タイトル: | 公開特許公報(A)_ローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法 |
出願番号: | 2010256283 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07D 493/08,C09K 15/08,C07B 53/00,A61K 31/35,A61P 3/06,A61P 3/04,A61P 31/04,A61P 25/28,A61K 36/00,A61P 39/06 |
多田 全宏 JP 2012097058 公開特許公報(A) 20120524 2010256283 20101029 ローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法 多田 全宏 510303970 多田 全宏 C07D 493/08 20060101AFI20120420BHJP C09K 15/08 20060101ALI20120420BHJP C07B 53/00 20060101ALN20120420BHJP A61K 31/35 20060101ALN20120420BHJP A61P 3/06 20060101ALN20120420BHJP A61P 3/04 20060101ALN20120420BHJP A61P 31/04 20060101ALN20120420BHJP A61P 25/28 20060101ALN20120420BHJP A61K 36/00 20060101ALN20120420BHJP A61P 39/06 20060101ALN20120420BHJP JPC07D493/08 BC09K15/08C07B53/00 EA61K31/35A61P3/06A61P3/04A61P31/04A61P25/28A61K35/78 BA61P39/06 5 書面 13 4C071 4C086 4C088 4H006 4H025 4C071AA03 4C071AA07 4C071BB01 4C071BB06 4C071CC11 4C071DD40 4C071EE07 4C071FF17 4C071GG01 4C071HH05 4C071LL01 4C086AA04 4C086BA07 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA20 4C086ZA16 4C086ZA70 4C086ZB35 4C086ZC33 4C088AB03 4C088AC05 4C088BA10 4C088CA06 4C088NA20 4H006AA02 4H006AC81 4H025AA20 本発明は、ローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法に関し、より詳細には、サワラ等はじめとする樹木成分を原料とする、ローズマリーの抗酸化活性物質の1つであるカルノソールの製造方法に関する。 シソ科植物は全世界に広く分布し、約200属3500種が知られており、これらのうち香草や医薬などとして古くから用いられているローズマリー、セージ、シソ、オレガノ、バジル、タイム、マジョラム等のシソ科植物には、抗酸化活性物質が含まれていることが知られている。これらの抗酸化活性物質を構造的な特徴から分類するとフェノール性ジテルペン、カフェ酸誘導体、フラボノイド、ビフェニル誘導体の4つの型に大別される。 上記シソ科植物の中で、ローズマリーは古くから肉料理の香辛料や民間薬として知られ、カルノシン酸、カルノソール、ロスマノールに代表される強い抗酸化活性成分を含有することが広く知られている(非特許文献1)。近年、カルノシン酸については、抗菌活性、脳神経細胞死防止効果、脳血症の治療・予防効果、アルツハイマー病予防効果、脂肪吸収防止効果、抗炎症作用、糖尿病患者の血糖値低下効果、美白効果など様々な活性が報告されており、カルノソールについても生体防御機構活性化作用、解毒効果、消臭効果や殺菌作用など様々な活性を示すことが報告されている。これらの抗酸化活性物質については食品添加物、サプリメント、医薬等としての利用が検討されている(特許文献1及び非特許文献2ないし非特許文献4)。 例えば、ローズマリー及びセージ等の植物由来の抽出物を有効成分として含有する、神経突起伸長剤が開示されている(特許文献2)。上記抽出物であるカルノシン酸およびカルノソールは、ローズマリー等の所定部位をアルコール抽出物から得られることが開示されている。しかしながら、ローズマリーの葉5000グラムのアルコール抽出物から分離されたカルノシン酸は1.5グラム、カルノソールは1グラムであり、安価にしかも大量にカルノシン酸およびカルノソールを供給する目的に沿う製造方法にはなっていないという問題点がある。(特許文献3及び特許文献4)。 一方、サワラは、日本特産の針葉樹であり、天然には栃木、群馬、岐阜及び長野県などに多く分布している。