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タイトル:公開特許公報(A)_電子部品の特性評価方法
出願番号:2010169280
年次:2012
IPC分類:G01N 27/00,H01G 4/33,G01R 31/26


特許情報キャッシュ

稲男 健 JP 2012032160 公開特許公報(A) 20120216 2010169280 20100728 電子部品の特性評価方法 株式会社村田製作所 000006231 國弘 安俊 100117477 稲男 健 G01N 27/00 20060101AFI20120120BHJP H01G 4/33 20060101ALI20120120BHJP G01R 31/26 20060101ALI20120120BHJP JPG01N27/00 ZH01G4/06 102G01R31/26 Z 4 3 OL 19 2G003 2G060 5E082 2G003AB01 2G003AG03 2G060AA09 2G060AF02 2G060AF07 2G060AF15 2G060AG03 2G060EA04 2G060EA07 2G060EB04 2G060EB07 2G060HA01 2G060HE05 2G060KA15 5E082AB01 5E082AB03 5E082BC35 5E082FF05 5E082FG03 5E082FG26 5E082MM35 本発明は電子部品の特性評価方法に関し、より詳しくは薄層の誘電体セラミック層を有する積層セラミックコンデンサ等の電子部品の特性評価方法に関する。 近年、電子回路の高集積化に伴い、誘電体層を薄層化した積層セラミックコンデンサ等の電子部品が盛んに研究・開発されている。 ところで、この種の電子部品では、誘導体層が薄層化すると、コンデンサに蓄えられるべき電荷がリークする「漏れ電流」が発生する。 この漏れ電流は、量子力学的なトンネル効果(以下、「量子トンネル効果」という。)により、電子が薄層の誘電体層の間を確率的に通り抜けることにより生じるものであるが、電子回路の更なる集積度を高めて性能を向上させるためには、漏れ電流を抑制する技術が不可欠である。 誘電体層、すなわち絶縁体が極薄に薄層化してくると、電極を形成する金属表面には高電界が印加される。そして高電界が印加されると、電極表面をにじみだす自由電子に高い電界が作用し、いわゆる電界電子放出現象が生じる。このため前記自由電子が、量子トンネル効果によりポテンシャル障壁を透過し、誘電体内部に出てくる確率が大きくなり、漏れ電流として観測される。特に、積層セラミックコンデンサや薄膜コンデンサのような電子部品の場合、金属表面は、通常、微小突起を有しているため、該微小突起に電界が集中し、電界電子放出が生じ易くなる。したがって、漏れ電流の発生を抑制してより一層高性能の電子部品を実現するためには、電極表面からの電界電子放出を効率良く制御するのが望まれる。 そして、この種の漏れ電流は、物理的には電極と誘電体との界面やその近傍、誘電体中の電気的な物性値と関係する。 例えば、セラミック電子部品の場合、電極と誘電体との界面は、通常、電極を形成する金属の仕事関数が誘電体の仕事関数よりも大きいため、ショットキー接触となり、いわゆるショットキー障壁が形成される。そして、ショットキー障壁の高さが小さくなると、電極から誘電体内部に放出される電子が多くなり、結果的にリークする漏れ電流が多くなる。したがって、ショットキー障壁高さを制御することにより、漏れ電流を抑制することが可能となる。 また、電極と誘電体との界面がショットキー接触すると、前記界面近傍には、キャリアの存在しない空乏層が形成される。そして、空乏層内の酸素欠陥濃度が大きくなると空乏層幅は小さくなるが、該空乏層幅が過度に小さくなると直接トンネル電流が流れ出す。したがって、空乏層幅も、漏れ電流を制御するための尺度となり得る。 さらに、誘電体(空乏層を除く。)における酸素欠陥濃度が大きくなって酸素欠陥が過剰に生じると、該酸素欠陥がキャリアとなってホッピング伝導が生じ、漏れ電流が発生し易くなる。したがって、誘電体中の酸素欠陥濃度を制御することにより、漏れ電流を抑制することが可能となる。 このように電子部品の各種物性値(ショットキー障壁高さ、空乏層幅、酸素欠陥濃度等)を制御することにより、漏れ電流の発生を抑制して高品質の電子デバイスを実現することが可能となる。 