生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_治療手段
出願番号:2010233468
年次:2011
IPC分類:A61K 31/4172,A61P 27/02,A61L 27/00,A61P 43/00,A61K 47/38


特許情報キャッシュ

マーク・エー・バビザイェフ JP 2011037892 公開特許公報(A) 20110224 2010233468 20101018 治療手段 マーク・エー・バビザイェフ 505115050 廣田 浩一 100107515 マーク・エー・バビザイェフ US 60/414,357 20020930 A61K 31/4172 20060101AFI20110128BHJP A61P 27/02 20060101ALI20110128BHJP A61L 27/00 20060101ALI20110128BHJP A61P 43/00 20060101ALI20110128BHJP A61K 47/38 20060101ALI20110128BHJP JPA61K31/4172A61P27/02A61L27/00 DA61P43/00 123A61K47/38 1 2004539362 20030929 OL 17 4C076 4C081 4C086 4C076AA94 4C076BB24 4C076CC10 4C076DD22 4C076DD25 4C076DD37 4C076DD38 4C076EE10 4C076EE12 4C076EE32 4C076FF31 4C081AB23 4C081BB06 4C081CD02 4C081CE02 4C081DA12 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC38 4C086MA02 4C086MA05 4C086NA12 4C086NA15 4C086ZA33 本願は、2002年9月30日に出願された米国仮出願第60/414,357号の優先権を主張するものである。 また、本発明は、眼疾患の局所的治療方法、及び眼疾患用組成物に関する。本発明は、長期間にわたって前記組成物を眼に投与するための手段に関連する。 活性酸素(フリーラジカル)や活性酸素によって生じた過酸化進行は、老化に伴い、ヒト細胞組織の構造的及び機能的低下の原因の1つであると考えられている。網膜、硝子体及び水晶体、虹彩毛様体及び小柱網、角膜及び結膜組織などの眼組織を含む身体の種々の組織及び細胞内部及び細胞周囲に、また、前眼房の眼房水を含む体液において、また、血漿や血液において、器官、組織、及び細胞を補助するために、天然抗酸化分子(フリーラジカル・スカベンジャー)を高濃度に維持すること、また、前記老化の進行や関連する(眼の)病状を防止、または最小限に抑えることは、長寿のために重要である。例えば、白内障のいくつかの形態では、特に網膜障害を伴うものにおいては、水晶体の曇りは、脂質の酸化に由来する有毒性生成物の硝子体を通じる網膜から水晶体までの拡散によるものであると考えられている。Babizhayevらによる「Biophysica Acta,1004」(1989年)124−133(非特許文献1)、及び本明細書中に記載された引例を参照。 L−カルノシン(β−アラニル−L−ヒスチジン)及びその誘導体(アセチルカルノシン、カルシニン、アンセリン、アセチルアンセリン、バレニンなど)は、最も重要、かつ、効能のある天然抗酸化剤の1つであって、細胞脂肪相及び生物膜組織において、また、脂肪を保護する水性環境、並びに、蛋白質(酵素を含む)DNA及びその他の必須高分子などの水溶性分子においても、反応性酸素種や過酸化脂質により仲介された酸化的損傷に対して抗酸化剤としての機能を果たすものであることは公知である。Babizhayevらによる、「Biochem.J.304」(1994年),509〜516頁(非特許文献2)、及び本明細書中に記載された引例;Babizhayevらによる、「Biochemistry(Moscow)63」(1998年),523〜528頁(非特許文献3);及びBabizhayevらによる、「Clinica Chimica Acta 254」(1996年)1〜21頁(非特許文献4)を参照。 白内障の予防及び治療において、L−カルノシンの目覚しい効果が実証され、これまで利用されてきた。Babizhayevによる、「Biochemica and Biophysica Acta」,1004(1989年)363〜371頁(非特許文献5);及びBoldyrevらによる「Biochem.Intern.15」,1105〜1113頁(非特許文献6)を参照。 しかし、眼に局所的に投与した場合でも、外生的カルノシンは組織内に蓄積せず、尿とともに排泄されるか、または、血漿、前眼房の眼房水、肝臓、腎臓、及びその他の組織に存在しているが、筋肉においては存在しない酵素カルノシナーゼにより好ましく破壊される。Jacksonらによる「Clin.Chim.Acta 196」,(1991年)193〜206頁(非特許文献7);及びLenneyらによる「Biochem.J.228」(1985年)653〜660頁(非特許文献8);及び、水晶体においては、Boldyrevらによる「カルノシンの抗酸化特性、ジペプチドを含有するヒスチジン」,「Biochem Int」(1987年)15:1105〜1113頁(非特許文献9);及びJayらによる「ウサギの水晶体におけるヒスチジル誘導体及びヒトの白内障におけるヒスチジル誘導体の減退」「Meeting Abstr J Physiol Lond」(1990年)420:155頁(非特許文献10)を参照。 PCT/EP94/03340では、N−アセチルカルノシンはL−カルノシンのプロドラッグであることを開示しており、白内障の予防及び治療に役立つN−アセチルカルノシンを含有する局所的療法を提供している。