その葉には、ピシフェニル酸および関連化合物が大量に含有されている(非特許文献5)。ピシフェニル酸はカルノシン酸と同じ炭素骨格を有し、構造的に類似しており、フェノール性水酸基がカルノシン酸より1つ少ない点のみが異なる。 先に、本発明者はサワラの葉からピシフェリン酸を高収率で抽出・分離し、カルノシン酸を効率的に製造する方法を発明した(特許文献5及び特許文献6)。 ローズマリーの抗酸化活性物質の1つであるカルノソールについては、ローズマリーから分離・精製したカルノシン酸から酸化銀等の酸化剤によって酸化し、製造する方法が知られていた。この方法はカルノシン酸のローズマリーからの収量が低いだけでなく、その後のカルノシン酸の酸化反応はカルノソールとともに他の副生成物を生成し、カルノソールの分離・精製が煩雑である。 発明が解決しようとする課題 上記[0006]に記載されたカルノシン酸の製造方法を改良することによって、ピシフェリン酸からカルノソールを1ポットで効率的に製造する。 なお、本件特許出願人は、本件発明に関連する文献公知発明が記載された刊行物として、以下の技術文献を開示する。 特開2001−158745号公報 特開2007−230945号公報 特表2001−518072号公報 特開2003−55686号公報 特願2008−150882号 特願2008−312727号 多田全宏、「シソ科香草に含まれる抗酸化活性物質の生理活性」、FFIジャーナル オブ ジャパン、2000年、184号 S.C.Etter,Spices & Medicinal Plants,Journal of Herbs,11,121−159(2004) T.Satoh,K.Kosaka,K.Itoh,A.Kobayashi,M.Yamamoto,Y.Shimojo,C.Kitajima,J.Cui,J.Kamins,S.Okamoto,M.Izumi,T.Shirasawa,S.A.Lipton,J.Neurochem.,104,1116−1131(2008) K.Ninomiya,H.Matsuda,H.Shimoda,N.Nishida,N.Kasajima,T.Yoshino,T.Morikawa,M.Yoshikawa,Bioorg.Med.Chem.Lett.,14(8),1943−1946(2004) du Xiao,M.Kuroyanagi,T.Itani,H.Tatsuura,M.Udayama,M.Murakami,K.Umehara,N.Kawahara,Chem.Pharm.Bull.,49(11),1479−1481(2001). 課題を解決するための手段 以前本発明者等は、サワラ等を原料とし、その抽出物であるピシフェリン酸等の化合物のフェノールのオルト位を特定の酸化剤により酸化することにより、ローズマリーの強抗酸化活性成分であるカルノシン酸及びその誘導体を製造できることを見出した(特許文献5及び特許文献6)。今回、上記の発明を改良することによって、ローズマリーの抗酸化活性成分の1つであるカルノソールをサワラの主成分であるピシフェリン酸から1ポットで直接製造できることを発見し、発明を完成した。 本発明は、以下の技術的事項から構成される。すなわち、[1]サワラ属樹種から抽出される、 下記一般式[化1]で表されるピシフェリン酸誘導体と、(上記一般式[化1]において、R1は、COO R3、ヒドロキシメチル基、アルデヒド基のいずれかであり、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし6のアルキル基を表す。) 下記一般式[化2]ないし一般式[化3]で表されるいずれかの酸化剤、 (上記一般式[化2]においてXはベンゼン環のいずれかの位置に結合した水素、ハロゲン、アルキル基、アロコキシル基のいずれかを表す。[化3]においてR4は、水素原子または炭素数1ないし6のアルキル基、アリル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、ハロゲン化アルキル基のいずれかを表す。Xはベンゼン環のいずれかの位置に結合した水素、ハロゲン、アルキル基、アロコキシル基のいずれかを表す。)を、反応させることにより、酸化する第1の工程と、前記第1の工程後、反応混合物を放置し、ラクトンを生成させる第2の工程を有することを特徴とする下記一般式[化4]で表されるローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法。[2]前記サワラ属樹は、サワラであることを特徴とする[1]に記載のローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法。[3]前記酸化剤が、一般式[化2]において、X=Hである2−ヨードキシ安息香酸(IBXと言う)であることを特徴とする[1]に記載のローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法。