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タイトル:特許公報(B2)_積層体の屈曲寿命予測方法、積層体の屈曲寿命予測装置、積層体の屈曲寿命予測プログラムおよび記録媒体
出願番号:2010501901
年次:2013
IPC分類:G01N 3/32


特許情報キャッシュ

藤元 伸悦 JP 5248595 特許公報(B2) 20130419 2010501901 20090303 積層体の屈曲寿命予測方法、積層体の屈曲寿命予測装置、積層体の屈曲寿命予測プログラムおよび記録媒体 新日鉄住金化学株式会社 000006644 星宮 勝美 100107559 渡邊 和浩 100115118 城澤 達哉 100166257 藤元 伸悦 JP 2008053763 20080304 20130731 G01N 3/32 20060101AFI20130711BHJP JPG01N3/32 EG01N3/32 K G01N 3/00−3/62 特開平08−166333(JP,A) 国際公開第01/008172(WO,A1) 特開平02−190742(JP,A) 10 JP2009053912 20090303 WO2009110440 20090911 19 20110808 高橋 亨 本発明は、ベース層と、パターン化された導体よりなる配線層とを含む積層された複数の層を有する屈曲可能な積層体の屈曲寿命を予測する方法および装置、ならびに、上記積層体の屈曲寿命を予測するために用いられるプログラムおよび記録媒体に関する。 近年、携帯電話機、ハードディスク装置、プリンタ等の、可動部を有する電子機器において、フレキシブルプリント配線板(以下、FPCと記す。)が広く利用されている。このFPCは、例えば、ベース層と、このベース層の一方の面に接合されたパターン化された導体よりなる配線層と、この配線層を覆う接着層と、この接着層に接合されたカバー層とを有している。 可動部を有する電子機器において用いられるFPCには、高い耐屈曲特性が求められる。FPCの耐屈曲特性を評価するための試験の1つとして、IPC試験と呼ばれる屈曲試験がある。この屈曲試験は、所定の間隔を開けて配置された固定板と可動板の間にFPCをU字形状に屈曲させて介挿し且つFPCの長手方向の各端部をそれぞれ固定板と可動板に固定し、可動板をその面に平行な方向に往復運動させることによって行われる。この屈曲試験では、例えば、試験の開始から、配線層が破断するまでの可動板の往復運動の回数が、屈曲寿命として測定される。 ところで、所望の耐屈曲特性を満たすようにFPCを設計したい場合、FPCの試作と屈曲試験とを繰り返し行ったのでは、多大な労力、時間およびコストを要する。そこで、シミュレーションによってFPCの屈曲寿命を予測できれば、労力、時間およびコストを低減することが可能になる。 従来、FPCのような屈曲可能な配線部材に関して、シミュレーションによって屈曲寿命等の耐屈曲特性を予測する方法としては、大きく分けて、以下の第1および第2の方法があった。第1の方法は、例えば特許文献1に記載されているように、マスターカーブと予測対象の実測値とを用いる方法である。第2の方法は、例えば特許文献2や特許文献3に記載されているように、有限要素法を用いる方法である。 特許文献1には、フラットケーブル等の複合体の屈曲寿命を予測する方法が記載されている。この方法では、まず、耐屈曲性評価試験装置に装着した際の複合体の導体部の最大歪み量及び/または屈曲形状の理想半径からのずれ量と、実測した屈曲寿命との関係を示すマスターカーブを作成する。次に、耐屈曲性評価試験装置に装着した予測対象の複合体における導体部の最大歪み量及び/または屈曲形状の理想半径からのずれ量を測定する。次に、測定された予測対象の複合体における導体部の最大歪み量及び/または屈曲形状の理想半径からのずれ量を上記マスターカーブに照合して、予測対象の複合体の屈曲寿命を予測する。 特許文献2には、少なくとも中心導体線を有する電線または電線束の屈曲寿命を予測する方法が記載されている。この方法では、まず、単一の電線の屈曲寿命と歪み変化量との関係を示すマスターカーブを取得する。次に、予測対象の電線または電線束の中心導体線の最大歪み変化量を、有限要素法を用いて算出する。次に、算出された最大歪み変化量を上記マスターカーブに照合して、予測対象の電線または電線束の屈曲寿命を予測する。 特許文献3には、屈曲部に取り付けられる複数の電線および屈曲保護部材の屈曲耐久性を予測する方法が記載されている。この方法では、まず、複数の電線および屈曲保護部材の各々の有限要素モデルを作成する。次に、有限要素モデルの各有限要素における応力を計算する。次に、計算された各応力のうちから最大応力を検索する。次に、予測関数を参照して、複数の電線および屈曲保護部材毎の最大応力に対応する各屈曲耐久回数を取得し、このうちから最短屈曲耐久回数を求める。日本特開平8−166333号公報日本特開2002−260459号公報日本特開2004−191361号公報 ところで、FPCのように複数の層を有する屈曲可能な積層体では、複数の層の条件を変えることによって多数の構成が考えられる。このような多数の構成のそれぞれについて、試作と屈曲試験とを繰り返し行ったのでは、多大な労力、時間およびコストを要する。そのため、所望の屈曲寿命を有する積層体を設計したい場合、積層体を構成する各層の条件を任意に設定して、屈曲寿命を予測するシミュレーションが可能であれば、労力、時間およびコストを大幅に低減することが可能になる。また、このようなシミュレーションが可能であれば、容易に、積層体を構成する各層の条件の好ましい組み合わせを求めることも可能になる。 しかしながら、シミュレーションによって屈曲寿命等の耐屈曲特性を予測する従来の方法のうちの第1の方法では、予測対象の実測値を用いるため、積層体を構成する各層の条件を任意に設定してシミュレーションを行うことができないという問題点がある。また、第1の方法では、シミュレーションを用いて、積層体を構成する各層の条件の好ましい組み合わせを求めることもできない。 また、シミュレーションによって屈曲寿命等の耐屈曲特性を予測する従来の方法のうちの第2の方法では、有限要素法を用いるため、有限要素モデルの作成に多くの時間と労力を要するという問題点がある。 本発明の目的は、容易に、積層体を構成する各層の条件を任意に設定して、積層体の屈曲寿命を予測できるようにした積層体の屈曲寿命予測方法、積層体の屈曲寿命予測装置、積層体の屈曲寿命予測プログラムおよび記録媒体を提供することにある。 本発明の積層体の屈曲寿命予測方法は、ベース層と、パターン化された導体よりなる配線層とを含む積層された複数の層を有し、一方向に延び、屈曲可能な積層体について、所定の間隔を開けて配置された固定板と可動板の間に積層体をU字形状に屈曲させて介挿し且つ積層体の長手方向の各端部をそれぞれ固定板と可動板とに固定し、可動板をその面に平行な方向に往復運動させて行う屈曲試験によって測定されるべき屈曲寿命を予測する方法である。 