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タイトル:公開特許公報(A)_新規含酸素セスキテルペン化合物
出願番号:2010154602
年次:2012
IPC分類:C07C 49/553,C11B 9/00,C11D 3/50,C07C 45/46,A61K 8/35,A61Q 13/00,D06L 1/00,A61L 9/01


特許情報キャッシュ

森 洋紀 福田 和之 JP 2012017274 公開特許公報(A) 20120126 2010154602 20100707 新規含酸素セスキテルペン化合物 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 森 洋紀 福田 和之 C07C 49/553 20060101AFI20111222BHJP C11B 9/00 20060101ALI20111222BHJP C11D 3/50 20060101ALI20111222BHJP C07C 45/46 20060101ALI20111222BHJP A61K 8/35 20060101ALI20111222BHJP A61Q 13/00 20060101ALI20111222BHJP D06L 1/00 20060101ALI20111222BHJP A61L 9/01 20060101ALI20111222BHJP JPC07C49/553C11B9/00 PC11D3/50C07C45/46A61K8/35A61Q13/00 100D06L1/00A61L9/01 H 10 OL 16 4C080 4C083 4H003 4H006 4H059 4C080AA04 4C080BB02 4C080BB03 4C080CC01 4C080MM13 4C080QQ03 4C083AC152 4C083AC211 4C083AC212 4C083AC342 4C083AC392 4C083AD042 4C083AD532 4C083BB41 4C083CC01 4C083EE07 4C083KK01 4C083KK02 4H003DA01 4H003FA26 4H006AA01 4H006AA02 4H006AA03 4H006AB14 4H006AC44 4H006BA64 4H059BA23 4H059DA09 4H059EA32 4H059EA35 本発明は、新規化合物である含酸素セスキテルペン化合物及びこれを含有する香料組成物に関する。 木様の香気(ウッディ香)は古くから好まれてきた香りの1つであり、現在も製品に天然らしさや暖かさを付与するために必要な成分である。木様の香気としては、天然木材精油として得られるセダーウッドオイルやサンダルウッドオイル、天然植物精油として得られるベチバーオイルやパチュリオイルといった精油がある。また、これら天然精油の誘導体である“アセチルセドレン”やベチベリルアセテートといった半合成品も利用されてきた。 “アセチルセドレン”は、セダーウッドオイルをアセチル化することで得られ、主成分である下記式(2)で表される化合物のほか、複数種のメチルケトンなどを含む多成分系のウッディ香料である。ここで、本明細書においては、式(2)で表されるアセチル化された三環式セスキテルペン化合物自体を「α-アセチルセドレン(2)」と称する。α-アセチルセドレン(2)は、セダーウッドオイルの中に含有される下記式(3)で表される三環式セスキテルペンがアセチル化されたされたものである(特許文献1)。本明細書においては、式(3)で表される三環式セスキテルペンを「α-セドレン(3)」と称することとする。セダーウッドオイルをアセチル化して得られる“アセチルセドレン”は、強さのある天然らしいセダーウッド様のウッディ香とともに、暖かさのある竜涎香様のアンバー香を併せ持つことを特徴とする。しかし、その香りの本体は、組成比が10重量%以下の副生成物アイソマーGに由来するものであり、主生成物たるα-アセチルセドレン(2)自体は、ほとんど無香であることが良く知られている(特許文献1、非特許文献1)。 しかし、セダーウッドオイルのような天然木材精油を得るためには木材の伐採が必要であり、成長するまでに長い月日を費やし、また木材資源保護の観点からも、供給量には限界がある。また、天然植物精油はその栽培において天候の影響を受けるため価格と収量が年によって変動する欠点がある。このように、需要増加に伴う大量使用に対応し得る安定供給が可能な、ウッディ香を有する化合物が必要とされている。 これに対して木様香気を有する天然精油の代替品として、入手容易な天然原料ピネンあるいは石油原料から化学反応により得られる非天然型構造の香料素材であるイソ・イー・スーパー(IFF社商品名)やトリモフィックスO(IFF社商品名)などが開発されている。しかしながら、これらは天然型セスキテルペンとは構造が異なるため、天然らしい木の香りを付与するには至らなかった。 天然型セスキテルペン類の合成的入手方法として、1970年代には汎用香料素材であるネロリドールやファルネソールから前記α-セドレン(3)の合成方法が開示されている(非特許文献2〜5)。これらの文献ではα‐セドレン(3)と共に、下記式(4)で表されるα-セドレン(3)の異性体が得られることが報告されている(非特許文献2〜5)。ここで、本明細書では式(4)で表される三環式セスキテルペンを「2-エピ-α-セドレン(4)」と称することとする。米国特許3681470号明細書印藤元一著,「合成香料」,増補改訂版,化学工業日報社,2005年3月22日発行,p.331Tetrahedron Lett., 1972, 2455-2458Chem. Lett., 1972, 263-266Chem. Rev., 1999, 27-76Helv. Chim. Acta, 1971, 1845-1864 しかし、非特許文献2〜5においては、2-エピ-α-セドレン(4)を含む様々なセスキテルペンの合成例が報告されているものの、それらの香りに関する記載はなく、2-エピ-α-セドレン(4)が香料として有用であることは知られていなかった。また、2-エピ-α-アセチルセドレン(4)の製品配合時の使い方についても示唆されていない。 本発明の課題は、汎用原料から天然型セスキテルペン様構造を簡便に効率よく合成して、天然らしいウッディ香と暖かさのあるアンバー香を併せ持つ新規化合物及びこれを用いた香料組成物を提供することにある。 本発明者らは、公知の化合物であるα-アセチルセドレン(2)と立体構造の異なる新規化合物である、式(1)で表される9-アセチル-2,6,6,8-テトラメチルトリシクロ[5.3.11,7.01,5]-8-ウンデセン(以下、「2-エピ-α-アセチルセドレン(1)」と称する)を合成し、当該化合物自体が天然らしいウッディ香と暖かさのあるアンバー香を併せ持った特有の香気を発することを見出した。 すなわち、本発明は、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を提供するものである。 更に本発明は、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を含有する香料組成物を提供するものである。 更に本発明は、かかる香料組成物を含有する香粧品、家庭用製品、及び環境衛生用品を提供するものである。 更に本発明は、香料組成物に2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を添加することによる香料組成物の香気の改善方法を提供するものである。 更に本発明は、2-エピ-α-セドレンをアセチル化することによる2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の製造方法を提供するものである。 本発明の新規化合物である2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、天然らしいウッディ香と暖かさのあるアンバー香を併せ持ち、今までの合成香料では得られなかった天然らしい暖かさのある木の香りを付与する賦香成分として有用である。また、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、天然資源である木材を伐採することなく得られるピネンや、石油原料からのビタミン中間体として得られる汎用原料のネロリドールを原料として合成することができる。α-セドレンの1H-NMRスペクトルである。2-エピ-α-セドレンの1H-NMRスペクトルである。香料組成物(A2)の1H-NMRスペクトルである。香料組成物(A)の1H-NMRスペクトルである。α-アセチルセドレンの1H-NMRスペクトルである。図3〜図5の1H-NMRスペクトルの比較である。〔2-エピ-α-アセチルセドレン(1)について〕 本発明の2-エピ-α-アセチルセドレンは式(1)で表される。 2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、ほとんど無香であることが知られているα-アセチルセドレン(2)のエピ体であるが、意外にも、天然らしさのあるウッディ香と暖かさのあるアンバー香を併せ持つ香気を有する。従って、これまで副生物が主たる香気であった“アセチルセドレン”や、天然らしさが不足する既存のウッディ系合成香料に2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を組み合わせることで、天然らしい暖かさのある木の匂いをいっそう強めることが出来る。〔2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の製造方法〕 本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の合成方法は、特に限定されるものではないが、2-エピ-α-セドレン(4)をアセチル化することによって得ることが好ましい。・2-エピ-α-セドレン(4)の合成 2-エピ-α-セドレン(4)の合成方法は、特に制限されるものではないが、例えば非特許文献2〜5に記載の方法によって合成することができる。