タイトル: | 特許公報(B1)_オリゴ糖の精製方法 |
出願番号: | 2010188933 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C08B 37/00,B01D 15/08,C07H 3/06 |
塚本 貞次 水▲崎▼ 幸一 JP 4603625 特許公報(B1) 20101008 2010188933 20100825 オリゴ糖の精製方法 塚本 貞次 510230816 渕上 宏二 100140006 塚本 貞次 水▲崎▼ 幸一 20101222 C08B 37/00 20060101AFI20101202BHJP B01D 15/08 20060101ALI20101202BHJP C07H 3/06 20060101ALI20101202BHJP JPC08B37/00B01D15/08C07H3/06 C08B 37/ B01D 15/ C07H 3/ CAplus/REGISTRY(STN) 特開2006−206572(JP,A) 特開平01−252276(JP,A) 特開2006−206573(JP,A) 2 6 20100825 井上 典之本発明は、ニンニク由来のオリゴ糖を精製する方法に関する。近年、植物に由来する種々のオリゴ糖が精製されている。例えば三糖類では、甜菜、大豆などに少量存在する、ガラクトース、グルコース、フルクトースの各1分子からなるラフィノースや、四糖類では、大豆やちょろぎに存在する、ガラクトース2分子、グルコース、フルクトースの各1分子からなるスタキオースなどがある。オリゴ糖はヒトの消化酵素では分解されず、腸内のビフィズス菌などのいわゆる善玉菌を増殖する効果が確認されており、整腸作用や生活習慣病の予防を期待して様々な健康食品に利用されている。生ニンニクは、糖質が全質量の26%から30%を占め、乾燥物換算では約80%となる。主成分はフルクタンであり、細胞壁の多糖成分としてガラクタンなども報告されている。また単糖類としてグルコース、フルクトース、二糖類としてスクロース、三糖類としてフルクトフラノシルスクロース、四糖類としてフルクトース4分子からなるスコロドースなどが報告されている(非特許文献1参照)。このニンニク由来のオリゴ糖を精製する方法としては、発明者が提案した、熱水抽出、硫安分画、ゲル濾過およびイオン交換クロマトグラフィー、凍結乾燥による精製方法が知られている(特許文献1参照)。特開2006−206572号公報斉藤洋著「ニンニクの科学」朝倉書店、2000年、p.104前述のように、ニンニク由来のオリゴ糖は多様な糖類からなり、これを高い純度で精製できれば種々の用途において有用である。しかし、前述の精製方法によって得られる凍結乾燥物に含まれる糖質は全質量の64%と必ずしも高いものではない。本発明は、ニンニクから高純度のオリゴ糖を得ることができる精製方法を提供することを目的とする。本発明は、弱陰イオン交換樹脂を用いてニンニク抽出液中からオリゴ糖を溶出させるに際して、溶出液として水のみを使用し、レクチンを吸着除去することを特徴とする、オリゴ糖の精製方法を提供する。本発明において、ニンニクは、新鮮な生ニンニクが好適であるが、陰乾したものなど保存用に加工したものを用いることもできる。本発明において、ニンニク抽出液とは、ニンニクに含まれるオリゴ糖が溶解した溶液をいう。本発明において、溶出液とは、弱陰イオン交換樹脂を充填したカラムを通してオリゴ糖を溶出させるために用いる溶液である。溶出液としては蒸留水が好適であるが、純粋や超純水、イオン交換水など他の精製水を用いることもできる。従来、イオン交換クロマトグラフィーでは、溶出液として酢酸緩衝液やリン酸緩衝液等の緩衝液が用いられるのが一般的であるが、本発明においてはこのような緩衝液は一切用いることなく、水、特に蒸留水のみでオリゴ糖を溶出する。その結果、従来は達成できなかった高純度のオリゴ糖が精製されるに至った。この理由としては、緩衝液を用いた場合には、透析を行っても緩衝液の成分と思われる化合物が僅かに残留し、それが凍結乾燥の際の水分の完全除去を妨げていることが考えられる。溶出液として水を用いることにより、ニンニク抽出液中のオリゴ糖は弱陰イオン交換樹脂に吸着されることなく溶出し、レクチンのみが吸着される。そのため、比較的短く、小さいカラムであっても、ニンニク抽出液からオリゴ糖とレクチンを分離、精製することができる。さらに本発明は、オリゴ糖を溶出させた後に、ニンニク抽出液中から吸着除去されたレクチンを、溶出液を塩化ナトリウムに変更して溶出させる、オリゴ糖の精製方法を提供する。本発明によって得られた高純度のオリゴ糖は、例えば免疫の活性化するための薬剤や食材等に用いることができる。