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タイトル:公開特許公報(A)_ジフルオロ酢酸エステルの製造方法
出願番号:2010216278
年次:2011
IPC分類:C07C 67/14,C07C 69/63


特許情報キャッシュ

高田 直門 井村 英明 長舩 夏奈子 JP 2011093886 公開特許公報(A) 20110512 2010216278 20100928 ジフルオロ酢酸エステルの製造方法 セントラル硝子株式会社 000002200 小出 誠 100145632 高田 直門 井村 英明 長舩 夏奈子 JP 2009224264 20090929 C07C 67/14 20060101AFI20110415BHJP C07C 69/63 20060101ALI20110415BHJP JPC07C67/14C07C69/63 9 OL 15 4H006 4H006AA02 4H006AC48 4H006BB14 4H006BC10 4H006BE61 4H006BM10 4H006BM71 4H006KA14 4H006KC12 本発明は、医農薬中間体、機能性材料の中間体として有用なジフルオロ酢酸エステルの製造方法に関し、より詳しくは、ジフルオロ酢酸フルオライドとアルコールとのエステル化による製造方法に関する。 ジフルオロ酢酸エステルは、(1)ジフルオロ酢酸とアルコールをエステル化する方法、(2)1−アルコキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンと硫酸とシリカを反応させる方法(非特許文献1)、(3)ジフルオロ酢酸フルオライドを含む反応粗ガスをエタノールとトリエチルアミンの混合物にバブリングさせ、水洗後塩化メチレンで抽出してジフルオロ酢酸エチルを得る方法(特許文献1)、などが知られている。 (1)の方法では触媒が必須であるだけでなくジフルオロ酢酸の入手が困難であり(2)の方法では反応に伴う廃棄物が多大であるので大規模な生産には適用しがたい。(3)の方法は、得られたジフルオロ酢酸エステルを水で洗浄するところで加水分解を受けて収率を低下させるおそれがある。 一方、カルボン酸フルオライドを用いるエステル化においては副生成物としてフッ化水素が発生するため、反応装置の保護あるいは生成物への混入を避けるために種々の方法が採られている。前記特許文献文献のようにジフルオロ酢酸フルオライドとエタノールとの反応系にトリエチルアミンを添加する方法(特許文献1)、(4)アシルフルオライド基を有する化合物とシラン化合物を反応させる方法(特許文献2)、(5)パーフルオロカルボン酸フルオライド(例えば、FOCCF(CF3)O(CF2)5COF)とプロパノールをモノエステル化する際に反応系にフッ化ナトリウムを添加しフッ化水素を吸着させる方法(特許文献3)など、また、反応後の反応液に含まれるフッ化水素を除くために、蒸留分離する処理または水洗する処理や(6)フッ化水素を含むジフルオロ酢酸エチル(CHF2COOC2H5)を飽和食塩水で洗浄する方法(特許文献4)などが報告されている。特開平8−92162特開平8−20560特開2001−131119特開2002−179623J. Am. Chem. Soc., 1950 72, 1860 ジフルオロ酢酸フルオライドとアルコールからジフルオロ酢酸エステルを製造する際に発生するフッ化水素が生成物中に含まれない製造方法を提供することを課題とする。 本発明者らは、ジフルオロ酢酸フルオライドからジフルオロ酢酸エステルを製造する際に副生するフッ化水素を慣用的な水洗浄により除去すると、ジフルオロ酢酸エステルの加水分解が顕著で収率の低下を招く不利に対し、反応系中で実質的にフッ化水素を固定する方法について検討したところ、反応系中に塩化リチウムを存在させるとフッ化水素が実質的に発生しないことを見出し、本発明に至った。 本発明に係る反応は次の反応式に従う。 CHF2COF + ROH + LiCl → CHF2COOR + HCl + LiF ここで、イオン半径の小さいフッ素アニオンは、イオン半径の大きなカリウムカチオンやナトリウムカチオンよりも、イオン半径の小さいリチウムカチオンと安定な塩を形成する。すなわち、塩化リチウムに代えて、塩化ナトリウムや塩化カリウムを用いた場合、逆反応が起こり、目論み通りにエステルを効率的に合成することは困難となる。 本発明は次の通りである。[発明1]一般式(1) ROH (1)(式中、Rは一価の有機基である。)で表されるアルコールとジフルオロ酢酸フルオライドとを塩化リチウムの存在下で反応させる工程を含む、一般式(2) CHF2COOR (2)(式中、Rは一般式(1)におけると同じ。)で表されるジフルオロ酢酸エステルを製造方法。[発明2]一般式(1)で表されるアルコールが、式中のRが炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8の含フッ素アルキル基から選ばれたアルコールである発明1。[発明3]一般式(1)で表されるアルコールが、式中のRが炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4の含フッ素アルキル基である発明1または2。[発明4]ジフルオロ酢酸フルオライドが、CHF2CF2OR’(R’は、一価の有機基を表す。)で表される1−アルコキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンを熱分解して得られた熱分解生成物である発明1〜3のいずれか。[発明5]アルコールと塩化リチウムを仕込んだ反応系にジフルオロ酢酸フルオライドを導入する発明1〜4のいずれか。[発明6]発明1〜5のいずれかの製造方法を溶媒の存在下で行うことからなるジフルオロ酢酸エステルの製造方法。[発明7]アルコール、塩化リチウムおよび溶媒を仕込んだ反応系にジフルオロ酢酸フルオライドを導入することからなる発明6。[発明8]溶媒が該反応により製造されるべきジフルオロ酢酸エステルである発明7。[発明9]−20〜40℃において反応させる発明1〜8のいずれか。 本発明の方法は、生成物中にフッ化水素が混入することがなく水洗による精製操作を要しないため、工程が簡略化されるだけでなく、加水分解による損失がなく高い収率を達成できる。 