生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_注射用含糖酸化鉄製剤
出願番号:2010196214
年次:2012
IPC分類:A61K 33/26,A61K 47/26,A61K 47/18,A61K 9/10,A61P 7/06


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西山 要 城内 豊 河上 直美 JP 2012051841 公開特許公報(A) 20120315 2010196214 20100901 注射用含糖酸化鉄製剤 ニプロ株式会社 000135036 日医工株式会社 592073695 進藤 卓也 100163647 西山 要 城内 豊 河上 直美 A61K 33/26 20060101AFI20120217BHJP A61K 47/26 20060101ALI20120217BHJP A61K 47/18 20060101ALI20120217BHJP A61K 9/10 20060101ALI20120217BHJP A61P 7/06 20060101ALI20120217BHJP JPA61K33/26A61K47/26A61K47/18A61K9/10A61P7/06 4 OL 8 4C076 4C086 4C076AA16 4C076BB11 4C076DD51Z 4C076DD67F 4C076FF43 4C076FF61 4C086AA01 4C086AA02 4C086HA11 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA21 4C086MA66 4C086NA03 4C086ZA55 本発明は、注射用含糖酸化鉄製剤に関する。詳細には、使用時に希釈することなく患者に投与することができ、かつ、保存安定性に優れた注射用含糖酸化鉄製剤に関する。 鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足し、ヘモグロビンの生産が十分に行われないために生じる貧血である。鉄欠乏性貧血の治療は、不足している鉄を補給することにより行われる。鉄の補給には、原則として経口鉄剤が用いられるが、胃腸疾患等で経口投与ができない場合や、胃腸障害等の副作用が強い場合など、経口鉄剤の投与が困難または不適当な場合に限り、静注用鉄剤が用いられる。静注用鉄剤としては、含糖酸化鉄注射液(商品名:フェジン(登録商標)静注40mg(以下、単に「フェジン(登録商標)」と記載する場合がある)、日医工株式会社製)、シデフェロン製剤(商品名:フェリコン(登録商標)鉄静注液50mg、日本臓器製薬株式会社製)などが市販されている。静注用鉄剤を用いて静脈内投与を行う場合、急激な投与による副作用を防ぐために、投与量および投与速度に十分に注意する必要がある。 含糖酸化鉄注射液(フェジン(登録商標))は、水酸化第二鉄をショ糖(スクロース)でコロイド化した製剤である。2分以上かけて徐々に静脈内注射する必要があるため、通常、使用時に希釈して用いられる(非特許文献1)。希釈に用いる溶液の種類によっては、希釈によりコロイドが不安定となって鉄イオンが遊離し、発熱、悪心、嘔吐などを生じる場合がある。そのため、希釈は、臨床上安全性が確認されている10〜20%のブドウ糖注射液による5〜10倍希釈に限定されている。しかし、ブドウ糖注射液で希釈すると経時的にpHが低下し、混濁および結晶析出が生じるため、長期間保存することができず、用時調製しなければならない(非特許文献2)。このため、薬液調製時に過誤が発生するおそれがあり、医療従事者の負担が増大するという問題がある。「フェジン(登録商標)静注40mg」添付文書、2007年11月改訂(第2版)日医工株式会社、医薬品インタビューフォーム「フェジン(登録商標)静注40mg」、2008年1月改訂(第4版) 本発明は、使用時に希釈することなく患者に投与することができ、かつ、保存安定性に優れた注射用含糖酸化鉄製剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、含糖酸化鉄とアルギニンとスクロースとを組み合わせることにより、低濃度の含糖酸化鉄を含む注射用含糖酸化鉄製剤においても、長期間にわたってpH安定性およびコロイド粒子の分散安定性が保たれることを見出し、本発明を完成させた。