簡便に合成する観点から、非特許文献3に示される、セスキテルペンをルイス酸触媒の存在下で、環化し、2-エピ-α-セドレン(4)を合成することが好ましい。 反応原料のセスキテルペンとしては、ファルネソールやネロリドールなどの鎖状セスキテルペンやビサボロールなどの単環状セスキテルペンが好ましく、更にファルネソールやネロリドールが好ましく、特にネロリドールが好ましい。 具体的には、ネロリドールを反応原料とする場合、下記反応式(I)に示すように、ネロリドールを三フッ化ホウ素エーテレート存在下で環化させることにより、1反応で2-エピ-α-セドレン(4)を合成することができる。これら既存の方法によって得られた2-エピ-α-セドレン(4)は、α-セドレン(3)を含んでもよいし、両者のラセミ体であってもよい。・2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の合成 2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、下記反応式(II)に示すように、2-エピ-α-セドレン(4)をアセチル化することによって得られる。簡便に合成する観点から、反応式(I)で合成された生成物をアセチル化することが好ましい。アセチル化の際には、反応式(I)で合成された生成物から2-エピ-α-セドレン(4)を単離してアセチル化を行っても良いし、2-エピ-α-セドレン(4)とα-セドレン(3)との混合物をアセチル化してもよい。アセチル化の方法は特に限定されず、任意の公知の方法を用いることができるが、選択性の点からフリーデル・クラフツアシル化反応によってアセチル化することが好ましい。具体的には、2-エピ-α-セドレン(4)に塩化アルミニウムや酸化亜鉛といったルイス酸触媒存在下で、塩化アセチルや無水酢酸を反応させ、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を合成する。 反応式(I)で示される環化反応によって合成されたα-セドレン(3)と2-エピ-α-セドレン(4)の混合物をアセチル化して2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を合成する場合、生成物は本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)と、α-アセチルセドレン(2)の混合物となっている。この混合比率は精留を行うことで任意に変えることができる。精留はアセチル化後に行っても2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の含有量を任意に変えることが可能であるが、ハンドリングの観点から環化反応後、アセチル化反応前に行うことが好ましい。〔香料組成物〕 本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、今までにない天然らしいウッディ香と暖かさのあるアンバー香を有しており、単独で香料として使用することもできるが、種々の香料物質と組み合わせて使用することもできる。すなわち本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を様々な香料組成物に含有させることにより、容易に新しい香りを作り出すことができる。 例えば、本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、公知の化合物であるα-アセチルセドレン(2)との組み合わせで好適に使用することができる。2-エピ-α-アセチルセドレン(1)とα-アセチルセドレン(2)とは、任意の重量比率で組み合わせることが可能であるが、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)とα-アセチルセドレン(2)の重量比が1:0.5〜1:5である場合に、香料組成物が香木を想起させるような天然物らしい香りを有し、好ましい。両者の重量比が1:0.8〜1:2であると、上記効果が顕著になるため、更に好ましい。 その他、本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、例えば以下に示す香料物質の1種以上と組み合わせて用いることができる。(1)リモネン、α-ピネン、β-ピネン、テルピネン、セドレン、ロンギフォレン、バレンセンなどの炭化水素類。(2)リナロール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、テルピネオール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、テトラヒドロリナロール、ファルネソール、ネロリドール、シス-3-ヘキセノール、セドロール、メントール、ボルネオール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルヘキサノール、4-メチル-3-デセン-5-オール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、2,2-ジメチルシクロヘキサンプロパノール、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-2H-ピラン-4-オール、2,2,6-トリメチルシクロヘキシル-3-ヘキサノール、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタノール、イソカンフィルシクロヘキサノール、3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2,5,5-トリメチル-2-ナフタレノールなどのアルコール類。(3)オイゲノール、チモール、バニリンなどのフェノール類。(4)リナリルホルメート、シトロネリルホルメート、ゲラニルホルメート、1,2,3,4,4a,7,8,8a-オクタヒドロ-2,4a,5,8a-テトラメチル-1-ナフチルフォルメート、n-ヘキシルアセテート、シス-3-ヘキセニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、テルピニルアセテート、ノピルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、o-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、3-ペンチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、シトロネリルプロピオネート、トリシクロデセニルプロピオネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、エチル2-シクロヘキシルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、シトロネリルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルn-ブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート、メチル2-ノネノエート、アリルアミルグリコレート、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、メチル-2-アミノベンゾエート、メチルシンナメート、メチルサリシレート、n-ヘキシルサリシレート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、シクロヘキシルサリシレート、ゲラニルチグレート、シス-3-ヘキセニルチグレート、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート、メチル2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、エチルメチルフェニルグリシデート、メチル-N-(3,7-ジメチル-7-ヒドロキシオクチリデン)-アントラニレート、シス-3-ヘキセニルメチルカーボネート、フルテート(花王社商品名)などのエステル類。(5)n-オクタナール、n-デカナール、n-ドデカナール、2-メチルウンデカナール、10-ウンデセナール、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、4(3)-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド、2-シクロヘキシルプロパナール、p-t-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p-イソプロピル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p-エチル-α,α-ジメチルヒドロシンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ピペロナール、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒドなどのアルデヒド類。(6)メチルヘプテノン、4-メチレン-3,5,6,6-テトラメチル-2-ヘプタノン、アミルシクロペンタノン、3-メチル-2-(シス-2-ペンテン-1-イル)-2-シクロペンテン-1-オン、メチルシクロペンテノロン、ローズケトン、γ-メチルヨノン、α-ヨノン、β-ヨノン、ジヒドロ-β-ヨノン、カルボン、メントン、ショウ脳、ヌートカトン、アセチルセドレン、ベンジルアセトン、アニシルアセトン、メチルβ-ナフチルケトン、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン、1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4H-インデン-4-オン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン、マルトール、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデセノンなどのケトン類。 (7)1,1-ジメトキシ-2,2,5-トリメチル-4-ヘキセン、アセトアルデヒドエチルフェニルプロピルアセタール、シトラールジエチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリンアセタール、エチルアセトアセテートエチレングリコールケタールなどのアセタール類やケタール類。(8)アネトール、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、リモネンオキサイド、ローズオキサイド、1,8-シネオール、3a-エチルドデカヒドロ-6,6,9a-トリメチルナフト[2,1-b]フラン、ラセミ体又は光学活性のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランなどのエーテル類。(9)シトロネリルニトリル、ドデカンニトリル、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリルなどのニトリル類。 また、更に、カルボン酸類のほか、γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-デカラクトン、γ-ジャスモラクトン、クマリン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、エチレンブラシレート、11-オキサヘキサデカノリドなどのラクトン類、オレンジ、レモン、ベルガモット、マンダリン、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミル、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、セダー、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどの天然精油や天然抽出物も、本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)と組み合わせて使用することが出来る。 本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)と上記香料は任意に組み合わせることができる。配合割合は特に限定されないが、香料組成物中に2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を、通常は0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上配合することで、天然らしいウッディ香と暖かさのあるアンバー香をもたらすことができる。 本発明の香料組成物は、様々な形態の芳香性製品に配合又は適用することができる。その利用分野としては、例えば、香粧品、家庭用製品、環境衛生製品等がある。 「香粧品」とは、人の身なりを清潔に又は美しくするための製品であり、具体的には石鹸、身体洗浄剤、頭髪洗浄剤、頭髪化粧料、化粧品(例えば、皮膚化粧料、仕上げ化粧料など)、香水、コロン、制汗剤、デオドラント剤、浴用剤等が挙げられる。 「家庭用製品」とは、家庭生活に必要な住居や家庭製品等の様々な物品の機能又は清潔性を維持するための製品であり、具体的には衣料用洗剤、衣料用柔軟剤、衣料用糊剤、住居用洗剤、風呂用洗剤、食器用洗剤、漂白剤、カビ取り剤、床用ワックス等が挙げられる。 「環境衛生製品」とは、環境を所定の状態又は雰囲気に調節するための製品であり、特に香料組成物を適用して環境に漂う香りを調節することが可能な製品として、具体的には、芳香剤、消臭剤、薫香、線香、ろうそく等が挙げられる。 香料組成物を適用した製品の使用方法は様々であり、例えば、香水や化粧料のように所定部位に積極的に適用して匂いを発生させる方法、洗浄剤のようにすすいだ後の適用部位に匂いを残留させる方法、芳香剤のように空間に揮発させることで匂いを漂わせる方法、線香やろうそくのように燃やすことで空間に匂いを漂わせる方法等がある。製造例1 2-エピ-α-セドレン(4)の製造法 温度計、攪拌器及び滴下ロートを取り付けた3L容の三口フラスコを窒素置換し、ヘキサン 500mLと三フッ化ホウ素エーテレート85mLを加えた。この反応系を0℃に冷却し、ネロリドール300gとヘキサン500mLの混合溶液を反応系内の温度が上昇しないようにゆっくり5時間掛けて滴下した。ネロリドールを滴下した後、0℃にて1時間攪拌し、反応を行った。その後、2N水酸化ナトリウム水溶液 500mLをゆっくりと滴下し、中和した。分液ロートにてヘキサン相を抽出し、硫酸マグネシウムで脱水した。得られたヘキサン相を濃縮して得られた粗生成物から揮発成分のみを減圧蒸留にて分取したところ、多成分系のセスキテルペン生成物が145.8g(収率53%)得られた。 2-エピ-α-セドレン(4)の同定は、GC-MS分析及び核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR、13C-NMR)測定にて行った。GC-MSは、アジレント社製GC-6890とキャピラリーカラムとしてアジレント社製DB-WAX(0.25mmφ×60m×0.25μm)を用いた。昇温条件は、70℃から240℃まで2℃/minで昇温した。核磁気共鳴スペクトル測定は、ブルカー社製AV400Mを用いて測定した。溶剤には、重クロロホルム溶液を用いた。2-エピ-α-セドレン(4)の同定に関しては、Helvetica Chim. Acta, 1971, 54, 1845-1864.及びJ. Natural Products, 1984, 47, 924-933.を参考に行った。・α-セドレン(3)(図1)の同定結果は以下の通りである。1H-NMR(400MHz : CDCl3) : δ0.86(d, J = 7.12 Hz, 3H), 0.97(s, 3H), 1.04(s, 3H), 1.3-1.5(m, 3H), 1.6-2.0(m, 10H), 2.1-2.3(m, 1H), 5.24(s, 1H)13C-NMR(100MHz : CDCl3) : δ15.4, 24.9, 25.0, 25.6, 27.6, 36.1, 38.8, 40.7, 41.5, 48.1, 53.8, 54.9, 59.0, 119.2, 140.5MS : 204(26), 189(4), 161(23), 147(11), 136(7), 119(100), 105(26), 93(31), 91(17), 77(9), 69(10), 55(6), 41(9)GCピーク検出時間:15.9min・2-エピ-α-セドレン(4)(図2)の同定結果は以下の通りである。1H-NMR(400MHz : CDCl3) : δ0.92(d, J = 7 Hz, 3H), 0.97(s, 3H), 1.03(s, 3H), 1.3-1.5(m, 3H), 1.6-2.0(m, 10H), 2.1-2.3(m, 1H), 5.24(s, 1H)MS : 204(28), 189(6), 161(24), 147(20), 136(8), 119(100), 105(28), 93(34), 91(18), 77(11), 69(11), 55(6), 41(10)GCピーク検出時間:15.4min製造例2 2-エピ-α-セドレン(4)の精製 製造例1で得られた多成分系のセスキテルペン生成物には、α-セドレン(3) 10重量%、2-エピ-α-セドレン(4) 7重量%程度含まれていた。製造例1で得られた生成物を精留にて11分画した。精留はヘリパックを充填した30段相当の精留塔を用い、留出温度77℃、真空度0.3kPaで精留した。GCで測定し、2-エピ-α-セドレン(4)の含有率が高い留分を混合し、α-セドレン(3) 36重量%、2-エピ-α-セドレン(4) 26重量%を含む混合液Xを得た。 同様に精留を行い、留出温度87℃、真空度0.3kPaで精留した。GC測定し、α-セドレン(3)の含有量が高い留分を混合し、α-セドレン(3) 40重量%、2-エピ-α-セドレン(4) 11重量%を含む混合液Yを得た。試験例1 匂い評価 合成した2-エピ-α-セドレン(4)を含む混合液X,Yともフレッシュなウッディ香であった。α-セドレン(3)と2-エピ-α-セドレン(4)の混合物で匂いを評価すると、2-エピ-α-セドレン(4)の含有量が多い混合液Xの方がウッディ感のある強い匂いであった。製造例3(実施例) 2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の合成(低純度) 製造例1で得られた2-エピ-α-セドレン(4)を含む生成物 4.38gを温度計と還流管を取り付けた300mL容の三口フラスコに加え、更に酸化亜鉛 2.6gと脱水ジクロロメタン100mLを加えて窒素置換した。反応系を0℃に冷却した後、アセチルクロライド7.6mLをゆっくりと滴下した。滴下後、オイルバスの温度を50℃まで加熱し、還流下で3時間攪拌し、反応させた。反応終了後、再び0℃に冷却し、1N水酸化ナトリウム水溶液 200mLを加えて中和した。分液ロートにてジクロロメタン相を抽出し、硫酸マグネシウムで脱水した。得られたジクロロメタン相を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン→ジクロロメタン)により分画した。得られた粗生成物をクーゲルロール蒸留にて高沸物を除去し、生成物0.65gを得た。この生成物をGCで分析したところ、α-アセチルセドレン(2) 30重量%と2-エピ-α-セドレンアセチル化体(1) 25重量%の混合物を得た。 GC-MSは、アジレント社製GC-6890とキャピラリーカラムとしてアジレント社製 DB-WAX(0.25mmφ×60m×0.25μm)を用いた。昇温条件は、70℃から240℃まで2℃/minで昇温した。NMR測定は、ブルカー社製AV400Mを用いて測定した。溶剤には、重クロロホルム溶液を用いた。