タイトル: | 公開特許公報(A)_インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤 |
出願番号: | 2010226432 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 36/18,A61P 43/00,A61P 31/16,A61K 31/4412,C07D 213/69 |
多和田 真吉 アツール ウパダヤ JP 2012077058 公開特許公報(A) 20120419 2010226432 20101006 インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤 国立大学法人 琉球大学 504145308 有限会社バイオシステムコンサルティング 510266941 特許業務法人 小野国際特許事務所 110000590 多和田 真吉 アツール ウパダヤ A61K 36/18 20060101AFI20120323BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120323BHJP A61P 31/16 20060101ALI20120323BHJP A61K 31/4412 20060101ALI20120323BHJP C07D 213/69 20060101ALN20120323BHJP JPA61K35/78 CA61P43/00 111A61P31/16A61K31/4412C07D213/69 4 OL 8 4C055 4C086 4C088 4C055AA04 4C055AA12 4C055BA01 4C055CA02 4C055CA42 4C055DA42 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC17 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZB33 4C086ZC20 4C088AB12 4C088AC05 4C088BA09 4C088CA05 4C088NA14 4C088ZB33 4C088ZC20 本発明は、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤に関し、更に詳細には、ギンネム抽出物またはそれに含有されるミモシンを有効成分とするインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤に関する。 インフルエンザウイルスによる感染には、宿主細胞に対する接着と脱離が重要であるが、この過程には、ヘマグルチニンとノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)という2種類のタンパク質が関与している。特にノイラミニダーゼは、インフルエンザウイルスが感染した細胞から脱離する上で必須の酵素である。従って、ノイラミニダーゼの活性を有効に阻害することができれば、インフルエンザウイルスが、感染した細胞表面から遊離・拡散することを阻害することができる。従って、ノイラミニダーゼの阻害は、結果として、インフルエンザウイルスによる他の細胞への感染・増殖を抑制し、インフルエンザウイルス感染症の治療に応用することができる。 このようなノイラミニダーゼ阻害活性を有する化合物について、いくつか報告されており(特許文献1ないし4)、その作用を利用した医薬品も開発されている。例えば、シアリダーゼの阻害剤であるタミフル(商品名、ロシュ社)(一般名称:リン酸オセルタミビル)や、リレンザ(商品名、グラクソ・スミスクライン社)(一般名称:ザナミビル)が知られており、インフルエンザの特効薬として処方されている。 しかし、これら医薬品は、アナフィラキシー様症状等の副作用や耐性ウイルスの出現等の問題があり、特に、タミフルを服用した患者が異常行動を起こして死亡する事故も複数報告されており、タミフル服用による精神・神経症状(意識障害、異常行動、譫妄、幻覚、妄想、痙攣など)も問題となっている。 また、報告されている上記のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害活性を有する物質も、その多くが複雑な構造を有するものであって、その生産には煩雑な工程が要求され、副作用の問題も懸念されるものであった。WO2010/57000WO2006/64914特開2008−163035特開2007−238590 従って、本発明の課題は、天然物中からよりシンプルな構造で、優れたノイラミニダーゼ阻害活性を有する物質を見出し、人体に対し、より安全性の高いインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤を提供することである。 本発明者らは、従来、沖縄に自生する植物であるギンネム(銀合歓)に着目し、この植物中に含まれる成分の薬理活性について研究を行っていたが、今回新たにギンネム抽出物中にインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害物質が存在することを見出した。 そして更に、その抽出物の活性本体について解析を進めた結果、次の式(I)で表されるミモシンが高いインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害作用を有することを見出した。 本発明は、これら知見に基づくものであり、その第一の発明は、ギンネム抽出物を有効成分として含有するインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤である。 また、第二の発明は、上記式(I)で表されるミモシンを有効成分として含有するインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤である。 本発明のギンネム抽出物あるいはこれら抽出物に含まれる式(I)のミモシンは、優れたインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害作用を有するものである。従って、これを有効成分として含有するインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤は、インフルエンザ治療用の医薬品またはその原料として、あるいは健康食品として利用できるものである。 本発明の第一発明において使用されるギンネム抽出物は、ギンネム(銀合歓)(学名:Leucaena leucocephala)の葉を熱水、例えば70℃以上の熱水で抽出したものである。 