生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_上昇したアルギナーゼ状態を含む、低下した一酸化窒素バイオアベイラビリティに関連する状態の治療
出願番号:2010271007
年次:2011
IPC分類:A61K 31/198,A61K 45/00,A61K 33/06,A61P 11/06,A61P 7/06,A61P 9/10,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

モリス クラウディア アール. JP 2011105728 公開特許公報(A) 20110602 2010271007 20101206 上昇したアルギナーゼ状態を含む、低下した一酸化窒素バイオアベイラビリティに関連する状態の治療 チルドレンズ ホスピタル アンド リサーチ センター アット オークランド 505307563 清水 初志 100102978 刑部 俊 100119507 新見 浩一 100128048 小林 智彦 100129506 川本 和弥 100121072 モリス クラウディア アール. US 60/447,373 20030214 A61K 31/198 20060101AFI20110506BHJP A61K 45/00 20060101ALI20110506BHJP A61K 33/06 20060101ALI20110506BHJP A61P 11/06 20060101ALI20110506BHJP A61P 7/06 20060101ALI20110506BHJP A61P 9/10 20060101ALI20110506BHJP A61P 43/00 20060101ALI20110506BHJP JPA61K31/198A61K45/00A61K33/06A61P11/06A61P7/06A61P9/10A61P43/00 111 1 1 2006503579 20040213 OL 33 1.テフロン 4C084 4C086 4C206 4C084AA02 4C084AA03 4C084AA19 4C084AA22 4C084MA02 4C084MA13 4C084MA17 4C084MA28 4C084MA31 4C084MA35 4C084MA37 4C084MA41 4C084MA43 4C084MA52 4C084MA55 4C084MA66 4C084NA05 4C084ZA401 4C084ZA551 4C084ZA591 4C084ZC202 4C086AA01 4C086AA02 4C086HA04 4C086MA02 4C086MA03 4C086MA04 4C086NA05 4C086ZA40 4C086ZA55 4C086ZA59 4C086ZC41 4C206AA01 4C206AA02 4C206HA31 4C206HA32 4C206MA02 4C206MA03 4C206MA04 4C206MA11 4C206MA30 4C206NA05 4C206ZA40 4C206ZA55 4C206ZA59 4C206ZC41発明の分野 本発明は、喘息、鎌状赤血球疾患、および肺高血圧症を含む、本明細書に説明された上昇したアルギナーゼに関連する状態の治療の分野に関する。関連出願の相互参照 本出願は、2003年2月14日に出願された米国特許仮出願第60/447,373号の優先権を主張するものであり、この出願はその全体が本明細書に参照として組入れられている。米国政府の権利 本発明は、米国立衛生研究所(NIH)により授与された、連邦政府助成金RR01271-19およびHL-04386-01の下で、政府の支援により行われた。米国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。発明の背景 L-アルギニン(Arg)は、食用タンパク質において天然に認められる、準必須アミノ酸である。これは、一酸化窒素シンターゼ(NOS)として公知の酵素ファミリーにより、強力な血管拡張剤(1-3)および気管支拡張剤(4,5)である一酸化窒素(NO)(1,2)に転換される。NOは、血管調節、神経伝達(2)、宿主防御、および細胞毒性(6)から、気道の生理的制御(5)までの機能の広い範囲で役割を果たす必須の分子である。低いL-アルギニン濃度条件下では、一酸化窒素シンターゼは結合せず、一酸化窒素を生成する代わりに、酸素(O2)をスーパーオキシド(O2-)に還元する(7,8)。一酸化窒素は、スーパーオキシドと迅速に反応し、反応性一酸化窒素種(RNOS)を生成し、これは炎症、酸化的ストレスおよび細胞損傷の増悪につながる(9)。 免疫系の細胞成分、内分泌因子、増殖因子およびサイトカインの間の複雑な相互作用は、喘息の病態生理に寄与する。喘息における一部のサイトカイン(IL-1α、IL-1β、IL-3、IL-4、IL-6、IL-11、TNF-α、γγ-インターフェロン、IL-6、M-CSF)の寄与は、よく研究されている。分泌型ホスホリパーゼA2(sPLA2)は、ロイコトリエン合成経路に関連しており、これは抗原チャレンジした喘息の気管支肺胞洗浄液中において上昇する(10)。喘息の遺伝的素因は、現在よく知られている(11)。 最近、L-ArgからのNO生成を触媒する酵素である、誘導性NOシンターゼの発現が、喘息患者の上皮においては認められたが、健常な非喘息患者においては認められなかった(12,13)。喘息は、非喘息と比べて3.5倍より高い呼気NOレベルを有し、これはFEV1の減少と相関し、かつ治療により影響を受ける(14)。L-ArgアナログによるNO生成の遮断は、アレルゲン誘導した気管支収縮の増加を生じる(15)。NO欠乏は、気道過敏性に関連している(16)。喘息は明らかに多因子疾患であるが、NOが、疾患の病因において重要な役割を果たし得ることの証拠がいくつかある(17)。総説については、例えばDweik Cleve Clin J Med. 2001 Jun;68(6):486, 488, 490, 493;Gianetti et al., Eur J Clin Invest., 2002 Aug;32(8):628-35を参照のこと。 アルギナーゼは、Argを加水分解しオルニチンおよび尿素を生成する酵素である(35)が、一酸化窒素シンターゼ(NOS)の存在下では、アルギニンは、一酸化窒素(NO)およびシトルリンに転換される(2)。アルギナーゼの発現は、炎症プロセスに関与した様々なサイトカイン(26)、特にTh2サイトカイン(37)により誘導され得る。増大した血清アルギナーゼ活性が、定常状態のSCD患者(38)に加え、喘息動物モデル(39)において報告されている。アルギナーゼ活性は、肺疾患を伴うSCD患者において上昇する(34,40)。血漿アルギナーゼ活性は溶血と関係し、LDH(r=0.44, p<0.001)、AST(r=0.39, p<0.002)、網状赤血球カウント(r=0.25, p<0.001)、およびHct(r=-0.25, p<0.001)含む、溶血重症度のいくつかのマーカーが関連しているように見える(Morris et al, Erythrocyte arginase release during hemolysis contributes to endothelial dysfunctional and pulmonary hypertension, 27th Annual Meeting of the National Sickele Cell Disease Program, Los Angeles, CA;April 2004)。 アルギナーゼは、アルギニンのオルニチンへの代謝を制御し、これは次にプロリンおよびポリアミンを生じる(37,41-43)。プロリンはコラーゲン形成(44,45)および肺線維症(46)、気道壁の肥厚および気道リモデリングで生じるプロセス(47-50)に関連するので、これらのアルギナーゼ活性の下流生成物は、喘息、肺高血圧症および他の炎症状態の病因において重要な役割を果たし得る。 上昇したレベルのポリアミンが、喘息患者の血清中において報告されている(51)。ポリアミンは、平滑筋収縮活性を有し(52,53)、気道上皮、平滑筋細胞およびマクロファージを含む、肺の複数の細胞型に存在する(54)。プロリンおよびヒドロキシプロリン(47)は、コラーゲン沈着に関連するアミノ酸であり、ポリアミンは細胞生存、細胞増殖および粘膜生成を含む複数のプロセスに影響を及ぼすので(52,53)、これらは肺の病理において役割を果たし得る。 アルギニンは安全な栄養補助食品であるが、これは既にいくつかの疾患過程において治療的用途の可能性があることが明らかにされている(18-23)。動物実験において、低用量のL-Argの吸入は、反応性気道の過反応を完全にブロックし(13,24)、かつ吸入されたL-Argは、嚢胞性線維症患者(CF)の肺機能も改善する(25,26)。アレルギー喘息のマウスモデルにおいて試験した場合、L-Argの経口投与は、アレルゲンが誘導した好酸球性気道炎症を増悪することが報告された(Takano et al. J Pharmacol Exp Ther, 1998 Aug;286(2):767-71)。 L-Argの使用は、嚢胞性線維症の治療(Busch-Petersen et al., Z Erkr Atmungsorgane, 143:140-7(1975));ウマの運動が誘発した肺出血の治療(U.S. Pat. No. 6,027,713);および肺高血圧症の治療(U.S. Pat. No. 5,217,997;6,127,421;Nagaya et al., Am J Respir Crit Care Med, 163:887-81(2001);Cheng et al., Hua Xi Yi Ke Da Xue Xue Bao, 27:68-70(1996))について示唆されている。. 喘息を治療するためのNOの使用は、Nakagawa et al., J Pediatr., 2000 Jul;137(1):119-22;およびRossaint et al., Eur Heart J, 1993 Nov;14(Suppl 1):133-40において考察されている。アルギナーゼインヒビターN-ヒドロキシ-L-アルギニン(NOHA)は、喘息モデルにおいて試験されている(例えば、Meurs et al., Br J Pharmacol, Jun 2002,136(3):391-8、これはアレルギー性喘息モルモットモデルにおけるアルギナーゼインヒビターの投与について説明している;およびMeurs et al., Br J Pharmacol, 130:1793-8(2000)、これは灌流したモルモット気管支モデルにおけるアルギナーゼインヒビターについて説明している)参照)。肺炎を治療するためのNOの使用が考察されている(例えば、参照)。 初期の研究者達は、鎌状赤血球疾患(SCD)における一酸化窒素の有害な影響を警告したが(27)、最近の研究は、一酸化窒素の保護的機能を裏付けている(28)。喘息患者(29)と同様に、SCD患者も、基準時に上昇したNOxレベルを有する(30)。しかしSCDの血流閉塞性合併症時に血清L-ArgおよびNOxレベルは下落し(31)、急性の胸部症候群(肺炎)時に最低レベルが認められた。肺疾患を伴うほとんどのSCD患者は、例え彼らが通常喘息に関連している生理的試験での古典的喘鳴を示すことは稀であっても、気管支拡張剤に反応する反応性気道の要素(component)を有する。SCDにおいて喘息は認められず、治療されない事が多いが、患者の30%〜60%において発生する(32)。