タイトル: | 公開特許公報(A)_組織標本の凍結方法及び保存方法 |
出願番号: | 2010186020 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | G01N 1/36,G01N 1/28 |
寅田 信博 JP 2012042414 公開特許公報(A) 20120301 2010186020 20100823 組織標本の凍結方法及び保存方法 国立大学法人九州大学 504145342 小野 新次郎 100140109 社本 一夫 100089705 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 野▲崎▼ 久子 100113309 寅田 信博 G01N 1/36 20060101AFI20120203BHJP G01N 1/28 20060101ALI20120203BHJP JPG01N1/28 RG01N1/28 K 11 OL 18 2G052 2G052AA28 2G052EB08 2G052EB13 2G052EC03 2G052EC17 2G052FA08発明の属する技術分野 本発明は、主として生物由来の組織の、標本の製造方法及び保存方法に関する。より詳細には、本発明は、凍結組織切片作製用の包埋剤を用いて、タブレット状の組織標本を作成する方法に関する。本発明により得られた標本は、コンパクトに収納することができ、長期冷凍保存に適しており、また種々の組織材料を用いた研究、例えばマイクロダイゼイションのために、有用である。従来の技術 手術の際に摘出された組織は、組織標本にふさわしい大きさに切り出され、そのままあるいは適切な処理をして、病理学的検査に供される。その一方で、手術摘出組織は、未固定かつ新鮮な状態で充分な量が採取でき、また病巣とともに正常組織も同時に採取できる場合があることから、研究利用のために保存されることもある。このような施設として、例えば、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団のヒト組織バンクがある。 組織の標本化・保存のための手段としては、ホルマリン等で固定した後パラフィンで包埋する方法、組織片を専用のバイアルに入れ、そのまま凍結するバルク凍結法、及びOCT(Optimal cutting temperature)コンパウンド等の凍結組織切片作製用の包埋剤を用いて包埋しつつ凍結する方法がよく知られている。病理学的検査においてよくなされるヘマトキシリン・エオジン染色のためには、パラフィンブロックを薄切して得た切片が適している一方で、凍結組織切片は、細胞内の抗原性が損なわれないという利点から、主として免疫染色のために選択されてきた。しかしながら最近ではin situ hybridizationやマイクロダイセクション(顕微鏡下でレーザー光を用い、特定の細胞集団を選択的に捕捉する技術)といった実験系で、凍結組織切片を用いることが標準となっており、ゲノムサイエンス等の分野でも、凍結法の重要性が増してきている。 組織の凍結・保存のための手段の改良については、いくつかの試みがある。非特許文献1においては、捜査が簡単であるというバルク法の利点と、形態学的にみて保存性が良好であるというOCT法の利点とを併せもつ方法として、医薬製剤のために使用されるカプセルを用いた方法が提案されている。この方法においては、組織片を、OCTコンパウンドで部分的に満たしたカプセルに入れ、さらにOCTコンパウンドを滴下して直ちに液体窒素で凍結する。凍結後のカプセルは、すぐに実験に用いるか、又は1.5mmの凍結保存用バイアルに1つずつ収納して、-80℃で保存する。また、非特許文献2においては、イソペンタンを用いる方法が提案されている。ここでは、プラスチックモールド中の組織片をOCTコンパウンドで覆った後、専用の機器を用い、予め冷却した-80℃のイソペンタン中に凍結保存用カセットを30秒間沈めることにより、直ちに凍結する。Human Pathology, 36, 977-980(2005)Virchows Arch., 452:305-312(2008) 本発明者は、手術摘出組織の処理及びサンプル採取に携わってきた。OCTブロックはバルク法と比較して、保存スペースが多く必要であり、保存方法の変更が難しいという問題がある。またバルク凍結は、保存スペースの関係上、同一の凍結保存用チューブの中に複数の組織片を収納せざるを得ないが、組織片同士が結着してしまうなど、取り出す際の作業が煩雑になりがちである。取り出す際の手間は、サンプル温度の上昇の点からも好ましくない。 