タイトル: | 公開特許公報(A)_エチルセルロースを特異的に溶解する溶剤 |
出願番号: | 2010179256 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07D 319/06,H01G 4/12,H01G 4/30,H01B 1/22,C08B 11/04 |
山本 雅之 内藤 宏之 JP 2012036141 公開特許公報(A) 20120223 2010179256 20100810 エチルセルロースを特異的に溶解する溶剤 日本香料薬品株式会社 505033950 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 000004293 田中 光雄 100081422 山田 卓二 100101454 森住 憲一 100104592 柴田 康夫 100083356 山本 雅之 内藤 宏之 C07D 319/06 20060101AFI20120127BHJP H01G 4/12 20060101ALI20120127BHJP H01G 4/30 20060101ALI20120127BHJP H01B 1/22 20060101ALI20120127BHJP C08B 11/04 20060101ALN20120127BHJP JPC07D319/06H01G4/12 364H01G4/30 311ZH01G4/30 311FH01B1/22 AH01G4/12 358H01G4/30 301EC08B11/04 5 OL 10 4C022 4C090 5E001 5E082 5G301 4C022GA01 4C090AA06 4C090AA08 4C090BA28 4C090BD02 4C090DA01 4C090DA11 4C090DA12 4C090DA31 4C090DA40 5E001AB03 5E001AE00 5E001AH01 5E001AJ02 5E082AB03 5E082FF05 5E082FG04 5E082FG26 5E082FG46 5E082FG54 5E082FG60 5E082LL02 5G301DA34 本発明は、エチルセルロースを特異的に溶解し、ブチラール樹脂を溶解しない溶剤に関する。また本発明は、該溶剤にエチルセルロースを溶解してなるビヒクルならびにこのビヒクルにセラミックス粒子および/または硝子粒子を混合してなるペーストに関する。 電子部品を製造する過程において、セラミックグリーンシート上にペーストをスクリーン印刷し、乾燥、焼成することによって電極や誘電体層、絶縁体層を形成する手法が用いられている。使用されるペーストは金属粒子、有機金属化合物、硝子粒子等を含んでおり、これらの粒子とビヒクルを混合することによってペーストが製造される。またビヒクルは、溶剤(例えばターピネオール)と樹脂(例えばエチルセルロース樹脂)によって形成されている。 また、セラミックグリーンシートは、セラミック粒子と樹脂(例えばブチラール樹脂)と溶剤(例えばトルエン)とを混合しスラリーとした後、ドクターブレード法等によりシート化されて用いられる。このセラミックグリーンシート上にペーストをスクリーン印刷し、これを乾燥するが、この際、ペースト中の溶剤(例えばターピネオール)がセラミックグリーンシート中の樹脂(ブチラール樹脂)を溶解させてしまう現象、すなわちシートアタックが発生する。この現象は、エチルセルロースを溶解する溶剤がブチラール樹脂に対しても溶解性を有することが原因となって発生し、特にセラミックグリーンシートを薄くした場合、シートアタックはより顕著に生じる。シートアタックが発生すると、シートの厚みや密度に変化が生じ、その後の工程に悪影響を与え、製造する電子部品の歩留まりを低下させ得る。この現象を防止する為には、ペースト中の溶剤として、エチルセルロース樹脂は溶解するがブチラール樹脂は溶解しない溶剤を選択する必要がある。 しかし、一般にエチルセルロースを溶解する溶剤は、ブチラール樹脂に対しても溶解性があり、エチルセルロースを溶解するがブチラール樹脂を溶解しない溶剤は、これまであまり知られていなかった。 特許文献1は、積層セラミックコンデンサーの製造の際にセラミックグリーンシート上に塗布して使用される導電ペーストであって、バインダー樹脂、有機溶剤および金属粉末を含有する導電ペーストを開示している。この導電ペーストは、バインダー樹脂として特定のポリビニルアセタール樹脂を使用することを特徴とするものであり、有機溶剤としては、一般的なケトン(ジプロピルケトンなど)、エステル(酢酸2−エチルヘキシルなど)またはカルボン酸(ブタン酸など)を使用することを開示しているにすぎない。 