タイトル: | 公開特許公報(A)_ヒトの頭髪を担体とした炭酸ガス固定化方法とその再利用方法。 |
出願番号: | 2010122050 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | B01J 19/00,A61K 8/25,C01B 31/20,B01J 20/24,B09B 3/00,A61Q 5/12,A61Q 5/06,A61Q 7/00,B28B 23/02 |
永崎 央明 川村 達三 伊藤 啓司 玄子 隼人 JP 2011224532 公開特許公報(A) 20111110 2010122050 20100416 ヒトの頭髪を担体とした炭酸ガス固定化方法とその再利用方法。 永崎 央明 510148588 株式会社川村商事 507290696 株式会社ジゴ 510029014 伊藤 啓司 510148599 永崎 央明 川村 達三 伊藤 啓司 玄子 隼人 B01J 19/00 20060101AFI20111014BHJP A61K 8/25 20060101ALI20111014BHJP C01B 31/20 20060101ALI20111014BHJP B01J 20/24 20060101ALI20111014BHJP B09B 3/00 20060101ALI20111014BHJP A61Q 5/12 20060101ALI20111014BHJP A61Q 5/06 20060101ALI20111014BHJP A61Q 7/00 20060101ALI20111014BHJP B28B 23/02 20060101ALI20111014BHJP JPB01J19/00 AA61K8/25C01B31/20 ZB01J20/24 AB09B3/00 304GA61Q5/12A61Q5/06A61Q7/00B28B23/02 Z 18 書面 14 4C083 4D004 4G058 4G066 4G075 4G146 4C083AB431 4C083AB432 4C083AC112 4C083AC482 4C083AC532 4C083AC542 4C083AC642 4C083AC692 4C083AD412 4D004AA36 4D004AB03 4D004CA15 4D004CA34 4D004CA47 4D004CC11 4D004CC15 4G058GA02 4G058GA08 4G066AA61B 4G066AC03B 4G066BA05 4G066BA07 4G066BA16 4G066CA35 4G066DA03 4G075AA04 4G075BB04 4G075BD14 4G075CA54 4G075DA01 4G075DA18 4G146JA02 4G146JC27 4G146JC28 発明の詳細な説明 この発明は、大気中の炭酸ガス固定化方法とその再利用方法に関する。詳しくは、生体組織であるヒトの頭髪に大気などの炭酸ガス含有気体中の炭酸ガスを固定化する方法と、その頭髪を生体由来の機能性材料として再利用する方法に関する。 従来より大気中の炭酸ガス削減のため多くの炭酸ガス固定化技術が提案されている。 例えば、特許文献1及び2ではゼオライトによる吸着固定化技術が、特許文献3ではメソカーボンマイクロビーズの特性を活かした固定化技術が、特許文献4では高炉スラグの水和物を利用した固定化技術が、特許文献5では蛇紋岩の様な超塩基性岩を利用した固定化技術が、特許文献6ではクロレラT−1株の増殖による固定化技術が、更に特許文献7ではオクタエチルポルフィナート錯体を利用した固定化技術などが提案されている。 特開平5−49918特公平5−64612特開平5−161843特開平7−88362特開2008−19099特開平8−116965特許第334467号 その他、非特許文献として好気条件下での海洋植物プランクトンのための栄養塩として、製鋼スラグを海洋投棄しその鉄分により海水中のプランクトンを増殖させ、炭酸ガスを大量に固定化する提案(東北大学大学院 日野 光兀教授)や休廃止石炭鉱山に埋蔵された炭層に炭酸ガスを固定化するための高圧吸着機構の開発(京都大学 田門 肇教授)さらにはサンゴ礁などの海洋石灰岩による炭酸ガスの大量固定化技術などが提案されている。 