タイトル: | 特許公報(B2)_コンタクトレンズ用液剤 |
出願番号: | 2010501316 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | G02C 13/00,A61K 9/08,A61K 31/14,A61K 31/155,A61K 31/4402,A61K 47/34,A61K 47/40,A61L 2/18,C08G 65/02 |
谷川 定康 塚本 桂史 伊藤 一作 JP 4751482 特許公報(B2) 20110527 2010501316 20090722 コンタクトレンズ用液剤 株式会社メニコン 000138082 中島 三千雄 100078190 中島 正博 100115174 谷川 定康 塚本 桂史 伊藤 一作 JP 2008188763 20080722 20110817 G02C 13/00 20060101AFI20110728BHJP A61K 9/08 20060101ALI20110728BHJP A61K 31/14 20060101ALI20110728BHJP A61K 31/155 20060101ALI20110728BHJP A61K 31/4402 20060101ALI20110728BHJP A61K 47/34 20060101ALI20110728BHJP A61K 47/40 20060101ALI20110728BHJP A61L 2/18 20060101ALI20110728BHJP C08G 65/02 20060101ALI20110728BHJP JPG02C13/00A61K9/08A61K31/14A61K31/155A61K31/4402A61K47/34A61K47/40A61L2/18C08G65/02 G02C 13/00 A61K 9/08 A61K 31/14 A61K 31/155 A61K 31/4402 A61K 47/34 A61K 47/40 A61L 2/18 C08G 65/02 CA/REGISTRY(STN) 特表2004−538096(JP,A) 特開2001−125052(JP,A) 特開2001−318348(JP,A) 特表平11−512445(JP,A) 特開2001−261578(JP,A) 4 JP2009003417 20090722 WO2010010689 20100128 23 20100113 堀井 康司 本発明は、コンタクトレンズ用液剤に係り、特に、液体媒体中に含有せしめられている薬剤成分が、シクロデキストリン等の化合物の空孔内に包接されることによって、その薬剤作用が充分に発揮され得なくなるといった問題を有利に解消し得るコンタクトレンズ用液剤に関するものである。 従来から、コンタクトレンズ用液剤等の眼科用組成物に対して、薬剤成分のコンタクトレンズや容器等への吸着防止、溶解性の向上、苦味の低減、刺激の緩和や、液剤の増粘性や保湿性を向上させること等を目的として、シクロデキストリン類を含有せしめることが、よく行なわれている。例えば、特許第3297969号公報(特許文献1)には、カチオン基を有する防腐剤を含有する点眼剤(コンタクトレンズ用点眼剤)に、シクロデキストリン類と、エチレンジアミン四酢酸又はその塩と、ホウ酸及び/又はホウ砂とを配合してなるものが明らかにされている。そして、そのような点眼剤によれば、カチオン基を有する防腐剤(殺菌剤)に対して、シクロデキストリン類とエチレンジアミン四酢酸又はその塩とを併用して配合しているところから、防腐剤の防腐力を損なうことなく、コンタクトレンズへの防腐剤の吸着が充分に有効に抑制され、また、ホウ酸及び/又はホウ砂を防腐剤と併用しているところから、その防腐力が更に増強されるとされている。 しかしながら、かかる特許文献1に明らかにされている如き点眼剤(コンタクトレンズ用点眼剤)にあっては、カチオン基を有する防腐剤と共に、シクロデキストリンが含有せしめられることによって、かかる防腐剤のコンタクトレンズへの吸着が有利に防止され得ることとなるものの、そのような防腐剤は、点眼剤中において、シクロデキストリンの空孔内に包接されるようになるところから、かかる防腐剤の本来有する防腐力が、充分に発揮され得なくなるといった問題が内在しているのである。そして、そのために、かかる点眼剤にあっては、点眼剤中に、カチオン基を有する防腐剤に加えて、更に、エチレンジアミン四酢酸やホウ酸及び/又はホウ砂を含有させることにより、防腐力を補うようにしているのであるが、それらエチレンジアミン四酢酸やホウ酸、ホウ砂は、人間の眼に対する毒性が高く、そのような点眼剤を使用した場合にあっては、それらの濃度によっては、眼に対する悪影響が懸念されるものであったのである。 しかも、そのようなシクロデキストリンを含有する点眼剤にあっては、点眼剤中に、上記の防腐剤以外の薬剤成分として、一般に、点眼剤中に含有せしめられる各種の成分、例えば、抗アレルギー剤や消炎剤、血管収縮剤、清涼化剤等の薬剤成分が含有せしめられた場合には、これらの薬剤成分も、上記の防腐剤と同様に、シクロデキストリンの空孔内に包接されてしまうこととなるのであり、それによって、そのような薬剤成分にあっても、それらの薬剤が有する薬剤作用が、充分に発揮され得なくなるといった問題が内在していたのである。 このように、薬剤成分と共に、シクロデキストリンのような、環状乃至は筒状の分子構造を有し、且つ他の化合物(薬剤成分)を包接し得る化合物を含有する眼科用組成物にあっては、かかる化合物の環状乃至は筒状の分子構造の空孔内に、種々の薬剤成分が包接されて、それにより、それらの薬剤成分が本来有する薬剤作用が、充分に発揮され得なくなるといった問題が存するものであったのである。特許第3297969号公報 ここにおいて、本発明は、かくの如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、液体媒体中に、薬剤成分と共に、シクロデキストリンのような、環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物が含有せしめられたコンタクトレンズ用液剤であっても、薬剤成分の薬剤作用が有利に発揮せしめられ得るコンタクトレンズ用液剤を提供することにある。 そして、本発明者等は、そのような課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、薬剤成分と共に、環状乃至は筒状の分子構造を有し、且つ他の化合物(薬剤成分)を包接し得る化合物(化合物A)を含有してなる液体媒体中に、更に、鎖状分子構造を有し、且つ前記化合物Aに包接され得る化合物(化合物B)を含有せしめることにより、上記せる如き課題が有利に解決され得ることを見い出したのである。 従って、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、上記せる如き課題の解決のために、薬剤成分と共に、環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aを含有せしめてなる液体媒体中に、更に、鎖状分子構造を有し且つ前記化合物Aに包接され得る化合物Bを、含有させたことを特徴とするコンタクトレンズ用液剤を、その要旨とするものである。 なお、このような本発明に従うコンタクトレンズ用液剤の望ましい態様の一つによれば、前記液体媒体中において、前記化合物Aに前記化合物Bが包接されて形成される包接化合物は、擬ロタキサン構造乃至は擬ポリロタキサン構造を呈している。 ここで、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤の好ましい態様の一つによれば、前記化合物Aと前記化合物Bとは、重量比において、1000:1〜1:1000の割合において含有せしめられており、また別の好ましい態様の一つによれば、前記化合物Aは、0.001〜20.0w/w%の濃度において含有せしめられている。 また、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤の望ましい態様の他の一つによれば、前記化合物Bは、重量平均分子量500以上の水溶性ポリマーであり、より望ましくは、ポリエチレングリコールである。 