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、0.2〜0.4%(w/v)の鉄に相当する含糖酸化鉄、0.25〜0.5%(w/v)のアルギニン、および10〜20%(w/v)のスクロースを含有する。 1つの実施態様では、上記含糖酸化鉄はコロイドであって、該コロイドの平均粒子径は10〜1000nmである。 他の実施態様では、上記注射用含糖酸化鉄製剤のpHは9.0〜10.0である。 本発明はまた、上記注射用含糖酸化鉄製剤を含むプレフィルドシリンジ製剤を提供する。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、使用時に希釈することなく患者に投与することができる。本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、保存安定性に優れるため、pH低下やコロイド粒子の凝集を生じることなく、長期間の保存が可能である。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、0.2〜0.4%(w/v)の鉄に相当する含糖酸化鉄、0.25〜0.5%(w/v)のアルギニンおよび10〜20%(w/v)のスクロースを含有する。 含糖酸化鉄(Saccharated Ferric Oxide)は、式[Fe(OH)3]m[C12H22O11]n(m、nは1以上の整数)で表され、CASにも登録されている(CAS8047−67−4)。糖はショ糖(スクロース)である。物理的性状としては、帯赤褐色〜暗褐色の粉末で、においはなく、味は甘い。水に極めて溶けやすく、メタノール、ジエチルエーテルまたはクロロホルムにほとんど溶けない。含糖酸化鉄は、好ましくはコロイド化されている(コロイド分散液)。含糖酸化鉄のコロイド分散液は、複数分子の水酸化第二鉄とショ糖とが会合して生じたコロイド粒子が、沈殿することなく安定的に分散した状態の液である。含糖酸化鉄のコロイド分散液としては、例えば、含糖酸化鉄注射液(フェジン(登録商標)静注40mg)に含有されるものが挙げられる。含糖酸化鉄のコロイド粒子の平均粒子径は10〜1000nmであり、好ましくは10〜30nmである。コロイド粒子の粒子径は、例えば、動的光散乱式粒径分布測定装置などを用いて測定することができる。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤に含有される含糖酸化鉄の割合は、鉄として0.2〜0.4%(w/v)であり、好ましくは0.2%(w/v)である。0.4%(w/v)を超えると、使用時に希釈して患者に投与しなければならなくなり、0.2%(w/v)未満では、鉄の補給という治療効果を発揮できない。 アルギニンは、塩基性アミノ酸の一種であり、その水溶液は緩衝作用を有する。本発明の注射用含糖酸化鉄製剤に含有されるアルギニンは、好ましくはL−体のアルギニン(L−アルギニン)である。 アルギニンの割合は、注射用含糖酸化鉄製剤のpHを9〜10のアルカリ性条件で維持する観点から、0.25〜0.5%(w/v)であり、好ましくは0.3〜0.5%(w/v)である。0.25%(w/v)未満では、十分な緩衝作用が得られず、pHを安定させることができない。0.5%(w/v)を超えると、緩衝作用が強すぎるため、静脈内に投与された製剤が中性に戻りにくくなり、血管刺激や溶血などを生じるおそれがある。また、製剤の変化点pH(沈殿を生じるpH)が高くなるため、変化点pHが血液のpH(pH7.35〜7.45)に近くなり、投与された製剤が血管内で沈殿を生じるおそれがある。 スクロースは、グルコースとフルクトースとがグリコシド結合した二糖類であり、ショ糖とも呼ばれる。 スクロースの割合は、注射用含糖酸化鉄製剤中のコロイド粒子凝集を抑制し、長期間にわたってコロイド粒子の分散安定性を保つ観点から、10〜20%(w/v)、好ましくは15〜20%(w/v)である。10%(w/v)未満では、コロイド粒子を安定化させることができず、20%(w/v)を超えると、浸透圧が大きくなり、投与時の疼痛などの刺激性が高くなる。