本発明は、一般式(1) ROH (1)(式中、Rは一価の有機基である。)で表されるアルコールとジフルオロ酢酸フルオライドとを反応させることからなる一般式(2) CHF2COOR (2)(式中、Rは一般式(1)におけると同じ。)で表されるジフルオロ酢酸エステルを製造する方法において、反応系中に塩化リチウムを存在させてなるジフルオロ酢酸エステルの製造方法である。 ここで、アルコールのRは、炭素数1〜8のアルキル基(明細書において「アルキル基」は、別途限定がない限り、直鎖状、分岐状、および環状を併せ称する。)または炭素数1〜8の含フッ素アルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4の含フッ素アルキル基であるのが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基を例として挙げることができ、好ましいアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基が該当し、メチル基、エチル基、イソプロピル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。 シクロアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。 含フッ素アルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ブロモフルオロメチル基、ジブロモフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2−フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基などを例として挙げることができ、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2−フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基が好ましい。 アルコールとして好ましいものとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2−ジフルオロエタノール、2−フルオロエタノールを挙げることができる。特に好ましいものとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールを挙げることができる。 得られるジフルオロ酢酸エステルとしては、ジフルオロ酢酸メチル、ジフルオロ酢酸エチル、ジフルオロ酢酸n−プロピル、ジフルオロ酢酸イソプロピル、ジフルオロ酢酸n−ブチル、ジフルオロ酢酸s−ブチル、ジフルオロ酢酸2,2,2−トリフルオロエチル、ジフルオロ酢酸2,2−ジフルオロエチルが挙げられる。 本発明の方法において、アルコールの1モルに対しジフルオロ酢酸フルオライドの当量を用いる。したがって、1価のアルコールの場合、ジフルオロ酢酸フルオライドの1〜2モルであり、1〜1.5モルが好ましく、1〜1.2モルがより好ましい。1モル以下の場合、反応収率が低下するので好ましくなく、2モル以上の使用は無駄であり廃棄が困難であるので好ましくない。同様の理由で、n価の多価アルコールの場合、ジフルオロ酢酸フルオライドはn〜2nモルであり、n〜1.5nモルが好ましく、n〜1.2nモルがより好ましい。本発明に使用するアルコールは使用に当たって、ジフルオロ酢酸クロライドの加水分解の原因となる水の含有量を可能な限り低減するのが好ましい。 ジフルオロ酢酸フルオライドは、どの様な方法で製造されたものであってよい。例えば、(1)ジフルオロ酢酸を五酸化リンや塩化チオニルなどと反応させてからフッ化カリウムなどの金属フッ化物でフッ素化させる方法、(2)CHF2CF2ORで表される1−アルコキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンを三酸化硫黄とフルオロ硫酸の存在下で分解させる方法(J. Fluorine Chem.,3,63(1973))、(3)1−アルコキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンをハロゲン化アンチモン、ハロゲン化チタンなどの触媒存在下で反応させる方法(米国特許第4357282号明細書)、(4)1−アルコキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンを、触媒の存在下に熱分解させてジフルオロ酢酸フルオライドを製造する方法(特開平8−92162号公報)が知られている。 本発明の方法では、ジフルオロ酢酸フルオライドは、1−アルコキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンを、触媒の存在下に熱分解させて得られたものが好ましく用いられる。この反応は、以下の式で表わされる。 CHF2CF2OR’ → CHF2COF + R’F この反応の出発原料である一般式CHF2CF2OR’(R’は、一価の有機基を表す。)で表される1−アルコキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンのR’は脱離基であるので特に限定されないが、分岐を有することもある炭素数1〜8のアルキル基、アルキル基を置換基として有することもあるシクロアルキル基、含フッ素アルキル基、アリール基、アラルキル基を挙げることができ、これらのうちアルキル基または含フッ素アルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましく、低級アルキル基がさらに好ましい。低級アルキル基とは、炭素数1〜4のアルキル基をいう。 分岐を有することもある炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基を例として挙げることができ、低級アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基が該当する。 