さらに、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤の別の望ましい態様によれば、前記環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aは、シクロデキストリン類である。 そして、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤の更に別の好ましい態様によれば、前記化合物Aはα−シクロデキストリンであると共に、前記化合物Bは、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000から選ばれる少なくとも1種である。 更にまた、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤の他の望ましい態様の一つによれば、前記薬剤成分は、抗アレルギー剤、消炎剤、血管収縮剤、清涼化剤、防腐剤・殺菌剤、ピント調節機能改善剤、眼圧降下剤、ビタミン類、抗菌剤(抗生物質)及び界面活性剤の中から選ばれる少なくとも1種である。 加えて、本発明にあっては、所定の薬剤成分、環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物A、及び鎖状分子構造を有し且つ該化合物Aに包接され得る化合物Bを含有する液剤製剤中において、該化合物Bを該化合物Aに包接させて、擬ロタキサン構造乃至は擬ポリロタキサン構造を形成することによって、前記薬剤成分の薬剤作用を制御することを特徴とする方法をも、その要旨とするものである。 また、本発明にあっては、液体媒体中に、環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aと、鎖状分子構造を有し且つ該化合物Aに包接され得る化合物Bとを含有せしめて、かかる化合物Bの鎖状部分を前記化合物の環状乃至は筒状構造の空孔内に入り込ませ、擬ロタキサン構造乃至は擬ポリロタキサン構造を呈する包接化合物を形成せしめることにより、該化合物Bの毒性を低減させることを特徴とする方法をも、その要旨とするものである。また、そこにおいて、前記化合物Bは、より望ましくは、ポリエチレングリコール又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである。 従って、このような本発明に従うコンタクトレンズ用液剤にあっては、所定の薬剤成分と共に、環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aを含有せしめてなる液体媒体中に、更に、鎖状分子構造を有し且つ前記化合物Aに包接され得る化合物Bを、含有させてなるものであるところから、化合物Aの空孔内には、薬剤成分と競合的に、或いは交換的に、化合物Bが包接されるようになるのであり、それにより、薬剤成分の薬剤作用が、有利に制御せしめられ得て、以て、かかる薬剤成分の薬剤効果が充分に発揮され得なくなるようなことが、効果的に抑制乃至は防止され得ることとなるのである。 しかも、そのような本発明に従うコンタクトレンズ用液剤にあっては、液体媒体中に、薬剤成分と共に、環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aが含有せしめられることによって実現される有利な効果、例えば、薬剤成分のコンタクトレンズや容器等への吸着抑制効果や、難溶性物質の溶解性改善効果、苦味低減効果、刺激緩和効果、粘度の低下抑制効果等は、前記鎖状分子構造を有し且つ化合物Aに包接され得る化合物Bの存在によって、何等滅失されることはなく、それらの効果もまた、有利に享受され得るのである。 ところで、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤は、所定の薬剤成分と共に、環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aを含有せしめてなる液体媒体中に、更に、鎖状分子構造を有し且つ化合物Aに包接され得る化合物Bを、含有させてなるものであるが、そこにおいて、薬剤成分としては、従来からコンタクトレンズ用液剤に対して含有せしめられている公知の各種の薬剤成分(ここでは、広く、化学的作用をもつ成分のことをいう)が、何れも用いられ得るのであって、何等限定されるものではないが、特に、化合物Aに包接され得るものが、好ましく用いられる(なお、「包接」には、薬剤成分又は化合物Bが、化合物Aを貫通する形態のものも含む。以下同じ。)。そして、そのような薬剤成分としては、例えば、抗アレルギー剤や消炎剤、血管収縮剤、清涼化剤、防腐剤・殺菌剤、ピント調節機能改善剤、眼圧降下剤、ビタミン類、抗菌剤(抗生物質)及び界面活性剤等を、例示することが出来る。 具体的には、上で例示する薬剤成分のうち、抗アレルギー剤とは、花粉症やアレルギー性結膜炎等の治療に用いられる成分であって、具体的には、クロモグリク酸、トラニラスト等のマスト細胞安定化剤や、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、アンレキサノクス、イブジラスト、トラニラスト、ペミロラストカリウム、フマル酸エメダスチン、塩酸オロパタジン、エバスチン、アシタザノラスト、レボカバスチン、塩酸セチリジン等の抗ヒスタミン剤が挙げられ、それらが、一般に、0.00001〜5w/w%程度の濃度において、用いられることとなる。 また、上記する薬剤成分のうち、消炎剤は、ストレスやコンタクトレンズの装用等に起因する眼内の炎症を抑えるために用いられる成分であって、ステロイド系、非ステロイド系を問わず、例えば、グリチルリチン酸及びその塩、ε−アミノカプロン酸、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム、フルオロメトロン等があり、一般に、0.0001〜10w/w%程度、より好ましくは、0.001〜5w/w%程度の濃度において、用いられるものである。 さらに、前記した血管収縮剤とは、眼球中の強膜血管に作用し、眼の充血を解消すると共に、眼精疲労を回復させる効果があるとされる成分であって、例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリン等が例示される。なお、それらのコンタクトレンズ用液剤中の含有量は、好ましくは、0.0001〜1w/w%程度、より好ましくは、0.0003〜0.1w/w%の濃度とされることとなる。 更にまた、上記薬剤成分のうち、清涼化剤とは、眼に対して爽快感を与えたり、コンタクトレンズ装用時の異物感や痒みを解消すること等を目的として含有せしめられるものであって、例えば、ウイキョウ油、d−カンフル、dl−カンフル、クールミントNo.71212、ゲラニオール、ハッカ水、ハッカ油、ベルガモット油、ローズ油、ラベンダー油、d−ボルネオール、dl−ボルネオール(リュウノウ)、l−メントール、dl−メントール、ユーカリ油、リナロ−ル、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキシアミド(例えば、WS−3;高砂香料工業(株))等が挙げられ、それらの清涼化剤は、一般に、0.0001〜1w/w%程度、より好ましくは、0.001〜0.1w/w%の濃度において、含有せしめられる。 加えて、防腐剤・殺菌剤としては、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸或いはその塩、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB;塩酸ポリヘキサニド)、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩化セチルピリジニウム塩(CPC)、クロルヘキシジン、アレキシジン、クロルフェニラミン又はその塩、アラントイン、塩化ポリドロニウム等の等のポリクオタニウム類等が挙げられ、これらの防腐剤の中でも、本発明にあっては、ソルビン酸やソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩化ポリドロニウムが、コンタクトレンズの規格に対する悪影響が極めて少ないところから、特に、好ましく採用される。なお、それらの防腐剤は、一般に、0.00001〜1w/w%程度の濃度において用いられることとなる。 