本発明の積層体の屈曲寿命予測方法は、 互いに異なる構成の複数の積層体の試料の各々について、試料を構成する各層の厚みと、試料を構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、試料の配線層における線幅および線間幅の各情報を用いて、試料の配線層に生じる応力を算出する第1の算出手順と、 複数の試料の各々について、屈曲試験によって屈曲寿命を測定する手順と、 第1の算出手順によって算出された各試料の配線層に生じる応力と、屈曲寿命を測定する手順によって測定された各試料の屈曲寿命とに基づいて、任意の構成の積層体における配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求める手順と、 屈曲寿命を予測する対象である仮想の積層体について、仮想の積層体を構成する各層の厚みと、仮想の積層体を構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、仮想の積層体の配線層における線幅および線間幅の各情報を用いて、仮想の積層体の配線層に生じる応力を算出する第2の算出手順と、 第2の算出手順によって算出された仮想の積層体の配線層に生じる応力と、応力と屈曲寿命との関係を求める手順によって求められた応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、仮想の積層体の屈曲寿命を予測する手順とを備えている。 本発明の積層体の屈曲寿命予測方法では、各層における応力とひずみの関係として、各層を構成する材料の弾性率を用いてもよい。 また、本発明の積層体の屈曲寿命予測方法において、各層における応力とひずみの関係は、各層を構成する材料についての引張試験によって取得されるものであってもよい。 また、本発明の積層体の屈曲寿命予測方法において、第1の算出手順では、試料の配線層に生じる応力として、垂直応力とせん断応力から求まる主応力を算出し、第2の算出手順では、仮想の積層体の配線層に生じる応力として、垂直応力とせん断応力から求まる主応力を算出してもよい。 また、本発明の積層体の屈曲寿命予測方法において、応力と屈曲寿命との関係を求める手順では、屈曲試験が行われるときの温度をパラメータとした、配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求め、屈曲寿命を予測する手順では、第2の算出手順によって算出された応力と、温度をパラメータとした応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、任意の温度の下での仮想の積層体の屈曲寿命を予測してもよい。 また、本発明の積層体の屈曲寿命予測方法において、応力と屈曲寿命との関係を求める手順では、屈曲試験における可動板の往復運動の周波数をパラメータとした、配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求め、屈曲寿命を予測する手順では、第2の算出手順によって算出された応力と、周波数をパラメータとした応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、任意の周波数の下での仮想の積層体の屈曲寿命を予測してもよい。 本発明の積層体の屈曲寿命予測装置は、ベース層と、パターン化された導体よりなる配線層とを含む積層された複数の層を有し、一方向に延び、屈曲可能な積層体について、所定の間隔を開けて配置された固定板と可動板の間に積層体をU字形状に屈曲させて介挿し且つ積層体の長手方向の各端部をそれぞれ固定板と可動板とに固定し、可動板をその面に平行な方向に往復運動させて行う屈曲試験によって測定されるべき屈曲寿命を予測する装置である。 本発明の積層体の屈曲寿命予測装置は、 互いに異なる構成の複数の積層体の試料の各々について、試料を構成する各層の厚みと、試料を構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、試料の配線層における線幅および線間幅の各情報を入力する第1の入力手段と、 第1の入力手段によって入力された情報を用いて、試料の配線層に生じる応力を算出する第1の算出手段と、 屈曲試験によって測定された複数の試料の各々の屈曲寿命を入力する第2の入力手段と、 第1の算出手段によって算出された各試料の配線層に生じる応力と、第2の入力手段によって入力された各試料の屈曲寿命とに基づいて、任意の構成の積層体における配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求める手段と、 屈曲寿命を予測する対象である仮想の積層体について、仮想の積層体を構成する各層の厚みと、仮想の積層体を構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、仮想の積層体の配線層における線幅および線間幅の各情報を入力する第3の入力手段と、 第3の入力手段によって入力された情報を用いて、仮想の積層体の配線層に生じる応力を算出する第2の算出手段と、 第2の算出手段によって算出された仮想の積層体の配線層に生じる応力と、応力と屈曲寿命との関係を求める手段によって求められた応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、仮想の積層体の屈曲寿命を予測する手段とを備えている。 本発明の積層体の屈曲寿命予測装置において、第1の算出手段は、試料の配線層に生じる応力として、垂直応力とせん断応力から求まる主応力を算出し、第2の算出手段は、仮想の積層体の配線層に生じる応力として、垂直応力とせん断応力から求まる主応力を算出してもよい。 また、本発明の積層体の屈曲寿命予測装置において、応力と屈曲寿命との関係を求める手段は、屈曲試験が行われるときの温度をパラメータとした、配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求め、屈曲寿命を予測する手段は、第2の算出手段によって算出された応力と、温度をパラメータとした応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、任意の温度の下での仮想の積層体の屈曲寿命を予測してもよい。 また、本発明の積層体の屈曲寿命予測装置において、応力と屈曲寿命との関係を求める手段は、屈曲試験における可動板の往復運動の周波数をパラメータとした、配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求め、屈曲寿命を予測する手段は、第2の算出手段によって算出された応力と、周波数をパラメータとした応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、任意の周波数の下での仮想の積層体の屈曲寿命を予測してもよい。 本発明の積層体の屈曲寿命予測プログラムは、ベース層と、パターン化された導体よりなる配線層とを含む積層された複数の層を有し、一方向に延び、屈曲可能な積層体について、所定の間隔を開けて配置された固定板と可動板の間に積層体をU字形状に屈曲させて介挿し且つ積層体の長手方向の各端部をそれぞれ固定板と可動板とに固定し、可動板をその面に平行な方向に往復運動させて行う屈曲試験によって測定されるべき屈曲寿命を予測するために、コンピュータを、以下の各手段として機能させるためのプログラムである。 