また、上述した電子部品に固有の物性値は、材料開発やデバイス開発、品質管理、故障解析等の様々な場面で有効な解析手段を構成するとも考えられる。 一方、特許文献1には、原子間力顕微鏡を用いて、半導体試料の表面及び/又は表面付近の層領域のドーパント密度を算出する方法が提案されている。 この特許文献1では、図8に示すように、ドーピング領域101、102を有する半導体試料103の表面にカンチレバー104のプローブ105を接触させ、電源装置106を駆動させてカンチレバー104と半導体試料103との間に電圧を印加すると共に、レーザダイオード107からのレーザ光を半導体試料103に照射し、フォトダイオード108、増幅器109及び評価ユニット110を介して半導体試料103のドーピング密度を算出している。 すなわち、特許文献1では、半導体試料103の下面を接地する一方、プローブ105を半導体試料103に接触させて共振モードで振動させ、電源装置106によりプローブ105に直流電圧及び交流電圧が印加できるようになっている。そして、原子間力顕微鏡では、プローブ105を半導体試料103に接近させるとプローブ105と半導体試料103との間に原子間力が作用し、共振しているプローブ105の振幅や位相が変化する。ドーピング密度は、プローブ105の振幅や位相の変化に伴って変動することから、特許文献1では、プローブ105の振幅や位相の変化からドーピング密度を算出している。国際公開2007/104432号(図1) しかしながら、特許文献1では、プローブ105の振幅や位相の変化によってドーピング密度を測定することにより、半導体試料103の表面性状については評価することが可能であるが、電子部品における電極と誘電体との界面やその近傍、誘電体内部の電気的な物性を測定することはできず、電子部品内部の物理的性状を評価することはできない。 このように従来では、電子部品内部の物理的性状を把握し、数値化して解析する手法は未だ確立されていない状況にある。 本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、電子部品内部の物理的性状を評価し、電子部品の特性解析に寄与することができる電子部品の特性評価方法を提供することを目的とする。 上述した電界電子放出については、ファウラー・ノルドハイム(Fowler-Nordheim)のトンネル理論が知られている。このトンネル理論によれば、電界電子放出によるトンネル電流、すなわち、ファウラー・ノルドハイム・トンネル電流(以下、「FNトンネル電流」という。)IFNTは、印加電圧及びショットキー障壁高さに依存する。したがって、誘電体に接合された電極のうち、一の電極を陰極とし、誘電体の表面であって前記電極の近傍所定位置に金属製の尖端部材を接触させて該尖端部材と電極との間の電圧−電流特性を求め、この電圧−電流特性を所定のファウラー・ノルドハイムの式(以下、「F−N理論式」という。)にフィッティングさせることによってショットキー障壁高さを推定することが可能となる。そして、ショットキー障壁高さが求まると、空乏層幅や酸素欠陥濃度を理論的に求めることができ、これにより電子部品の特性を評価することができる。 すなわち、本発明に係る電子部品の特性評価方法は、誘電体と、該誘電体を介して対向状に配され前記誘電体に接合される少なくとも一対の電極とを備えた電子部品に対し、特性評価を行う電子部品の特性評価方法であって、少なくとも表面が金属で形成された尖端部材を、前記誘電体の表面であって前記一対の電極のうちの一方の電極の近傍所定位置に接触させ、異なる複数の電圧を前記尖端部材と前記一方の電極との間に印加して各々電流値を測定し、電圧と電流との関係を所定の理論式にフィッテングさせ、少なくともショットキー障壁高さを含む前記電子部品の特性値を推定し、前記電子部品の特性評価を行うことを特徴としている。 また、空乏層に印加される電圧と空乏層以外の誘電体部分に印加される電圧との配分比率、すなわち電圧配分比率が分かれば、誘電体の電気特性(抵抗、電位勾配等)を明確にすることでき、材料設計の指標になり得ると考えられる。そして、誘電体に接合された両電極間に電圧を印加して電圧−電流特性を求め、上記で求めたショットキー障壁高さを使用して電圧−電流特性をF−N理論式にフィッティングさせることにより、電圧配分比率を推定することが可能となる。 