アルキル基を置換基として有することもあるシクロアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、2−エチルシクロペンチル基、3−エチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、2−エチルシクロヘキシル基、3−エチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−メチルシクロヘプチル基、3−メチルシクロヘプチル基、3−メチルシクロヘプチル基、4−メチルシクロヘプチル基などを挙げることができる。 アリール基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,6−ジメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などを例として挙げることができる。 含フッ素アルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ブロモフルオロメチル基、ジブロモフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、n−ヘキサフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基などを例として挙げることができる。 アラルキル基としては、フェネチル基、2−メチルフェニルメチル基、3−メチルフェニルメチル基、4−メチルフェニルメチル基、2,3−ジメチルフェニルメチル基、2,4−ジメチルフェニルメチル基、2,5−ジメチルフェニルメチル基、2,6−ジメチルフェニルメチル基、3,4−ジメチルフェニルメチル基、3,5−ジメチルフェニルメチル基、3,6−ジメチルフェニルメチル基、4−エチルフェニルメチル基、4−(n−プロピル)メチルフェニルメチル基、4−(n−ブチル)メチルフェニルメチル基などを例として挙げることができる。 1−アルコキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンは、公知の製造方法で得ることができる。例えば、アルコール(R’OH)とテトラフルオロエチレンを塩基の存在下に反応させる方法で合成できる。 具体的には、メタノールとテトラフルオロエチレンとを水酸化カリウムの存在下に反応させる方法により1−メトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンが合成できる(J.Am.Chem.Soc.,73,1329(1951))。 本発明において使用できる含フッ素エーテルの具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。1−メトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(CHF2CF2OMe)、1−エトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(CHF2CF2OEt)、1−(n−プロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1−イソプロポキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1−(n−ブトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1−(s−ブトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1−(t−ブトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1−トリフルオロメトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1−ジフルオロメトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1−ペンタフルオロエトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1−(2,2,2,3,3−ペンタフルオロプロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1−ヘキサフルオロイソプロポキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンなどを挙げることができる。 本発明にかかる熱分解に使用する触媒は固体触媒であり、特開平8−92162号公報に記載された金属酸化物、金属フッ素化酸化物を触媒として使用できる。触媒としてはさらにリン酸塩も使用できる。リン酸塩は、担体に担持されたものであってもよい。 リン酸としては、オルトリン酸、ポリリン酸、メタリン酸のいずれであってもよい。ポリリン酸としては、ピロリン酸などが挙げられる。リン酸塩は、これらのリン酸の金属塩である。取り扱いが容易であるのでオルトリン酸であるのが好ましい。リン酸塩とは、これらのリン酸の金属塩をいうが、本明細書では金属が水素原子に置換した酸をも金属塩というものとする。 リン酸塩としては、特に限定されないが、水素、アルミニウム、ホウ素、アルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、ランタン、セリウム、イットリウム、希土類金属、バナジウム、ニオブ、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルからなる群より選ばれた、少なくとも1種の金属のリン酸塩が挙げれる。好ましくは、主成分としてリン酸アルミニウム、リン酸セリウム、リン酸ホウ素、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、リン酸クロムなどである。副成分の金属を含むことも好ましい。具体的な副成分としてはセリウム、ランタン、イットリウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル等が好ましいが、セリウム、鉄、イットリウムがより好ましい。これらのうちで、さらに好ましくは、リン酸アルミニウム、リン酸セリウムおよびこれら二種からなるリン酸塩である。 