アルギニン療法の臨床試験が、SCDについて現在進行中である(33,34)。 栄養補助食品であるマグネシウムは、サルブマトール(salbumatol)を使う喘息の併用療法におけるアジュバントとして(Hughes et al, Lancet, 2003;361:2114-7)または喘息の静脈内単剤療法として(Gurkan et al, Eur J Emerg Med, 1999;6:201-5)説明されている。同じくマグネシウムは、新生児肺高血圧症の輸液療法においても示されている(Patole S & Finer N, Magnes Res, 1995;8:373-88)。子癇前症動物モデル(Pandhi et al, Indian J Exp Biol, 2002;40:349-51)および内皮細胞機能障害に関連する他の疾患過程(Volpe et al, Scand Cardiovasc J, 2003;37:288-96)における経口マグネシウムの作用が報告されている。マグネシウムが誘導した血管拡張が、内皮細胞由来の一酸化窒素に関連する他の状態の動物モデルにおいて報告されている(Teragawa et al, Magnes Res, 2002;15:241-6、これはin vitroにおける内皮細胞機能障害のイヌ冠動脈モデルにおけるマグネシウムの作用について説明している。)。マグネシウムと一酸化窒素吸入の併用療法は、肺高血圧症動物モデルにおいてかなり有望であることが示されている(Haas et al, Pediatr Int, 2002;44:670-4)。 喘息および鎌状赤血球疾患のような状態の療法に関する分野が進歩しているにもかかわらず、新規療法はかなり興味深く重要である。更にこれらの疾患の基礎となる機構に関するより洞察に満ちた理解を基にした療法が、療法のより理論的アプローチを提供するために必要である。 喘息のような状態の治療に関する改善された療法または代替療法の分野における必要性が存在する。本発明はこれらの必要性に対処するものである。文献 U.S. Pat. No. 5,217,997;6,387,890;4,507,314;6,359,007;6,646,006;6,165,975。 American Society of Hematology Meeting, San Diego Dec 2003;Morris et al, Blood, 2003;102:763a(abstr2818);Inselman et al.,「Alterations in Plasma amino acid levels in children with asthma: a preliminary investigation.」Pediatr Pulmonol., 1986, May-Jun;2(3):163-9;Jorens et al.,「L-arginine-dependent nitric oxide synthase: a new metabolic pathway in the lung and airways.」Eur Respir J., 1993, Feb;6(2):258-66;Vercelli,「Arginase : marker, effector, or candidate gene for asthma」J Clin Invest., 2003,Jun;111(12):1815-7、およびZimmermann et al.,「Dissection of experimental asthma with DNA microarray analysis identifies arginase in asthma pathogenesis」J Clin Invest., 2003,Jun;111(12):1863-74は、IL-4およびIL-13過剰発現に関連する、アルギナーゼIおよびアルギナーゼII活性の高いレベルを明らかにした、2匹の喘息マウスモデルにおける肺組織の発現プロファイルのマイクロアレイ分析に関連している。Haas et al,「Nitric oxide further attenuates pulmonary hypertension in magnesium-treated piglets」Pediatr Int, 2002;44:670-4。 Meurs et al.,「Arginase and asthma: novel insights into nitric oxide homeostasis and airway hyperresponsiveness.」Trends Pharmacol Sci., 2003,Sep;24(9):450-5は総説を提供し、その中で筆者らは、アルギナーゼ活性の増加およびL-アルギニンホメオスタシスの変化により引き起こされたNOの相対的欠乏が、喘息病理の主因であることを提唱している。 Sapienza et al.,「Effect of inhaled L-arginine on exhaled nitric oxide in normal and asthmatic subjects.」Thorax., 1998,Mar;53(3):172-5は、L-Argの吸入により、用量依存的な様式で呼出されるNOが増加し、喘息対象におけるL-アルギニンのNOに対する累積作用は、非喘息対象よりも有意に高いことを報告している。この報告は、L-Argは、NO生成が欠損している疾患の治療的可能性を有するが、喘息においては気道の炎症反応を増幅し得ると結論している。 De Gouw et al.,「Effect of oral L-arginine on airway hyperresponsiveness to histamine in asthma.」Thorax., 1999,Nov;54(11):1033-5は、経口L-アルギニンは、PCにより反映されるような、ヒスタミンに対する気道の過敏性に影響を及ぼさない(20)が、用量-反応曲線は、喘息患者においてわずかに低下し、従って喘息におけるNOシンターゼ基質のわずかな臨床上重要でない制限のみを示すと結論している。 Chambers et al.,「Effect of nebulised L-and D-arginine on exhaled nitric oxide in steroid naive asthma」Thorax., 2001,Aug;56(8):602-6は、喘息患者への吸入L-Argの投与は、気管支収縮を誘導し、呼出されるNOは、急性の気管支収縮と共に減少し、気管支収縮の消散と共にベースラインに戻ることを報告している。L-アルギニンおよびD-アルギニンの両方の投与後に、呼出されるNOは増加した。 本発明は、アルギナーゼインヒビターおよび/またはマグネシウムとの併用療法を含む、アルギニンに基づく療法を使用して、上昇したアルギナーゼ活性に関連する状態などの、低下した一酸化窒素バイオアベイラビリティに関連する状態を治療するための方法および組成物を特徴とする。 アルギナーゼインヒビターと組合せたアルギニンの投与を企図する本発明は、そうでなければ上昇したアルギナーゼ活性に関連する状態を治療するために必要である高用量のアルギニン投与の必要性を避けることができる点で有利である。簡単に述べると、上昇したアルギナーゼがアルギニンの利用を高める場合、比較的高用量のアルギニンが、アルギニン単剤療法においてこの現象を克服するために必要である。アルギニンと組合わせたアルギナーゼインヒビターの投与は、アルギニンの治療的必要量を低下することができる。アルギナーゼインヒビターとの併用療法を伴わない場合に必要である、例えば1日3回最大10錠のような、高用量のアルギニンは、主として患者の服薬非遵守のために、治療目的を達成する際に非常に大きい障害となる。 上昇したアルギナーゼレベルを有する患者へのアルギニン投与は、オルニチン生成の増加につながる。喘息患者において、血漿オルニチンレベルは、プロリンレベルと強力に相関している(r=0.75, p<0.0001, n=26)。アルギナーゼインヒビターのアルギニンと一緒の投与は、例えば両方とも気道リモデリング、肺線維症および血管平滑筋増殖を介した肺および心臓血管系の病理に関連するオルニチン代謝産物であるプロリンおよびポリアミンの下流副産物の減少というさらなる利点を有する。本発明は、一酸化窒素生成の基質を提供する一方で、おそらくそうでなければ疾患病理に寄与するであろうアルギナーゼ活性の代謝産物の生成を制限する。 更にアルギニンとオルニチンは同じ輸送分子を使用するので、オルニチンは、競合的阻害によりアルギニンのバイオアベイラビリティも低下させる。簡単に述べると、上昇したアルギナーゼ活性は、アルギニンのバイオアベイラビリティを低下させる。上昇したアルギナーゼレベルの状況であっても、アルギナーゼインヒビターと共に投与されたアルギニンは、アルギニンバイオアベイラビリティを最大化する。 アルギナーゼインヒビター単独の投与と比べて、更に別の本発明の利点は、アルギナーゼインヒビターは非常に高価である点である。アルギナーゼインヒビターと一緒に、比較的安価なアルギニンを投与することにより、高価なアルギナーゼインヒビターの投与量をかなり減少させることができる。簡単に述べると、アルギニンおよびアルギナーゼインヒビターの投与は、より効果的であり、より安価な療法である。 別の利点は、本発明は、たとえアルギナーゼインヒビターが存在した場合であっても、アルギニンのバイオアベイラビリティは、その低い濃度により制限され続けるという問題を避ける点である。低いアルギニン濃度は、一酸化窒素シンターゼ(NOS)の非結合および一酸化窒素の代わりのスーパーオキシド生成につながる。陽イオン性アミノ酸分子上のアルギニン輸送のKmは約100μMであり;従ってアルギニン欠乏を逆転する一方で、アルギニンのバイオアベイラビリティを最大化し、かつ本発明のような別の代謝経路の制限は、治療目的を実現するための改善された手段を提供する。 これらのおよび他の利点は、本明細書を検証することにより、当業者には明らかである。正常な非喘息対照(正常、n=10)対PHTを伴うSCD患者(SCD、n=17)対喘息患者(喘息、n=20)における血漿アルギニン濃度(パネルA)およびアルギナーゼ活性(パネルB)を示すグラフである。喘息患者および肺高血圧症を伴うSCD患者においては、正常対照と比較し、アルギニンレベルは低く、およびアルギナーゼ活性は上昇している(p<0.0001)。入院を必要とする小児喘息(患者4名)の救急診療部(入院)対退院日(退院)における、最初の提示からの血漿アルギニンレベルの変化を示すグラフである。低アルギニンレベルは、臨床状態が改善するにつれて、有意に上昇した(p<0.05)。喘息重積状態の4歳男児の例における入院時の、血漿アルギニンおよびオルニチン濃度(パネルA;黒丸、アルギニンレベル;白丸、オルニチンレベル)、アルギナーゼ活性および一酸化窒素代謝産物(パネルB;黒丸、アルギナーゼ活性;白丸、血清一酸化窒素代謝産物(NOx))における変化を表すグラフである。利用可能なL-アルギニン基質についてのアルギナーゼの一酸化窒素シンターゼとの競合を例示する図である。アルギナーゼ活性の下流副産物は、疾患病理に寄与する化合物である可能性が高い。定義 本明細書において使用される「アルギニン」または「Arg」または「L-Arg」は、天然に存在するまたは合成的に生成されたL-アルギニンを意味する。 本明細書において使用される「アルギナーゼ」は、L-Argのオルニチンおよび尿素への転換を媒介する酵素を意味し、例えば、アルギナーゼI型、アルギナーゼII型などを含む関連するアルギナーゼ型のいずれかまたは全てを包含することを意味する。 