・α-アセチルセドレン(2)の同定結果は以下の通りである。1H-NMR(400MHz : CDCl3) : δ0.90 (d, J = 7 Hz, 3H), 0.98(s, 3H), 1.02(s, 3H), 1.3-1.9(m, 8H), 1.9-2.0(m, 4H), 2.0-2.2(m, 1H), 2.22(s, 3H), 2.45(dd, J = 16.2, 2.1Hz, 1H)13C-NMR(100MHz : CDCl3) : δ15.4, 23.9, 24.8, 25.8, 27.7, 30.1, 36.0 39.4, 40.5, 41.4, 48.6, 53.7, 58.1, 58.8, 130.9, 149.4, 203.8MS : 246(46), 231(62), 203(27), 175(15), 162(17), 161(100), 148(21), 147(46), 135(22), 123(20), 121(21), 119(45), 105(31), 100(20), 91(22), 69(28), 43(71), 41(19)GCピーク検出時間:37.6min・2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の同定結果は以下の通りである。MS : 246(65), 231(75), 203(38), 175(18), 162(17), 161(100), 148(22), 147(51), 135(30), 123(18), 121(18), 119(54), 105(37), 100(19), 91(26), 69(32), 43(79), 41(22)GCピーク検出時間:37.8min製造例4(実施例) 2-エピα-アセチルセドレン(1)の合成(高純度) 製造例2で得られたα-セドレン(3) 36重量%と2-エピ-α-セドレン(4) 26重量%を含む混合液X 4gを温度計と還流管を取り付けた300mL容の三口フラスコに加え、更に酸化亜鉛3gと脱水ジクロロメタン 120mLを加えて窒素置換した。反応系を0℃に冷却した後、アセチルクロライド 6.96mLをゆっくりと滴下した。滴下後、オイルバスの温度を50℃まで加熱し、還流下で3時間攪拌し、反応させた。反応終了後、再び0℃に冷却し、1N水酸化ナトリウム水溶液200mLを加えて中和した。分液ロートにてジクロロメタン相を抽出し、硫酸マグネシウムで脱水した。得られたジクロロメタン相を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン→ジクロロメタン)により分画した。 得られたジクロロメタン相を濃縮した後、中圧カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1:3)にて精製し、クーゲルロール蒸留にて高沸物を除去してα-アセチルセドレン(2) 50重量%と2-エピ-α-アセチルセドレン(1) 50重量%の香料組成物(A)を得た。 香料組成物(A)を更にGCにて分画し、α-アセチルセドレン(2) 30重量%、2-エピ-α-アセチルセドレン(1) 70重量%の組成物(A2)を得た。(同定方法) 得られた香料組成物(A)、香料組成物(A2)及びα-アセチルセドレン(2)のNMR測定を行った。 測定にはブルカー社製AV400Mを用い、溶剤として重クロロホルム溶液を用いた。 香料組成物(A2)の測定結果は図3、香料組成物(A)の測定結果は図4、α-アセチルセドレン(2)の測定結果は図5に示す。また、これらを比較した図を図6に示す。 これらを比較したところ、図3と図4には図5には含まれないピークが存在した。これら図5に含まれないNMRピークの位置は図3と図4で一致していた。図5に含まれないピークの位置は以下のとおりであった。1H-NMR(400MHz : CDCl3) : δ0.91(d, J = 6.3 Hz, 3H), 0.95(s, 3H), 1.01(s, 3H), 1.3-1.9(m, 8H), 1.9-2.0(m, 4H), 2.22(s, 3H), 2.3-2.7(m, 2H)13C-NMR(100MHz : CDCl3) : δ13.6, 23.8, 24.0, 25.0, 27.8, 30.0, 33.2, 34.4, 41.6, 43.0, 49.5, 54.9, 57.0, 58.4, 58.4, 131.5, 150.0, 203.3 また、1H-NMR及びNOE測定により、プロトンと3-位のメチル基の立体配置を測定したところ、α-アセチルセドレン(2)と3-位のメチル基の位置が異なる異性体の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)と同定した。 なお、図3の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)とα-アセチルセドレン(2)のNMRのピーク比及び図4の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)とα-アセチルセドレン(2)のNMRのピーク比はGC測定の結果と良く一致していた。製造例5(実施例) 2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の合成 製造例2で得られたα-セドレン(3) 40重量%と2-エピ-α-セドレン(4) 11重量%を含む混合液Yを用い、製造例3と同様の手順で反応を行うことにより、α-アセチルセドレン(2)と2-エピ-α-セドレンのアセチル化体(1)を組成比2:1で含む香料組成物(B)を得た。試験例2 匂い評価 製造例4及び5で得られたα-アセチルセドレン(2)と2-エピ-α-アセチルセドレン(1)からなる香料組成物の匂いについて、社内専門パネラー4名による匂い評価を行った。評価結果については、4名による合議で決定した。この結果を表1に示す。 香料組成物(A)、(B)のいずれも、試験例1で評価した混合液X、Yと明らかに異なる香りであった。すなわち、天然らしさが付与され、さらに暖かみのあるアンバー香を有するようになった。 表1に示すように、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の比率が多くなるにつれて天然らしいウッディ香と暖かみのあるアンバー香が感じられた。製造例4で得られた香料組成物(A)は、天然の香木を想起させる匂いを有しており、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)が匂いの品質を高める効果があることが認められた。試験例3 α-アセチルセドレン(2)と2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の匂い強度 製造例4で得られた香料組成物(A)について、官能ガスクロマトグラフィーにてα‐アセチルセドレン(2)のピークと2−エピ-α-アセチルセドレン(1)のピークの匂いについて、社内専門パネラーによる匂い評価を行った。測定条件としては、GCはアジレント社製GC-6890、カラムとしてアジレント社製 DB-WAX(0.53mmφ×30m×1.00μm)を用いた。昇温条件は、70℃から240℃まで4℃/minで昇温した。 この結果、以下に示すように、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、α-アセチルセドレン(2)にはない特徴のあるウッディ、アンバー様の香木を想起させる香りを有していた。 2-エピ-α-アセチルセドレン(1):甘さや暖かみとパウダリー感のあるウッディ、アンバー様で香木を想起させる香り α-アセチルセドレン(2):ほとんど匂いが感じられない試験例4 表2に示すように、香料組成物(A)及び(B)、α-アセチルセドレン(2)並びにジプロピレングリコールを、表3に示す調合香料95重量部に対して5重量部加え、それぞれ香料組成物(C)〜(F)とした。 香料組成物(C)、(D)及び(E)について、香料組成物(F)を基準として匂いの比較評価を行った。その結果、以下に示すように2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の量が増えると匂いの品質を高める効果が認められた。 香料組成物(C):香料組成物(D)よりも暖かさと甘さが増し、ボリュームのある匂いが認められた。 香料組成物(D):暖かさと甘さが認められた。 香料組成物(E):香料組成物(F)と匂いの差がなく、効果がほとんど認められなかった。 また、社内専門パネラー4名による匂い評価によって、香料組成物Fを基準とした際の匂いの改善度について以下の基準で評価した。評価結果については、4名による合議で決定した。香りの改善度 4:暖かさと甘さが非常に強くなった 3:暖かさと甘さが強くなった 2:暖かさと甘さがわずかに強くなった 1:わずかに匂いの差が認められた 0:変化なし 式(1)で表される9-アセチル-2,6,6,8-テトラメチルトリシクロ[5.3.11,7.01,5]-8-ウンデセン。 請求項1記載の化合物を含有する香料組成物。 更に、式(2)で表される化合物を含有する請求項2記載の香料組成物。 α-セドレンと2-エピ-α-セドレンの混合物をアセチル化することによって得られたものである請求項3記載の香料組成物。 式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物の重量比が1:0.5〜1:5である請求項3又は4記載の香料組成物。 式(1)で表される化合物を0.1〜50重量%含有する請求項2〜5のいずれかに記載の香料組成物。 請求項2〜6のいずれかに記載の香料組成物を含有する香粧品、家庭用製品又は環境衛生品。 香料組成物に対して請求項1記載の化合物を添加することによる香料組成物の香気の改善方法。 2-エピ-α-セドレンをアセチル化することによる請求項1記載の化合物の製造方法。 2-エピ-α-セドレンが、ネロリドール又はファルネソールの環化反応により得られたものである請求項9記載の製造方法。 【課題】汎用原料から天然型セスキテルペン様構造を簡便に効率よく合成して、天然らしいウッディ香と暖かさのあるアンバー香を併せ持つ新規香料を用いた香料組成物の提供。【解決手段】式(1)で表される9-アセチル-2,6,6,8-テトラメチルトリシクロ[5.3.11,7.01,5]-8-ウンデセン、当該化合物を含有する香料組成物、当該香料組成物を含有する香粧品、家庭用製品又は環境衛生品、香料組成物に対して当該化合物を添加することによる香料組成物の香気の改善方法、並びに2-エピ-α-セドレンをアセチル化することによる当該化合物の製造方法。【選択図】なし