特許文献2にも、積層セラミックコンデンサーの製造の際に薄層セラミックグリーンシート上に印刷適用される導電性ペーストであって、導電性粉末、バインダー樹脂、有機溶剤および分散剤を含有する導電性ペーストが開示されている。この導電性ペーストは、該導電性ペースト中のバインダー樹脂(エチルセルロース樹脂)を安定的に溶解するが、セラミックグリーンシート中のバインダー樹脂(例えばブチラール樹脂)を溶解しない有機溶剤として、ジヒドロターピニルアセテート単体、またはジヒドロターピニルアセテートと、ジヒドロターピネオールおよび炭素数が10〜20の鉱物油のうちの少なくとも一方との混合溶剤を含有する。 特許文献3は、エチルセルロースを特異的に溶解する溶剤として、環式ケタールを開示している。具体的には、エチレングリコールと2−オクタノンを反応させることによって得られる2−メチル−2−ヘキシル−1,3−ジオキサシクロペンタン(2−OEK)、ならびに、プロピレングリコールと2−オクタノンを反応させることによって得られる2,4−ジメチル−2−ヘキシル−1,3−ジオキサシクロペンタン(2−OPK)が開示されている。 しかし、特許文献3に開示される5員環ケタール(2−OEK、2−OPK)は、エチルセルロースを溶解させた場合に、その粘度は低い。また、2−オクタノンと1,3−ブチレングリコールを反応させてなる、2−オクタノン−1,3−ブチレンケタール(2,4−ジメチル−2−ヘキシル−1,3−ジオキサシクロヘキサン)を用いて6員環とすると、エチルセルロースを溶解させた場合の粘度は幾分上昇したが、十分ではなかった。また、これらのケタールにエチルセルロースを溶解させたビヒクルを用いてペーストを製造する際に、金属粒子、有機金属化合物および/または硝子粒子を分散させるのがやや困難であった。特開2005-259667号公報特開2005-197079号公報特開2008-156244号公報 このような状況下、本発明者らは、エチルセルロースを十分に溶解するがブチラール樹脂をほとんど溶解しない溶剤であって、エチルセルロースを溶解させたビヒクルが適度な粘度を示し、該ビヒクルが分散物質(セラミックス粒子、硝子粒子)に対して優れた分散性を示す溶剤を開発しようとした。 本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、上記6員環ケタール(2−OPK)において、2位のアルキル基の炭素鎖を短くし、4、5および6位に適切な炭素鎖のアルキル基を導入することにより、上記課題が解決されることを見いだした。 以下に、本発明の好ましい態様を列記する。〔1〕以下の式(I):[式中、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R1、R2およびR3の合計炭素数は3〜10である]で示されるケタールを含むことを特徴とするエチルセルロース溶解性の溶剤。〔2〕R1、R2およびR3の合計炭素数が4〜7である〔1〕に記載の溶剤。〔3〕ケタールは、2,2−ジメチル−5−エチル−4−プロピル−1,3−ジオキサシクロヘキサン、4−(1−メチルエチル)−2,2,5,5−テトラメチル−1,3−ジオキサシクロヘキサンおよび/または2,2−ジメチル−5−ブチル−5−エチル−1,3−ジオキサシクロヘキサンである、〔1〕または〔2〕に記載の溶剤。〔4〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の溶剤にエチルセルロースを溶解させてなるビヒクル。〔5〕〔4〕に記載のビヒクルと、セラミックス粒子および硝子粒子からなる群から選択される1以上の物質を含有してなるペースト。 本発明の溶剤は、エチルセルロースを溶解し、ブチラール樹脂を溶解しない。 本発明のビヒクルは、適度な粘度を示し、使用するセラミックス粒子、硝子粒子に対して良好な親和性を示し、その分散性に優れる。 本発明のペーストは、印刷性に優れ、印刷時にシートアタックや絶縁性低下を引き起こすことがない。 本発明において使用するケタールは、例えば、ジオールとケトンを酸触媒の存在下に反応させることによって得ることができる。 使用するケトンは、アセトンである。 使用しうる酸触媒は、ブレンステッド酸であり、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、活性白土などが含まれる。 本発明の式(I)で示されるケタールにおいて、R1、R2およびR3の合計炭素数は3〜10、好ましくは4〜7である。