また、凍結の際の冷媒についても検討が必要である。組織品質をより良好に保つため、手術室内で凍結したい場合もある。しかしながら、急速に凍結できる方法として、広く普及しているイソペンタンを用いる方法は、イソペンタンが引火性であり、ドラフト内など特殊な環境下で作業を行わなければならず、組織摘出が行われる手術室や動物実験室で用いることができないという問題がある。 本発明者らは、凍結切片が作製可能なOCT法において、汎用な凍結保存用の容器や、既存の設備を利用しつつ、少ないスペースで保存でき、取り出しが容易で、かつ乾燥や温度の変化の影響を受けにくく長期間保存が可能な方法について検討を重ね、本発明を完成した。本発明は、以下を提供する。[1] 凍結組織切片作製用の包埋剤で包埋された生物由来の組織の処理方法であって: 凍結保存用バイアル中に複数個が収納可能な大きさであって方向識別可能なタブレットを成形するための型に、組織片及び包埋剤を充填し;そして 型を充填物とともに冷却手段を用いて冷却することにより、充填物を凍結固化して方向識別可能に成形された組織包埋凍結タブレットとする工程を含む、組織の処理方法。[2] 型が金属製、好ましくはアルミニウム製であり、冷却フィンを有し、複数個のタブレットを同時に成形可能なものである、[1]に記載の方法。[3] 冷却手段が液体窒素である、[1]又は[2]に記載の方法。[4] 得られたタブレットを型から離脱し; タブレットの一又は複数個を一のバイアルに収納し;そして バイアルを冷凍庫で保存する工程をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。[5] 凍結組織切片作製用の包埋剤で包埋された生物由来の組織の凍結物の製造方法であって: 凍結保存用バイアル中に複数個が収納可能な大きさであって方向識別可能なタブレットを成形するための型に、組織片及び包埋剤を充填し; 型を充填物とともに冷却手段を用いて冷却することにより、充填物を凍結固化し、方向識別可能に成形された組織包埋凍結タブレットとする工程を含む、製造方法。[6] 型が金属製、好ましくはアルミニウム製であり、冷却フィンを有し、複数個のタブレットを同時に成形可能なものである、[5]に記載の製造方法。[7] 包埋剤で包埋された生物由来の組織片の凍結物を方向識別可能に成形した、0.5〜3 ml容量の凍結保存用バイアル中に複数個収納可能な大きさのタブレット。[8] バイアルに収納された、[7]に記載のタブレット。[9] [1]〜[3]のいずれか一に記載の方法、又は[4]若しくは[5]に記載の製造方法において用いるための、金型。[10] アルミニウム製である、[8]又は[9]に記載の金型。[11] [9]又は[10]に記載の金型であって、複数個のタブレットを同時に成形可能なように複数の成形部を有し: 各成形部は、金型上面側が組織片及び包埋剤を充填するための充填口、そして金型下面側が閉塞部となっており、タブレットが離脱容易でありかつ上下識別可能なように、充填口断面が閉塞部断面より大きく;そして、 上面以外の一又は複数の面に、充填物を急速に冷却するためのフィンが突設されている、金型。 本発明においては、型(金型)以外、特殊な冶具・装置を要さず、簡易に凍結組織切片を作製することができる。 熱伝導率のよい金属の型を用い、かつ冷却溶媒として液体窒素を用いる態様においては、組織の急速凍結が可能であり、また実施場所に拠らずに安全に凍結操作を行うことができる。 本発明により得られる組織包埋凍結物からなるタブレットは、汎用な凍結保存用バイアルに複数の収納することができる。包埋剤で包埋されたタブレット状とすることで、バルク凍結と比較して、温度変化・冷凍保存中の乾燥に強く、また取出し操作が容易である。タブレットを単位として、保存ストック残量を定量化することができる。 バイアルへの複数個の収納により、保存スペースが削減できる。本発明の金型(小タブレット用)の平面図である。本発明の金型(大タブレット用)の平面図である。本発明の金型を真横から見た模式図である。凍結保存用バイアルに6個小タブレットを収納した様子の模式図である。汎用なバイアルは、内径約11mm、長さ約48mmである。凍結保存用バイアルに2個の大タブレットを収納した様子の模式図である。汎用なバイアルは、内径約11mm、長さ約48mmである。本発明に基づいて試作された金型の上面を写した写真である。本発明に基づいて試作された金型の下面を写した写真である。摘出された組織(ヒト、胃粘膜)からサンプルを切り出しているところの写真である。