本発明の積層体の屈曲寿命予測プログラムは、コンピュータを、 互いに異なる構成の複数の積層体の試料の各々について、試料を構成する各層の厚みと、試料を構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、試料の配線層における線幅および線間幅の各情報を入力する第1の入力手段、 第1の入力手段によって入力された情報を用いて、試料の配線層に生じる応力を算出する第1の算出手段、 屈曲試験によって測定された複数の試料の各々の屈曲寿命を入力する第2の入力手段、 第1の算出手段によって算出された各試料の配線層に生じる応力と、第2の入力手段によって入力された各試料の屈曲寿命とに基づいて、任意の構成の積層体における配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求める手段、 屈曲寿命を予測する対象である仮想の積層体について、仮想の積層体を構成する各層の厚みと、仮想の積層体を構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、仮想の積層体の配線層における線幅および線間幅の各情報を入力する第3の入力手段、 第3の入力手段によって入力された情報を用いて、仮想の積層体の配線層に生じる応力を算出する第2の算出手段、および 第2の算出手段によって算出された仮想の積層体の配線層に生じる応力と、応力と屈曲寿命との関係を求める手段によって求められた応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、仮想の積層体の屈曲寿命を予測する手段、として機能させる。 本発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明の積層体の屈曲寿命予測プログラムを記録したものである。 本発明の積層体の屈曲寿命予測方法、積層体の屈曲寿命予測装置、積層体の屈曲寿命予測プログラムまたは記録媒体によれば、仮想の積層体について、仮想の積層体を構成する各層の厚みと、仮想の積層体を構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、仮想の積層体の配線層における線幅および線間幅の各情報を用いて、仮想の積層体の配線層に生じる応力を算出し、この算出された応力と、応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、仮想の積層体の屈曲寿命を予測することが可能になる。これにより、本発明によれば、容易に、積層体を構成する各層の条件を任意に設定して、積層体の屈曲寿命を予測することが可能になる。 本発明のその他の目的、特徴および利益は、以下の説明を以って十分明白になるであろう。本発明の一実施の形態における積層体の一部を示す斜視図である。本発明の一実施の形態における積層体の配線層を示す平面図である。屈曲試験に用いられる屈曲試験装置に積層体を装着した状態を示す説明図である。本発明の一実施の形態に係る屈曲寿命予測装置を実現するコンピュータの構成を示すブロック図である。本発明の一実施の形態に係る屈曲寿命予測装置の機能構成を示す機能ブロック図である。本発明の一実施の形態に係る積層体の屈曲寿命予測方法を示す流れ図である。本発明の一実施の形態における応力の計算方法の説明に使用する積層体のモデルの断面図である。本発明の一実施の形態における応力−屈曲寿命関係式によって表される主応力と屈曲寿命との関係を示す特性図である。符号の説明 1…積層体、11…ベース層、12…配線層、13…接着層、14…カバー層、21…固定板、22…可動板、30…屈曲寿命予測装置。 以下、本発明の一実施の形態に係る積層体の屈曲寿命予測方法、積層体の屈曲寿命予測装置、積層体の屈曲寿命予測プログラムおよび記録媒体について図面を参照して詳細に説明する。始めに、本実施の形態における積層体について説明する。本実施の形態における積層体は、ベース層と、パターン化された導体よりなる配線層とを含む積層された複数の層を有し、一方向に延び、屈曲可能なものである。このような積層体としては、例えばFPC(フレキシブルプリント配線板)がある。 ここで、図1および図2を参照して、本実施の形態における積層体の構成の一例について説明する。図1は、積層体の一部を示す斜視図である。図1において、ハッチングを付した面は断面を表している。図2は、積層体の配線層を示す平面図である。図1および図2に示した積層体は、具体的にはFPCである。ただし、このFPCは、屈曲試験によって屈曲寿命を測定するために用いられる試験用のFPCである。 図1に示したように、積層体1は、ベース層11と、このベース層11の一方の面に接合されたパターン化された導体よりなる配線層12と、この配線層12を覆う接着層13と、この接着層13に接合されたカバー層14とを備えている。また、積層体1は、一方向に延び、屈曲可能である。なお、積層体1は、更に、ベース層11と配線層12の間に配置された他の接着層を備えていてもよい。 図2に示したように、配線層12は、ミアンダ形状を有している。より詳しく説明すると、配線層12は、積層体1の長手方向(図2における左右方向)に延びる複数の直線状部分12aと、配線層12の全体がミアンダ形状となるように、隣接する2つの直線状部分12aの端部同士を連結する連結部分12bとを有している。ここで、直線状部分12aの幅(図2における上下方向の寸法)を線幅LWと定義し、隣接する2つの直線状部分12aの間隔を線間幅SWと定義する。 ベース層11およびカバー層14の材料としては、ポリイミド系樹脂等の樹脂が用いられる。配線層12の材料としては、銅等の金属が用いられる。接着層13の材料としては、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤等の合成系接着剤が用いられる。 なお、以下の説明では、積層体1に関連して、「積層体の試料」、「任意の構成の積層体」および「仮想の積層体」という用語が用いられている。「積層体の試料」とは、後で説明する任意の構成の積層体における配線層12に生じる応力と屈曲寿命との関係としての応力−屈曲寿命関係式を作成するために、実際に作製される積層体1である。「任意の構成の積層体」とは、積層体1の最低限の要件以外の条件は特定されない想像上の積層体1である。「仮想の積層体」とは、屈曲寿命を予測する対象である想像上の積層体1である。「仮想の積層体」は、積層体1を構成する各層の厚みと、積層体1を構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、積層体1の配線層12における線幅LWおよび線間幅SWの各情報によって特定される。以下、「積層体の試料」、「任意の構成の積層体」および「仮想の積層体」を区別するために、「積層体の試料」には符号1Aを付し、「任意の構成の積層体」には符号1Bを付し、「仮想の積層体」には符号1Cを付す。 次に、図3を参照して、積層体1の屈曲寿命を測定するための屈曲試験について説明する。図3は、屈曲試験に用いられる屈曲試験装置に積層体1を装着した状態を示す説明図である。屈曲試験装置は、所定の間隔Hを開けて配置された固定板21と可動板22とを備えている。屈曲試験は、固定板21と可動板22の間に積層体1をU字形状に屈曲させて介挿し且つ積層体1の長手方向の各端部をそれぞれ固定具23,24によって固定板21と可動板22とに固定し、可動板22をその面に平行な方向に往復運動させて行われる。