タイトル: | 公開特許公報(A)_JISK5600で規定される鉛筆硬度試験に代わる引っかき硬度の代替評価方法 |
出願番号: | 2010226667 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | G01N 3/42 |
高田 勝則 待永 広宣 小嶌 愛美 JP 2012078325 公開特許公報(A) 20120419 2010226667 20101006 JISK5600で規定される鉛筆硬度試験に代わる引っかき硬度の代替評価方法 日東電工株式会社 000003964 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 110000729 高田 勝則 待永 広宣 小嶌 愛美 G01N 3/42 20060101AFI20120323BHJP JPG01N3/42 Z 2 1 OL 8 本発明は、フィルム状物や板状物などの被評価体の引っかき硬度を評価する方法であって、JIS K5600で規定される鉛筆硬度試験に代わる引っかき硬度の代替評価方法に関する。 フィルム状物や板状物などの被評価体の引っかき硬度を評価する方法として、JIS K5600に規定されている鉛筆硬度試験が従来から一般的に採用されている。しかしながら、鉛筆硬度試験では、使用する鉛筆の硬さや削り方、設置方法などにより評価結果のバラツキが発生する場合がある。また、鉛筆硬度試験では、評価装置により客観的に評価するのではなく、測定者の目視により主観的にキズの程度を評価する。このため、同じ被評価体でも、測定者によって評価結果のバラツキが発生する恐れがある。さらに、F、H、2H、3H、4H、5H・・・という、小数点以下がない断続的な値で評価するため、バラツキが大きくなり、各被評価体で真の硬度差を見出しにくいという問題があった。 下記特許文献1では、光学素子中の複屈折層の硬さを、複屈折層の厚みに対する、円柱形状の圧子を用いて測定した押し込み痕深さの割合から算出する方法が記載されている。しかしながら、かかる方法は単に厚み方向での硬さを測定しているにすぎず、鉛筆硬度試験のような引っかき硬度を測定しているわけではない。したがって、かかる方法を鉛筆硬度試験の代替評価方法として用いることはできない。特開2008−96863号公報 本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルム状物や板状物などの被評価体の引っかき硬度を、正確かつ簡便に測定可能である鉛筆硬度試験の代替評価方法を提供することにある。 上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明はJIS K5600で規定される鉛筆硬度試験に代わる引っかき硬度の代替評価方法であって、曲率半径が20〜500μmである先端を有し、モース硬度が7以上の材料で形成された圧子を、直線方向に移動させつつ被評価体表面に押し込んだときの押し込み痕深さ(A)を測定する測定ステップと、前記被評価体表面にかかる押し込み荷重が1.5〜3Nである地点のうち、任意の地点における前記押し込み痕深さ(A)に基づき、既知の鉛筆硬度を有する複数の標準試験体の鉛筆硬度(B)と標準押し込み痕深さ(C)との関係から、前記被評価体の引っかき硬度を評価する評価ステップと、を有すること特徴とする。 上記評価方法によれば、モース硬度が7以上の材料で形成された、硬い圧子を使用するため、鉛筆硬度試験のように鉛筆の削り方で評価結果が異なるということがない。したがって、鉛筆硬度試験では鉛筆の削り方によるバラツキが発生し易いところ、上記評価方法では、圧子によるバラツキが極めて少ない。 さらに、本発明では、かかる圧子を直線方向に移動させつつ被評価体表面に押し込んだときの押し込み痕深さ(A)を測定し(測定ステップ)、被評価体表面にかかる圧子の押し込み荷重が1.5N〜3Nである地点のうち、任意の地点における押し込み痕深さ(A)に基づいて、客観的に被評価体の引っかき硬度を評価することができる。このため、目視によりキズの有無を判別する鉛筆硬度試験に比べて、測定者による評価結果のバラツキが非常に小さく、引っかき硬度を正確に測定できる。被評価体表面にかかる押し込み荷重が1.8〜2.5N、特には1.9〜2.2Nである地点での押し込み痕深さ(A)に基づいて、被評価体の引っかき硬度を評価することが好ましい。 また、鉛筆硬度試験のように硬度の異なる鉛筆を使用して複数回試験をする必要がなくなり、かつ試験前に鉛筆を削る手間が省けるため、引っかき硬度を簡便に測定できる。