タイトル: | 公開特許公報(A)_液体の表面自由エネルギー、ならびに固体と液体の接触角、界面自由エネルギーおよび付着仕事の予測方法 |
出願番号: | 2010223305 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | G01N 13/02 |
泉 礼子 山崎 和彦 林 年治 JP 2012078190 公開特許公報(A) 20120419 2010223305 20100930 液体の表面自由エネルギー、ならびに固体と液体の接触角、界面自由エネルギーおよび付着仕事の予測方法 三菱マテリアル株式会社 000006264 渡會 祐介 100148219 泉 礼子 山崎 和彦 林 年治 G01N 13/02 20060101AFI20120323BHJP JPG01N13/02 10 2 OL 26 本発明は、液体の表面自由エネルギーの予測方法、ならびに得られた液体の表面自由エネルギーに基づく固体と液体の接触角、界面自由エネルギーおよび付着仕事の予測方法に関する。 インク、ペースト、スラリー等の開発をする際に、それらを塗布する対象である基板に対するインク、ペースト、スラリーの濡れ性は、重要な因子である。この濡れ性を評価するために、固体と液体の表面自由エネルギーの分散成分、配向成分、水素結合成分の3成分を用いて、Fowkesの式、拡張Fowkesの式、Young−Dupreの式を用いて、固体と液体の接触角、界面自由エネルギー、付着エネルギーの計算を精度よく行うことができることが知られている。 北崎、畑は、Fowkesの式の拡張と高分子固体の表面張力について報告しており(非特許文献1)、界面張力に関するFowkesの式を、非極性な分子間力だけでなく、極性または水素結合性の分子間力をもつ系に拡張することを試み、表面張力(表面自由エネルギー)成分が既知の液体による接触角のデータを用いて、高分子固体の表面張力が計算できることを示した。 このように、固体の表面自由エネルギーの各成分、液体の表面自由エネルギーの各成分と、接触角等の濡れ性に関する因子とは関連性があり、固体の表面自由エネルギーの各成分、液体の表面自由エネルギーの各成分がわかれば、濡れ性に関する因子を計算することができる。ここで、固体の表面自由エネルギーの各成分は非特許文献1にあるように表面自由エネルギー成分が既知の標準液との接触角データを用いて求めることができるが、液体の表面自由エネルギーの各成分については、文献値が約30種しか知られていない。日本接着協会誌、1972年、Vol.8、No.3、131〜141頁 本発明者らは、溶媒の表面自由エネルギーの成分を求めることを課題として、鋭意研究した結果、液体のHansenの溶解度パラメータの成分と、溶媒の表面自由エネルギーの成分との間に特定の関係があることを見出した。すわわち、本発明は、液体の構造式からソフトウェアで計算することが可能な液体のHansenの溶解度パラメータ(HSP)値における分散成分(d成分)、配向成分(p成分)、水素結合成分(h成分)の3成分を変換して、溶媒の表面自由エネルギーの3成分を求めることを目的とする。 本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決した液体の表面自由エネルギーの予測方法に関する。(1)液体のハンセン溶解度パラメータを変換して、液体の表面自由エネルギーのパラメータを得る液体の表面自由エネルギーパラメータを予測し、得られた液体の表面自由エネルギーのパラメータを合計して、液体の表面自由エネルギーを求めることを特徴とする、液体の表面自由エネルギーの予測方法。(2)液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分、極性成分および水素結合成分を変換して、液体の表面自由エネルギーの分散成分、極性成分および水素結合成分を得る、上記(1)記載の液体の表面自由エネルギーの予測方法。(3)液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分、および(極性成分+水素結合成分)を変換して、液体の表面自由エネルギーの分散成分、および(極性成分+水素結合成分)を得る、上記(1)記載の液体の表面自由エネルギーの予測方法。