タイトル: | 公開特許公報(A)_ごぼう茶葉粉末及びその製造方法 |
出願番号: | 2010186492 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A23L 1/30,A23L 1/212,A61K 36/28,A61K 36/00,A61P 9/12 |
井上 淳詞 原 浩一郎 田原 亜希子 灘 芽久美 豊田 太 JP 2012039980 公開特許公報(A) 20120301 2010186492 20100823 ごぼう茶葉粉末及びその製造方法 株式会社あじかん 000125912 磯野 道造 100064414 多田 悦夫 100111545 井上 淳詞 原 浩一郎 田原 亜希子 灘 芽久美 豊田 太 A23L 1/30 20060101AFI20120203BHJP A23L 1/212 20060101ALI20120203BHJP A61K 36/28 20060101ALI20120203BHJP A61K 36/00 20060101ALI20120203BHJP A61P 9/12 20060101ALI20120203BHJP JPA23L1/30 BA23L1/212 102ZA61K35/78 TA61K35/78 XA61K35/78 YA61P9/12 4 OL 12 4B016 4B018 4C088 4B016LC07 4B016LE02 4B016LG08 4B016LK08 4B016LP01 4B016LP08 4B018MD28 4B018MD47 4B018MD53 4B018ME04 4B018MF06 4B018MF07 4C088AB26 4C088AC10 4C088CA02 4C088CA30 4C088MA43 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZA42 本発明は、ごぼう茶葉粉末及びその製造方法に関する。 近年の消費者の健康志向を受け、消費者の健康向上を目的とした機能性食品のニーズが高まっている。これらの機能性食品の原料としては様々なものが用いられているが、例えば、日本において古くから親しまれ、食物繊維等が豊富なごぼう等が用いられている。具体的には、例えば特許文献1には、ごぼうを用いた機能性食品が記載されている。 また、ごぼうは食品用途以外にも用いられ、例えば特許文献2には、ごぼうから抽出した抽出液(ごぼうエキス)を用いた化粧料が記載されている。特開2004−24124号公報特開2010−13373号公報 例えばごぼうを食品用途として用いる場合、ごぼうは灰汁が強いため、食品として用いる場合には食べ易さの観点から灰汁抜き等の作業が必要になることがある。そして、ごぼうに対して灰汁抜きの作業を行った場合、ごぼうに含まれる例えばミネラル分等(例えばマグネシウムやカリウム等)が溶出することがあり、灰汁抜き後のごぼうを経口摂取しても(即ち食しても)ごぼうが当初有していたミネラル分等を十分に摂取できないことがある。 また、例えばごぼうエキスを含む化粧料においては、ごぼうエキスの抽出作業が煩雑であるという課題がある。また、ごぼうエキスは通常液体であるため、抽出後にごぼうエキスを保存するためには、ごぼうエキスの劣化を防止するために防腐剤等の添加が必要になることがあり、製造コスト高となったり、含まれる防腐剤等の添加剤によって、体質によっては肌アレルギーが引き起こされたりすることがある。 本発明は上記の課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、容易に摂取可能で高機能性のごぼう茶葉粉末及びその製造方法を提供することにある。 本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ごぼう茶葉粉末の平均粒径を特定の範囲とすることで、容易に摂取可能で高機能性のごぼう茶葉粉末及びその製造方法を提供することができることを見出し、本発明を完成させた。 本発明によれば、容易に摂取可能で高機能性のごぼう茶葉粉末及びその製造方法を提供することができる。 以下、本発明を実施するための形態(以下、適宜「本実施形態」と言う。)を詳細に説明するが、本実施形態は以下の内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。[1.ごぼう茶葉粉末] 本実施形態に係るごぼう茶葉粉末は、ごぼうを乾燥させて粉砕して得られるごぼう茶葉粉末であって、平均粒径が1μm以上100μm以下であるものである。 