また、屈曲試験の際には、配線層12に通電されて、配線層12の抵抗値が検出される。そして、配線層12の抵抗値が所定値以上になったときに配線層12が破断したと判断される。屈曲試験では、試験の開始から、配線層12が破断するまで、すなわち配線層12の抵抗値が所定値以上になるまでの可動板22の往復運動の回数が、屈曲寿命として測定される。 次に、図4および図5を参照して、本実施の形態に係る屈曲寿命予測装置について説明する。本実施の形態に係る屈曲寿命予測装置30は、積層体1について前述の屈曲試験によって測定されるべき屈曲寿命を予測する装置である。屈曲寿命予測装置30は、コンピュータを用いて実現される。 図4は、屈曲寿命予測装置30を実現するコンピュータ30Cの構成を示すブロック図である。図4に示したように、コンピュータ30Cは、主制御部31と、入力装置32と、出力装置33と、表示装置34と、記憶装置35と、これらを互いに接続するバス36とを備えている。主制御部31は、CPU(中央処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)を有している。記憶装置35は、情報を記憶できるものであれば、その形態は問わないが、例えばハードディスク装置または光ディスク装置である。また、記憶装置35は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体37に対して情報を記録し、また記録媒体37より情報を再生するようになっている。記録媒体37は、情報を記憶できるものであれば、その形態は問わないが、例えばハードディスクまたは光ディスクである。記録媒体37は、本実施の形態に係る積層体の屈曲寿命予測プログラムを記録した記録媒体であってもよい。 図5は、屈曲寿命予測装置30の機能構成を示す機能ブロック図である。図5に示したように、屈曲寿命予測装置30は、第1の入力手段41と、第1の算出手段42と、第2の入力手段43と、応力−屈曲寿命関係式作成手段44と、第3の入力手段45と、第2の算出手段46と、屈曲寿命予測手段47とを備えている。 第1の入力手段41は、互いに異なる構成の複数の積層体の試料1Aの各々について、試料1Aを構成する各層の厚みと、試料1Aを構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板21と可動板22の間隔Hと、試料1Aの配線層12における線幅LWおよび線間幅SWの各情報を入力する。第1の算出手段42は、第1の入力手段41によって入力された情報を用いて、試料1Aの配線層12に生じる応力を算出する。第2の入力手段43は、屈曲試験によって測定された複数の試料1Aの各々の屈曲寿命を入力する。 応力−屈曲寿命関係式作成手段44は、第1の算出手段42によって算出された各試料1Aの配線層12に生じる応力と、第2の入力手段43によって入力された各試料1Aの屈曲寿命とに基づいて、任意の構成の積層体1Bにおける配線層12に生じる応力と屈曲寿命との関係を求める。応力−屈曲寿命関係式作成手段44は、具体的には、任意の構成の積層体1Bにおける配線層12に生じる応力と屈曲寿命との関係として、応力−屈曲寿命関係式を作成する。応力−屈曲寿命関係式作成手段44は、本発明における「応力と屈曲寿命との関係を求める手段」に対応する。 第3の入力手段45は、仮想の積層体1Cについて、仮想の積層体1Cを構成する各層の厚みと、仮想の積層体1Cを構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板21と可動板22の間隔Hと、仮想の積層体1Cの配線層12における線幅LWおよび線間幅SWの各情報を入力する。第2の算出手段46は、第3の入力手段45によって入力された情報を用いて、仮想の積層体1Cの配線層12に生じる応力を算出する。 屈曲寿命予測手段47は、第2の算出手段46によって算出された仮想の積層体1Cの配線層12に生じる応力と、応力−屈曲寿命関係式作成手段44によって作成された応力−屈曲寿命関係式とに基づいて、仮想の積層体1Cの屈曲寿命を予測する。 本実施の形態に係る積層体の屈曲寿命予測プログラムは、積層体1について前述の屈曲試験によって測定されるべき屈曲寿命を予測するために、図4に示したコンピュータ30Cを、図5に示した各手段として機能させるものである。この積層体の屈曲寿命予測プログラムは、図4における記録媒体37または主制御部31内のROMに記録されている。 次に、本実施の形態に係る積層体の屈曲寿命予測方法について説明する。本実施の形態に係る積層体の屈曲寿命予測方法は、積層体1について前述の屈曲試験によって測定されるべき屈曲寿命を予測する方法である。 図6は、本実施の形態に係る積層体の屈曲寿命予測方法を示す流れ図である。図6に示したように、本実施の形態に係る積層体の屈曲寿命予測方法では、まず、互いに異なる構成の複数の積層体の試料1Aの各々について、試料1Aを構成する各層の厚みと、試料1Aを構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板21と可動板22の間隔Hと、試料1Aの配線層12における線幅LWおよび線間幅SWの各情報を用いて、試料1Aの配線層12に生じる応力を算出する(ステップS101)。このステップS101は、本発明における第1の算出手順に対応する。次に、複数の試料1Aの各々について、屈曲試験によって屈曲寿命を測定する(ステップS102)。 次に、ステップS101によって算出された各試料1Aの配線層12に生じる応力と、ステップS102によって測定された各試料1Aの屈曲寿命とに基づいて、任意の構成の積層体1Bにおける配線層12に生じる応力と屈曲寿命との関係として、応力−屈曲寿命関係式を求める(ステップS103)。 次に、仮想の積層体1Cについて、仮想の積層体1Cを構成する各層の厚みと、仮想の積層体1Cを構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板21と可動板22の間隔Hと、仮想の積層体1Cの配線層12における線幅LWおよび線間幅SWの各情報を用いて、仮想の積層体1Cの配線層12に生じる応力を算出する(ステップS104)。このステップS104は、本発明における第2の算出手順に対応する。 次に、ステップS104によって算出された仮想の積層体1Cの配線層12に生じる応力と、ステップS103によって求められた応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、仮想の積層体1Cの屈曲寿命を予測する(ステップS105)。 以上の各ステップ(工程)により、仮想の積層体1Cの屈曲寿命が予測される。なお、ステップS101とステップS102の順番は、上記の説明とは逆であってもよい。 次に、本実施の形態に係る屈曲寿命予測装置30によって、上記の積層体の屈曲寿命予測方法を実現する場合における屈曲寿命予測装置30の動作について説明する。ステップS101では、まず、第1の入力手段41によって、互いに異なる構成の複数の積層体1の試料1Aの各々について、試料1Aを構成する各層の厚みと、試料1Aを構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板21と可動板22の間隔Hと、試料1Aの配線層12における線幅LWおよび線間幅SWの各情報を入力する。