(4)液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分:dD、極性成分:dP、および水素結合成分:dHを、式:γd=a×dD+b(ここで、dDが19を越えるとき、1.0<a<4.0、−40<b<30であり、dDが19以下のとき、3.0<a<7.0、−80<b<−30である)、γp=c×dP+e(ここで、0.01<c<0.1、−2.0<e<2.0である)、γh=f×dH+g(ここで、dHが17.7を越えるとき、1.0<f<1.5、−20<g<0であり、dHが17.7以下のとき、0.3<f<0.8であり、−1.5<g<0.5である)、または式:γh=h×dH2+i×dH+j(ここで、0.01<h<0.02、0.1<i<1.0、−5.0<j<5.0である)、で変換して、液体の表面自由エネルギーの分散成分:γd、極性成分:γp、および水素結合成分:γhを得て、液体の表面自由エネルギー:γtotalを、式:γtotal=γd+γp+γhで求める、上記(2)記載の液体の表面自由エネルギーの予測方法。(5)液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分:dD、および〔(極性成分:dP)+(水素結合成分:dH)〕を、式:γd=a×dD+b、(γp+γh)=k×(dP+dH)+l(ここで、0.01<k<0.65、−2.0<l<2.0であり、ただし、(dP+dH)が25を越えるときは、0.8<k<1.2、−30<l<0である)、または式:γd=m×dD2+n×dD+o(ここで、−0.45<m<−0.01、1<n<25、−200<o<−10である)、(γp+γh)=p×(dP+dH)2+q×(dP+dH)+r(ここで、0.005<p<0.015、−0.2<q<0.5、−5.0<r<10.0である)、で変換して、液体の表面自由エネルギーの分散成分:γd、および〔(極性成分:γp)+(水素結合成分:γh)〕を得て、液体の表面自由エネルギー:γtotalを、式:γtotal=γd+(γp+γh)で求める、上記(3)記載の液体の表面自由エネルギーの予測方法。(6)上記(4)で求めたγdとγpとγh、および固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsdと極性成分:γspと水素結合成分:γhから、式:cosθ={〔2×(γsd×γd)1/2+2×(γsp×γp)1/2+2×(γsh×γh)1/2〕/γtotal}−1(式中、θは、固体と液体の接触角を表す)、で求める、または上記(5)で求めたγd、(γp+γh)、ならびに固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsd、〔(極性成分:γsp)+(水素結合成分:γsh)〕から、式:cosθ={{2×(γsd×γd)1/2+2×〔γsp×(γp+γh)〕1/2}/γtotal}−1(式中、θは、固体と液体の接触角を表す)で求める、固体と液体の接触角の予測方法。(7)上記(4)で求めたγdとγp、固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsdと極性成分:γspから、式:WSL=2×(γsd×γd)1/2+2×(γsp×γp)1/22×(γsh×γh)1/2(式中、WSLは固体と液体の付着エネルギーを表す)で求める、または上記(5)で求めたγd、および(γp+γh)、ならびに固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsd、および〔(極性成分:γsp)+(水素結合成分:γsh)〕から、式:WSL=2×(γsd×γd)1/2+2×〔γsp×(γp+γh)〕1/2(式中、WSLは固体と液体の付着エネルギーを表す)で求める、固体と液体の付着エネルギーの予測方法。(8)上記(4)または(5)で求めた液体の表面自由エネルギー:γtotal、上記(7)で求めた固体と液体の付着エネルギー:WSL、および固体の表面自由エネルギー:γsから、式:γSL=γs+γtotal−WSL(式中、γSLは固体の液体の界面自由エネルギーを表す)で求める、固体の液体の界面自由エネルギーの予測方法。(9)上記(6)で求めた固体が基板、液体がインク、ペーストまたはスラリーである場合において、固体と液体との接触角:θが、θ<5であるか、上記(7)で求めた固体と液体の付着エネルギー:WSLが、WSL<100であるか、上記(8)で求めた固体の液体の界面自由エネルギー:γSLが、γSL<2であるか、のいずれかの条件を満たす、インク、ペーストまたはスラリーの製造方法。(10)液体が、透明導電膜用組成物または反射膜用組成物である、上記(9)記載のインクの製造方法。 本発明(1)により求められた液体の表面自由エネルギーにより、固体と液体の接触角、付着エネルギー、または界面自由エネルギーを容易に求めることができ、膨大な固体−液体の組合せから所望の用途に応じた固体−液体の組合せを選択することが可能となる。 