触媒の調製方法に特に制限はなく、市販のリン酸塩をそのまま使っても良いし、一般的な沈殿方法でも良い。沈殿方法の具体的な調製方法としては、例えば、金属の硝酸塩(複数の原料塩の場合はそれぞれの原料塩の溶液を調製する)とリン酸の混合水溶液に、希釈アンモニア水を滴下しpHを調節して沈殿させ、必要に応じて熟成させるために放置する。その後、水洗し、洗浄水の電導度などで十分に水洗したことを確認する。場合によっては、スラリーの一部を取り含有するアルカリ金属を測定する。次いで濾過し乾燥する。乾燥する温度に特に制限はない。好ましくは80℃〜150℃がよい。さらに好ましくは100℃〜130℃である。得られた乾燥体は粉砕し粒度を揃えるか、さらに粉砕し成型する。その後、200℃〜1500℃の条件で空気や窒素雰囲気で焼成する。好ましくは400〜1300℃、さらに好ましくは500℃〜900℃で焼成を行うことがよい。 焼成時間は温度にもよるが1時間〜50時間程度で、好ましくは2時間〜24時間程度である。焼成処理は、リン酸塩の安定化に必要な処理であるので、上記の温度範囲より低温で処理を実施した場合や、処理時間が短い場合は、反応初期において十分に触媒活性を示さないことがある。また、上記の温度範囲以上でまたは長時間焼成処理を行うことは、過剰な加熱エネルギーを要するだけでなく、触媒の結晶化を引き起こすことがあるので好ましくない。 主成分以外の金属成分の添加の操作は、金属塩で行うことが好ましく、前記金属の硝酸塩、塩化物、酸化物、リン酸塩などが好ましい。中でも、硝酸塩が調製しやすく好ましい。添加量に特に制限はないが、一般にはリン1グラム原子に対し1グラム原子以下であり、好ましくは0.5グラム原子以下である。より好ましくは0.3グラム原子以下である。これらの金属成分の添加は、触媒調製時に行っても良く、また、触媒焼成後のリン酸塩に行っても良い。得られた触媒は、金属塩の種類及び調製方法や条件により物性が異なる。触媒は、そのまま使用してよいが、担体に担持した状態で使用することも可能である。担体としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、硫酸ジルコニア(ZrO(SO4))などの金属酸化物などの金属酸化物、炭化珪素、窒化珪素、活性炭等が挙げられるが、比表面積の大きい活性炭は特に好ましい。 リン酸またはリン酸塩を坦持した活性炭は、リン酸に浸漬して含浸させ、またはスプレーにより被覆もしくは吸着させたものを乾燥させて調製できる。化合物を担持させる場合、担持させる化合物の溶液を含浸させ、またはスプレーにより被覆もしくは吸着させたものを乾燥させて調製できる。また、その化合物の溶液を含浸させ、またはスプレーにより被覆もしくは吸着させた活性炭に対し第二の化合物を作用させて活性炭表面で沈殿反応等を生じさせることで最初の化合物と異なる化合物を担持することもできる。また、先に述べた、リン酸塩の調整方法を活性炭などの担体の存在下で行うことでもリン酸塩担持触媒を調製することができる。具体例として実施例にリン酸アルミニウム担持活性炭を示す。 活性炭は、木材、木炭、椰子殻炭、パーム核炭、素灰等を原料とする植物系、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭等を原料とする石炭系、石油残滓、オイルカーボン等を原料とする石油系または炭化ポリ塩化ビニリデン等の合成樹脂系等のいずれのものでもよい。これら市販の活性炭から選択し使用することができ、例えば、瀝青炭から製造された活性炭(東洋カルゴン製BPL粒状活性炭)、椰子殻炭(日本エンバイロケミカルズ製粒状白鷺GX、SX、CX、XRC、東洋カルゴン製PCB)等が挙げられるが、これらに限定されない。形状、大きさも通常粒状で用いられるが、球状、繊維状、粉体状、ハニカム状等反応器に適合すれば通常の知識範囲の中で使用することができる。 熱分解反応の担体として使用する活性炭は比表面積の大きな活性炭が好ましい。活性炭の比表面積は、市販品の規格の範囲で十分であるが、それぞれ400m2/g〜3000m2/gであり、800m2/g〜2000m2/gが好ましい。さらに活性炭を担体に用いる場合、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性水溶液に常温付近で10時間程度またはそれ以上の時間浸漬するか、活性炭を触媒担体に使用する際に通常行われる硝酸、塩酸、フッ酸等の酸による前処理を施し、予め担体表面の活性化ならびに灰分の除去を行うことが望ましい。 また、本発明の酸化物などの担体は、金属成分と酸素以外の他の原子を含んでいてもよく、他の原子としては、フッ素原子、塩素原子等が好ましい。たとえば、部分フッ素化アルミナ、部分塩素化アルミナ、部分フッ素化塩素化アルミナ、部分フッ素化ジルコニア、部分フッ素化チタニア等であってもよい。酸化物触媒中の塩素原子やフッ素原子の割合は、特に限定されない。 本明細書および特許請求の範囲においては、特に限定されない限り、前記のように部分的にフッ素化、塩素化などされたアルミナ、ジルコニアなどの酸化物を「アルミナ」、「ジルコニア」などの酸化物名称で表示する。 これらの担体としては、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、およびチタニア(TiO2)および硫酸ジルコニアならびにこれらの部分フッ素化酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物触媒が好ましく、アルミナおよび部分フッ素化アルミナが反応性および触媒寿命の点でさらに好ましい。 これらの部分フッ素化酸化物はジフルオロ酢酸フルオライド合成触媒の担体として使用できると共に、触媒として使用することもできる。触媒としての調製、前処理、使用等は、本明細書において担体としての調製、前処理、使用等についての説明がそのままあるいは技術常識に従って適宜変更して適用することができる。すなわち、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)などの金属酸化物を触媒として使用等する際には、金属化合物等が担持された担持触媒と同様に取り扱えばよい。 触媒は、通常は粒子または造粒体の形態で用いられる。粒子または造粒体の直径(いずれも、「粒径」ということがある。)