このギンネムは、ネムノキ科ギンゴウカン属の常緑低木で、熱帯から亜熱帯アジアに分布し、日本では沖縄県から九州南部に分布する。 このギンネムの葉からその抽出物を得るには、まず、ギンネムの葉、好ましくは新鮮な若葉を、好ましくは細切ないし細断して抽出原料とする。 次いで、上記のように準備した抽出原料に対し、適量の水を加熱し、得られた熱水で抽出する。この熱水抽出は、70℃以上、好ましくは75℃ないし沸騰状態の熱水で行うことができるが、ミモシン分解酵素を失活させ、純度の高いミモシンを得るためには、沸騰水(100℃程度)の熱水を用いることが特に好ましい。また、抽出時間は、5ないし30分程度であり、特に10分間程度煮沸抽出を行うことが好ましい。抽出に用いる抽出溶媒としては、蒸留水が好ましく、また、抽出中、必要により連続あるいは間欠的に攪拌することが望ましい。 斯くして得られるギンネムの葉からの抽出物は、必要に応じて濾過、遠心分離等により固液分離し、液状のギンネム抽出物を得ることができる。また、更に必要により凍結乾燥などの手段で乾燥させることで粉末状のギンネム抽出物とすることができる。 上記のようにして得られたギンネム抽出物は、そのまま、あるいは精製した後、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤として利用することができる。 例えば、ギンネム抽出物を有効成分とするインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤の調製は、治療有効量のギンネム抽出物を、製薬上許容される任意成分、例えば、慣用の賦形剤、結合剤、滑沢剤、水性溶剤、油性溶剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、安定剤等と組み合わせ、混合することにより行うことができる。 本発明のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤は、経口でも非経口でも投与することができる。経口投与による場合の本発明インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤は、通常の経口投与製剤、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形剤;水剤;油性懸濁剤;又はシロップ剤もしくはエリキシル剤等の液剤のいずれかの剤形としても用いることができる。非経口投与による場合には、本発明インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤は、水性又は油性懸濁注射剤、点鼻液として用いることができる。 本発明インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤の投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、状態および疾患の種類によっても異なるが、通常、経口投与の場合、成人1日あたりギンネム抽出分(乾燥固形分)として約100〜500mgであり、好ましくは、約10〜50mgであり、これを必要に応じて数回に分け投与すれば良い。また、非経口投与の場合は、成人1日あたり約50〜100mg、好ましくは、約5〜10mgを投与すれば良い。 なお、本発明のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤を抗インフルエンザ薬として用いる場合は、特に経口剤が好ましい。 一方、本発明の第二発明において使用されるミモシンは、ギンネム葉抽出物から以下のようにして分離取得することができる。 すなわち、ギンネム葉抽出液中に、強陽イオン交換樹脂を加えて、ミモシンを含む被吸着成分を吸着させる。次いで、このイオン交換樹脂を、水や、水−エタノール混液で洗浄した後、アンモニア水中等に浸漬し、ミモシンをイオン交換樹脂から溶出させる。この溶出液を必要により活性炭処理した後、濃縮処理し、低温で放置することによりミモシン塩が析出してくるので、これを集めることでミモシンが得られる。 このようにして得られた、ミモシンは、必要に応じて再結晶等の手段により精製した後、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤の有効成分として使用することができる。 このミモシンを用いるノイラミニダーゼ阻害剤の製造は、前記したギンネム抽出物を用いてノイラミニダーゼ阻害剤を製造する方法に準じて行うことができる。 すなわち、ミモシンを含有するノイラミニダーゼ阻害剤は、経口的または非経口的に投与することができ、その調製は、製薬上許容される任意成分、と組み合わせ、混合することにより行うことができる。また、その剤型も、経口投与の場合は、通常の経口投与製剤とすることができ、非経口投与製剤の場合は、水性又は油性懸濁注射剤、点鼻液とすることができる。 また、ミモシンを利用するノイラミニダーゼ阻害剤の投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、状態および疾患の種類によっても異なるが、通常、経口投与の場合、成人1日あたり当該化合物として約100〜500mgであり、好ましくは、約50〜100mgであり、必要に応じて数回に分け投与すれば良い。また、非経口投与の場合は、成人1日あたり約50〜100mg、好ましくは、約5〜10mgを投与すれば良い。 以上説明した本発明のノイラミニダーゼ阻害剤は、例えば、抗インフルエンザ薬等の医薬として有用である。本発明化合物は、後記実施例で示すように、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼに対して顕著な阻害作用を有する。よって本発明化合物は、動物細胞内で感染時に少なくともノイラミニダーゼを産出して増殖するウイルスに起因する各種疾患に対して、予防又は治療効果が期待できる。 さらに、ギンネム抽出物を有効成分とするインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤は、医薬としてのみならず、健康食品として利用することが可能であり、インフルエンザの感染阻止等を目的として、日常の食事などで摂取することも可能である。 このような健康食品としてのインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤の利用は、当該阻害剤を食品素材ないし原料に配合し、適宜調理することにより行うことができる。 次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。