生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法
出願番号:2010223464
年次:2012
IPC分類:C07D 333/32,C07B 61/00


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西山 正一 箭野 裕一 粟野 裕 JP 2012077028 公開特許公報(A) 20120419 2010223464 20101001 3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法 東ソー株式会社 000003300 西山 正一 箭野 裕一 粟野 裕 C07D 333/32 20060101AFI20120323BHJP C07B 61/00 20060101ALN20120323BHJP JPC07D333/32C07B61/00 300 6 OL 9 4C023 4H039 4C023FA01 4H039CA42 4H039CL25 本発明は3,4−エチレンジオキシチオフェンの新規合成法に関するものである。 導電性ポリマーは、導電率の違いにより、帯電防止、コンデンサー等の用途に使われている。近年では、液晶や電子ペーパーの透明電極であるITOの代替材料としても注目されている。中でも、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)[通称PEDOT]及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸[通称、PEDOT:PSS]は、抵抗膜式タッチパネルの透明電極として近年研究が活発化している。 PEDOT:PSSは、一般に酸化重合により合成され、又、原料となる3,4−エチレンジオキシチオフェンは、チオジグリコール酸を原料に5段階で合成することができる(例えば、特許文献1参照)。 近年、上記方法とは別に、チオフェン原料から4工程で合成する方法が報告された(例えば、特許文献2参照)。具体的には、チオフェンのテトラブロモ化、2,5位の脱臭素化(3,4−ジブロモチオフェンの合成)、ナトリウムメトキシドを用いたジメトキシ化、エチレンジオキシ化からなる方法である。 上記4工程目のエチレンジオキシ化において、特許文献2では、3,4−ジメトキシチオフェン、エチレングリコール及び溶剤を、質量比1:5〜8:5〜10の配合比で混合し、ベンゼンスルホン酸のような触媒を用いて、30〜110℃で反応させるものである。 又、特許文献3では、3,4−ジメトキシチオフェン、エチレングリコール及びトルエンから、p−トルエンスルホン酸触媒存在下、反応で生成するメタノールを除去しながら3,4−エチレンジオキシチオフェンを合成する方法が報告されている。特開平01−313521号公報中国公開101220038号公報WO2009/090866号公報 これまで、3,4−ジアルコキシチオフェンから3,4−エチレンジオキシチオフェンの合成において、原料となる3,4−ジアルコキシチオフェンは、3,4−ジメトキシチオフェンのみであった。原料である3,4−ジメトキシチオフェン(沸点=112℃/17−20mmHg)は、目的物である3,4−エチレンジオキシチオフェン(沸点=110℃/17−20mmHg)との沸点差が非常に小さいため、蒸留による精製が非常に困難であった。 又、3,4−エチレンジオキシチオフェンの合成は、スルホン酸触媒存在下に行われるが、反応時間が長くなるに伴い、チオフェン由来の重合物と考えられるタール状の黒色不溶物が生成する。この黒色不溶物は、反応器の壁面に付着し洗浄等による除去操作では取り除くことが難しいため、合成上、問題があった。 本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来技術の問題点を解決し、3,4−エチレンジオキシチオフェンを、経済的に、収率よく製造することのできる方法を提供することである。 上記課題を解決するために、本願発明者らは、前述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、有機溶媒中、下記一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェンとエチレングリコールから3,4−エチレンジオキシチオフェンを製造するにあたり、有機スルホン酸とキノン系化合物を共存させて反応することにより、目的とする3,4−エチレンジオキシチオフェンを収率よく合成できることを見出し、本発明を完成した。 即ち、本発明は、有機スルホン酸触媒存在下に、有機溶媒中、下記一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェンとエチレングリコールから3,4−エチレンジオキシチオフェンを製造するにあたり、キノン系化合物共存下に反応することを特徴とする3,4−エチレンジオキシチオフェンの合成方法に関するものである。(式中、Rは炭素数2〜4のアルキル基を表す)。 以下にその製造法について詳細に説明する。 本発明は、上記一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェンとエチレングリコールから3,4−エチレンジオキシチオフェンを合成する方法である。 