上記のように、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末の平均粒径は1μm以上、100μm以下であるが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、また、その上限は、好ましくは75μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは45μm以下である。ごぼう茶葉粉末の平均粒径が小さすぎる場合、ごぼう茶葉粉末が微粒子であるために細胞に取り込まれ、細胞蓄積、酸化ストレス等を増大させたり、吸収効率に影響を及ぼしたりする可能性がある。また、大きすぎる場合、経口摂取時の食感に違和感を覚えることがある。 なお、平均粒径は、粒子径(粒度)分布測定装置等(具体的には、例えば日機装社製 マイクロトラック(レーザー回折・散乱式 粒子径・粒度分布測定装置)等)を用いて測定することができる。但し、ここでの平均粒径は、メジアン(中央値)で示される平均粒径であり、相加平均(平均値)で示される平均粒径ではない。 また、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末には、通常不溶性食物繊維や可溶性食物繊維等の食物繊維が含まれる。含まれる食物繊維の量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末に含まれる不溶性食物繊維(具体的には、水に不溶若しくは難溶な食物繊維)の量としては、ごぼう茶葉粉末100gあたり、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、また、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。このような不溶性食物繊維の具体例としては、ヘミセルロース、リグニン等が挙げられ、上記の食物繊維量はこれらの含有総量を表す。 また、食物繊維としては、可溶性食物繊維(具体的には、水に可溶な食物繊維。即ち、水溶性食物繊維。)も通常は含まれる。その含有量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ごぼう茶葉粉末100gあたり、通常は25重量%以上、35重量%以下である。このような可溶性食物繊維の具体例としては、イヌリン、ペクチン等が挙げられる。 なお、含まれる食物繊維は、1種が単独であってもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで含まれていてもよい。 また、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末は、糖分を多く含むため経口摂取をし易いという利点がある。糖分の具体的な種類に特に制限はなく、例えばフルクトース等の単糖類、スクロース、イヌリン等の多糖類等が挙げられる(イヌリンについては後述する。)。具体的には例えば、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末に含まれるフルクトースの量は、ごぼう茶葉粉末1gあたり、通常29mg以上、また、その上限は、通常88mg以下、好ましくは45mg以下である。フルクトースの含有量が多すぎる場合、甘みが強すぎる可能性があり、少なすぎる場合、ごぼう特有の味が強くなりすぎ、経口摂取がしにくくなる可能性がある。 また、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末に含まれるスクロースの量は、ごぼう茶葉粉末1gあたり、通常30mg以上、好ましくは40mg以上、また、その上限は、通常70mg以下、好ましくは60mg以下である。スクロースの含有量が多すぎる場合、甘みが強すぎる可能性があり、少なすぎる場合、ごぼう特有の味が強くなりすぎ、経口摂取がしにくくなる可能性がある。 さらに、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末は、カリウムが豊富に含まれる。一方で、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末は、ナトリウムの含有量が少ない。 ここで、米国国立衛生研究所の報告によると、高血圧の対策として、1日あたり、カリウムを4700mg以上、マグネシウムを1250mg以上、カルシウムを500mg以上、食物繊維を30000mg以上、摂取できる食事を採ることが好ましいとされている(所謂「DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食」)。しかしながら、「日本人の食事摂取基準2010年版 厚生労働省発行」によると、30〜49歳男性の場合で、1日のカリウム摂取量が2000mg程度であることが明らかになっている。