すなわち、本発明の電子部品の特性評価方法は、前記一対の電極間に異なる複数の電圧を印加して各々電流値を測定し、前記ショットキー障壁高さの推定値を使用して電圧と電流との関係を前記所定の理論式にフィッテングさせ、空乏層に対する電圧配分比率を推定し、前記電子部品の特性評価を行うのが好ましい。 ここで、「空乏層に対する電圧配分比率」とは、空乏層に印加される電圧と電子部品に印加される電圧との比をいう。 また、本発明の電子部品の特性評価方法は、前記電子部品の特性値には、空乏層幅及び酸素欠陥濃度を含むのが好ましい。 また、本発明の電子部品の特性評価方法は、前記所定の理論式が、電界電子放出に関するF−N理論式であるのが好ましい。 上記電子部品の特性評価方法によれば、誘電体と、該誘電体を介して対向状に配され前記誘電体に接合される少なくとも一対の電極とを備えた電子部品に対し、特性評価を行う電子部品の特性評価方法であって、少なくとも表面が金属で形成された尖端部材を、前記誘電体の表面であって前記一対の電極のうちの一方の電極の近傍所定位置に接触させ、異なる複数の電圧を前記尖端部材と前記一方の電極との間に印加して各々電流値を測定し、電圧と電流との関係を所定の理論式(例えば、F−N理論式)にフィッテングさせ、少なくともショットキー障壁高さを含む前記電子部品の特性値を推定し、前記電子部品の特性評価を行うので、得られるショットキー障壁高さに応じて材料選択や材料開発、製造工程での品質管理、故障解析等が可能となる。 また、前記一対の電極間に異なる複数の電圧を印加して各々電流値を測定し、前記ショットキー障壁高さの推定値を使用して電圧と電流との関係を前記所定の理論式にフィッテングさせ、空乏層に対する電圧配分比率を推定し、前記電子部品の特性評価を行うので、得られる電圧配分比率に基づいて誘電体の電気特性、例えば空乏層と空乏層以外の誘電体部分の抵抗や電位勾配等を明確にすることができ、材料設計の指標とすることが可能となる。 また、前記電子部品の特性値には、空乏層幅及び酸素欠陥濃度を含むことにより、これら空乏層幅及び酸素欠陥濃度を指標として漏れ電流が生じないように材料設計に活用したり、品質管理や故障解析を行うことが可能となる。 このように本発明によれば、電子部品の特性値を評価して物理的性状を把握することができるので、これら物性値を材料開発やデバイス開発に活用することにより、漏れ電流が制御された高性能の電子部品を実現することが可能となる。また、これら物性値を製造工程での品質管理に活用することにより、不良品の発生抑制や高品質の電子部品を実現することが可能となる。さらに、これら物性値を故障解析に活用することにより、故障原因の早期究明が可能となる。電極と誘電体のエネルギーバンドを模式的に示す図であり、図1(a)が電極側のエネルギーバンドを示し、図1(b)が誘電体側のエネルギーバンドを示す。電極と誘電体との接合状態におけるエネルギーバンドを模式的に示す図である。本発明に係る電子部品の特性評価方法の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す特性評価装置の概略図である。図3の要部拡大図である。本発明に係る電子部品の特性評価方法の第2の実施の形態を示す評価装置の概略図である。実施例1のI−V特性をF−N理論式にフィッテイングさせた状態を示すフィッテイング曲線である。実施例2のI−V特性をF−N理論式にフィッテイングさせた状態を示すフィッテイング曲線である。特許文献1に記載された測定装置の概略図である。 次に、本発明の実施の形態を詳説する。 本発明の第1の実施の形態では、誘電体セラミックの両端に電極が形成された電子部品としてのセラミックコンデンサに対し、表面が金属で形成されたプローブを、前記誘電体セラミックの表面であって一方の電極の近傍所定位置に接触させ、異なる複数の電圧を前記プローブと前記電極との間に印加して各々電流値を測定し、I−V特性(電圧−電流特性)をF−N理論式(所定の理論式)にフィッテングさせ、ショットキー障壁高さφを推定し、さらに空乏層幅w及び酸素欠陥濃度NDを算出し、これにより電子部品の特性評価を行っている。 〔課題を解決するための手段〕の項でも述べたように、電極を形成する金属表面からの電界電子放出については、ファウラー・ノルドハイムのトンネル理論が知られている。