常使用している添加剤をさらに加えてもよい。このような添加剤としては、植物抽出色素等の着色剤、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素等の遮蔽剤が挙げられる。 本発明の固形製剤は、上記のコーティング剤で被覆されていることを特徴としている。 上記固形製剤としては、例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、フィルム剤が挙げられる。 上記固形製剤は、胃溶性や腸溶性の高分子物質等からなる他の皮膜を有する固形製剤の表面に上記コーティング剤の皮膜を有するものであってもよく、上記コーティング剤の皮膜を有する固形製剤の表面に胃溶性や腸溶性の高分子物質等からなる他の皮膜を有するものであてもよい。 以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。 膨潤性粘土の分散状態、酸素透過係数及び水蒸気透過度は、コーティング剤から得られた皮膜(フィルム)を用いて測定した。(膨潤性粘土の分散状態の評価方法) 集束イオンビーム法を用い、ガドリニウムイオンビームにより皮膜を薄膜化した(FB−2000A;ハイテクマニファクチャ&サービス社)。薄膜化した皮膜を透過型電子顕微鏡(H−9000UHR;日立ハイテクマニファクチャ&サービス社)で観察し、膨潤性粘土の積層数を目視で測定した。 膨潤性粘土が皮膜の横断面(皮膜表面に対して平行な断面)に対して面配向する場合は、焦点の合ったはっきりとした顕微鏡像が得られ、膨潤性粘土の単層(厚み約1nm)及びその積層構造体を観察することができる。一方、面配向していない場合は、焦点の合わないぼやけた顕微鏡像となる。このため、皮膜の横断面に対して面配向した膨潤性粘土の積層構造体の割合は、焦点の合った該積層構造体の顕微鏡像の面積を、観察範囲(2.5μm×2.5μm四方)の面積で除することにより算出した。面積の数値化は、NIHimageによる画像解析により行った。(酸素透過係数の測定方法) 酸素透過係数の測定は、当該技術分野の標準規格であるJIS K7126−1(2006)ガスクロマトグラフ法によるガス透過度試験方法に基づき、酸素透過係数測定装置(GTR―30XAD2及びG2700T・F;GTRテック社)を使用して、23±2℃の温度で、0%相対湿度(0%RH)と90%相対湿度(90%RH)の条件で測定した。以下、相対湿度をRHと略す。(水蒸気透過度の測定方法) 水蒸気透過度の測定は、当該技術分野の標準規格であるJIS K8123(1994)を一部改変して試験した。まず、以下に記載した方法で調製した皮膜を光に透かし、ピンホールのない均一な厚さの部分を直径が3.5cmとなるように円形に切り取り、任意の5箇所で皮膜の厚みを測定した。次に、3gの塩化カルシウム(850〜2000μmの粒度)をアルミニウムカップ(直径30mm)に入れ、アルミニウムカップの上に円形に切り取った皮膜と皮膜固定用のリングを順に乗せ、リングの上におもりを乗せてリングを固定し、その状態で溶融したパラフィンワックスをアルミニウムカップの縁に流し込んだ。パラフィンワックスが固化した後、おもりを取り除き、アルミニウムカップ全体の質量を量り、開始時質量とした。その後、アルミニウムカップを40℃、75%RHの恒温槽に入れ、24時間毎に取り出して質量を測定し、以下の式を用いて水蒸気透過係数を算出した。ただし、以下に記載した水蒸気透過度の測定試験においては、いずれもr=1.5cm、t=24時間、C=1atmであった。 水蒸気透過度P(g・mm/cm2・24hr・atm)=W・A/B・t・C W:24時間で増加した質量(g) A:5箇所の皮膜の厚みの平均値(mm) B:透過面積πr2(cm2) t:経過時間(時間) C:気圧(atm)(参考例1)ポリビニルアルコール系皮膜の調製 42.5質量部の水、7.5質量部のOPADRY II HP(商標登録)(日本カラコン社)を加えて攪拌混合し、分散液を得た。その後、この分散液を底面が平坦なポリプロピレン製トレイに注ぎ、水平を保った状態で50℃のオーブンで終夜乾燥させ、皮膜を得た。この皮膜は、ポリビニルアルコール(PVA)系皮膜である。以下、ポリビニルアルコールをPVAと略す。(参考例2)変性PVA系皮膜の調製 45.0質量部の水、3.5質量部のPOVACOAT(商標登録)(日新化成社)、1.0質量部の酸化チタン、0.5質量部のタルクを加えて攪拌混合して分散液を得、参考例1と同様の方法で皮膜を得た。この皮膜は、変性PVA系皮膜である。