タイトル: | 公開特許公報(A)_セラミック焼結体の焼結密度の測定方法 |
出願番号: | 2010119529 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | G01N 9/36,C04B 35/30,C04B 35/00 |
橋本 大喜 前田 幸男 上田 充 JP 2011069808 公開特許公報(A) 20110407 2010119529 20100525 セラミック焼結体の焼結密度の測定方法 株式会社村田製作所 000006231 西澤 均 100092071 橋本 大喜 前田 幸男 上田 充 JP 2009200266 20090831 G01N 9/36 20060101AFI20110311BHJP C04B 35/30 20060101ALI20110311BHJP C04B 35/00 20060101ALN20110311BHJP JPG01N9/36 CC04B35/30 CC04B35/00 Z 5 3 OL 12 4G018 4G030 4G018AA23 4G018AA24 4G018AA25 4G030AA27 4G030AA29 4G030AA31 4G030AA32 4G030BA09 4G030CA07 4G030CA08 4G030GA03 4G030GA04 4G030GA08 4G030GA20 4G030GA27 4G030GA36 本発明は、セラミック焼結体の密度(焼結密度)の測定方法に関し、詳しくは、セラミック焼結体の焼結密度を効率よく測定することが可能で、小型のセラミック焼結体や、セラミック以外の材料からなる部材、例えば内部導体などを備えている場合にもその焼結密度を効率よく測定することが可能なセラミック焼結体の焼結密度の測定方法に関する。 例えば、磁性体セラミックを用いた積層コイル部品や、誘電体セラミックを用いた積層コンデンサなどは、セラミックグリーンシートを積層したマザー積層体を、個々の素子に分割した後、所定の条件で焼成してセラミックを焼結させることにより製造されており、意図する特性を発現させる上でセラミックの焼結性は重要な因子である。 すなわち、積層コイル部品や積層コンデンサなどのセラミックで構成されるセラミック電子部品は、セラミックの焼結が確実に行われることにより、所望の特性を備えた製品が得られることになる。 そのため、これらのセラミック電子部品の製造工程では、セラミック電子部品を構成するセラミック焼結体の焼結性を管理することが重要になる。 ところで、セラミック電子部品の製造工程でセラミック焼結体の焼結性を計測、管理する方法としては、一般に、以下の方法が用いられている。 (1)セラミック表面および断面のSEM観察などの画像処理の方法により、セラミック粒子の粒径や、セラミック焼結体に含まれるポアの大きさなどを調べる方法。 (2)セラミック電子部品の寸法測定による焼成収縮率を調べる方法。 (3)アルキメデス法によりセラミック焼結体の密度を求める方法。なお、この方法は、試料の乾燥重量を測定し、純水で所定時間(例えば3時間)煮沸を行った後、常温まで冷却して(測定中に水温が変化すると水の密度が変化するため)、水中重量を測定し、その後、表面の水滴を除去し、飽水重量を測定することにより、気泡の含有割合を調べ、乾燥重量、水中重量、および気泡の含有割合から、セラミック焼結体の焼結密度を求め、焼結性を判定する方法である。 セラミック焼結体の焼結性を計測、管理する方法としては、上述のように種々の方法があるが、上記(1)の画像処理の方法の場合、解析条件の違いにより測定誤差が大きくなりやすいという問題点がある。 また、上記(2)の方法の場合、セラミック電磁部品が小型になるほど焼成によって収縮する寸法の絶対値が小さくなるため、個々の部品にカットする際のばらつきや測定誤差の影響を受けやすく、精度の高い管理を行うことが困難であるという問題点がある。 一方、(3)のアルキメデス法は、セラミック焼結体の焼結密度を求めることが可能で、セラミック焼結体の焼結性を精度よく判定することができる方法であるが、煮沸、冷却などを行う必要があり、時間がかかるという問題点がある。また、セラミック部品が小型になると飽水重量の測定(表面の水滴除去の確認)が困難であるという問題点がある。さらに、セラミック焼結体が内部電極などの、セラミック以外の材料からなる部材(物質)を含有していると、セラミック自体の焼結密度を測定することができないという問題点がある。 本発明は、上記課題を解決するものであり、短時間で、セラミック焼結体の焼結密度を求めることが可能であるとともに、セラミック焼結体のサイズが非常に小さい場合や、セラミック焼結体が、セラミック以外の材料からなる部材、例えば内部導体などを備えている場合にも、セラミック自体の焼結密度を測定することが可能なセラミック焼結体の焼結密度の測定方法を提供することを目的とする。 