さらに、抗菌剤としては、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム等のサルファ剤、及び、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、トスフロキサシン、ロメフロキサシン、シプロフロキサシン等のニューキノロン系抗菌剤、トブラマイシン、ゲンタマイシン、ミクロノマイシン、ジベカシン、シソマイシン等のアミノグリコシド系抗菌剤、テトラサイクリン、ミノサイクリン等のテトラサイクリン系抗菌剤、エリスロマイシン等のマクロライド系抗菌剤、クロラムフェニコール等のクロラムフェニコール系抗菌剤、セフメノキシム等のセフェム系抗菌剤等が、挙げられる。 更にまた、ビタミン類としては、ビタミンA類(パルミチン酸レチノール、β−カロテン等を含む)、ビタミンB2(フラビンアデニンヌクオレチド等)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシン等)、ビタミンB12(シアノコバラミン等)、ビタミンC(アスコルビン酸等)、ビタミンE類(酢酸−d−α−トコフェロール等)、パンテノール等が、挙げられる。 加えて、ピント調節機能改善剤としては、メチル硫酸ネオスチグミン等が、挙げられる。 さらに、眼圧降下剤としては、ベタキソロール、チモロール、ジピベフリン、カルテオロール、ラタノプロスト、タフルプロスト、トラボプロスト、ニプラジロール、レボブノロール等が、挙げられる。 また、界面活性剤としては、従来から公知のアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤及びカチオン系界面活性剤の何れもが、適宜に採用され得るのであり、そのような界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンエチレンジアミン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリソルベート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、N−アシルタウリン塩、アルキルグルタミン酸塩、アルキルグリシン塩、アルキルアラニン塩、ココイル脂肪酸アルギニン、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩、イミダゾリン型両性界面活性剤、第四級アルキルアンモニウム塩、ココイルアルギニンエチルPCA等を挙げることが出来る。なお、そのような界面活性剤は、コンタクトレンズ用液剤中、通常、0.001〜5w/w%程度、好ましくは0.005〜2w/w%程度の濃度において、含有せしめられる。 さらに、そのような薬剤成分以外にも、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤中には、従来のコンタクトレンズ用液剤と同様に、増粘剤やキレート化剤、張度調整剤、緩衝剤、角膜上皮障害治療剤、溶解補助剤、油脂類、アミノ酸類等の薬剤成分が含有せしめられていてもよい。 そこにおいて、上記増粘剤とは、コンタクトレンズ用液剤の粘度を調整するために含有せしめられるものであって、例えば、アルギン酸、キトサン及びそれらの塩等の多糖類、ヒアルロン酸(塩)、コンドロイチン硫酸(塩)等のムコ多糖類、ヘテロ多糖類等の種々のガム類や、ポリビニルアルコール(完全ケン化型、部分ケン化型)、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、Copolymer 845 (ポリビニルピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合ポリマー)等の合成有機高分子化合物、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体やスターチ誘導体等が、0.001〜10w/w%程度の濃度において、用いられる。 また、キレート化剤は、コンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズへの涙液中のカルシウム等の沈着乃至は吸着を防止するための成分であって、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、例えばエチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム(EDTA・2Na)、エチレンジアミン四酢酸・3ナトリウム(EDTA・3Na)等が、一般に、0.001〜0.5w/w%程度の濃度において、用いられる。 さらに、張度調整剤(浸透圧調整剤)は、コンタクトレンズ用液剤の浸透圧を、涙液の浸透圧に近いものに調整して、眼に対する刺激やコンタクトレンズの規格変化、眼障害等が惹起されることを回避するために含有せしめられるものであって、一般に、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類、ブドウ糖、デキストラン、トレハロース等の糖類及びその誘導体、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール、及びプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール若しくはそのエーテル又はそのエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物が、通常、生理食塩液に対する浸透圧比にて(生理食塩液の浸透圧を1として)、0.5〜2.0程度の範囲、好ましくは、0.6〜1.6程度の範囲となるような量において、含有せしめられる。 加えて、前記の緩衝剤は、コンタクトレンズ用液剤のpH値を、3.5〜9.0程度、特に、生物学的に安全なpHに調整して、眼に対する刺激や、眼障害が惹起されることを防止するために含有せしめられるものであって、例えば、リン酸、ホウ酸、クエン酸、酢酸等のカルボン酸類、オキシカルボン酸等の酸や、その塩(例えば、ナトリウム塩等)、更にはGood−Bufferやトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、炭酸水素ナトリウム、アミノエチルスルホン酸、グリシン、アルギニン、グルタミン酸等のアミノ酸類等が、前記した範囲内のpH値となるような濃度において、含有せしめられることとなる。 また、角膜上皮障害治療剤は、ドライアイ、外傷、薬剤等による角膜上皮障害を治療するための薬剤成分であって、例えば、ヒアルロン酸やその塩、コンドロイチン硫酸やその塩等が例示され、それらが、一般に、0.001〜1w/w%程度の濃度において、用いられる。 さらに、溶解補助剤は、非水溶性薬剤等の難溶性物質の溶解性を改善するための薬剤成分であって、例えば、エタノール、イソプロパノール、オレイルアルコール、ラウリルアルコール等の低級或いは高級アルコール等が、挙げられる。 加えて、油脂類は、オキュラーサーフェスの摩擦低減や涙液油層の補充を目的として配合される成分であって、例えば、アルモンド油、ラノリン、オリーブ油、オレイン酸及び/又はその塩、リモネン、流動パラフィン、トリグリセリド、スクワラン、ワセリン、シリコン油、ゴマ油、シソ油、ダイズ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ホホバ油、ヒマシ油が例示され、それらが、一般に、0.0001〜3w/w%程度の濃度において、用いられる。 また、本発明において用いられるアミノ酸類としては、アスパラギン酸及びその塩、トラネキサム酸、L−システイン、アラニン、リジン、アンセリン、カルノシン等が挙げられ、更に、ビタミン類としては、ビタミンA類(パルミチン酸レチノール、β−カロチン等を含む)、ビタミンB2 (フラビンアデニンヌクレオチドナトリウム等)、B6 (塩酸ピリドキシン等)、B12(シアノコバラミン等)、ビタミンC(アスコルビン酸)、酢酸d−α−トコフェロール等のビタミンE類、パンテノール等が挙げられる。また更に、前記サルファ剤は、主に抗菌剤として使用される成分であって、例えば、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム等が挙げらる。