| タイトル: | 公開特許公報(A)_鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法および鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法の工程運用方法 |
| 出願番号: | 2010162579 |
| 年次: | 2012 |
| IPC分類: | G01N 21/67,G01N 33/20 |
城代 哲史 臼井 幸夫 藤本 京子 JP 2012026745 公開特許公報(A) 20120209 2010162579 20100720 鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法および鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法の工程運用方法 JFEスチール株式会社 000001258 落合 憲一郎 100105968 森 和弘 100130834 城代 哲史 臼井 幸夫 藤本 京子 G01N 21/67 20060101AFI20120113BHJP G01N 33/20 20060101ALI20120113BHJP JPG01N21/67 AG01N33/20 K 7 OL 13 2G043 2G055 2G043AA01 2G043BA03 2G043CA05 2G043EA09 2G043FA06 2G043JA04 2G043KA03 2G043KA05 2G043LA02 2G043NA01 2G043NA05 2G043NA11 2G055AA02 2G055BA01 2G055CA02 2G055CA07 2G055FA02 本発明は、鉄鋼中のsol.Alを高精度に定量する方法およびその定量方法の工程運用方法に関するものである。 製鋼精錬工程で溶鋼に添加されたアルミニウム(以下、Alと称す)は、その一部は鋼中の酸素と反応し酸化Alとなって徐々に表面に浮上して溶鋼から取り除かれる。一方、残りの未反応のAlは鋼中に溶解したまま凝固する。鋼の凝固後、浮上除去されなかった酸化Alはそのままの状態で鋼中に残り、一方、未反応のAlは主として固溶Alとして鋼中に存在する。固溶Alは鋼試料を酸で溶解する際に一緒に溶解するが、酸化Alは溶解しないので、酸溶解により互いに分離され、前者は酸可溶性Al(以下、sol.Alと称す)と呼ばれ、後者は酸不溶性Al(以下、insol.Alと称す)と呼ばれる。sol.Alは、自動車用薄鋼板、造船用厚鋼板、電磁鋼板などの特性向上に効果があるが、insol.Alは特性に寄与しないため、製鋼工程ではsol.Alの濃度制御が重要となる。sol.Alの定量は、非特許文献1の方法が基準法として知られている。しかし、非特許文献1方法では、製鋼工程試料からの切粉状試料の採取や秤量、或いはろ過分離などの操作が煩雑なため、熟練性を必要とし、また、所要時間が数時間にも及ぶこともあり、製鋼工程における操業管理分析法としては非常に問題があった。そのため、例えば、非特許文献2に示すような固体発光分光分析法を応用した迅速分析法が開発され広く普及している。非特許文献2では、固体試料に多数回のスパーク放電を与えて生じるAl発光のスペクトル強度の頻度分布図において、低強度側の正規分布部をsol.Al、高強度側の分布をinsol.Alとして、それぞれを分別定量できることが開示されている。しかし、非特許文献2では、試料に含まれるinsol.Alの大きさが小さいと sol.Al とinsol.Alの区分点が不明確になるなどの問題点があり、十分な分析精度が得られなかった。そこで、特許文献1では、非特許文献2の考え方を改め、Al発光のスペクトル強度の頻度分布図において、低強度側の正規分布部を全Al、高強度側の分布をinsol.Alとした上で、両者の差からsol.Alを求めている。また、特許文献2では、Al発光のスペクトル強度の昇順に並び替えた図において、50%順位値に放電数を乗じたものを全Al、全スペクトル強度積算値から全Alを差し引いたものをinsol.Alとした上で、両者の差からsol.Alを求めている。しかしながら、特許文献1および特許文献2のいずれのsol.Al分析法も、全Al値からinsol.Al値を減算してsol.Alを求める間接的な方法であるため、sol.Alの分析精度は全Al分析精度および/またはinsol.Al分析精度に依存する問題がある。すなわち、sol.Alの分析結果の標準偏差[σsol]は、全Alの分析結果の標準偏差[σAll]とinsol.Alの分析結果の標準偏差[σinsol]によって、下記式(1)のように統計的に表される。上記式(1)からわかるように、全Al分析値の標準偏差[σall]とinsol.Al分析値の標準偏差[σinsol]の少なくとも1つが大きい場合には、sol.Alの分析精度[σsol]は必然的に悪化する。一般に、分析精度は分析対象元素の含有率に比例して大きくなるため、式(1)から算出されるsol.Alの分析精度は、試料中のinsol.Alの割合が大きい場合に悪くなる問題がある。