[4]前記酸化剤が、一般式[化3]で表される2−ヨードキシ安息香酸トリアシルエステル誘導体であることを特徴とする[1]に記載のローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法。[5][1]ないし[4]の何れかに記載の製造方法により、製造したローズマリーの抗酸化活性物質。 発明の効果 本発明によれば、サワラから、ローズマリーの抗酸化活性物質であるカルノソールを簡易かつ大量に製造することができる。 以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。 (サワラ等の樹木ついて)本発明のローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法に使用される原料は、本発明の製造方法の目的物質であるカルノソール等の原料となる、ピシフェニル酸及びその誘導体をその成分に含んでいればよく、特に制限されるものではないが、例えば、ヒノキ科のサワラ属の樹木を例示することができる。上記樹木としては、例えばサワラ、シノブヒバ、オウゴンシノブヒバ、ヒムロおよびヒヨクヒバを例示することができる。上記例示した針葉樹の中でも、その生産量及び取り扱いの観点から、サワラが好ましく、これらの原料を混合して使用することもできる。以下、本発明の製造方法の目的物質であるローズマリーの抗酸化活性物質の出発原料となるピシフェニル酸及びその誘導体の一般式を示す。 上記一般式[化1]において、R1は、COOR3、ヒドロキシメチル基、アルデヒド基のいずれかである。すなわち、R1は、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、ヒドロキシメチル基、アルデヒド基である。 R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1ないし6のアルキル基であり、炭素数1ないし6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等を例示することができる。 上記一般式[化1]において、R1がカルボキシル基(R1=COOH)、R2が水素原子(R2=H)である場合にはピシフェリン酸となる。なお、ピシフェリン酸は、サワラに最も多く含まれているジテルペンであり、化学的に安定かつ、無色、無臭の結晶である。 サワラは、日本国の至るところで見られる常緑高木であり、きわめて容易に入手することができ、大量に存在するバイオマスである。なお、本発明においては、サワラの部位の中で、ピシフェリン酸とその誘導体化合物を多く含む葉を使用するのが好ましい。 サワラ等の原料から、ピシフェリン酸等を抽出する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、以下の方法により抽出することができる。すなわち、サワラ等の原料を溶媒に浸漬又は溶媒によって還流することにより容易に抽出することができる。使用できる溶媒としては、アルコール、アルカン、カルボン酸、エステル、ケトンを例示することができる。また、これら溶媒は、単独で使用することもでき、これら2種類以上を適宜混合して使用することもできる。 上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル1−プロパノール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル1−ブタノール、3−メチル1−ブタノール、2、2ジメチル1−プロパノールなどが挙げられる。また上記アルカンとしては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどが挙げられる。 ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトンが挙げられる。また、必要に応じて、上記の有機溶媒から二種類以上を採択して混合溶液として使用することもできる。上記溶媒の中でも、安全性等の取り扱いの観点から、アルコールの単独又は水とアルコールとの混合溶媒を使用することが好ましい。特に好ましくは水とエタノールの混合溶媒とするのが好ましい。 上記溶媒抽出を行う場合の抽出時間及び抽出温度は、抽出する溶媒により適宜設定することができる。例えば、原料をサワラとし、抽出する溶媒としてメタノールを採択して抽出する場合には、その抽出温度を還流温度にする事が望ましく、抽出反応時を10時間ないし24時間とすることができる。上記抽出方法により、生成した下記一般式で示されるピシフェリン酸及びその誘導体を含有する溶液を抽出後、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって精製することができる。