本発明(9)によれば、膨大な溶剤の組合せから、実際に基板とインクとの接触角の測定を行うことなく、インク、ペーストまたはスラリーが基板に濡れ易い溶剤の組合せを選択することができ、インク、ペーストまたはスラリーの開発を迅速に行うことができる。特に、数種類の溶媒を混合した混合溶媒からなるインク、ペースト、スラリーの場合には、試験数は混合する溶媒の種類と混合比率の掛け合わせにより膨大な数となり、実際、接触角や付着力の測定を行うのに大変な労力と時間を要するため、接触角、界面自由エネルギーおよび付着エネルギーを予測できることは、開発のスピードアップに大いに役立つ。種々の液体のハンセン溶解度パラメータ各成分と、既知の液体の表面自由エネルギー各成分とを成分ごとにプロットし、1次関数で相関関係式を求めたグラフである。d成分とh成分について、2次関数で相関関係式を求めたグラフである。d成分とh成分の値を場合分けして、1次関数で相関関係式を求めたグラフである。(p成分+h成分)について、1次関数で相関関係式を求めたグラフである。(p成分+h成分)について、2次関数で相関関係式を求めたグラフである。(p成分+h成分)の値を場合分けして、1次関数で相関関係式を求めたグラフである。実施例1での予測接触角と実測接触角をプロットしたグラフである。実施例2での予測接触角と実測接触角をプロットしたグラフである。 以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量%である。〔液体の表面自由エネルギーの予測方法〕 本発明の液体の表面自由エネルギーの予測方法は、液体のハンセン溶解度パラメータを変換して、液体の表面自由エネルギーのパラメータを得て、得られた液体の表面自由エネルギーのパラメータを合計して、液体の表面自由エネルギーを求めることを特徴とする。 液体のハンセン溶解度パラメータは、HSPソフトに液体の構造式を入力して、計算することができる。具体的には、チャールズハンセンらによって開発されたソフトフェア(ソフト名:Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP))で求めることができ、このソフトウェアでは、Y−MBと呼ばれるニューラルネットワーク法を用いた推算方法に基づき、分子構造を、分子の線形表記法Smiles式か、MOLファイルで入力すると、分子を自動的に原子団に分解し、Hansenの溶解度パラメータ値と分子体積を計算する。 液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分、極性成分、および水素結合成分の3成分を利用するときには、液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分:dD、極性成分:dP、および水素結合成分:dHを、式:γd=a×dD+b(ここで、dDが19を越えるとき、1.0<a<4.0、−40<b<30、好ましくは、1.0<a<2.5、0<b<10であり、dDが19以下のとき、3.0<a<7.0、−80<b<−30であり、好ましくは、3.5<a<5.0、−60<b<−30である)、γp=c×dP+e(ここで、0.01<c<0.1、−2.0<e<2.0である)、γh=f×dH+g、(ここで、dHが17.7を越えるとき、1.0<f<1.5、−20<g<0であり、dHが17.7以下のとき、0.3<f<0.8であり、−1.5<g<0.5である)、または式:γh=h×dH2+i×dH+j(ここで、0.01<h<0.02、0.1<i<1.0、−5.0<m<5.0である)、で変換して、液体の表面自由エネルギーの分散成分:γd、極性成分:γp、および水素結合成分:γhを得ることが好ましく、このときの液体の表面自由エネルギー:γtotalは、式:γtotal=γd+γp+γhで求められる。 また、液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分:dD、および〔(極性成分:dP)+(水素結合成分:dH)〕を、式:γd=a×dD+b、(γp+γh)=k×(dP+dH)+l(ここで、0.01<k<0.65、−2.0<l<2.0、好ましくは、0.25<k<0.55、−1.5<l<0.5であり、ただし、(dP+dH)が25を越えるときは、0.8<k<1.2、−30<l<0、好ましくは、0.8<k<1.05、−25<l<−5である)、または式:γd=m×dD2+n×dD+o(ここで、−0.45<m<−0.01、1<n<25、−200<o<−10、好ましくは、−0.45<m<−0.3、15<n<25、−200<o<−100、より好ましくは、−0.40<m<−0.3、15<n<30、−160<o<−145である)、(γp+γh)=p×(dP+dH)2+q×(dP+dH)+r(ここで、0.005<p<0.015、−0.2<q<0.5、−5.0<r<10.0であり、好ましくは、0.005<p<0.010、0.01<q<0.3、−1.0<r<1.0である)、で変換することが、予測精度がよくなる観点から、より好ましく、このときの液体の表面自由エネルギー:γtotalは、式:γtotal=γd+(γp+γh)で求められる。 