以上より、特許文献1や特許文献2のように間接的にsol.Alを求める方法は、insol.Alの比較的少ない試料には有効であるが、精錬工程でアルミニウム脱酸した直後の溶鋼から採取された試料のようにinsol.Alの多く含まれる試料への適用には問題がある。さらに、sol.Al濃度が100ppm以下の微量な試料への適用にはより困難が伴うと考えられる。特許第3968055号公報特開2005-345127号公報JIS G 1257 鉄及び鋼−原子吸光分析方法アグネ「最新の鉄鋼状態分析」P111-114(1979) 本発明は、かかる事情に鑑み、スパーク放電式発光分光分析方法を用い、insol.Alが多く含まれる試料、特にsol.Al濃度が100ppm以下の微量な試料においても、sol.Alを迅速、且つ正確に測定する鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法および鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法の工程運用方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく、スパーク放電発光分光分析法における放電パルスを解析してsol.Alを直接分析することに鋭意研究を重ねた。その結果、スパーク放電におけるアルミニウムと鉄の発光強度比を小さい順に配列すると、アルミニウムと鉄の発光強度比の小さい放電パルスほどinsol.Alの影響が少なく、sol.Al正味の情報になっていることを見出した。 本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。[1] 不活性ガス雰囲気中で、鉄鋼試料と対電極との間で多数回のスパーク放電を行い、得られた元素の固有スペクトル強度に基づいて鉄鋼試料中のsol.Alの含有率を求める方法であって、以下のステップを有することを特徴とする鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法。ア)多数回の放電パルスによるアルミニウムと鉄の発光強度比を放電パルス毎に求める強度比計算ステップ。イ)前記強度比計算ステップにより得られた放電パルス毎の前記発光強度比を小さい方から配列し、一定位置の前記発光強度比をsol.Al強度比として抽出する抽出ステップ。ウ)横軸を放電パルス毎の前記発光強度比、縦軸を頻度とした度数分布図を作図し、該度数分布図から発光強度比の最頻値を計算し、次いで、前記抽出ステップで得られたsol.Al強度比に下記式にて補正を行い、sol.Al強度比補正値を求める補正ステップ。sol.Al強度比補正値=sol.Al強度比×全パルスにおける発光強度比が最頻値の2倍以内のパルス数/全パルス数 [2]前記抽出ステップにおいて、放電パルス毎の発光強度比を小さい方から配列するにあたり、発光強度比の小さい方から全パルス数の30%以内のいずれかの位置の発光強度比をsol.Al強度比として抽出することを特徴とする前記[1]に記載の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法。[3]前記鉄鋼試料が精錬工程におけるアルミニウム脱酸後の溶鋼から採取した試料であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法。[4]前記鉄鋼試料中のsol.Al含有率が100質量ppm以下であることを特徴とする前記[1]ないし[3]のいずれかに記載の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法。[5]前記補正ステップにおいて、度数分布図を作図するにあたり、横軸の区分値を放電パルスの発光強度比の中央値の2〜5%の範囲のいずれかの値とし、各度数値を結ぶ折れ線を平滑曲線化して最頻値を求めることを特徴とする前記[1]ないし[4]のいずれかに記載の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法。[6]前記強度比計算ステップにおいて、多数回の放電を2000パルス以内とすることを特徴とする前記[1]ないし[5]のいずれかに記載の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法。[7]前記強度比計算ステップにおいて、鉄の生強度を指標としてスパーク放電の状況を評価し、異常と判定された場合には、分析結果を棄却することを特徴とする前記[1]ないし[6]のいずれか1項に記載の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法の工程運用方法。 本発明によれば、アルミニウム脱酸直後の溶鋼から採取した介在物(insol.Al)が多い試料においても、鉄鋼材料中の微量なsol.Alを迅速、且つ正確に測定することができる。特にsol.Al濃度が100ppm以下の微量な試料において、有効なsol.Alの定量方法である。