さらに、本発明に係る評価方法は、鉛筆硬度試験と同様、圧子を直線方向に移動させつつ被評価体表面に押し込むことにより引っかき硬度を評価するため、鉛筆硬度試験の結果と非常に相関が高く、鉛筆硬度試験の代替評価方法として非常に有用である。 なお本発明において、「押し込み痕深さ」とは、圧子を直線方向に移動させつつ被評価体表面に押し込んだ後、被評価体から圧子を離して10秒以上静置後に測定した残存深さを意味する。 本発明においては、前記評価ステップが、JIS K5600で規定される鉛筆硬度試験に準拠して、硬度の異なる複数の前記標準試験体の鉛筆硬度(B)をそれぞれ測定する第1ステップと、前記圧子を、直線方向に移動させつつ前記標準試験体表面に押し込み、前記標準試験体の表面に対してかかる押し込み荷重が1.5〜3Nである地点のうち、任意の押し込み荷重の地点における標準押し込み痕深さ(C)を、複数の前記標準試験体それぞれにおいて測定する第2ステップと、複数の前記標準試験体の各鉛筆硬度(B)と前記標準押し込み痕深さ(C)との関係から、任意の押し込み荷重における一次相関式を決定する第3ステップと、を有し、前記一次相関式により導かれる、複数の前記標準試験体の鉛筆硬度(B)と前記標準押し込み痕深さ(C)との関係から、前記標準押し込み痕深さ(C)を測定した際の押し込み荷重と同じ押し込み荷重である地点における前記押し込み痕深さ(A)に基づき、前記被評価体の引っかき硬度を評価するステップであるであることが好ましい。 本発明によれば、モース硬度が7以上の材料で形成された硬い圧子を使用するため、圧子によるバラツキが極めて少ない。また、目視によりキズの有無を判別する鉛筆硬度試験に比べて、測定者による評価結果のバラツキが非常に小さく、引っかき硬度を正確に測定できる。さらに、鉛筆硬度試験の結果と非常に相関が高く、被評価体の引っかき硬度を正確かつ簡便に測定可能であるため、鉛筆硬度試験の代替評価方法として有用である。本発明に係る押し込み痕深さの測定方法を示す概略図押し込み荷重と押し込み痕深さとの関係の一例を示すグラフ実施例1における平均鉛筆硬度(B)と標準押し込み痕深さ(C)との関係を示すグラフ 本発明に係る鉛筆硬度試験に代わる引っかき硬度の代替評価方法は、曲率半径が20〜500μmである先端を有し、モース硬度が7以上の材料で形成された圧子を、直線方向に移動させつつ被評価体表面に押し込んだときの押し込み痕深さ(A)を測定する測定ステップと、被評価体表面にかかる押し込み荷重が1.5〜3Nである地点のうち、任意の地点における押し込み痕深さ(A)に基づき、被評価体の引っかき硬度を評価する評価ステップと、を有する。 上記測定ステップにおいて、測定(評価)対象となる被評価体としては、フィルム状物や板状物などが挙げられる。フィルム状物としては、例えば偏光板、ハードコート、アンチグレア、低反射処理されたフィルム、断熱フィルム、各種保護フィルム、光学フィルムなどが挙げられる。また、板状物としては、例えば塗装された金属板、プラスチック成型品、前面板などが挙げられる。以下ではフィルム状物として、ハードコート層を表面に有する偏光板を例に挙げて説明する。図1に示す例では、偏光板Xは、上層よりハードコート層1、保護フィルム2、偏光子3、保護フィルム4を有し、粘着剤層5を介してガラス板6上に固定されている。 圧子7として、曲率半径が20〜500μmである球面部を先端に有し、モース硬度が7以上の材料で形成された圧子を使用する。鉛筆硬度試験の結果との相関を高めるためには、圧子7の球状の先端の曲率半径は50〜200μmであることが好ましい。モース硬度が7以上の材料としては、ダイヤモンド(モース硬度10)が好適に使用可能であるが、他に石英(モース硬度7)、トパーズ(モース硬度8)、サファイアおよびルビー(モース硬度9)も使用可能である。 図1に示すとおり、本発明に係る鉛筆硬度試験に代わる引っかき硬度の代替評価方法では、圧子7を直線方向Aに移動させつつ被評価体表面(偏光板X表面)に押し込んだときの押し込み痕深さ(A)を測定する。本発明では、被評価体表面に圧子を押し込む際に作用させる押し込み荷重として、1.5N〜3Nの範囲を含む任意の範囲に設定可能であるが、例えば0N〜10Nが挙げられる。 本発明において、被評価体に対する圧子7の押し込み角度Fは特に限定されるわけではないが、図1に示す例では被評価体表面に対して略垂直(90°±5°)に設定している。鉛筆硬度試験の結果との相関を高めるためには、直線方向Aに移動させる際の圧子7の移動速度を30mm/min以下とすることが好ましく、20mm/min以下とすることがより好ましい。