「アルギナーゼインヒビター」は、天然のまたは合成のいずれかであることができ、L-Argのオルニチンおよび尿素への触媒作用におけるアルギナーゼ(例えば、アルギナーゼI型、アルギナーゼII型、または両方)の活性に影響するような、有機化合物または抗アルギナーゼ抗体のような物質を意味する。例えばアルギナーゼに結合する抗体は、アルギナーゼの基質への結合を干渉すること、または対象の循環からのアルギナーゼのクリアランスを促進することにより、アルギナーゼ活性へ影響を及ぼすことができる。アルギナーゼ抗体の作製は、十分当業者の技術内であり、このような抗体の作製のための適当なアルギナーゼタンパク質は入手可能である。 本明細書に使用されるように、用語「治療」、「治療する」などは、望ましい薬学的および/または生理学的作用を得ることを意味する。この作用は、疾患もしくはそれらの症状の完全なもしくは部分的な防止の点で、予防的であってよく、ならびに/または疾患および/もしくは疾患に起因しうる有害作用の部分的もしくは完全な治癒の点で、治療的であってよい。本明細書において使用される「治療」は、哺乳類、特にヒトにおける疾患の治療に及び、かつ以下を含むことができる:(a)疾患の素因を有するがまだ疾患を有するとは診断されていない対象における、疾患または疾患症状(例えば、原発性疾患に関連するまたはそれによって引き起こされるような疾患を含む)の発生を予防する段階;(b)疾患または状態を阻害する段階、すなわちその発症を停止する段階;ならびに(c)疾患を緩和する段階、すなわち、疾患の退行を引き起こす段階。 本明細書において用語「個体」、「宿主」、「対象」および「患者」は、互換的に使用され、一般にはサルおよびヒトを含む霊長類、ウマ科(例えば、ウマ)、イヌ科(例えば、イヌ)、ネコ科、様々な家畜(例えば、イノシシ、ブタ、ヤギ、ヒツジなどの有蹄動物)を含むが、これらに限定されない哺乳類に加え、家庭用ペットおよび動物園で飼育される動物を意味する。特に興味深いのは、ヒトの治療である。 本発明を更に説明する前に、本発明は記載された特定の態様に限定されず、当然変動しうることは理解されるべきである。本発明は添付された「特許請求の範囲」によってのみ制限されるため、本明細書において使用された専門用語は単に特定の態様を説明するためのものであり、限定を意図しないことも理解されるべきである。 範囲を伴う値が提供された場合、その範囲の上限と下限の間の、特に明確に指摘しない限りは下限の1/10の単位までの各介在値、および言及された範囲内の他の任意の値または介在値が、本発明の中に包含されることが理解される。これらの比較的狭い範囲の上限および下限は、より小さい範囲内に独立して含まれても良く、言及された範囲内の特定の排除限界に従い、同じく本発明内に包含される。言及された範囲が一方または両方の限界を含む場合は、これらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除く範囲が本発明に含まれる。 特に記さない限りは、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に説明されたものに類似したまたはそれと同等のいずれかの方法および材料を本発明の実施または試験においても使用することができるが、好ましい方法および材料がここでは説明される。本明細書において言及された全ての刊行物は、引用された刊行物に関連して方法および/または材料を明らかにして説明するために、参照として本明細書に組み入れられている。 本明細書および添付された「特許請求の範囲」において使用されるように、単数形(「a」、「an」および「the」)は、他所において特に文脈において明確に指示しない限りは、複数の意味も有することに注意しなければならない。従って例えば、「ある(an)アルギニンインヒビター」という言及は、複数のこのようなインヒビター化合物を意味し、「この(the)アルギナーゼ」という言及は、当業者に公知の1個または複数のアルギナーゼポリペプチドおよびそれらの同等物などの言及を含む。 本明細書において考察した刊行物は、本出願の出願日以前に明らかにされたものについてのみ提供される。いずれも、本発明が、先行する発明に基づき、そのような刊行物に先行する権利を与えられないことを承認するようには解釈されない。更に示された刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なることがあり、個別に確認することが必要である。発明の詳細な説明 本発明は、アルギナーゼは、SCD、喘息、肺高血圧症および上方制御されたアルギナーゼ活性の他の病態における、L-Argバイオアベイラビリティの変更において役割を果たすという発見を基にしている。増加したアルギナーゼ活性は、L-Argのオルニチンおよび尿素へのその転換を介して、アルギニンバイオアベイラビリティを制限し、それにより利用可能なL-Arg基質に関してNOSと競合し、一酸化窒素(NO)生成を調節する。オルニチンそれ自身も、L-Argバイオアベイラビリティを減少し、これはL-Argおよびオルニチンの両方が、同じ細胞取込みのための輸送システムについて競合するためである。アルギナーゼ活性の下流副産物、例えばプロリンおよびポリアミンは、気道リモデリング、線維症および血管平滑筋増殖により、肺および心臓血管系の病理に関与する。NOバイオアベイラビリティの低下に加え、上昇したアルギナーゼ活性も、喘息、肺高血圧症および他の炎症状態の病理進行において役割を果たす可能性が高い代謝産物を生成する経路の基質を提供する。 鎌状赤血球疾患における増加したアルギナーゼ活性につながり得る、可能性のあるいくつかの機構が存在する。慢性および急性溶血は、赤血球アルギナーゼの循環へのダンピング(dumping)の増加につながりうる。特に高アルギナーゼ濃度を含む肝臓および腎臓に関連する、慢性の終末器官損傷の長期作用も同じく、細胞内アルギナーゼの循環への漏出につながることがある。アルギナーゼ遺伝子発現は炎症プロセスに関連する多くのサイトカインにより上方制御されるので、鎌状赤血球疾患および喘息の炎症状態は役割を果たす。 理論に拘束されないが、本発明は、アルギナーゼは、SCD、喘息、肺高血圧症およびアルギナーゼレベル/活性を上方制御する他の病的炎症状態において、L-Argバイオアベイラビリティの改変において役割を果たすという仮説を基にしている。増加したアルギナーゼ活性は、L-Argのオルニチンおよび尿素へのその転換、これによる利用可能なL-Arg基質に関する一酸化窒素シンターゼ(NOS)との競合およびNO生成の妨害を介して、アルギニンのバイオアベイラビリティを制限する(図4)。L-Argは、一酸化窒素シンターゼ酵素(NOS)の存在下で、一酸化窒素(NO)およびシトルリン(cit)を生成する。一酸化窒素の放出は、可溶性グアニル酸シクラーゼ(GTP)の細胞内メッセンジャーサイクリックGMP(cGMP)への活性化を介し、血管拡張を引き起こす。アルギナーゼは、L-アルギニンをオルニチンおよび尿素に転換する。L-アルギニンおよびオルニチンは両方とも、細胞取込みのために同じ陽イオンアミノ酸輸送分子(CAT)を使用する。オルニチンは、内皮細胞へのL-アルギニン輸送を競合的に阻害し、これにより一酸化窒素シンターゼの基質利用可能性を制限し、かつ一酸化窒素生成を調節することができる。NG-ヒドロキシル-L-アルギニンは、L-アルギニン-一酸化窒素経路の中間生成物であり(33, 55)、アルギナーゼ活性の強力なインヒビターである。 細胞内および細胞外の両方のNG-ヒドロキシル-L-アルギニンの蓄積は、適当なアルギニン利用可能性の維持による、L-アルギニンの一酸化窒素への継続した転換を有利にする。アルギナーゼ活性の下流副産物、すなわちプロリンおよびポリアミンは、血管平滑筋増殖に加え気道リモデリングに関連するので、それらは疾患の病理進行においておそらく役割を果たすであろう(図4)。これらの代謝産物は、肺高血圧症を伴う鎌状赤血球疾患患者において認められるように、血清または血漿において蓄積することがある。これは、肺高血圧症の病理進行の新規モデルである。 プロリンは、コラーゲン形成(44, 45)および肺線維症(46)、気道壁の肥厚および気道リモデリングにおいて生じるプロセス(47-50)に関連している。プロリンは、組織リモデリングおよび通常の創傷治癒において重要な機能を果たすが(45)、過剰生成は、病的状態につながり得る。上昇したアルギナーゼ活性は、そのような状態につながり得る。 低いL-アルギニン濃度の環境下では、一酸化窒素シンターゼは結合せず、一酸化窒素を生成する代わりに、酸素(O2)をスーパーオキシド(O2-)へ還元する。一酸化窒素は、スーパーオキシドと迅速に反応し、酸化的ストレスおよび細胞損傷につながり得る反応性一酸化窒素種(RNOS)を生成する。従って増加したアルギナーゼ活性の病的状態は、一酸化窒素のバイオアベイラビリティに対し負の影響を有する。簡単に述べると、アルギナーゼおよびNOSは両方とも共通の基質としてArgを使用するので、アルギナーゼは、L-Argの利用可能性を改変することにより、一酸化窒素(NO)合成の調節において役割を果たす。低下したアルギニンバイオアベイラビリティは、気管支拡張において役割を果たすので、これはSCDおよび喘息の両方における過敏性気道をもたらす。従って低下したアルギニンバイオアベイラビリティおよび上昇したアルギナーゼ活性は、この疾患過程に貢献する。更に低下したアルギニンバイオアベイラビリティは、感受性患者における肺高血圧症につながる。 本明細書に示されたデータにより、喘息患者は、SCD患者において認められるものよりもさらに大きい、急性増悪期に有意なアルギニン欠乏を示すことが示された(健常対照対肺高血圧症を伴うSCD患者対喘息の血漿において、各々、109.0±33.1対55.4±16.0対38.9±20μM、p<0.0001、図1、パネルA)。アルギニンレベルは、入院した喘息患者において退院までに、有意に上昇する(図2)。SCDにおいて、このアルギニン欠乏は、一酸化窒素バイオアベイラビリティの低下を引き起こす。アルギナーゼ活性は、喘息患者において上昇する(喘息対SCD対健常対照において、各々、1.6±0.9対0.95±0.7対0.427±0.2μmol/ml/hr、p=0.001、図1、パネルB)。 加えて、アルギナーゼ遺伝子発現は、炎症プロセスに関与した多くのサイトカイン、特にTh2サイトカインにより上方制御されるので、患者の状態の炎症状態も役割を果たすことができる。本明細書に示されたデータは、喘息患者対健常対照の血清における上昇したsPLA2レベルを示している(正常対照対喘息、4.2±2対25.9±30、p<0.05)。サイトカインの基礎生成に加え、血清および局所的サイトカインレベルの追加の増加が、活性化された白血球、単球および他の炎症細胞により誘導されることがある。 本発明を以下でより詳細に説明する。アルギニンおよびアルギナーゼインヒビターアルギニン 本明細書において使用されるアルギニンは、一般にL-アルギニンまたは「L-Arg」と称される。本発明において有用なアルギニンは、濃厚な供給源中(例えば、質量パーセントで比較的高レベルで天然に認められる食品、またはそのような高いレベルで含むように改変された食品中)に提供される場合は、天然の供給源から単離することができるか、または合成法により生成される。 L-Argは、塩酸塩、グルタミン酸塩、硝酸塩、アスコルビン酸塩などの、任意の生理的に許容できる塩として投与することができる。