Babizhayevらによる「抗酸化剤としての眼投与において、N−アセチルカルノシンは、L−カルノシンのプロドラッグである」「Clin Chim Acta」(1996年)254:1〜21頁(非特許文献11);Babizhayevらによる、「眼科使用の抗酸化剤としてのジペプチドN−アセチルカルノシン含有天然ヒスチジン」「Biochemistry (Moscow)(2000),65/5:588〜598頁(非特許文献12);Babizhayevらによる「白内障の治療におけるN−アセチルカルノシンの有効性」「Drugs R&D」(2002年),3(2):87〜103頁(非特許文献13);Babizhayavらによる「N−アセチルカルノシン−ヒト白内障の治療において効力のある眼薬としてジペプチドを含む天然ヒスチジン」Peptides(2001年)22(6):979〜994頁(非特許文献14);及びBabizhayavらによる「ヒトの老化に関連する白内障の薬物療法について有効な薬剤としてのペプチド模倣NACA含有イミダゾール」J Anti−Aging Medicine(2000年)3/1:43〜62頁(非特許文献15)を参照。 米国特許第4,387,232号では、大脳周辺に対して強力な制御作用を有するとされるN−アセチル−βアラニル−L−ヒスチジンを作製する方法が開示されている。この方法は、ヒスチジンと、3−アセチルアミノプロピオン酸塩素、3−アセチルアミノプロピオン酸の第三アミン塩類及び硫酸の混合無水物などの3−アシルアミノプロピオン酸反応性誘導体とを反応する。 米国特許第5、866,537号には、カルノシンと、分岐アミノ酸のロイシン、イソロイシン、及びバリンとを組み合わせで含有した経口組成物が開示されている。この組成物は、カルノシン単体に比べて長期に及ぶ抗酸化作用を生じさせるとされる。カルノシンの代わりに、ホモカルノシン、アセチルカルノシン、アンセリン、アセチルアンセリン、及びオフィジン、及び/またはそれらの生物学的に許容される無機及び有機塩類、及び/またはアシル誘導体などのカルノシン誘導体を用いることができる。 カルボキシメチルセルロースナトリウム塩は、主にその増粘特性のために経口用及び局所用薬剤の処方に幅広く利用されている。粘性の水溶液は、局所的な投与、または、経口的及び非経口的投与のいずれかに使用される粉剤を懸濁させるために用いられる。Hussainらによる「ナルブフィンの遅延放出のための注入可能懸濁液」「Drug Dev Ind Pharm」(1991年),17:67〜76頁(非特許文献16)を参照。カルボキシメチルセルロースナトリウムは、錠剤粘結剤や錠剤分解物質としても使用することができる。Khan KAらによる「錠剤分解物質としてのカルボキシメチルセルロースナトリウムの異なる等級の粘度についての評価」「Pharma Acta Helv」(1975),50:99〜102頁(非特許文献17)参照。また、乳濁液を安定させるために用いることができる。Ozaらによる、「マイクロクリスタリンセルロース安定化乳濁液」「J Disper SciTechnol」(1986),7(5):543〜561頁(非特許文献18)参照。練物のベースとして使用し得るゲルを生成するのに、中級の粘度のものが高濃度、通常3〜6%、で使用される。カルボキシメチルセルロースナトリウム塩は、創傷浸出液または表皮通過水分及び汗を吸収するために用いられる場合のノンテープ方式の瘻造設術、創傷ケア、及び皮膚用貼剤の主成分の1つでもある。カルボキシメチルセルロースナトリウム塩は、化粧品、洗面用化粧品、失禁用品、個人的衛星用品、及び食品においても使用されている。Mombelletらによる「カルボキシメチルセルロースナトリウム練り歯磨き」Mfg Chem 1088;59(11):47,49,および52(非特許文献19)参照。 米国特許第6,194,457号は、点眼液組成物においてカルボキシメチルセルロース・ナトリウムなどの潤滑剤の使用について開示しており、その点眼液組成物は、還元グルタチオン、ビタミンA及びビタミンE、さらには、緩衝剤として硫酸亜鉛、ホウ酸、及びカリウムの1種以上を含んでいる。前記組成物は、また、ベンジルアルコールなどの防腐薬を含有する。前記組成物は、白内障の予防や治療用だけでなく眼過敏症、及び/または乾燥を緩和させるための眼治療の方法においても用いられる。 N−アセチルカルノシンそれ自体は、非常に弱い抗酸化剤として作用することができ、ビタミンAとその誘導体は、超酸化物の生成を介して酸化反応促進作用を持つことができる。Murataらによる「超酸化物生成を介したビタミンAとその誘導体による酸化的DNA損傷」「J Biol Chem」(2000年);275:2003〜2008頁(非特許文献20)参照。その他に、分岐炭化水素骨格を伴うビタミンE分子は、アミノ酸誘導体生成物の脱アセチル化を完全に阻止する。Teixeiraらによる「寒冷抹消神経損傷予防用抗酸化剤の使用」Mil Med(2002年);167:753〜755頁(非特許文献21)参照。また、還元グルタチオンは、眼科用組成物に適用される場合、後嚢下白内障の形成を促進する。Sharmaらによる「老人性白内障におけるグルタチオン局所的療法.Cataract−III」Indian J Ophthalmol(1989年);37(3):121〜126頁(非特許文献22)参照。