なお、抗菌剤としては、上記せる如きサルファ剤以外にも、オフロキサシン等、ニューキノロン系抗菌剤等の抗菌剤も、用いられ得る。 さらに、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤にあっては、上述の如き成分の他にも、更に必要に応じて、従来より、コンタクトレンズ用液剤に用いられている各種の薬剤成分のうちの1種乃至は2種以上が、含有せしめられていても、何等、差支えない。なお、そのような薬剤成分は、生体への安全性が高く、尚且つ眼科的に許容され、しかも、コンタクトレンズの形状や物性に対して悪影響のないものであることが好ましく、また、そういった要件を満たす量的範囲内で用いられることが望ましい。 加えて、本発明にあっては、上述せる如き薬剤成分が、単独で、或いは二種以上が組み合わされて、液体媒体中に含有せしめられることとなるのであるが、そのような液体媒体中に含有せしめられる薬剤成分が、全て、後述する環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aに包接され得るものである必要はなく、それらの薬剤成分のうち、少なくとも1種が、後述する化合物Aに包接されるものであれば、上述した本発明の効果が充分に享受され得ることとなるのであり、従って、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤にあっては、前記化合物Aに包接され得ない薬剤成分が、液体媒体中に存在していても、何等、差支えないのである。 そして、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤にあっては、液体媒体中に、上記せる如き薬剤成分と共に、環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物(化合物A)が、含有せしめられているのであるが、本発明にあっては、かかる化合物Aは、眼科的に許容され、また、少なくとも1種の薬剤成分と、後述する鎖状分子構造を有する化合物Bを包接し得るものであれば、特に限定されるものではなく、各種の環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物が、何れも、採用され得るものである。なお、そのような化合物Bとしては、例えば、多数のD−グルコピラノース基がα1→4グリコシド結合によって王冠状に環化した構造を有するシクロデキストリン類や、環状のポリエーテルであるクラウンエーテル類、チューブ状(筒状)の炭素分子であるカーボンナノチューブ類、ホルムアルデヒドとフェノール誘導体とを反応させることにより得られる環式化合物であるカリックスアレーン類等が、例示され得る。 特に、本発明にあっては、上記せる如き化合物Aの中でも、生体に対する安全性が高く、また、コンタクトレンズ用液剤に対して、保湿効果や増粘効果を付与し得ると共に、その空孔内に各種の薬剤成分を包接することにより、以下のような優れた効果が有利に奏され得るところから、シクロデキストリン類が好ましく用いられる。 すなわち、かかるシクロデキストリン類が、薬剤成分と共に液体媒体中に含有せしめられると、その薬剤成分が、シクロデキストリン類の空孔内に包接されることにより、かかる薬剤成分の好ましくない吸着・作用が、有利に抑制せしめられることとなる。具体的には、薬剤成分が、シクロデキストリン類の空孔内に包接されると、かかる薬剤成分のコンタクトレンズや製剤容器、生体組織等への吸着乃至作用が、有利に抑制せしめられるのである。 また、そのようなシクロデキストリン類としては、本発明においては、特に限定されるものではないが、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン等のグルコース重合度:6〜9程度のシクロデキストリンを用いることが出来、更にその他にも、メチル化シクロデキストリン、ヒドロキシエチル化シクロデキストリン、マルトシル−α−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、トリアセチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化シクロデキストリン等のシクロデキストリン誘導体、シクロデキストリン二量体等のシクロデキストリン多量体が、適宜に用いられる。その中でも、特に、後述するポリオキシエチレン誘導体との包接化合物の毒性が少ないところから、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンが、好ましく用いられる。 なお、上述の如き環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aのコンタクトレンズ用液剤中における含有量としては、本発明においては、特に限定されるものではないが、上記薬剤成分の奏する薬剤作用が有利に制御され得るような濃度において用いられることが望ましく、一般に、0.001〜20.0w/w%程度の濃度において、より好ましくは、0.005〜5.0w/w%程度の濃度において用いられることとなる。化合物Aの含有量が多過ぎる場合には、浸透圧が上昇して、溶解性や眼刺激の問題が惹起される恐れがあり、また化合物Aの含有量が少な過ぎる場合には、上述した本発明の効果が充分に享受され得ない恐れがある。 そして、本発明にあっては、上記せる如き薬剤成分及び化合物Aを含有してなる液体媒体中に、更に、鎖状分子構造を有し、且つ前記化合物Aに包接され得る化合物Bが、含有せしめられるのである。 このように、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤にあっては、薬剤成分と共に、環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aを含有せしめてなる液体媒体中に、更に、鎖状分子構造を有し、且つ前記化合物Aに包接され得る化合物Bを、含有させてなるものであるところから、シクロデキストリン等の環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物(化合物A)の空孔内に、各種の薬剤成分と競合的に、或いは交換的に、鎖状分子構造を有する化合物Bが、包接されるようになるのであり、そして、それにより、各種の薬剤成分の薬剤作用が、それぞれ、有利に発揮せしめられ得ることとなるのである。 すなわち、従来のコンタクトレンズ用液剤にあっては、液体媒体中に、各種の薬剤成分と共に、環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aが含有せしめられると、液体媒体中に含まれる各種の薬剤成分が、環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aの環内乃至は筒内(空孔内)に、包接せしめられるようになるのであり、そのように化合物Aの空孔内に包接せしめられた薬剤成分にあっては、かかる薬剤成分が本来有する薬剤効果が、充分に発揮され得ないこととなるのである。これに対して、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤にあっては、液体媒体中に、薬剤成分及び環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物(化合物A)に加えて、更に、鎖状分子構造を有し、且つ化合物Aに包接され得る化合物(化合物B)が含有せしめられているところから、化合物Aの空孔内には、薬剤成分と競合的に、或いは交換的に、化合物Bが包接されるようになるのであり、それにより、薬剤成分の化合物Aへの包接が有利に制御せしめられることとなり、以て、かかる薬剤成分の有する薬剤作用が、有利に効果的に制御せしめられて、その薬剤効果が有利に発揮せしめられ得ることとなるのである。即ち、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤にあっては、シクロデキストリンのような環状乃至は筒状の分子構造(化合物A)の共存下においても、例えば防腐剤等の薬剤成分の薬剤作用の低減が、有利に防止され得ることとなるのである。 