実 施 例 1 ギンネム抽出物の取得: 琉球大学(沖縄県中頭郡西原町千原1)のキャンパスからギンネム(Leucaena leucocephala)の葉を採取した。採取したギンネムの葉2.5Kgを、新鮮な状態のうちに、2〜3mmに細断し、これを沸騰水10L中に加え、10分間煮沸抽出した。得られた抽出液約10Lを室温まで冷却した後、濾過により不溶物を除去してギンネム葉抽出液を得た。実 施 例 2 ミモシンの取得: 上記実施例1と同様にして得たギンネム葉抽出液10Lに、強陽イオン交換樹脂(AMBERLITE(商標)IR120 H(Plus)、GFS Chemical Inc.,オハイオ州米国)1Kgを加え、室温にて一晩放置し、被吸着成分を吸着させた。 次いで上記イオン交換樹脂を、25℃の80%エタノール2.5L中に12時間浸漬して洗浄を行なった後、更に、25℃の蒸留水2.5L中に2時間浸漬して洗浄した。 上記のように洗浄したイオン交換樹脂を、2N−アンモニア水4L中に6時間浸漬してミモシンをイオン交換樹脂から溶出させた。その溶出液に、活性炭5gを加え、室温で10分間攪拌した後、活性炭を濾過によって除去し、活性炭処理を行なった。 得られた活性炭処理後の濾液を、1Lになるまで減圧濃縮し、濃縮液を6N−HClでpH 4.5〜5.0に調整し、4℃で一晩置くことで粗ミモシン塩酸塩を析出させ、ミモシン粗結晶を得た(融点175℃分解)。 濾取により得られた粗結晶を、再度6N−NaOH水溶液2Lに溶解させ、4℃で一晩置くことで再結晶させ、ミモシン塩酸塩の結晶を得た。この結果、2.5Kgのギンネムから約10gのミモシンが得られた。実 施 例 3 インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害作用: ノイラミニダーゼ阻害アッセイは、”Bioorganic & Medicinal Chemistry,2009,17,6816−6823”に記載の方法を若干改良した方法を用いた。 まず、酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)50mMに4−メチルウンベリフェリル−α−D−N−アセチルノイラミン酸ナトリウム水和物(No.M8639、シグマ社製)0.1mMを加え、これを基質として用いた。次に、酢酸緩衝液(pH 5.0)10mLにノイラミニダーゼ(No.N2876、シグマ社製)を加え、0.1U/mLになるようにし、これを酵素試薬として用いた。 次に、上記実施例1で得たギンネム葉抽出物10mgを蒸留水1000mLで溶解して検体溶液を作成した後、酢酸緩衝液(pH 5.0)100mLを用い、抽出物の濃度が、それぞれ1、10、50、100μg/mLになるサンプルを調製した。一方、実施例2で得たミモシンについては、その1.982mgを蒸留水10mLに溶解して1mMのミモシン溶液を作成した後、これを酢酸緩衝液(pH 5.0)で希釈して、それぞれミモシンが6.25、12.5、25、50、100μM濃度になるようにサンプルを調製した。なお、対照サンプルとしては、ケルセチンをミオシンと同一濃度になるようにしたものを用いた。 各サンプル20μLを酢酸緩衝液(pH 5.0)80μLに加え、マイクロプレートのウエルに注入し、これにノイラミニダーゼ50μLを、次に基質50μLを加え、37℃で30分間酵素反応を行った。 反応の終了後、酵素反応の強度を、GENIOS蛍光マイクロプレートリーダーで励起波長365nm、蛍光波長450nmの蛍光強度を計測することにより求め、以下の式からIC50を求めた。 S:反応後の基質における蛍光強度 C:反応後の各サンプルにおける蛍光強度 S0:反応前の基質における蛍光強度 C0:反応前の各サンプルにおける蛍光強度 なお、上記蛍光強度は、相対蛍光単位(rfu: relative fluorescence units)で表示される。( 結 果 ) 表1から明らかなように、ギンネム葉抽出物のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害作用についてのIC50は、43.1μg/mLと高い阻害作用を示した。 また、ミモシンでは、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害作用についてのIC50は9.8μMであり、陽性対照であるケルセチンと比べると4倍近く高いインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害作用を有していた。 本発明のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤は、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼに対し高い阻害活性を有するものであり、インフルエンザが関連する疾患に対し、治療効果が期待できるものである。 また、ギンネム抽出物を利用する本発明のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤は、健康食品等として利用しうるものである。 ギンネム抽出物を有効成分として含有するインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤。 ギンネム抽出物が、ギンネム葉の熱水抽出物である請求項1記載のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤。 健康食品添加用である請求項1項または2項記載のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤。次の式(I)で表されるミモシンを有効成分として含有するインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤。 【課題】 天然物中からよりシンプルな構造で、優れたノイラミニダーゼ阻害活性を有する物質を見出し、人体に対し、より安全性の高いインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤を提供すること。【解決手段】 ギンネムから選ばれる抽出物を有効成分として含有するインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤並びに下記式(I)で表される化合物を有効成分として含有するインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害剤。 【化1】【選択図】 なし