ここで、一般式(1)におけるRは炭素数2〜4のアルキル基であり、炭素数2〜4のアルキル基としては、例えばエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられ、その中でも、エチル基が好ましい。 具体的な一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェンとしては、例えば3,4−ジエトキシチオフェン(DETと略する)、3,4−ジ(n−プロポキシ)チオフェン、3,4−ジ(i−プロポキシ)チオフェン、3,4−ジ(n−ブトキシ)チオフェン、3,4−ジ(sec−ブトキシ)チオフェン等が挙げられ、そのなかでも3,4−ジエトキシチオフェンが好ましい。 エチレングリコールの使用量は、3,4−ジエトキシチオフェン1molに対して1.0〜20molが好ましく、特に好ましくは、2.0〜10molである。 有機スルホン酸としては、公知のスルホン酸であれば特に制限はなく、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン、カンファースルホン酸等の脂肪族スルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、p−トルイジンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;o−アミノベンゼンスルホン酸、トビアス酸、ナフチオン酸、アミドール酸等の水溶性アゾ染料として利用されている有機スルホン酸;ポリスチレンスルホン酸、ポリナフタレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸等の高分子の有機スルホン酸等を挙げることができる。これら有機スルホン酸のうち、好ましくはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルイジンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸等であり、さらに好ましくは、p−トルエンスルホン酸、p−トルイジンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸等が挙げられる。なお、有機スルホン酸は、一種を単独で又は二種以上を任意に組み合わせても使用できる。 有機スルホン酸の使用量は、3,4−ジアルコキシチオフェン1molに対して、0.005〜0.30molが好ましく、特に好ましくは、0.01〜0.20molである。 キノン系化合物としては、特に限定されるものではなく、公知の化合物を用いることができ、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−ハイドロキノン、2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ハイドロキノン等のハイドロキノン系化合物;p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、tert−ブチル−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン化合物が挙げられる。 これら例示化合物の中でも、ハイドロキノン系化合物がより好ましく、特にハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン等が好ましい。 これらのキノン系化合物の使用量は、3,4−ジアルコキシチオフェン1molに対して、0.00001〜0.50molが好ましく、特に好ましくは、0.001〜0.20molである。 本反応は、有機溶媒中で行われる。有機溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、好ましくは、トルエン、o−キシレン等のキシレンの芳香族溶媒であり、特にo−キシレン等のキシレンが好ましい。有機溶媒の使用量は、3,4−エチレンジオキシチオフェンを収率よく合成することができることから、3,4−ジアルコキシチオフェン1重量部に対して、5〜40重量部が好ましく、特に好ましくは15〜25重量部である。 反応温度としては、100℃〜200℃が好ましく、特に好ましくは120〜150℃である。 本反応は、3,4−ジアルコキシチオフェン、エチレングリコール、有機溶媒、有機スルホン酸及びキノン系化合物を一括に仕込んで反応してもよいし、例えば、3,4−ジアルコキシチオフェン、有機溶媒及びキノン系化合物の混合溶液に、エチレングリコール及び有機スルホン酸の混合溶液を滴下しながら反応させてもよい。 反応終了後、3,4−ジアルコキシチオフェンは、蒸留等により単離することができる。 本発明により合成される3,4−エチレンジオキシチオフェンは、長期保存条件下でもポリマーの生成もなく、着色も見られなかった。 以上のように、本発明によれば、従来技術の問題点を克服し、3,4−エチレンジオキシチオフェンを経済的にしかも収率よく製造可能となる。 本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。なお、実施例で得られた化合物の純度は、シクロドデカンを内部標準としてガスクロマトグラフィー測定により行った。また、GPC分析は、東ソー製HLC−8220を用いて行った。 [ガスクロマトグラフィー測定] 装置:島津製作所製 GC−17A カラム:キャピラリーカラム(GL Science社製 NB−5) キャリアガス:ヘリウム カラム温度:50℃(5分保持)→10℃/min→300℃ インジェクション:280℃ 検出器:FID [GPC測定] 装置:HLC−8220 カラム:G4000HXL−G3000HXL−G2000HXL−G2000HXL(いずれも東ソー製) 検出器:RI 溶離液:テトロヒドロフラン 実施例1 30ml試験管に、3,4−ジエトキシチオフェン0.5g(2.91mmol,以下DETと略する)、o−アミノベンゼンスルホン酸(50mg,DET1molに対して0.1mol)、キノン系化合物であるハイドロキノン32mg(DET1molに対して0.1mol)、エチレングリコール(EG)1.55g(25.0mmol,DET1molに対して8.6mol)及びo−キシレン7.5g(DET1重量部に対して15重量部)を窒素雰囲気下加えたのち、キシレン還流下、8時間反応させた(キシレン還流温度=137−142℃)。冷却後、10%炭酸水素ナトリウム0.25g、水15gを加えた後、酢酸エチル25mlで抽出した。得られた有機層はシクロドデカンを内部標準とするガスクロマトグラフィー分析を行うことにより、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の収率を算出した。結果を表1に示す。 実施例2〜3 o−アミノベンゼンスルホン酸を、p−トルイジンスルホン酸(DET1molに対して0.1mol)(実施例2)、p−トルエンスルホン酸(DET1molに対して0.1mol)(実施例3)に変えて、実施例1と同様の反応を行った。結果を表1に示す。 比較例1〜3 実施例1〜3の実施例において、ハイドロキノンを添加せずに反応を行った。結果を表1に示す。いずれの実験においても、有機スルホン酸触媒を添加しなかったことから、黒色のタール状物質がガラス壁面に付着又は溶液中に浮遊していた。 以上、実施例1〜3及び比較例1〜3の結果から、ハイドロキノンの添加は、EDOTの収率を向上させることに非常に効果があった。 実施例4 30ml試験管に、3,4−ジエトキシチオフェン0.5g(2.91mmol,以下DETと略する)、p−トルエンスルホン酸(55mg,DET1molに対して0.1mol)、tert−ブチルハイドロキノン48mg(DET1molに対して0.1mol)、エチレングリコール1.55g(25.0mmol,DET1molに対して8.6mol)及びo−キシレン10g(DET1重量部に対して20重量部)を窒素雰囲気下加えたのち、キシレン還流下、4時間反応させた(キシレン還流温度=137−142℃)。冷却後、10%炭酸水素ナトリウム0.25g、水15gを加えた後、酢酸エチル25mlで抽出した。得られた有機層はシクロドデカンを内部標準とするガスクロマトグラフィー分析を行うことにより、EDOTの収率を算出した。結果を表2に示す。 実施例5〜8 キノン系化合物をtert−ブチルハイドロイノンから、夫々、トリメチルハイドロキノン(実施例5)、2,5−ジ(tert−ブチル)ハイドロキノン(実施例6)、メチルハイドロキノン(実施例7)、ハイドロキノン(実施例8)に変えて、実施例4と同様に反応を行った。結果を表2に示す。 実施例9〜10 tert−ブチルハイドロキノンの代わりに、ハイドロキノンを用い、ハイドロキノン量を、夫々DET1molに対して0.05mol(実施例9)、0.20mol(実施例10)を使い、実施例4と同様に反応を行った。結果を表3に示す。 実施例11〜12(溶媒量) 30ml試験管に、3,4−ジエトキシチオフェン0.5g(2.91mmol,以下DETと略する)、p−トルエンスルホン酸(55mg,DET1molに対して0.1mol)、ハイドロキノン32mg(DET1molに対して0.1mol)、エチレングリコール1.55g(25.0mmol,DET1molに対して8.6mol)及びo−キシレン12.5g(DET1重量部に対して25重量部)を窒素雰囲気下加えたのち、o−キシレン還流下、4時間反応させた(キシレン還流温度=137−142℃)。冷却後、10%炭酸水素ナトリウム0.25g、水15gを加えた後、酢酸エチル25mlで抽出した。得られた有機層はシクロドデカンを内部標準とするガスクロマトグラフィー分析を行うことにより、EDOTの収率を算出した。(実施例11) 同様の実験を、o−キシレン5g(DET1重量部に対して10重量部)(実施例13)用いて行った。o−キシレン量が10g(実施例8)、7.5g(実施例3)である結果とあわせ、表4に示す。 実施例13 10Lフラスコに、3,4−ジエトキシチオフェン218g(1.27mmol)、p−トルエンスルホン酸24.1g(0.12mol,DET1molに対して9.4mol)、ハイドロキノン7.0g(0.06mol,DET1molに対して4.7mol)、エチレングリコール617g(10.9mmol,DET1molに対して8.6mol)及びo−キシレン4.36kg(DET1重量部に対して20重量部)を窒素雰囲気下加えたのち、キシレン還流下、4時間反応させた(キシレン還流温度=137−142℃)。冷却後、10%炭酸水素ナトリウム、水3Lを加えて、有機層を抽出した。更に、もう一回、同じ実験を繰り返しEDOT含有溶液を得た。得られたEDOT含有溶液は、ガスクロマトグラフィー分析の結果、EDOTを310.5g(収率=86mol%)含有していることがわかった。