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特許公報(B2)_新規含酸素セスキテルペン化合物

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_新規含酸素セスキテルペン化合物
出願番号:2010154602
年次:2014
IPC分類:C07C 49/553,C11B 9/00,C11D 3/50,C07C 45/46,A61K 8/35,A61Q 13/00,D06L 1/00,A61L 9/01


特許情報キャッシュ

森 洋紀 福田 和之 JP 5604198 特許公報(B2) 20140829 2010154602 20100707 新規含酸素セスキテルペン化合物 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 森 洋紀 福田 和之 20141008 C07C 49/553 20060101AFI20140918BHJP C11B 9/00 20060101ALI20140918BHJP C11D 3/50 20060101ALI20140918BHJP C07C 45/46 20060101ALI20140918BHJP A61K 8/35 20060101ALI20140918BHJP A61Q 13/00 20060101ALI20140918BHJP D06L 1/00 20060101ALI20140918BHJP A61L 9/01 20060101ALI20140918BHJP JPC07C49/553C11B9/00 PC11D3/50C07C45/46A61K8/35A61Q13/00 100D06L1/00A61L9/01 H C07C 49/553 CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN) 特開昭47−14162(JP,A) 特開昭54−154740(JP,A) 10 2012017274 20120126 15 20130614 品川 陽子 本発明は、新規化合物である含酸素セスキテルペン化合物及びこれを含有する香料組成物に関する。 木様の香気(ウッディ香)は古くから好まれてきた香りの1つであり、現在も製品に天然らしさや暖かさを付与するために必要な成分である。木様の香気としては、天然木材精油として得られるセダーウッドオイルやサンダルウッドオイル、天然植物精油として得られるベチバーオイルやパチュリオイルといった精油がある。また、これら天然精油の誘導体である“アセチルセドレン”やベチベリルアセテートといった半合成品も利用されてきた。 “アセチルセドレン”は、セダーウッドオイルをアセチル化することで得られ、主成分である下記式(2)で表される化合物のほか、複数種のメチルケトンなどを含む多成分系のウッディ香料である。ここで、本明細書においては、式(2)で表されるアセチル化された三環式セスキテルペン化合物自体を「α-アセチルセドレン(2)」と称する。α-アセチルセドレン(2)は、セダーウッドオイルの中に含有される下記式(3)で表される三環式セスキテルペンがアセチル化されたされたものである(特許文献1)。本明細書においては、式(3)で表される三環式セスキテルペンを「α-セドレン(3)」と称することとする。セダーウッドオイルをアセチル化して得られる“アセチルセドレン”は、強さのある天然らしいセダーウッド様のウッディ香とともに、暖かさのある竜涎香様のアンバー香を併せ持つことを特徴とする。しかし、その香りの本体は、組成比が10重量%以下の副生成物アイソマーGに由来するものであり、主生成物たるα-アセチルセドレン(2)自体は、ほとんど無香であることが良く知られている(特許文献1、非特許文献1)。 しかし、セダーウッドオイルのような天然木材精油を得るためには木材の伐採が必要であり、成長するまでに長い月日を費やし、また木材資源保護の観点からも、供給量には限界がある。また、天然植物精油はその栽培において天候の影響を受けるため価格と収量が年によって変動する欠点がある。このように、需要増加に伴う大量使用に対応し得る安定供給が可能な、ウッディ香を有する化合物が必要とされている。 これに対して木様香気を有する天然精油の代替品として、入手容易な天然原料ピネンあるいは石油原料から化学反応により得られる非天然型構造の香料素材であるイソ・イー・スーパー(IFF社商品名)やトリモフィックスO(IFF社商品名)などが開発されている。しかしながら、これらは天然型セスキテルペンとは構造が異なるため、天然らしい木の香りを付与するには至らなかった。 天然型セスキテルペン類の合成的入手方法として、1970年代には汎用香料素材であるネロリドールやファルネソールから前記α-セドレン(3)の合成方法が開示されている(非特許文献2〜5)。これらの文献ではα‐セドレン(3)と共に、下記式(4)で表されるα-セドレン(3)の異性体が得られることが報告されている(非特許文献2〜5)。ここで、本明細書では式(4)で表される三環式セスキテルペンを「2-エピ-α-セドレン(4)」と称することとする。米国特許3681470号明細書印藤元一著,「合成香料」,増補改訂版,化学工業日報社,2005年3月22日発行,p.331Tetrahedron Lett., 1972, 2455-2458Chem. Lett., 1972, 263-266Chem. Rev., 1999, 27-76Helv. Chim. Acta, 1971, 1845-1864 しかし、非特許文献2〜5においては、2-エピ-α-セドレン(4)を含む様々なセスキテルペンの合成例が報告されているものの、それらの香りに関する記載はなく、2-エピ-α-セドレン(4)が香料として有用であることは知られていなかった。また、2-エピ-α-アセチルセドレン(4)の製品配合時の使い方についても示唆されていない。 本発明の課題は、汎用原料から天然型セスキテルペン様構造を簡便に効率よく合成して、天然らしいウッディ香と暖かさのあるアンバー香を併せ持つ新規化合物及びこれを用いた香料組成物を提供することにある。 本発明者らは、公知の化合物であるα-アセチルセドレン(2)と立体構造の異なる新規化合物である、式(1)で表される9-アセチル-2,6,6,8-テトラメチルトリシクロ[5.3.11,7.01,5]-8-ウンデセン(以下、「2-エピ-α-アセチルセドレン(1)」と称する)を合成し、当該化合物自体が天然らしいウッディ香と暖かさのあるアンバー香を併せ持った特有の香気を発することを見出した。 すなわち、本発明は、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を提供するものである。 更に本発明は、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を含有する香料組成物を提供するものである。 更に本発明は、かかる香料組成物を含有する香粧品、家庭用製品、及び環境衛生用品を提供するものである。 更に本発明は、香料組成物に2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を添加することによる香料組成物の香気の改善方法を提供するものである。 更に本発明は、2-エピ-α-セドレンをアセチル化することによる2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の製造方法を提供するものである。 本発明の新規化合物である2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、天然らしいウッディ香と暖かさのあるアンバー香を併せ持ち、今までの合成香料では得られなかった天然らしい暖かさのある木の香りを付与する賦香成分として有用である。また、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、天然資源である木材を伐採することなく得られるピネンや、石油原料からのビタミン中間体として得られる汎用原料のネロリドールを原料として合成することができる。α-セドレンの1H-NMRスペクトルである。2-エピ-α-セドレンの1H-NMRスペクトルである。香料組成物(A2)の1H-NMRスペクトルである。香料組成物(A)の1H-NMRスペクトルである。α-アセチルセドレンの1H-NMRスペクトルである。図3〜図5の1H-NMRスペクトルの比較である。〔2-エピ-α-アセチルセドレン(1)について〕 本発明の2-エピ-α-アセチルセドレンは式(1)で表される。 2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、ほとんど無香であることが知られているα-アセチルセドレン(2)のエピ体であるが、意外にも、天然らしさのあるウッディ香と暖かさのあるアンバー香を併せ持つ香気を有する。従って、これまで副生物が主たる香気であった“アセチルセドレン”や、天然らしさが不足する既存のウッディ系合成香料に2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を組み合わせることで、天然らしい暖かさのある木の匂いをいっそう強めることが出来る。〔2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の製造方法〕 本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の合成方法は、特に限定されるものではないが、2-エピ-α-セドレン(4)をアセチル化することによって得ることが好ましい。