は、特に限定されず、通常は、20μm〜10mm程度である。また、触媒が塩素原子やフッ素原子を含む場合、金属酸化物の表面のみに塩素原子やフッ素原子が存在していてもよい。 触媒は、使用の前に予めフッ化水素、フッ素化炭化水素またはフッ素化塩素化炭化水素などの含フッ素化合物と接触させて部分フッ素化しておき、反応中の触媒の組成変化、短寿命化、異常反応などを防止することが有効である。 特にフッ化水素で処理することで反応の活性を著しく高めることができる。フッ化水素によるフッ素化処理は、少なくとも本発明にかかる反応の反応温度よりも高い温度において、フッ化水素と接触させることで行うのが好ましい。具体的には、リン酸塩単体の場合、200〜700℃程度であり、250〜600℃程度が好ましく、300〜550℃がより好ましい。一方、酸化物または活性炭等を担体とする担持触媒の場合、200〜600℃程度であり、250〜500℃程度が好ましく、300〜400℃がより好ましい。いずれも200℃未満では処理に時間を要し、最高温度範囲を超えて処理を行うことは、過剰な加熱エネルギーを要するので好ましくない。また、処理時間は、処理温度とも関係するので限定できないが、1時間〜10日程度、好ましくは、3時間〜3日間程度である。 リン酸を担持しない活性炭の場合、フッ化水素処理を施しても、殆ど活性を示さないが、リン酸処理をした活性炭にフッ化水素処理を行うと、同じ反応条件で、転化率:96.1%、選択率:98.0%という触媒活性を示した。このことからも、フッ化水素処理の効果は容易に見て取ることができる。 さらに、反応に先立って、活性化処理を施すのが好ましい。活性化処理としては、250℃〜300℃程度の窒素気流中で充分に脱水し、ジクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタンなどの有機フッ素化合物、またはフッ化水素、三フッ化塩素などの気体もしくは触媒処理状態で十分な蒸気圧を示す無機フッ素化合物で活性化させるのが好ましい。これらのうちフッ化水素が特に好ましい。この活性化処理によって、触媒の表面または全体に、フッ素原子を含む活性な触媒が生成すると考えられる。 また、熱分解の原料である1−アルコキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(CHF2CF2OR’)のR’が炭素数2以上の基である場合、生成したR’Fが反応領域において分解してフッ化水素を発生することが推測されるが、これが触媒の活性を高める効果を示すことがある。 熱分解反応は、気相流通連続方式が最も好ましい形式として推奨されるが、これに限定されない。反応器の形式は固定床タイプまたは流動床タイプが好ましく、反応器の寸法・形状は、反応物の量等に応じて適宜変更できる。 熱分解においては、当該反応条件で不活性なガスを存在させてもよい。不活性ガスとしては、窒素または希ガス類が挙げられ、扱いやすさおよび入手しやすさ等の点から、窒素またはヘリウムが好ましい。不活性ガスを存在させる場合の量は、特に限定されないが、多すぎる場合には回収率が下がる恐れがあるため、通常の場合、原料の1−アルコキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンの供給速度よりも少ない量が好ましい。 熱分解の反応温度は、触媒の種類および原料によって異なる。通常100〜400℃であり、150〜350℃程度が好ましく、180〜280℃がさらに好ましい。反応温度が100℃未満では転化率が低くなる傾向があり好ましくない。反応温度が400℃を超えると反応装置に過酷な耐熱性が必要となり、過剰な加熱エネルギーを要するので経済的に好ましくない。 反応時間(接触時間)は通常0.1〜300秒であり、0.5〜200秒が好ましく、1〜60秒がより好ましい。反応時間が短すぎる場合にも、転化率が低くなる恐れがあり、一方、長すぎると生産性が低下するのでそれぞれ好ましくない。反応圧力は、特に限定されず、常圧、減圧、または加圧のいずれであってもよい。0.05〜0.5MPa(0.5〜5気圧)程度が好ましく、通常は、操業が容易な大気圧近傍の圧力が好ましい。 触媒は、経時的にコーキングが発生することがあり、触媒の活性が低下することがある。活性の低下した触媒は、200℃〜1200℃、好ましくは、400℃〜800℃において、酸素と接触させることで容易に活性を再生させることができる。酸素処理は反応管に装填したまま又は外部の装置に装填して行うのが簡便である。そこへ酸素を流通させて行う。酸素の流通方法としては他のガスが共存してもよく、窒素で希釈した空気または空気が経済的に好ましい。また、塩素、フッ素等の酸化力のある気体も使用できる。 熱分解反応においては、目的とするジフルオロ酢酸フルオライドの他に、副生成物としてフッ化アルキル(R’F)やフッ化アルキルがさらに分解した化合物が生成する。例えば、フッ化アルキルとしてフッ化エチルが生成する場合、エチレンとフッ化水素となることがある。反応によって得られる副生成物を含む粗生成物は、精製処理をしないでフッ化アルキルを含んだまま本発明のジフルオロ酢酸フルオライド原料として使用することもでき、主としてフッ化アルキルを除去して得られる粗生成物を使用することもでき、さらに精製して高純度にしたジフルオロ酢酸フルオライドを使用することもでき、あるいはこれらの各種精製程度の異なるガスを冷却または圧縮して容器に保存することもできる。ジフルオロ酢酸フルオライドの精製は蒸留により行うことができる。 次に、エステル合成工程について詳述する。塩化リチウムは、無水塩化リチウムであるのが好ましく、試薬、工業用を問わず使用でき、使用に先立って乾燥することが望ましい。本発明においては、ジフルオロ酢酸フルオライドの1モルに対し、塩化リチウム1モルが当量であるが、1〜5モルを使用し、1〜2モルが好ましく、1〜1.5モルがより好ましい。1モルよりも少ないと反応が完結せず、5モル以上では反応後生成物との分離回収が煩雑になるので、それぞれ好ましくない。 本発明の方法において、ジフルオロ酢酸フルオライドとアルコールと塩化リチウムを接触させる方法および、添加順序は限定されないが、アルコール、塩化リチウムを仕込んで攪拌し、そこへ低沸点(BP=2℃)のジフルオロ酢酸フルオライドを導入することが推奨される。 