有機層を濃縮後、大科工業製スルーザーパック充填蒸留塔(10段)を用い、還流比=10でEDOTの蒸留を行った(110℃/10mmHg)。その結果、純度=99.92%のEDOTを260.8g(蒸留収率=84%)単離した。原料の3,4−ジエトキシチオフェンは検出されなかった。 又、得られたEDOTは、窒素中、40℃で一ヶ月長期保存したが、GPCによる分析でもポリマーの生成もなく、しかも着色も全く見られなかった。 有機スルホン酸触媒存在下に、有機溶媒中、下記一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェンとエチレングリコールから3,4−エチレンジオキシチオフェンを製造するにあたり、キノン系化合物共存下に反応することを特徴とする3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法。(式中、Rは炭素数2〜4のアルキル基を表す)。 キノン系化合物が、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノンから選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法。 3,4−ジアルコキシチオフェンが、3,4−ジエトキシチオフェンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法。 スルホン酸触媒が、p−トルエンスルホン酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法。 反応温度が120〜200℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法。 有機溶媒が、上記一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェン1重量部に対して、15〜25重量部であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法。 【課題】3,4−エチレンジオキシチオフェンを、経済的に、しかも収率よく製造することのできる方法を提供する。【解決手段】有機スルホン酸触媒存在下に、有機溶媒中、下記一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェンとエチレングリコールから3,4−エチレンジオキシチオフェンを製造するにあたり、キノン系化合物共存下に反応することにより、目的とする3,4−エチレンジオキシチオフェンを効率よく合成できる。(式中、Rは炭素数2〜4のアルキル基を表す)。【選択図】なし


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特許公報(B2)_3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法
出願番号:2010223464
年次:2015
IPC分類:C07D 495/04,C07B 61/00


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西山 正一 箭野 裕一 粟野 裕 JP 5732802 特許公報(B2) 20150424 2010223464 20101001 3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法 東ソー株式会社 000003300 西山 正一 箭野 裕一 粟野 裕 20150610 C07D 495/04 20060101AFI20150521BHJP C07B 61/00 20060101ALN20150521BHJP JPC07D495/04 101C07B61/00 300 CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN) 国際公開第2009/090866(WO,A1) 特開2008−214288(JP,A) 特開2002−080428(JP,A) 特開2004−224790(JP,A) 5 2012077028 20120419 9 20130926 堀 洋樹 本発明は3,4−エチレンジオキシチオフェンの新規合成法に関するものである。 導電性ポリマーは、導電率の違いにより、帯電防止、コンデンサー等の用途に使われている。近年では、液晶や電子ペーパーの透明電極であるITOの代替材料としても注目されている。中でも、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)[通称PEDOT]及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸[通称、PEDOT:PSS]は、抵抗膜式タッチパネルの透明電極として近年研究が活発化している。 PEDOT:PSSは、一般に酸化重合により合成され、又、原料となる3,4−エチレンジオキシチオフェンは、チオジグリコール酸を原料に5段階で合成することができる(例えば、特許文献1参照)。 近年、上記方法とは別に、チオフェン原料から4工程で合成する方法が報告された(例えば、特許文献2参照)。具体的には、チオフェンのテトラブロモ化、2,5位の脱臭素化(3,4−ジブロモチオフェンの合成)、ナトリウムメトキシドを用いたジメトキシ化、エチレンジオキシ化からなる方法である。 