L-Argは、ペプチド(例えば、ポリ-L-アルギニン、またはL-Argとポリ-L-アルギニンの組合せ)として投与することもできる。特に関心のあるオリゴペプチドは、アミノ酸が2〜30個、通常2〜20個、好ましくは2〜10個のオリゴペプチドを含み、L-アルギニンを少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも約75モル%、より好ましくは少なくとも約75モル%を有する。オリゴペプチドは、例えば還元剤および抗酸化剤などのような、腸管からの吸収を増強し、NO合成または安定性の増大を提供することができるような他の化合物に連結することにより修飾することができる。アルギナーゼインヒビター 様々なアルギナーゼインヒビターを、本発明における使用に適合することができる。アルギナーゼインヒビターは、可逆的または不可逆的アルギナーゼインヒビター、またはアルギナーゼ抗体であることができる。好ましくはアルギナーゼインヒビターは、薬学的に許容できる製剤または機能性食品における使用に適合可能であるか、または使用に適合可能であるように適合することができる。アルギナーゼインヒビターの例は、N(ω)-ヒドロキシ-ノル-L-アルギニン(NOHA)、Nω-ヒドロキシ-ノル-L-アルギニン(nor-NOHA)、2(S)-アミノ-6-ボロノヘキサン酸(ABH)(例えば、U.S. Pat. No. 6,387,890参照)、S-(+)-アミノ-6-ヨードアセトアミドヘキサン酸(不可逆的);S-(+)-アミノ-5-ヨードアセトアミドペンタン酸(不可逆的);L-ノルバリン、L-HOArgなどを含むが、必ずしもこれらに限定されない。NOHAは、本発明において特に興味深い。マグネシウム 理論に拘束されないが、マグネシウムは、L-アルギニン-一酸化窒素経路において役割を有し、内皮細胞機能障害を減弱するので、アルギニンとの(アルギナーゼインヒビターを伴うまたは伴わない)併用療法は、この経路を介したマグネシウムの気管支拡張および血管拡張の特性を増大する。低下した一酸化窒素バイオアベイラビリティに関連する状態(例えば、内皮細胞機能障害)は、アルギニンおよびマグネシウム(単独またはアルギナーゼインヒビターと共に)による治療に反応しやすい。このような併用療法は、低下した一酸化窒素バイオアベイラビリティおよび/または低下したアルギニンバイオアベイラビリティの状態の治療において相乗的恩恵を有し得る。NO NOは、吸入、または一酸化窒素(NO)ドナーとしてなどを含むが、これらに限定されない様々な形で投与することができる。NOガスは、吸入することができるが、他方NOドナーは、それが製剤化される様式など、その化合物の性質に応じた様々な方法で投与することができる。NOドナーの例は、ヒドロキシ尿素、NOドナー、シルデナフィル(sildenafil)、亜硝酸塩を含み、必ずしもこれらに限定されないが、NOドナーである多くの物質が存在し得る。製剤 本発明の投与のためのL-Arg、アルギナーゼインヒビター、マグネシウム、または他の物質(本明細書において便宜上「物質」と称す)は、本発明の方法に従い投与に適した様々な方法で製剤化することができる。一般に、これらの化合物は、薬学的に許容できる賦形剤と組合せて、同一または個別の製剤において提供される。多種多様な薬学的に許容できる賦形剤は、当該技術分野において公知であり、本明細書において詳細に考察する必要はない。薬学的に許容できる賦形剤は、例えば、A. Gennaro (2000)「Remington : The Science and Practice of Pharmacy」20th edition, Lippincott, Williams, & Wilkins;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (1999) H. C. Ansel et al., eds., 7th ed., Lippincott, Williams, & Wilkins;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients (2000) A. H. Kibbe et al., eds., 3rd ed. Amer. Pharmaceutical Assocを含む、様々な刊行物において説明されている。 溶剤、アジュバント、担体または希釈剤などの、薬学的に許容できる賦形剤は、容易に一般に入手される。更にpH調節剤および緩衝剤、浸透圧調節剤、安定化剤、湿潤剤などのような、薬学的に許容できる助剤物質は、容易に一般に入手される。 一部の態様において、これらの物質は、例えば、水性または非水性の製剤中に、個別にまたは組合わせて製剤化することができ、この製剤は更に、緩衝液を含んでよい(例えば、L-Argとアルギナーゼインヒビターおよび/またはマグネシウム、例えばL-Argとアルギナーゼインヒビター、L-Argとマグネシウム、L-Argとアルギナーゼインヒビターおよびマグネシウムの両方など)。適当な水性緩衝液は、強度が5mM〜100mMを変動する酢酸、コハク酸、クエン酸、およびリン酸緩衝液を含むが、これらに限定されない。一部の態様において、水性緩衝液は、等張液を提供するための試薬を含む。このような試薬は、塩化ナトリウム、および糖類、例えばマンニトール、デキストロース、スクロースなどを含むが、これらに限定されない。一部の態様において、水性緩衝液は更に、ポリソルベート20または80のような、非イオン性界面活性剤を含む。 任意に、これらの製剤は更に、保存剤を含んでも良い。適当な保存剤は、ベンジルアルコール、フェノール、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウムなどを含むが、これらに限定されない。多くの場合、この製剤は、約4℃で貯蔵される。製剤は、凍結乾燥することもでき、この場合これらは一般に、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、マンニトールなどのような、抗凍結剤を含む。凍結乾燥された製剤は、例え周囲温度であっても、長期間貯蔵することができる。 本方法において、これらの物質は、望ましい治療作用を生じることが可能である都合の良い手段を用いて、宿主へ投与することができる。一般に、投与は、適当な非経口(例えば、静脈内、筋肉内、皮下など)または経腸(例えば、経口)経路によることができる。従ってこれらの物質は、治療用投与のための様々な製剤に混入することができる。より詳細に述べると、本発明の物質は、適宜薬学的に許容できる担体または希釈剤と組合わせることにより薬学的組成物へ製剤化することができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤およびエアゾールなどの固形、半-固形、液体または気体の形の調製物へ製剤化することができる。 薬学的剤形において、これらの物質は、それらの薬学的に許容できる塩の形で投与されてもよく、または単独でもしくは他の薬学的活性化合物と、適当な会合で、更には組合せて使用されてもよい。下記の方法および賦形剤は単なる例であり、限定するものではない。 これらの物質は、植物油または他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高次の脂肪酸エステルまたはプロピレングリコールなどの、水性または非水性溶媒に、それらを溶解、懸濁、または乳化することにより、注射用調製物へ製剤化することができ;ならびに望ましいならば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤および保存剤などの通常の添加剤を伴う。 経口調製物について、これらの物質は、単独で、または適当な添加剤と組合わせ、例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチまたはジャガイモデンプンなどの都合の良い添加剤と共に;結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシアゴム,コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤と共に;コーンスターチ、ジャガイモデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤と共に;タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と共に;ならびに望ましいならば、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤および香味剤と共に、錠剤、散剤、顆粒剤またはカプセル剤を製造することができる。一部の態様において、特にL-Argの場合、これらの物質は、機能性食品の形、例えば食材と混合された食品のような形で製剤化され得る。 更に、これらの物質は、乳化基剤または水溶性基剤のような様々な基剤を混合することにより、坐剤にすることができる。本発明の化合物は、坐剤により直腸へ投与することができる。坐剤は、体温で溶融するが室温では固化しているココアバター、カルボワックス、およびポリエチレングリコールのような、溶剤を含むことができる。物質は、例えば、経時的かつ望ましい量(例えば、望ましい治療作用、さもなければ有益な作用を提供するのに有効な量)で放出されるために、持続放出型または制御された放出型の製剤で提供され得る。 シロップ剤、エリキシル剤および坐剤などの経口または経直腸投与のための単位剤形は、例えば小さじ一杯、大さじ一杯、錠剤または坐剤のような各単位剤形が、1つまたは複数のインヒビターを含む組成物の予め定められた量を含むように提供することができる。同様に注射または輸液投与のための単位剤形は、滅菌水、通常の生理食塩水または他の薬学的に許容できる担体中の溶液として、組成物中にインヒビターを含むことができる。 本明細書において使用される用語「単位剤形」は、ヒトおよび動物対象のための単位剤形として適している物理的に個別の単位を意味し、各単位は、薬学的に許容できる希釈剤、担体または溶剤と会合して望ましい作用をもたらすのに十分な量として計算された予め定められた量の物質を含む。本発明において使用するための単位剤形のための仕様は、使用される具体的化合物および実現されるべき作用、宿主における各化合物に関連する薬物動態などによって決まる。 特に関心のある剤形は、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、皮下など)または経口投与を実現するのに適したものに加え、測定量の吸入器などの使用による鼻腔内または肺内の経路(例えば吸入)による送達を提供する剤形を含む。 一般に、本発明において使用するためのアルギニンは、非経口または経腸の形で製剤化され、通常は経腸製剤、より詳細には経口製剤である。特に関心のあるひとつの態様において、L-Argは、栄養補助食品の形で投与され、これは例えば、飲料、粉末化した飲料または食品バー(foodbar)である。対象が喘息である場合、刺激剤を含まない吸入製剤中のこの物質(例えばアルギニン)の投与、または吸入以外の経路(例えば、経口または注射による)による投与が好ましいことがある。 本発明において使用するためのアルギナーゼインヒビターは、例えば、皮下、皮内、腹腔内、静脈内、または筋肉内注射による非経口投与のために製剤化される。投与は、例えば、経腸、経口、口腔内、直腸内、経皮、気管支内、吸入などにより実現することもできる(例えばU.S. Pat. No. 5,354,934参照)。 