反応容器は槽型で攪拌羽根を有し攪拌できるものが好ましく、または容器を振盪することで攪拌してもよい。また、連続式での反応でもよい。反応においてジフルオロ酢酸エステルの副生成物として発生する塩化水素は、反応器から排気しながら反応をすることができる。排気は冷却して塩化水素以外を反応器に戻しながら行うのが好ましい。耐圧反応器を用いて排気をしないで反応をすることもできるが、平衡上不利である。 通常、反応温度は−50℃〜100℃であり、−30℃〜30℃が好ましい。反応時間は、反応温度に依存するが、通常10分〜20時間であり、30分〜5時間が好ましい。 本発明の方法では、攪拌を効率的に行うために反応試剤または生成物に不活性な溶媒を用いることが好ましい。アルコールは生成したジフルオロ酢酸エステルと共沸する恐れがあり、水はジフルオロ酢酸フルオライドを消費するので好ましくない。したがって、このような溶媒としては、非プロトン性の溶媒が好ましく、芳香族系溶媒、鎖状エーテル、環状エーテル、エステル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド類、パラフィン類等が挙げられ、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチル−2−ピロリドン(MNP)、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ポリグライム、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルフォラン、o−、m−またはp−ビストリフルオロメチルベンゼン、炭素数8〜20のデカン等の鎖状炭化水素が例示される。塩化リチウムは反応系で溶解していてもあるいは溶解せずスラリー状態でもよいが、極性溶媒は塩化リチウムの溶解度が高く取り扱いが容易で好ましい。沸点は反応には関係しないので任意の沸点の溶媒が使用可能であるが、蒸留精製では沸点が目的のジフルオロ酢酸エステルと近接していないものが蒸留分離に負荷が掛からず好ましい。また、目的のジフルオロ酢酸エステルよりも高沸点の溶媒の方が、蒸留の簡便さの点で推奨される。溶媒の沸点の上限は特にないが、高沸点化合物は、室温で凝固したり、粘性が高くて取り扱いが不便なことが多い。溶媒は、ゼオライト等による吸着や蒸留で水の含有量を可能な限り低減しておくのが好ましい。これらは生成物中へのアルコールなどの混入の原因となって精製が煩雑になり好ましくない。 また、目的化合物と同一のジフルオロ酢酸エステルを溶媒として使用することも可能であり、好ましい。この目的化合物と溶媒として使用すると溶媒と生成物の分離が不要となるので、プロセスが簡便化され特に好ましい。溶媒の使用量は塩化リチウムの質量の3〜20倍であり、好ましくは5〜10倍である。3倍よりも少ないと攪拌が困難であり反応に長時間を要し、20倍を越えると単位反応器当たりの生産性が低下するだけでなく、溶媒の回収等の操作が煩雑になるので、それぞれ好ましくない。 また、反応系中に不活性な気体を伴わせることもできる、このような気体としては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。反応に用いる反応器には、ステンレス鋼、ハステロイ(登録商標)、モネル(登録商標)、フッ素樹脂、ガラスまたはこれらをライニングした材料が用いられる。 本発明の方法にかかる反応生成物を含む混合物は、生成物としてのジフルオロ酢酸エステル、フッ化リチウム、塩化水素と未反応原料として塩化リチウム、溶媒などからなる。溶解した塩化水素は蒸留または加熱還流などで容易に除去することができる。フッ化リチウム、塩化リチウム等の固形分はフラッシュ蒸留やデカンテーションで分離することができる。これらの処理により得られたジフルオロ酢酸エステルを主とする有機成分はさらに蒸留または精留することで高純度のジフルオロ酢酸エステルとすることができる。 本発明の方法によるジフルオロ酢酸エステルの製造方法をバッチ式の例について説明する。連続式については、この説明および上記説明に基づいて適宜反応条件、手順を改変することは当業者にとって容易である。 望ましくは攪拌機と還流塔を備えた反応容器を冷却して、各所定量の塩化リチウム、アルコールおよび任意に溶媒を仕込み、その後ジフルオロ酢酸フルオライドを徐々に導入する。攪拌しながら所定の温度として原料導入完了後もそのまま攪拌を継続し、副生する塩化水素を逐次反応系から放出する。反応終了後、加熱、不活性ガスのバブリング等の手段により反応容器に滞留している塩化水素を追い出して酸性成分を除去する。次いで、フラッシュ蒸留によりジフルオロ酢酸エステルを主成分とする有機物を回収し、所望により精留して高純度のジフルオロ酢酸エステルとすることができる。 以下に、本発明を、実施例をもって説明するが、本発明はこれらの実施態様には限られない。 [実施例1] アルドリッチ製リン酸アルミニウム(Aluminum phosphate)を5mmφ×5mmLのペレットに打錠成形し、窒素気流中700℃で5時間焼成して、リン酸アルミニウム触媒を調製した。これを気化器付ステンレス製反応管(内径37.1mmφ×500mmL)に200cc充填した。窒素15cc/分を流しながら反応管を外部に設けた電気炉で加熱した。触媒の温度が50℃に達した時に、フッ化水素(HF)を0.6g/分の速度で気化器を通して導入した。HFを流通させたまま、300℃までゆっくりと昇温し、300℃で5時間保持した後、ヒーター設定温度を200℃に下げ、200℃になった時点で、HFの流通を止め、窒素流量を200cc/分に増やして2時間保持した後、1−メトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFE−254pc)を0.2g/分の速度で、気化器を通して導入した。30分後窒素を止めて、HFE−254pcのみを流通させ、定常状態時にガスサンプリングし、ガスクロマトグラフで分析したところ、ほぼ定量的に、ジフルオロ酢酸フルオライド(CHF2COF)とフッ化メチル(CH3F)が含まれていた(転化率:99.7%)。 