次に、第1の入力手段41によって入力された情報を用いて、第1の算出手段42によって、試料1Aの配線層12に生じる応力を算出する。 ステップS102では、第2の入力手段43によって、屈曲試験によって測定された複数の試料1Aの各々の屈曲寿命を入力する。 ステップS103では、第1の算出手段42によって算出された各試料1Aの配線層12に生じる応力と、第2の入力手段43によって入力された各試料1Aの屈曲寿命とに基づいて、応力−屈曲寿命関係式作成手段44によって、任意の構成の積層体1Bにおける配線層12に生じる応力と屈曲寿命との関係として、応力−屈曲寿命関係式を作成する。 ステップS104では、第3の入力手段45によって、仮想の積層体1Cについて、仮想の積層体1Cを構成する各層の厚みと、仮想の積層体1Cを構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板21と可動板22の間隔Hと、仮想の積層体1Cの配線層12における線幅および線間幅の各情報を入力する。次に、第3の入力手段45によって入力された情報を用いて、第2の算出手段46によって、仮想の積層体1Cの配線層12に生じる応力を算出する。 ステップS105では、第2の算出手段46によって算出された仮想の積層体1Cの配線層12に生じる応力と、応力−屈曲寿命関係式作成手段44によって作成された応力−屈曲寿命関係式とに基づいて、屈曲寿命予測手段47によって、仮想の積層体1Cの屈曲寿命を予測する。 以下、本実施の形態に係る積層体の屈曲寿命予測方法について、より詳細に説明する。まず、ステップS101とステップS104における配線層12に生じる応力の計算方法について、図7を参照して詳しく説明する。図7は、応力の計算方法の説明に使用する積層体1のモデルの断面図である。図7には、便宜上、積層体1が3層であるモデルを示しているが、以下の説明は、積層体が2層以上である場合の全般に当てはまる。ここで、積層体1の層の数をn(nは2以上の整数)とする。また、この積層体1を構成する各層のうち下から数えてi番目(i=1,2,…,n)の層を第i層と呼ぶ。図7において、符号Bは、積層体1の幅を表している。なお、ここでいう幅とは、第1層の下面に平行で、積層体1の長手方向に垂直な方向の寸法である。 なお、本実施の形態における積層体1では、配線層12が例えば図2に示したようにパターニングされているため、積層体1を上から見たときに、積層体1には、配線層12が存在する部分と、配線層12が存在しない部分とがある。ここで、配線層12が存在する部分を配線部と呼び、配線層12が存在しない部分をスペース部と呼ぶ。配線部とスペース部では、構成が異なる。例えば、図1に示した積層体1の場合、配線部は4層で構成され、スペース部は3層で構成されている。そのため、以下、必要に応じて、配線部とスペース部とを分けて考える。[中立面位置の計算] ここで、第1層の下面を基準面SPとする。以下、基準面SPが図7おける下側に凸形状になるように積層体1を屈曲させる場合について考える。図7において、符号NPは積層体1の中立面を表している。ここで、中立面NPと基準面SPとの距離を中立面位置[NP]とし、この中立面位置[NP]を、配線部とスペース部とで別々に計算する。中立面位置[NP]は、次の式(1)によって算出される。 [NP]=Σi=1nEiBihiti/Σi=1nEiBiti …(1) ここで、Eiは、第i層を構成する材料の弾性率である。この弾性率Eiは、本実施の形態における「各層における応力とひずみの関係」に対応する。Biは、第i層の幅であり、図7に示した幅Bに相当する。配線部の中立面位置[NP]を求める場合には、Biとして線幅LWの値を用い、スペース部の中立面位置[NP]を求める場合には、Biとして線間幅SWの値を用いる。hiは、第i層の中央面と基準面SPとの距離である。なお、第i層の中央面とは、第i層の厚み方向の中央に位置する仮想の面である。tiは、第i層の厚みである。また、記号“Σi=1n”は、iが1からnまでの総和を表す。以下、配線部の中立面位置を[NP]Lineと記す。[有効曲率半径の計算] 次に、図3に示したように固定板21と可動板22の間に積層体1をU字形状に屈曲させて介挿したときの積層体1の屈曲部における配線部の有効曲率半径Rを計算する。有効曲率半径Rは、積層体1の屈曲部の屈曲中心から配線部の中立面NPまでの距離である。有効曲率半径Rは、固定板21と可動板22の間隔Hと配線部の中立面位置[NP]Lineから、次の式(2)によって算出される。 R=H/2−[NP]Line …(2)[曲げ垂直応力の計算] 次に、純曲げによって配線層12に生じる長手方向の最大引張垂直応力である曲げ垂直応力σcを計算する。曲げ垂直応力σcは、次の式(3)によって算出される。 σc=Ec(yc−[NP]Line)/R …(3) ここで、Ecは配線層12の弾性率である。ycは、基準面SPから、配線層12の上面と下面のうちの曲げの際に凸形状となる面(ここでは下面)までの距離である。[等価曲げ剛性の計算] 次に、積層体1全体の曲げ剛性である等価曲げ剛性[BR]を計算する。等価曲げ剛性[BR]は、次の式(4)によって算出される。 [BR]=BLine{Σi=1nEi(ai3−bi3)/3}Line +BSpace{Σi=1nEi(ai3−bi3)/3}Space …(4) ここで、BLineは線幅LWの総和、BSpaceは線間幅SWの総和である。また、図7に示したように、aiは第i層の上面と中立面NPとの距離、biは第i層の下面と中立面NPとの距離である。{Σi=1nEi(ai3−bi3)/3}Lineは、配線部におけるEi(ai3−bi3)/3の値の、iが1からnまでの総和である。{Σi=1nEi(ai3−bi3)/3}Spaceは、スペース部におけるEi(ai3−bi3)/3の値の、iが1からnまでの総和である。なお、式(4)に関連するが、第i層に関して、Bi(ai3−bi3)/3は、一般に断面二次モーメントと呼ばれる断面の幾何学的な特性を表すパラメータである。この第i層の断面二次モーメントに第i層の弾性率を掛けた値が第i層の曲げ剛性である。[曲げモーメントの計算] 次に、積層体1の曲げモーメントMを計算する。曲げモーメントMは、次の式(5)によって算出される。 M=[BR]/R …(5)[せん断応力の計算] 次に、積層体1に生じるせん断応力τを計算する。せん断応力τは、次の式(6)によって算出される。 τ=kM/LeA …(6) ここで、kはせん断修正係数である。屈曲試験の際の有効曲率半径Rが1mm程度の場合には、kの値としては、一次せん断修正係数として一般によく用いられている5/6という値を用いる。Leは有効な屈曲部の周長の半値である。Aは積層体1の長手方向に垂直な積層体1の断面の面積である。 次に、配線層12に生じる主応力Sを計算する。主応力Sは、次の式(7)によって算出される。 S=(σc/2)+√{(σc/2)2+τ2} …(7) このようにして、垂直応力σcとせん断応力τから、配線層12に生じる応力としての主応力Sが算出される。また、この主応力Sは、上記の説明のとおり、積層体1を構成する各層の厚みと、積層体1を構成する各層における応力とひずみの関係(弾性率)と、屈曲試験における固定板21と可動板22の間隔Hと、配線層12における線幅LWおよび線間幅SWの各情報を用いて算出される。 