切り出されたサンプルの写真である。分割されたサンプルの写真である。金型成形部にサンプルをのせた写真である。液体窒素を用い、充填物を急速に凍結しているところの写真である。凍結したサンプルを離脱した写真である。離脱は容易である。タブレットを収納したクライオチューブの写真である。染色例1:ヘマトキシリン・エオジン染色(拡大倍率20倍)染色例2:ヘマトキシリン・エオジン染色(拡大倍率400倍)1 成形部2 連結部3 金型上面4 金型下面5 フィン6 凍結保存用バイアル7 タブレット(成形体)8 タブレット上面(充填口断面)9 タブレット下面(閉塞部断面) 本発明は、生物由来の組織の処理方法に関する。 [充填工程] 本発明の第一の工程においては、タブレットを成形するための型に、生物由来の組織片及び凍結組織切片作製用の包埋剤が充填される。 用語: 本発明には、生物由来の組織を用いる。本発明でいう「生物」は、ほ乳類、例えばヒト、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、ブタ、ウシ、鳥類、魚類、甲殻類、両生類;動物細胞、植物細胞、微生物、植物を含む。本発明で「生物由来」というときは、特別な場合を除き、生命の絶えた生物由来のものも含む。 本発明でいう「組織」は、人工物を含んだものであってもよい。「組織」は、正常組織及び癌組織を含み、また培養細胞塊のように、特に機能を有さない場合もある。組織は、典型的には、器官の一部である。器官の例は、消化器系(口、咽頭、食道、胃、腸・小腸、十二指腸、空腸、回腸、大腸、盲腸、虫垂、結腸、直腸、肛門、唾液腺、膵臓、肝臓、胆嚢)、循環器系(血液、心臓、血管、リンパ管、リンパ節、扁桃、虫垂、脾臓、腎臓、胸腺、骨髄)、呼吸器系(肺、気嚢、気管支、気管、喉頭、鼻腔、気門、気管、書肺、鰓、泌尿器系(腎臓 、尿管、膀胱、尿道)、生殖器系(精巣、陰嚢、精巣上体、精管、射精管、尿道、陰茎、精嚢、前立腺、尿道球腺(カウパー腺) 、卵巣、卵管、輸卵管、子宮、内分泌器系(視床下部、下垂体、脳下垂体、松果体、甲状腺、副甲状腺、上皮小体、副腎、膵臓)、感覚器系(耳、鼻、舌、皮膚、筋紡錘)、神経系(脳、大脳、間脳、中脳、橋、小脳、延髄、脊髄、末梢神経)、運動器系(骨、関節、靭帯、筋肉);胚、各細胞期胚、桑実期胚、胚盤胞、胎盤、臍帯;根、茎、葉、花、種子である。 本発明には、凍結組織切片作製用の包埋剤を用いる。本発明で「凍結組織切片作製用の包埋剤」というときは、特別な場合を除き、OCT(Optimal cutting temperature)コンパウンドに代表される、凍結切片を作製するための試料包埋剤を指す。OCTコンパウンドは、ポリニルアルコール、ポリエチレングリコール、否活性物質からなる混合物である。OCTコンパウンドは、種々の供給者により入手可能である。本発明に用いる「凍結組織切片作製用の包埋剤」の好ましい例は、Tissue-Tek OCT compound (Sakura Finetechnical Co. Ltd. Tokyo, Japan) である。 本発明で「(組織の)処理」というときは、特別な場合を除き、包埋、凍結、又は保存を含む。本願の処理方法は、組織を包埋凍結する方法として利用でき、またそのような包埋凍結物を保存する方法としても利用することができる。 金型の構成: 本発明には、凍結保存用バイアル中に複数個が収納可能な大きさであって方向識別可能なタブレットを成形するための型を用いる。図1〜3に本発明の型の一実施例を示した。 本発明の型は、熱の伝わりやすい素材を用いて作製されていることが好ましい。型素材は、典型的には金属であり、例えば、熱伝導率が比較的大きい、銅(398 W・m-1・K-1) 、金(320 W・m-1・K-1) 、アルミニウム(236 W・m-1・K-1) が適する。加工がしやすいとの観点からは、アルミニウムが適する。包埋剤と接着性がなく、又は接着しないように表面処理(例えば、テフロン(登録商標)加工等)され、かつ凍結標本のための凍結温度において耐性があるものであれば、種々の材料を用いうる。本明細書においては、本発明の型を「金型」と称して説明することがあるが、特に記載した場合を除き、その説明は、上述したような代替可能な他の素材の型を用いる場合にも当てはまる。 本発明の金型は、複数個のタブレット7(成形体)を同時に成形可能なように、一又は複数の成形部1を有する。複数の成形部を有する場合、一の成形部は隣接する他の成形部と連結部2によって連結される。