国際出願第PCT/EP94/03340号明細書米国特許第4387232号明細書米国特許第5866537号明細書米国特許第6194457号明細書Babizhayev,他,「Biophysica Acta,1004」,1989年,p.124−133Babizhayev,他,「Biochem.J.304」,1994年,p.509−516Babizhayev,他,「Biochemistry(Moscow)63」,1998年,p.523−528Babizhayev,他,「Clinica Chimica Acta 254」,1996年,p.1−21Babizhayev,他,「Biochemica and Biophysica Acta」,1004,1989年,p.363−371Boldyrev,他,「Biochem.Intern.15」,p.1105−1113Jackson,他,「Clin.Chim.Acta 196」,1991年,p.193−206Lenney,他,「Biochem.J.228」,1985年,p.653−660Boldyrev,他,「カルノシンの抗酸化特性、ジペプチドを含有するヒスチジン(The antioxidative properties of carnosine,a natural histidine containing dipeptide)」,Biochem Int,1987年,15,p.1105−1113Jay,他,「ウサギの水晶体におけるヒスチジル誘導体及びヒトの白内障におけるヒスチジル誘導体の減退(Histidyl derivatives in rabbit lens and their diminution in human contact)」,Meeting Abstr J Physiol Lond,1990年,420,p.155Babizhayev,他,「抗酸化剤としての眼投与において、N−アセチルカルノシンは、L−カルノシンのプロドラッグである(N−Acetylcarnosine is a prodrug of L−carnosine in ophthalmic application as antioxidant)」,Clin Chim Acta,1996年,254,p.1−21Babizhayev,他,「眼科使用の抗酸化剤としてのジペプチドN−アセチルカルノシン含有天然ヒスチジン(The natural histidine−contining dipeptide N−acetylcarnosine as an antioxidant for ophthalmic use)」Biochemistry (Moscow),2000年,65/5,p.588−598頁Babizhayev,他,「白内障の治療におけるN−アセチルカルノシンの有効性(Efficacy of N−acetylcarnosine in the treatment of cataracts)」,Drugs R&D,2002年,3(2),p.87−103Babizhayav,他,「N−アセチルカルノシン−ヒト白内障の治療において効力のある眼薬としてジペプチドを含む天然ヒスチジン(N−acetylcarnosine,a natural histidine−containing dipeptide,as a potent ophthalmic drug in treatment of human cataracts)」,Peptides,2001年,22(6),p.979−994Babizhayav,他,「ヒトの老化に関連する白内障の薬物療法について有効な薬剤としてのペプチド模倣NACA含有イミダゾール(Imidazole−containing peptidomimetic NACA as a potent drug for the medicinal treatment of age−related cataract in humans)」,J Anti−Aging Medicine,2000年,3/1,p.43−62Hussain,他,「ナルブフィンの遅延放出のための注入可能懸濁液(Injectable suspensions for prolonged release nalbuphine)」,Drug Dev Ind Pharm,1991年,17,p.67−76Khan KA,他,「錠剤分解物質としてのカルボキシメチルセルロースナトリウムの異なる等級の粘度についての評価(Evaluation of different viscosity grades of sodium carboxymethylcellulose as tablet disintegrants)」,Pharma Acta Helv,1975年,50,p.99−102Oza,他,「マイクロクリスタリンセルロース安定化乳濁液(Microcrystalline cellulose stabilized emulsion)」,J Disper SciTechnol,1986年,7(5),p.543−561Mombellet,他,「カルボキシメチルセルロースナトリウム練り歯磨き(Sodium carboxymethylcellulose toothpaste)」,Mfg Chem,1088,59(11),p.47,49,52Murata,他,「超酸化物生成を介したビタミンAとその誘導体による酸化的DNA損傷(Oxidative DNA damage by vitamin A and its derivative via superoxide generation)」,J Biol Chem,2000年,275,p.2003−2008Teixeira,他,「寒冷抹消神経損傷予防用抗酸化剤の使用(Use of antioxidants for the prophylaxis of cold−induced peripheralnerve injury)」,Mil Med,2002年,167,p.753−755Sharma,他,「老人性白内障におけるグルタチオン局所的療法(Topical glutathinoe therapy in senile cataracts).Cataract−III」,Indian J Ophthalmol,1989年,37(3),p.121−126 本発明の目的は、安全であって、かつ眼房水内でL−カルノシンに完全に変換させるN−アセチルカルノシンを含有する眼科用組成物を提供することである。 本発明のもう1つの目的は、眼房水内でN−アセチルカルノシン/L−カルノシンの生体利用効率を著しく高めることができる眼科用組成物を提供することである。 本発明の発明者は、思いがけなく、眼の結膜嚢内にN−アセチルカルノシン化合物を局所的に投与するにあたり、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース化合物を存在させることで、N−アセチルカルノシンのL−カルノシンへの生体内変換または新陳代謝が高められることを発見した。