圧子7の移動速度の下限としては、例えば1mm/minが挙げられる。 本発明では、被評価体表面に対する圧子7の押し込み荷重を、例えば0Nから連続的に変化(増大)させつつ一度に押し込み痕深さ(A)を測定しても良い。押し込み荷重を連続的に変化させて押し込み痕深さ(A)を測定する場合、その押し込み荷重を変化させる速度を10N/min以上の速度で増大させることが好ましく、30N/min以上の速度で増大させることがより好ましい。圧子7の荷重(変化)速度の下限としては、例えば1N/minが挙げられる。あるいは押し込み荷重(例えば、1.5N、2N、2.5N、3N)一定で、複数回に分けて、各押し込み荷重での押し込み痕深さ(A)を測定しても良い。押し込み荷重を連続的に変化させつつ測定する、あるいは一定荷重で複数回測定することにより、被評価体表面にかかる押し込み荷重が1.5〜3Nである地点のうち、任意の地点における押し込み痕深さ(A)を測定することができる(測定ステップ)。 本発明において、測定ステップにて使用する装置は、圧子を直線方向に移動させつつ被評価体表面に押し込む機能と、押し込み痕深さ(A)を測定する機能と、を有する装置であれば特に限定することなく使用可能である。このような機能を有する装置としては、例えばCSM Instruments社製「マイクロスクラッチテスターMST−Z−AU−0000」が挙げられる。この装置では、例えば図2に示すとおり、圧子7を直線方向Aに5mm移動させる間に、押し込み荷重0Nから10Nまで連続的に変化させた場合(横軸)、各押し込み荷重での押し込み痕深さ(A)を正確に記録することができるため、本評価方法を実施するに際して有用である。図2において、10は押し込み痕深さ、11は押し込み深さ(圧子7を直線方向Aに移動させつつ被評価体表面に押し込む際に、圧子7が被評価体に侵入する深さ(被評価体表面〜圧子7先端までの距離))を示す。 上述した測定ステップにて測定した押し込み痕深さ(A)に基づき、既知の鉛筆硬度を有する複数の標準試験体の鉛筆硬度(B)と標準押し込み痕深さ(C)との関係から、被評価体の引っかき硬度を評価する(評価ステップ)。評価ステップは、JIS K5600で規定される鉛筆硬度試験に準拠して、硬度の異なる複数の標準試験体の鉛筆硬度(B)をそれぞれ測定する第1ステップと、圧子を、直線方向に移動させつつ標準試験体表面に押し込み、標準試験体の表面に対してかかる押し込み荷重が1.5〜3Nである地点のうち、任意の押し込み荷重の地点における標準押し込み痕深さ(C)を、複数の標準試験体それぞれにおいて測定する第2ステップと、複数の標準試験体の各鉛筆硬度(B)と標準押し込み痕深さ(C)との関係から、任意の押し込み荷重における一次相関式を決定する第3ステップと、を有する。以下に、実施例を参考に評価ステップを説明する。 実施例1(1)測定ステップ 圧子7を、上述したマイクロスクラッチテスターに装着し、移動速度10mm/minにて直線方向Aに5mm移動させつつ被評価体表面に押し込み、押し込み荷重が2Nである地点における押し込み痕深さ(A)を測定した(圧子7の荷重(変化)速度30N/min)。圧子(図1に示す圧子7)としては、曲率半径が100μmである球面部を先端に有し、円錐の面角度がいずれも120°である円錐状のダイヤモンド製圧子7を使用した。(2)評価ステップ (a)第1ステップ 標準試験体として、鉛筆硬度の異なる6種類の偏光板X1〜X6を使用した。各偏光板X1〜X6について、正確な鉛筆硬度を測定するため、各偏光板においてJIS K5600で規定される鉛筆硬度試験を複数回(少なくともn=5以上)行い、F=0、H=1、2H=2、3H=3、4H=4、5H=5として平均鉛筆硬度((平均値)×H)を算出した。各偏光板X1〜X6の平均鉛筆硬度(B)は、X1=3.33H、X2=2.17H、X3=1.67H、X4=3.50H、X5=0.50H、X6=3.17Hであった。結果を表1に示す。 (b)第2ステップ 圧子7を、上述したマイクロスクラッチテスターに装着し、移動速度10mm/minにて直線方向Aに5mm移動させつつ各偏光板X1〜X6表面に押し込み、押し込み荷重が2Nである地点における標準押し込み痕深さ(C)を、各偏光板X1〜X6それぞれにおいて測定した(圧子7の荷重(変化)速度30N/min)。各偏光板X1〜X6の平均標準押し込み痕深さ(C)は、X1=2.25mm、X2=3.89mm、X3=5.14mm、X4=2.09mm、X5=6.77mm、X6=1.73mmであった。