成形部は、金型上面側が組織片及び包埋剤を充填するための充填口、そして金型下面側が閉塞部となり、タブレットが離脱容易でありかつ上下識別可能なように、充填口断面が閉塞部断面より大きくなるように構成されている。このような構成は、典型的には、充填口断面と閉塞部断面とを円形(図1)又は長方形(図2)とし、かつ充填口から閉塞部に向かって少し先細りになるように成形部側面に傾斜を設け、上面8が底面9より広い、錘台形を裏返した形状のタブレット7を成型可能な金型とすることにより、達成できる。 金型の成形部1の大きさは、成形されるタブレット7が、凍結保存用のバイアル6に複数個(好ましくは2〜6個)収納可能となるようにすることができる。 凍結保存バイアルとしては、「クライオバイアル」又は「クライオチューブ」等の名称で、凍結保存用に市販されている汎用なものを用いることができる。 汎用なクライオバイアルは、内径φ11mm、長さ48mmの円筒形である。したがって、本発明の金型の充填口断面は、それよりφ11mm未満の円となるように構成するとよい。このような金型を、本発明では「小タブレット用」ということがある。あるいは、充填口断面は、短辺が11mmより少し短い長方形となるように構成するとよい。このような金型を、本発明では「大タブレット用」ということがある。 金型は、特に好ましい態様においては、金型の上面以外の一又は複数の面、例えば金型の下面に、充填物を急速に冷却するためのフィンが突設されている。フィンの数は、1〜10個程度まで、適宜とすることができる。 小タブレット用の金型は 典型的には、全体のサイズが35×50×15mm(うちフィンの高さ8mm)、成形部は、充填口断面径9mm、閉塞部断面径7mm 深さ5mmとすることができる。表面加工した場合は、これより若干小さくなりうる。大タブレット用の金型は、例えば、全体のサイズは上述の小タブレット用と同様で、成形部は、充填口断面14×9mm、閉塞部断面11×7mm、深さ5mmか、これより少し小さくすることができる。タブレットが大きい汎用バイアルに入らないか、又は入れるのに困難となるので、収納しようとするバイアルの内径より小さいサイズになるように金型を設計するとよい。 切り出し〜包埋操作: 本発明の第一の工程においては、手術の際に摘出された臓器や組織等から、必要な部分を、必要に応じ、用いる型の成形部に収納可能なサイズに切り出す。本発明で「組織片」というときは、この収納可能なサイズの組織の一部を指す。組織片のサイズは、上述したような小タブレット用の型を用いる場合には、典型的には5×5mm程度(厚さは適宜)であり、大タブレット用の型を用いる場合には、典型的には10×7mm程度(厚さは適宜)である。組織片は、小タブレット用と大タブレット用の2種類の大きさで用意することが好ましい場合がある。 次いで、成形部内に組織片を置くが、組織片を置く前に、少量の包埋剤を成形部に充填しておいてもよい。 組織片を置く際には、薄切切片を作成する際にどの方向で薄切するかが重要である場合には、置く方向に配慮することができる。観察したい面を下に向けて組織片を置くことが好ましい。本発明の金型により成形されるタブレットは、方向識別可能(完全な対称形ではなく、上下等の方向の識別が可能)であるので、組織片の所望の面は、型からタブレットを離脱した後も、薄切したい方向を識別することができる。 さらに、置かれた組織片の上から、充分な量の包埋剤を充填し、組織片が充分に包埋されるようにする。充填には注射器を用いても良い。 [冷却工程] 本発明の第二の工程においては、型を充填物とともに冷却手段を用いて冷却することにより、充填物を凍結固化して方向識別可能に成形された組織包埋凍結タブレットとする。 冷却手段としては、冷却したイソペンタン、アセトン、液体窒素を適用することができるが、急速に冷却することができ、かつ安全であるとの観点からは、液体窒素であることが好ましい。 液体窒素を用いる場合、適切な冶具を用いて、型を液体窒素中に浸漬・保持することにより冷却することができる。充填物が充分に固化するまでは、金型上面が液面上に出るように保持して充填物が液体窒素に直接曝されないようにするとよい。固化後は、金型全体が完全に液体窒素に浸漬するようにすることにより、凍結工程を短い時間で終了することができる。液体窒素による凍結は、タブレットの大きさにもよるが、冷却のためのフィンを備えた金属製の型を用いた場合、液体窒素に浸漬後8秒後に充填物の周囲の固化が始まり、30秒前後で表面の固化を終了することが可能である。 本発明により製造される組織包埋凍結タブレットは、従来の凍結組織切片を作製する場合と同様の手法により、直ちに薄切して染色、診断等に供することができるが、次に説明するように、保存してもよい。 [保存のための工程] 本発明の方法においては、得られたタブレットを型から離脱し;タブレットの一又は複数個を一の凍結保存用バイアルに収納し;そしてバイアルを冷凍設備で保存してもよい。 本発明に用いることのできるバイアルは、典型的には凍結温度で耐性のある、ポリプロピレン製又はポリエチレン製であり、密栓でき、かつ適時に開栓/再栓を繰り返すことが可能なスクリューキャップを有していてもよい。キャップは、インナータイプとアウタータイプがあるが、内部に広い収納スペースが確保される観点からは、アウター型が適している。 汎用なバイアル(内側寸法が、φ11mm、長さ48mmの円筒形)中へは、前述の小タブレットである場合、タブレットを重ねるように3〜9個、典型的には6個、収納することができる(図4)。大タブレットである場合、汎用クライオバイアル中には、タブレットを、並べるように1〜3個、典型的には2個、収納することができる(図5)。 保存の際の温度は、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-80℃以下である。場合により、-196℃としてもよい。これらの温度条件は、市販の冷凍設備(ディープフリーザー)、ドライアイス、液体窒素の使用により、達成できる。 [タブレットの用途その他] 本発明により製造される組織包埋凍結タブレットは、従来法により薄切切片標本とし、各種の組織染色に供することができる。組織染色には、例えば、HE染色、免疫組織化学染色、TUNEL染色、アザン染色(AZAN)、マッソン・トリクローム染色(MT)、ワンギーソン単染色、ピクロシリウスレッド染色、エラスティカ・ワンギーソン染色(EVG)、エラスティカ・マッソン染色(E-MT)、レゾルシン・フクシン染色、ビクトリア青染色、オルセイン染色、アルデヒド・フクシン染色、鍍銀染色(Ag)、過ヨウ素酸メセナミン銀染色(PAM)、過ヨウ素酸・シッフ反応染色(PAS)、アルシアン青染色、ムチカルミン染色、コロイド鉄染色、トルイジン青染色、アルシアン青染色、アルシアン青−PAS重染色、コンゴー赤染色、ダイレクト・ファースト・スカーレット染色(DFS)、サフラニンO染色、トルイジン青、アルシアン青、クリューバー・バレラ染色、ニッスル染色、ボディアン染色、メチルグリーンピロニン染色、ズダン染色、オイルレッドO染色、シュモール反応染色(リポフスチン)、ホール法染色(胆汁色素)、フォンタナ・マッソン染色(メラニン)、アリザリン赤染色(ダール法)、コッサ反応染色、ルベアン酸染色、ベルリン青染色、グリメリウス染色、アルデヒド・フクシン染色、ルナ好酸球染色、ギムザ染色、リンタングステン酸ヘマトキシリン染色(PTAH)、メチレン青染色、グラム染色、チール・ネルゼン染色、ギムザ染色、ワルチンスターリー染色、グロコット染色、ムチカルミン染色、オルセイン染色、ビクトリア青染色、モバット五重染色、NADH-TR染色、TRAP染色、Cole’s HE染色、ビラネバ・ゴールドナー染色がある。 本発明のタブレットは、マイクロダイセクション(顕微鏡下でレーザー光を用い、特定の細胞集団を選択的に捕捉する技術)にも有用である。 本発明においては、組織片はDNAなど分析用の(小)とマイクロダイセクション用(大)の2種類を用意することにより、組織片における微小なセクションを対応させながら、各種の実験を組み合わせて実施することができる。 本発明の方法により、凍結組織がコンパクトに保存でき、また管理が容易になるので、本発明は多くの組織サンプルを保存する必要がある医療施設、研究機関にとって有用であり、また組織バンクや組織ライブラリーの構築においても有用である。 本発明においては、組織片は包埋剤で包埋された上、密栓可能な凍結保存用バイアルに収納可能であるので、冷凍保存の際に乾燥劣化が少ないと考えられる。またサンプル取り出し等に伴う温度変化による影響を受けにくいと考えられる。 本発明者により、本発明の方法は、イソペンタン及びクリオモルドを使用してブロックを作成用いた方法と比較して、同程度かそれよりも短い時間で凍結することが確認できている。また、サンプル保存に必要なスペースが非常に少なくて済む。汎用なフリーズボックス1個当たり、汎用なクラリオバイアルは100本収納可能であるが、本発明の方法では、1つのバイアルに複数の凍結組織からなるタブレットを収納できるため、多くのサンプルをコンパクトに保存することができる。 簡便かつ容易な処理方法保の確立は、作業手順の標準化、品質管理の面でも期待できる。