このファウラー・ノルドハイムのトンネル理論によれば、金属である電極表面から外部に漏出するFNトンネル電流IFNTは、電極と誘電体との界面の電界強度をF0、ショットキー障壁高さをφ、電子放出面(電極表面の微小突起の突起面)の面積をAとすると、数式(1)で表わされる。 ここで、a及びbは定数であり、それぞれ数式(2)、(3)で表わされる。 数式(2)、(3)中、qは電気素量、hpはプランク定数、meは電子の質量である。 一方、金属である電極と誘電体のエネルギーバンドは、図1に示すようになる。図1(a)は、電極側のエネルギーバンドであり、図1(b)は誘電体側のエネルギーバンドである。 電極の仕事関数φMは真空準位ESと電極のフェルミ準位EFMとの差(φM=ES−EFM)で表わされ、誘電体の仕事関数φSは真空準位ESと誘電体のフェルミ準位EFSとの差(φS=ES−EFS)で表わされる。ここで、仕事関数φM、φSはフェルミ準位EFM、EFSを有する電子が外部に飛び出すために必要なエネルギーを示している。 また、真空準位ESと伝導帯の最小準位ECとの差(=ES−EC)は、外部から誘電体に侵入した電子を放出するエネルギーを示し、電子親和力χと称される。 したがって、誘電体の仕事関数φSは、電子親和力χを使用すると、図1(b)から分かるように、数式(4)で表わすことができる。尚、図1中、EVは誘電体における価電子帯の最大準位のエネルギーを示している。 φS=χ+(EC−EFS)…(4) 図2は電極と誘電体との接合状態におけるエネルギーバンドである。 電極と誘電体とがショットキー接触すると、誘電体の伝導帯中の電子が電極側に移動し、誘電体表面の電子が減少する。その結果、誘電体表面のフェルミ準位EFSが電極のフェルミ準位EFMまで低下し、これにより電極と誘電体との界面近傍にはキャリアの存在しない幅wの空乏層(以下、この幅を「空乏層幅w」という。)が形成される。そして、電極の仕事関数φMと電子親和力χとの差φがショットキー障壁となる。すなわち、ショットキー障壁φは、数式(5)で表わされる。 φ=φM−χ…(5) また、上述した誘電体の伝導帯中の電子の電極側への移動によって、誘電体の伝導帯の最小準位ECも、電極のフェルミ準位EFM、すなわち誘電体のフェルミ準位EFSにまでほぼ低下し、その結果拡散電位VDと称される電位差が生じる。 この拡散電位VDは、図2から明らかなように、数式(6)で表わされる。 VD=φM−χ−(EC−EFS)=φ−(EC−EFS)…(6) 伝導帯の最小準位ECは誘電体のフェルミ準位EFSと略等しいことから拡散電位VDはショットキー障壁φに近似される。すなわち、数式(7)が成立する。 VD≒φ …(7) 一方、コンデンサの場合、電極と誘電体との界面における電界強度F0は、拡散電位VDを考慮すると数式(8)で表わすことができる。 ここで、Vは印加電圧、dは誘電体の厚さである。また、κは電界集中の度合を示す電界集中係数であって、電極表面の微小突起による局所的な電界集中を補填するための係数である。 数式(8)を数式(1)に代入すると、数式(9)が得られる。 そして、数式(9)に上記数式(7)を代入すると、数式(9)は数式(10)となる。 ここで、α、βはそれぞれ数式(11)及び(12)で表わされる。 数式(10)から明らかなように、FNトンネル電流IFNTは、印加電圧Vとショットキー障壁高さφに依存する。 したがって、電極側を陰極とし、界面近傍の誘電体表面と電極との間に異なる複数の電圧Vを印加してFNトンネル電流IFNTをそれぞれ測定し、得られたI−V特性を数式(10)のF−N理論式にフィッティングさせると、定数α、β、及びショットキー障壁高さφの近似解を求めることが可能となり、これによりショットキー障壁高さφを推定することができる。 図3は、本発明に係る電子部品の特性評価方法に使用される特性評価装置の一実施の形態を示す概念図である。 被測定物である電子部品としてのセラミックコンデンサ1は、誘電体セラミック(誘電体)2と、該誘電体セラミック2を介して対向状に配され前記誘電体セラミック2に接合された一対の電極3a、3bとを備えている。 尚、誘電体セラミック2の形成材料は、特に限定されるものではなく、例えばペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウム系複合酸化物(BaTiO3、(Ba,Ca)TiO3、(Ba,Sr)TiO3、Ba(Ti,Zr)O3、Ba(Ti,Hf)O3等)を使用することができる。 