結果を表1に示す。 (c)第3ステップ 上記(a)で算出した各偏光板X1〜X6の平均鉛筆硬度(B)と、上記(b)で測定した、押し込み荷重が2Nである地点における標準押し込み痕深さ(C)と、から、一次相関式(y=−1.6848x+7.6714)を算出した。図3に、押し込み荷重が2Nである地点における平均鉛筆硬度(B)と標準押し込み痕深さ(C)との関係を示すグラフを示す。相関係数は0.98であることから、鉛筆硬度(B)と押し込み荷重が2Nである地点での標準押し込み痕深さ(C)とは、相関が高いことがわかる。 上記一次相関式から、被評価体としての偏光板X1の押し込み痕深さ(A)に基づき、引っかき硬度を評価する。押し込み荷重が2Nのとき、偏光板X1の押し込み痕深さ(A)は2.25mmであることから、一次相関式に基づき計算すると3.22Hとなり、JIS K5600で規定される鉛筆硬度試験に準じて測定した平均鉛筆硬度3.33Hと非常に近い。したがって、本発明の評価方法は、鉛筆硬度試験の結果と非常に相関が高く、被評価体の引っかき硬度を正確かつ簡便に測定可能であるため、鉛筆硬度試験に代わる引っかき硬度の代替評価方法として有用であることがわかる。 実施例2〜10、比較例1〜5 標準押し込み痕深さ(C)を測定した地点での押し込み荷重、圧子7の先端の曲率半径および材質、圧子7の移動速度および荷重(変化)速度を、それぞれ表1に記載の条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、各偏光板X1〜X6の標準押し込み痕深さ(C)を測定した。上記評価ステップに準じて、平均鉛筆硬度(B)と標準押し込み痕深さ(C)との関係から、一次相関式を算出したところ、実施例2〜10でも実施例1と同様、相関係数は1に近いことがわかる。一方、押し込み荷重が1.5N未満、あるいは3Nを超える場合(比較例1〜5)、相関係数が低いことがわかる。1:ハードコート層2:保護フィルム3:偏光子4:保護フィルム5:粘着剤層6:ガラス板7:圧子X:偏光板 JIS K5600で規定される鉛筆硬度試験に代わる引っかき硬度の代替評価方法であって、 曲率半径が20〜500μmである先端を有し、モース硬度が7以上の材料で形成された圧子を、直線方向に移動させつつ被評価体表面に押し込んだときの押し込み痕深さ(A)を測定する測定ステップと、 前記被評価体表面にかかる押し込み荷重が1.5〜3Nである地点のうち、任意の地点における前記押し込み痕深さ(A)に基づき、既知の鉛筆硬度を有する複数の標準試験体の鉛筆硬度(B)と標準押し込み痕深さ(C)との関係から、前記被評価体の引っかき硬度を評価する評価ステップと、を有すること特徴とする、鉛筆硬度試験に代わる引っかき硬度の代替評価方法。 前記評価ステップが、 JIS K5600で規定される鉛筆硬度試験に準拠して、硬度の異なる複数の前記標準試験体の鉛筆硬度(B)をそれぞれ測定する第1ステップと、 前記圧子を、直線方向に移動させつつ前記標準試験体表面に押し込み、前記標準試験体の表面に対してかかる押し込み荷重が1.5〜3Nである地点のうち、任意の押し込み荷重の地点における標準押し込み痕深さ(C)を、複数の前記標準試験体それぞれにおいて測定する第2ステップと、 複数の前記標準試験体の鉛筆硬度(B)と前記標準押し込み痕深さ(C)との関係から、任意の押し込み荷重における一次相関式を決定する第3ステップと、を有し、 前記一次相関式により導かれる、複数の前記標準試験体の鉛筆硬度(B)と前記標準押し込み痕深さ(C)との関係から、前記標準押し込み痕深さ(C)を測定した際の押し込み荷重と同じ押し込み荷重である地点における前記押し込み痕深さ(A)に基づき、前記被評価体の引っかき硬度を評価するステップである請求項1に記載の鉛筆硬度試験に代わる引っかき硬度の代替評価方法。 【課題】フィルム状物や板状物などの被評価体の引っかき硬度を、正確かつ簡便に測定可能である鉛筆硬度試験の代替評価方法を提供すること。【解決手段】曲率半径が20〜500μmである先端を有し、モース硬度が7以上の材料で形成された圧子を、直線方向に移動させつつ被評価体表面に押し込んだときの押し込み痕深さ(A)を測定する測定ステップと、前記被評価体表面にかかる押し込み荷重が1.5〜3Nである地点のうち、任意の地点における前記押し込み痕深さ(A)に基づき、前記被評価体の引っかき硬度を評価する評価ステップと、を有すること特徴とする、JIS K5600で規定される鉛筆硬度試験に代わる引っかき硬度の代替評価方法。【選択図】図1