insol.Alが少ない鉄鋼試料をスパーク放電した場合のAl強度比の経時変化を示す図である。insol.Alが多い鉄鋼試料をスパーク放電した場合のAl強度比の経時変化を示す図である。sol.Al濃度が同一で、insol.Al濃度の異なる二つの試料のAl強度比をそれぞれ小さい方より配列化した図である。Al強度比を配列化した場合のAl強度比の構成概念図である。抽出したAl強度比とsol.Al化学分析値の関係を、抽出した位置別に示した図である。Al強度比の抽出位置と相関係数との関係をinsol.Al濃度別に表した図である。本発明の実施したスパーク放電式発光分光分析装置を示す模式図である。 本発明の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法は、スパーク放電発光分光分析法において、不活性ガス雰囲気中で、鉄鋼試料と対電極との間で多数回のスパーク放電を行い、鉄鋼試料中に含まれるsol.Alを正確かつ迅速に定量することを特徴とする。特に、スパーク放電におけるアルミニウムと鉄の発光強度比を小さい順に配列することは最も重要な要件である。スパーク放電におけるアルミニウムと鉄の発光強度比を小さい順に配列することで、発光強度比の小さい放電パルスほどinsol.Alの影響が少なく、sol.Al正味の情報になる。以下、本発明を完成するに至った経緯について説明する。 sol.Al濃度が等しくinsol.Al濃度の異なる鋼試料をそれぞれスパーク放電により発光させ、放電パルス毎にAlの発光強度と鉄の発光強度の比(Alの発光強度を鉄の発光強度で除した値であり、以下、Al強度比と称す)を経時的に観察した。得られた結果を図1および図2に示す。図1は、sol.Al=66ppm、 insol.Al=10ppm未満の試料の場合である。図2は、sol.Al=66ppm 、insol.Al=32ppmの試料の場合である。insol.Alの多い試料(図2)では、スパイク状の点が不規則に数多く確認され、スパイク状の点は、鋼中に不均一に存在するinsol.Alを含んだ放電によって生成されたことは明らかである。スパーク放電では介在物(insol.Al)に放電が集中しやすいとされ、観察されるAl強度は、地鉄中のsol.Alからの光と、介在物(insol.Al)からの光から構成されるが、それぞれの割合は放電パルスごとに異なっている。図3は図1と図2の結果をもとにAl強度比の小さい順(昇順)に配列した図である。Al強度比の大きい側はinsol.Alが支配的で、小さい側はsol.Alが支配的となっていると推察される。一方、中間付近のAl強度比は、どちらの試料でも緩やかな右上がりの傾斜を示しているが、Al強度比の大きい側へ近づくほど二つの試料の強度比に乖離が認められる。sol.Alは地鉄中に均一に存在しているので、放電時に蒸発する地鉄の量が変動しても、sol.Al由来のAl強度はFeとの相対値(Al強度比)とする限り一定値を示すはずである。 以上から、発明者らはAl強度比を小さい順に並び替えた図におけるsol.Al由来およびinsol.Al由来のAl強度比の構成は図4に示すようになっているものと考えた。つまり、Al強度比は、一定のsol.Al強度比と不確定なinsol.Al強度比の和であって、その大きさは不確定なinsol.Al強度比の大小で決定されるため、よりAl強度比の小さいパルスほどsol.Al強度比に近づき、本発明の目指すところのsol.Alの直接定量には好適であることを見出した。 図5は、sol.Al強度比を縦軸とし、横軸をsol.Alの化学分析値とし、insol.Alを20質量ppm以上含む試料について、配列化したAl強度比の所定位置から抽出したAl強度比をプロットした図である。図6はsol.Al強度比とsol.Alの化学分析値から求めた相関係数と抽出順位との関係を、さらにinsol.Alの少ない試料の結果と併せて図示したものである。これらの図より、よりAl強度比の小さい放電パルスを抽出するほど、sol.Al強度比と高い相関を示し、insol.Alの量が多い試料では特に有効な方法であることがわかる。 以上より、放電パルス毎の発光強度比(Al強度比)を小さい方から配列し、一定位置の発光強度比(Al強度比)をsol.Al強度比として抽出する。 さらに精度を高めるには、前記低Al強度のinsol.Alの影響をinsol.Alに補正して取り除くこともできる。 次に、本発明の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法の手順について、詳細に説明する。図7は、本発明の実施したスパーク放電式発光分光分析装置を示す模式図である。図7に基き、本発明に係る鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法について説明する。