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤では、一般に等張化剤として用いられる塩化ナトリウムは、コロイド粒子を不安定化するおそれがあるため用いることはできない。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤のpHは、pH9〜10である。pH9未満ではコロイド粒子の凝集が生じ、コロイドの粒子径が増加する。さらにpHが低下すると、混濁および結晶が析出する。pHが10を超えると、静脈炎の発生頻度が増す。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、例えば、含糖酸化鉄のコロイド分散液に水、アルギニンおよびスクロースを添加して各成分を所定の含有割合に調整することにより製造される。pHの調整には、好ましくは塩酸が用いられる。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、ガラス製または樹脂製のアンプル、ボトル、バッグ、プレフィルド用シリンジなどに収容されて保存されるが、保存容器は特に限定されない。本発明の製剤は、上記容器内に5〜200mL収容され、1〜30℃で保存される。利便性の高さから、プレフィルド用シリンジに収容して保存することが好ましい。製剤の量が5〜20mLの場合は、アンプルまたはプレフィルド用シリンジに収容して保存することが好ましい。製剤の量が多い場合、例えば、20mLを超える場合には、ボトルまたはバッグに収容して保存することが好ましい。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、使用時に保存容器から注射器に吸引し、希釈することなく患者に投与できる。 本発明のプレフィルドシリンジ製剤は、上記の注射用含糖酸化鉄製剤を含む。プレフィルドシリンジ製剤は、通常、ガラス製または樹脂製のシリンジの先端にゴム栓を装着し、シリンジ内に上記の注射用含糖酸化鉄製剤を充填し、基端をガスケットで密封した後に、プランジャーロッドをガスケットに連結させることにより製造されるが、製造方法は特に限定されない。 本発明のプレフィルドシリンジ製剤は、使用時に先端のゴム栓を取り外し、注射針を取り付けて使用する。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、あらかじめ必要な鉄量を算出して投与する。総投与鉄量は、不足鉄量に貯蔵鉄を加算して算出する。1日あたりの投与量は、投与対象者の状況(症状、年齢、体重など)に応じて異なる。通常、成人に対して、1日あたり鉄として40〜120mgを2分以上かけて徐々に静脈内注射する。したがって、本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、好ましくは40〜120mgの鉄に相当する含糖酸化鉄を含有する。 以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 (実施例1:注射用含糖酸化鉄製剤の製造) 2%(w/v)の鉄に相当する含糖酸化鉄のコロイド分散液(フェジン(登録商標)静注40mg、日医工株式会社製)に適量の水を加えた。次いで、最終濃度0.25%(w/v)になるようにアルギニン(特級、和光純薬工業株式会社製)を添加し、さらに最終濃度10%(w/v)になるようにスクロース(日本薬局方、和光純薬工業株式会社製)を添加した。その後、液のpHを塩酸を用いて10に調整し、さらに水を加えて、0.2%(w/v)の鉄に相当する含糖酸化鉄を含む注射用含糖酸化鉄製剤(製剤1)を製造した。各成分の含有割合(最終濃度)は、表1に示すとおりである。 (実施例2:注射用含糖酸化鉄製剤の製造) 最終濃度0.5%(w/v)になるようにアルギニンを添加したこと以外は実施例1と同様にして、各成分の最終濃度が表1に示すとおりとなるように注射用含糖酸化鉄製剤(製剤2)を製造した。 (実施例3:注射用含糖酸化鉄製剤の製造) 最終濃度15%(w/v)になるようにスクロースを添加したこと以外は実施例1と同様にして、各成分の最終濃度が表1に示すとおりとなるように注射用含糖酸化鉄製剤(製剤3)を製造した。 (実施例4:注射用含糖酸化鉄製剤の製造) 最終濃度20%(w/v)になるようにスクロースを添加したこと以外は実施例1と同様にして、各成分の最終濃度が表1に示すとおりとなるように注射用含糖酸化鉄製剤(製剤4)を製造した。 (比較例1:注射用含糖酸化鉄製剤の製造) アルギニンを添加しなかったことおよび液のpHを塩酸を用いて10に調整しなかったこと以外は実施例1と同様にして、各成分の含有割合(最終濃度)が表1に示すとおりとなるように注射用含糖酸化鉄製剤(製剤a)を製造した。製剤aのpHの初期値は9.86であった。 (比較例2:注射用含糖酸化鉄製剤の製造) 最終濃度4%(w/v)になるようにスクロースを添加したこと以外は実施例1と同様にして、各成分の最終濃度が表1に示すとおりとなるように注射用含糖酸化鉄製剤(製剤b)を製造した。 (実施例5:pH安定性試験) 上記実施例1、2および比較例1で製造した注射用含糖酸化鉄製剤(それぞれ製剤1、2およびa)を、製剤製造後すぐにネジ蓋付きポリプロピレン製試験管に収容して密封し、60℃または40℃の恒温器に入れて保存した。保存中の製剤のpHの経時変化を、pHメーター(堀場製作所社製)を用いて測定した。60℃における結果を表2に、40℃における結果を表3にそれぞれ示す。表中の「経過期間」は、製造日を起算日とした経過日数または経過月数を示す。 表2および表3から明らかなように、保存中に製剤aはpHが大きく低下し、60℃で3日経過後、40℃で14日経過後にpH9を下回った。これに対し、製剤1および2はpHの低下が抑制され、60℃では14日経過後、40℃では4月経過後も、pH9〜10の範囲内に維持されていた。これらの結果から、注射用含糖酸化鉄製剤にアルギニンを添加することにより、長期間にわたってpHの低下が抑制されることがわかった。 (実施例6:コロイド粒子の分散安定性試験) 実施例2〜4および比較例2で製造した注射用含糖酸化鉄製剤(それぞれ製剤2〜4およびb)を、製剤製造後すぐにポリプロピレン製プレフィルドシリンジに収容して密封し、40℃の恒温器に入れて保存した。保存中の製剤中のコロイド粒子の平均粒子径の経時変化を、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550(堀場製作所社製)を用いて測定した。結果を表4に示す。表中の「経過期間」は、製造日を起算日とした経過日数または経過月数を示す。 表4から明らかなように、保存中に製剤bは粒子径が大きく増加したのに対し、製剤2〜4は粒子径の増加が抑制されていた。注射用含糖酸化鉄製剤にスクロースを添加することにより、製剤中のコロイド粒子の凝集が抑制され、長期間にわたってコロイド粒子の分散安定性が保たれることがわかった。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、使用時に希釈することなく患者に投与することができる。本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、保存安定性に優れるため、pH低下やコロイド粒子の凝集を生じることなく、長期間の保存が可能である。また、医療従事者による希釈作業が不要であるため、薬液調製時の過誤の発生を防ぐことができ、医療従事者の負担を軽減することができる。また、本発明のプレフィルドシリンジ製剤は、注射用含糖酸化鉄製剤の保存容器から注射器への移し替えを必要としないため、細菌汚染や異物混入の可能性を低減し、救急時の迅速な投与を可能にする。 0.2〜0.4%(w/v)の鉄に相当する含糖酸化鉄、0.25〜0.5%(w/v)のアルギニン、および10〜20%(w/v)のスクロースを含有する、注射用含糖酸化鉄製剤。 前記含糖酸化鉄がコロイドであって、該コロイドの平均粒子径が10〜1000nmである、請求項1に記載の注射用含糖酸化鉄製剤。 pHが9〜10である、請求項1または2に記載の注射用含糖酸化鉄製剤。 請求項1から3のいずれかの項に記載の注射用含糖酸化鉄製剤を含むプレフィルドシリンジ製剤。 【課題】使用時に希釈することなく患者に投与することができ、かつ、保存安定性に優れた注射用含糖酸化鉄製剤を提供すること。【解決手段】本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、0.2〜0.4%(w/v)の鉄に相当する含糖酸化鉄、0.25〜0.5%(w/v)のアルギニン、および10〜20%(w/v)のスクロースを含有する。好適には、上記含糖酸化鉄はコロイドであって、該コロイドの平均粒子径は10〜1000nmであり、上記注射用含糖酸化鉄製剤のpHは9〜10である。また、上記注射用含糖酸化鉄製剤は、好ましくはプレフィルド用シリンジに収容される。【選択図】なし