また、電極3a、3bの形成材料も、特に限定されるものではなく、Pt、Ag、Pd、Ag−Pd、Cu、Ni等の材料を適宜選択して使用することができる。 測定針であるプローブ4は、支持部材5の先端に設けられ、プローブ本体6と該プローブ本体6の表面に形成された金属部7とを有している。 プローブ本体6は、具体的には図4に示すように、誘電体セラミック2との接触面が微小曲率半径(例えば、20nm)を有するようにSi等で形成され、該プローブ本体6の表面にはPt、Rh、Au等からなる金属部7がコーティング処理されて形成されている。 そして、本実施の形態では、電極3bを陰極とし、電極3bの近傍所定位置であって誘電体セラミック2の表面にプローブ4の先端を接触させ、プローブ4と電極3bとの間に異なる複数の電圧を印加し、プローブ4及び電極3b間に流れる電流、すなわちFNトンネル電流IFNTを測定している。ここで、前記近傍所定位置は、誘電体セラミック2と電極3bの界面近傍に形成される空乏層幅wよりも若干大きな距離、例えば、空乏層幅wは通常数10nmであるので、電極3bからの距離Lが約100nm程度の位置に設定される。 尚、特性評価装置としては、所望のプローブ4を誘電体セラミック2の表面に接触させてI−V特性を測定できるのであれば、その形態は特に限定されるものではないが、原子間力超音波顕微鏡(Atomic Force Acoustic Microscopy;以下、「AFAM」という。)を使用することにより、I−V特性を効率良く測定することができる。すなわち、AFAMは、被測定物表面との間に作用する原子間力を使用して表面形状を測定することを主たる用途としているが、本発明が所望するプローブを備えており、しかも、前記近傍所定位置をモニタリングすることが可能であることから、プローブ4と誘電体セラミック2とを前記近傍所定位置で正確に接触させることができ、高精度の特性評価が可能となる。 このように構成された前記特性評価装置を使用し、プローブ4と電極3bとの間に異なる複数の電圧Vを印加し(例えば、4点以上)、そのときのFNトンネル電流IFNTを測定してI−V特性を求め、非線形最小二乗法等の数値解析法を使用してF−N理論式にフィッティングさせ、定数α、β、及びショットキー障壁高さφの近似解を得ることができ、ショットキー障壁高さφを推定することが可能となる。 そしてこのショットキー障壁高さφを考慮に入れて材料開発やデバイス設計を行うことにより、漏れ電流が抑制された高性能の電子部品を得ることが可能となる。 すなわち、ショットキー障壁高さφは、上述した数式(5)に示すように、電極3bの仕事関数φMと誘電体セラミック2の電子親和力χの差で与えられる。そして、電極3bの仕事関数φM及び誘電体セラミック2の電子親和力χは材料に固有の物性定数であることから、推定されたショットキー障壁高さφに応じた材料開発やデバイス開発が可能となり、品質管理や故障解析を行うことが可能となる。 尚、定数α、βが求まると、数式(13)、(14)より電界集中係数κ、及び電子の放出面積Aを求めることができる。 さらに、上述の如く得られたショットキー障壁高さφを使用し、以下のようにして空乏層幅w及び酸素欠陥濃度NDを理論的に求めることができる。 すなわち、空乏層内部では、ポアソンの方程式は、数式(15)で与えられる。 ここで、xは電極3bと誘電体セラミック2との界面からの距離である。 境界条件は、x=0でV=0、x=wでV=VD+VかつdV/dx=0であるから、数式(15)を2回積分し、整理すると、数式(16)が成立する。 この数式(16)を、空乏層幅wについて整理すると、数式(17)となる。 拡散電位VDはショットキー障壁高さφに近似されるから、空乏層幅wは数式(18)で表わされる。 一方、数式(15)を1回積分し、境界条件(x=w、dV/dx=0)を代入して整理すると、数式(19)が成立する。 F(0)=F0であるから、電界強度F0は数式(20)で表わされる。 一方、電界強度F0は、上述したように数式(8)で表わされ、また拡散電位VDは、上述した数式(7)で示されるようにショットキー障壁高さφに近似されるから、数式(21)が成立する。 したがって、数式(20)と数式(21)とを等値し、酸素欠陥濃度NDについて整理すると、数式(22)が成立する。 