発明者等は、上記課題を解決するため、種々の検討を行い、セラミック焼結体を構成するセラミックの密度(焼結密度)は、セラミックが開気孔を含むものである場合において、セラミックの比表面積と相関関係があることを知り、さらに実験、検討を行って本発明を完成した。 すなわち、本発明のセラミック焼結体の焼結密度の測定方法は、 開気孔を有するセラミック焼結体の焼結密度を測定する方法であって、 (a)開気孔を有し、焼結密度を測定すべき開気孔を含むセラミック焼結体とセラミックの組成が同じで、焼結密度が判明しており、かつ該焼結密度を所定の範囲で異ならせた複数のセラミック焼結体を用意し、それらの比表面積をBET法により測定して、焼結密度と比表面積との関係を表す検量線を作成する工程と、 (b)焼結密度を測定すべき開気孔を含むセラミック焼結体の比表面積をBET法により測定する工程と、 (c)前記(b)の工程で測定した比表面積の値から、前記検量線を用いて、前記開気孔を含むセラミック焼結体の焼結密度を求める工程と を具備することを特徴としている。 本発明のセラミック焼結体の焼結密度の測定方法は、前記セラミック焼結体がセラミック以外の材料からなる部材を備えている場合にも適用することが可能である。 また、本発明のセラミック焼結体の焼結密度の測定方法は、前記セラミック焼結体が、セラミック積層体の内部に内部導体を備えた積層セラミック素子である場合に好適に適用することが可能である。 また、前記セラミック焼結体が、セラミック積層体の内部にコイル用内部導体を備えた積層セラミックコイル部品を構成するものである場合に、特に好適に適用することが可能である。 また、本発明は、前記セラミック焼結体が、体積1mm3以下のものである場合に特に有意義である。 本発明のセラミック焼結体の焼結密度の測定方法は、(a)開気孔(オープンポア)を有し、焼結密度を測定すべき開気孔を含むセラミック焼結体(被検試料)とセラミックの組成が同じで、焼結密度が判明しており、かつ該焼結密度を所定の範囲で異ならせた複数のセラミック焼結体を用意し、それらの比表面積をBET法により測定して、焼結密度と比表面積との関係を表す検量線を作成する工程と、(b)被検試料である、開気孔を含むセラミック焼結体の比表面積をBET法により測定する工程と、(c)検量線を用いて、被検試料の焼結密度を求める工程とを備えており、BET法により測定した被検試料の比表面積から、上述の検量線を用いてセラミック焼結体の焼結密度を求めるようにしているので、従来のアルキメデス法による場合よりも短時間でセラミック焼結体の焼結密度を求めることができる。 なお、本発明において、セラミック焼結体の焼結密度とは、セラミック積層体などを焼成することにより得られる焼結体(セラミック焼結体)を構成する、セラミックの体積に気孔を含んだ状態の密度(嵩密度)をいう。すなわち、本発明によれば、以下に述べるように、内部導体などを有している場合などにも、それらの影響を受けずに、セラミック焼結体を構成するセラミック自体の焼結密度を効率よく測定することができる。 また、本発明は、セラミック焼結体を構成するセラミックに含まれる開気孔に関連するセラミックの比表面積とセラミックの密度(焼結密度)の間に相関があることを利用してセラミック焼結体の焼結密度を測定するものであることから、セラミック焼結体を構成するセラミックが開気孔を含むものであることが必要である。 なお、セラミックに含まれる開気孔の割合は、セラミックに含まれる開気孔のすべてに水が充填された場合の水の割合を吸水率とした場合における吸水率が0.1重量%以上となるような割合であることが望ましい。 本発明によりセラミックの焼結密度を求めることができるメカニズムは以下の通りである。すなわち、セラミック焼結体を構成するセラミックに存在する開気孔(オープンポア)は、同一組成のセラミックの場合、焼結密度と比例関係にある(焼結密度が高くなれば開気孔は少なくなる)。そして、セラミックに含まれる開気孔の割合と「セラミックの比表面積」には相関関係がある。そこで、BET法により比表面積の測定を行うことにより、あらかじめ作成しておいた、セラミックの焼結密度と比表面積との関係を表す検量線から速やかに焼結密度を求めることができる。 また、アルキメデス法の場合、セラミック焼結体が内部電極などの、セラミック以外の材料からなる部材(物質)を備えていると、セラミック自体の焼結密度を測定することはできないが、本発明を適用することにより、例えば、セラミック焼結体がその内部に配設された内部導体や、表面に配設された外部電極などの、セラミック以外の材料(物質)を備えている場合にも、セラミック焼結体の焼結密度を測定することができる。 すなわち、BET法により測定される比表面積(SSA)にはセラミック焼結体の表面積と開気孔の表面積が含まれている。