コンデンサー、吹き込み管、温度計を有する3口PFA製フラスコ(500cc)に、エタノール(EtOH:15.0g、0.326mol)、無水塩化リチウム(LiCl:20.7g、0.489mol)、溶媒としてジフルオロ酢酸エチル(CHF2COOC2H5:172g)を仕込み、スターラーで攪拌しながら氷冷した。吹き込み管を通して、上記の反応粗ガス(CHF2COFとCH3Fの混合ガス)を空冷ライン経由により粗熱を除去し、バブリングさせた。その時の液温は3℃から8℃であった。熱分解の原料としてHFE−254pcを53g(0.4mol)導入する間バブリングした後、室温(約25℃。以下同じ。)としてその後1時間攪拌を続けた。その後、反応器に残留する塩化水素(HCl)を除去するために窒素(N2)ガスをバブリングさせながら、バス温を室温から徐々に120℃まで昇温し、2時間加熱還流した。内容液をフラッシュ蒸留で回収し、ガスクロマトグラフで分析したところ、ジフルオロ酢酸エチルの純度は99.64面積%であり、収率は94%であった。これをサンプリングしてイオン交換水で抽出し、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で中和後、Fアニオン、Clアニオンをイオンクロマトグラフで分析したところ、定量下限界以下であった。(Fアニオンの定量下限界:5ppm、Clアニオンの定量下限界:10ppm) [実施例2] コンデンサー、吹き込み管、温度計を有する3口PFA製フラスコ(500cc)に、エタノール(15.0g、0.326mol)、無水塩化リチウム(LiCl、20.7g、0.489mol)、溶媒としてCHF2COOEt(172g)を仕込み、スターラーで攪拌しながら氷冷した。実施例1と同様の方法の熱分解で得られたCHF2COFとCH3Fの混合ガスを蒸留して得られた35.15g(0.359mol、純度:99%))のCHF2COFを0.4g/minの速度で吹き込み管を通してバブリングした。その時の液温は3℃から10℃であった。液温を室温まで上げてそのまま1時間攪拌を続けた。その後、HClを除去するためにN2ガスをバブリングさせながら、バス温を室温から徐々に120℃まで昇温し、2時間加熱還流した(バス温:室温から120℃)。 内容液をフラッシュ蒸留で回収し、ガスクロマトグラフで分析したところ、ジフルオロ酢酸エチルの純度は99.78面積%であり、収率は95%であった。これをサンプリングしてイオン交換水で抽出し、NaOH水溶液で中和後、Fアニオン、Clアニオンをイオンクロマトグラフで分析したところ、定量下限界以下であった。(Fアニオンの定量下限界:5ppm、Clアニオンの定量下限界:10ppm) [実施例3] 内圧が0.5MPaとなるように設定された背圧弁付きコンデンサー、吹き込み管、熱電対、圧力計を備えた1000ccステンレス鋼製オートクレーブに、無水塩化リチウム(LiCl、121.3g、2.86mol)を仕込み減圧し、エタノール(92g、2.0mol)を吸い込ませた。ドライアイス−アセトンバスで冷却後、攪拌しながら、シリンダーに小分けした精製CHF2COF(215.6g,2.2mol)を3時間掛けて全量圧入した。バスを外して、発生した塩酸をコンデンサーに付設した背圧弁から抜き出して、圧力が0.5MPaを超えないように制御しながら、室温まで昇温させた。その後、背圧弁を閉止してバイパスラインに切り替えゆっくりとバルブを開けて、コンデンサー経由で内圧を常圧に戻した。N2ガスをバブリングさせながら、バス温を室温から徐々に120℃まで昇温し、2時間加熱環流した。内容液をフラッシュ蒸留で回収し、ガスクロマトグラフで分析したところ、ジフルオロ酢酸エチルの純度は99.48面積%であり、収率は95%であった。これをサンプリングしてイオン交換水で抽出し、NaOH水溶液で中和後、Fアニオン、Clアニオンをイオンクロマトで分析したところ、定量下限界以下であった。(Fアニオンの定量下限界:5ppm、Clアニオンの定量下限界:10ppm) [実施例4] ガス導入菅、温度計、ドライアイスコンデンサーを備えた100mL三口フラスコに、塩化リチウム(16.22g、0.382mol)、2,2−ジフルオロエタノール(20.53g、0.25mol)を仕込み、攪拌しながら、氷水浴で冷却した。ガス導入菅より、ジフルオロ酢酸フルオライド(26.95g、0.275mol)を0.3g/分の流量で導入した。導入終了後、1時間攪拌を続けた。ドライアイスコンデンサーをジムロートに替え、ガス導入菅から窒素を15mL/分の流量で流し、段階的に昇温後100℃で1時間加熱した。室温(約25℃)に冷却後、14.8kPaで単蒸留し、ジフルオロ酢酸2,2−ジフルオロエチル (38.24g、回収率95.5%、純度98.11面積%)を得た。 [ジフルオロ酢酸2,2−ジフルオロエチルの物性値]1H:6.02(1H,tt,J=54.4Hz,3.9Hz)、6.00(1H,t,J=52.9Hz)、4.47(2H,td,J=13.4Hz,3.7Hz)19F:−126.63 (2F,dt,J=54.4Hz,13.4Hz)、−127.39 (2F, d,J=51.9 Hz)13C:161.67(t)、111.85(t)、106.27(t)、63.71(t)MS(EI):m/e(FRG.)159(M+−H)、141(M+−F)、109(C3H3F2O2+), 81(CHF2CH2O+),65(CHF2CH2+),51(CHF2+,base peak) [参考例1]各々予め氷浴で冷却したジフルオロ酢酸メチル(CHF2COOCH3、10g)とイオン交換水(20g)を混合し、氷浴で冷却しながら5分間攪拌した。水相をNaOH水溶液で中和し、CHF2COOCH3の加水分解によって生成するCHF2COO−イオンをイオンクロマトグラフィで定量し、加水分解率を求めた。その結果、5.0%の加水分解率であった。加水分解率は、CHF2COO−イオン量を、ジフルオロ酢酸メチル重量に換算し、試料のジフルオロ酢酸メチル重量10gで除して加水分解率を求めた。 [参考例2]各々予め氷浴で冷却したCHF2COOCH3(20g)と38%HF水溶液(20g)を混合し、氷浴で冷却しながら5分間攪拌した。水相をNaOH水溶液で中和し、CHF2COOCH3の加水分解によって生成するCHF2COO−イオンをイオンクロマトグラフィで定量し、加水分解率を求めた。その結果、43.0%の加水分解率であった。