(ローズマリーの抗酸化活性物質の製造) 本発明のローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法は、サワラ等樹木から、ピシフェリン酸及びその誘導体を抽出・分離し、過酸化物によりピシフェリン酸等のフェノールのオルト位を酸化し、酸化生成物を分離せずに必要な時間放置しラクトン化反応さる工程を有することを特徴とするものである。 本発明において、ピシフェリン酸を酸化した後放置する時間、温度および溶媒を変えることによって、カルノソールとともにローズマリーのその他の抗酸化活性物質であるロスマノール、イソロスマノール、カルノシン酸等が生成することがある。この反応でそれらの生成物の比と収率は、上記の酸化反応後放置する時間、温度および溶媒等の条件によって変化する。本発明において、「ローズマリーの抗酸化活性物質」とは、ローズマリーのみから抽出したものを指すのではなく、セージ、シソ、オレガノ、バジル等のローズマリー以外のシソ科植物を出発原料とし、又はこれらの出発原料を組み合わせたものを出発原料として製造される組成物を含むものである。(ピシフェリン酸のオルト位酸化とラクトン化反応)本発明のローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法は、上記化学式で示されるピシフェリン酸及びその誘導体の構造式中、フェノールのオルト位酸化反応に際して、下記一般式で示される特定の過酸化物を採択した点に特徴を有する。すなわち、本発明においては、下記一般式で表される酸化剤を使用し、ピシフェリン酸及びその誘導体のフェノールのオルト位を酸化し、反応生成物をラクトン化させカルノソールを得るものである。 (上記一般式中[化2]において。Xはベンゼン環のいずれかの位置に結合した水素、ハロゲン、アルキル基、アロコキシル基のいずれかを表す。また、[化3]において、また、R4は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし6のアルキル基、アリル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、ハロゲン化アルキル基のいずれかを表す。Xはベンゼン環のいずれかの位置に結合した水素、ハロゲン、アルキル基、アロコキシル基のいずれかを表す。) 一般に、フェノール類のオルト位酸化反応において採択される方法としては、セレン酸化物による直接酸化方法、過酸化ベンゾイルによる酸化、空気酸化、2−Iodoxy benzoic acid(以下、「IBX」と言います。)による酸化等の方法を例示することができる。 なお、本発明で使用する酸化剤である上記IBXは、2−ヨード安息香酸から所定の条件にて、簡易に製造することができる。以下に反応式を示す。 IBXによる酸化後の生成したオルトキノンはキノンメチドと平衡関係にあり、この酸化反応のあと、放置することによって、カルボン酸とキノンメチドとの間でラクトン化反応が進行し、カルノソールが1ポットで生成する。反応時間と温度は実施例に記載したものに特に制限されるものではない。 本発明では、酸化剤として、IBXを使用し、さらに生成したオルトキノンとキノンメチドの平衡混合物を放置することによって、キノンメチドからのラクトン化反応を進行させ、ピシフェリン酸からカルノソールを直接製造することができる。以下に反応式を示す。 このように本発明の製造方法によればカルノソール及びその誘導体のローズマリーの抗酸化活性物質を簡易かつ容易にしかも大量に製造することができる。更にこれらの抗酸化活性物質を原料としてイソロスマノール、ロスマノール等の有用な化合物を製造することができる。 以下、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。 <ピシフェリン酸の分離>サワラの葉(東京都府中市晴見町東京農工大学農学部森林から採取)を採取し、乾燥させることなくそのまま出発原料とした。上記サワラの生葉450gを秤量し、メタノール約1.6L中で約65℃にて、24時間還流した。次に、上記還流操作により得られたメタノール抽出液を減圧濃縮した後、酢酸エチルと水により液/液による抽出操作を行った。さらに、上記抽出操作後、酢酸エチル層を濃縮し、その濃縮物をシリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル(体積比3:1)を用いて、カラムクロマトグラフィーを行った。ピシフェリン酸を含む画分を濃縮後、再度同様にカラムクロマトグラフィーを行い、得られたピシフェリン酸を含む画分をヘキサン/酢酸エチル(体積比3:1)を用いて結晶化させ、目的化合物であるピシフェリン酸2.0gを得た。 上記生成したピシフェリン酸の融点及び1H−NMR、13C−NMRを測定した。なお、融点測定器は、Laboratory Device社製MEL−TEMPを使用し、補正なし条件下で測定した。1H−NMRおよび13C−NMRの測定は、日本電子社製JEOL alpha−600(1H:600MHz,13C:150.8MHz)スペクトロメーターを使用し。