したがって、本発明の一実施態様は、眼疾患の治療を必要とする哺乳類に水性眼科用組成物を局所的に投与する工程を含み、該水性眼科用組成物が、N−アセチルカルノシン、N−アセチルカルノシン誘導体、またはN−アセチルカルノシンの薬理的に許容される塩類と、N−アセチルカルノシン、及び/またはL−カルノシン、またはL−カルノシン誘導体の眼内吸収を高めるのに有効な量のセルロース化合物、または、その薬理的に許容される塩類とを組み合わせて含有することを特徴とする眼疾患の予防または治療方法に関する。 本発明の別の実施態様は、N−アセチルカルノシン、N−アセチルカルノシン誘導体、またはN−アセチルカルノシンの薬理的に許容される塩類と、N−アセチルカルノシン及び/またはL−カルノシン、またはL−カルノシン誘導体の眼内吸収を高めるのに有効な量のセルロース化合物、または、セルロース化合物の薬理的に許容される塩類とを組み合わせて含有する水性眼科用組成物に関連する。 本発明のさらに別の実施態様は、患者の眼に眼用組成物を局所的に投与するための手段に関連し、前記手段は、N−アセチルカルノシン、N−アセチルカルノシン誘導体、またはN−アセチルカルノシンの薬理的に許容される塩類を含む親水性のヒドロゲル・コンタクト・レンズ、または高分子接眼鏡挿入物を含む。 本発明の、また別の実施態様は、緑内障の治療方法に関連し、N−アセチルカルノシンまたはL−カルノシン及び/またはタウリン、またはそれらの誘導体、またはそれらの薬理的に許容される塩類と、β−及び/またはα−アドレナリン受容遮断作用を有する有効成分、及び/またはプロスタグランジン誘導体、及び前記N−アセチルカルノシン、またはL−カルノシン及び/またはタウリン、またはそれらの誘導体の眼内吸収を高めるのに有効な量のセルロース化合物、または薬理的に許容されるその塩類とを組み合わせて含有する水性眼科用組成物を前記治療を必要とする哺乳類に局所的に投与する方法である。 本発明の方法により治療され得る哺乳類は、ヒト、イヌ、ネコ、ウサギ、及びウマを含む。 「眼疾患」は、白内障、開放隅角原発緑内障、角膜疾患、老視、コンピュータ視覚症候群、眼精疲労、眼炎症、視覚障害(眼のかすみ)、乾性眼症候群、網膜疾患、硝子体混濁及び損傷、及び糖尿病及びその他全身性障害の合併症を包含する眼障害を意味する。 N−アセチルカルノシンは、当業者に公知の従来の方法を用いてカルノシンのアセチル化により作製することができる。したがって、例えば、L−カルノシンは、2N−NaOH中において無水酢酸でアセチル化し、SK−1Bなどのイオン交換樹脂を用いて処理することができる。1Nアンモニアで溶出後、該溶出液を濃縮する。酢酸での処理後、イソプロピルアルコールで処理し、結晶を得る。水性イソプロピルアルコール溶液から再結晶化させることにより純N−アセチルカルノシン結晶がもたらされる。 もう1つの方法として、β−アラニンを公知の方法、例えば、アルカリ媒体に無水酢酸を用いてアセチル化させてN−アセチルカルノシン作成することができる。その結果生じるN−アセチル−β−アラニンを、「ペプチドの合成方法」(1984年)M.Bodansky(本願明細書に参考として取り込まれる)に記載された方法によりペンタフルオロフェニルで誘導させてN−アセチル−β−アラニンペンタフルオロフェニルエステルを生成してもよい。その後の工程において、前記エステルをヒスチジンメチルエステルと反応させてジペプチドを生成し、その後、前記エステルの加水分解により最終生成物が得られる。 「N−アセチルカルノシン誘導体」は、カルシニン(β−アラニルヒスタミン)、アンセリン(β−アラニル−1−メチルーL−ヒスチジン)、ホモカルノシン(β−アミノ−ブチリル−L−ヒスチジン)、オフィジン(バレニン(β−アラニル−3−メチル−L−ヒスチジン))及びそれらのN−アセチル化化合物及びアセチル誘導体化合物を意味する。これらの化合物は、当業者に公知の方法により作製可能である。 N−アセチルカルノシンの薬理的に許容される塩類及びその誘導体は、それらの薬理的に相溶の無機及び有機塩類でよい。当業者であれば、公知の方法を用いてそのような塩類を作製することができる。 前記N−アセチルカルノシン、前記N−アセチルカルノシン誘導体、または前記N−アセチルカルノシンの薬理的に許容される塩類は、眼への投与に使用される場合、極めて純粋なものでなければならない。より詳細には、前記N−アセチルカルノシン、その誘導体、または薬理的に許容される塩類は、10ppm未満の重金属を含有している必要がある。N−アセチルカルノシンのクロマトグラフ精製は、シリカゲルのカラムを用いて行うことができる。 前記水性眼科組成物の全重量に対するN−アセチルカルノシン、N−アセチルカルノシン誘導体、またはN−アセチルカルノシンの薬理的に許容される塩類の含有量は、0.5〜3.0重量%未満とし、より好ましくは、0.5〜2.0重量%としてよい。 前記水性眼科組成物は、セルロース化合物またはセルロース化合物の薬理的に許容される塩も含んでいる。「セルロース化合物」は、N−アセチルカルノシン、N−アセチルカルノシン誘導体、またはN−アセチルカルノシンの薬理的に許容される塩類、及び/またはカルノシンの眼内吸収を高めることができるすべての多糖類を意味する。前記セルロース化合物は、好ましくはカルボキシメチルセルロース、カルボキシポリメチレン、及びポリビニルピロリドンから選択される1種であり、カルボキシメチルセルロースが最も好ましい。 前記セルロースの薬理的に許容される塩類としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びセルロースグリコール酸ナトリウムが挙げられる。前記米国特許では、カルボキシメチルセルロースナトリウムをセルロースのポリカルボキシメチルエーテルのナトリウム塩として記載している。標準的分子量は、90,000〜700,000である。 本発明に用いる好適なセルロース化合物は、多様な製造業者により様々な形態で市販されている。