(参考例3)カルボキシメチルセルロースナトリウム系皮膜の調製 46.5質量部の水、3.5質量部のOPAGLOS2(商標登録)(日本カラコン社)を加えて攪拌混合して分散液を得、参考例1と同様の方法で皮膜を得た。この皮膜は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)系の皮膜である。以下、カルボキシメチルセルロースナトリウムをCMCと略す。 表1は、固形製剤の被覆に使用されている参考例1〜3の皮膜の酸素透過係数と水蒸気透過度を測定した結果を示したものである。 表1より、酸素透過係数及び水蒸気透過度がともに1×10−4未満となるのはPTP包装材のみであり、固形製剤の被覆に使用されている参考例1〜3の皮膜のガスバリア性は、PTP包装材と比較して顕著に劣ることが明らかとなった。(実施例1) 42.55質量部の水に、1.2質量部のPVA(EG−05;日本合成化学社)、56.25質量部の3.2%ベントナイト溶液を加え、ホモジナイザー(ポリトロン Model KR)で攪拌し、分散液を得た。3.2%ベントナイト溶液は、攪拌した968質量部の水に32質量部のベントナイト(クニピア‐F;クニミネ工業)(カチオン交換能:115meq/100g)を添加し、ホモジナイザーにて均一分散させ、濾紙で吸引濾過したものを用いた。以下、ベントナイトをBTと略す。 この分散液を、ポリプロピレンバランストレイの裏面にスプレー噴霧し、直ちにドライヤーの温風で乾燥した。スプレー噴霧とドライヤー乾燥を数回繰り返した後、50℃のオーブンにバランストレイごと静置して一晩乾燥した。その後、バランストレイから皮膜を剥離して実施例1の皮膜を得た。(実施例2) 137.0質量部の水に2.64質量部のPVA(EG−05;日本合成化学社)、192.5質量部の3.2%BT溶液及び1.2質量部のソルビタンモノラウレート(Span20;和光純薬社)を加え、ホモジナイザー(ポリトロン Model KR)で攪拌し、分散液を得た。この分散液から、実施例1の方法で実施例2の皮膜を得た。(比較例1) 42.55質量部の水に、1.2質量部のヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC-5W;信越化学工業)、56.25質量部の3.2%BT溶液を加え、ホモジナイザー(ポリトロン Model KR)で攪拌し、分散液を得た。この分散液から、実施例1の方法で比較例1の皮膜を得た。以下、ヒドロキシプロピルメチルセルロースをHPMCと略す。(比較例2) 96.4質量部の水に、10.0質量部のPVAを加え、攪拌機で攪拌して分散液を得た。この分散液から、実施例1の方法で比較例2の皮膜を得た。(比較例3) 56.7質量部の水に、2.64質量部のPVA、6.16質量部のタルク及び1.2質量部のソルビタンモノラウレートを加え、ホモジナイザーで攪拌して分散液を得た。この分散液から、実施例1の方法で比較例3の皮膜を得た。 表2は、実施例1、2及び比較例1〜3で得られた皮膜の酸素透過係数と水蒸気透過度を測定した結果を示したものである。 その結果、皮膜の酸素透過係数及び水蒸気透過度の低下には、HPMCよりもPVA、すなわち、高水素結合性樹脂の方が顕著な効果を示すことが明らかとなった(実施例1と比較例1との比較)。また、皮膜中にBT、すなわち膨潤性粘土が含まれることにより、皮膜の酸素透過係数及び水蒸気透過度のいずれもが顕著に低下し(実施例1と比較例2との比較)、この作用は、BTの代わりにタルクを使用した場合と比較して顕著なものであった(実施例2と比較例3との比較)。これらの結果より、実施例1及び2におけるPVAとBTとを一定の割合で含む皮膜及びPVAとBTとソルビタンモノラウレートとを一定の割合で含む皮膜は、酸素透過係数及び水蒸気透過度のいずれもが1×10−4未満となり、PTP包装材と同等又はそれ以上のガスバリア性を有することが明らかとなった。(皮膜の透過型電子顕微鏡測定) 集束イオンビーム法を用い、実施例1及び2の皮膜の縦断面を透過型電子顕微鏡で観察した。実施例1の顕微鏡像を図1に、実施例2の顕微鏡像を図2に示す。(実施例3) 51.6質量部の水に、1.5質量部のPVA、46.9質量部の3.2%BT溶液を加え、実施例1の方法で実施例3の皮膜を得た。集束イオンビーム法を用い、実施例3の皮膜の断面を、透過型電子顕微鏡で観察した。顕微鏡像を図3に示す。(比較例4) 33.5質量部の水に、0.9質量部のPVA、65.6質量部の3.2%BT溶液を加え、実施例1の方法で比較例4の皮膜を得て、実施例3の方法で皮膜の断面を観察した。