この数値は米国国立衛生研究所が提案するDASH食に含まれるカリウム量の半分以下であり、さらにカリウムを摂取できる食品が期待されている。 そこで、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末が創案されたのである。上記のように、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末はカリウムを多く含み、ナトリウムの含有量は少ないものである。従って、上記のように、経口摂取し易い本実施形態に係るごぼう茶葉粉末によれば、容易にカリウムを摂取することができる。また、ナトリウムの含有量が少ないため、血圧上昇を抑制することができる。 即ち、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末を経口摂取した場合に、体内に存在する例えばナトリウムイオン−カリウムイオン−ATPase等のイオンポンプ機構により、体内のナトリウムイオンの体外への排出が促進され、高ナトリウムイオン濃度に起因する高血圧を改善することができる。また、高カリウム含有量による利尿作用により、ナトリウムの体外排出も促される。従って、経口摂取し易い本実施形態に係るごぼう茶葉粉末によれば、容易に高血圧を改善することができる。 本実施形態に係るごぼう茶葉粉末に含まれる具体的なカリウムの量は、ごぼう茶葉粉末100gあたり、通常1500mg以上、好ましくは1700mg以上、また、その上限は、通常2000mg以下、好ましくは1800mg以下である。カリウムの含有量が少なすぎる場合、本発明の効果が十分に発揮されない可能性がある。また、カリウムの含有量が多すぎる場合、ごぼう茶葉粉末を経口摂取した場合にカリウムの摂取量が過剰なものとなる可能性がある。 なお、カリウムの含有量は、原子吸光分析法により測定することができる。 また、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末に含まれるナトリウムの量は、上記のように血圧上昇抑制の観点からできるだけ少ないことが好ましい。具体的には、ごぼう茶葉粉末100gあたりに含まれるナトリウムの含有量は、通常60mg以下、好ましくは50mg以下、特に好ましくは45mg以下である。ナトリウムの含有量が多すぎる場合、慢性的な過剰摂取になり、血圧が過度に上昇する可能性がある。なお、ナトリウムの含有量は、原子吸光分析法により測定することができる。 さらに、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末に含まれるマグネシウムの量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ごぼう茶葉粉末100gあたり、通常150mg以上、好ましくは175mg以上、より好ましくは200mg以上、また、その上限は、通常250mg以下、好ましくは225mg以下、より好ましくは210mg以下である。 また、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末に含まれるカルシウムの量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ごぼう茶葉粉末100gあたり、通常100mg以上、好ましくは150mg以上、より好ましくは200mg以上、また、その上限は、通常300mg以下、好ましくは275mg以下、より好ましくは250mg以下である。 また、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末を経口摂取した場合、上記の利点に加えて、肌の保水性が向上するという利点も有する。上記特許文献2に記載の技術のように、例えばごぼうエキスを含む化粧料を肌に直接塗布することにより、肌のうるおいが向上することが知られている。しかしながら、上記のように、化粧料に通常混合されうる防腐剤等によって例えば肌アレルギー等が生じる可能性がある。一方で、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末は、ごぼうを乾燥・粉砕させて製造されるものであるため、防腐剤等を含まなくとも通常は長期保存が可能である。従って、防腐剤等を通常は要さないため、食品アレルギー等を起こす可能性が極めて少ない。従って、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末は、単に経口摂取(即ち食する)ことにより、上記の高血圧改善効果に加え、肌の保水性向上という利点をも得ることができる。 肌の保水性が向上する理由は、本発明者らの検討によると、腸内環境が改善されたためであると考えられる。