また、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤にあっては、化合物Bの添加、含有によって、環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aの空孔内には、上記せる如き薬剤成分と競合的に、或いは交換的に、化合物Bが包接されるようになるところから、かかる薬剤成分は、化合物Aの空孔内から押し出されるようになるのであるが、その場合にあっても、上述したような、薬剤成分と共に、シクロデキストリン等の環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物(化合物A)を含有せしめることによって実現される有利な効果、例えば、殺菌剤のコンタクトレンズや容器等への吸着抑制効果、非水溶性薬剤等の難溶性物質の溶解性改善効果、抗ヒスタミン剤や消炎剤等の苦味低減効果、清涼化剤等の刺激性緩和効果、PHMB等の殺菌剤・防腐剤による薬剤性角膜ステイニング抑制乃至予防効果等は、何等、滅失されることなく、それらの効果が、何れも、有利に享受され得るのである。 なお、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤においては、前記化合物Bは、鎖状分子構造を有し、且つ前記化合物Aに包接され得るものであれば、特に限定されず、その分子構造は、直鎖状であっても、分岐鎖を有するものであってもよく、眼科的に許容され、且つコンタクトレンズに対する適合性を有する各種の公知の化合物が、何れも、適宜に用いられ得るものであるが、本発明にあっては、特に、生体に対する安全性やコンタクトレンズに対する適合性が高いところから、水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリアルキレングリコールや、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等のポリオキシアルキレン誘導体が、有利に用いられ、その中でも、本発明にあっては、上述のシクロデキストリンに対する包接性に優れるところから、ポリエチレングリコールが、より好ましく用いられる。 また、そのような化合物Bの分子量としては、特に限定されるものではないものの、上述のシクロデキストリン類(化合物A)との包接化合物が有利に且つ製剤的に安定的に形成され得るところから、好ましくは、重量平均分子量500以上、より好ましくは、重量平均分子量2000〜40000程度とされることとなる。なお、かかる化合物Bの重量平均分子量が小さ過ぎる場合には、化合物Bと化合物Aとの包接化合物が安定的に形成され得ない恐れがあると共に、それにより処理されたコンタクトレンズが膨潤して、コンタクトレンズの規格が変化せしめられる恐れがあり、一方、化合物Bの重量平均分子量が大き過ぎる場合には、化合物Bの液体媒体に対する溶解性が悪化する恐れがある。 さらに、そのような化合物Bのコンタクトレンズ用液剤中における含有量としても、本発明にあっては、特に限定されるものではないが、薬剤成分の薬剤作用が、有利に発揮せしめられ得るような濃度において用いられることが望ましく、通常、0.001〜10.0w/w%程度の濃度において、好ましくは、0.005〜5.0w/w%程度の濃度において、用いられることとなる。なお、そのような化合物Bの含有量が多過ぎる場合にあっては、浸透圧が上昇して、眼に対する刺激が強くなる恐れがあると共に、薬剤成分の薬剤作用を効果的に制御することが困難となる恐れがある。一方、かかる化合物Bの含有量が少な過ぎる場合には、化合物Bの添加、含有によって奏される上述の如き効果が、充分に享受され得なくなる恐れがあるのである。 加えて、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤中における前記化合物Aと前記化合物Bの含有量の比は、特に限定されるものではないが、かかる液剤中に共存する薬剤成分の薬剤作用を有利に制御せしめるために、重量比において、一般に、1000:1〜1:1000程度の割合において、好ましくは500:1〜1:500程度の割合において、含有せしめられることとなる。 このように、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤は、液体媒体中に、各種の薬剤成分と共に、上述せる如き化合物Aと、化合物Bとが含有せしめられてなるものであるが、例えば、前記化合物Aとして、上記せる如きシクロデキストリン類を用い、また、前記化合物Bとして、ポリエチレングリコール等のポリオキシエチレン誘導体を用いた場合には、それら化合物A及び化合物Bによって形成される包接化合物は、擬ロタキサン(プソイドロタキサン)構造乃至は擬ポリロタキサン(プソイドポリロタキサン)構造を呈することとなる。そして、そのような擬ロタキサン構造乃至は擬ポリロタキサン構造を呈する包接化合物にあっては、包接化合物の形成乃至は解除が容易であるところから、薬剤成分の薬剤作用が、より一層有利に制御され得るのであって、従って、本発明にあっては、そのような擬ロタキサン構造乃至は擬ポリロタキサン構造を呈する包接化合物を形成するような化合物Aと化合物Bの組合せが、好ましく採用されるのである。より具体的には、そのような化合物Aと化合物Bの組合せとしては、例えば、化合物Aとしてα−シクロデキストリンと、化合物Bとしてマクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000から選ばれる少なくとも1種との組合せが例示される。 また、前記した薬剤成分の不存在下において、それら化合物Aと化合物Bとによって包接化合物が形成されることにより、かかる化合物Bの毒性は効果的に低減せしめられ得ることとなるのであり、この点においても、本発明の特徴を見出すことが出来る。 なお、上述せる如き本発明に従うコンタクトレンズ用液剤を製造するに際しては、上述の如き成分、即ち、所定の薬剤成分、化合物A及び化合物Bを、従来と同様に、適当な液体媒体中に、それぞれ適量において添加して、溶解・含有せしめることにより、行なわれることとなるのであるが、その際に用いられる液体媒体としては、水道水や精製水、蒸留水等の、水そのものの他にも、水を主体とする溶液であれば、生体への安全性が高く、尚且つ眼科的に充分に許容され得るものである限りにおいて、何れも、利用することが可能である。また、そのようなコンタクトレンズ用液剤を調製するにあたっては、何等特殊な方法を必要とするものではなく、通常の水溶液を調製する場合と同様に、液体媒体中に各成分を任意の順序にて溶解させることにより、容易に得ることが出来るものである。更に、充填される容器も何等限定されるものではなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等を材質として、その単層や多層構造のもの等、適宜に選択される。 そして、以上のようにして得られる本発明に従うコンタクトレンズ用液剤は、その使用形態が何等限定されるものではなく、例えば、コンタクトレンズ用洗浄液、すすぎ液、装着液、保存液、タンパク除去剤或いはマルチパーパスソリューション等として、更には、コンタクトレンズの包装溶液や、コンタクトレンズの装用中に使用し得る洗眼液や点眼液等として、また、それら機能の組み合わされた多目的製剤(例:点眼装着液、点眼洗眼液)としても、適宜に調製されて、用いられ得るのである。 また、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤を使用する場合において、その対象となるコンタクトレンズ(ファッション用カラーコンタクトレンズを含む)としては、その種類が何等限定されるものではなく、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性を含む)であっても、ハードコンタクトレンズ(酸素透過性ハードコンタクトレンズを含む)であっても良く、また、ソフトコンタクトレンズとハードコンタクトレンズを組み合わせたハイブリッドコンタクトレンズであっても、シリコーンハイドロゲル製コンタクトレンズであっても良い。更に、そのようなコンタクトレンズは、非含水性、低含水性、高含水性の何れもが、加えて、表面処理されているか否かを問わず、その対象となり得るものである。