図7は、放電装置1、分析試料2(電極でもある)、対電極3とからなる発光部10と、発光スペクトル線を各元素の固有スペクトル線に分光する回折格子7、それぞれの元素毎に固有スペクトル線を検出する検出器(フォトマルチプライア)6等からなる分光器11と、スパーク放電毎に発光したスペクトル線のアナログ量をディジタル変換して、データ処理を行う測光装置4や、スペクトル線強度を元素の含有量に変換する演算処理装置5と結果を表示する表示部9で構成されている。 ア)強度比計算ステップまず、分析試料2と対電極3との間にて通常慣用する方法でスパーク放電を行い、アルミニウムと鉄の放電パルス毎の発光強度値を測定し、放電パルス毎にAl強度比を計算する。ここで、放電が過度に繰り返されるとinsol.Alが微細分散しsol.Alとの判別が困難となるので、放電数は2000パルス以内が望ましい。 イ)抽出ステップ得られた放電パルス毎のAl強度比を小さい順に並び替えて、一定位置のAl強度比をsol.Al強度比として抽出する。特に、Al強度比の小さい方から全パルス数の30%以内、より好ましくは5〜25%のいずれかの位置のAl強度比をsol.Al強度比として抽出することが好ましい。分析波長としてはアルミニウムの場合には、396.1nm或いは308.2nmが適当であり、鉄の場合には、287.5nm或いは271.4nmが適当である。抽出したAl強度比を、予め作成してあるAl強度比とsol.Al濃度との関係式(検量線)に代入して、試料中のsol.Al濃度を直接算出することができる。 ウ)補正ステップ さらに高精度なsol.Al濃度を得るためには、抽出ステップにて抽出したAl強度比を補正することもできる。まず、横軸を前記発光強度比、縦軸を頻度とした度数分布図を作図し、該度数分布図から発光強度比の最頻値を計算する。次いで、前記抽出ステップで得られたsol.Al強度比に下記式にて補正を行い、sol.Al強度比補正値を求める。sol.Al強度比補正値=sol.Al強度比×全パルスの発光強度比が最頻値の2倍を超えないパルス数/全パルス数一例を以下に述べる。まず、以下の手順で放電パルスの最頻値を算出する。1)放電パルス毎のAl強度比の中央値を求める。2)1)で求めた中央値の2〜5%の値を求める。3)2)の値を一区分として、横軸がAl強度比、縦軸が度数となる、放電パルスのAl強度比の度数分布図を作成する。4)各度数値を結ぶ折れ線をデータ処理によって平滑曲線化して、得られた曲線の最大値を与えるAl強度比を最頻値とする。度数分布図は横軸の設定如何で全く異なる形様を呈し、最頻値決定に問題が生じる。例えば、区分値が小さすぎると分布の凹凸が著しくなり最頻値の決定が困難となり、反対に区分値が大きすぎると分布の凹凸が減り最頻値は明確になるが、最頻値の精度が低下する。そこで、発明者らは幾つかの鉄鋼試料を用いて検討を行った結果、それぞれの中央値の2〜5%で区分し、各度数値を結ぶ折れ線を平滑曲線化することが適当であるという結論に至った。平滑曲線化の方法は移動平均法や数値微分法などのような一般的な方法でよい。次に、下記式にて補正を行い、sol.Al強度比補正値を求める。すなわち、放電パルス毎のAl強度比が上記最頻値の2倍以内のパルス数を求め、求めたパルス数を全パルス数で除したものを補正係数Kとする。この補正係数Kと抽出ステップにて抽出したAl強度比との積を補正強度比すなわちsol.Al強度比補正値とする。sol.Al強度補正値=sol.Al強度×全パルスの強度比の最頻値の2倍以内のパルス数/全パルス数以上により得られたsol.Al強度比ないし補正強度比(sol.Al強度比補正値)を予め作成してあるAl強度比とsol.Al濃度との関係式(検量線)に代入して、所望試料のsol.Al濃度を得る。また、鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法を運用するにあたっては、強度比計算ステップにおいて、鉄の生強度を指標としてスパーク放電の状況を評価し、異常と判定された場合には、分析結果を棄却することができる。鉄鋼試料中のケイ素濃度が高いと、表面に酸化皮膜が形成されやすくなるので、放電不良が生じることがあるが、放電パルスの状況は鉄の強度値を指標として判断できる。例えば、鉄強度平均値が一定の閾値以下の場合には放電不良として、得られた分析結果を棄却することができる。但し、鉄強度のような絶対値とすると放電条件の変更や光電子増倍管の感度変化によって数値が変化してしまうので、鉄強度の相対標準偏差値や強度中央値を平均強度で除すなど、無次元化された相対鉄強度が望ましい。 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。 表1に示すinsol.Alの少ない鉄鋼試料および表2に示すinsol.Alを多く含む鉄鋼試料を適切な大きさに切断して、表面を研磨した後、以下に示す本発明法と比較法により分析を行った。なお、表1および表2の化学分析値は、JISG1257(1994)の付属書14または付属書16に従って分析し、sol.Alとinsol.Alとを分けて分析した。 発明例表1および表2に示す鉄鋼試料を研磨したのち、図7に示すスパーク放電発光分光分析装置を用いて、2000パルスの放電測定を行った。