上記4工程目のエチレンジオキシ化において、特許文献2では、3,4−ジメトキシチオフェン、エチレングリコール及び溶剤を、質量比1:5〜8:5〜10の配合比で混合し、ベンゼンスルホン酸のような触媒を用いて、30〜110℃で反応させるものである。 又、特許文献3では、3,4−ジメトキシチオフェン、エチレングリコール及びトルエンから、p−トルエンスルホン酸触媒存在下、反応で生成するメタノールを除去しながら3,4−エチレンジオキシチオフェンを合成する方法が報告されている。特開平01−313521号公報中国公開101220038号公報WO2009/090866号公報 これまで、3,4−ジアルコキシチオフェンから3,4−エチレンジオキシチオフェンの合成において、原料となる3,4−ジアルコキシチオフェンは、3,4−ジメトキシチオフェンのみであった。原料である3,4−ジメトキシチオフェン(沸点=112℃/17−20mmHg)は、目的物である3,4−エチレンジオキシチオフェン(沸点=110℃/17−20mmHg)との沸点差が非常に小さいため、蒸留による精製が非常に困難であった。 又、3,4−エチレンジオキシチオフェンの合成は、スルホン酸触媒存在下に行われるが、反応時間が長くなるに伴い、チオフェン由来の重合物と考えられるタール状の黒色不溶物が生成する。この黒色不溶物は、反応器の壁面に付着し洗浄等による除去操作では取り除くことが難しいため、合成上、問題があった。 本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来技術の問題点を解決し、3,4−エチレンジオキシチオフェンを、経済的に、収率よく製造することのできる方法を提供することである。 上記課題を解決するために、本願発明者らは、前述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、有機溶媒中、下記一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェンとエチレングリコールから3,4−エチレンジオキシチオフェンを製造するにあたり、有機スルホン酸とキノン系化合物を共存させて反応することにより、目的とする3,4−エチレンジオキシチオフェンを収率よく合成できることを見出し、本発明を完成した。 即ち、本発明は、有機スルホン酸触媒存在下に、有機溶媒中、下記一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェンとエチレングリコールから3,4−エチレンジオキシチオフェンを製造するにあたり、キノン系化合物共存下に反応することを特徴とする3,4−エチレンジオキシチオフェンの合成方法に関するものである。(式中、Rは炭素数2〜4のアルキル基を表す)。 以下にその製造法について詳細に説明する。 本発明は、上記一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェンとエチレングリコールから3,4−エチレンジオキシチオフェンを合成する方法である。 ここで、一般式(1)におけるRは炭素数2〜4のアルキル基であり、炭素数2〜4のアルキル基としては、例えばエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられ、その中でも、エチル基が好ましい。 具体的な一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェンとしては、例えば3,4−ジエトキシチオフェン(DETと略する)、3,4−ジ(n−プロポキシ)チオフェン、3,4−ジ(i−プロポキシ)チオフェン、3,4−ジ(n−ブトキシ)チオフェン、3,4−ジ(sec−ブトキシ)チオフェン等が挙げられ、そのなかでも3,4−ジエトキシチオフェンが好ましい。 エチレングリコールの使用量は、3,4−ジエトキシチオフェン1molに対して1.0〜20molが好ましく、特に好ましくは、2.0〜10molである。 有機スルホン酸としては、公知のスルホン酸であれば特に制限はなく、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン、カンファースルホン酸等の脂肪族スルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、p−トルイジンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;o−アミノベンゼンスルホン酸、トビアス酸、ナフチオン酸、アミドール酸等の水溶性アゾ染料として利用されている有機スルホン酸;ポリスチレンスルホン酸、ポリナフタレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸等の高分子の有機スルホン酸等を挙げることができる。これら有機スルホン酸のうち、好ましくはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルイジンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸等であり、さらに好ましくは、p−トルエンスルホン酸、p−トルイジンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸等が挙げられる。なお、有機スルホン酸は、一種を単独で又は二種以上を任意に組み合わせても使用できる。 