図4に顕微鏡像を示す。(比較例5) 89.9質量部の水に、2.25質量部のPVA、7.8質量部の3.2%BT溶液を加え、実施例1の方法で比較例5の皮膜を得て、実施例3の方法で皮膜の断面を観察した。図5に顕微鏡像を示す。 表3は、実施例1〜3並びに比較例4及び5で得られた皮膜のBTの分散状態並びに酸素透過係数及び水蒸気透過度を示したものである。 その結果、皮膜の横断面に対して面配向したBTの積層構造体の割合が30%以上を占める場合に、PTP包装材と同等又はそれ以上のガスバリア性が得られることが明らかとなった。(実施例4) 表4に示した構成で、水、PVA及びBT溶液を混合し、実施例1の方法で皮膜を得て、酸素透過係数(23℃・90%RH)及び水蒸気透過度(40℃・75%RH)を測定した。(比較例6) 表4に示した構成で、水、PVA及びBT溶液を混合し、実施例1の方法で分散液を得た。実施例1の方法で皮膜を得て、酸素透過係数(23℃・90%RH)及び水蒸気透過度(40℃・75%RH)を測定した。 表4は、PVAとBTとの質量比(PVA/BT)が酸素透過係数及び水蒸気透過度に及ぼす影響を示したものである。 その結果、PVAとBTとの質量比(PVA/BT)が4:6〜6:4(4/6〜6/4)の場合に、酸素透過係数及び水蒸気透過度のいずれもが1×10−4未満となり、PTP包装材と同等又はそれ以上のガスバリア性が得られることが判明した。(実施例5〜7及び比較例7〜9) 水、PVA、BT溶液及び各界面活性剤を混合し、実施例2の方法で分散液を得た。実施例1の方法で皮膜を得て、酸素透過係数(23℃・90%RH)及び水蒸気透過度(40℃・75%RH)を測定した。 表5は、界面活性剤の種類が酸素透過係数及び水蒸気透過度に及ぼす影響を示したものである。PVAとBTと界面活性剤との質量比(PVA/BT/界面活性剤)は、26.4:61.6:12(26.4/61.6/12)に固定して評価した。 その結果、ソルビタンモノラウレートに加え、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート及びショ糖ステアリン酸エステルの添加によっても、酸素透過係数及び水蒸気透過度はいずれも1×10−4未満となり、PTP包装材と同等又はそれ以上のガスバリア性が得られることが明らかとなった。このことは、糖アルコール誘導体型の界面活性剤は、ガスバリア性の向上に寄与していることを示唆している。(実施例8〜10) 表6に示した構成で、水、PVA、BT溶液及びソルビタンモノラウレートを混合し、実施例1の方法で分散液を得た。実施例1の方法で皮膜を得て、酸素透過係数(23℃・90%RH)及び水蒸気透過度(40℃・75%RH)を測定した。(比較例10及び11) 表6に示した構成で、水、PVA、BT溶液及びソルビタンモノラウレートを混合し、実施例2の方法で分散液を得た。実施例1の方法で皮膜を得て、酸素透過係数(23℃・90%RH)及び水蒸気透過度(40℃・75%RH)を測定した。 表6は、PVAとBTとの質量比(PVA/BT)が酸素透過係数及び水蒸気透過度に及ぼす影響を示したものである。なお、ソルビタンモノラウレートの含有率はいずれも12%とした。 その結果、ソルビタンモノラウレートの添加によって、PVAとBTとの質量比(PVA/BT)が2:8〜5:5(2/8〜5/5)の場合に、酸素透過係数及び水蒸気透過度はいずれも1×10−4未満となり、PTP包装材と同等又はそれ以上のガスバリア性が得られることが判明した。(実施例11及び12並びに比較例12) 表7に示した構成で、水、PVA、BT溶液及びソルビタンモノラウレートを混合し、実施例2の方法で分散液を得た。実施例1の方法で皮膜を得て、酸素透過係数(23℃・90%RH)及び水蒸気透過度(40℃・75%RH)を測定した。 表7は、ソルビタンモノラウレートの含有率が酸素透過係数及び水蒸気透過度に及ぼす影響を示したものである。なお、PVAとBTとの質量比(PVA/BT)は、5:5(5/5)に固定して評価した。 その結果、PVA/BT=5/5の場合には、ソルビタンモノラウレートの含有率は、0〜24%の範囲内において、酸素透過係数及び水蒸気透過度はいずれも1×10−4未満となり、PTP包装材と同等又はそれ以上のガスバリア性が得られることが明らかとなった。(実施例13及び14並びに比較例13及び14) 表8に示した構成で、水、PVA、BT溶液及びソルビタンモノラウレートを混合し、実施例2の方法で分散液を得た。実施例1の方法で皮膜を得て、酸素透過係数(23℃・90%RH)及び水蒸気透過度(40℃・75%RH)を測定した。 