スパーク放電発光分光分析装置としてはARL4460型(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を使用した。得られた放電パルス毎のAl強度比を小さい順から配列し、Al強度比の小さい方より全パルス数の5%に相当する100番目のAl強度比をsol.Al強度比として抽出した。また、平行して2000パルスのAl強度比の度数分布図を作成し最頻値を求め、最頻値の2倍以内のAl強度比のパルス数を全パルス数で除して補正係数を求めた。sol.Al強度比と上記補正係数を乗算した値を、予めinsol.Alの少ない鉄鋼試料で作製した検量線に代入して、sol.Alの分析値に換算した。 比較例表1および表2に示す鉄鋼試料を研磨したのち、実施例1と同じ装置を用いて同様の方法にて2000パルスの放電測定を行った。放電パルスをアルミニウム強度と鉄強度の比を得て、非特許文献2に従って、sol.Alの分析値に換算した。 以上により得られた結果を、表3に前記実施例1と比較例のそれぞれで得られたsol.Al分析値と化学分析値との差の平均値(σd)として示した。表3より、本発明法では、sol.Alが100ppm以下の微量な試料、さらにはinsol.Alが多く含まれている試料のいずれにおいても、精度の良い分析値が得られていることがわかる。1 放電装置2 分析試料3 対電極4 測光装置5 演算処理装置6 検出器7 回折格子8 スリット9 表示部10 発光部11 分光器 不活性ガス雰囲気中で、鉄鋼試料と対電極との間で多数回のスパーク放電を行い、得られた元素の固有スペクトル強度に基づいて鉄鋼試料中のsol.Alの含有率を求める方法であって、以下のステップを有することを特徴とする鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法。ア)多数回の放電パルスによるアルミニウムと鉄の発光強度比を放電パルス毎に求める強度比計算ステップ。イ)前記強度比計算ステップにより得られた放電パルス毎の前記発光強度比を小さい方から配列し、一定位置の前記発光強度比をsol.Al強度比として抽出する抽出ステップ。ウ)横軸を放電パルス毎の前記発光強度比、縦軸を頻度とした度数分布図を作図し、該度数分布図から発光強度比の最頻値を計算し、次いで、前記抽出ステップで得られたsol.Al強度比に下記式にて補正を行い、sol.Al強度比補正値を求める補正ステップ。sol.Al強度比補正値=sol.Al強度比×全パルスにおける発光強度比が最頻値の2倍以内のパルス数/全パルス数 前記抽出ステップにおいて、放電パルス毎の発光強度比を小さい方から配列するにあたり、発光強度比の小さい方から全パルス数の30%以内のいずれかの位置の発光強度比をsol.Al強度比として抽出することを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法。 前記鉄鋼試料が精錬工程におけるアルミニウム脱酸後の溶鋼から採取した試料であることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法。 前記鉄鋼試料中のsol.Al含有率が100質量ppm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法。 前記補正ステップにおいて、度数分布図を作図するにあたり、横軸の区分値を放電パルスの発光強度比の中央値の2〜5%の範囲のいずれかの値とし、各度数値を結ぶ折れ線を平滑曲線化して最頻値を求めることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法。 前記強度比計算ステップにおいて、多数回の放電を2000パルス以内とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法。 前記強度比計算ステップにおいて、鉄の生強度を指標としてスパーク放電の状況を評価し、異常と判定された場合には、分析結果を棄却することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法の工程運用方法。 【課題】sol.Alを迅速、且つ正確に測定する鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法および鉄鋼中のsol.Alの高精度定量方法の工程運用方法を提供する。【解決手段】不活性ガス雰囲気中で、鉄鋼試料と対電極との間で多数回のスパーク放電を行い、アルミニウムと鉄の発光強度比を放電パルス毎に求める。次いで、得られた放電パルス毎の前記発光強度比を小さい方から配列し、一定位置の発光強度比をsol.Al強度比として抽出する。次いで、横軸を放電パルス毎の前記発光強度比、縦軸を頻度とした度数分布図を作図し、該度数分布図から発光強度比の最頻値を計算し、sol.Al強度比に下記式にて補正を行い、sol.Al強度比補正値を求める。sol.Al強度比補正値=sol.Al強度比×全パルスにおける発光強度比が最頻値の2倍以内のパルス数/全パルス数【選択図】なし