有機スルホン酸の使用量は、3,4−ジアルコキシチオフェン1molに対して、0.005〜0.30molが好ましく、特に好ましくは、0.01〜0.20molである。 キノン系化合物としては、特に限定されるものではなく、公知の化合物を用いることができ、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−ハイドロキノン、2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ハイドロキノン等のハイドロキノン系化合物;p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、tert−ブチル−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン化合物が挙げられる。 これら例示化合物の中でも、ハイドロキノン系化合物がより好ましく、特にハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン等が好ましい。 これらのキノン系化合物の使用量は、3,4−ジアルコキシチオフェン1molに対して、0.00001〜0.50molが好ましく、特に好ましくは、0.001〜0.20molである。 本反応は、有機溶媒中で行われる。有機溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、好ましくは、トルエン、o−キシレン等のキシレンの芳香族溶媒であり、特にo−キシレン等のキシレンが好ましい。有機溶媒の使用量は、3,4−エチレンジオキシチオフェンを収率よく合成することができることから、3,4−ジアルコキシチオフェン1重量部に対して、5〜40重量部が好ましく、特に好ましくは15〜25重量部である。 反応温度としては、100℃〜200℃が好ましく、特に好ましくは120〜150℃である。 本反応は、3,4−ジアルコキシチオフェン、エチレングリコール、有機溶媒、有機スルホン酸及びキノン系化合物を一括に仕込んで反応してもよいし、例えば、3,4−ジアルコキシチオフェン、有機溶媒及びキノン系化合物の混合溶液に、エチレングリコール及び有機スルホン酸の混合溶液を滴下しながら反応させてもよい。 反応終了後、3,4−ジアルコキシチオフェンは、蒸留等により単離することができる。 本発明により合成される3,4−エチレンジオキシチオフェンは、長期保存条件下でもポリマーの生成もなく、着色も見られなかった。 以上のように、本発明によれば、従来技術の問題点を克服し、3,4−エチレンジオキシチオフェンを経済的にしかも収率よく製造可能となる。 本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。なお、実施例で得られた化合物の純度は、シクロドデカンを内部標準としてガスクロマトグラフィー測定により行った。また、GPC分析は、東ソー製HLC−8220を用いて行った。 [ガスクロマトグラフィー測定] 装置:島津製作所製 GC−17A カラム:キャピラリーカラム(GL Science社製 NB−5) キャリアガス:ヘリウム カラム温度:50℃(5分保持)→10℃/min→300℃ インジェクション:280℃ 検出器:FID [GPC測定] 装置:HLC−8220 カラム:G4000HXL−G3000HXL−G2000HXL−G2000HXL(いずれも東ソー製) 検出器:RI 溶離液:テトロヒドロフラン 実施例1 30ml試験管に、3,4−ジエトキシチオフェン0.5g(2.91mmol,以下DETと略する)、o−アミノベンゼンスルホン酸(50mg,DET1molに対して0.1mol)、キノン系化合物であるハイドロキノン32mg(DET1molに対して0.1mol)、エチレングリコール(EG)1.55g(25.0mmol,DET1molに対して8.6mol)及びo−キシレン7.5g(DET1重量部に対して15重量部)を窒素雰囲気下加えたのち、キシレン還流下、8時間反応させた(キシレン還流温度=137−142℃)。冷却後、10%炭酸水素ナトリウム0.25g、水15gを加えた後、酢酸エチル25mlで抽出した。得られた有機層はシクロドデカンを内部標準とするガスクロマトグラフィー分析を行うことにより、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の収率を算出した。結果を表1に示す。 実施例2〜3 o−アミノベンゼンスルホン酸を、p−トルイジンスルホン酸(DET1molに対して0.1mol)(実施例2)、p−トルエンスルホン酸(DET1molに対して0.1mol)(実施例3)に変えて、実施例1と同様の反応を行った。結果を表1に示す。 比較例1〜3 実施例1〜3の実施例において、ハイドロキノンを添加せずに反応を行った。結果を表1に示す。いずれの実験においても、有機スルホン酸触媒を添加しなかったことから、黒色のタール状物質がガラス壁面に付着又は溶液中に浮遊していた。 以上、実施例1〜3及び比較例1〜3の結果から、ハイドロキノンの添加は、EDOTの収率を向上させることに非常に効果があった。 