表8は、ソルビタンモノラウレートの含有率が酸素透過係数及び水蒸気透過度に及ぼす影響を示したものである。なお、PVAとBTとの質量比(PVA/BT)は、2:8(2/8)に固定して評価した。 その結果、PVA/BT=2/8の場合には、ソルビタンモノラウレートの含有率は、12〜36%の範囲内において、酸素透過係数及び水蒸気透過度はいずれも1×10−4未満となり、PTP包装材と同等又はそれ以上のガスバリア性が得られることが明らかとなった。(比較例15)(アスコルビン酸含有錠剤の製造) 酸素及び水蒸気に対するバリア性を評価するために、酸素及び水蒸気に不安定なアスコルビン酸含有錠剤を製造した。 まず、乳糖、結晶セルロース及びヒドロキシプロピルセルロース−SLを攪拌造粒機に投入し、硫酸銅・5水和物を溶解した水で造粒した。得られた造粒物を50℃で終夜乾燥し、コーミルで粉砕し、造粒物Aを得た。その後、造粒物Aとアスコルビン酸を攪拌造粒機に投入し、エタノールで造粒後、50℃で2時間乾燥し、コーミルで粉砕し、造粒物Bを得た。引き続き、造粒物Bと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを混合し、ロータリー打錠機(菊水)にて打錠し、アスコルビン酸含有錠剤を得た(直径8mm、12R)。こうして得られたコーティング剤で被覆されていないアスコルビン酸含有錠剤を比較例15とした。(実施例15)(実施例2の分散液で被覆されたアスコルビン酸含有コーティング錠剤の製造) 比較例15のアスコルビン酸錠剤400gをコーティングパン(Hi−Coater mini;フロイント産業)に仕込み、実施例2で調製した分散液をコーティング剤としてアスコルビン酸含有錠剤に被覆した。コーティング厚みが60μmになるまでコーティング剤を被覆し、アスコルビン酸含有コーティング錠剤を得た。こうして得られた実施例2の分散液で被覆されたアスコルビン酸含有コーティング錠剤を実施例15とした。(比較例16)(参考例3の分散液で被覆されたアスコルビン酸含有コーティング錠剤の製造) 比較例15のアスコルビン酸含有錠剤400gをコーティングパン(Hi−Coater mini;フロイント産業)に仕込み、参考例3で調製した分散液をコーティング剤として錠剤に被覆した。コーティング厚みが60μmになるまでコーティング剤を被覆した。こうして得られた参考例3の分散液で被覆されたアスコルビン酸含有コーティング錠剤を比較例16とした。(アスコルビン酸含有コーティング錠剤の崩壊性) 実施例15のアスコルビン酸含有コーティング錠剤の崩壊性を、溶出試験器を用いて評価した。すなわち、アスコルビン酸含有コーティング錠剤1錠を、37℃に加温した水900mLに投入し、皮膜が錠剤表面から剥離し始めるまでに要する時間を測定した。その結果、皮膜が錠剤表面から剥離し始めるまでに要する時間は、約2分であった。この結果、実施例15のアスコルビン酸含有コーティング錠剤は、崩壊性に優れていることが明らかとなり、実施例2の分散液は、徐放性製剤のみならず、速放性製剤への被覆にも適用できることが示唆された。(アスコルビン酸含有コーティング錠剤の保存安定性) 比較例15のアスコルビン酸含有錠剤並びに実施例15及び比較例16のアスコルビン酸含有コーティング錠剤を、25℃95%RHのデシケータ内で、開放条件下又は気密条件下で4週間保存し、経時的にアスコルビン酸の残存率(薬物残存率)を評価した。開放条件下とは、各錠剤をデシケータ内にそのまま静置することをいい、気密条件下とは、プラスチック製の中蓋と外蓋を有するガラス瓶の中に各錠剤を入れて密封し、密封状態を保持したままでデシケータ内に静置することをいう。 図6は、薬物残存率の推移を示したグラフである。図6中の白三角(△)は気密条件下で静置した実施例15のアスコルビン酸含有コーティング錠剤、黒三角(▲)は開放条件下で静置した実施例15のアスコルビン酸含有コーティング錠剤、白四角(□)は気密条件下で静置した比較例16のアスコルビン酸含有コーティング錠剤、黒四角(■)は開放条件下で静置した比較例16のアスコルビン酸含有コーティング錠剤、白丸(○)は機密条件下で静置した比較例15のアスコルビン酸含有錠剤、黒丸(●)は開放条件下で静置した比較例15のアスコルビン酸含有錠剤の結果を示している。また、縦軸は薬物残存率(%)、横軸は保存期間(W)を示し、Wは週を意味している。 比較例15のアスコルビン酸含有錠剤及び比較例16のアスコルビン酸含有コーティング錠剤は、開放条件下で経時的に薬物残存率が低下したのに対し、実施例15のアスコルビン酸含有コーティング錠剤は、開放条件下、4週間保存後も薬物の分解は認められず、気密条件下で静置した場合と同等の安定性を維持した。