加えて、1日使い捨てコンタクトレンズに代表されるディスポーザブル型コンタクトレンズや、定期交換型コンタクトレンズ、頻回交換型コンタクトレンズ、寿命が来るまで使用する従来型コンタクトレンズが、何れも、その対象となるものであり、またそのようなコンタクトレンズは、終日装用型であっても、連続装用型であっても良い。 以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。−供試液1− 先ず、薬剤成分として、塩化ベンザルコニウム(ナカライテスク株式会社製)を用い、また化合物Aとしては、α−シクロデキストリン(和光純薬工業株式会社製)を用い、更に化合物Bとしては、重量平均分子量が6000のポリエチレングリコール(マクロゴール6000、日油株式会社製)を用いると共に、緩衝剤として、リン酸水素ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムを用いて、それらを、下記表1に示される配合割合にて、それぞれ精製水中に溶解せしめることにより、コンタクトレンズ用液剤(供試液1)を調製した。 次いで、かかる調製されたコンタクトレンズ用液剤について、以下のようにして、消毒効果の評価を行なった。そして、その得られた結果を、下記表1に併せて示す。[防腐効果] 「第15局改正日本薬局方 参考情報 28.保存効力試験法」を参考にして、試験を行なった。具体的には、緑膿菌(Psudomonas aeruginosa) を、上記で準備されたコンタクトレンズ用液剤中に、1mL当たり105〜106個となるように接種して、22℃で14日間の培養を行なった。そして、培養後の生菌数を測定し、接種菌数に対する培養後の生菌数から、菌の生存率を算出し、以下の基準に基づいて、評価した。また、供試菌として、大腸菌(Escherichia coli)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) を用いて、それぞれ上記と同様にして保存効力試験を行い、そして菌の生存率を算出し、以下の基準に基づいて、評価を行なった。 ◎:菌が検出されなかった。 △:菌の生存率が0.1%以上であった。 ×:菌が増殖していた。−供試液2− 薬剤成分として、塩化ベンザルコニウムの0.01w/v%に代えて、ポリヘキサメチレンビグアニド(塩酸ポリヘキサニド、アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社製)の0.000025w/v%を用いたこと以外は、供試液1と同様にして、コンタクトレンズ用液剤を調製した。また、調製されたコンタクトレンズ用液剤について、上記と同様にして、防腐効果の評価を行なった。その得られた結果を、下記表1に併せて示す。−供試液3− ポリエチレングリコールの配合割合を、1.5w/v%に代えて、0.25w/v%としたこと以外は、供試液1と同様にして、コンタクトレンズ用液剤を調製した。また、調製されたコンタクトレンズ用液剤について、上記と同様にして、防腐効果の評価を行なった。その得られた結果を、下記表1に併せて示す。−供試液4− 張度調整剤として、塩化ナトリウムの0.83w/v%を用いたこと以外は、供試液1と同様にして、コンタクトレンズ用液剤を調製した。また、調製されたコンタクトレンズ用液剤について、上記と同様にして、防腐効果の評価を行なった。その得られた結果を、下記表1に併せて示す。−比較液1、比較液2− ポリエチレングリコールを用いないこととした以外は、供試液1と同様にして、下記表2に示される配合割合において、比較液1を調製した。また、ポリエチレングリコールを用いないこととした以外は、供試液2と同様にして、下記表2に示される配合割合において、比較液2を調製した。そして、それら比較液1及び比較液2について、上記と同様にして、それぞれ防腐効果の評価を行なった。その得られた結果を、下記表2に併せて示す。−比較液3、比較液4− α−シクロデキストリンを用いないこととした以外は、供試液1と同様にして、比較液3を調製した。また、α−シクロデキストリンとポリエチレングリコールを用いないこととした以外は、供試液1と同様にして、比較液4を調製した。そして、それら比較液3及び比較液4について、上記と同様にして、それぞれ防腐効果の評価を行なった。その得られた結果を、下記表2に、配合割合と共に、併せて示す。−比較液5、比較液6− α−シクロデキストリンを用いないこととした以外は、供試液2と同様にして、比較液5を調製した。また、α−シクロデキストリンとポリエチレングリコールを用いないこととした以外は、供試液2と同様にして、比較液6を調製した。そして、それら比較液5及び比較液6について、上記と同様にして、防腐効果の評価を行なった。その得られた結果を、下記表2に、配合割合と共に、併せて示す。 かかる表1及び表2の結果から明らかなように、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤(供試液1〜4)にあっては、α−シクロデキストリンを含まない比較液3及び比較液5や、α−シクロデキストリン及びポリエチレングリコールを含まない比較液4、比較液6と同程度の優れた防腐効果を有していることが認められた。一方、α−シクロデキストリンを含み、かかるα−シクロデキストリンに包接され得るポリエチレングリコールを含まない、従来の如きコンタクトレンズ用液剤(比較液1、比較液2)にあっては、防腐効果が充分ではないことが認められた。これは、比較液1及び比較液2のコンタクトレンズ用液剤中において、防腐・消毒作用を有する塩化ベンザルコニウムやポリヘキサメチレンビグアニドが、コンタクトレンズ用液剤中に共存するα−シクロデキストリン(化合物A)の空孔内に包接されて、その薬剤作用が充分に発揮され得なかったのに対して、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤にあっては、そのような塩化ベンザルコニウムやポリヘキサメチレンビグアニドのα−シクロデキストリン(化合物A)への包接が、コンタクトレンズ用液剤中に共存するポリエチレングリコール(化合物B)によって、効果的に制御された結果であると考えられる。−比較液7− 薬剤成分として、塩化ベンザルコニウムの0.01w/v%を用い、化合物Aとして、α−シクロデキストリンの0.1w/v%を用いると共に、緩衝剤として、リン酸水素ナトリウムの0.6w/v%及びリン酸二水素ナトリウムの0.08w/v%を用いて、比較液7を調製した。 そして、上記で調製されたコンタクトレンズ用液剤である供試液1、3及び比較液7について、それぞれ、以下のようにして、細胞毒性の評価を行ない、また、上記と同様にして、防腐効果(供試菌:Pseudomonas aeruginosa)の評価を行なった。それらの結果を、下記表3に、配合割合と共に、併せて示す。[細胞毒性] 先ず、細胞培養用マルチプレートに、新鮮培地(5vol%牛胎仔血清添加MEM液)を注入し、そこに、約50個のV79細胞(チャイニーズ・ハムスター肺由来繊維芽細胞)を播種した。次いで、かかるマルチプレートを、37℃に保持された炭酸ガス培養装置内に収容して、炭酸ガス濃度:5%で約24時間の培養を行なった。その後、ウェル内の培養液を除去し、上記で準備されたコンタクトレンズ用液剤である供試液1、3及び比較液7を5vol%牛胎仔血清添加MEM液で100倍に希釈したものをウェルに分注し、炭酸ガス培養装置内で6〜7日間保持した。かかる培養の後、各ウェルからコンタクトレンズ用液剤を除去し、エタノールを加えて約5分間置くことにより、細胞を固定し、次いで、約2vol%のギムザ溶液を加えて約30分間置くことにより、細胞を染色した。そして、その染色された細胞を実体顕微鏡で観測して、50個以上の細胞が集まっている集落を1個のコロニーとして、コロニー数を計測した。 一方、ブランクとして、細胞培養用マルチプレートに、新鮮培地(5vol%牛胎仔血清添加MEM溶液)を注入し、そこに、約50個のV79細胞(チャイニーズ・ハムスター肺由来繊維芽細胞)を播種した後、37℃に保持された炭酸ガス培養装置内で1週間の培養を行ない、かかる培養後の培地を染色することにより、コロニー数を測定した。 次いで、それら測定された、コンタクトレンズ用液剤中及びブランク(新鮮培地)中におけるコロニー形成数から、下記式1に従って、それぞれ、コロニー形成率を算出した。 