ベンゼンが含まれていないカルボキシポリメチレンは、登録商標「CARBOMER 980」の名称で市販されている。同様に、ポリビニルピロリドンは、登録商標「KOLLIDON K17」の名称で市販されている。 前記水性眼科用組成物は、眼に局所的に投与される場合、N−アセチルカルノシン、及び/またはその誘導体の眼内吸収を高めるのに有効な量で前記セルロース化合物、またはその薬理的に許容される塩類を含んでいる必要がある。「眼内吸収」の語は、哺乳類の前眼房の眼房水における吸収を意味する。N−アセチルカルノシンは、角膜を通じてその眼房水内へと通過する間に、L−カルノシンへと変換される。N−アセチルカルノシンの誘導体(N−アセチルカルシニンを除く)は、徐々に同様な新陳代謝を受けると考えられる。そのため、N−アセチル−アンセリンは、角膜を通じてその眼房水内へと通過する間に、アンセリンに変換することが可能である。 前記セルロース化合物の例示的な量としては、前記組成物の全重量に対し0.1〜0.5重量%であり、好ましくは0.2〜0.4重量%である。 本発明の発明者は、仮説により制限するつもりはないが、現時点において、N−アセチルカルノシンが角膜を通じて前記哺乳類の前眼房の眼房水内へと通過している間に代謝されるか、そうでなければカルノシンに変換されると考える。次に、L−カルノシンが、カルノシナーゼ作用を伴わずに水晶体へと入り、その発生時に酸化的ストレスの要素を有する白内障や他の眼障害を覆す及び/または防止する純粋の抗酸化治療薬/抗白内障治療薬としての機能を果たすと考えられる。前記セルロース化合物は、この代謝を高めると考えられる。そのため、本発明の処方、すなわち、前記N−アセチルカルノシンとセルロース化合物の組み合わせは、時間とともにその眼房水内にL−カルノシンを効果的に開放させる役割を果たす。 本発明の好ましい一態様では、前記水性眼化用組成物は、例えば、3−メチル−5−[2−(3−t−ブチルアミノ−2−ハイドロキシプロポキシ−フェノキシメチル)]−1,2,4−オキサジアゾール塩酸塩などのβ−及びα−アドレナリン受容遮断作用を有する化合物も包含している。該化合物は、(±)−1−(t−ブチルアミノ)−3−[2−(3−メチル−1,2,4−オキサジアゾ−ル−5−メトキシ)フェノキシ]−2−プロパノール塩酸塩、または、(±)−5−[2−(3−t−ブチルアミノ−2−ハイドロキシプロポキシ)フェノキシメチル]−3−メチル−1,2,4−オキサジアゾール塩酸塩としても知られており、以下の化学式で表される。 前記α及びβ−アドレナリン受容遮断作用を持つ化合物を含有させることは、緑内障の治療において眼圧を減じ、眼房水の房水流出率を刺激して前記組成物の効用を高めると考えられる。 本発明の眼化用組成物は、眼疾患、特に開放隅角原発緑内障(POAG)や高眼圧症(OH)を治療するために、N−アセチル−Arg−Gly−Asp−Serペプチド(N−アセチル−RGDSペプチド)などのArg−Gly−Aspを含有するペプチドも含んでもよい。 本発明の発明者は、仮説により制限するつもりはないが、現時点において、RGDを含有するペプチド及び/またはそれらの薬理的に許容される塩類は、開放隅角原発緑内障(POAG)や高眼圧症(OH)の治療的処置や外科治療に有効であると考える。臨床研究において、1日に2回、0.1%のN−アセチル−RGDSを局所的に投与して眼圧(IOP)が効果的に減少しており、開放隅角原発緑内障(POAG)や高眼圧症(OH)を患う患者に対して、よく耐え得るものであった。これは、眼圧(IOP)を減少させる場合に1日に2回0.5%のチモロールを投与するよりもさらに効果的であった。トノグラフィで検査されたように、房水流出率に関する0.1%のN−アセチル−RGDSの効果は、26〜33%と顕著な増加を示した。アセチル−RGDSの洗浄作用は、小柱の房水流出率の増加を伴い、それは開放隅角原発緑内障(POAG)や高眼圧症(OH)を患う患者において以前見られた他の薬剤(ピロカルピン)による小柱の房水流出率とは異なるものである。N−アセチル−RGDSによる眼圧(IOP)の低下の臨床的重要性とメカニズムは、小柱網内の細胞外基質蛋白質やプラーク物質に関するN−アセチル−RGDSの洗浄効果と関連しており、開放隅角原発緑内障(POAG)や高眼圧症(OH)を患う患者の眼において、その耐流出率を減少させるものである。また、N−アセチル−RGDSは、続発性白内障及び増殖性硝子体網膜症の治療にも適すると考えられる。 前記水性眼科用組成物の全重量に対し、N−アセチルRGDSペプチド、または、その塩類は、0.05〜0.5重量%未満含有させてよく、好ましくは0.05〜0.25重量%、さらに好ましくは0.1重量%である。 また、本発明の水性眼科用組成物は、N−アセチルカルノシンが角膜を通じて眼房水内へと通過する間に、N−アセチルカルノシンからカルノシンへの生体内変換を妨げない限り、従来の添加物を含むことができる。例えば、ビタミンAやビタミンEなどの抗酸化剤を前記眼科用組成物に添加し、抗酸化力を高めることができる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの潤滑剤も通常の使用量で前記眼科用組成物に含めることができる。前記エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアラートなどが挙げられる。これらのエステルは、「Polysorbate」の商標名称で市販されている。前記エステルは、前記組成物の全量に対して0.2重量%程度で好適に用いることができる。 N−アセチルカルノシンが角膜を通じて眼房水内へと通過する間に、N−アセチルカルノシンからカルノシンへの生体内変換を妨げない限り、通常点眼液に用いられる防腐薬を本発明の眼科用組成物に含有させることができる。好適な防腐薬としては、ベンジルアルコール、及びパラ−アミノ−安息香酸が挙げられる。 特に乾性眼症候群、及びコンタクトレンズ装用時の眼の状態を治療するために、本発明の組成物にラクトフェリン及び/またはアルブミンを含有させることができる。