ステップS101では、互いに異なる構成の複数の積層体の試料1Aの各々について、上記の方法により、配線層12に生じる主応力Sを算出する。ステップS104では、屈曲寿命を予測する対象である仮想の積層体1Cについて、上記の方法により、配線層12に生じる主応力Sを算出する。 ステップS102では、複数の試料1Aの各々について、図3を参照して説明した屈曲試験によって屈曲寿命Nを測定する。この屈曲試験における可動板22の往復運動の周波数をfとする。また、屈曲試験が行われるときの温度をTとする。屈曲試験は、全ての試料1Aについて周波数fと温度Tを一定にして行ってもよいし、試料1A毎に周波数fと温度Tの少なくとも一方を異ならせて行ってもよい。あるいは、1つの種類につき複数個ずつ、複数種類の試料1Aを作製し、1つの種類の複数個の試料1Aの各々について、周波数fと温度Tの少なくとも一方を異ならせて屈曲試験を行ってもよい。複数の試料1Aについて、周波数fと温度Tの少なくとも一方を異ならせて屈曲試験を行った場合には、ステップS103で作成する応力−屈曲寿命関係式を、周波数fと温度Tの少なくとも一方をパラメータとした関数とすることが可能になる。 次に、ステップS103において、任意の構成の積層体1Bにおける配線層12に生じる応力と屈曲寿命との関係として、応力−屈曲寿命関係式を求める方法について説明する。多数の試料1Aについて、配線層12に生じる主応力Sと屈曲寿命とを求めた結果、任意の構成の積層体1Bについて、配線層12に生じる主応力Sと屈曲寿命Nとの関係は、次の式(8)で近似できることが分かった。そこで、本実施の形態では、次の式(8)を、任意の構成の積層体1Bにおける配線層12に生じる主応力Sと屈曲寿命Nとの関係を表す応力−屈曲寿命関係式とする。式(8)によって表される主応力Sと屈曲寿命Nとの関係は、図で表すと、図8に示したようになる。 N=α・(fχ/Sβ)・exp(δ/T) …(8) ここで、α、β、χ、δは、物性パラメータ(定数)である。ステップS103では、式(8)が、複数の試料1Aについての配線層12に生じる主応力Sおよび屈曲寿命Nのデータを近似する式となるように、最小二乗法によってα、β、χ、δの値を決定する。これにより、式(8)は、任意の構成の積層体1Bについて、主応力Sと屈曲寿命Nとの関係を表す式となる。 ステップS105では、ステップS104によって算出された仮想の積層体1Cの配線層12に生じる主応力Sを、ステップS103によって求められた上記の式(8)に代入することにより、仮想の積層体1Cの屈曲寿命Nを算出する。なお、式(8)において、温度Tと周波数fの少なくとも一方がパラメータとなっている場合には、仮想の積層体1Cの屈曲寿命Nを算出する際には、そのパラメータの値を特定し、式(8)に代入する。 周波数fと温度Tをそれぞれ一定の値にして複数の試料1Aについての屈曲試験を行って、その屈曲試験によって得られたデータを用いて式(8)を作成した場合には、式(8)は、周波数fと温度Tがそれぞれ上記の一定の値である条件で屈曲試験を行った場合における主応力Sと屈曲寿命Nとの関係を表す式となる。この場合には、式(8)を用いて、仮想の積層体1Cについて、周波数fと温度Tがそれぞれ上記の一定の値である条件で屈曲試験を行った場合における屈曲寿命Nを予測することが可能になる。 周波数fを一定の値にし、温度Tを変えて複数の試料1Aについての屈曲試験を行って、その屈曲試験によって得られたデータを用いて式(8)を作成した場合には、式(8)は、周波数fが上記の一定の値である条件で屈曲試験を行った場合における、温度Tをパラメータとした、主応力Sと屈曲寿命Nとの関係を表す式となる。この場合には、式(8)を用いて、仮想の積層体1Cについて、任意の温度Tの下で、周波数fが上記の一定の値である条件で屈曲試験を行った場合における屈曲寿命Nを予測することが可能になる。 温度Tを一定の値にし、周波数fを変えて複数の試料1Aについての屈曲試験を行って、その屈曲試験によって得られたデータを用いて式(8)を作成した場合には、式(8)は、温度Tが上記の一定の値である条件で屈曲試験を行った場合における、周波数fをパラメータとした、主応力Sと屈曲寿命Nとの関係を表す式となる。この場合には、式(8)を用いて、仮想の積層体1Cについて、任意の周波数fの下で、温度Tが上記の一定の値である条件で屈曲試験を行った場合における屈曲寿命Nを予測することが可能になる。 周波数fと温度Tの両方を変えて複数の試料1Aについての屈曲試験を行って、その屈曲試験によって得られたデータを用いて式(8)を作成した場合には、式(8)は、周波数fおよび温度Tをパラメータとした、主応力Sと屈曲寿命Nとの関係を表す式となる。この場合には、式(8)を用いて、仮想の積層体1Cについて、任意の温度Tおよび任意の周波数fの下で屈曲試験を行った場合における屈曲寿命Nを予測することが可能になる。 なお、式(1)〜(7)を用いた説明では、積層体1を構成する各層における応力とひずみの関係として、各層を構成する材料の弾性率を用いたが、積層体1を構成する各層における応力とひずみの関係は、各層を構成する材料についての引張試験によって取得されるものであってもよい。各層を構成する材料についての引張試験によって取得されるものとは、具体的には、引張試験によって取得される応力とひずみの関係の実測データ(以下、SSカーブという。)である。 以下、各層における応力とひずみの関係としてSSカーブを用いる場合における、配線層12に生じる主応力Sの計算方法の一例について説明する。この方法では、まず、各層を構成する材料(以下、構成材料という。)の各々について、引張試験を行ってSSカーブを取得する。次に、積層体1が真っ直ぐの状態から、屈曲試験の際の屈曲した状態までを、計算が発散しない程度に十分に細かい複数の計算ステップに分割する。次に、各構成材料のSSカーブにおいて、計算ステップ毎の傾きを計算する。この計算ステップ毎の傾きは、各構成材料における計算ステップ毎の弾性率となる。次に、このようにして求めた各構成材料における計算ステップ毎の弾性率を、式(1)〜(7)の一連の計算において用いた弾性率の代りに用いて、更新形ラグランジュ法によって、積層体1が真っ直ぐの状態から、屈曲試験の際の屈曲した状態まで、計算ステップ毎に式(1)〜(7)の一連の計算を繰り返し行って、屈曲試験の際の屈曲した状態において配線層12に生じる主応力Sを計算する。このような更新形ラグランジュ法を用いた主応力Sの計算方法によれば、各層における応力とひずみの関係(SSカーブ)が非線形である場合においても、主応力Sを精度よく算出することが可能になる。 以上説明したように、本実施の形態によれば、仮想の積層体1Cについて、仮想の積層体1Cを構成する各層の厚みと、仮想の積層体1Cを構成する各層における応力とひずみの関係と、屈曲試験における固定板21と可動板22の間隔Hと、仮想の積層体1Cの配線層12における線幅LWおよび線間幅SWの各情報を用いて、仮想の積層体1Cの配線層12に生じる応力(主応力)を算出し、この算出された応力と、応力−屈曲寿命関係式とに基づいて、仮想の積層体1Cの屈曲寿命Nを予測することが可能になる。本実施の形態では、仮想の積層体1Cの屈曲寿命Nを予測する際には、実際に積層体1を試作する必要はない。