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特許公報(B2)_注射用含糖酸化鉄製剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_注射用含糖酸化鉄製剤
出願番号:2010196214
年次:2014
IPC分類:A61K 33/26,A61K 47/26,A61K 47/18,A61K 9/10,A61P 7/06


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西山 要 城内 豊 河上 直美 JP 5597490 特許公報(B2) 20140815 2010196214 20100901 注射用含糖酸化鉄製剤 ニプロ株式会社 000135036 進藤 卓也 100163647 中道 佳博 100182084 日医工株式会社 592073695 進藤 卓也 100163647 西山 要 城内 豊 河上 直美 20141001 A61K 33/26 20060101AFI20140911BHJP A61K 47/26 20060101ALI20140911BHJP A61K 47/18 20060101ALI20140911BHJP A61K 9/10 20060101ALI20140911BHJP A61P 7/06 20060101ALI20140911BHJP JPA61K33/26A61K47/26A61K47/18A61K9/10A61P7/06 A61K 33/00 A61K 9/00 A61K 47/00 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 医薬ジャーナル,1998年,24(10),pp.2295-2301 4 2012051841 20120315 8 20130627 清野 千秋 本発明は、注射用含糖酸化鉄製剤に関する。詳細には、使用時に希釈することなく患者に投与することができ、かつ、保存安定性に優れた注射用含糖酸化鉄製剤に関する。 鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足し、ヘモグロビンの生産が十分に行われないために生じる貧血である。鉄欠乏性貧血の治療は、不足している鉄を補給することにより行われる。鉄の補給には、原則として経口鉄剤が用いられるが、胃腸疾患等で経口投与ができない場合や、胃腸障害等の副作用が強い場合など、経口鉄剤の投与が困難または不適当な場合に限り、静注用鉄剤が用いられる。静注用鉄剤としては、含糖酸化鉄注射液(商品名:フェジン(登録商標)静注40mg(以下、単に「フェジン(登録商標)」と記載する場合がある)、日医工株式会社製)、シデフェロン製剤(商品名:フェリコン(登録商標)鉄静注液50mg、日本臓器製薬株式会社製)などが市販されている。静注用鉄剤を用いて静脈内投与を行う場合、急激な投与による副作用を防ぐために、投与量および投与速度に十分に注意する必要がある。 含糖酸化鉄注射液(フェジン(登録商標))は、水酸化第二鉄をショ糖(スクロース)でコロイド化した製剤である。2分以上かけて徐々に静脈内注射する必要があるため、通常、使用時に希釈して用いられる(非特許文献1)。希釈に用いる溶液の種類によっては、希釈によりコロイドが不安定となって鉄イオンが遊離し、発熱、悪心、嘔吐などを生じる場合がある。そのため、希釈は、臨床上安全性が確認されている10〜20%のブドウ糖注射液による5〜10倍希釈に限定されている。しかし、ブドウ糖注射液で希釈すると経時的にpHが低下し、混濁および結晶析出が生じるため、長期間保存することができず、用時調製しなければならない(非特許文献2)。このため、薬液調製時に過誤が発生するおそれがあり、医療従事者の負担が増大するという問題がある。