しかしながら、前述の先行技術は技術や手段そのものはそれぞれに有効であるが、その効果を具現化するための装置の詳細や価格などについては具体的に言及されておらず、早急な効果が求められている現下の状況を打開するには至っていない。 また、そのために大規模な設備投資が必要となれば、現在の状況には到底馴染むべくもない。 特に鉄鋼業などの基幹産業においては、これまでに徹底した品質管理と膨大な設備投資により、炭酸ガスの発生を抑制してきた経緯もあり、更なる大規模な設備投資は困難な状況にある。 一方、バイオマスへのエネルギー転換は、同時に食糧の需給バランスを不安定にし、食糧価格の高騰を招く恐れがあり、まずこの二律相反のジレンマを解決せねばならない。 本発明はこのような状況に鑑み、大規模な設備投資も全く必要なく、直ちに実行することが可能であり、効果が期待出来る安全で安価な全く新しい知見に基づく炭酸ガス固定化方法と再利用方法を提供することを課題とする。 課題を解決するための手段及び発明の効果 本発明は、上記の課題を解決するものとして、長年の経験と鋭意研究の結果、ヒトの頭髪が炭酸ガスを吸着固定化する担体として優れた機能を持つ生体唯一の組織であることを発見し、この機能を強化するために頭髪に予め用意された層状化合物と層間物質よりなる層間化合物との相乗効果によって、大気中の炭酸ガスを頭髪の毛幹細胞間に固定する炭酸ガス固定化方法とその頭髪を生体由来の機能性材料として再利用する方法を提供する。 まず、一般的にヒトの頭髪の本数は10〜15万本、直径0.05〜0.15mmとされ、一年で約10cm伸張する。平均髪長さを10cmとすれば、ヒト1人の頭髪が大気と接触する表面積は約4m2となる。 つまり、ヒト1人がそれぞれ4m2の炭酸ガス受容体として炭酸ガス濃度約350ppmの大気中を行動していることになる。換言すれば光合成により大気中の炭酸ガスを固定化する植物類を静的受容体とすると、ヒトは自由意志により空間を行動することが出来る動的受容体といえる。Donald A,Newmanによれば、ニューヨーク市(1961年)、アムステルダム市(1973年)、フィラデルフィア市(1970年)における男女平均値は1.37m/秒(5km/時)とされ、また地域生活活動に基づく歩行能力の最低基準は300m歩行能力(11.5分以内に1000フィート、歩行速度0.45m/秒)または道路を安全に横断するには1.3m/秒の歩行速度で13〜27mを歩く能力が必要とされる。 また、運動工学上の動作分析から、ヒトの歩行時における体重心は垂直方向に約5cm、水平方向に左右に夫々約2cm変位する。 上記のように、ヒトの体節は単純歩行においても非線形的な作動線を描きながら大気中を行動する。つまり、ヒトの体節は、矢状面と前額面では垂直方向に重力の加速度を、水平面では加速度と慣性モーメントを、さらに関節を回転中心としてトルクを伴いながら非線形的に行動する。 そして、これにより空気の流れ、つまり気体粒子の流れはヒトの体節近傍で急に変化する流線に追従できず流線を外れて体節に衝突しその慣性により体節に捕集され、流線上を移動する気体粒子が体節表面から粒子半径以内に達した時にそのさえぎり機構により体節に捕まり、気体粒子のブラウン運動により流線を外れて体節に衝突しそのブラウン拡散機構により捕集され、あるいは気体粒子が重力によって流線から外れて体節に衝突することなどにより捕集される。さらに気体粒子の流線は体節近傍では乱流となり体節後方あるいは背部近辺では体節との相対速度や体節の形状にもよるが、渦流気体の発生などにより体節と離れずに粘着した複雑な流線を描き体節に捕捉される。