また、本実施の形態では、有限要素法を用いることなく、上記の各情報を用いた演算によって、仮想の積層体1Cの屈曲寿命Nを予測することができる。従って、本実施の形態によれば、容易に、積層体1を構成する各層の条件を任意に設定して、積層体1の屈曲寿命を予測することが可能になる。また、これにより、本実施の形態によれば、積層体1を構成する各層の条件の好ましい組み合わせを求めることも可能になる。 なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明が適用される積層体は、ベース層の一方の面にのみ配線層が設けられたFPCに限らず、ベース層の両面に配線層が設けられたFPCであってもよい。 以上の説明に基づき、本発明の種々の態様や変形例を実施可能であることは明らかである。従って、以下の請求の範囲の均等の範囲において、上記の最良の形態以外の形態でも本発明を実施することが可能である。 ベース層と、パターン化された導体よりなる配線層とを含む積層された複数の層を有し、一方向に延び、屈曲可能な積層体について、所定の間隔を開けて配置された固定板と可動板の間に前記積層体をU字形状に屈曲させて介挿し且つ前記積層体の長手方向の各端部をそれぞれ前記固定板と可動板とに固定し、可動板をその面に平行な方向に往復運動させて行う屈曲試験によって測定されるべき屈曲寿命を予測する方法であって、 互いに異なる構成の複数の前記積層体の試料の各々について、前記試料を構成する各層の厚みと、前記試料を構成する各層における応力とひずみの関係と、前記屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、前記試料の配線層における線幅および線間幅の各情報を用いて、前記試料の配線層に生じる応力を算出する第1の算出手順と、 前記複数の試料の各々について、前記屈曲試験によって屈曲寿命を測定する手順と、 前記第1の算出手順によって算出された各試料の配線層に生じる応力と、前記屈曲寿命を測定する手順によって測定された各試料の屈曲寿命とに基づいて、任意の構成の前記積層体における前記配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求める手順と、 屈曲寿命を予測する対象である仮想の前記積層体について、前記仮想の積層体を構成する各層の厚みと、前記仮想の積層体を構成する各層における応力とひずみの関係と、前記屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、前記仮想の積層体の配線層における線幅および線間幅の各情報を用いて、前記仮想の積層体の配線層に生じる応力を算出する第2の算出手順と、 前記第2の算出手順によって算出された前記仮想の積層体の配線層に生じる応力と、前記応力と屈曲寿命との関係を求める手順によって求められた前記応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、前記仮想の積層体の屈曲寿命を予測する手順とを備え、 前記第1の算出手順および第2の算出手順では、前記積層体のうち上から見たときに配線層が存在する部分である配線部と前記積層体のうち上から見たときに配線層が存在しない部分であるスペース部とで別の計算を行って、前記配線層に生じる垂直応力と前記積層体に生じるせん断応力とを算出し、前記垂直応力と前記せん断応力とを用いて、前記配線層に生じる応力として、前記配線層に生じる主応力を算出することを特徴とする積層体の屈曲寿命予測方法。 前記各層における応力とひずみの関係として、前記各層を構成する材料の弾性率を用いることを特徴とする請求項1記載の積層体の屈曲寿命予測方法。 前記各層における応力とひずみの関係は、前記各層を構成する材料についての引張試験によって取得されることを特徴とする請求項1記載の積層体の屈曲寿命予測方法。 前記応力と屈曲寿命との関係を求める手順では、前記屈曲試験が行われるときの温度をパラメータとした、前記配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求め、 前記屈曲寿命を予測する手順では、前記第2の算出手順によって算出された応力と、前記温度をパラメータとした応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、任意の温度の下での前記仮想の積層体の屈曲寿命を予測することを特徴とする請求項1記載の積層体の屈曲寿命予測方法。 前記応力と屈曲寿命との関係を求める手順では、前記屈曲試験における前記可動板の往復運動の周波数をパラメータとした、前記配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求め、 前記屈曲寿命を予測する手順では、前記第2の算出手順によって算出された応力と、前記周波数をパラメータとした応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、任意の周波数の下での前記仮想の積層体の屈曲寿命を予測することを特徴とする請求項1記載の積層体の屈曲寿命予測方法。 ベース層と、パターン化された導体よりなる配線層とを含む積層された複数の層を有し、一方向に延び、屈曲可能な積層体について、所定の間隔を開けて配置された固定板と可動板の間に前記積層体をU字形状に屈曲させて介挿し且つ前記積層体の長手方向の各端部をそれぞれ前記固定板と可動板とに固定し、可動板をその面に平行な方向に往復運動させて行う屈曲試験によって測定されるべき屈曲寿命を予測する装置であって、 互いに異なる構成の複数の前記積層体の試料の各々について、前記試料を構成する各層の厚みと、前記試料を構成する各層における応力とひずみの関係と、前記屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、前記試料の配線層における線幅および線間幅の各情報を入力する第1の入力手段と、 前記第1の入力手段によって入力された情報を用いて、前記試料の配線層に生じる応力を算出する第1の算出手段と、 前記屈曲試験によって測定された前記複数の試料の各々の屈曲寿命を入力する第2の入力手段と、 前記第1の算出手段によって算出された各試料の配線層に生じる応力と、前記第2の入力手段によって入力された各試料の屈曲寿命とに基づいて、任意の構成の前記積層体における前記配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求める手段と、 屈曲寿命を予測する対象である仮想の前記積層体について、前記仮想の積層体を構成する各層の厚みと、前記仮想の積層体を構成する各層における応力とひずみの関係と、前記屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、前記仮想の積層体の配線層における線幅および線間幅の各情報を入力する第3の入力手段と、 前記第3の入力手段によって入力された情報を用いて、前記仮想の積層体の配線層に生じる応力を算出する第2の算出手段と、 前記第2の算出手段によって算出された前記仮想の積層体の配線層に生じる応力と、前記応力と屈曲寿命との関係を求める手段によって求められた前記応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、前記仮想の積層体の屈曲寿命を予測する手段とを備え、 前記第1の算出手段および第2の算出手段では、前記積層体のうち上から見たときに配線層が存在する部分である配線部と前記積層体のうち上から見たときに配線層が存在しない部分であるスペース部とで別の計算を行って、前記配線層に生じる垂直応力と前記積層体に生じるせん断応力とを算出し、前記垂直応力と前記せん断応力とを用いて、前記配線層に生じる応力として、前記配線層に生じる主応力を算出することを特徴とする積層体の屈曲寿命予測装置。 