本発明者らは、溶媒の表面自由エネルギーの成分を求めることを課題として、鋭意研究した結果、液体のHansenの溶解度パラメータの3成分(表1)と、表面自由エネルギー成分が既知の標準溶媒の表面自由エネルギーの3成分(表2)との間に特定の関係があることを見出した。上記の各式の定数は、種々の液体のハンセン溶解度パラメータ各成分と、既知の液体の表面自由エネルギー各成分とを成分ごとにプロットし、1次関数で相関関係式を求めることにより、図1のグラフが得られた。 また、図2に、d成分とh成分について、2次関数にて相関関係式を求めたグラフを示す。d成分、h成分ともにより相関係数Rを二乗したR2値が大きくなり、予測式の精度が上がることがわかる。さらに、図3に示すように、d成分とh成分については、予測式をHSPのd成分が19以上(d成分1)と19以下(d成分2)とで、h成分が17.7以上(h成分1)と17.7以下(h成分2)とで場合分けすることで、一次関数での相関関係式の予測精度があがる。 一方で、表面自由エネルギーの成分分けの概念としては、水素結合成分と極性成分はまとめて極性成分(もしくは水素結合成分)として考え、つまり成分としては、分散成分と極性成分との2成分に分けることができるという理論が大半を占める。例えば、γtotal=γd+γpと仮定するKaeble−Uyや、γtotal=γd+γhと仮定するOwens−Wendtや、γtotal=γd+γpと仮定するWuらによる理論である。これらの考え方にも、本発明の予測方法は対応でき、HSPから表面自由エネルギーの値を予測する際も、HSPの極性成分と水素結合成分を足したものと、表面自由エネルギーの極性成分と水素結合成分を足したものとから予測式を導き出すことも有効であり、その方が、精度が高くなる場合があり得るが、適宜、選択すればよい。例えば、図4に、一次関数で相関関係式を求めたグラフを、図5に、二次関数で相関関係式を求めたグラフを、さらに、図6に、HSP成分の(dD+dH)が25以上〔(dD+dH)成分1〕と25以下〔(dP+dH)成分2〕とで場合分けをして、一次関数で相関関係式を導き出したグラフを示す。 液体の表面自由エネルギーの成分分けの文献値としては約30種類あるが、その中からHSPとの相関を取るためにどのデータを用いるかは適宜選択すればよく、実際にHSPと表面自由エネルギーとの相関を取り予測式を求める場合には、表面自由エネルギーを予測する必要がある溶媒群とあまりにHSP値が遠い溶媒のデータについては省いて予測式を求めた方が、精度の良い変換式が求められる場合がある。 また、液体の表面自由エネルギーの成分分けの文献値には、ここに例に挙げた3成分からなるデータ以外に、分散成分(d成分)と極性成分(p成分で水素結合成分を含む)の2成分からなるデータや、分散成分と水素結合成分(h成分で極性成分を含む)の2成分からなるデータもあるが、それを用いて予測式を求めてもよく、その場合は、HSPの分散成分と表面自由エネルギーでの分散成分との相関関係から予測式を求め、またHSPの極性成分と水素結合成分とを足した(dH+dP)と、前記した表面自由エネルギーでの極性成分(水素結合成分を含む)もしくは水素結合成分(極性成分含む)との相関関係から予測式を求めることができる。3成分のデータではなく2成分のデータを用いた予測式の方が、精度が高くなる場合があり得るが、適宜、選択すればよい。〔固体と液体の付着エネルギーの予測方法〕 固体と液体の付着エネルギーは、北崎−畑の理論(非特許文献1)から求めることができる。液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分および極性成分の2成分を利用するときには、上記により求めたγdとγp、固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsdと極性成分:γspから、式:WSL=2×(γsd×γd)1/2+2×(γsp×γp)1/2(式中、WSLは固体と液体の付着エネルギーを表す)で求められる。 