また、体節の一部を構成する頭髪も頭蓋の形状、毛髪の長さ、直径、断面形状及び頭髪の最外側に位置する毛小皮(キューティクル)の表面形状や表面粗さ更には頭髪の表面エネルギーなどの要素により気体粒子を捕捉する。その他静電引力(クーロン力)などによっても気体粒子は頭髪に捕捉される。このように様々な機構により、大気中の炭酸ガス粒子も体節の一部である頭髪に捕捉され物理吸着の状態となる。 そして、このようにして頭髪に物理吸着された炭酸ガス粒子は頭髪の炭酸ガス吸着能と固定化能を強化するために予め用意された膨潤性、造膜性、吸着性に優れた層状化合物と層間物質によってなる層間化合物により毛小皮細胞質の外半キューティクル(エクゾキューティクル)内半キューティクル(エンドキューティクル)の積層間に位置する角質細胞間の天然保湿因子と細胞間脂質よりなる保水機構を介して頭髪のほとんどを占める毛皮質(コルテックス)の保湿組織に浸透し、毛軸(メデュラ)を軸中心として同心円柱状に規則正しく配列されているこれらの毛幹(毛軸、毛皮質、毛小皮)細胞間(図1)に分子、イオンあるいは物質の状態で固定化される。 そして頭髪に物理吸着の状態にある炭酸ガスは、日々の洗髪によって洗い落とされ、終末処理を介して河川に放流され、最終的に海洋に吸収される。 一方、毛幹細胞間に炭酸ガスを分子あるいはイオンまたは物質の状態で層間化合物として固定化した頭髪は、炭酸ガス固定化担体として毛周期による脱毛や理美容時の切断後、焼却処分や焼却灰や飛灰として埋立て処分をせず、あるいは特にエネルギー消費の高い灰溶融などによる減容処理をすることなく収集され、生体由来の機能性材料として再利用される。 発明の実施の形態と産業上の利用分野 本発明は、上記の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態と産業上の利用分野について説明する。 従来から層状化合物はその層間に原子、分子あるいは物質をインターカレートあるいは剥離分散することにより種々の機能性材料が認知されている。 例えば、特許文献特開平8−175949では紫外線防御能を持つ層状化合物の化粧料が、特公平7−64710では層状化合物であるソジウムモンモリナイト粘土好物の頭髪に対する優れたトリートメント効果が、特開2004−196572では酸化ランタン層間化合物によってなるガス吸着剤などが提案されている。 一方、層間物質について、特許文献、特開2003−190733で絹フィブロインを代表例とする動物性タンパク質による炭酸ガス固定化方法が提案されている。 しかし、上記いずれの先行特許文献も層状化合物がヒトの頭髪の炭酸ガス吸着固定化能を強化することや、ヒトの頭髪を炭酸ガス固定化担体として利用することについての言及はない。 勿論、廃棄物として処理される頭髪の収集運搬、焼却、埋立処分のシステムを整備し炭酸ガスを固定化したヒトの頭髪を生体由来の機能性材料として医用生体材料以外に再利用することについて具体的に言及している先行技術文献も存在しない。 さてそこで、本発明によればまず第一には、頭髪の炭酸ガス吸着能を強化するために用意された膨潤性、造膜性、吸着性に優れた層状化合物が層状ケイ酸塩鉱物であり、水溶液、水分散液またはゲルとして提供される。この場合層状ケイ酸塩鉱物が天然に産出された層状ケイ酸塩鉱物であること、好ましくは該鉱物を精製したもの、さらに好ましくは無機化合物を人為的に合成した層状ケイ酸塩鉱物であって、水溶解性をもち、水の存在によって粘結能、造膜能、吸着能、ゲル形成能を有するものであれば良い。 より具体的には、炭酸ガス吸着能を持つ人為的に合成された層状ケイ酸塩鉱物が三層構造のフィロケイ酸塩鉱物で、化学式(Si3.67Al0.33)Mg3O10(OH)2Na0.33化学名ケイ酸アルミニウムマグネシウム(商品名スメクトンSA、クニミネ工業社製)を実施例の層状化合物として用意した(図2)。勿論、前記の機能を満足さすその他の層状化合物の利用を妨げるものではない。 