これらの成分は、通常、その成分が自然の涙液に存在している投薬量で用いられる。例えば、通常、ヒトのラクトフェリン投薬の一回分は、1.7±0.2mg/mlである。 過度の角膜水化作用(水腫)または眼刺激を防ぐのに有効な量のグリセリンも前記組成物に任意で含有させることができる。 前記組成物は、眼筋を弛緩させるのに有効な量のタウリン(2−アミノエスタンスルフィン酸)またはその誘導体及び/またはプロスタグランジンの炎症性効力を阻止するのに有効な量のL−カルノシンを含むことができる。 前記眼科用組成物は、好ましくはロイシン、イソロイシン、バリン、及びβ−アラニンから選択される少なくとも1種のカルノシナーゼ抑制剤も含むことができる。該カルノシナーゼ抑制剤を含める目的は、眼房水においてカルノシナーゼの加水分解を遅らせる、または安定化させるためである。 前記水性眼科用組成物のpHは、6.0〜6.8pHとする必要があり、好ましくは6.3〜6.8pHである。所望のpH値を維持するために、緩衝系を添加することができる。緩衝系としては、重炭酸ナトリウムまたはカリウムと、ホウ酸ナトリウムまたはカリウムとの組み合わせが挙げられる。 本発明の水性眼科用組成物は、眼疾患の予防または治療を目的として哺乳類の眼に局所的に投与することができる。したがって、前記組成物は、溶液、乳濁液、または粘性ゲルの形状とすることができる。 乾性眼症候群及び白内障の治療または予防として、前記水性眼科用組成物は、適度に粘性のある水溶液の形状であるのが好適である。好ましい処方として、以下の成分を好適に含む。N−アセチルカルノシン 1.0%カルボキシメチルセルロースナトリウム(潤滑剤) 0.3%グリセリン(潤滑剤) 1.0%緩衝剤:ホウ酸カリウム、重炭酸カリウム防腐薬:精製ベンジルアルコール滅菌水(6.3〜6.5pHの眼溶液) 本発明の眼疾患の予防及び治療の方法は、眼疾患の治療を必要とする哺乳類に水性眼科用組成物を局所的に投与する工程を含み、該水性眼科用組成物が、N−アセチルカルノシン、N−アセチルカルノシン誘導体、またはN−アセチルカルノシンの薬理的に許容される塩類と、眼房水内でN−アセチルカルノシン及び/またはL−カルノシン及び/またはL−カルノシン誘導体の眼内吸収を高めるのに有効な量のセルロース化合物とを組み合わせて含有する。 前記患者は、1日に1回〜4回片方の眼に1滴または2滴を、または医師から指示されたとおりに投与することができる。前記滴下の適切な投与については、患者は頭を後ろに傾けて上を見上げて滴下する。投与後は、瞬きをしてはならない、また60秒の間は眼を開けてはならない。2滴目を投与する場合は、前記手順を繰り返す。1回または2回でも瞬きをすれば、その溶液のほとんどが眼の外部に押し出される。患者が頚部に障害がある場合、または、上を向くのに不都合な場合は、横たわるか、または後ろに傾斜する椅子を使用してもよい。 前記眼科用組成物は、上述のとおり、1日に1回〜4回、直接投与することができる。もう1つの方法としては、前記活性成分は、N−アセチルカルノシン、N−アセチルカルノシン誘導体、またはN−アセチルカルノシンの薬理的に許容される塩類を含んでいる親水性のヒドロゲル・コンタクトレンズ、または眼高分子挿入物により長期にわたり継続して適用することができる。 本発明の別の利点は、結膜の微細血管や眼瞼粘膜組織を通じてN−アセチルカルノシン及び/またはカルノシンの体内吸収が高められる点である。これは、前記セルロース化合物により結膜嚢においてN−アセチルカルノシンの持続時間が長くなるためである。より詳細には、N−アセチルカルノシンは、カルボキシメチルセルロースとともに眼に局所的に投与される、30分以内で、血漿に現れる。血漿中のN−アセチルカルノシンの半壊は、薬物動態調査によれば、約150分以上である。N−アセチルカルノシンは、L−カルノシンに類似するカルノシナーゼの基質であるが、カルノシナーゼを伴う加水分解に極めて耐性を示す(加水分解されにくい)。したがって、一度血漿中にN−アセチルカルノシンが存在すると、カルノシナーゼの競合的飽和阻害物質として機能することができる。これは、老化防止療法として付随するL−カルノシンの経口投与時において、L−カルノシンが加水分解されるのを防止する上で非常に役立つ。 本発明の発明者は、N−アセチルカルノシンが化粧品、スキンケア、その他個人医療、及び保健衛生の用途としての有用性もあると考えている。例えば、N−アセチルカルノシン及びカルボキシメチルセルロースの鼻への投与に適応した処方設計により、N−アセチルカルノシンの生体内利用及び薬力薬理効果が高められると考えられる。 処方例 以下に示す処方は、例証的目的にのみ説明されており、いかなる方法においても本請求の範囲の厳密な構成の限定に用いられる必要はない。1. 眼疾患治療用の水性眼科用組成物 眼疾患治療の処方例を以下に示す。 処方1脱イオン水 970.0グラムグリセリン,1.0% 13.0グラムN−アセチルカルノシン,1.0% 10.0グラムカルボキシメチルセルロース,0.3% 3.0グラムベンジルアルコール,0.3% 3.0グラムホウ酸カリウム 7.9グラム*重炭酸カリウム 3.4グラム* 1,010.3グラム* または、6.3pH〜6.5pHに調整するために必要なもの。2. 眼疾患治療用の水性眼科用組成物 処方例1において、ベンジルアルコールをフェニルエチルアルコールに代えて用い、前記リン酸塩緩衝剤を対応するナトリウム緩衝剤に差し替えた以外は、処方例1と同様な方法により処方例2の組成物を作製した。 処方2脱イオン水 970.0グラムグリセリン,1.0% 13.0グラムN−アセチルカルノシン,1.0% 10.0グラムカルボキシメチルセルロース,0.3% 3.0グラムフェニルエチルアルコール,0.3% 3.0グラムホウ酸ナトリウム 7.9グラム*重炭酸ナトリウム 3.4グラム* 1,010.3グラム* または、6.3pH〜6.5pHに調整するために必要なもの。3. 