数式(18)を数式(22)に代入し、整理すると、酸素欠陥濃度NDは、数式(23)で表わされる。 電界集中係数κは、上述した数式(13)より求めることができるので、数式(23)より印加電圧Vに応じた酸素欠陥濃度NDを算出することができる。そして、酸素欠陥濃度NDが求まれば、数式(18)より空乏層幅wを求めることができる。 このように空乏層幅w及び酸素欠陥濃度NDを数値化して把握することにより、漏れ電流を効果的に抑制した電子デバイスの実現が可能となる。 すなわち、空乏層内の酸素欠陥濃度NDが大きくなると空乏層幅wが小さくなるが、該空乏層幅wが過度に小さくなると直接トンネル電流が流れ出す。したがって、直接トンネル電流の発生を回避する必要があり、このような場合に空乏層幅wはその指標となり、空乏層幅wを制御することにより、漏れ電流を効果的に抑制することが可能となる。 また、誘電体(空乏層を除く。)における酸素欠陥濃度NDが大きくなるとホッピング伝導が発生し易くなり、電気抵抗が小さくなって漏れ電流が発生し易くなる。しかも、酸素欠陥濃度NDが更に増加すると金属化して誘電体としての機能を損なうおそれがある。 しかるに、酸素欠陥濃度NDは、材料種や焼成条件等を制御することにより調整することが可能であり、したがって酸素欠陥濃度NDは、最適な材料開発やデバイス設計の指標となる。 このように本第1の実施の形態によれば、ショットキー障壁高さφ、空乏層幅w及び酸素欠陥濃度NDに代表される電子部品1の物性値を評価し、電子部品内部の物理的性状を把握することができる。そして、これら物性値を材料開発やデバイス開発に活用することにより、漏れ電流が抑制された高性能の電子部品を実現することが可能となる。また、これら物性値を製造工程での品質管理に活用することにより、不良品の発生抑制や高品質の電子部品を実現することが可能となる。さらに、これら物性値を故障解析に活用することにより、故障原因の早期究明が可能となる。 さらに、本発明では、電極3aと電極3bとの間のI−V特性をF−N理論式にフィッティングさせることにより、誘電体内部の電気的特性も高精度に評価することが可能となる。 すなわち、本発明の第2の実施の形態では、電極3a、3b間に異なる複数の電圧を印加して各々FNトンネル電流IFNTを測定し、第1の実施の形態で得られたショットキー障壁高さφを使用してI−V特性をF−N理論式にフィッテングさせ、空乏層に対する電圧配分比率γ(=空乏層に印加される電圧/電子部品に印加される電圧)を推定し、これにより空乏層の抵抗や電位勾配を明確にすることができる。 以下、前記電圧配分比率γの取得方法について説明する。 電界強度F0は、電圧配分比率γを考慮すると、数式(24)で表わされる。 したがって、第1の実施の形態と同様の手順で、F−N理論を適用すると、FNトンネル電流IFNTは、数式(25)で表わされる。 図5は、第2の実施の形態に係る電子部品の特性評価方法に使用される特性評価装置の一実施の形態を示す概念図である。 本第2の実施の形態では、ショットキー障壁高さφは、第1の実施の形態で得られたものを使用することから、電子部品1は、第1の実施の形態と同一のものが使用される。 測定針であるプローブは、この図5では詳細を省略しているが、第1の実施の形態と同一仕様のプローブが陽極側の電極3aに接触するように配される。 そして、本実施の形態では、電極3aを陽極とし、電極3bを陰極とし、電極3a、3b間に異なる複数の電圧V(例えば、4点以上)を印加し、電極3a、3b間に流れるFNトンネル電流IFNTを測定している。 そして、測定値からI−V特性を求め、第1の実施の形態で得られたショットキー障壁高さφを数式(25)に代入し、非線形最小二乗法等の数値解析法を使用して数式(25)にフィッティングさせ、これにより未知数である定数α、β、及び電圧配分比率γの近似解を得ることができ、電圧配分比率γを推定することが可能となる。 また、酸素欠陥濃度ND及び空乏層幅wは、第1の実施の形態と略同様の方法により、数式(26)及び数式(27)となる。 このように誘電体2内に形成される空乏層に対する電圧配分比率γを求めることにより、空乏層と空乏層以外の誘電体部分に印加される電圧、抵抗、更には電位勾配を明確にすることが可能となり、デバイス設計等への応用が期待される。 