即ち、腸内環境と肌とには密接な関係があり、例えばスフィンゴ糖脂質(セラミド)、サポニン、ポリフェノール等が含まれる本実施形態に係るごぼう茶葉粉末を経口摂取することにより、腸内細菌叢(フローラ)が改善され、腸内毒素の低減や免疫力の改善によって、肌のバリア機能が改善されたり、角質層の形成が促進されたりしたためであると考えられる。 以上のように、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末によれば、日本人が不足しがちなカリウムを容易に摂取でき、さらに、高血圧改善効果も有し、そして、肌の保水性向上という利点も得ることができる。[2.ごぼう茶葉粉末の用途] 本実施形態に係るごぼう茶葉粉末は、任意の形態にて摂取することができる。例えば、急須等を用いてごぼう茶(ごぼう茶葉粉末抽出液)を淹れて摂取してもよいし、そのまま摂取してもよい。ただし、上記のように、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末は経口摂取し易く、容易に摂取できる観点から、そのまま摂取することが特に好ましい。 本実施形態に係るごぼう茶葉粉末をそのまま摂取する場合、その具体的な形態に制限は無い。例えば、粉末状のまま、例えば水等の飲料とともに摂取することができる。ただし、より摂取し易いという観点から、例えばクッキー、チップス、ケーキ、味噌汁等の食品に混合し、このような食品を摂取する形態とすることが好ましい。このような形態で摂取することにより、消費者に過度の負担を強いることなく、消費者が毎日容易に摂取することができる。 また、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末を経口摂取する場合、その摂取量に特に制限は無い。ただし、1日あたり、ごぼう茶葉粉末を通常5g〜50g程度、好ましくは5g〜30g程度摂取することが望ましい。これらの量は、1回でまとめて摂取してもよく、複数回に分けて摂取してもよい。[3.ごぼう茶葉粉末の製造方法] 本実施形態に係るごぼう茶葉粉末の製造方法(以下、適宜「本実施形態に係る製造方法」と言う。)は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、上記のように、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末は、ごぼうを乾燥させて粉砕して得られるものである。 以下、本実施形態に係る製造方法を具体例を挙げて説明するが、本実施形態に係る製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施可能である。 本実施形態に係る製造方法は、主に、(1)ごぼうに対して40℃以上70℃以下の温度において熱処理を行う前熱処理工程と、(2)前熱処理工程を経たごぼうに対して加熱乾燥処理を行う後熱処理工程と、(3)後熱処理工程を経たごぼうに対して焙煎処理を行う焙煎処理工程と、を含んでいる。また、必要に応じて、(4)その他の工程、も含むことができる。以下、それぞれの項目に分けて説明する。(1)前熱処理工程 前熱処理工程に供するごぼうとしては特に制限されないが、通常は採集後に土等の不要物を除去し、当該洗浄後のごぼうを用いる。また、予め所望の大きさに切断したものを用いてもよい。ただし、製造工程の簡便さ及び栄養成分流失予防の観点から、単に、採集後の土等の不要物を除去したごぼうをそのまま用いることが好ましい。 上記のように、通常は不要物を除去したごぼうに対し、前熱処理工程を行う。前熱処理工程の温度は、上記のように通常40℃以上、好ましくは45℃以上、また、その上限は、通常70℃以下、好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下である。温度が低すぎる場合、製造後のごぼう茶葉粉末を食した際に青臭さを感じることがあり、温度が高すぎる場合、ごぼうに含まれるイヌリン分解酵素が失活して糖(主にはフルクトース)が生成しなくなるため、食した際の甘みが減少する可能性がある。 また、前熱処理工程の時間は、ごぼうの長さや太さによって異なるため一概には言えないが、例えばスーパーマーケット等で販売されている一般的なごぼうを用いる場合、ごぼう内部の温度が50℃(即ちごぼう全体の温度が50℃)となっている状態で、15分間程度とすることができる。そして、このような処理を行うことにより、ごぼうが有する青臭さを低減させることができ、ごぼうを食したときに甘みをより感じさせることができる。また、ポリフェノールオキシダーゼ(至適温度は30℃〜40℃であり、通常は60℃程度で失活する。)を前熱処理工程によりある程度失活させることができ、その後の処理で、ポリフェノールの酵素的酸化の影響を受けにくくなる。 熱処理の具体的な方法に特に制限は無い。