この結果、実施例15のアスコルビン酸含有コーティング錠剤は、酸素及び水蒸気に対するバリア性が高いことが明らかとなった。(比較例17)(臭化プロパンテリン含有錠剤の製造) ガスバリア性を評価するために、無包装状態において極めて不安定であることが知られている臭化プロパンテリン含有錠剤を製造した。臭化プロパンテリン含有錠剤(メサフィリン(登録商標);エーザイ)を吸湿防止のためにドライボクス中で乳鉢を用いて粉砕し、粉砕により得られた錠剤の顆粒をロータリー打錠機(菊水)にて再度打錠し、臭化プロパンテリン含有錠剤を得た(直径8mm、12R)。こうして得られたコーティング剤で被覆されていない臭化プロパンテリン含有錠剤を比較例17とした。(実施例16)(実施例2の分散液で被覆された臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤の製造) 比較例17の臭化プロパンテリン含有錠剤400gをコーティングパン(Hi−Coater mini;フロイント産業)に仕込み、実施例2で調製した分散液をコーティング剤として臭化プロパンテリン含有錠剤に被覆した。コーティング厚みが60μmになるまでコーティング剤で被覆し、臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤を得た。こうして得られた臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤を実施例16とした。(比較例18)(市販汎用コーティング処方液で被覆された臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤の製造) 蒸留水にヒドロキシプロピルメチルセルロース2910・酸化チタン・マクロゴール400混合物(オパドライOY−7300(登録商標);日本カラコン)を加えて溶解し、市販汎用コーティング処方液を得た。比較例17の臭化プロパンテリン含有錠剤400gをコーティングパン(Hi−Coater mini;フロイント産業)に仕込み、市販汎用コーティング処方液をコーティング剤として錠剤に被覆した。コーティング厚みが60μmになるまでコーティング剤を被覆した。こうして得られた臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤を比較例18とした。(比較例19)(市販防湿処方液で被覆された臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤の製造) 蒸留水(875g)にラウリル硫酸ナトリウム(15g)を添加し、完全に溶解するまで攪拌した。次に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(EudragitEPO(登録商標);デグサ社)(100g)を添加して攪拌し、均一に分散させた段階で、ステアリン酸を(10g)添加し、さらに攪拌することにより市販防湿処方液を得た。比較例17の臭化プロパンテリン含有錠剤400gをコーティングパン(Hi−Coater mini;フロイント産業)に仕込み、市販防湿処方液をコーティング剤として錠剤に被覆した。コーティング厚みが60μmになるまでコーティング剤を被覆した。こうして得られた臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤を比較例19とした。(比較例20)(臭化プロパンテリン糖衣錠剤) 臭化プロパンテリン錠(プロ・バンサイン(登録商標);ファイザー)を臭化プロパンテリン糖衣錠剤として、そのまま比較例20とした。(臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤及び臭化プロパンテリン糖衣錠剤の保存安定性) 比較例17の臭化プロパンテリン含有錠剤、実施例16、比較例18及び比較例19の臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤、並びに比較例20の臭化プロパンテリン糖衣錠剤の各錠剤をそれぞれ30℃75%RHのデシケータ内で、開放条件下で2箇月間保存し、経時的に臭化プロパンテリンの残存率(薬物残存率)を評価した。ここで、開放条件下とは、ガラス瓶の中に各錠剤を入れ、一切蓋をせずにガラス瓶をデシケータ内にそのまま静置することをいう。 