コロニー形成率(%)=[(コンタクトレンズ用液剤中で形成されたコロニー数の平均個数) /(ブランクで形成されたコロニー数の平均個数)]×100(%)・・・(式1) そして、上記で得られたコロニー形成率から、以下の基準に基づいて、細胞毒性の評価を行なった。 ◎:コロニー形成率が50%以上であった。 ○:コロニー形成率が40%以上、50%未満であった。 ×:コロニー形成率が40%未満であった。 かかる表3の結果から明らかなように、本発明に従う供試液1及び供試液3にあっては、α−シクロデキストリンと共に、ポリエチレングリコールが含有せしめられているところから、その細胞毒性が低く、眼に対する安全性の高いものとなっていると共に、薬剤成分(塩化ベンザルコニウム)の薬剤作用(防腐効果)が効果的に発揮せしめられることが認められた。一方、α−シクロデキストリンの添加による防腐効果の低下を、EDTAやホウ酸で補った比較液7にあっては、防腐効果は充分に得られるものの、コロニー形成率が低く、毒性の強いものであることが認められた。−比較液8− ポリエチレングリコールを用いないこととした以外は、供試液4と同様にして、コンタクトレンズ用液剤を調製した。そして、調製されたコンタクトレンズ用液剤について、以下のような塩化ベンザルコニウム吸着試験を行なった。その結果を、下記表4に、配合割合と共に、併せて示す。[塩化ベンザルコニウム吸着試験] 先ず、ガラスバイアルに、上記で準備されたコンタクトレンズ用液剤の2mLを量り取り、そこに、1枚のソフトコンタクトレンズ(1・DAY ACUVUE、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社製)を浸漬した。次いで、かかるコンタクトレンズの浸漬せしめられたガラスバイアルを室温で約8時間振とうした後、レンズを取り出した。そして、コンタクトレンズの浸漬前後のコンタクトレンズ用液剤の263nmにおける吸光度を測定し、下記式2に従って、塩化ベンザルコニウム吸着量を算出した。 塩化ベンザルコニウム吸着量(μg)=[(コンタクトレンズ用液剤の吸光度−浸漬後のコンタクトレンズ用液剤の吸光度) /(コンタクトレンズ用液剤の吸光度)]×200(μg)・・・(式2)−比較液9− α−シクロデキストリンとポリエチレングリコールを用いないこととし、また塩化ナトリウムの配合量を0.6w/v%としたこと以外は、供試液4と同様にして、コンタクトレンズ用液剤を調製した。そして、調整されたコンタクトレンズ用液剤について、上記と同様にして、塩化ベンザルコニウム吸着試験を行ない、塩化ベンザルコニウム吸着量を算出した。その結果を、下記表4に、配合割合と共に、併せて示す。 また、上記で準備された供試液4についても、同様にして塩化ベンザルコニウム吸着試験を行ない、塩化ベンザルコニウム吸着量を算出した。その結果を、下記表4に併せて示す。 かかる表4の結果からも明らかなように、塩化ベンザルコニウムと共に、α−シクロデキストリン及びポリエチレングリコールが含有せしめられている供試液4にあっては、塩化ベンザルコニウムのコンタクトレンズへの吸着が効果的に抑制されていると共に、塩化ベンザルコニウムの防腐効果が、有利に発揮せしめられることが認められた。一方、ポリエチレングリコールを含有しない比較液8にあっては、α−シクロデキストリンによって、塩化ベンザルコニウムのコンタクトレンズへの吸着は抑制されるものの、塩化ベンザルコニウムの防腐効果が充分に得られないことが認められた。また、α−シクロデキストリン及びポリエチレングリコールを含まない比較液9にあっては、α−シクロデキストリンを含まないところから、塩化ベンザルコニウムの防腐効果は充分に発揮されるものの、塩化ベンザルコニウムがコンタクトレンズに多量に吸着し、眼に対する安全性に劣るものであることが認められた。−供試液5− さらに、薬剤成分(抗ヒスタミン剤)として、マレイン酸クロルフェニラミンを用い、また化合物Aとしては、α−シクロデキストリン(和光純薬工業株式会社製)を用い、更に化合物Bとしては、重量平均分子量6000のポリエチレングリコール(マクロゴール6000、日油株式会社製)を用いて、下記表5に示される配合割合において、コンタクトレンズ用液剤(供試液5)を調製した。なお、かかる供試液5の媒体としては、以下の抗ヒスタミン活性試験のために、精製水に代えて、HuMedia−EG2培養液(倉敷紡績株式会社製)を用いた。そして、かかる準備されたコンタクトレンズ用液剤について、以下のような抗ヒスタミン活性試験を行なった。その結果を、下記表5に、配合割合と共に、併せて示す。[抗ヒスタミン活性試験] 先ず、ヒト臍帯由来正常血管内皮細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより分譲、資源番号:IF050271、資源名:HUV−EC−C)を、組織培養用24ウェルプレート(日本ベクトンディッキンソン株式会社製)に、約3000個/cm2 で播種した。そして、HuMedia−EG2培養液を用いて、6日間の培養を行ない、培養液を除去した後、上記で準備されたコンタクトレンズ用液剤(供試液5)を加えて、1時間の培養を行ない、更に培養液を除去した後、0.00111w/v%のヒスタミンが含有せしめられたHuMedia−EG2培養液を用いて、20時間の培養を行なった。なお、培養は、温度:37℃、CO2 濃度:5%の条件にて行なった。培養終了後、培養液中のインターロイキン−8(IL−8)の濃度を、酸素結合免疫吸着法(ELISA)により測定した。−比較液10、比較液11− ポリエチレングリコールを用いないこととした以外は、供試液5と同様にして、比較液10を調製した。また、α−シクロデキストリンを用いないこととした以外は、供試液5と同様にして、比較液11を調製した。そして、それら調製された比較液10及び比較液11について、上記と同様にして、抗ヒスタミン活性試験を行なった。その結果を、下記表5に併せて示す。−比較液12、比較液13− HuMedia−EG2培養液中に、0.00039w/v%のマレイン酸クロルフェニラミンを含有せしめることにより、比較液12を調製した。また、比較液13として、HuMedia−EG2培養液を準備した。そして、それら比較液12及び比較液13について、上記と同様にして、抗ヒスタミン活性試験を行なった。その結果を、下記表5に併せて示す。−比較液14− ヒト臍帯由来正常血管内皮細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより分譲、資源番号:IF050271、資源名:HUV−EC−C)を、組織培養用24ウェルプレート(日本ベクトンディッキンソン株式会社製)に、約3000個/cm2 で播種した。そして、HuMedia−EG2培養液を用いて、6日間の培養を行ない、培養液を除去した後、比較液14として、HuMedia−EG2培養液を加えて、更に21時間の培養を行なった。なお、培養は、温度:37℃、CO2 濃度:5%の条件にて行なった。培養終了後、培養液中のインターロイキン−8(IL−8)の濃度を、酸素結合免疫吸着法(ELISA)により測定した。その結果を、下記表5に併せて示す。 かかる表5の結果からも明らかなように、比較液13にあっては、ヒスタミンの添加により、細胞のインターロイキン−8の産生が亢進し、培養液中のインターロイキン−8濃度が高くなった。また、抗ヒスタミン剤であるマレイン酸クロルフェニラミンを含有する比較液12にあっては、マレイン酸クロルフェニラミンがヒスタミンと拮抗し、インターロイキン−8の産生を抑制したため、インターロイキン−8濃度が低くなった。更に、マレイン酸クロルフェニラミンに加えて、ポリエチレングリコールを含有する比較液11にあっても、インターロイキン−8の濃度は、比較液12と同様に低くなった。そして、マレイン酸クロルフェニラミンと共に、α−シクロデキストリンを含有する従来の如きコンタクトレンズ用液剤である比較液10にあっては、α−シクロデキストリンを含有しない比較液12に比して、インターロイキン−8濃度が高くなった。これは、マレイン酸クロルフェニラミンが、α−シクロデキストリンの空孔内に包接されて、抗ヒスタミン活性が抑制されたためであると考えられる。一方、マレイン酸クロルフェニラミン、α−シクロデキストリンと共に、ポリエチレングリコールを含有する供試液5にあっては、インターロイキン−8濃度が低い値となった。