第二には、この層状ケイ酸塩鉱物の分散状態が、媒質中にコロイド状に分散した剥離分散系(ナノシート分散系)と炭酸ガス固定化能を持つ分子やイオンあるいは物質とが、層間の水平面で拡がりをもってゆるやかな状態で複合化し、層と層間分子、イオンまたは物質との相互作用により炭酸ガス固定化能の相乗効果が期待出来るソフトブリッドな物質系として提供される。 但し、上記により層と層間分子やイオンあるいは物質の分散系(モルフォロジー)がインターカレーションによるハイブリッドな状態の物質系として提供されることを否定するものではない。 第三には、前記の層間物質として頭髪に対して強い造膜性と吸着性を持ち、優れた毛髪補修機能、生物活性、自己組織化活性を有する物質が提供される。 好ましくは、上記層間物質が天然素材由来の物質であり、例えばケラチン、シルクフィブロイン、シルクセリシン、コラーゲン、ヒアルロン酸、セラミド、ピロリドンカルボン酸、ゴマリグナン配糖体、レチシン、卵殻膜タンパク、トレハロース、ムチン、フィブロネクチン、ゼラチン、フィブリン、エラスチン、エンタクチン、プロテオグリカン、ビトロネクチン、ラミニンまたはこれらの加水分解物や誘導体の内一種類以上が提供される。勿論、前記に記載の機能を持つその他の層間物質の利用を否定するものではない。 次に、本出願の発明による炭酸ガス吸着及び固定化の担体として提供されるヒトの頭髪について詳細に説明する。 有史以前は、ヒトの体毛の本来の役割は外傷や寒気から皮膚表面を保護したりあるいは感覚器であったろうと思われる。しかし、現代ではこのようなヒトの体表を覆う重要な役割を残しているのは頭髪、眉毛、まつ毛、鼻毛、腋毛、陰毛、口髭、四肢の毛髪であり、このうち頭髪のみが頭蓋の物理的保護の役割を果たしている。 頭髪を形成する細胞層は中心から毛髄(メデュラ)毛皮質(コルテックス)毛小皮(キューティクル)と呼ばれる組織により構成されている(図3)。毛髄は毛軸に位置し、毛髄細胞は低電子密度の円形毛髄顆粒を細胞質に産出し、わずかにケラチン線維がみられ角化後は空洞化し通過する光を乱反射する構造を持つ。頭髪の大部分を占める毛皮質はケラチン線維を産出しながら毛軸方向に細長い細胞を形成する。この毛皮質は徐々に密な組織になり角化し、角化した毛皮質は高電子密度の線維間基質の中に低電子密度の約10nm径の線維が蜜に凝集している。生化学的に、この線維は硬質ケラチンで分子量4〜6万、ph5〜7、8〜10のポリペプチド群で線維間にはハイサルファープロテイン、ウルトラハイサルファープロテイン、ハイグリシン/タイロシンプロテインなどを含有する。これらのプロテインとケラチン線維が毛髪に強い抗張力としなやかさを与えている。毛髪の最外側に位置する毛小皮細胞は毛球部では一列に並んでいるが次第に扁平になり、近位細胞が遠位細胞を覆い7〜8枚に積層化する。細胞質の外半キューティクル(エクゾキューティクル)は角化後ケラチンを形成し内反キューティクル(エンドキューティクル)は無構造で高電子密度の物質で形成されており、その細胞同士は無秩序に凹凸形状で噛み合っている。水分は毛小皮の円周方向にはほとんど浸透せず(0〜5%)毛軸のメデュラ方向にキューティクル及びコルテックス間の保水組織を介して浸透する。完成した頭髪の表面は硬質ケラチンで形成された毛小皮が全周を覆う構造となっている。 そして、これらの毛髄、毛皮質、毛小質は同心円柱状に規則正しく配列しながら、毛周期(図4)と呼ばれる成長と退縮のサイクルを生涯を通じて繰り返す生物学的にも極めて稀な生体唯一の組織である。 しかも注目すべきは一般的に髪の毛といわれる毛幹部分は既に死んだ細胞であるにも拘らず、頭髪本来の機能である各種の外力からの保護や美容のための機能を維持し続けるという点である。 さらに特筆すべきは、毛周期による脱毛や理美容時の断髪などにより生体から離脱してからも、あるいは生体が死亡した後も、その機能には顕著な変化が見られないことである。例えば古代ミイラの頭髪や人形の人毛頭髪など。 