アルギニンおよびアルギナーゼインヒビターは、同じまたは異なる経路で、個別の剤形として投与することができるか、または単独の剤形として製剤化することができる。ひとつの態様において、アルギニンおよびアルギナーゼインヒビターは、カプセル剤、食品バー、または飲料の形で投与することができ、ここでこれら2種の物質は、個別の剤形であるか、または同じ剤形内で組合わせることができる。別の態様において、アルギニンおよびアルギナーゼインヒビターは、噴霧送達のために、同じまたは異なる製剤中で提供される。噴霧送達は、喘息および肺高血圧症を治療するための投与について特に興味深い。 マグネシウムは一般に、薬学的に許容できるマグネシウム塩、例えば硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどとして投与される。マグネシウムは、経口調製物または医薬用食品、静脈内調製物として投与することができ、かつ/またはこれは吸入剤として噴霧することができる。噴霧投与の例は、少なくとも約3cc(3.2%溶液、95mg)を含むが、これらに限定されるものではなく、これは単回用量として、1時間から数時間に及ぶ連続ネブライザー、または5分、10分、15分、20分、30分、1時間毎の投与、もしくは医学上指示された(例えば、臨床医により)他の投与スケジュールで投与することができる。静脈内投与の例は、少なくとも約10mg/kg〜約500mg/kgを含むが、これらに限定されるものではなく、ならびに例証的経口投与の例は、少なくとも約200g/日〜約1000g/日の単回投与または医学的に指示されたBID、TIDもしくはQIDのように反復投与が使用され得る。併用療法のための追加物質 本発明は、L-Arg単独および/またはアルギナーゼインヒビターと組合わせた投与を伴う併用療法に加え、追加の物質の投与も企図している。特に関心のあるひとつの態様において、一酸化窒素(NO)ドナー、および/または吸入用NOガスの形のNOで、対象に投与される。喘息の治療に関連して、本発明の治療法は更に、マグネシウムおよび/または例えば、ホスホリパーゼインヒビター、特に細胞質もしくは分泌型ホスホリパーゼ(PLA、例えばホスホリパーゼA2(PLA2))、ロイコトリエンインヒビター、コルチコステロイドなどの抗炎症剤の投与を含む。 加えて、喘息患者に加え鎌状赤血球疾患患者は、多くのアミノ酸の欠乏を示す。細胞外アルギニンの喪失は細胞内アミノ酸濃度に影響することは示されているので、改善されたアルギニンバイオアベイラビリティは、これらの病態において認められる異常なアミノ酸パターンの若干の正常化に役立ち得る。しかし本明細書に説明された物質(例えば、アルギニンおよび/またはアルギナーゼインヒビターおよび/またはマグネシウム)に加え、下記実施例において欠乏が指摘されるもののような、他の欠乏アミノ酸の併用療法は、有益である可能性があり、本発明に含まれる。有用であるPLAインヒビターの例は、U.S. Pat. No. 6,492,550;6,443,001;6,214,876;5,641,800;および5,514,704に開示されている。 本明細書に提供された指針が与えられたならば、対象において望ましい治療的作用、さもなければ有益な作用を提供するために、L-Arg、および/またはアルギナーゼインヒビターおよび/またはマグネシウムの用量および用法を選択することは、十分当業者の技術内である。正確な用量および用法は、例えば、L-Argは、単剤療法として、またはアルギナーゼインヒビターおよび/またはマグネシウムおよび/または他の物質との併用として投与されるかどうか、対象依存性の要因(例えば、体の測定値(例えば、体重、身長、サイズ、体表面積など)、健康状態、物質および/または製剤に対する耐性など);物質依存型因子(例えば、薬物動態(例えば、血清半減期を含む)、バイオアベイラビリティなど);用法依存型因子(例えば、投与経路、治療経過など);ならびに剤形依存型因子(例えば、製剤、ボーラス剤形、徐放性剤形など)などの要因により変動し得る。概してArgは、0.1g/kg体重まで、BID(1日2回)からTID(1日3回)の用量で投与され、最大用量は約30g/日である。先に説明したように、アルギナーゼインヒビターが、増加したアルギニンバイオアベイラビリティを提供する場合は、より少ない容量を投与することができる。アルギナーゼインヒビターの用量は、容易に決定することができ、一般にアルギニンの用量よりも少ない量である。治療法および本発明の治療の影響を受けやすい対象 低下したアルギニンバイオアベイラビリティ、上昇したアルギナーゼ(例えば、アルギナーゼ活性および/またはアルギナーゼレベル)、または低下したNOバイオアベイラビリティから生じるもののような、低下した一酸化窒素バイオアベイラビリティに関連する状態の対象は、本発明の療法の影響を受けやすい。このような療法は、L-Argの投与(例えば、栄養補助食品などとして)を含み、特に関心のある態様においては、アルギナーゼインヒビター(例えば、NOHA、アルギナーゼ抗体)、マグネシウム、またはそれらの組合せと一緒に投与される。例えば、マグネシウムは、L-Argと一緒に、またはL-Argおよびアルギナーゼインヒビターの併用療法に加えて投与することができる。任意にNO(例えば、吸入ガスまたはNOドナーの形で)は、L-Arg単剤療法またはL-Argおよびアルギナーゼインヒビターならびに/もしくはL-Argおよびマグネシウムの併用療法と一緒に投与することができる。語句「と一緒に」は、物質が、他の物質もしくは療法の前、同時または後に投与されることを意味する。 これらの物質(例えば、L-Arg、アルギナーゼインヒビター、マグネシウム、NO)は、個別の製剤として、または実行可能である場合は一緒にした製剤として投与することができる。これらの物質は、同時にまたは異なる時点で投与することができる。先の各状況における物質の用量は、前述のような様々な要因を基にすることができる。概して、用量は、TID(1日3回)、BID(1日2回)もしくはQID(1日4回)またはQD(毎日)投与される。例えばアルギナーゼインヒビター(およびアルギニン)についての用法は、様々な患者要因により変動する。例えば、治療される患者が鎌状赤血球疾患である場合、TIDまたはBIDは特に興味深い。喘息状態に関して、療法は、急性の状態の1回量として、または平均的に適当であると考えられるようにQD、BID、TID、もしくはQIDで投与されてよい。 低下した一酸化窒素バイオアベイラビリティおよび/または上昇したアルギナーゼレベル(非罹患個体に対し)に関連する状態の例は、喘息、鎌状赤血球疾患(SCD)、肺高血圧症(SCD、新生児肺高血圧症および/または新生児の持続性肺高血圧症、原発性高血圧、続発性高血圧)、肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、全身性高血圧、妊娠に関連する高血圧(子癇前症/子癇)、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、外傷性障害、敗血症、嚢胞性線維症、勃起機能障害、および溶血性障害(これは、上昇したアルギナーゼ活性の供給源が、赤血球からの放出による)を含むが、必ずしもこれらに限定されない。療法の影響を受けやすい状態は、先に治療されたもの(例えば、喘息のステロイド療法)または先に治療されていないもの(「治療に対しナイーブ」)を含む。 「上昇したアルギナーゼレベル」は、平均的正常対象のアルギナーゼ活性よりも、対象は、約20%大きい、通常約20%より高いアルギナーゼ活性レベルを示すことを意味する。血清または血漿中のアルギナーゼ活性測定値は、日常的に利用可能でない特別な試験である。この業務は、特定の臨床検査室が提供することができる。結果は、分析を実施した臨床検査室によって変動することがある。従って結果は、正常対照(すなわち、増加したアルギナーゼ活性に関連し得る炎症状態を伴わない患者)と比較されなければならない。正常な罹患していないヒト(Waugh et al, Nutritional Research. 1999.19;501-518の報告による)は、血漿アルギナーゼ活性レベル0.2±0.3μM/ml/30分を明らかにしている。本発明者らは、正常血清アルギナーゼ活性0.4±0.2μM/ml/時を観察した。従って正常対照における血漿および血清中のアルギナーゼ活性は低い。正常値を少なくとも約20%またはそれを上回るようなレベルは、上昇したと考えられる。例えば一般に血清アルギナーゼレベル>0.6μM/ml/時は、上昇したアルギナーゼレベルとみなされる。 喘息は、遺伝的要因および環境要因にも影響される多数の機構に関連する多くの臨床表現型を伴う複雑な症候群である。喘息療法に対する個々の患者の反応は様々であり、おそらく疾患の発症および重症度の原因である様々な機構を反映している。本発明は、上昇したアルギナーゼ活性、低下したアルギニンバイオアベイラビリティ、および/または制限された一酸化窒素バイオアベイラビリティに関連する喘息の型について示されている。この群に含まれるのは、様々な喘息(例えばアレルギー性喘息、夜間喘息、運動が誘発する喘息、軽度の間欠性、中等度の間欠性、中等度の持続性、重度の持続性など)の全てである。肺高血圧症、および同様の臨床症状または表現型を発症するが基礎となる機構が異なる他の疾患様々な型についても、同じ事があてはまる。変更されたアルギニンおよび一酸化窒素のバイオアベイラビリティはおそらく、多くのこれらの疾患過程の共通の特徴(denominator)であり、従って本発明に説明された治療の影響を受けやすい。 本発明は、前述の状態の増悪期の救急処置のため、慢性状態の治療のため、および/または説明された状態の発生もしくは進行を避けるための予防として使用することができる。これらの状態の多くは、個体がある疾患の発症のリスクを有することが既に同定されている遺伝的修飾型を有し、このような技術(HLA試験、マイクロアレイ解析、ゲノム多形の評価などを含むが、これらに限定されない)は、本発明により恩恵を受けるであろう患者の同定において有用でありうる。アルギナーゼレベル アルギナーゼレベルおよび/またはアルギナーゼ活性は、当技術分野において周知の方法により評価することができる。例えば、Morris et al., Am J Physiol Endocrinol Metab, 1998;275:740-747を参照のこと。例えばアルギナーゼレベルは、血液(例えば、全血または血清、血漿、または他の血液画分)、気管支肺胞洗浄液、または標的臓器組織試料(例えば、生検標本中に認められる)において評価することができる。本明細書において使用される「アルギナーゼの検出」は、試料中のアルギナーゼタンパク質の検出、試料中のアルギナーゼ活性の検出、またはそれら両方を包含することを意味する。 特に患者の血清または血漿中に存在するアルギナーゼ活性は、アルギニン対オルニチン比を基に評価することもできる。この比は、アルギニンの細胞取込みの競合的阻害により、上昇した血漿オルニチンレベルにより制限される、アルギニンバイオアベイラビリティを評価する上で助けともなる。本発明者らは、アルギニン/オルニチン比は、肺疾患(肺高血圧症)を伴う鎌状赤血球患者において有意に低いことを認めている。同様に本発明者らは、アルギニン/オルニチン比は、喘息において、正常対照と比べ有意に低いことを認めている(0.94±0.5、n=26対1.6±0.6、n=15、p=0.003)。 試験した正常な対照患者において、アルギニンレベルは通常オルニチンレベルよりも高く、この比は時には2:1に達することがある。