従って、使用しうるジオールは、6員環ケタールを形成することができる炭素数6〜13のジオール、好ましくは炭素数7〜10のジオールである。これらは、例えば、1,3−ジオール等の1つの炭素を隔てたジオール構造を持つアルカンジオールであり、具体的には、1,3−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,3−オクタンジオール、2,4−ノナンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールなどである。好ましいジオールは、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールおよび2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールである。 ケタールの製造の際に、ケトンとジオールは、1:1〜5:1、好ましくは1:1〜3:1、より好ましくは1:1〜2:1のモル比で使用してよい。 反応圧力は、加圧下または常圧下または減圧下であってよい。 反応温度は、60〜120℃、好ましくは75〜115℃、より好ましくは90〜110℃であってよい。 反応は、条件にもよるが、通常は数時間以内、より普通には6時間以内に終了する。 溶媒は用いなくてよいが、必要なら反応に関与しない少量の有機溶媒を用いてもよい。この目的に使用しうる有機溶媒は、水と共沸させる溶媒、例えば、ベンゼン、酢酸エチルなどである。 一般に、酸触媒下のケトンとジオールの反応は可逆反応である。この反応において望ましくない逆反応を防止するために、生成した水をベンゼンなどと共沸させて除去することが行われる。しかし、ベンゼンは環境にも人体にも悪影響を与える。従って、生成する水を減圧下に除去しながら反応を行うのが望ましい。 減圧条件下での反応中に、水が先に留去され、次いで未反応の出発物質であるケトンおよびジオールが留去される。このケトンおよびジオールは、次回反応に用いてもよい。最後に、反応生成物であるケタールを減圧下に蒸留して回収する。このようにして製造したケタールは、通常、99%以上の純度を有する。 上記のように製造したケタールは、エチルセルロースを溶解するが、ブチラール樹脂は凝集させ、ほとんど溶解しない。従って、これらケタールを、エチルセルロースを特異的に溶解する溶剤として使用することができる。これらケタールにより溶解することができる他の樹脂としては、例えば、ロジン、水添ロジン、アクリル樹脂などが挙げられる。 本発明の溶剤は、上記した特定のケタールに加えて、該ケタールの40重量%まで、好ましくは20重量%まで、より好ましくは10重量%まで、最も好ましくは5重量%までの他の有機溶剤を含むことができる。この目的に使用しうる有機溶剤は、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、テキサノール、ブチルカルビトールアセテートなどである。 本発明のビヒクルは、本発明の溶剤中に、エチルセルロースを、通常20重量%まで、好ましくは15重量%まで、より好ましくは10重量%までの量(溶剤重量を基準に)で含有する。 本発明のペーストは、セラミックス粒子および硝子粒子からなる群から選択される1以上の物質と本発明のビヒクルを含有する。 セラミックス粒子とビヒクルとで構成されるセラミックスペーストの場合、セラミックス粒子はペースト中に通常25〜70%、好ましくは30〜60重量%含まれる。セラミック粉末の含有割合が少なすぎると、ペースト粘度が小さくなり印刷が困難になる。また、セラミック粉末の含有割合が多すぎると、印刷厚みを薄くすることが困難になる傾向にある。 なお、セラミック粒子の材質は特に限定されず、例えばチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸鉛、タングステン酸鉛、タングステン酸鉛、亜鉛酸鉛、鉄酸鉛、マグネシウム酸鉛、マグネシウム酸鉛、ニオブ酸鉛、ニッケル酸鉛、ジルコン酸鉛、複合ペロブスカイト系誘電体、酸化チタン、酸化セリウム、及び酸化ジルコニウム等が挙げられる。また、鉛シリカホウ酸系、ビスマスシリカ系、シリカ亜鉛アルカリ土類系といった硝子も用いることができる。 硝子粒子としては、平均粒子径(D50)が0.1μm〜10μmのものを用いることが好ましく、0.5μm〜5μmのものを用いることが好ましい。用いる硝子粒子の平均粒子径が小さすぎるとペースト中での凝集が生じやすく、一方、平均粒子径が大きすぎると粒子自体の大きさのため、いずれの場合も印刷平坦性などを低下させることがある。 