これは毛髪を組成するタンパク質であるヒトケラチンが細胞内において、ポリペプチド中におけるシステイン間のジスルフィド結合で分子間架橋され、タンパク質の3次構造を維持し分解に対する強い抵抗性を維持し続けることが出来るからであろう。 さて、頭髪を構成するケラチンは脊椎動物の髪、毛、毛皮、皮膚、爪、角、蹄、嘴、羽、鱗などを構成する繊維性タンパク質の1ファミリーであり、タンパク質のアミノ酸配列からケラチンの分子骨格には比較的多くのシステイン残基(5−10molwt%)が存在し、それらが分子間ジスルフィド架橋結合で結ばれている。 細胞接着性タンパク質であるフィブロネクチンと同様に細胞接着に関するアミノ酸配列が羊毛ケラチンにみられることから、ケラチンは動物細胞の培養担体などの医用材料として期待される(非特許文献「天然高分子成型物の機能化に関する研究」尾張線維センター加藤一徳、橋本貴史)。 また多様なアミノ酸が重縮合して構成されている羊毛ケラチンや絹タンパク質に代表される天然タンパク質を利用して特定アミノ酸の吸着剤の提案もされている(特許第3762991号)。 さらには、人毛ケラチン(HHK)の生物活性、自己組織化活性、増殖因子などに注目して、血液凝固治療や血栓塞栓性疾患治療への提案もある(特表2009−527274)。実は、人毛ケラチンは医用生体材料としては古くから認知されている。特表2009−52724の記述によれば、人毛ケラチンについての最も早い記述は、1500年代中国人植物学者Li Shi Zhenによって紹介された創傷治癒や血液凝固に効能があるとされた血余炭(Xue Yu Tan)は人毛の灰を粉砕して得られたものであり、古く我が国では乱髪霜と呼ばれる人髪の黒焼きが止血に効果があるとされた。 このように人毛は枯渇することのない生体資源として有望なヒトケラチンタンパク質であり、廃棄物として焼却処分や膨大なエネルギー消費が必要とされる灰溶融などによる減容処理や焼却灰、焼却飛灰、溶融飛灰を埋立処分せず、また塩素ガスなどの致死に至る有毒ガスを発生する危険性のある次亜塩素酸塩などで溶融処理せずに現行の廃棄物処理システムにおける収集運搬体制を整備することにより医用材料に留まらず生体由来の貴重なタンパク源として有機肥料やその助剤として、あるいは植物育成成長助剤などに再利用することが出来る。 また、ヒトの頭髪の物理的強度は、かつて明治初期に実施された京都東本願寺大改修の際に、女性信者の頭髪が、重量物運搬に使用されたことは有名な話であるが、その強度は頭髪1本で約100gの抗張力があり、わずか4本で軟鋼(SS41)以上の抗張力(51kg/mm2)をもつ。しかも他の天然素材由来の繊維との決定的な違いは、ケラチンプロテインアミノ酸のシステイン残基のジスルフィド分子間架橋など毛髪の生物学的、構造的特性(毛髪本来のバリアー機能)により温度、湿度、圧力などの外力に対して、物理的性質が非常に安定的であり、有機や無機材料とのクラッド材や強度補強用フィラーとして物理的引張り強度と炭酸ガス吸着能、固定化能を併せ持つ軽量で比強度の高い安価な構造用材料としてあるいはその補強材料として再利用が期待出来る(図5)。 さらに、本発明の[0034]記載の通り、頭髪本来のバリアー機能である外気温から頭蓋頭皮表面を保護するための蓄熱及び放熱機能を強化するために着色してあるいはしないで、適切な寸法に粉砕し、用途に応じた寸法、形状、材質の基盤に結合させ、例えば屋根材、壁材、人工芝の基盤材として使用することにより、生体にとって適切な温度範囲内に外気温を調整し、冷暖房などのエネルギー消費を削減することが可能な、しかも炭酸ガス吸着固定化能を併せ持つ地球温暖化対策に有効な手段となりうる生体由来の温度制御剤として再利用が期待出来る(図6)。また、屋上緑化などに有効な植物の担持基盤に用いることにより、植物それ自体が本来具備している炭酸ガス固定化能や温度制御機能あるいは保水機能に相乗効果を付与し、また植物成長助剤として毛髪のケラチンプロテインをはじめとするタンパク源を内蔵した緑化育成基盤材として再利用が期待出来る。 