実施例4 30ml試験管に、3,4−ジエトキシチオフェン0.5g(2.91mmol,以下DETと略する)、p−トルエンスルホン酸(55mg,DET1molに対して0.1mol)、tert−ブチルハイドロキノン48mg(DET1molに対して0.1mol)、エチレングリコール1.55g(25.0mmol,DET1molに対して8.6mol)及びo−キシレン10g(DET1重量部に対して20重量部)を窒素雰囲気下加えたのち、キシレン還流下、4時間反応させた(キシレン還流温度=137−142℃)。冷却後、10%炭酸水素ナトリウム0.25g、水15gを加えた後、酢酸エチル25mlで抽出した。得られた有機層はシクロドデカンを内部標準とするガスクロマトグラフィー分析を行うことにより、EDOTの収率を算出した。結果を表2に示す。 実施例5〜8 キノン系化合物をtert−ブチルハイドロイノンから、夫々、トリメチルハイドロキノン(実施例5)、2,5−ジ(tert−ブチル)ハイドロキノン(実施例6)、メチルハイドロキノン(実施例7)、ハイドロキノン(実施例8)に変えて、実施例4と同様に反応を行った。結果を表2に示す。 実施例9〜10 tert−ブチルハイドロキノンの代わりに、ハイドロキノンを用い、ハイドロキノン量を、夫々DET1molに対して0.05mol(実施例9)、0.20mol(実施例10)を使い、実施例4と同様に反応を行った。結果を表3に示す。 実施例11〜12(溶媒量) 30ml試験管に、3,4−ジエトキシチオフェン0.5g(2.91mmol,以下DETと略する)、p−トルエンスルホン酸(55mg,DET1molに対して0.1mol)、ハイドロキノン32mg(DET1molに対して0.1mol)、エチレングリコール1.55g(25.0mmol,DET1molに対して8.6mol)及びo−キシレン12.5g(DET1重量部に対して25重量部)を窒素雰囲気下加えたのち、o−キシレン還流下、4時間反応させた(キシレン還流温度=137−142℃)。冷却後、10%炭酸水素ナトリウム0.25g、水15gを加えた後、酢酸エチル25mlで抽出した。得られた有機層はシクロドデカンを内部標準とするガスクロマトグラフィー分析を行うことにより、EDOTの収率を算出した。(実施例11) 同様の実験を、o−キシレン5g(DET1重量部に対して10重量部)(実施例13)用いて行った。o−キシレン量が10g(実施例8)、7.5g(実施例3)である結果とあわせ、表4に示す。 実施例13 10Lフラスコに、3,4−ジエトキシチオフェン218g(1.27mmol)、p−トルエンスルホン酸24.1g(0.12mol,DET1molに対して9.4mol)、ハイドロキノン7.0g(0.06mol,DET1molに対して4.7mol)、エチレングリコール617g(10.9mmol,DET1molに対して8.6mol)及びo−キシレン4.36kg(DET1重量部に対して20重量部)を窒素雰囲気下加えたのち、キシレン還流下、4時間反応させた(キシレン還流温度=137−142℃)。冷却後、10%炭酸水素ナトリウム、水3Lを加えて、有機層を抽出した。更に、もう一回、同じ実験を繰り返しEDOT含有溶液を得た。得られたEDOT含有溶液は、ガスクロマトグラフィー分析の結果、EDOTを310.5g(収率=86mol%)含有していることがわかった。有機層を濃縮後、大科工業製スルーザーパック充填蒸留塔(10段)を用い、還流比=10でEDOTの蒸留を行った(110℃/10mmHg)。その結果、純度=99.92%のEDOTを260.8g(蒸留収率=84%)単離した。原料の3,4−ジエトキシチオフェンは検出されなかった。 又、得られたEDOTは、窒素中、40℃で一ヶ月長期保存したが、GPCによる分析でもポリマーの生成もなく、しかも着色も全く見られなかった。 有機スルホン酸触媒存在下に、有機溶媒中、下記一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェンとエチレングリコールから3,4−エチレンジオキシチオフェンを製造すること、及びハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノンから選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるハイドロキノン系化合物共存下に反応することを特徴とする3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造法。(式中、Rは炭素数2〜4のアルキル基を表す)。 3,4−ジアルコキシチオフェンが、3,4−ジエトキシチオフェンであることを特徴とする請求項1に記載の3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法。 スルホン酸触媒が、p−トルエンスルホン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法。 反応温度が120〜200℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法。 有機溶媒が、上記一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェン1重量部に対して、15〜25重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の3,4−エチレンジオキシチオフェンの製造方法。


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