本発明のビヒクルは、常法により、例えば40〜100℃に加熱した本発明の溶剤にエチルセルロースを撹拌しながら徐々に添加および溶解することによって製造することができる。 本発明のペーストは、常法により、例えば3本ロールミルを用いて、本発明のビヒクルと、セラミックス粒子および硝子粒子からなる群から選択される1以上の物質とを混練することによって製造することができる。この混練の際に、必要に応じて本発明の溶剤を希釈剤として加えることもできる。 以下に実施例を挙げて、本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 製造したケタールの純度分析は、ガスクロマトグラフィーを用いて行った。その測定条件は、以下の通りである。 合成例1 (1)加圧式合成装置を用い、そのフラスコに、アセトン13.92g(0.24モル)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール29.2g(0.2モル)、および触媒として硫酸水素カリウム0.02gを仕込み、0.5MPaの圧力下、120℃で4時間加熱した。反応中の圧力は0.8〜0.9MPaまで上昇した。その後、常温に戻し、開封し、炭酸マグネシウムを加えて触媒を濾去した。 (2)次いで、濾液をウィットマー式蒸留装置に仕込み、徐々に加温および減圧を行い、アセトンと水を除去した。 (3)さらに減圧し、80℃条件下、10hPaまで減圧すると、生成物である2,2−ジメチル−5−エチル−4−プロピル−1,3−ジオキサシクロヘキサン(ASK)が蒸留された。このようにして得られたASKの量は7.49gであり、その純度は99.41%であった。 (4)なお、この状態では未反応の2−エチル−1,3−ヘキサンジオールがフラスコ内に残存しているが、これを次回反応の原料とするために回収してもよい。 合成例2 (1)蒸留装置として、温度計および冷却管を取り付けた2Lのフラスコ仕込みのディーンスターク型蒸留塔を用意した。この蒸留塔の理論段数は35段であり、蒸留装置の加熱はマントルヒーターによって行った。 このフラスコに、アセトン295.8g(5.1モル)と2−エチル−1,3−ヘキサンジオール657g(4.5モル)を仕込み、常圧下、90℃で30分間加熱した。この間、アセトンと共に水を共沸させ、ディーンスターク型蒸留塔による水の除去とアセトンの還流を行いながら反応させた。 (2)次いで、90℃条件下、徐々に減圧しながら未反応のアセトンを回収した。 (3)さらに減圧し、最終的に20hPaまで減圧すると、生成物である2,2−ジメチル−5−エチル−4−プロピル−1,3−ジオキサシクロヘキサン(ASK)が蒸留された。このようにして得られたASKの量は309.6gであり、その純度は99.84%であった。 (4)なお、この状態では未反応の2−エチル−1,3−ヘキサンジオールがフラスコ内に残存しているが、これを次回反応の原料とするために回収してもよい。 合成例3 (1)蒸留装置として、温度計および冷却管を取り付けた2Lのフラスコ仕込みのディーンスターク型蒸留塔を用意した。この蒸留塔の理論段数は35段であり、蒸留装置の加熱はマントルヒーターによって行った。 このフラスコに、アセトン406.0g(7.0モル)と2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール876g(6.0モル)を仕込み、常圧下、90℃で30分間加熱した。この間、アセトンと共に水を共沸させ、ディーンスターク型蒸留塔による水の除去とアセトンの還流を行いながら反応させた。 (2)次いで、90℃条件下、徐々に減圧しながら未反応のアセトンを回収した。 (3)さらに減圧し、最終的に18hPaまで減圧すると、生成物である4−(1−メチルエチル)−2,2,5,5−テトラメチル−1,3−ジオキサシクロヘキサン(ANK)が蒸留された。このようにして得られたANKの量は185.5gであり、その純度は97.59%であった。 (4)なお、この状態では未反応の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールがフラスコ内に残存しているが、これを次回反応の原料とするために回収してもよい。 合成例4 (1)蒸留装置として、温度計および冷却管を取り付けた2Lのフラスコ仕込みのディーンスターク型蒸留塔を用意した。この蒸留塔の理論段数は35段であり、蒸留装置の加熱はマントルヒーターによって行った。 