また、非特許文献(自然に学ぶ材料プロセッシング)名古屋大学21世紀「自然に学ぶプロセッシングの創成」教科書編集委員会編P39、名古屋大学大学院工学研究科 棚橋 満、の記述にもあるように、毛髪の本来の役割は様々な外力から頭蓋を保護する役割を担っているが、さらにまた体内に過剰に取り込まれ蓄積された金属元素を体外に排除し、その濃度を適正且つ一定に保つ重要な役割を担っている。 この機構は毛髪の大部分を占める毛皮質を構成するタンパク質であるシステインは硫黄アミノ酸を多量に含んでいる。そしてこの硫黄は柔軟な電子状態を取り、金属との親和性が非常に高く重金属である水銀イオンなどと錯形成をなす(化1)。 すなわち、毛髪組織の毛母細胞はシステイン中の硫黄分を介して血中の水銀等の重金属を取り込み蓄積する。やがて細胞が死んで毛髪となり重金属が毛髪に蓄積されることになる。その結果血中のこれらの重金属元素の濃度が調整される。 このように食物中の水銀をはじめとする金属元素は体内に取り込まれて触媒として日常の反応に寄与し、最終的に毛周期などによる脱毛や理美容時の断髪という「廃棄」の手段を経て生体外へ排出される仕組みになっている。 そして、生体外に排出されたこのような金属排出機構を持つ毛髪は焼却灰、焼却飛灰、溶融飛灰中の重金属の回収及び固定化担体としても再利用が期待出来る。なお、本発明は特開平7−126296記載の−SSCH2COOHで表されるカルボキシルメチルジスルフィド基を有するケラチンタンパク質の不溶化処理による重金属の捕捉固定化機能の利用を妨げるものではない。 このような再利用システムを図示する(図7)。 本発明の[0027]、[0028]、[0029]、[0030]記載の層状化合物と[0031]、[0032]記載の層間物質とによってなる層間化合物により構成された炭酸ガス吸着剤を含有する毛髪処理剤を試用するために成分を下記割合で配合した。 重量% 層状フィロケイ酸塩(スメクトンSA,クニミネ工業社製) 3.0〜8.0 ケラチン誘導体ポリペプタイド 1.6〜5.7 絹フィブロイン由来ペプタイド 1.6〜5.7 天然保湿因子(NMF) 5.0〜8.0 セラミド(スフィンゴリピド) 0.2〜2.0 天然塩 0.2〜0.4 塩化ステアリアルトリメチルアンモニウム 1.0〜2.0 エデト酸塩 微量 トリエタノールアミン 1.0〜1.5 パラペン 0.1〜0.4 グリコール 1.0〜3.0 指定成分 適量 香料 適量 精製水 58.0〜78.0上記配合の毛髪処理剤を下記表1に記載に在住の11名のパネラーを試用対象として、表1記載の時間経過後に水洗髪し、その上澄み溶液を採取し、水酸化カルシウムと混合撹拌した。その結果、いずれのパネラーのサンプルも地域や時間経過による違いはほとんどなく、図8、図9、図10の如く強い白濁が生じ、これが大気中の炭酸ガス吸着と一部固定化によるものであることを確認した。 なお、上記実施例1に提案の毛髪処理剤とは整髪料、ヘアートリートメント、ヘアーコンディショナー、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーローション、ヘアースプレー、チック、ポマード、スタイリングジェル、育毛剤、養毛剤などである。もちろん、該毛髪処理剤を構成する層間化合物は、それ自体で優れた炭酸ガス吸着能、固定化能をもつ機能性材料としてあらゆる分野での利用が考えられることを付記する。 本出願の[0045]記載の構造用材料に対する頭髪の適用のため、まず収集した頭髪を機械式裁断器、例えば理容業務用はさみで約30mm長に裁断し、次に粉砕時に発生す熱エネルギーによる毛幹細胞の変質や破壊を防ぐために、超高速渦流粉砕機により微粉砕した。 そして、本発明は物理的強度を付与することが出来れば、市場の飛躍的な拡大が期待される機能性材料として、綿や竹などのセルロール系炭素繊維に注目した。 