加水分解率は、参考例1と同様の方法で計算して求めた。 [参考例3]各々予め氷浴で冷却したジフルオロ酢酸イソプロピル(CHF2COOCH(CH3)2、5g)と38%HF水溶液(10g)を混合し、氷浴で冷却しながら5分間攪拌した。水相をNaOH水溶液で中和し、CHF2COOCH(CH3)2の加水分解によって生成するCHF2COO−イオンをイオンクロマトグラフィで定量し、加水分解率を求めた。その結果、6.9%の加水分解率であった。加水分解率は、参考例1と同様の方法で計算して求めた。 [参考例4]温度計、吹き込み管、環流塔を設けた1000mlのガラス製4口フラスコに窒素置換後、20%ナトリウムエトキシド(EtONa)/エタノール(EtOH)液(340g)を仕込み、氷浴で冷却し、スターラーで攪拌しながら約0.7g/分の速度でCHF2COF(103.7g,1.06mol)を吹き込み管よりバブリングさせながら導入し、そのまま2時間攪拌を続けたところ、反応液のpHは7以下を示した。10kPaの減圧下でフラッシュ蒸留して内容物を回収した。得られた有機物をガスクロマトグラフィ(FID)で分析したところ、エタノール:82.6面積%、ジフルオロ酢酸エチル(CHF2COOC2H5):17.4面積%であった。この有機物(170.6g)を理論段数15段の蒸留塔で常圧蒸留した結果、留出温度:73.7℃〜75.8℃の主留分(151.2g)を得た。得られた有機物のガスクロマトグラフ組成はエタノール:81.0面積%、CHF2COOC2H5:18.8面積%であり、共沸現象を示した。これは、蒸留でのエタノールとCHF2COOC2H5の分離精製は実質的に困難であることを示唆した。ちなみに、エタノールの沸点は77℃、CHF2COOC2H5の沸点は97℃である。 [参考例5] 温度計、ジムロート、滴下ロートを備えた4口フラスコ(容量2000cc)に、水素化ホウ素ナトリウム(30.27g,0.80mol)、ジエチルエーテル(150g)、CHF2CH2OH (59g,0.72mol)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら氷水浴で冷却した。ジムロートは−20℃の冷媒を流通し、出口には、ドライアイスアセトンで冷却した2個のトラップを直列に設置した。一段目には100gのジエチルエーテルを仕込み、バブリングできるようにし、2段目は空トラップとした。150gのジエチルエーテルで希釈されたジフルオロ酢酸2,2−ジフルオロエチル(51.2g、0.32mol)を滴下ロートから内温5℃を超えない速度で滴下した。滴下終了後、室温にて2時間攪拌した。再度、氷水浴で冷却したのち、滴下ロートから2N塩酸400mLを内温が10℃を超えないようにゆっくり滴下し、有機層と水層を分離した。水層はジエチルエーテル150gで抽出し、2個のトラップで回収された溶液と合わせて、647.1gの有機物を回収した。これをFIDガスクロマトグラフで分析したところ、ジフルオロエタノール(DFOL):99.6%、ジフルオロ酢酸(CHF2COOH):0.4%であった(溶媒のジエチルエーテルを除く。)。これを理論段数10段の蒸留塔で精製したところ、103.8g(純度99.2%)のDFOLが得られた(回収率:93.1%)。なお、残りの水相部に内部標準物質としてCF3COONaを添加して、19FNMRで含フッ素有機物の含有量を求めたところ、DFOL:4.3g、CHF2COOH:0.7gであった。医農薬中間体、機能性材料の中間体として有用なジフルオロ酢酸エステルの製造方法として有用である。一般式(1) ROH (1)(式中、Rは一価の有機基である。)で表されるアルコールとジフルオロ酢酸フルオライドとを塩化リチウムの存在下で反応させる工程を含む、一般式(2) CHF2COOR (2)(式中、Rは一般式(1)におけると同じ。)で表されるジフルオロ酢酸エステルを製造方法。一般式(1)で表されるアルコールが、式中のRが炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8の含フッ素アルキル基から選ばれたアルコールである請求項1に記載のジフルオロ酢酸エステルの製造方法。一般式(1)で表されるアルコールが、式中のRが炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4の含フッ素アルキル基である請求項1または2に記載のジフルオロ酢酸エステルの製造方法。ジフルオロ酢酸フルオライドが、CHF2CF2OR’(R’は、一価の有機基を表す。)で表される1−アルコキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンを熱分解して得られた熱分解生成物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のジフルオロ酢酸エステルの製造方法。アルコールと塩化リチウムを仕込んだ反応系にジフルオロ酢酸フルオライドを導入する請求項1〜4のいずれか1項に記載のジフルオロ酢酸エステルの製造方法。請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法を溶媒の存在下で行うことからなるジフルオロ酢酸エステルの製造方法。アルコール、塩化リチウムおよび溶媒を仕込んだ反応系にジフルオロ酢酸フルオライドを導入することからなる請求項6に記載のジフルオロ酢酸エステルの製造方法。溶媒が該反応により製造されるべきジフルオロ酢酸エステルである請求項7に記載のジフルオロ酢酸エステルの製造方法。−20〜40℃において反応させる請求項1〜8のいずれか1項に記載のジフルオロ酢酸エステルの製造方法。 【課題】ジフルオロ酢酸フルオライドとアルコールからジフルオロ酢酸エステルを製造する際に発生するフッ化水素が生成物中に含まれない製造方法を提供する。【解決手段】一般式(1) ROH (1)(式中、Rは一価の有機基である。)で表されるアルコールとジフルオロ酢酸フルオライドとを塩化リチウムの存在下で反応させる工程を含む、一般式(2) CHF2COOR (2)(式中、Rは一般式(1)におけると同じ。)で表されるジフルオロ酢酸エステルを製造方法。【選択図】 なし


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