[実施例1:タブレットの作製] 手術時に摘出されたヒトの胃から、胃粘膜組織を細長い形(約50×3×3mm)で切り出し(図8及び9)、それを分割して、組織片とした(図10)。図6及び7のアルミニウム製の金型(有限会社 明光メディカル社製)の各成形部に、OCTコンパウンド (Tissue-Tek OCT compound, Sakura Finetechnical Co. Ltd. Tokyo, Japan: 以下、本実施例で「OCTコンパウンド」というときは、これを指す) を0.2ml程度、注射器に針を装着したものを用いて注入し、次いで組織片を置いた(図11)。続いて、組織片が完全に包埋され、成形部が充分に満たされるまでOCTコンパウンドを注入した。 注入後の金型を、水平に維持したまま、上面には液体窒素がかからないように、金型途中まで液体窒素に浸漬した(図12)。浸漬約8秒に充填物周囲の固化が始まり、約25秒で表面の固化を終了した。その後、金型全体を液体窒素に沈め、さらに約20秒ほど冷却した。なお、クリオモルド(2号 枠寸法 14×14×5mm)を使用した場合、液体窒素に浸漬後すぐに固化が始まるが、表面の固化が終了するまでに30秒以上かかる。 金型を液体窒素から取り出したところ、充填物は完全に固化していた。タブレット状に成形された充填物は、ピンセットを用いて簡単に金型から離脱できた(図13)。6個のタブレットを、1.8ml容のクライオバイアル(Thermo Scientific Nunc 377267)に収納した(図14)。 [実施例2:染色] 実施例1で得たタブレットから切片を作製し、ヘマトキシリンエオジン染色を施した(図15及び16)。 凍結組織切片作製用の包埋剤で包埋された生物由来の組織の処理方法であって: 凍結保存用バイアル中に複数個が収納可能な大きさであって方向識別可能なタブレットを成形するための型に、組織片及び包埋剤を充填し;そして 型を充填物とともに冷却手段を用いて冷却することにより、充填物を凍結固化して方向識別可能に成形された組織包埋凍結タブレットとする工程を含む、組織の処理方法。 型が金属製であり、冷却フィンを有し、複数個のタブレットを同時に成形可能なものである、請求項1に記載の方法。 冷却手段が液体窒素である、請求項1又は2に記載の方法。 得られたタブレットを型から離脱し; タブレットの一又は複数個を一のバイアルに収納し;そして バイアルを冷凍庫で保存する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。凍結組織切片作製用の包埋剤で包埋された生物由来の組織の凍結物の製造方法であって: 凍結保存用バイアル中に複数個が収納可能な大きさであって方向識別可能なタブレットを成形するための型に、組織片及び包埋剤を充填し; 型を充填物とともに冷却手段を用いて冷却することにより、充填物を凍結固化し、方向識別可能に成形された組織包埋凍結タブレットとする工程を含む、製造方法。 型が金属製であり、冷却フィンを有し、複数個のタブレットを同時に成形可能なものである、請求項5に記載の製造方法。 包埋剤で包埋された生物由来の組織片の凍結物を方向識別可能に成形した、0.5〜3 ml容量の凍結保存用バイアル中に複数個収納可能な大きさのタブレット。 バイアルに収納された、請求項7に記載のタブレット。 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法、又は請求項4若しくは5に記載の製造方法において用いるための、金型。 アルミニウム製である、請求項8又は9に記載の金型。 請求項9に記載の金型であって、複数個のタブレットを同時に成形可能なように複数の成形部を有し: 各成形部は、金型上面側が組織片及び包埋剤を充填するための充填口、そして金型下面側が閉塞部となっており、タブレットが離脱容易でありかつ上下識別可能なように、充填口断面が閉塞部断面より大きく;そして、 上面以外の一又は複数の面に、充填物を急速に冷却するためのフィンが突設されている、金型。 【課題】特別な冶具を使用せず、コンパクトに保存可能な組織包埋凍結物を調製するための方法を提供する。【解決手段】凍結組織切片作製用の包埋剤で包埋された生物由来の組織の処理方法であって:凍結保存用バイアル中に複数個が収納可能な大きさであって方向識別可能なタブレットを成形するための型(好ましくは金型)に、組織片及び包埋剤を充填し;そして型を充填物とともに冷却手段(好ましくは液体窒素)を用いて冷却することにより、充填物を凍結固化して方向識別可能に成形された組織包埋凍結タブレットとする工程を含む、組織の処理方法。【選択図】なし