液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分、極性成分、および水素結合成分の3成分を利用するときには、上記により求めたγd、γp、およびとγh、ならびに固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsd、極性成分:γsp、および水素結合成分:γshから、式:WSL=2×(γsd×γd)1/2+2×(γsp×γp)1/2+2×(γsh×γh)1/2(式中、WSLは固体と液体の付着エネルギーを表す)で求められる。 また、〔(極性成分:dP)+(水素結合成分:dH)〕を変換して計算した場合には、固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsd、〔(極性成分:γsp)+(水素結合成分:γsh)〕とし、WSL=2×(γsd×γd)1/2+2×〔γsp×(γp+γh)〕1/2で計算すればよい。〔固体と液体の接触角の予測方法〕 固体と液体の接触角は、Young−Dupreの式(WSL=γtotal(1+cosθ)のWSLに、上記のWSLの式を代入して求めることができる。液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分および極性成分の2成分を利用するときには、上記により求めたγdとγp、固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsdと極性成分:γspから、固体と液体の接触角:θは、式:cosθ={〔2×(γsd×γd)1/2+2×(γsp×γp)1/2〕/γTotal}−1で求められる。 液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分および極性成分の3成分を利用するときには、上記により求めたγd、γp、およびγh、ならびに固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsd、極性成分:γsp、および水素結合成分:γshから、式:cosθ={〔2×(γsd×γd)1/2+2×(γsp×γp)1/2+2×(γsh×γph)1/2〕/γtotal}−1(式中、θは、固体と液体の接触角を表す)で求められる。 また、〔(極性成分:dP)+(水素結合成分:dH)〕を変換して計算した場合には、固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsd、〔(極性成分:γsp)+(水素結合成分:γsh)〕とし、cosθ={{2×(γsd×γd)1/2+2×〔γsp×(γp+γh)〕1/2}/γtotal}−1(式中、θは、固体と液体の接触角を表す)で計算すればよい。〔固体の液体の界面自由エネルギーの予測方法〕 固体の液体の界面自由エネルギーは、Dupreの式(γs+γtotal=γSL+WSL)を変形した式:γSL=γs+γtotal−WSL(式中、γSLは固体の液体の界面自由エネルギーを表す)で求めることができる。〔インク、ペーストまたはスラリーの製造方法〕 インク、ペーストまたはスラリーの製造するときには、上記により求めた固体が基板、液体がインク、ペーストおよびスラリーである場合において、固体と液体との接触角:θが、θ<5であるか、上記により求めた固体と液体の付着エネルギー:WSLが、WSL<100であるか、上記により求めた固体の液体の界面自由エネルギー:γSLが、γSL<2であるか、のいずれかの条件を満たす、インク、ペーストおよびスラリーであると、インク、ペーストおよびスラリーを塗布乾燥後に得られる塗膜の膜ムラが最小限に抑えられるという観点から好ましい。また、インクは、透明導電膜用組成物または反射膜用組成物であると、インク、ペーストおよびスラリーを塗布乾燥後に得られる透明導電膜や反射膜の膜ムラが最小限に抑えられるという点から好ましい。 以下に、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。〔実施例1:HSPから表面自由エネルギーへの変換〕 以下の変換式を用いて、表43のように各種溶媒のγd、γh、γpを予測した。γd=3.8521×dD−35.301γp=0.0652×dP+0.5707γh=0.9109×dH−1.9448 また、求めたγd、γh、γpと、Si基板の表面自由エネルギーの値を用いて、Si基板とそれぞれの溶媒との接触角、付着エネルギー、界面自由エネルギーを算出した。その際、Si基板の表面自由エネルギーはγsd=33.1mJ/m2、γsp=16.4mJ/m2であった。以下の計算式よりcosθを求めることで、接触角を求めた。その際、拡張濡れの条件、すなわち接触角が0°になるような条件はcosθ≧1であるという仮定をもとに、cosθ≧1の場合の接触角は、0°とした。