眼疾患治療用の水性眼科用組成物 処方例1において、カルボキシメチルセルロースを「カルボマー980(Carbomer980)」に代えて用いた以外は処方例1と同様な方法により処方例3の組成物を作製した。 処方3脱イオン水 970.0グラムグリセリン,1.0% 13.0グラムN−アセチルカルノシン,1.0% 10.0グラムカルボマー980 2.0グラムベンジルアルコール,0.3% 3.0グラムホウ酸カリウム 7.9グラム*重炭酸カリウム 3.4グラム* 1,009.3グラム* または、6.3pH〜6.5pHに調整するために必要なもの。4. 緑内障治療用の水性眼科用組成物 眼疾患の治療、特に、緑内障の治療の処方例を以下に示す。 処方4脱イオン水 970.0グラムグリセリン,1.0% 13.0グラムN−アセチル−RGDS,0.1% 1.0グラムカルボキシメチルセルロース,0.3% 3.0グラムベンジルアルコール,0.3% 3.0グラムホウ酸カリウム 7.9グラム*重炭酸カリウム 3.4グラム* 1,001.3グラム* または、6.3pH〜6.5pHに調整するために必要なもの。5. CVS治療用の水性眼科用組成物 眼疾患の治療、特に、コンピュータ視覚症候群(CVS)の治療の処方例を以下に示す。 処方5脱イオン水 970.00グラムグリセリン,1.0% 13.00グラムN−アセチルカルノシン,1.0% 10.00グラムタウリン,4.0% 40.00グラムp−アミノ安息香酸,0.007% 0.07グラムカルボキシメチルセルロース,0.3% 3.00グラムベンジルアルコール,0.3% 3.00グラムホウ酸カリウム 7.90グラム*重炭酸カリウム 3.40グラム* 1,050.37グラム* または、6.3pH〜6.5pHに調整するために必要なもの。6. CVS治療用の水性眼科用組成物 処方例5において、N−アセチルカルノシンをL−カルノシンに差し替えて用いた以外は処方例5と同様な方法により処方例6の組成物を作製した。 処方6脱イオン水 970.00グラムグリセリン,1.0% 13.00グラムL−カルノシン,1.0% 10.00グラムタウリン,4.0% 40.00グラムp−アミノ安息香酸,0.007% 0.07グラムカルボキシメチルセルロース,0.3% 3.00グラムベンジルアルコール,0.3% 3.00グラムホウ酸カリウム 7.90グラム*重炭酸カリウム 3.40グラム* 1,050.37グラム* または、6.3pH〜6.5pHに調整するために必要なもの。 以下の実施例は一例に過ぎず、いかなる方法においても本請求の範囲に限定して用いられる必要はない。(実施例1)ウサギの眼における生体内変化 N−アセチルカルノシンを含まない水溶液賦形剤から構成される実験対照をウサギの左目に局所的に投与しながら、上記に示した処方例のいくつかを前記ウサギの右眼に局所的に投与した。投与30分後、前記ウサギの各眼から眼房水のサンプルを採取し、標準に対するN−アセチルカルノシンとカルノシンのそれぞれの濃度を分析した。1.1 実験及び分析の手順 実験手順は、Babizhayevらによる「N−アセチルカルノシンは、抗酸化剤として眼へ投与される場合、L−カルノシンのプロドラッグである」,Clinica Chimica Acta 254(1996年)1〜21頁に記載されているものとほぼ同様な方法で行った。 30匹の生後3〜4ヶ月、体重2〜3kgの灰色のチンチラ・ウサギ(オス、60眼)を用いた。動物実験は、「研究における動物の使用」に関するARVO決議のガイドラインに従った。ウサギの右眼切開30分前、試験用処方の2滴を点眼し、その1分後に、同じ右眼に同じ眼用水溶液を2滴点眼した。左眼には、その賦形剤となる対応する処方の水溶液を同様に点眼した。 外科的処置 4%の塩酸ジシクロミン(リドカインヒドロクロリド)水溶液の点眼液の点眼とともに前記眼科用溶液の点眼を行い(1分30秒〜2分の間隔で3回、1滴ずつ)、その25分後、前記ウサギの目の局部麻酔を行った。前記4%の塩酸ジシクロミン(リドカインヒドロクロリド)は、塩化ベンザルトニウム防腐薬を含む。眼の麻酔が効くと、眼瞼を拡張し、眼瞼ホルダーで固定し、下直筋の部位において眼球をピンセットで固定した。眼の切除切開は、こめかみ上位四部円において、角膜輪部から1.0〜2.0mmのところで角膜を横切って行った。切除前に前記試料を氷上で保持させたまま、インスリン注射器に接続された標準規格注射針(25ゲージ)でウサギの眼の前眼房から房水(0.1〜0.2ml)を吸引し、その直後にエタノール(0.2ml)を加えたエッペンドルフチューブ内に取り込んだ。 房水からのイミダゾールの除去 房水の一部は、上述のとおりエタノールへ付加し、十分に混合を行った(20℃、15分)。その抽出物を遠心分離機にかけ(2000xg, 15分)、浮遊物を取り除いた。試料をJOAN装置(フランス)を用いて−70℃までの温度勾配で冷凍させ、凍結乾燥させた。その凍結乾燥させた残留物を1mlの0.1M Na2 HPO4(85%の燐酸でpH2.1に調整済み)中に溶解させ、0.22μmの微細孔を有する薄膜フィルターを通してろ過し、その直後に分析を行った。 高速液体クロマトグラフィーによる分析 Symmetry300 C18カラム(250x4.6mm)、5μm(Waters)、ループμlのWaters 2487 Dualλ吸光度検出器を装備したBreezeクロマトグラフィー・システム(USA)を用いて逆相クロマトグラフィー分析を行った。そのカラムを30℃の0.1M Na2 HPO4(pH2.1)で1.0ml/分の流速で25分以上定組成溶離させた。溶離は、210nmでの吸光度に対してモニターした。 前記試料中のL−カルノシン及びNアセチルカルノシンの量は、ピーク及び直線外挿法の分野による外部標準手法を用いて決定した。不対のt−検定で統計的重要性を評価し、P=0.05を上限とした。 L−カルノシンとN−アセチルカルノシンの外部標準は、化学天秤Mettler Toledo(精度0.00004)を用いて前記乾燥物質を量って作製し、0.1M Na2 HPO4 (2.1pH)のリン酸塩緩衝剤中に溶解した。