例えば、予め所望の温度に設定したインキュベータ(保温器)にごぼうを入れ、所望の時間保温するようにすることができる。また、例えば、ごぼう内部の温度を測定しながら例えば赤外線ヒータ等を用いてごぼうを直接加熱することもできる。さらに、例えば、所望の温度の熱風を直接ごぼうに吹き付けることにより、ごぼうを加熱することもできる。 本実施形態に係るごぼう茶葉粉末が甘みを有するのは、本発明者らの検討によると、主に、前熱処理工程において行われる酵素反応に基づくものであると考えられる。 ごぼうには、多数のフルクトース(果糖)がβ−グリコシド結合したイヌリンが多く含まれる。その具体的な量は、収穫時期や産地によって異なるため一概には言えないが、通常はごぼう100gあたり2g〜6gである。イヌリン自体は甘みを有するものではないが、ごぼうにはイヌリン分解酵素(ごぼう由来イヌリン分解酵素の至的温度は、通常は45℃〜55℃程度、至適pHは6〜8.5程度)も含まれ、前熱処理工程においてイヌリン分解酵素がイヌリンに対して作用することにより、イヌロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、フルクトース等が生成する。そして、この生成したイヌロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、フルクトース等により、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末は甘みを有するものになると考えられる。(2)後熱処理工程 後熱処理工程に供されるごぼうは、通常は、上記前熱処理工程を行った後に冷却されたものである。このように、上記前熱処理工程後にいったん冷却することにより、高温による酸化、褐変の抑制と味の低下、総ポリフェノール量の減少を抑えることができるという利点が得られる。 後熱処理工程の温度及び時間は特に制限されず、前熱処理工程を経たごぼうを完全に加熱乾燥できる程度の温度及び時間に設定すればよい。後熱処理工程における温度としては、例えば、50℃前後に設定することができる。また、後熱処理工程の時間はごぼうの長さや太さによって異なるため一概には言えないが、完全に乾燥できる程度の時間にすればよい。 また、加熱乾燥の具体的な方法や装置に特に制限は無く、上記前熱処理工程にて説明した方法や装置を適用すればよい。(3)焙煎処理工程 そして、上記後熱処理工程を経たごぼうに対して焙煎処理工程を行う。焙煎処理工程においては、ごぼうに対してアミノカルボニル反応が行われている。そしてごぼうを焙煎処理工程に供することにより、最終的に得られるごぼう茶葉粉末にごぼう特有のコクを与えることができる。焙煎温度及び時間は特に制限されないが、例えば180℃で10分〜15分程度とすることができる。(4)その他の工程 本実施形態に係る製造方法においては、上記の前熱処理工程と後熱処理工程と焙煎処理工程とを含む限り、他の工程は任意である。ただし、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末の形状は粉末状であるため、通常はごぼうを粉砕する粉砕工程も含む。 このような粉砕工程は、任意の時期に行うことができる。例えば、上記の前熱処理工程の前に行ってもよく、前熱処理工程及び後熱処理工程の間に行ってもよく、後熱処理工程の後に行ってもよい。ただし、ポリフェノールオキシダーゼが失活していない状態で粉砕すると黒変してしまうため、少なくとも前熱処理工程後に行うことが好ましい。また、粉砕が容易であるという観点から、後熱処理工程後に実施する焙煎処理工程の後に行うことが特に好ましい。 粉砕工程における粉砕の方法及び装置に特に制限は無い。従って、乾燥後のごぼう茶葉が[1.ごぼう茶葉粉末]に記載の大きさの粉末となるように、公知の任意の装置を用いて粉砕を行えばよい。このような装置としては、例えばボールミル等を用いることができる。 粉砕の程度及び時間についても特に制限されず、上記[1.ごぼう茶葉粉末]において説明した平均粒径をごぼう茶葉粉末が有する程度に粉砕条件を設定すればよい。 なお、粉砕を容易にする観点から、粉砕工程の前にごぼうを粉砕し易い大きさに切断する切断工程を有することも好ましい。切断工程における切断の方法や装置は、公知の任意のものを適用すればよい。 以下、実施例を挙げて本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。〔ごぼう茶葉粉末の製造方法〕 はじめに、50℃に設定したインキュベータ(品川工業所社製蒸庫 TA−3324)に水で洗浄して不要物を除去した後のごぼう(長さ70〜90cm、平均太さ(直径)2cm)をいれ、ごぼう内部の温度が50℃になってから15分間前熱処理を行った。