cosθ={{2×(γsd×γd)1/2+2×〔γsp×(γp+γh)〕1/2}/γtotal}−1 付着エネルギーと界面自由エネルギーは、以下の式から求めた。WSL=2×(γsd×γd)1/2+2×〔γsp×(γp+γh)〕1/2γSL=γs+γtotal−WSL また、表3に、それぞれの溶媒についての接触角の実測値を測定した結果を示す。図7に、予測接触角と実測接触角をプロットしたグラフを示す。図7より、予測値と実測値とを比較したところ、ほぼ予測値が実測値と近く予測方法に妥当性があることがわかった。〔実施例2:HSPから表面自由エネルギーへの変換〕 表4に、以下の変換式を用いて、各種溶媒のγd、γpを予測した結果を示す。また、実施例1と同様に、Si基板との接触角、付着エネルギー、界面自由エネルギーを求めた。γd=−0.3594×(dH)2+16.956×dH−153.11γp=0.0087×(dP+dH)2+0.1603×(dP+dH)−0.0667 以下の計算式よりcosθを求めることで、接触角を求める。その際、拡張濡れの条件、すなわち接触角が0°になるような条件はcosθ≧1であるという仮定をもとに、cosθ≧1の場合の接触角は、0°とした。cosθ={{2×(γsd×γd)1/2+2×〔γsp×γp〕1/2}/γtotal}−1 付着エネルギーと界面自由エネルギーは、以下の式から求めた。WSL=2×(γsd×γd)1/2+2×〔γsp×γp〕1/2γSL=γs+γtotal−WSL また、実施例1と同様に、それぞれの溶媒についての接触角の実測値と予測値とを比較した。図8に、予測接触角と実測接触角をプロットしたグラフを示す。図8より、予測値が、ほぼ実測値と近く予測方法に妥当性があり、実施例1による予測値よりも実施例2による予測値の方が実測値と近く、実施例2で用いたHSPからの液体の表面自由エネルギーの予測式の精度が高いことがわかった。〔実施例3:透明導電膜形成用組成物の接触角の予測〕 透明導電膜形成用組成物としてITOインクがあり、その溶媒組成としては、エタノール、メタノール、水が主溶媒となる。以下の組成の場合について、Si基板との接触角、付着エネルギー、界面自由エネルギーの予測を行った。表5に、その結果を示す。 組成A エタノール:メタノール:水=75:5:20 組成B エタノール:メタノール:水=70:5:25 その際、それぞれの混合組成においてのHSPは、それぞれの混合比率によって求めることができ、例えば、組成AのdDについては以下の式より求められる。dD=14.7×0.75+15.8×0.05+15.5×0.20=15.69 その結果、組成Aの場合の接触角は0°、組成Bの場合の接触角は11.04°となり、水の量は25%以上添加することで濡れ性が悪くなることが予想されるため、水の量は25%以下とすることでSi基板との濡れ性が良好なITOインクとすることができることがわかった。 液体の表面自由エネルギーを予測することにより、固体と液体の接触角、付着エネルギー、または界面自由エネルギーを容易に求めることができ、膨大な固体−液体の組合せから所望の用途に応じた固体−液体の組合せを選択することが可能となる。したがって、膨大な溶剤の組合せから、実際に基板とインクとの接触角の測定を行うことなく、インク、ペーストまたはスラリーが基板に濡れ易い溶剤の組合せを選択することができ、インク、ペーストまたはスラリーの開発を迅速に行うことができる。 液体のハンセン溶解度パラメータを変換して、液体の表面自由エネルギーのパラメータを得る液体の表面自由エネルギーパラメータを予測し、得られた液体の表面自由エネルギーのパラメータを合計して、液体の表面自由エネルギーを求めることを特徴とする、液体の表面自由エネルギーの予測方法。 液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分、極性成分および水素結合成分を変換して、液体の表面自由エネルギーの分散成分、極性成分および水素結合成分を得る、請求項1記載の液体の表面自由エネルギーの予測方法。 液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分、および(極性成分+水素結合成分)を変換して、液体の表面自由エネルギーの分散成分、および(極性成分+水素結合成分)を得る、請求項1記載の液体の表面自由エネルギーの予測方法。 