これらの標準は、前記燐酸塩緩衝液0.1M Na2 HPO4 (2.1pH)を使用し、初期溶液を100倍に溶解させて用意した。1.2 結果 以下の表1で示されるように、1%のN−アセチルカルノシンを含んだ前記眼科用組成物のウサギの眼への局所的に投与すると、前記房水中のカルノシン濃度は明らかに高濃度を示した。 N−アセチルカルノシンのみ含有させた実験対照処方1を緩衝溶液中で溶解させた。 実験対照の処方1脱イオン水 970.0グラムN−アセチルカルノシン, 1.0% 10.0グラムホウ酸カリウム 7.9グラム*重炭酸カリウム 3.4グラム* 991.3グラム* または、6.3pH〜6.5pHに調整するために必要なもの。 N−アセチルカルノシン及びフェニルエチルアルコールを含有させた実験対照処方2を緩衝溶液中で溶解させた。 実験対照の処方2脱イオン水 970.0グラムN−アセチルカルノシン,1.0% 10.0グラムフェニルエチルアルコール,0.3% 3.0グラムホウ酸カリウム 7.9グラム*重炭酸カリウム 3.4グラム* 991.3グラム* または、6.3pH〜6.5pHに調整するために必要なもの。 潤滑剤を使用、不使用による異なる処方においてN−アセチルカルノシンの投与について提示された標準データは、処方1で処理した後の房水中のN−アセチルカルノシンに対して放出されたL−カルノシンが、他の処方に比べてより高く蓄積されていることを示している。(実施例2)臨床研究 処方1を5人のヒトの被験志願者の眼に局所的に投与し、短時間における眩光の感受性の変化を評価した。2.1 臨床設計 前記5人の被験者は、はっきりと識別できる白内障の兆候を示していなかったが、年齢に応じた老視の兆候があった。 最良に矯正された視力 必要に応じて視力テストを行い、最良距離(小数点までの)光学的矯正した視力を得た。視力は、以下に示すLogMarステップ(解像度最小偏角のログ)(0.05ステップにおいて0.1〜0.4;0.1ログ単位ステップにおいて0.4〜1.0)に視力線を備えたプロジェクション・スクリーン(Carl Zeiss)で測定した。近さについての最良の矯正もこの臨床研究で想定された。 最良に矯正された眩光に対する視覚能力障害 眩光のコントラスト減少効果は、不透明な眼内媒体を有す患者において増加し、その視力は低下する。 回折暈計技術を用いてヒトの視覚システムの眩光に対する感受性を測定する光学装置と方法は、米国特許番号6,007,203に記載されており、その開示内容を参照として全体にわたりここに記載する。簡単にいえば、回折暈計技術は、眩光源が活性化されているときに現れる眩光の半径範囲(光散乱の屈折率楕円体と称される光散乱ベクトルについての対象イメージの投影 I=I0COS2ωとして定義されている)の測定に基づくものである。患者は、テストされていない方の眼を塞ぐように要請され、眩光源で眼が照明されている間、前記対象(変更されている視力表:図またはランドルト・リング)を識別するように依頼される。照明されている対象は、眩光源に対する位置決めした上で、左右に動かされ、患者は、質問に応じて、その視力表を指名する能力について検査された。患者が視力表を識別できた場合に測定された眩光源対象の距離を、テストされた眼の眩光に対する感受性の閾値の度合いとして評価した。最初の眩しい光の半径を閾値の度合いをスケールで測定した後、臨床医は、被験者である患者がその視力表を再び正確に識別し始めるまで眩光源から横方向に指示器の位置を動かせ、実際の閾値の距離を書き留める。患者が眩しい領域に入っている場合には視力表の対象を見分けることができないので、眩光の半径(感受性)値の大きな変化は、眼内の光の散乱(水晶体の透明度)の強度の変化を指し示しめす。眩光の半径値の著しい増減で悪化傾向、または好転傾向にあるかを示すことは、通常、角膜混濁(増加された光の散乱)及び清澄化(減少された光の散乱)への水晶体の透明度における変化を示しめしているSE(n=4)±1mmでの4mmの示度数である。光の散乱の波長の投入量は、前記対象を着色した(赤色または緑色)形で評価した。患者の右眼と左眼によるデータを個別に分析した。 緑色の対象を用いて眩光に対する感受性を測定し、処方例1を眼に投与した光学媒体の透明度における変化値を評価した。 眩光に対する感受性のバックグラウンド(投与前)での測定は、両眼において行った。 処方1の点眼は、二重盲検法により1回につき1度(1滴)行い、また、前記被験者の反対側の眼に偽薬を点眼した。 前記処方を投与した40分後、両眼における眩光に対する感受性の測定を行った。2.1 測定結果 処方例1または偽薬の処方の局所的な投与前と投与40分後の最良矯正を持つ被験者の眩光に対する感受性の測定結果を表3に示す。 処方例1を投与した成人の患者において、眩光に対する感受性の好転傾向が見られた。 短期間に処方例1を眼に局所的に投与は、眼または組織への副作用や結膜血管の充血もなく、アレルギーの兆しまたは他の中毒性の兆候もなく、よく耐えられるものであった。投与を行わなかった眼は、視力の悪化を示した。 眼科用組成物を患者の眼に局所的投与するための治療手段であって、該治療手段が、N−アセチルカルノシン、N−アセチルカルノシン誘導体、またはN−アセチルカルノシンの薬理的に許容される塩類を含む親水性のヒドロゲル・コンタクト・レンズ、または高分子接眼鏡挿入物を含み、前記治療手段が、カルノシンまたはカルノシンに関連した誘導体の永続した眼内吸収を実施するのに適切であることを特徴とする治療手段。 【課題】眼科用組成物を患者の眼に局所的投与するための治療手段の提供。【解決手段】N−アセチルカルノシン、N−アセチルカルノシン誘導体、またはN−アセチルカルノシンの薬理的に許容される塩類を含む親水性のヒドロゲル・コンタクト・レンズ、または高分子接眼鏡挿入物を含み、前記治療手段が、カルノシンまたはカルノシンに関連した誘導体の永続した眼内吸収を実施するのに適切である治療手段。【選択図】なし


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