例えば、空乏層に印加される電圧はγVであるので、抵抗はγV/IFNTとなり、空乏層以外の誘電体に印加される電圧は(1−γ)Vであるので、抵抗は(1−γ)V/IFNTとなる。また、空乏層幅はw、誘電体の厚みはdであるので、空乏層以外の誘電体長さは(1−w)dとなり、空乏層以外の誘電体部分の電位勾配は{(1−γ)V}/{(1−w)d}となる。このように電圧配分比率γを得ることにより、空乏層と空乏層以外の誘電体部分に印加される電圧、抵抗、電位勾配が明確となり、これらの数値を活用して最適なデバイス設計等を行うことが可能となる。 電圧配分比率γの材料開発やデバイス設計例としては、耐電圧を挙げることができる。 現状では、耐電圧は電圧を印加し、素子の破壊電圧を測定して評価するのが一般的である。 しかるに、本実施の形態では電圧配分比率γが求まっているので、該電圧配分比率γにより、耐電圧に大きな影響を及ぼしているのは、電極と誘電体との界面又はその近傍なのか、誘電体内部かを容易に知ることができ、電子部品のどの部分に特に着目してデバイス設計しなければならないのか、製造条件も含めて判断の指標になると考えられる。 尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、電子部品として所謂単板コンデンサを例示したが、誘電体(絶縁体)と、該誘電体を介して対向状に配され前記誘電体に接合される少なくとも一対の電極とを備えた電子部品であれば適用可能であり、その他の各種電子部品、例えば、積層セラミックコンデンサ、薄膜キャパシタ、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ等についても同様に適用できるのはいうまでもない。 また、上記実施の形態では、セラミック材料としてチタン酸バリウム系複合酸化物を例示して説明したが、他の複合酸化物、例えばチタン酸ストロンチウムやチタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸アルカリ等の他のセラミック材料にも適用可能であり、さらにはセラミック材料以外の誘電体材料(絶縁体材料)、例えば高分子材料等にも適用可能である。 また、上記実施の形態では、プローブ4について、製造の容易性からSi等のプローブ本体6の表面をコーティング処理して金属部7を形成しているが、プローブ全体を金属で形成するようにしてもよい。 また、数値解析の手段についても、I−V特性をF−N理論式に高精度にフィッティングできるのであればよく、非線形最小二乗法に限定されるものではない。 次に、本発明の実施例を具体的に説明する。 上述した図3の特性評価装置を使用し、被測定物である電子部品1のショットキー障壁高さφ、電圧非印加時の酸素欠陥濃度ND、空乏層幅wを求めた。 尚、電子部品1の外形寸法は、幅1.0mm、長さ2.0mm、高さ0.1mmであり、誘電体セラミック2は厚み1μmの(Ba,Sr)TiO3で形成され、電極3a、3bは厚み0.2μmのPtで形成されている。また、プローブ4の曲率半径は20nmであり、プローブ本体6はSi、金属部7はRhで形成されている。 そして、尖端部材4を電極3bから100nmの位置の誘電体2表面にAFAMでモニタリングしながら定点接触させ、印加電圧Vを種々変えながら、尖端部材4の金属部7と電極3bとの間に電圧を印加し、FNトンネル電流IFNTを測定した。 表1は印加電圧Vと、測定されたトンネル電流IFNTを示している。 一方、ファウラー・ノルドハイムのトンネル理論より、FNトンネル電流IFNTは、上述したように数式(10)で表わされる。 そして、表1の測定結果(I−V特性)を、非線形最小二乗法を使用して数値解析し、数式(10)にフィッテングさせたところ、定数α、β、及びショットキー障壁高さφは、以下のように求まった。 α=5.52×10-5 β=18.3 φ=1.74eV 図6は、上述のようにして求まったα値、β値、φ値を使用して作成したフィッティング曲線であり、横軸は印加電圧V、縦軸はトンネル電流IFNTである。また、図中、×印が測定点を示している。 この図6から明らかなように、測定されたI−V特性は、数式(10)に精度良くフィッティングしていることが分かる。 一方、酸素欠陥濃度ND及び空乏層幅wは、〔発明を実施するための形態〕の項で述べたように、数式(23)及び(18)で与えられる。 