図7は、臭化プロパンテリンの残存率(薬物残存率)の推移を示したグラフである。図7中の白丸(○)は実施例16の臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤、黒丸(●)は比較例17の臭化プロパンテリン含有錠剤、黒四角(■)は比較例18の臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤、黒三角(▲)は比較例19の臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤、白三角(△)は比較例20の臭化プロパンテリン糖衣錠剤の結果を示している。また、縦軸は薬物残存率(%)、横軸は保存期間(W)を示し、Wは週を意味している。 その結果、比較例17の臭化プロパンテリン含有錠剤並びに比較例18及び比較例19の各臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤では、開放条件下の4週間保存で、薬物残存率は著しく低下したのに対し、実施例16の臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤及び比較例20の臭化プロパンテリン糖衣錠剤では、開放条件下の4週間保存後も薬物の分解は認められなかった。 また、実施例16の臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤及び比較例20の臭化プロパンテリン糖衣錠剤では、開放条件下の8週間保存で、薬物残存率の軽微な低下が認められたが、両者の薬物残存率には顕著な差は認められず、実施例16の臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤は、臭化プロパンテリン糖衣錠剤と同等レベルにバリア性が高いことが明らかとなった。 さらに、比較例20の臭化プロパンテリン糖衣錠剤では、開放条件下の8週間保存で、糖衣の溶解に起因するガラス瓶壁及び臭化プロパンテリン糖衣錠剤同士の付着が確認され、品質の劣化が認められたが、実施例16の臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤では、ガラス瓶壁及び臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤同士の付着は一切認められず、実施例16の臭化プロパンテリン含有コーティング錠剤は、30℃75%RHでの開放条件下において、比較例20の臭化プロパンテリン糖衣錠剤よりも外観安定性が優れていることが明らかとなった。 以上の実施例から、本発明のガスバリアコーティング剤は、固形製剤に対して汎用性のあるコーティング剤として有用であり、特に、酸素や水蒸気に不安定な薬物を含む固形製剤の皮膜として有用であることが示された。 本発明のコーティング剤は、固形製剤のコーティング剤として有用であり、特に、酸素や水蒸気に不安定な薬物を含む固形製剤の皮膜として有用である。 ポリビニルアルコールと、ベントナイト又はケイ酸マグネシウムアルミニウムと、を含み、 前記ポリビニルアルコールと前記ベントナイト又は前記ケイ酸マグネシウムアルミニウムとの質量比は、4:6〜6:4であり、 固形製剤に被覆して乾燥させると、前記ベントナイト又は前記ケイ酸マグネシウムアルミニウムの積層構造体が面配向し、かつ、網目状に分散している皮膜を形成し、 前記皮膜の縦断面の面積に対する、面配向している前記積層構造体の占める面積の割合が30%以上である、固形製剤用のコーティング剤。 ポリビニルアルコールと、ベントナイト又はケイ酸マグネシウムアルミニウムと、糖アルコール誘導体型界面活性剤と、を含み、 前記ポリビニルアルコールと前記ベントナイト又は前記ケイ酸マグネシウムアルミニウムとの質量比は、2:8〜5:5であり、 固形製剤に被覆して乾燥させると、前記ベントナイト又は前記ケイ酸マグネシウムアルミニウムの積層構造体が面配向し、かつ、網目状に分散している皮膜を形成し、 前記皮膜の縦断面の面積に対する、面配向している前記積層構造体の占める面積の割合が30%以上である、固形製剤用のコーティング剤。 前記糖アルコール誘導体型界面活性剤の含有率は、7〜35%である、請求項2記載のコーティング剤。 前記糖アルコール誘導体型界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルである、請求項2又は3記載のコーティング剤。 請求項1〜4のいずれか一項記載のコーティング剤で被覆された、固形製剤。