・2-エピ-α-セドレン(4)の合成 2-エピ-α-セドレン(4)の合成方法は、特に制限されるものではないが、例えば非特許文献2〜5に記載の方法によって合成することができる。簡便に合成する観点から、非特許文献3に示される、セスキテルペンをルイス酸触媒の存在下で、環化し、2-エピ-α-セドレン(4)を合成することが好ましい。 反応原料のセスキテルペンとしては、ファルネソールやネロリドールなどの鎖状セスキテルペンやビサボロールなどの単環状セスキテルペンが好ましく、更にファルネソールやネロリドールが好ましく、特にネロリドールが好ましい。 具体的には、ネロリドールを反応原料とする場合、下記反応式(I)に示すように、ネロリドールを三フッ化ホウ素エーテレート存在下で環化させることにより、1反応で2-エピ-α-セドレン(4)を合成することができる。これら既存の方法によって得られた2-エピ-α-セドレン(4)は、α-セドレン(3)を含んでもよいし、両者のラセミ体であってもよい。・2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の合成 2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、下記反応式(II)に示すように、2-エピ-α-セドレン(4)をアセチル化することによって得られる。簡便に合成する観点から、反応式(I)で合成された生成物をアセチル化することが好ましい。アセチル化の際には、反応式(I)で合成された生成物から2-エピ-α-セドレン(4)を単離してアセチル化を行っても良いし、2-エピ-α-セドレン(4)とα-セドレン(3)との混合物をアセチル化してもよい。アセチル化の方法は特に限定されず、任意の公知の方法を用いることができるが、選択性の点からフリーデル・クラフツアシル化反応によってアセチル化することが好ましい。具体的には、2-エピ-α-セドレン(4)に塩化アルミニウムや酸化亜鉛といったルイス酸触媒存在下で、塩化アセチルや無水酢酸を反応させ、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を合成する。 反応式(I)で示される環化反応によって合成されたα-セドレン(3)と2-エピ-α-セドレン(4)の混合物をアセチル化して2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を合成する場合、生成物は本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)と、α-アセチルセドレン(2)の混合物となっている。この混合比率は精留を行うことで任意に変えることができる。精留はアセチル化後に行っても2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の含有量を任意に変えることが可能であるが、ハンドリングの観点から環化反応後、アセチル化反応前に行うことが好ましい。〔香料組成物〕 本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、今までにない天然らしいウッディ香と暖かさのあるアンバー香を有しており、単独で香料として使用することもできるが、種々の香料物質と組み合わせて使用することもできる。すなわち本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を様々な香料組成物に含有させることにより、容易に新しい香りを作り出すことができる。 例えば、本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、公知の化合物であるα-アセチルセドレン(2)との組み合わせで好適に使用することができる。2-エピ-α-アセチルセドレン(1)とα-アセチルセドレン(2)とは、任意の重量比率で組み合わせることが可能であるが、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)とα-アセチルセドレン(2)の重量比が1:0.5〜1:5である場合に、香料組成物が香木を想起させるような天然物らしい香りを有し、好ましい。両者の重量比が1:0.8〜1:2であると、上記効果が顕著になるため、更に好ましい。 その他、本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、例えば以下に示す香料物質の1種以上と組み合わせて用いることができる。(1)リモネン、α-ピネン、β-ピネン、テルピネン、セドレン、ロンギフォレン、バレンセンなどの炭化水素類。(2)リナロール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、テルピネオール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、テトラヒドロリナロール、ファルネソール、ネロリドール、シス-3-ヘキセノール、セドロール、メントール、ボルネオール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルヘキサノール、4-メチル-3-デセン-5-オール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、2,2-ジメチルシクロヘキサンプロパノール、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-2H-ピラン-4-オール、2,2,6-トリメチルシクロヘキシル-3-ヘキサノール、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタノール、イソカンフィルシクロヘキサノール、3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2,5,5-トリメチル-2-ナフタレノールなどのアルコール類。(3)オイゲノール、チモール、バニリンなどのフェノール類。(4)リナリルホルメート、シトロネリルホルメート、ゲラニルホルメート、1,2,3,4,4a,7,8,8a-オクタヒドロ-2,4a,5,8a-テトラメチル-1-ナフチルフォルメート、n-ヘキシルアセテート、シス-3-ヘキセニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、テルピニルアセテート、ノピルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、o-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、3-ペンチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、シトロネリルプロピオネート、トリシクロデセニルプロピオネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、エチル2-シクロヘキシルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、シトロネリルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルn-ブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート、メチル2-ノネノエート、アリルアミルグリコレート、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、メチル-2-アミノベンゾエート、メチルシンナメート、メチルサリシレート、n-ヘキシルサリシレート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、シクロヘキシルサリシレート、ゲラニルチグレート、シス-3-ヘキセニルチグレート、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート、メチル2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、エチルメチルフェニルグリシデート、メチル-N-(3,7-ジメチル-7-ヒドロキシオクチリデン)-アントラニレート、シス-3-ヘキセニルメチルカーボネート、フルテート(花王社商品名)などのエステル類。(5)n-オクタナール、n-デカナール、n-ドデカナール、2-メチルウンデカナール、10-ウンデセナール、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、4(3)-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド、2-シクロヘキシルプロパナール、p-t-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p-イソプロピル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p-エチル-α,α-ジメチルヒドロシンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ピペロナール、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒドなどのアルデヒド類。(6)メチルヘプテノン、4-メチレン-3,5,6,6-テトラメチル-2-ヘプタノン、アミルシクロペンタノン、3-メチル-2-(シス-2-ペンテン-1-イル)-2-シクロペンテン-1-オン、メチルシクロペンテノロン、ローズケトン、γ-メチルヨノン、α-ヨノン、β-ヨノン、ジヒドロ-β-ヨノン、カルボン、メントン、ショウ脳、ヌートカトン、アセチルセドレン、ベンジルアセトン、アニシルアセトン、メチルβ-ナフチルケトン、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン、1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4H-インデン-4-オン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン、マルトール、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデセノンなどのケトン類。 (7)1,1-ジメトキシ-2,2,5-トリメチル-4-ヘキセン、アセトアルデヒドエチルフェニルプロピルアセタール、シトラールジエチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリンアセタール、エチルアセトアセテートエチレングリコールケタールなどのアセタール類やケタール類。(8)アネトール、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、リモネンオキサイド、ローズオキサイド、1,8-シネオール、3a-エチルドデカヒドロ-6,6,9a-トリメチルナフト[2,1-b]フラン、ラセミ体又は光学活性のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランなどのエーテル類。(9)シトロネリルニトリル、ドデカンニトリル、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリルなどのニトリル類。 また、更に、カルボン酸類のほか、γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-デカラクトン、γ-ジャスモラクトン、クマリン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、エチレンブラシレート、11-オキサヘキサデカノリドなどのラクトン類、オレンジ、レモン、ベルガモット、マンダリン、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミル、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、セダー、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどの天然精油や天然抽出物も、本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)と組み合わせて使用することが出来る。 本発明の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)と上記香料は任意に組み合わせることができる。配合割合は特に限定されないが、香料組成物中に2-エピ-α-アセチルセドレン(1)を、通常は0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上配合することで、天然らしいウッディ香と暖かさのあるアンバー香をもたらすことができる。 本発明の香料組成物は、様々な形態の芳香性製品に配合又は適用することができる。その利用分野としては、例えば、香粧品、家庭用製品、環境衛生製品等がある。 「香粧品」とは、人の身なりを清潔に又は美しくするための製品であり、具体的には石鹸、身体洗浄剤、頭髪洗浄剤、頭髪化粧料、化粧品(例えば、皮膚化粧料、仕上げ化粧料など)、香水、コロン、制汗剤、デオドラント剤、浴用剤等が挙げられる。 「家庭用製品」とは、家庭生活に必要な住居や家庭製品等の様々な物品の機能又は清潔性を維持するための製品であり、具体的には衣料用洗剤、衣料用柔軟剤、衣料用糊剤、住居用洗剤、風呂用洗剤、食器用洗剤、漂白剤、カビ取り剤、床用ワックス等が挙げられる。 「環境衛生製品」とは、環境を所定の状態又は雰囲気に調節するための製品であり、特に香料組成物を適用して環境に漂う香りを調節することが可能な製品として、具体的には、芳香剤、消臭剤、薫香、線香、ろうそく等が挙げられる。 香料組成物を適用した製品の使用方法は様々であり、例えば、香水や化粧料のように所定部位に積極的に適用して匂いを発生させる方法、洗浄剤のようにすすいだ後の適用部位に匂いを残留させる方法、芳香剤のように空間に揮発させることで匂いを漂わせる方法、線香やろうそくのように燃やすことで空間に匂いを漂わせる方法等がある。製造例1 2-エピ-α-セドレン(4)の製造法 温度計、攪拌器及び滴下ロートを取り付けた3L容の三口フラスコを窒素置換し、ヘキサン 500mLと三フッ化ホウ素エーテレート85mLを加えた。この反応系を0℃に冷却し、ネロリドール300gとヘキサン500mLの混合溶液を反応系内の温度が上昇しないようにゆっくり5時間掛けて滴下した。ネロリドールを滴下した後、0℃にて1時間攪拌し、反応を行った。その後、2N水酸化ナトリウム水溶液 500mLをゆっくりと滴下し、中和した。分液ロートにてヘキサン相を抽出し、硫酸マグネシウムで脱水した。得られたヘキサン相を濃縮して得られた粗生成物から揮発成分のみを減圧蒸留にて分取したところ、多成分系のセスキテルペン生成物が145.8g(収率53%)得られた。 2-エピ-α-セドレン(4)の同定は、GC-MS分析及び核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR、13C-NMR)測定にて行った。GC-MSは、アジレント社製GC-6890とキャピラリーカラムとしてアジレント社製DB-WAX(0.25mmφ×60m×0.25μm)を用いた。昇温条件は、70℃から240℃まで2℃/minで昇温した。核磁気共鳴スペクトル測定は、ブルカー社製AV400Mを用いて測定した。溶剤には、重クロロホルム溶液を用いた。2-エピ-α-セドレン(4)の同定に関しては、Helvetica Chim. Acta, 1971, 54, 1845-1864.及びJ. Natural Products, 1984, 47, 924-933.を参考に行った。・α-セドレン(3)(図1)の同定結果は以下の通りである。1H-NMR(400MHz : CDCl3) : δ0.86(d, J = 7.12 Hz, 3H), 0.97(s, 3H), 1.04(s, 3H), 1.3-1.5(m, 3H), 1.6-2.0(m, 10H), 2.1-2.3(m, 1H), 5.24(s, 1H)13C-NMR(100MHz : CDCl3) : δ15.4, 24.9, 25.0, 25.6, 27.6, 36.1, 38.8, 40.7, 41.5, 48.1, 53.8, 54.9, 59.0, 119.2, 140.5MS : 204(26), 189(4), 161(23), 147(11), 136(7), 119(100), 105(26), 93(31), 91(17), 77(9), 69(10), 55(6), 41(9)GCピーク検出時間:15.9min・2-エピ-α-セドレン(4)(図2)の同定結果は以下の通りである。1H-NMR(400MHz : CDCl3) : δ0.92(d, J = 7 Hz, 3H), 0.97(s, 3H), 1.03(s, 3H), 1.3-1.5(m, 3H), 1.6-2.0(m, 10H), 2.1-2.3(m, 1H), 5.24(s, 1H)MS : 204(28), 189(6), 161(24), 147(20), 136(8), 119(100), 105(28), 93(34), 91(18), 77(11), 69(11), 55(6), 41(10)GCピーク検出時間:15.4min製造例2 2-エピ-α-セドレン(4)の精製 製造例1で得られた多成分系のセスキテルペン生成物には、α-セドレン(3) 10重量%、2-エピ-α-セドレン(4) 7重量%程度含まれていた。製造例1で得られた生成物を精留にて11分画した。精留はヘリパックを充填した30段相当の精留塔を用い、留出温度77℃、真空度0.3kPaで精留した。GCで測定し、2-エピ-α-セドレン(4)の含有率が高い留分を混合し、α-セドレン(3) 36重量%、2-エピ-α-セドレン(4) 26重量%を含む混合液Xを得た。 同様に精留を行い、留出温度87℃、真空度0.3kPaで精留した。GC測定し、α-セドレン(3)の含有量が高い留分を混合し、α-セドレン(3) 40重量%、2-エピ-α-セドレン(4) 11重量%を含む混合液Yを得た。試験例1 匂い評価 合成した2-エピ-α-セドレン(4)を含む混合液X,Yともフレッシュなウッディ香であった。α-セドレン(3)と2-エピ-α-セドレン(4)の混合物で匂いを評価すると、2-エピ-α-セドレン(4)の含有量が多い混合液Xの方がウッディ感のある強い匂いであった。製造例3(実施例) 2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の合成(低純度) 製造例1で得られた2-エピ-α-セドレン(4)を含む生成物 4.38gを温度計と還流管を取り付けた300mL容の三口フラスコに加え、更に酸化亜鉛 2.6gと脱水ジクロロメタン100mLを加えて窒素置換した。反応系を0℃に冷却した後、アセチルクロライド7.6mLをゆっくりと滴下した。滴下後、オイルバスの温度を50℃まで加熱し、還流下で3時間攪拌し、反応させた。反応終了後、再び0℃に冷却し、1N水酸化ナトリウム水溶液 200mLを加えて中和した。分液ロートにてジクロロメタン相を抽出し、硫酸マグネシウムで脱水した。得られたジクロロメタン相を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン→ジクロロメタン)により分画した。得られた粗生成物をクーゲルロール蒸留にて高沸物を除去し、生成物0.65gを得た。この生成物をGCで分析したところ、α-アセチルセドレン(2) 30重量%と2-エピ-α-セドレンアセチル化体(1) 25重量%の混合物を得た。 GC-MSは、アジレント社製GC-6890とキャピラリーカラムとしてアジレント社製 DB-WAX(0.25mmφ×60m×0.25μm)を用いた。