セルロース系炭素繊維は大気中の有害物質や悪臭を吸着する機能や、遠赤外線を発現する機能、電磁波遮断機能などを持つが、炭化による物理的強度の極端な低下は不可避であり、また接着剤などによる強度の発現は該繊維の機能の構造上の特質であるマイクロポアーやミクロポアーを塞ぎ、炭素繊維本来の機能の極端な低下に繋がり、今日までこの課題は解決されていない。 そこで本発明による粉砕された頭髪を接着剤を利用することなく、僅かな圧力で該繊維に押圧加工することにより、毛幹の最外側に位置するキューティクルの微視的表面粗さによる炭素繊維との摩擦抵抗と、頭髪相互の干渉による摩擦により頭髪の持つ物理的強度、特に引張り強度を付与することが出来る。 さらに、粉砕した頭髪をランダムに配向することにより一方向だけでなく他方向に対する引張り強度を付与することが出来る。 また、該繊維と同寸法長さの頭髪を、線維のX、Y軸の両端を通して取付基材に配置すれば構造用部材に対応可能な引張り強度を持ち、さらに炭素繊維本来の機能と頭髪の持つ炭酸ガス吸着固定化能、温度制御機能、植物育成能、重金属回収固定化能などを併せ持つ機能性材料を提供することが出来る。 図5は、上記の通り頭髪を押圧加工したセルロース系炭素繊維をハニカム形状に成型したものである。 図6は、保水性シートの基材に粉砕した毛髪を結合させた本出願の[0046]記載の機能性温度制御材、緑化育成基盤材である。 頭髪の側面図である。スメクトンSAのX線光電子スペクトルによる電子分光法分析のグラフである。毛幹の全体図と断面図である。毛周期図である。ハニカム形状に加工したセルロース系炭素繊維に粉砕頭髪を結合させた構造用材料である。天然素材の保水性シートに粉砕頭髪を結合させた温度制御材である。毛髪の再利用システム図である。パネラーNO.1の8時間後の水溶液炭酸ガス沈殿状態である。パネラーNO.6の16時間後の水溶液炭酸ガス沈殿状態である。パネラーNO.10の24時間後の水溶液炭酸ガス沈殿状態である。 ▲1▼ 毛髄(メデュラ)▲2▼ 毛小皮(キューティクル)▲3▼ 毛皮質(コルテックス)▲4▼ 毛乳頭▲5▼ 毛隆期(バルジエリア)▲6▼ 永久部、周期部分岐線▲7▼ 毛母▲8▼ 毛球部▲9▼ 外毛根鞘▲10▼ 内毛根鞘▲11▼ 真皮毛根鞘▲12▼ 表皮層▲13▼ 真皮層▲14▼ 毛幹 大気などの炭酸ガス含有気体をヒトの生体組織である頭髪に接触させて、頭髪に予め用意された層状化合物と層間物質とによってなる層間化合物により構成された炭酸ガス吸着剤を含有してなる毛髪処理剤によって炭酸ガスを頭髪の毛幹細胞間に固定化することを特徴とする炭酸ガス固定化方法。 請求項1記載の層間化合物が膨潤性、造膜性、吸着性に優れた層状化合物と保水性、造膜性、細胞吸着性、自己組織化活性、生物活性、細胞捕修機能に優れた層間物質との複合体であることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス固定化方法。 請求項2記載の層状化合物が水溶解性を持ち、水の存在によって粘結能、造膜能、吸着能、ゲル形性能を有する天然に産出された層状ケイ酸塩鉱物であること、好ましくは該鉱物を精製したもの、さらに好ましくは無機化合物を出発原料として人為的に合成した層状ケイ酸塩鉱物であることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス固定化方法。 請求項3記載の人為的に合成された層状ケイ酸塩鉱物が炭酸ガス吸着能を持ち三層の積層構造よりなるフィロケイ酸塩鉱物で化学名ケイ酸アルミニウムマグネシウムであることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス固定化方法。 請求項1、2記載の層間物質が天然に産出された生分解性のタンパク質並びに人為的に合成若しくは変成されたタンパク質あるいはこれらの加水分解物や誘導体の内少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス固定化方法。 