このフラスコに、アセトン290g(5モル)と2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール480g(3モル)を仕込み、常圧下、90℃で30分間加熱した。この間、アセトンと共に水を共沸させ、ディーンスターク型蒸留塔による水の除去とアセトンの還流を行いながら反応させた。 (2)次いで、90℃条件下、徐々に減圧しながら未反応のアセトンを回収した。 (3)さらに減圧し、最終的に10hPaまで減圧すると、生成物である2,2−ジメチル−5−ブチル−5−エチル−1,3−ジオキサシクロヘキサン(ABK)が蒸留された。このようにして得られたABKの量は6.11gであり、その純度は98.82%であった。 実施例1 本発明の溶剤に、種々の樹脂を10重量%の量で溶解させた。この試験結果を下記の表2に示す。 表中、×は、樹脂が膨潤して凝集あるいは分散などした状態となり不溶である状態を示し、○は、樹脂が完全に溶解された状態を表す。 表2より、本発明の溶剤は、ブチラール樹脂、ロジン、エポキシ樹脂を溶解せず、エチルセルロース、水添ロジン、アクリル樹脂を特異的に溶解することがわかる。 実施例2 本発明の溶剤および特許文献3に記載される溶剤(2−OEKおよび2−OPK)ならびにエチルセルロースの溶剤として知られる溶剤に、エチルセルロースを5重量%の量で溶解し、その溶解可否ならびに溶解前後の粘度を測定した。粘度測定は、SV型粘度計を用いて20℃で行った。この測定結果を下記の表3に示す。 表3より、本発明の溶剤(ASK)は樹脂溶解前の粘度が低いにもかかわらず、それにエチルセルロースを溶解させたビヒクルは、ターピネオールやメンタノールにエチルセルロースを溶解させたビヒクルに匹敵する高粘度を示す。 実施例3 各種溶剤への5重量%ブチラール樹脂の溶解性を調べた結果を下記の表4に示す。 表中、×は、樹脂が膨潤して凝集した状態を表し、△は、樹脂が溶解するが若干の白濁が確認された状態を表し、○は、樹脂が完全に溶解された状態を表す。 表4より、本発明の溶剤(ASK、ANK、ABK)は、積層セラミックコンデンサーや多層セラミック基板等に使用されるグリーンシートの成分であるブチラール樹脂に対する攻撃性が他の溶剤より低いことが判る。つまり、比較的薄いグリーンシート上に本発明のビヒクルを使用することができるので、より小さなセラミックコンデンサーや薄い複合基板を作成することができる。 実施例4 本発明の溶剤ASK(450g)を70℃まで加熱し、これに撹拌しながら少しずつダウケミカル(株)製エチルセルロースSTD-100を所定量(50g)まで加えて溶解した。 次いで、この得られたビヒクル(500g)とチタン酸バリウム粉末(500g)を混合し、3本ロールミルを用いて混合物を混練してペーストを作成した。 一方、ASKの代わりにターピネオールを用いて同様の手法によりペーストを作成した。 得られたこれらのペーストを、ブチラール樹脂とチタン酸バリウム粉末を用いて形成したセラミックグリーンシート上に、所定の方法でスクリーン印刷した。溶剤としてターピネオールを用いたものと比べて、ASKを用いた本発明のペーストはシートアタックが著しく低下した。このように本発明のペーストを用いることによりシートアタック性が改善された。 以下の式(I):[式中、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R1、R2およびR3の合計炭素数は3〜10である]で示されるケタールを含むことを特徴とするエチルセルロース溶解性の溶剤。 R1、R2およびR3の合計炭素数が4〜7である請求項1に記載の溶剤。 ケタールは、2,2−ジメチル−5−エチル−4−プロピル−1,3−ジオキサシクロヘキサン、4−(1−メチルエチル)−2,2,5,5−テトラメチル−1,3−ジオキサシクロヘキサンおよび/または5−ブチル−2,2−ジメチル−5−エチル−1,3−ジオキサシクロヘキサンである、請求項1または2に記載の溶剤。 請求項1〜3のいずれかに記載の溶剤にエチルセルロースを溶解させてなるビヒクル。 請求項4に記載のビヒクルと、セラミックス粒子および硝子粒子からなる群から選択される1以上の物質を含有してなるペースト。 【課題】エチルセルロースを十分に溶解するがブチラール樹脂をほとんど溶解しない溶剤を開発する。 【解決手段】上記課題は、以下の式(I):[式中、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R1、R2およびR3の合計炭素数は3〜10である]で示されるケタールを含むことを特徴とするエチルセルロース溶解性の溶剤により解決される。【選択図】なし