重クロロホルム中テトラメチルシランを標準として測定した。 ピシフェリン酸(pisiferic acid): white crystals;m.p.:174−180℃;1H−NMR(600MHz,CDCl3)δ:6.89(1H,s),6.67(1H,s),3.10(1H,sept.,J=6.6Hz),2.89(1H,dd,J=16.2,6.0Hz),2.82−2.76(2H,m),2.46(1H,dddd,J=13.1,12.0,11.0,5.9Hz),1.94(1H,m),1.87(1H,ddd,J=11.0,4.4,2.8Hz),1.60(1H,ddd,J=13.7,3.4,3.1Hz),1.49(1H,dd,J=13.2,1.8Hz),1.45(1H,d,J=12.6Hz),1.24(2H,m),1.22(3H,d,J=6.6Hz),1.21(3H,d,J=6.6Hz),0.96(3H,s),0.82(3H,s);13C−NMR(150MHz,CDCl3)δ:181.2,150.6,138.2,133.5,129.2,127.4,112.3,52.2,47.5,41.7,36.7,34.0,32.1,29.3,26.8,22.6,22.3,20.3,20.1,18.6. <2−iodxybenzoic acid (IBX)の製造> 過硫酸カリウム塩(デュポン社商品名:Oxone)(37.2g,0.06mol)を水(200mL)に溶解し、2−iodobenzoic acid(5.0g,0.02mmol)を加え、90℃で2時間攪拌した。反応液を24時間氷冷し、結晶を吸引濾過し、水(6×100mL)とacetone(2×100ml)で洗浄した。結晶個体を室温で減圧下乾燥させIBX(3.4g,0.01mmol)を収率61%で得た。 IBX;white powder;m.p.:232−233℃;1H−NMR(600MHz,d6−DMSO)δ:8.15(1H,d,J=7.8Hz),8.04(1H,d,J=7.2Hz),8.00(1H,t,J=7.9Hz),7.85(1H,t,J=7.8Hz);13C−NMR(150MHz,d6−DMSO)δ;167.49,146.55,133.38,132.95,131.43,130.08,124.99 <カルノソールの合成>ピシフェリン酸(2.0g,6.32mmol)をCHCl3/MeOH(4:1)(30mL)に溶解し、IBX(2.1g,7.58mmol)を加え、アルゴン気流下室温で24時間攪拌した。TLCにて酸化反応進行を確認後、反応液にNaBH4(240mg,6.32mmol)を加えアルゴン気流下室温で0.5時間攪拌した。その後1M HClを加え反応を停止させ、Hexaneで液−液抽出した後、有機層をbrineで洗浄した。その後MgSO4で乾燥し、濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:EtOAc=10:1)で精製し、カルノソール(1.2g,3.6mmol)を57%の収率で得た。 カルノソール(Carnosol):yellow powder;m.p.:212−213℃;1H−NMR(600MHz,CDCl3)δ:6.64(1H,s),5.76(1H,s),5.37(1H,dd,J=3.6Hz,1.4Hz),5.31(1H,s),3.09(1H,sept,J=6.0Hz),2.91(1H,d,J=12Hz),2.43,2.40,2.38(1H,td,J=4.2,14Hz),2.23−2.19(1H,m),2.02−1.93(1H,m),1.87−1.85(1H,m),1.73(1H,dd,J=11,5.8Hz),1.32−1.26(1H,m),1.23(3H,d,J=6.0Hz),1.22(3H,d,J=6.0Hz),0.90(3H,s),0.86(3H,s);13C−NMR(150MHz,CDCl3):175.91,141.78,141.08,132.83,132.08,121.58,112.27,77.88,48.39,45.43,40.97,34.49,31.67,29.71,29.14,27.27,22.49,22.44,19.68,18.86. 以上の実施例から、サワラから高い収量でピリフェリン酸(Pisiferic acid)を分離・精製し、これをオルト位酸化することにより、ローズマリーの主要抗酸化活性物質の1つであるカルノソール(Carnosol)を効率的に製造する事ができることが理解される。 上記実施例は、近年、アルツハイマー病や様々な生活習慣病の予防効果があることで注目されているローズマリーの主用抗酸化活性物質を、木材資源として大量植林されているサワラの葉から供給する事を可能にしたものであり、その技術的意義は極めて大きい。 <抗菌活性の測定>合成したローズマリーの主要抗酸化活性物質を用いて、抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌活性および抗アクネ菌活性を測定した結果については[特許文献6]に述べた。 