Argおよびオルニチンは同じアミノ酸輸送体分子を共有しているので、このような比は、純粋に競合的阻害を基にしたアルギニンバイオアベイラビリティに関する制限を避ける。理論に拘束されないが、オルニチン濃度は上昇し、およびアルギニン対オルニチン比は減少するので、アルギニンバイオアベイラビリティは、明らかに正常なアルギニン濃度の条件下であっても制限され始める。病的に上昇したアルギナーゼ活性は、アルギニンを使用する(および一酸化窒素を生成するための一酸化窒素シンターゼの利用可能性を減少する)ことにより、アルギニン対オルニチン比を低下する一方で、アルギニンをプロリンおよびポリアミン生成の基質であるオルニチンへ加水分解し、これらの代謝産物は疾患病理進行に関与している可能性が高い。 従って低いアルギニン対オルニチン比は、増加したアルギナーゼ活性を反映している。一旦この比が1に近づくまたは1未満に下落すると、一酸化窒素生成に関するアルギニン利用可能性は、競合的に不都合となる。約1.2未満のアルギニン対オルニチン比は、低いと考えられる。このような所見を伴う患者は、疾患病理とは無関係に、アルギニン/アルギナーゼインヒビター併用療法、アルギニン/マグネシウム併用療法、または他の本発明の療法により治療され得る。療法の評価 本発明の療法の投与後、例えば治療される疾患に関連する1つまたは複数の症状の改善または安定化を観察することにより、患者において有効性が評価される。療法は、アルギナーゼレベルまたは活性の評価および/またはアルギニン対オルニチン比の正規化によっても、評価することができる。投与される物質の用量は、例えば、正常範囲内に、例えば、アルギナーゼレベルが正常レベルを約5%、10%、15%、もしくは20%よりも上回らないような範囲にアルギナーゼ活性レベルを減少させるように、またはアルギニンバイオアベイラビリティがもはや一酸化窒素生成の制限因子ではない程度に、すなわちアルギニン輸送のKm(>120μM)を上回るレベル、およびアルギニン対オルニチン比の正規化(>1.5)を上回るレベルに、血漿アルギニン濃度を十分に増加させるように、患者の必要性に応じて調節することができる。 療法は、疾患の1つまたは複数の臨床症状における改善を試験することにより評価することができる。成功した療法は通常、本発明の治療後の1つまたは複数の臨床症状の、そのような治療以前と比べて著しい改善と見なされる。ひとつの態様において、L-Argの「有効量」、またはL-Argとアルギナーゼインヒビターの組合せの状況の有効量は、その状態の1つまたは複数の臨床パラメータの、治療以前の臨床パラメータと比較するか、またはプラセボ対照もしくは未治療の対照と比べて、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、またはそれよりも多く改善するのに有効である用量である。例えば、肺高血圧症において、評価される臨床パラメーターは、以下のひとつまたは複数であることができる:Doppler-心電図記録により測定された三尖弁逆流性ジェット速度により概算されるような、平均肺動脈収縮期圧の改善、「6分間歩行」により測定される、改善された運動負荷;全身性高血圧の血圧など。 肺機能に影響を及ぼす条件の状況において、臨床パラメーターは、例えば、努力吸気量(FIF)、努力呼気流量(FEF)、努力肺活量(FVC)、一酸化炭素肺拡散能(DLco)などでありうる。例えば喘息において、療法は、肺活量測定、肺容積、気道抵抗、および/または酸素飽和度により評価することができる。肺高血圧症を有する患者において、療法は、肺機能試験に加え、平均肺動脈圧(例えば休止期および/または運動時)を用い決定することができる。本発明に従い成功した療法は、基礎となる病態は著しく変更されないが、1つまたは複数の臨床症状(その疾患から生じるまたはその疾患に関連する症状を含む)が治療されるような転帰を含むことは、注目されなければならない。 鎌状赤血球疾患の状況において、臨床パラメーターは、例えば以下のひとつまたは複数を含む:疼痛危機の回数、救急診療部の来院回数、入院回数および/または入院期間、鎮痛剤使用の量、皮膚潰瘍のような合併症の発症および/または発生、輸血の必要性、酸素使用などの減少。改善された疼痛スコアおよび生活の質(QOL)の評価手段も続くことができる。キット 本発明の方法における使用に適しているL-Arg製剤、アルギナーゼインヒビター製剤、および/またはマグネシウム製剤(これらの製剤は、本明細書に説明されたように組合せるかまたは個別であってよい)の単回用量を伴うキットが提供される。このようなキットにおいて、単位用量を含む容器に加え、上昇した血清アルギナーゼ活性に関連する状態を治療する際の物質の使用および付随する恩恵に関する情報を提供する添付文書が含まれる。 一部の態様において、本キットは、L-Arg、アルギナーゼインヒビター、マグネシウム、またはそれらの組合せの単位用量、および薬学的に許容できる賦形剤を含む製剤;ならびに治療される特定の状態、患者の年齢、患者の体重などによって決定される望ましい用法または例証的用法に従う剤形の投与の指示を含む容器を含む。これらの指示は、容器に固定されたラベルに印刷されるか、または容器に添付された添付文書であることができる。 別の態様において、投与のための物質(例えば、L-Arg、アルギナーゼインヒビター、マグネシウム、NO)は、本発明の療法の候補である対象における血清アルギナーゼレベルの分析を促進するための物質と共に、キット中に提供される。 下記実施例は、本発明を製造および使用する方法を当業者に完全に開示および説明するために示されており、本発明者らが自分たちの発明とみなす範囲を限定する意図はなく、これらは下記実験は実行された全てまたは唯一の実験であることを表すことも意図されていない。使用された数値(例えば、量、温度など)に関して正確を期す努力が成されているが、若干の実験誤差および偏差は、考慮されなければならない。特に別所記載しない限りは、部は質量部であり、分子量は質量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはその近傍である。方法および材料 下記の方法、材料、および患者集団は、下記実施例において言及されるものに関連する。喘息患者 オークランドのChildren's Hospital and Research Centerの救急診療部および診療所に来院した喘息患者を募集した。血液試料および呼出される一酸化窒素レベル(最大流量を示すのに十分な年齢の患者)を、救急診療部または診療所に来院時に入手し、その後入院を要するのに十分な病気であるそれらの患者については入院期間中は毎日入手した。 基準血液は、急性増悪の寛解の少なくとも4週間後に得た。血液試料を、アルギニンおよびアミノ酸のレベル、アルギナーゼ活性、ならびにアルギニン対オルニチン比について分析した。実行することができる追加の分析は、TH-2サイトカイン、VCAMおよびICAM、一酸化窒素代謝産物レベル(血液、呼吸および尿中)、遺伝子マーカー、IgE、Pla2レベル、RSV(<2歳の急性喘鳴)の分析、ならびにプロテオミクス分析を含む。Children's Hospital Oaklandで日常的に使用している臨床の喘息スコア、最大流量(年齢が適している場合)を得、症状に関する問診票(別表参照)を、各患者について記入した。 比較のために、十分な(well)喘息(良好な管理下で軽度で間欠性)および非喘息正常対照も、募集した。上昇したアルギナーゼ、Th2サイトカインおよび遺伝子修飾因子が、おそらく喘息(3回またはそれよりも多い喘鳴の発症により定義される)を発症する患者亜群を識別することができるかどうかを決定するために、喘息と診断されていない喘鳴のある幼児も、本試験参加のために募集した。登録後1年の喘鳴の反復発症を決定するために、これらの家庭に電話をかけ経過観察した。同じ患者における反復測定について、対応(paired)スチューデントt検定およびANOVAを用い、異なる群と比較するために、独立(unpaired)スチューデントt検定を用いた。鎌状赤血球疾患患者 定常状態の肺高血圧症と報告された17名の鎌状赤血球疾患患者を、本試験に登録した。Northern California Comprehensive Sickel Cell Centerで治療を受けている既知の全肺高血圧症患者は、本分析に参加するように提案された。12名の患者はヘモグロビンSについてホモ接合体であり、3名の患者はヘモグロビンSC型を有し、2名の患者はヘモグロビンSβ-サラセミアを有した。患者の平均年齢は32.7±15歳であり、13〜63歳の範囲であった。女性は7名登録した。人種的に合致した正常な非鎌状赤血球疾患の志願者が、アミノ酸レベルおよびアルギナーゼ活性を比較するために、対照群として登録した。平均年齢は20.6±10歳であり、10〜34歳の範囲であった。女性4名および男性6名が登録した。肺高血圧症は、心エコー図により推定された肺動脈圧>30mmHg(または三尖弁逆流性ジェット速度が2.5m/秒よりも大きい)、>2ヶ月の持続期間、急性胸部症候群を伴わないこととして定義した。先の心エコー図から三尖弁逆流性ジェット速度データを得るために、チャートの検証を全ての患者について行った。アミノ酸レベル(アルギニン、シトルリン、オルニチン、およびL-アルギニンアナログ非対称ジ-メチル-L-アルギニンを含む、完全なアミノ酸パネル) 定量的血漿アミノ酸レベルを、Beckman 6300アミノ酸分析装置を用い、μmol/Lで測定した。これらのアミノ酸は、リチウムイオン交換カラム上で分離し、次にニンヒドリンと反応し、呈色反応を生じた。データは、カリフォルニア大学(Davis, CA)のMolecular Structure Facilityにおいて、Beckman 32 Karatソフトウェアを用い収集および解析した。アルギナーゼ アルギナーゼ-特異性活性は、既報の方法により、血漿中で測定した(36)。NO分析装置 血清は、硝酸塩/亜硝酸塩/S-NOについてのアッセイ時まで、-70℃で保存した。NOxは、既報のように、液体検体のためのSievers NOAnalysisソフトウェアを製造業者(Sievers Instruments, Inc., Denver, CO)の指示に従い用い、血清、血漿または尿中で測定した(38-40)。簡単に述べると、血清亜硝酸塩は、亜硝酸塩をNOに転換するために血清をpH<2.0に酸性化することにより測定した。血清中硝酸塩は、血清をAspergillus硝酸レダクターゼ(Boehringer, Mannheim)と共にインキュベーションし、硝酸塩を亜硝酸塩に還元し、その後塩酸の添加により、亜硝酸塩をNOに転換することにより測定した。次に生成されたNOは、NO分析装置(Sievers, Inc)に注入され、オゾン存在下で発生したルミネッセンスを測定することにより、試料のNO含量が決定される。測定されたルミネッセンスは、注入されたNO量に従って、試料中の亜硝酸塩および硝酸塩含量に直接比例する。血清試料は迅速に試行するか、または後で分析するために凍結することができる。呼出される一酸化窒素 Sievers Instruments, Inc. (Denver, CO)により製造されたマイクロプロセッサーに基づく化学ルミネセンスNOx分析機器を用い、呼出される一酸化窒素を、呼気中で測定した。試験の実施は容易であり、多くの臨床試験においてうまく使用されている(12, 41, 42)。対象は、貯蔵バッグから、一方通行のバルブ(Hans Rudolph, Kansas City, MO)を通じ、総肺容量へ、環境中にNOが確実に存在しないようにNO非含有空気を送入しながら、吸入した。