「フェジン(登録商標)静注40mg」添付文書、2007年11月改訂(第2版)日医工株式会社、医薬品インタビューフォーム「フェジン(登録商標)静注40mg」、2008年1月改訂(第4版) 本発明は、使用時に希釈することなく患者に投与することができ、かつ、保存安定性に優れた注射用含糖酸化鉄製剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、含糖酸化鉄とアルギニンとスクロースとを組み合わせることにより、低濃度の含糖酸化鉄を含む注射用含糖酸化鉄製剤においても、長期間にわたってpH安定性およびコロイド粒子の分散安定性が保たれることを見出し、本発明を完成させた。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、0.2〜0.4%(w/v)の鉄に相当する含糖酸化鉄、0.25〜0.5%(w/v)のアルギニン、および10〜20%(w/v)のスクロースを含有する。 1つの実施態様では、上記含糖酸化鉄はコロイドであって、該コロイドの平均粒子径は10〜1000nmである。 他の実施態様では、上記注射用含糖酸化鉄製剤のpHは9.0〜10.0である。 本発明はまた、上記注射用含糖酸化鉄製剤を含むプレフィルドシリンジ製剤を提供する。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、使用時に希釈することなく患者に投与することができる。本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、保存安定性に優れるため、pH低下やコロイド粒子の凝集を生じることなく、長期間の保存が可能である。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、0.2〜0.4%(w/v)の鉄に相当する含糖酸化鉄、0.25〜0.5%(w/v)のアルギニンおよび10〜20%(w/v)のスクロースを含有する。 含糖酸化鉄(Saccharated Ferric Oxide)は、式[Fe(OH)3]m[C12H22O11]n(m、nは1以上の整数)で表され、CASにも登録されている(CAS8047−67−4)。糖はショ糖(スクロース)である。物理的性状としては、帯赤褐色〜暗褐色の粉末で、においはなく、味は甘い。水に極めて溶けやすく、メタノール、ジエチルエーテルまたはクロロホルムにほとんど溶けない。含糖酸化鉄は、好ましくはコロイド化されている(コロイド分散液)。含糖酸化鉄のコロイド分散液は、複数分子の水酸化第二鉄とショ糖とが会合して生じたコロイド粒子が、沈殿することなく安定的に分散した状態の液である。含糖酸化鉄のコロイド分散液としては、例えば、含糖酸化鉄注射液(フェジン(登録商標)静注40mg)に含有されるものが挙げられる。含糖酸化鉄のコロイド粒子の平均粒子径は10〜1000nmであり、好ましくは10〜30nmである。コロイド粒子の粒子径は、例えば、動的光散乱式粒径分布測定装置などを用いて測定することができる。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤に含有される含糖酸化鉄の割合は、鉄として0.2〜0.4%(w/v)であり、好ましくは0.2%(w/v)である。0.4%(w/v)を超えると、使用時に希釈して患者に投与しなければならなくなり、0.2%(w/v)未満では、鉄の補給という治療効果を発揮できない。 アルギニンは、塩基性アミノ酸の一種であり、その水溶液は緩衝作用を有する。本発明の注射用含糖酸化鉄製剤に含有されるアルギニンは、好ましくはL−体のアルギニン(L−アルギニン)である。 アルギニンの割合は、注射用含糖酸化鉄製剤のpHを9〜10のアルカリ性条件で維持する観点から、0.25〜0.5%(w/v)であり、好ましくは0.3〜0.5%(w/v)である。0.25%(w/v)未満では、十分な緩衝作用が得られず、pHを安定させることができない。0.5%(w/v)を超えると、緩衝作用が強すぎるため、静脈内に投与された製剤が中性に戻りにくくなり、血管刺激や溶血などを生じるおそれがある。また、製剤の変化点pH(沈殿を生じるpH)が高くなるため、変化点pHが血液のpH(pH7.35〜7.45)に近くなり、投与された製剤が血管内で沈殿を生じるおそれがある。 スクロースは、グルコースとフルクトースとがグリコシド結合した二糖類であり、ショ糖とも呼ばれる。 