液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分:dD、極性成分:dP、および水素結合成分:dHを、式:γd=a×dD+b(ここで、dDが19を越えるとき、1.0<a<4.0、−40<b<30であり、dDが19以下のとき、3.0<a<7.0、−80<b<−30である)、γp=c×dP+e(ここで、0.01<c<0.1、−2.0<e<2.0である)、γh=f×dH+g(ここで、dHが17.7を越えるとき、1.0<f<1.5、−20<g<0であり、dHが17.7以下のとき、0.3<f<0.8であり、−1.5<g<0.5である)、または式:γh=h×dH2+i×dH+j(ここで、0.01<h<0.02、0.1<i<1.0、−5.0<m<5.0である)、で変換して、液体の表面自由エネルギーの分散成分:γd、極性成分:γp、および水素結合成分:γhを得て、液体の表面自由エネルギー:γtotalを、式:γtotal=γp+γp+γhで求める、請求項2記載の液体の表面自由エネルギーの予測方法。 液体のハンセン溶解度パラメータの分散成分:dD、および〔(極性成分:dP)+(水素結合成分:dH)〕を、式:γd=a×dD+b、(γp+γh)=h×(dP+dH)+i(ここで、0.01<h<0.65、−2.0<i<2.0であり、ただし、(dP+dH)が25を越えるときは、0.8<h<1.2、−30<i<0である)、または式:γd=m×dD2+n×dD+o(ここで、−0.45<m<−0.01、1<n<25、−200<o<−10である)、(γp+γh)=p×(dP+dH)2+q×(dP+dH)+r(ここで、0.005<p<0.015、−0.2<q<0.5、−5.0<r<10.0である)、で変換して、液体の表面自由エネルギーの分散成分:γd、および〔(極性成分:γp)+(水素結合成分:γh)〕を得て、液体の表面自由エネルギー:γtotalを、式:γtotal=γd+(γp+γh)で求める、請求項3記載の液体の表面自由エネルギーの予測方法。 請求項4で求めたγdとγp、および固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsdと極性成分:γspから、式:cosθ={〔2×(γsd×γd)1/2+2×(γsp×γp)1/2+2×(γsh×γh)1/2〕/γtotal}−1(式中、θは、固体と液体の接触角を表す)で求める、または請求項5で求めたγd、(γp+γh)、ならびに固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsd、極性成分γsp〔(極性成分:γsp)+(水素結合成分:γsh)〕から、式:cosθ={{2×(γsd×γd)1/2+2×〔γsp×(γp+γh)〕1/2}/γtotal}−1(式中、θは、固体と液体の接触角を表す)で求める、固体と液体の接触角の予測方法。 請求項4で求めたγdとγp、固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsdと極性成分:γspから、式:WSL=2×(γsd×γd)1/2+2×(γsp×γp)1/22×(γsh×γh)1/2(式中、WSLは固体と液体の付着エネルギーを表す)で求める、または請求項5で求めたγd、および(γp+γh)、ならびに固体の表面自由エネルギーの分散成分:γsd、および〔(極性成分:γsp)+(水素結合成分:γsh)〕から、式:WSL=2×(γsd×γd)1/2+2×〔γsp×(γp+γh)〕1/2(式中、WSLは固体と液体の付着エネルギーを表す)で求める、固体と液体の付着エネルギーの予測方法。 請求項4または5で求めた液体の表面自由エネルギー:γtotal、請求項7で求めた固体と液体の付着エネルギー:WSL、および固体の表面自由エネルギー:γsから、式:γSL=γs+γtotal−WSL(式中、γSLは固体の液体の界面自由エネルギーを表す)で求める、固体の液体の界面自由エネルギーの予測方法。 請求項6で求めた固体が基板、液体がインク、ペーストおよびスラリーである場合において、固体と液体との接触角:θが、θ<5であるか、請求項7で求めた固体と液体の付着エネルギー:WSLが、WSL<100であるか、請求項8で求めた固体の液体の界面自由エネルギー:γSLが、γSL<2であるか、のいずれかの条件を満たす、インク、ペーストまたはスラリーの製造方法。 液体が、透明導電膜用組成物または反射膜用組成物である、請求項9記載のインクの製造方法。 【課題】 液体の構造式からソフトウェアで計算することが可能な液体のHansenの溶解度パラメータ(HSP)値における分散成分(d成分)、配向成分(p成分)、水素結合成分(h成分)の3成分を変換して、溶媒の表面自由エネルギーの3成分を求めることを目的とする。【解決手段】 液体のハンセン溶解度パラメータを変換して、液体の表面自由エネルギーのパラメータを得て、得られた液体の表面自由エネルギーのパラメータを合計して、液体の表面自由エネルギーを求めることを特徴とする、液体の表面自由エネルギーの予測方法である。【選択図】 図2