次に対象は、残留する容量を、NO分析装置に挿入された、テフロン製チューブへ呼出した。対象は、圧力+20mmHgで、分析装置へ連結されたチューブへ呼出した。ノーズクリップを用いないこの呼気圧での呼出は、後部鼻咽喉の軟口蓋を閉じ、かつ鼻からのNOの混入を排除する操作である。免疫蛍光染色およびフローサイトメトリー(FACS)分析 保存剤を含まないヘパリン中に採血した全血試料を使用した。染色に使用したモノクローナル抗体は以下である:FITC複合したCD3、CD25、CD69、CD80、CD86、CD95(Immunotech, Westbrook, ME)、PE複合したCD154(CD40L)、CD16、CD56、CD63(Becton Dickinson, San Jose, CA)、FITC複合したCD45RA、CD40(Coulter, Hialeah, FL)、PE複合したCD45RO(Beckton-Dickinson, CA)、PerCP複合したCD3、CD4、CD8、CD19(Beckton-Dickinson, San Jose, CA)。FACScan(BDIS, Mountain View, CA)上で、2色および3色分析を行った。10,000事象を獲得し、分析した。T細胞活性化 ヘパリン処理した血液を、RPMIで1:1に希釈し、10ng/mlのPMAおよび1μg/mlイノマイシン(Sigma Chemical Co.)の存在下または非存在下で、37℃で8時間インキュベーションした。マイトジェンおよび抗原の幼若化 血液の単核細胞を、マイトジェンまたは特異抗原で刺激し、細胞分裂および増殖させた。このプロセスは、細胞内で新たに合成されたDNAへ取込まれたチミジンの測定によりモニタリングした。使用したマイトジェンは、フィトヘマグルチニン(PHA)(Difco, Detroit)であり、1:25、1:125、1:625で作業用に希釈した。抗原は、破傷風トキソイド(Connaught Laboratories Limited, Willowdale, Ontario)、カンジダ(Miles Inc.)、サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、および水疱帯状疱疹ウイルス(VZV)(Myron J. Levin, M. D. UCHSC, Denver. CO)であった。全ての反応は、1個のウェルにつき105個細胞で、三連で行った。マイトジェンアッセイ法に関するインキュベーション時間は3日間であるが、抗原については7日間であり、両方とも5%CO2中37℃で行った。最終日に、3H-チミジン50μlを各ウェルへ最終濃度1μCi/ウェルで添加することにより、これらの細胞をパルス処理した。プレートは、パルス処理後、6〜18時間で収集した。sPLA2 sPLA2タンパク質は、先に説明された方法により、チオエステルの破壊によるELISAおよびsPLA2活性を用い測定した(61)。サイトカイン血清レベル 本発明者らは、凍結した血清試料を用い、TNFα、sIL-2R、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、g-インターフェロンおよびCD40Lを使用する。サイトカインに関する市販のELISAを、製造業者(R&D Systems, Minneapolis and Immunotech, Westbrook, ME)の指示に従い、日常的に使用した。VCAM、ICAMおよびsCD40Lレベルに関するELISAは、最近Chemicon, CAから入手することができるようになった。遺伝マーカー NOは、内皮細胞において、酵素一酸化窒素シンターゼ(NOS)によりL-アルギニンから合成され、NOS3遺伝子については単独の遺伝子多形(SNPs)が知られている。NOは気管支運動性緊張の調節および気道炎症において重要な役割を果たす(62)ので、喘息におけるNOS遺伝子を評価する遺伝子研究は興味深い。迅速に複数のSNPsの遺伝子型を同時に決定する方法は、Roche Molecular Systems, Alameda, CAにおいて開発されている。多重PCR産物の例は、下記のアガロースゲルにおいて示した。これらの18種のPCR産物は、喘息において役割を果たすと考えられる遺伝子におけるSNPsを含む:TNFα;CCqα;TNFR1:TNFβ;IL5Rα;TNFβ;IL9;CCR2;IL4Rα;CCR5:RMS1;β2AR;CC16;FcεRIβ;CTLA4;SCYA11;IL4Rα;IL4;およびIL6。実施例1:喘息、鎌状赤血球疾患、およびPHT患者におけるアミノ酸レベル分析 呼吸器症状の急性増悪を経験している喘息患者において、多くのアミノ酸の血漿レベルの低下が認められた(表1)。明らかに、最大の減少は、アルギニンの血漿レベルにおいてであり、これは正常対照のほぼ半分であった(45±22μM対94±29μM;p<0.0001)。 (表1) 正常対照対喘息における血漿アミノ酸アミノ酸濃度は、平均±SDで表している。%対照値は、喘息群の対照に対する百分率を反映している。 アルギニン、オルニチンおよびリジンは、同じy+輸送システムを介して細胞に取込まれ、アルギニン/(オルニチン+リジン)比は、任意の所与の血漿アルギニン濃度での相対的アルギニン利用可能性の指標を提供する。相対アルギニン利用可能性も、喘息患者において正常対照と比べ有意に低いことがあり(0.30±0.13対0.42±0.14、p<0.005)、更に喘息群においてアルギニン利用可能性は制限される。 アルギニン代謝の生成物であるオルニチンの血漿レベル(表1)は一般に、対照に対し喘息において低く、ならびに相対オルニチン利用可能性(オルニチン/(アルギニン+リジン))は、対照よりも喘息のほうが若干高い(対照0.25±0.07、喘息0.34±0.17)が、これらはいずれも統計的有意性に達する傾向を示さない。他方、内因性アルギニン合成の前駆体であるシトルリンは、正常対照に対し喘息において有意に低下し(表1)、これはおそらくこれらの患者における血漿アルギニンレベルの低下に寄与しているであろう。 表2は、正常対照対鎌状赤血球疾患(SCD)患者における血漿アミノ酸を示している。異常なアミノ酸プロファイルが、鎌状赤血球疾患患者において認められた。血漿アルギニン濃度において、最大の欠乏が認められた。 (表2)正常対照対SCDにおける血漿アミノ酸アミノ酸濃度は、平均±SDで表している。%対照:対照からの有意差がある場合のみ、値を示している。*PHTを伴うSCD患者対PHTを伴わないSCD患者において変化したアミノ酸。 表3は、肺高血圧症を伴う鎌状赤血球疾患患者において、肺高血圧症を伴わない患者と比べ異なる血漿アミノ酸レベルを示している。アルギナーゼ活性の上昇した下流の副産物が、肺高血圧症を発症しているSCD患者において生じた。 (表3)PHTを伴うSCD対PHTを伴わないSCDにおける血漿アミノ酸アミノ酸濃度は、平均±SDで表している。*対照と有意に異なるアミノ酸(p<0.05)実施例2:喘息患者および肺高血圧症を伴う鎌状赤血球疾患(SCD)患者におけるアルギニンおよびアルギナーゼレベル SCD患者および喘息患者は、急性増悪期に有意なアルギニン欠乏を示した。血清アルギニンレベルを、下記表にまとめ、図1(パネルA)に示した。PHT=肺高血圧症;PHTを伴うSCD対正常、および喘息対正常の比較について、p<0.0001。 アルギナーゼ活性は、正常対照と比べ、PHTを伴うSCD患者において上昇し、喘息患者において更に大きかった。血清アルギナーゼ活性レベルを、下記表にまとめ、データを図1(パネルB)に示した。PHTを伴うSCD対正常、および喘息対正常の比較について、p=0.001。 図1(パネルB)は、正常な非喘息対照(正常、n=10)対鎌状赤血球疾患および肺高血圧症の患者(SCD、n=17)対喘息患者(喘息、n=20)における、アルギナーゼ活性を示すグラフである。アルギナーゼ活性は、喘息患者において、正常対照と比べ有意に増加した(p<0.001)。アルギナーゼ活性は、喘息において、肺高血圧症を伴う鎌状赤血球患者と比べさらに高かった。最高レベルのアルギナーゼ活性を有するSCD患者2名は、値を得て1年以内に死亡した。上昇したアルギナーゼ活性は、鎌状赤血球疾患の疾患重症度の増大を反映することがあり、これはおそらく疾患病理進行において役割を果たす可能性のある喘息の炎症マーカーであろう。 図2に図示したように、アルギニンレベルは、入院した喘息患者において退院までに有意に上昇した(54.7±29対93.1±37μM、p<0.05、n=4)。一連のアルギナーゼ活性レベルを患者2名から入手し、これは各症例において退院までに実質的に下落した(1.85は1.12μmol/ml/hrへ低下し、および3.86は0.50μmol/ml/hrに低下した)。喘息患者における高アルギナーゼ活性は、低い循環アルギニンレベルの原因であり、これによりアルギニンバイオアベイラビリティを制限し、および過敏性気道を誘導する一酸化窒素欠乏を生じる可能性が高い。 図3は、喘息重積状態(status asthmaticus)の代表的4歳男児の入院期間中の、血漿アルギニンおよびオルニチン濃度、アルギナーゼ活性ならびに一酸化窒素代謝産物の変化を表している。連続血漿アルギニン(黒丸)およびオルニチンレベル(白丸)は、3日間の入院にわたり追跡した。「1日目」は入院日であり、救急診療部から入手し、「3日目」は退院日であった。図3のパネルAに示されたように、低いアルギニンレベルは、入院期間中に有意に増加し、アルギニン対オルニチン比もそのように増加した(0.65、1日目対1.6、2日目対1.9、3日目)。 図3のパネルBに示されたように、血清一酸化窒素代謝産物(白丸)およびアルギナーゼ活性(黒丸)も、3日間の入院にわたり追跡した。アルギナーゼ活性は、患者の臨床的改善に伴い、劇的に下落し、退院までに正常レベルに達し、これは血清一酸化窒素代謝産物生成の増加に対応していた。アルギニンおよび一酸化窒素バイオアベイラビリティは、喘息増悪が消散するとともに改善された。 加えて、アルギナーゼ遺伝子発現は炎症プロセスに関連する多くのサイトカイン、特にTh2サイトカインにより上方制御されるので、患者状態の炎症状態も役割を果たし得る。上昇した血清中sPLA2レベルが、喘息患者対正常対照において認められた(4.2±2対25.9±30、p<0.05、正常対照対喘息)。ホスホリパーゼA2は、ロイコトリエンの前駆体であるので、上昇したsPLA2は、ロイコトリエンインヒビターに反応するであろう患者を確定することができる。ロイコトリエンインヒビターまたはsPLA2インヒビター/抗体との、本明細書に説明された1つまたは複数の物質による併用療法は、喘息患者および上昇したサイトカインに関連する他の炎症状態の患者にとって有益である。実施例3:アルギニン治療後のPHTを伴うSCD患者におけるアルギナーゼレベル 鎌状赤血球疾患および心エコー図により明らかにされた肺高血圧症を伴う患者を、経口L-アルギニン-HClの用量0.1g/kg TIDで5日間治療した。心エコー検査を、L-アルギニン投与の前後、0日目および6日目に行い、アルギニン療法の完了後も、1ヶ月以上経過観察した。アミノ酸レベルを決定するための血液試料は、試験0日目の朝(治療前)、3日目、および6日目に採血した。アルギナーゼ活性レベルを、0日目に測定した。患者は、血管拡張剤または抗凝固剤による治療を同時に受けず、また5日間の試験期間中は赤血球輸血を受けなかった。心エコー図の解釈に関与した心臓病専門医は、施された療法に関して知らされていなかった。