スクロースの割合は、注射用含糖酸化鉄製剤中のコロイド粒子凝集を抑制し、長期間にわたってコロイド粒子の分散安定性を保つ観点から、10〜20%(w/v)、好ましくは15〜20%(w/v)である。10%(w/v)未満では、コロイド粒子を安定化させることができず、20%(w/v)を超えると、浸透圧が大きくなり、投与時の疼痛などの刺激性が高くなる。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤では、一般に等張化剤として用いられる塩化ナトリウムは、コロイド粒子を不安定化するおそれがあるため用いることはできない。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤のpHは、pH9〜10である。pH9未満ではコロイド粒子の凝集が生じ、コロイドの粒子径が増加する。さらにpHが低下すると、混濁および結晶が析出する。pHが10を超えると、静脈炎の発生頻度が増す。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、例えば、含糖酸化鉄のコロイド分散液に水、アルギニンおよびスクロースを添加して各成分を所定の含有割合に調整することにより製造される。pHの調整には、好ましくは塩酸が用いられる。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、ガラス製または樹脂製のアンプル、ボトル、バッグ、プレフィルド用シリンジなどに収容されて保存されるが、保存容器は特に限定されない。本発明の製剤は、上記容器内に5〜200mL収容され、1〜30℃で保存される。利便性の高さから、プレフィルド用シリンジに収容して保存することが好ましい。製剤の量が5〜20mLの場合は、アンプルまたはプレフィルド用シリンジに収容して保存することが好ましい。製剤の量が多い場合、例えば、20mLを超える場合には、ボトルまたはバッグに収容して保存することが好ましい。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、使用時に保存容器から注射器に吸引し、希釈することなく患者に投与できる。 本発明のプレフィルドシリンジ製剤は、上記の注射用含糖酸化鉄製剤を含む。プレフィルドシリンジ製剤は、通常、ガラス製または樹脂製のシリンジの先端にゴム栓を装着し、シリンジ内に上記の注射用含糖酸化鉄製剤を充填し、基端をガスケットで密封した後に、プランジャーロッドをガスケットに連結させることにより製造されるが、製造方法は特に限定されない。 本発明のプレフィルドシリンジ製剤は、使用時に先端のゴム栓を取り外し、注射針を取り付けて使用する。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、あらかじめ必要な鉄量を算出して投与する。総投与鉄量は、不足鉄量に貯蔵鉄を加算して算出する。1日あたりの投与量は、投与対象者の状況(症状、年齢、体重など)に応じて異なる。通常、成人に対して、1日あたり鉄として40〜120mgを2分以上かけて徐々に静脈内注射する。したがって、本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、好ましくは40〜120mgの鉄に相当する含糖酸化鉄を含有する。 以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 (実施例1:注射用含糖酸化鉄製剤の製造) 2%(w/v)の鉄に相当する含糖酸化鉄のコロイド分散液(フェジン(登録商標)静注40mg、日医工株式会社製)に適量の水を加えた。次いで、最終濃度0.25%(w/v)になるようにアルギニン(特級、和光純薬工業株式会社製)を添加し、さらに最終濃度10%(w/v)になるようにスクロース(日本薬局方、和光純薬工業株式会社製)を添加した。その後、液のpHを塩酸を用いて10に調整し、さらに水を加えて、0.2%(w/v)の鉄に相当する含糖酸化鉄を含む注射用含糖酸化鉄製剤(製剤1)を製造した。各成分の含有割合(最終濃度)は、表1に示すとおりである。 (実施例2:注射用含糖酸化鉄製剤の製造) 最終濃度0.5%(w/v)になるようにアルギニンを添加したこと以外は実施例1と同様にして、各成分の最終濃度が表1に示すとおりとなるように注射用含糖酸化鉄製剤(製剤2)を製造した。 (実施例3:注射用含糖酸化鉄製剤の製造) 最終濃度15%(w/v)になるようにスクロースを添加したこと以外は実施例1と同様にして、各成分の最終濃度が表1に示すとおりとなるように注射用含糖酸化鉄製剤(製剤3)を製造した。 (実施例4:注射用含糖酸化鉄製剤の製造) 最終濃度20%(w/v)になるようにスクロースを添加したこと以外は実施例1と同様にして、各成分の最終濃度が表1に示すとおりとなるように注射用含糖酸化鉄製剤(製剤4)を製造した。 (比較例1:注射用含糖酸化鉄製剤の製造) アルギニンを添加しなかったことおよび液のpHを塩酸を用いて10に調整しなかったこと以外は実施例1と同様にして、各成分の含有割合(最終濃度)が表1に示すとおりとなるように注射用含糖酸化鉄製剤(製剤a)を製造した。製剤aのpHの初期値は9.86であった。 (比較例2:注射用含糖酸化鉄製剤の製造) 最終濃度4%(w/v)になるようにスクロースを添加したこと以外は実施例1と同様にして、各成分の最終濃度が表1に示すとおりとなるように注射用含糖酸化鉄製剤(製剤b)を製造した。 (実施例5:pH安定性試験) 上記実施例1、2および比較例1で製造した注射用含糖酸化鉄製剤(それぞれ製剤1、2およびa)を、製剤製造後すぐにネジ蓋付きポリプロピレン製試験管に収容して密封し、60℃または40℃の恒温器に入れて保存した。保存中の製剤のpHの経時変化を、pHメーター(堀場製作所社製)を用いて測定した。60℃における結果を表2に、40℃における結果を表3にそれぞれ示す。表中の「経過期間」は、製造日を起算日とした経過日数または経過月数を示す。 表2および表3から明らかなように、保存中に製剤aはpHが大きく低下し、60℃で3日経過後、40℃で14日経過後にpH9を下回った。これに対し、製剤1および2はpHの低下が抑制され、60℃では14日経過後、40℃では4月経過後も、pH9〜10の範囲内に維持されていた。これらの結果から、注射用含糖酸化鉄製剤にアルギニンを添加することにより、長期間にわたってpHの低下が抑制されることがわかった。 (実施例6:コロイド粒子の分散安定性試験) 実施例2〜4および比較例2で製造した注射用含糖酸化鉄製剤(それぞれ製剤2〜4およびb)を、製剤製造後すぐにポリプロピレン製プレフィルドシリンジに収容して密封し、40℃の恒温器に入れて保存した。保存中の製剤中のコロイド粒子の平均粒子径の経時変化を、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550(堀場製作所社製)を用いて測定した。結果を表4に示す。表中の「経過期間」は、製造日を起算日とした経過日数または経過月数を示す。 表4から明らかなように、保存中に製剤bは粒子径が大きく増加したのに対し、製剤2〜4は粒子径の増加が抑制されていた。注射用含糖酸化鉄製剤にスクロースを添加することにより、製剤中のコロイド粒子の凝集が抑制され、長期間にわたってコロイド粒子の分散安定性が保たれることがわかった。 本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、使用時に希釈することなく患者に投与することができる。本発明の注射用含糖酸化鉄製剤は、保存安定性に優れるため、pH低下やコロイド粒子の凝集を生じることなく、長期間の保存が可能である。また、医療従事者による希釈作業が不要であるため、薬液調製時の過誤の発生を防ぐことができ、医療従事者の負担を軽減することができる。また、本発明のプレフィルドシリンジ製剤は、注射用含糖酸化鉄製剤の保存容器から注射器への移し替えを必要としないため、細菌汚染や異物混入の可能性を低減し、救急時の迅速な投与を可能にする。 0.2〜0.4%(w/v)の鉄に相当する含糖酸化鉄、0.25〜0.5%(w/v)のアルギニン、および10〜20%(w/v)のスクロースを含有する、注射用含糖酸化鉄製剤。 前記含糖酸化鉄がコロイドであって、該コロイドの平均粒子径が10〜1000nmである、請求項1に記載の注射用含糖酸化鉄製剤。 pHが9〜10である、請求項1または2に記載の注射用含糖酸化鉄製剤。 請求項1から3のいずれかの項に記載の注射用含糖酸化鉄製剤を含むプレフィルドシリンジ製剤。


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