またオリゴ糖の溶出液として緩衝液ではなく水を用いたことによって透析工程を省くことができるようになり、オリゴ糖の精製コストを削減することができる。生ニンニク抽出物を含む溶液のイオン交換クロマトグラフィーを示すグラフ以下、本発明の実施の形態について説明する。ニンニクは、同量の蒸留水とともにミキサーにかけ、粉砕処理を行う。処理物は綿布などで濾過し、濾液をフラスコなどに集める。濾液は熱処理を行い、その後室温に戻す。処理液は遠心分離機にかけて不要物を除去した後に塩析する。これを遠心分離機にかけ、沈殿物を得る。この沈殿物を蒸留水に溶かし、再び遠心分離機にかけて不要物を除去する。不要物を除去した処理液は蒸留水に対して透析する。透析された処理液は、蒸留水で平衡化されたカラム(DEAE−TOYOPEARL 650M)にかけ、弱陰イオン交換クロマトグラフィーを行う。溶出液としては、通常用いられる酢酸緩衝液やリン酸緩衝液等の緩衝液ではなく、蒸留水を用いる。溶出した処理液のうち490nmで高い吸光度を示す部分を集め、これを凍結乾燥する。本発明のオリゴ糖の精製方法を用いて行った実験結果を示す。何れも熊本県産の新ニンニクからオリゴ糖を単離精製する実験であり、日を変えて3回行った。実験の詳細を3回目のデータに基づいて説明する。皮をむき、鱗茎下部の硬い部分を除去した新ニンニク189gに蒸留水189mlを加え、ミキサーで2分間粉砕処理した。これを綿布を用いて濾過し、得た溶液を恒温槽で82℃で30分間加熱した。これを室温まで冷却し、遠心分離(10000rpm、10min、4℃)により不溶物を取り除き、上澄み182mlを得た。これに80%飽和となるように硫酸アンモニウム126gを攪拌しながら加え、4℃で15分間放置した後に再び遠心分離10000rpm、10min、4℃)を行い、沈殿物を得た。この沈殿物を蒸留水100mlに溶かし、不溶物を遠心分離(10000rpm、10min、4℃)により除去した。これにより得た上澄みをシームレスセルロースチューブに詰め、蒸留水に対して透析を行った。この透析は、3lの蒸留水を2日間にかけて5回交換して行った。透析により得た溶液は、Sephadex G−75カラムクロマトグラフィーによるゲル濾過を行ったところ、チューブ内の溶液にはオリゴ糖とレクチンのみが含まれていた。チューブ内の溶液115mlを、蒸留水で平衡化したDEAE−TOYOPEARL 650Mカラム(4.2×19.0cm)にかけ、蒸留水で溶出した。各フラクションに17mlずつ集め、26番目以降は溶出液を蒸留水から1MNaClに変更した。各フラクションから50μlずつ採取し、フェノール硫酸法により糖質の定量を行った。その結果を図1に表す。糖質を多く含む12番目から18番目のフラクションを集め、凍結乾燥を行った。この凍結乾燥物は、その含有量の100%が糖質であり、純物質であった。これにより1028mgのオリゴ糖が得られた。このオリゴ糖は、β−2,1結合した10個のフルクトースが、β−1,2結合で1個のグルコースと結合した分子量1800の化合物である。また、280nmで高い吸光度を示した37番目から43番目のフラクションを集め、蒸留水に対して透析した後、凍結乾燥を行った。これにより303mgのレクチンが得られた。DEAE−TOYOPEARL 650Mカラムは、約1lの蒸留水で洗うことにより再利用できた。1回目と2回目の実験についても同一の機材を用い、同一の工程を経て行った。1回目は、生ニンニク155gに対し、オリゴ糖1248mg、レクチン349mgを得た。2回目は、生ニンニク185gに対し、オリゴ糖1273mg、レクチン319mgを得た。DEAE−TOYOPEARL 650Mカラムは4.2×19.0cmという非常に短く、小さいものであるが、これに115mlもの溶液をかけて、オリゴ糖とレクチンを分離、精製することができるのは、溶出液として蒸留水を用いてオリゴ糖を吸着させることなく溶出し、レクチンのみを吸着させるようにしているからである。レクチンの等電点は4.3であり、蒸留水中ではマイナスに荷電しているので、DEAE−TOYOPEARL 650Mに吸着される。弱陰イオン交換樹脂を用いてニンニク抽出液中からオリゴ糖を溶出させるに際して、溶出液として水のみを使用し、レクチンを吸着除去することを特徴とする、オリゴ糖の精製方法。前記オリゴ糖を溶出させた後に、前記ニンニク抽出液中から吸着除去されたレクチンを、溶出液を塩化ナトリウムに変更して溶出させる、請求項1に記載のオリゴ糖の精製方法。【課題】ニンニクから高純度のオリゴ糖を得る。【解決手段】弱陰イオン交換樹脂を用いてニンニク抽出液中からオリゴ糖を溶出させるに際して、溶出液として水のみを使用し、レクチンを吸着除去する。【選択図】なし