心エコー検査 経口L-アルギニン補充により、治療の5日後、肺動脈収縮期圧が平均15.2%(63.9±13から54.2±12mmHg、p=0.002)有意に低下した。患者1名は、試験終了時の血漿L-アルギニン濃度を基に服薬遵守しなかったと判断された(0日目の61.5μM/L対6日目の44.9μM/L)。この患者は、心エコー図により肺高血圧症の改善を示さなかった唯一の患者であった。 試験登録前2ヶ月以上にわたり入手した心エコー図から三尖弁逆流性ジェット速度は、患者5名において安定した推定肺動脈収縮期圧を、および患者2名において肺高血圧症の増悪を明らかにした。結果は、3名の患者については院外からは入手できなかった。経過観察の心エコー検査は、混合した結果を伴う、9名の服薬遵守した患者におけるアルギニン療法後1ヶ月以上にわたり得た。服薬遵守しなかった患者は経過観察しなかった。4名の患者は、彼らの以前の基準肺動脈収縮期圧に戻り、4名の患者は持続性の改善を示し、1名の患者は肺高血圧症の増悪を示した(心エコー検査は、急性胸部症候群による入院時に行った)。持続性の改善を示す患者中の2名は、それらの疾患が重症であるために輸血療法も開始し、ならびにこれらの患者2名中の1名は、アルギニン療法(用量0.1g/kg BID)も継続した。アミノ酸レベル 血漿L-アルギニンレベルは、肺高血圧症症患者において、正常対照と比べ低かった(50.8±19対114±27μM、p<0.0001)が、肺高血圧症を有さない安定状態の鎌状赤血球疾患患者において認められるレベルに類似していた。しかしアルギニン対オルニチン比は、肺高血圧症患者において、正常対照と比べ有意に低く(0.95±0.3対2.0±0.6、p<0.0001)、これは増加したアルギナーゼ活性および減少したアルギニンバイオアベイラビリティを示唆している。L-アルギニンおよびオルニチン濃度は両方とも、経口L-アルギニン補充の5日後に、有意に増加した(n=10、p<0.05)。アルギナーゼ活性 アルギナーゼは、L-アルギニンを、オルニチンおよび尿素に転換する。血清中のアルギナーゼ活性は、肺高血圧症を伴う鎌状赤血球患者において、正常対照と比べて高かった(0.82±0.6対0.43±0.2μmol/ml/h)。興味深いことに、2名の最高レベルのアルギナーゼ活性(1.22および2.46μmol/ml/h)を伴う患者は、登録の1年以内に死亡した。上昇したアルギナーゼ活性は、疾患重症度のマーカーでありうる。実施例4:L-ARGおよびNOHA併用療法 SCD治療におけるL-ArgおよびアルギナーゼインヒビターNOHAの、単独および組合せの作用を試験した。これらの作用物質は、鎌状赤血球化細胞、赤血球指数、ヘモグロビンの機能特性、ならびにヘモグロビン酸化および赤血球溶血などの副作用の存在について試験した。鎌状赤血球と内皮細胞の間の相互作用、膜輸送特性および細胞容積制御に対するこれらの物質の作用も試験した。専らヒトHb S/Hb Fを生成するものを含む、ヘモグロビンSの異なるレベルを生成する様々な系統のトランスジェニックマウスを用い、インビボ試験を行った。実施例5:アルギニン単剤療法ならびにアルギニンおよびマグネシウムの併用療法 喘息重積状態の治療のための静脈内アルギニンまたはアルギニンおよびマグネシウムの無作為化した二重盲検プラセボ対照試験を、下記のように行った。呼吸窮迫および喘息を伴う患者を、Children's Hospital Oaklandの救急診療部または診療所から募集した。治験薬は、救急診療部における1回用量として投与した。アルギニンまたはプラセボを、8時間毎に入院患者に投与した。主な転帰の測定値は、入院時対退院時の患者パラメーター、ならびに入院期間、臨床の喘息スコアおよび酸素飽和度/補充的酸素使用の必要性の改善であった。血漿アミノ酸、アルギニン対オルニチン比、アルギナーゼ活性、一酸化窒素代謝産物(血清、呼出した息および尿中)、PLA2、サイトカイン、炎症バイオマーカー、遺伝子修飾因子および最大流量が続いた。実施例6:アルギニン単剤療法 Chambersらの論文「Effect of nebulised L-and D-arginine on exhaled nitric oxide in steroid naive asthma」Thorax. 2001 Aug;56(8):602-6は、喘息患者へのL-Arg吸入投与は、気管支収縮を誘導し、呼出されるNOは急性気管支収縮と共に減少し、かつ気管支収縮の消散と共にベースラインへ回復することを報告しているが、同様の気管支収縮が、代替アミノ酸を使用する彼らの対照試験において発生した。急性気管支反応は、アルギニンよりもむしろ吸入剤それ自身の刺激による可能性が高い。刺激は、無刺激の吸入剤の慎重な選択および/または吸入時に著しい刺激を引き起こさない製剤成分(すなわち、低刺激または無刺激製剤)の選択により、避けることができる。このような問題点は、例えば、経口または静脈内投与のような、吸入以外の経路によるアルギニンの投与により避けることもできる。 アルギニン補充の肺機能試験に対する作用は、補充用アルギニン(経口または静脈内)の単独の、またはマグネシウムおよび/もしくはアルギナーゼインヒビターと組合わせた、3回以上の喘鳴の発症を伴いおよび喘息薬物療法(例えば、気管支拡張剤、ステロイド、吸入型ステロイド、またはロイコトリエンインヒビターなど)の既応のある喘息と診断された患者への投与により評価される。肺機能試験は、アルギニン単回用量(0.1g/kgから最大10gまで)の前後に行われる。 本試験には既に患者1名が登録している。経口アルギニンの単回用量(0.1g/kg)を投与した。肺機能試験は、治療前およびアルギニン補充の2時間後に測定した。補充アルギニンは、肺活量測定に有意に作用せず(FIF50%を除く;23%の改善の誘導)、肺の容積に対し最小の作用を有し、治療は2時間以内に気道抵抗に対し際だった影響を及ぼした(Rawは22%減少し、Gawは28%増加した)。増加した気道抵抗は、喘息の急性増悪期の重大な問題点であるので、気道抵抗を減少する良性の(benign)療法はおそらく平滑筋弛緩を通じ、喘息患者に恩恵を及ぼすであろう。同じく興味深いことに、患者の静脈血ガスによる酸素飽和度は、85%から92%に増加した。 治療後2時間以降にも、または気管支拡張剤およびステロイドのような標準の喘息療法と併用使用時にも、更により大きい恩恵が理解される。参照文献 本発明は、それらの具体的態様を参照し説明されているが、当業者には、本発明の真の意図および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、かつ同等物と交換することができることは理解されなければならない。加えて、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、1つまたは複数のプロセス工程、本発明の目的、意図および範囲に適合するように、多くの変更を行ってもよい。このような変更は全て、本明細書に添付された特許請求の範囲内であることが意図されている。 障害の症状または原因として、上昇したアルギナーゼを有する対象を治療する方法であって、以下の段階を含む方法: ある量のL-アルギニンおよびある量のアルギナーゼインヒビターを、治療の必要な対象へ投与する段階であって、該投与は、対象におけるアルギニンのバイオアベイラビリティを増強するのに有効であり、これにより対象を治療する段階。 対象は喘息である、請求項1記載の方法。 対象は鎌状赤血球疾患を有する、請求項1記載の方法。 対象は肺高血圧症を有する、請求項1記載の方法。 アルギナーゼインヒビターは、N(ω)-ヒドロキシ-ノル-L-アルギニン(NOHA)、Nω-ヒドロキシ-ノル-L-アルギニン(ノル-NOHA)、2(S)-アミノ-6-ボロノヘキサン酸(ABH)、S-(+)-アミノ-6-ヨードアセトアミドヘキサン酸、S-(+)-アミノ-5-ヨードアセトアミドペンタン酸、L-ノルバリン、またはL-HOArgである、請求項1記載の方法。 アルギナーゼインヒビターはNOHAである、請求項1記載の方法。 投与は、ある量の一酸化窒素(NO)を投与する段階を更に含む、請求項1記載の方法。 対象において喘息の症状を治療する方法であって、以下の段階を含む方法: L-アルギニンを喘息を有するまたは喘息のリスクのある対象へ投与する段階であって、該投与は、対象におけるアルギニンのバイオアベイラビリティを増強するのに有効であり、これにより対象における喘息の症状を治療する方法。 マグネシウムの投与を更に含む、請求項8記載の方法。 アルギナーゼインヒビターの投与を更に含む、請求項8記載の方法。 対象において肺高血圧症を治療する方法であって、以下の段階を含む方法: L-アルギニンおよびアルギナーゼインヒビターを肺高血圧症を有するまたは肺高血圧症のリスクのある対象へ投与する段階であって、該投与は、対象におけるアルギニンのバイオアベイラビリティを増強するのに有効であり、これにより対象の喘息の症状を治療する段階。 対象は鎌状赤血球疾患を有する、請求項11記載の方法。 アルギナーゼインヒビターは、N(ω)-ヒドロキシ-ノル-L-アルギニン(NOHA)、Nω-ヒドロキシ-ノル-L-アルギニン(ノル-NOHA)、2(S)-アミノ-6-ボロノヘキサン酸(ABH)、S-(+)-アミノ-6-ヨードアセトアミドヘキサン酸、S-(+)-アミノ-5-ヨードアセトアミドペンタン酸、L-ノルバリン、またはL-HOArgである、請求項11または12記載の方法。 アルギナーゼインヒビターはNOHAである、請求項11または12記載の方法。 投与は、ある量の一酸化窒素(NO)を投与する段階を更に含む、請求項11または12記載の方法。 障害の症状または原因として、低下した一酸化窒素バイオアベイラビリティを有する対象を治療する方法であって、以下の段階を含む方法: ある量のL-アルギニンおよびある量のマグネシウムを、治療の必要な対象へ投与する段階であって、該投与は対象におけるアルギニンのバイオアベイラビリティを増強するのに有効であり、これにより対象を治療する段階。 対象は喘息である、請求項16記載の方法。 対象は鎌状赤血球疾患を有する、請求項16記載の方法。 対象は肺高血圧症を有する、請求項16記載の方法。 低下した一酸化窒素バイオアベイラビリティが、対象におけるアルギニンの減少の結果である、請求項16記載の方法。 L-アルギニン、アルギナーゼインヒビター、および薬学的に許容できる賦形剤を含む組成物。 L-アルギニンおよび薬学的に許容できるマグネシウム塩ならびに薬学的に許容できる賦形剤を含む組成物。 【課題】障害の症状または原因として、低下したアルギニンまたは一酸化窒素バイオアベイラビリティを有する対象を治療する方法の提供。【解決手段】L-アルギニンと、N(ω)-ヒドロキシ-ノル-L-アルギニン(NOHA)のようなアルギナーゼインヒビターおよび/またはマグネシウムを、治療の必要な対象へ投与する段階であって、該投与は、対象におけるアルギニンまたは一酸化窒素のバイオアベイラビリティを増強するのに有効であり、これにより対象の喘息、鎌状赤血球疾患、肺高血圧症等を治療する方法。【選択図】図120110104A16333全文3 障害の症状または原因として、上昇したアルギナーゼを有する対象を治療する方法であって、以下の段階を含む方法: ある量のL-アルギニンおよびある量のアルギナーゼインヒビターを、治療の必要な対象へ投与する段階であって、該投与は、対象におけるアルギニンのバイオアベイラビリティを増強するのに有効であり、これにより対象を治療する段階。


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