請求項1、2、3、4、5記載の層状化合物と層間物質とによってなる層間化合物により構成された炭酸ガス吸着剤の重量%が10〜26%であることを特徴とする請求項1記載の毛髪処理剤。 請求項6記載の毛髪処理剤が、整髪料、ヘアートリートメント、ヘアーコンデイショナー、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーローション、ヘアースプレー、チック、ポマード、スタイリングジェル、育毛剤、養毛剤であることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス固定化方法。 請求項4記載の層状ケイ酸塩鉱物の濃度が3〜8%水溶液であることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス吸着剤。 請求項5記載のタンパク質がケラチン、シルクフィブロイン、シルクセリシン、コラーゲン、ヒアルロン酸、セラミド、ピロリドンカルボン酸、ゴマリグナン配糖体、レチシン、卵殻膜、トレハロース、ムチン、フィブロネクチン、ゼラチン、フィブリン、エラスチン、エンタクチン、プロテオグリカン、ビトロネクチン、ラミニン、システイン、シスチンであることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス固定化方法。 体外に排出されたヒトの頭髪を生体由来の原料として再利用するために整備された毛髪回収システム。 請求項10記載の毛髪回収システムが、専門の回収車により、理美容店や家庭から有価物として分別回収することを特徴とする回収システム。 請求項11記載のシステムによって回収された頭髪を再利用するために、単純な衝撃やせん断作用に加え、高速回転翼による衝撃と、この高速回転翼の背後に生ずる多数の超高速渦流並びに高周波の圧力振動によって、他の粉砕方法では困難である粉砕エネルギーの熱エネルギーへの変換を抑制し、頭髪の毛幹細胞や構成タンパク質に熱変質や熱破壊を発現させずに、目的とする寸法に微粉砕することを特徴とする毛髪粉砕方法。 請求項12記載の方法により粉砕あるいは適切な寸法に切断された頭髪を、ランダムにまたはXY軸に配向し単層あるいは積層して接着剤を使わずに押圧して結合させ、ハニカム形状などに成型することを特徴とする植物系炭素繊維。 請求項12記載の方法により粉砕された頭髪を、保水性シートに結合させた屋上緑化基盤材、壁材、屋根材に有効な温度制御材。 請求項12記載の方法により粉砕された頭髪を、保水性シートに結合させたことを特徴とする緑化育成基盤材。 請求項12記載の方法により粉砕された頭髪を、剤形あるいは賦形あるいは成型することを特徴とする有機肥料及びその助剤。 請求項12記載の方法により粉砕された頭髪を、セメント、骨材、水及び混和剤と機械式ミキサーで混練することにより圧縮部材であるコンクリートの引張り及び曲げ強度を補強するコンクリート製造方法。 請求項3、4記載の層状ケイ酸塩水溶液と請求項12記載の方法により粉砕された頭髪とを廃棄物焼却灰、焼却飛灰、溶融飛灰と一緒に撹拌し、該層状ケイ酸塩の層間に灰中の重金属をイオンの状態で分散させて頭髪の毛皮質のシステインタンパク質中の硫黄アミノ酸と重金属イオンとの錯形成によって灰中の重金属を回収あるいは固定化する方法。 【課題】大気などの炭酸ガス含有気体中の炭酸ガスを、大規模な設備投資も全く必要なく、直ちに実行することが可能であり効果が期待出来る炭酸ガス固定化方法、さらには焼却や埋め立てなどの廃棄処分をしない新しい回収システムにより、炭酸ガスを固定化した担体を有効な機能性材料として再利用が可能な方策を提供する。【解決手段】生体組織であるヒトの頭髪を担体として用いて、頭髪に予め用意された炭酸ガス吸着能を持つ層状化合物と層間物質としてのタンパク質とによってなる層間化合物により構成された炭酸ガス吸着剤あるいは該吸着剤を含有する毛髪処理剤によって、大気などの炭酸ガス含有気体中の炭酸ガスをヒトの頭髪の毛幹細胞間に固定化し、その頭髪を生体由来の機能性材料とする。【選択図】なし