前熱処理を行ったごぼうを冷却し、冷却後のごぼうを縦2mm、横2mm、高さ20mmの大きさとなるように切断し、切断後のごぼうを50℃にて完全に乾燥させた。そして、乾燥後のごぼうについて、180℃にて13分間焙煎し、「ごぼう茶葉」を得た。 得られたごぼう茶葉を用いて、Brixが2.83%となるように90℃で熱水抽出を行い、ごぼう茶葉抽出液(「ごぼう茶」)を得た。なお、参考例として、市販の麦茶(伊藤園社製)を用いて90℃で熱水抽出を行い、スクロース0.3重量%、塩化ナトリウム0.025重量%、ごぼうフレーバー(長岡香料社製NP15021BK)0.0125重量%となるようにそれぞれ混合し、模擬ごぼう茶葉抽出液(「模擬ごぼう茶」)を得た。 また、得られたごぼう茶葉に対して、気流式粉砕機(ミナミ産業社製 ミナクロンミニ)を用いて、平均粒径が20μmとなるように粉砕した。なお、平均粒径の測定は、日機装社製 マイクロトラック(レーザー回折・散乱式 粒子径・粒度分布測定装置)を用いて行った。そして、粉砕後のごぼう茶葉を「ごぼう茶葉粉末」として、上記のごぼう茶及び模擬ごぼう茶とともに、下記の〔評価試験〕に供した。 得られたごぼう茶葉粉末について、含まれるカリウム、ナトリウム、マグネシウム及びカルシウムの量を測定した。なお、カリウム及びナトリウムは原子吸光分析法(測定装置:バリアンテクノロジーズジャパンリミテッド社製フレーム原子吸光分光光度計AA 240FS)に基づき、マグネシウム及びカルシウムはICP発光分析法(測定装置:バリアンテクノロジーズジャパンリミテッド社製高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置Vista−Pro)に基づいて測定した。 その結果、ごぼう茶葉粉末100gあたり、カリウムの含有量は1740mg、ナトリウムの含有量は41.7mg、マグネシウムの含有量は201mg、カルシウムの含有量は223mgであった。 また、得られたごぼう茶葉粉末に含まれる食物繊維の量は、ごぼう茶葉粉末100gあたり65.5gであった。 さらに、得られたごぼう茶葉粉末について、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)を用いてフルクトース及びスクロースの含有量を測定した結果、フルクトースの含有量はごぼう茶葉粉末1gあたり40.5mg、スクロースの含有量は50.6mgであった。なお、測定に用いたHPLCは以下の通りである。・フルクトース含有量の測定 測定装置:島津製作所社製 LC−10ADvp 検出器:島津製作所社製 蛍光分光光度計 RF−10AXL カラム:和光純薬工業社製 Wakosil 5NH2 φ(直径)4.6×250mm・スクロース含有量の測定 測定装置:島津製作所社製 LC−10ADvp 検出器:島津製作所社製 示差屈折計 RID−10A カラム:昭和電工社製 Shodex Asahipak NH2P−50 4E φ(直径)4.6×250mm〔評価試験〕 評価試験は、以下に記載する方法に従って行った。 被験者の最高血圧、肌水分及び白血球数の測定は、以下の装置を用いて行った。・最高血圧 オムロンコーリン社製オシロメトリック自動血圧計BP−103iIIの装置を用いて測定した。・肌水分(上腕内側及び目尻) Scalar社製 MY−808Sを用いて測定した。・白血球数 シスメックス社製多項目自動血球分析装置XE−5000の装置を用いて測定した。 健康な被験者44名の被験者に対して、ごぼう茶500mL及び模擬ごぼう茶500mLを一日1本ずつ連続して2週間、経口摂取してもらった。グループA(22名)においてはごぼう茶を先に経口摂取してもらい、1週間休止期間を設けた後、模擬ごぼう茶を経口摂取してもらった。また、グループB(22名)においては模擬ごぼう茶を先に経口摂取してもらい、1週間休止期間を設けた後、ごぼう茶を経口摂取してもらった。その後、グループA及びBの全員に対して、ごぼう茶葉粉末を1日20gずつ2週間連続して経口摂取してもらった。 最高血圧、肌水分及び白血球数の測定時期は、評価試験開始前(測定ステージI)、模擬ごぼう茶の2週間連続経口摂取後(測定ステージII)、ごぼう茶の2週間連続経口摂取後(測定ステージIII)、及びごぼう茶葉粉末の2週間連続経口摂取後(測定ステージIV)の4回である。 それぞれの測定結果を表1に示す。なお、表1に示す結果は、被験者44名の平均値である。 上記表1に記載のように、測定ステージI及びIVを比較すると、測定ステージIVにおいては最高血圧が減少するとともに、肌水分が向上していた。 また、測定ステージIVにおいては、測定ステージIIと比較して白血球数も増加していた。この理由は明らかではないが、本発明者らの検討によると、ごぼう茶葉粉末に含まれる不溶性食物繊維量が多いためであると考えられる。