本発明のローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法により得られた主要抗酸化活性物質は、顕著な抗菌活性を有しており、これらの結果は、合成したローズマリーの主要抗酸化活性物質がニキビ治療薬として有用である可能性を示している。 本発明に述べたローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法は、木材資源として大量に植林されているサワラを原料とした抗酸化活性物質の製造方法であるので、林業及び環境技術分野の発展に貢献することができる。さらに、本発明のカルノシン酸の製造方法は、医薬及び医療技術分野の技術革新に大きく貢献することができる。 サワラ属樹種から抽出される、 下記一般式[化1]で表されるピシフェリン酸またはその誘導体と、 (上記一般式[化3]において、R1は、COO R3、ヒドロキシメチル基、アルデヒド基のいずれかであり、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし6のアルキル基を表す。)下記一般式[化2]ないし一般式[化3]で表されるいずれかの酸化剤、 (上記一般式中[化2]においてXはベンゼン環のいずれかの位置に結合した水素、ハロゲン、アルキル基、アロコキシル基のいずれかを表す。)[化3]において、R4は水素原子または炭素数1ないし6のアルキル基、アリル基、フェニル基のいずれかを表す。Xはベンゼン環のいずれかの位置に結合した水素、ハロゲン、アルキル基、アロコキシル基のいずれかを表す。)を反応させ、酸化生成物を分離することなく室温で放置してラクトン化を反応させ、下記一般式[化4]で表されるローズマリーの抗酸化活性物質、カルノソールを1ポットで効率的に合成する製造方法。 前記サワラ属樹は、サワラであることを特徴とする請求項1に記載のローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法。 前記酸化剤が、一般式[化2]である2−ヨードキシ安息香酸およびベンゼン環に置換基を有する関連化合物を含むフェノールの酸化剤であることを特徴とする請求項1に記載のローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法。 前記酸化剤が、一般式[化3]で表される2−ヨードキシ安息香酸トリアシルエステル誘導体であることを特徴とする請求項1に記載のローズマリーの抗酸化活性物質の製造方法。 請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の製造方法により、製造したローズマリーの抗酸化活性物質。 【課題】サワラ等はじめとする樹木成分を原料としてローズマリー、セージ等シソ科香草の主要な抗酸化活性物質の1つであるカルノソール及びそれらの誘導体を効率的に製造する。【解決手段】サワラ等の植物成分であるピシフェリン酸を原料として、2−ヨードキシ安息香酸(IBXと言う)による酸化した後、反応生成物を分離することなく室温で放置することによって、生成物分子内のカルボン酸とキノンメチドとの間のラクトン化反応等を進行させ、ローズマリーの抗酸化活性物質、カルノソール及びそれらの誘導体を、ピシフェリン酸から直接、1ポットで効率的に製造する。【選択図】なし20110216A1633000303 本発明では、酸化剤として、IBXを使用し、さらに生成したオルトキノンとキノンメチドの平衡混合物を放置することによって、キノンメチドからのラクトン化反応を進行させ、ピシフェリン酸からカルノソールを直接製造することができる。また、ピシフェリン酸の酸化物後ラクトン化させる際に、炭酸銀、酸化銀などの金属塩またはピリジニウムp−トルエンスルホナート(PPTS)、塩化亜鉛などの酸を加え反応を促進させることができる。以下に反応式を示す。 A1633000383 <カルノソールの合成>ピシフェリン酸(2.0g,6.32mmol)をCHCl3/MeOH(4:1)(30mL)に溶解し、IBX(2.1g,7.58mmol)を加え、アルゴン気流下室温で1時間攪拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)でピシフェリン酸がなくなっていることを確認した後、炭酸銀(1.75g,6.32mmol)を加え、更に16時間攪拌した。次に、NaBH4(240mg,6.32mmol)を加え室温で0.5時間攪拌した後、1M HClを加え反応を停止させた。混合物が酸性になったことを確認した後、クロロホルムで液−液抽出し、有機層をbrineで洗浄した後、抽出液をMgSO4で乾燥し、濃縮した。濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:EtOAc=10:1)で精製し、カルノソール(1.3g,3.9mmol)を62%の収率で得た。