昇温条件は、70℃から240℃まで2℃/minで昇温した。NMR測定は、ブルカー社製AV400Mを用いて測定した。溶剤には、重クロロホルム溶液を用いた。・α-アセチルセドレン(2)の同定結果は以下の通りである。1H-NMR(400MHz : CDCl3) : δ0.90 (d, J = 7 Hz, 3H), 0.98(s, 3H), 1.02(s, 3H), 1.3-1.9(m, 8H), 1.9-2.0(m, 4H), 2.0-2.2(m, 1H), 2.22(s, 3H), 2.45(dd, J = 16.2, 2.1Hz, 1H)13C-NMR(100MHz : CDCl3) : δ15.4, 23.9, 24.8, 25.8, 27.7, 30.1, 36.0 39.4, 40.5, 41.4, 48.6, 53.7, 58.1, 58.8, 130.9, 149.4, 203.8MS : 246(46), 231(62), 203(27), 175(15), 162(17), 161(100), 148(21), 147(46), 135(22), 123(20), 121(21), 119(45), 105(31), 100(20), 91(22), 69(28), 43(71), 41(19)GCピーク検出時間:37.6min・2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の同定結果は以下の通りである。MS : 246(65), 231(75), 203(38), 175(18), 162(17), 161(100), 148(22), 147(51), 135(30), 123(18), 121(18), 119(54), 105(37), 100(19), 91(26), 69(32), 43(79), 41(22)GCピーク検出時間:37.8min製造例4(実施例) 2-エピα-アセチルセドレン(1)の合成(高純度) 製造例2で得られたα-セドレン(3) 36重量%と2-エピ-α-セドレン(4) 26重量%を含む混合液X 4gを温度計と還流管を取り付けた300mL容の三口フラスコに加え、更に酸化亜鉛3gと脱水ジクロロメタン 120mLを加えて窒素置換した。反応系を0℃に冷却した後、アセチルクロライド 6.96mLをゆっくりと滴下した。滴下後、オイルバスの温度を50℃まで加熱し、還流下で3時間攪拌し、反応させた。反応終了後、再び0℃に冷却し、1N水酸化ナトリウム水溶液200mLを加えて中和した。分液ロートにてジクロロメタン相を抽出し、硫酸マグネシウムで脱水した。得られたジクロロメタン相を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン→ジクロロメタン)により分画した。 得られたジクロロメタン相を濃縮した後、中圧カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1:3)にて精製し、クーゲルロール蒸留にて高沸物を除去してα-アセチルセドレン(2) 50重量%と2-エピ-α-アセチルセドレン(1) 50重量%の香料組成物(A)を得た。 香料組成物(A)を更にGCにて分画し、α-アセチルセドレン(2) 30重量%、2-エピ-α-アセチルセドレン(1) 70重量%の組成物(A2)を得た。(同定方法) 得られた香料組成物(A)、香料組成物(A2)及びα-アセチルセドレン(2)のNMR測定を行った。 測定にはブルカー社製AV400Mを用い、溶剤として重クロロホルム溶液を用いた。 香料組成物(A2)の測定結果は図3、香料組成物(A)の測定結果は図4、α-アセチルセドレン(2)の測定結果は図5に示す。また、これらを比較した図を図6に示す。 これらを比較したところ、図3と図4には図5には含まれないピークが存在した。これら図5に含まれないNMRピークの位置は図3と図4で一致していた。図5に含まれないピークの位置は以下のとおりであった。1H-NMR(400MHz : CDCl3) : δ0.91(d, J = 6.3 Hz, 3H), 0.95(s, 3H), 1.01(s, 3H), 1.3-1.9(m, 8H), 1.9-2.0(m, 4H), 2.22(s, 3H), 2.3-2.7(m, 2H)13C-NMR(100MHz : CDCl3) : δ13.6, 23.8, 24.0, 25.0, 27.8, 30.0, 33.2, 34.4, 41.6, 43.0, 49.5, 54.9, 57.0, 58.4, 58.4, 131.5, 150.0, 203.3 また、1H-NMR及びNOE測定により、プロトンと3-位のメチル基の立体配置を測定したところ、α-アセチルセドレン(2)と3-位のメチル基の位置が異なる異性体の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)と同定した。 なお、図3の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)とα-アセチルセドレン(2)のNMRのピーク比及び図4の2-エピ-α-アセチルセドレン(1)とα-アセチルセドレン(2)のNMRのピーク比はGC測定の結果と良く一致していた。製造例5(実施例) 2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の合成 製造例2で得られたα-セドレン(3) 40重量%と2-エピ-α-セドレン(4) 11重量%を含む混合液Yを用い、製造例3と同様の手順で反応を行うことにより、α-アセチルセドレン(2)と2-エピ-α-セドレンのアセチル化体(1)を組成比2:1で含む香料組成物(B)を得た。試験例2 匂い評価 製造例4及び5で得られたα-アセチルセドレン(2)と2-エピ-α-アセチルセドレン(1)からなる香料組成物の匂いについて、社内専門パネラー4名による匂い評価を行った。評価結果については、4名による合議で決定した。この結果を表1に示す。 香料組成物(A)、(B)のいずれも、試験例1で評価した混合液X、Yと明らかに異なる香りであった。すなわち、天然らしさが付与され、さらに暖かみのあるアンバー香を有するようになった。 表1に示すように、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の比率が多くなるにつれて天然らしいウッディ香と暖かみのあるアンバー香が感じられた。製造例4で得られた香料組成物(A)は、天然の香木を想起させる匂いを有しており、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)が匂いの品質を高める効果があることが認められた。試験例3 α-アセチルセドレン(2)と2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の匂い強度 製造例4で得られた香料組成物(A)について、官能ガスクロマトグラフィーにてα‐アセチルセドレン(2)のピークと2−エピ-α-アセチルセドレン(1)のピークの匂いについて、社内専門パネラーによる匂い評価を行った。測定条件としては、GCはアジレント社製GC-6890、カラムとしてアジレント社製 DB-WAX(0.53mmφ×30m×1.00μm)を用いた。昇温条件は、70℃から240℃まで4℃/minで昇温した。 この結果、以下に示すように、2-エピ-α-アセチルセドレン(1)は、α-アセチルセドレン(2)にはない特徴のあるウッディ、アンバー様の香木を想起させる香りを有していた。 2-エピ-α-アセチルセドレン(1):甘さや暖かみとパウダリー感のあるウッディ、アンバー様で香木を想起させる香り α-アセチルセドレン(2):ほとんど匂いが感じられない試験例4 表2に示すように、香料組成物(A)及び(B)、α-アセチルセドレン(2)並びにジプロピレングリコールを、表3に示す調合香料95重量部に対して5重量部加え、それぞれ香料組成物(C)〜(F)とした。 香料組成物(C)、(D)及び(E)について、香料組成物(F)を基準として匂いの比較評価を行った。その結果、以下に示すように2-エピ-α-アセチルセドレン(1)の量が増えると匂いの品質を高める効果が認められた。 香料組成物(C):香料組成物(D)よりも暖かさと甘さが増し、ボリュームのある匂いが認められた。 香料組成物(D):暖かさと甘さが認められた。 香料組成物(E):香料組成物(F)と匂いの差がなく、効果がほとんど認められなかった。 また、社内専門パネラー4名による匂い評価によって、香料組成物Fを基準とした際の匂いの改善度について以下の基準で評価した。評価結果については、4名による合議で決定した。香りの改善度 4:暖かさと甘さが非常に強くなった 3:暖かさと甘さが強くなった 2:暖かさと甘さがわずかに強くなった 1:わずかに匂いの差が認められた 0:変化なし 式(1)で表される9-アセチル-2,6,6,8-テトラメチルトリシクロ[5.3.11,7.01,5]-8-ウンデセン。 請求項1記載の化合物を含有する香料組成物。 更に、式(2)で表される化合物を含有する請求項2記載の香料組成物。 α-セドレンと2-エピ-α-セドレンの混合物をアセチル化することによって得られたものである請求項3記載の香料組成物。 式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物の重量比が1:0.5〜1:5である請求項3又は4記載の香料組成物。 式(1)で表される化合物を0.1〜50重量%含有する請求項2〜5のいずれかに記載の香料組成物。 請求項2〜6のいずれかに記載の香料組成物を含有する香粧品、家庭用製品又は環境衛生品。 香料組成物に対して請求項1記載の化合物を添加することによる香料組成物の香気の改善方法。 2-エピ-α-セドレンをアセチル化することによる請求項1記載の化合物の製造方法。 2-エピ-α-セドレンが、ネロリドール又はファルネソールの環化反応により得られたものである請求項9記載の製造方法。


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