これは、マレイン酸クロルフェニラミン(薬剤成分)のα−シクロデキストリン(化合物A)への包接が、ポリエチレングリコール(化合物B)によって効果的に制御され、マレイン酸クロルフェニラミンの抗ヒスタミン活性が有利に発揮せしめられた結果であると考えられる。−供試液6− 塩化ベンザルコニウムの0.01w/v%に代えて、マレイン酸クロルフェニラミンの0.03w/v%を用い、また、ポリエチレングリコールの配合割合を1.5w/v%に代えて、0.5w/v%としたこと以外は、供試液4と同様にして、コンタクトレンズ用液剤(供試液6)を調製した。そして、調製されたコンタクトレンズ用液剤について、以下のようなマレイン酸クロルフェニラミン吸着試験を行なった。その結果を、配合割合と共に、下記表6に併せて示す。[マレイン酸クロルフェニラミン吸着試験] 先ず、ガラスバイアルに、上記で準備されたコンタクトレンズ用液剤の2mLを量り取り、そこに、1枚のソフトコンタクトレンズ(1・DAY ACUVUE、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社製)を浸漬した。次いで、かかるコンタクトレンズの浸漬せしめられたガラスバイアルを室温で約8時間振とうした後、レンズを取り出した。そして、コンタクトレンズの浸漬前後のコンタクトレンズ用液剤の261nmにおける吸光度を測定し、下記式3に従って、マレイン酸クロルフェニラミン吸着量を算出した。 マレイン酸クロルフェニラミン吸着量(μg)=[(コンタクトレンズ用液剤の吸光度−浸漬後のコンタクトレンズ用液剤の吸光度) /(コンタクトレンズ用液剤の吸光度)]×600(μg)・・・(式3)−比較液15、比較液16− ポリエチレングリコールを用いないこととした以外は、供試液6と同様にして、比較液15を調製した。また、α−シクロデキストリン及びポリエチレングリコールを用いないこととした以外は、供試液6と同様にして、比較液16を調製した。そして、それら調整された比較液15及び比較液16について、上記と同様にして、マレイン酸クロルフェニラミン吸着試験を行ない、マレイン酸クロルフェニラミン吸着量を算出した。その結果を、下記表6に併せて示す。 かかる表6の結果からも明らかなように、α−シクロデキストリンを含む比較液15にあっては、マレイン酸クロルフェニラミンのコンタクトレンズへの吸着が抑制されたことが認められ、また、α−シクロデキストリンを含有しない比較液16にあっては、マレイン酸クロルフェニラミンが、大量にコンタクトレンズに吸着することが認められた。一方、α−シクロデキストリン(化合物A)と共に、ポリエチレングリコール(化合物B)を含有する供試液6にあっても、マレイン酸クロルフェニラミンのコンタクトレンズへの吸着は、α−シクロデキストリンを含有し、ポリエチレングリコールを含有しない比較液15と同程度抑制され、ポリエチレングリコールの共存下においても、α−シクロデキストリンのマレイン酸クロルフェニラミンの吸着抑制効果が充分に発揮され得ることが認められた。[ポロクサマー毒性低減試験] 下記表7に示す配合割合において、化合物Aとしてのα−、β−又はγ−CD(シクロデキストリン)と、化合物Bとしてのポロクサマー(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;Lutorol ,BASF社製)とを精製水に溶解せしめて、それぞれ、供試液7,8,9を調製した。また、比較のために、上記ポロクサマーのみを精製水に溶解して、比較液17を調製した。 そして、それら得られた供試液7〜9及び比較液17について、前記した細胞毒性試験を実施して、その結果を、コロニー形成率として、下記表7に併せて示した。 かかる表7の結果より明らかな如く、ポロクサマー単独の場合(比較液17)と比較して、シクロデキストリン(CD)をポロクサマーと共存させることで、供試液7〜9においては、コロニー形成率が高くなった。従って、ポロクサマーとシクロデキストリンが擬ロタキサン乃至擬ポリロタキサン構造を形成したことにより、ポロクサマーの細胞毒性が低下したと考えられる。なお、シクロデキストリンには、α、β、γ型があり、それぞれ環の大きさが異なる。供試液7〜9においてコロニー形成率が異なるのは、それぞれのシクロデキストリンとポロクサマーの擬ロタキサン乃至擬ポリロタキサン形成率が異なるためであると推察される。[ポリエチレングリコール毒性低減試験] 下記表8及び表9に示す配合割合において、化合物Aとしてのα−、β−又はγ−CD(シクロデキストリン)と、化合物BとしてのPEG600(重量平均分子量が600のポリエチレングリコール;マクロゴール600、日油株式会社製)又はPEG6000(重量平均分子量が6000のポリエチレングリコール;マクロゴール6000、日油株式会社製)とを5vol%牛胎仔血清添加MEM液に溶解せしめ、更に0.22μmのフィルターで濾過して滅菌し、供試液10〜12及び13〜15を調製した。また、比較のために、上記PEG600又はPEG6000のみを5vol%牛胎仔血清添加MEM液に溶解せしめ、更に0.22μmのフィルターで濾過して滅菌し、それぞれ、比較液18及び19を調製した。 そして、それら得られた供試液10〜12及び13〜15と比較液18,19とについて、前記した細胞毒性試験を実施して、その結果を、コロニー形成率として、下記表8及び表9に併せて示した。なお、細胞毒性試験は、5vol%牛胎仔血清添加MEM液で供試液10〜12,13〜15及び比較液18及び19を希釈することなく、それら供試液や比較液をそのまま用いて実施した。 かかる表8及び表9に示される如く、PEG単独の場合(比較液18,19)と比較して、シクロデキストリンをPEGと共存させることで、供試液10〜12及び13〜15においては、何れも、コロニー形成率が高くなった。従って、PEGとシクロデキストリンが擬ロタキサン乃至擬ポリロタキサン構造を形成したことにより、PEGの細胞毒性が低下したと考えられる。供試液10〜12及び13〜15においてコロニー形成率が異なるのは、ポロクサマーと同様、それぞれのシクロデキストリンの環の大きさが異なり、PEGとの擬ロタキサン乃至擬ポリロタキサン形成率が異なるためであると推察される。 また、PEG600及びPEG6000は、共に、α−シクロデキストリンと擬ロタキサン乃至擬ポリロタキサン構造を形成し易いと考えられる。 化合物Aとして、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群より選ばれた少なくとも1種を含有し、且つ化合物Bとして、重量平均分子量が2000〜40000であるポリエチレングリコールを0.005〜5.0w/w%の濃度で含有し、且つそれら化合物Aと化合物Bとが、重量比において、1:1〜1:15の割合で含有せしめられ、更に、抗アレルギー剤、消炎剤、血管収縮剤、清涼化剤、防腐剤・殺菌剤、ピント調節機能改善剤、眼圧降下剤、ビタミン類、抗菌剤(抗生物質)及び界面活性剤の中から選ばれた少なくとも1種の前記化合物Aに包接され得る薬剤成分を含有すると共に、該薬剤成分と前記化合物Aとが、モル比にて、1:3.64〜1:309の割合にて含有せしめられていることを特徴とするコンタクトレンズ用液剤。 前記薬剤成分と前記化合物Bとの重量比が、1:16.67〜1:60000であることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズ用液剤。 前記化合物Bが、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンタクトレンズ用液剤。 所定の薬剤成分と、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群より選ばれた少なくとも1種の環状乃至は筒状の分子構造を有する化合物Aとを含有すると共に、鎖状分子構造を有し且つ該化合物Aに包接され得る、重量平均分子量が2000〜40000であるポリエチレングリコールからなる化合物Bを、0.005〜5.0w/w%の濃度で含有し、且つそれら化合物Aと化合物Bとが、重量比において、1:1〜1:15の割合で含有せしめられてなる液剤製剤中において、該化合物Bを該化合物Aに包接させて、擬ロタキサン構造乃至は擬ポリロタキサン構造を形成させることによって、前記化合物Aに包接され得る前記薬剤成分の薬剤作用を制御することを特徴とする薬剤作用の制御方法。