前記応力と屈曲寿命との関係を求める手段は、前記屈曲試験が行われるときの温度をパラメータとした、前記配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求め、 前記屈曲寿命を予測する手段は、前記第2の算出手段によって算出された応力と、前記温度をパラメータとした応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、任意の温度の下での前記仮想の積層体の屈曲寿命を予測することを特徴とする請求項6記載の積層体の屈曲寿命予測装置。 前記応力と屈曲寿命との関係を求める手段は、前記屈曲試験における前記可動板の往復運動の周波数をパラメータとした、前記配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求め、 前記屈曲寿命を予測する手段は、前記第2の算出手段によって算出された応力と、前記周波数をパラメータとした応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、任意の周波数の下での前記仮想の積層体の屈曲寿命を予測することを特徴とする請求項6記載の積層体の屈曲寿命予測装置。 ベース層と、パターン化された導体よりなる配線層とを含む積層された複数の層を有し、一方向に延び、屈曲可能な積層体について、所定の間隔を開けて配置された固定板と可動板の間に前記積層体をU字形状に屈曲させて介挿し且つ前記積層体の長手方向の各端部をそれぞれ前記固定板と可動板とに固定し、可動板をその面に平行な方向に往復運動させて行う屈曲試験によって測定されるべき屈曲寿命を予測するために、コンピュータを、 互いに異なる構成の複数の前記積層体の試料の各々について、前記試料を構成する各層の厚みと、前記試料を構成する各層における応力とひずみの関係と、前記屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、前記試料の配線層における線幅および線間幅の各情報を入力する第1の入力手段、 前記第1の入力手段によって入力された情報を用いて、前記試料の配線層に生じる応力を算出する第1の算出手段、 前記屈曲試験によって測定された前記複数の試料の各々の屈曲寿命を入力する第2の入力手段、 前記第1の算出手段によって算出された各試料の配線層に生じる応力と、前記第2の入力手段によって入力された各試料の屈曲寿命とに基づいて、任意の構成の前記積層体における前記配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求める手段、 屈曲寿命を予測する対象である仮想の前記積層体について、前記仮想の積層体を構成する各層の厚みと、前記仮想の積層体を構成する各層における応力とひずみの関係と、前記屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、前記仮想の積層体の配線層における線幅および線間幅の各情報を入力する第3の入力手段、 前記第3の入力手段によって入力された情報を用いて、前記仮想の積層体の配線層に生じる応力を算出する第2の算出手段、および 前記第2の算出手段によって算出された前記仮想の積層体の配線層に生じる応力と、前記応力と屈曲寿命との関係を求める手段によって求められた前記応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、前記仮想の積層体の屈曲寿命を予測する手段、として機能させるための積層体の屈曲寿命予測プログラムであって、 前記第1の算出手段および第2の算出手段では、前記積層体のうち上から見たときに配線層が存在する部分である配線部と前記積層体のうち上から見たときに配線層が存在しない部分であるスペース部とで別の計算を行って、前記配線層に生じる垂直応力と前記積層体に生じるせん断応力とを算出し、前記垂直応力と前記せん断応力とを用いて、前記配線層に生じる応力として、前記配線層に生じる主応力を算出することを特徴とする積層体の屈曲寿命予測プログラム。 積層体の屈曲寿命予測プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、 前記プログラムは、ベース層と、パターン化された導体よりなる配線層とを含む積層された複数の層を有し、一方向に延び、屈曲可能な積層体について、所定の間隔を開けて配置された固定板と可動板の間に前記積層体をU字形状に屈曲させて介挿し且つ前記積層体の長手方向の各端部をそれぞれ前記固定板と可動板とに固定し、可動板をその面に平行な方向に往復運動させて行う屈曲試験によって測定されるべき屈曲寿命を予測するために、コンピュータを、 互いに異なる構成の複数の前記積層体の試料の各々について、前記試料を構成する各層の厚みと、前記試料を構成する各層における応力とひずみの関係と、前記屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、前記試料の配線層における線幅および線間幅の各情報を入力する第1の入力手段、 前記第1の入力手段によって入力された情報を用いて、前記試料の配線層に生じる応力を算出する第1の算出手段、 前記屈曲試験によって測定された前記複数の試料の各々の屈曲寿命を入力する第2の入力手段、 前記第1の算出手段によって算出された各試料の配線層に生じる応力と、前記第2の入力手段によって入力された各試料の屈曲寿命とに基づいて、任意の構成の前記積層体における前記配線層に生じる応力と屈曲寿命との関係を求める手段、 屈曲寿命を予測する対象である仮想の前記積層体について、前記仮想の積層体を構成する各層の厚みと、前記仮想の積層体を構成する各層における応力とひずみの関係と、前記屈曲試験における固定板と可動板の間隔と、前記仮想の積層体の配線層における線幅および線間幅の各情報を入力する第3の入力手段、 前記第3の入力手段によって入力された情報を用いて、前記仮想の積層体の配線層に生じる応力を算出する第2の算出手段、および 前記第2の算出手段によって算出された前記仮想の積層体の配線層に生じる応力と、前記応力と屈曲寿命との関係を求める手段によって求められた前記応力と屈曲寿命との関係とに基づいて、前記仮想の積層体の屈曲寿命を予測する手段、として機能させ、 前記第1の算出手段および第2の算出手段では、前記積層体のうち上から見たときに配線層が存在する部分である配線部と前記積層体のうち上から見たときに配線層が存在しない部分であるスペース部とで別の計算を行って、前記配線層に生じる垂直応力と前記積層体に生じるせん断応力とを算出し、前記垂直応力と前記せん断応力とを用いて、前記配線層に生じる応力として、前記配線層に生じる主応力を算出することを特徴とする記録媒体。


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