従って、このような不溶性食物繊維が経口摂取後消化されずに腸に到達し、当該食物繊維を分解できる細菌等の微生物が増加し、腸内フローラに変化が生じたためであると考えられる。 また、上記のように、ごぼう茶葉粉末を経口摂取することにより血圧が減少する理由はイオンポンプや利尿作用等によるものであると考えられるが、本発明者らの検討によると、体内でのアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害の作用も血圧減少の一因であると考えられる。 ACEはアンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換する酵素であり、生成したアンジオテンシンIIが血圧上昇を促すことが知られている。そこで、本発明者らは、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末を経口摂取することにより最高血圧を減少させる(即ち血圧上昇を抑制できる)理由を検討するために、ごぼう茶葉粉末に含まれるACEの活性阻害効果を調べた。 以下に記載する方法に従って、ごぼう茶葉粉末に含まれるACEの活性を測定した。 はじめに、上記の製造方法に従って測定したごぼう茶葉粉末約1.0gを50体積%エタノール溶液20mLを加え、20℃で10分間振とうしながら超音波抽出した。その後遠心分離し、沈殿物をろ過して除去した後、得られたろ液を0.1M HEPES(4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid)緩衝液(pH8.3)にて10倍希釈し、試験溶液を調製した。即ち、この試験溶液1mLあたり、上記ごぼう茶葉粉末約5mgからの抽出物が含まれていることになる。 得られた試験溶液に対して、ACE活性を測定した。ACE活性測定方法は、Nakano et al.(Biosci. Biotechnol. Biochem.,70,1118頁〜1126頁(2006))に記載の方法に従って行った。即ち、基質(トリペプチド(Benzoyl−Gly−His−Leu))からACEにより分解されて生じるジペプチド(His−Leu)をオルトフタルアルデヒドにより蛍光化した後、反応物の蛍光強度を測定することにより、ACE活性を測定した。 陰性対照として試験溶液を含まない溶液を用い、当該溶液のACEの阻害活性を100%とした(即ち、酵素活性は0%)。また、アンジオテンシン阻害薬であるカプトプリル溶液(濃度10nmol/L)について同一条件にて試験を実施し、陽性対照とした。試験溶液、陰性対照溶液及び陽性対照溶液についての相対ACE阻害活性を表2に示す。 表2に記載のように、試験溶液はACE阻害効果を有していることが分かった。この結果は、本実施形態に係るごぼう茶葉粉末がACE阻害効果を有する物質を含有していることを表している。従って、ACE阻害効果を有する物質を含む本実施形態に係るごぼう茶葉粉末を経口摂取した場合に、当該物質が体内でアンジオテンシンIIの生成を抑制するために、血圧上昇を抑制することができると考えられる。 ごぼうを乾燥させて粉砕して得られるごぼう茶葉粉末であって、 平均粒径が1μm以上100μm以下であることを特徴とする、ごぼう茶葉粉末。 フルクトースを含み、 該フルクトースの含有量が、該ごぼう茶葉粉末1gあたり、29mg以上88mg以下であることを特徴とする、請求項1に記載のごぼう茶葉粉末。 不溶性食物繊維の含有量が20重量%以上30重量%以下であり、 水溶性食物繊維の含有量が25重量%以上35重量%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のごぼう茶葉粉末。 請求項1〜3の何れか1項に記載のごぼう茶葉粉末を製造する方法であって、 ごぼうに対して40℃以上70℃以下の温度において熱処理を行う前熱処理工程と、 該前熱処理工程を経たごぼうに対して加熱乾燥を行う後熱処理工程と、 該後熱処理工程を経たごぼうに対して焙煎処理を行う焙煎処理工程と、を含むことを特徴とする、ごぼう茶葉粉末の製造方法。 【課題】容易に摂取可能で高機能性のごぼう茶葉粉末及びその製造方法を提供する。【解決手段】ごぼうを乾燥させて粉砕して得られるごぼう茶葉粉末であって、該ごぼう茶葉粉末の平均粒径が1μm以上100μm以下であるごぼう茶葉粉末、並びに、ごぼうに対して40℃以上70℃以下の温度において熱処理を行う前熱処理工程と、該前熱処理工程を経たごぼうに対して加熱乾燥を行う後熱処理工程と、該後熱処理工程を経たごぼうに対して焙煎処理を行う焙煎処理工程と、を含むごぼう茶葉粉末の製造方法により、容易に摂取可能で高機能性のごぼう茶葉粉末及びその製造方法を提供することができる。【選択図】なし