電圧非印加時はV=0であるから電圧非印加時の酸素欠陥濃度ND0及び空乏層幅w0は、それぞれ数式(28)、(29)で与えられる。 また、電界集中係数κは、数式(13)で与えられる。 したがって、電圧非印加時の酸素欠陥濃度ND0及び空乏層幅w0は、それぞれ、 ND0=6.7×1027m-3 w0=7.18nm と求まった。 〔実施例1〕で使用した電子部品1について、上述した図5の特性評価装置を使用し、電圧配分比率γを求めた。 ショットキー障壁高さφは、〔実施例1〕で1.74eVと求まっているから、電圧配分比率γを考慮したFNトンネル電流IFNTは、数式(30)で表わされる。 そして、印加電圧Vを種々異ならせ、電極3a、3b間に電圧を印加し、FNトンネル電流IFNTを測定した。 表2は印加電圧Vと、測定されたトンネル電流IFNTを示している。 次いで、表2の測定結果(I−V特性)を、非線形最小二乗法を使用して数値解析し、数式(30)にフィッティングさせたところ、定数α、β、及び電圧配分比率γは、以下のように求まった。 α=5.86×10-5 β=18.9 γ=0.24 図7は、上述のようにして求まったα値、β値、φ値、γ値を使用して作成したフィッティング曲線であり、横軸は印加電圧V、縦軸はトンネル電流IFNTである。また、図中、×印が測定点を示している。 この図7から明らかなように、測定されたI−V特性は、数式(30)に精度良くフィッティングしていることが分かる。 尚、酸素欠陥濃度ND及び空乏層幅wは、〔発明を実施するための形態〕の項で述べたように、上述した数式(26)及び(27)で与えられるが、電圧非印加時はV=0であるから、電圧非印加時の酸素欠陥濃度ND及び空乏層幅wは、数式(28)及び(29)で与えられ、実施例1と同一値となる。 セラミックコンデンサ等の電子部品内部の特性であるショットキー障壁高さφ、空乏層幅w、酸素欠陥濃度ND及び空乏層に対する電圧分配比率γを求めることにより、材料開発やデバイス開発、品質管理、故障解析の指標とすることができる。1 セラミックコンデンサ(電子部品)2 誘電体セラミック(誘電体)3a、3b 電極4 尖端部材7 金属部 誘電体と、該誘電体を介して対向状に配され前記誘電体に接合される少なくとも一対の電極とを備えた電子部品に対し、特性評価を行う電子部品の特性評価方法であって、 少なくとも表面が金属で形成された尖端部材を、前記誘電体の表面であって前記一対の電極のうちの一方の電極の近傍所定位置に接触させ、 異なる複数の電圧を前記尖端部材と前記一方の電極との間に印加して各々電流値を測定し、電圧と電流との関係を所定の理論式にフィッテングさせ、少なくともショットキー障壁高さを含む前記電子部品の特性値を推定し、前記電子部品の特性評価を行うことを特徴とする電子部品の特性評価方法。 前記一対の電極間に異なる複数の電圧を印加して各々電流値を測定し、前記ショットキー障壁高さの推定値を使用して電圧と電流との関係を前記所定の理論式にフィッテングさせ、空乏層に対する電圧配分比率を推定し、前記電子部品の特性評価を行うことを特徴とする請求項1記載の電子部品の特性評価方法。 前記電子部品の特性値には、空乏層幅及び酸素欠陥濃度を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子部品の特性評価方法。 前記所定の理論式は、電界電子放出に関するファウラー・ノルドハイムの式であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電子部品の特性評価方法。 【課題】電子部品内部の物理的性状を評価し、電子部品の特性解析に寄与することができる電子部品の特性評価方法を実現する。【解決手段】誘電体セラミック2の両端に電極3a、3bが形成されたセラミックコンデンサに対し、表面が金属部7を有するプローブ4を、誘電体セラミック2の表面であって一方の電極3b(陰極)の近傍所定位置に接触させ、異なる複数の電圧をプローブ4と電極3bとの間に印加して電流値を測定し、電流−電圧特性をファウラー・ノルドハイムの式にフィッテングさせ、ショットキー障壁高さφを推定し、さらに空乏層幅w及び酸素欠陥濃度NDを算出し、これにより電子部品の特性評価を行う。【選択図】図3


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