このうちセラミック焼結体の表面積は、焼結密度が変化しても変わらないため、比表面積(SSA)の変化が開気孔の量の変化となる。したがって、セラミック以外の物質を含むセラミック焼結体であってもBET法により測定される比表面積(SSA)から焼結密度に関する比較的精度の高い情報を得ることができる。 ただし、セラミック焼結体に含まれる非セラミック部材の割合が大きくなりすぎると、焼結密度の測定精度が低下するため、セラミック焼結体に含まれる非セラミック部材の割合は、通常は、30重量%以下であることが望ましい。 なお、外部電極のみを備えている場合であれば、外部電極の形成前にアルキメデス法によりセラミック自体の焼結密度を測定することも可能であるが、セラミックと同時焼成される内部導体を備えている場合には、アルキメデス法でセラミック自体の焼結密度を測定することはできないため、本発明の方法は特に有意義になる。 また、セラミック層を介してコイル形成用の内部導体が配設された構造を有する積層コイル部品の場合、セラミック焼結体の焼結状態が、積層コイル部品のインピーダンス値やその安定性などの特性に影響を及ぼしやすいため、特に、焼成状態を正確に測定して、管理することが必要になるが、本発明は、そのような場合、すなわち、セラミック焼結体がセラミック積層体の内部にコイル用内部導体を備えた積層セラミックコイル部品を構成するものである場合に、セラミック焼結体の焼結密度を正確に測定することができて特に有意義である。 また、アルキメデス法の場合、セラミック焼結体のサイズが小さくなると、表面の水滴を除去できたか確認することが困難になり、正確な飽水重量を得ることができなくなるが、本発明を適用することにより、体積1mm3以下のセラミック焼結体(例えば、長さ0.6mm、幅0.3mm、厚さ0.3mmサイズの積層セラミックチップ)の焼結密度を精度よく測定することができる。本発明の実施例の方法により焼結密度が測定されるセラミック焼結体の構成を示す側面断面図である。本発明の実施例の方法により焼結密度が測定されるセラミック焼結体の構成を示す分解斜視図である。図1,図2のセラミック焼結体に外部電極を配設することにより形成される積層型コイル部品を示す正面断面図である。セラミック焼結体の焼結密度と比表面積の関係を表す検量線を示す図である。 以下、本発明の実施の形態を示して、本発明をさらに詳しく説明する。 [1]内部導体を備えたセラミック焼結体の作製 この実施例では、Fe2O3を48.0mol%、ZnOを29.5mol%、NiOを14.5mol%、CuOを8.0mol%の比率で配合した磁性体セラミック原料を湿式混合した後、仮焼を行った。得られた仮焼物を湿式粉砕してセラミックスラリーとした後、このセラミックスラリーを成形してセラミックグリーンシートを得た。得られたセラミックグリーンシートに、ビアホールの形成、内部導体形成用の導電性ペーストの印刷による内部導体パターン(コイル用導体パターン)の形成を行ったセラミックグリーンシートと、内部電極パターンを形成していない外層領域用のセラミックグリーンシートを積層した後、圧着して所定のサイズにカットし、未焼成のセラミック積層体を作製した。 そして、このセラミック積層体を、異なる温度条件下で焼成することにより、焼結状態の異なる複数のセラミック焼結体(例えば、寸法が、長さ2.0mm、幅1.0mm、厚さ1.0mmの積層セラミックチップ)を作製した。 なお、図1は、上述のようにして作製したセラミック焼結体の構成を模式的に示す側面断面図、図2は分解斜視図、図3はこのセラミック焼結体に外部電極を形成することにより得られる積層コイル部品を示す正面断面図である。 すなわち、図1,図2に示すセラミック焼結体3は、磁性体セラミック層1を介して配設され、ビアホール6を介して層間接続された複数の内部導体2と、内部導体2の配設されていない外層1aとを備え、内部に螺旋状コイル4を備えた構造のものである。 また、図3の積層型コイル部品10は、図1,図2のセラミック焼結体3の両端部に、螺旋状コイル4の両端部4a,4bと導通するように一対の外部電極5a,5bを配設することにより形成されるものである。 なお、上述のようにして作製した、内部に螺旋状コイル4を備えたセラミック焼結体3における非セラミック部材(内部導体)の割合は30重量%以下である。 [2]内部導体を備えていないセラミック焼結体の作製 上記の内部導体を含むセラミック焼結体を作製するのに用いたものと同じセラミックグリーンシートであって、内部導体パターンを備えていないセラミックグリーンシートを用いて所定のサイズにカットされた未焼成のセラミック焼結体(積層セラミックチップ)を作製し、上記[1]の場合と同様に、異なる温度条件下(上記[1]と同じ温度条件下)で焼成することにより、セラミックのみからなり、開気泡の割合が吸水率換算で0.1重量%以上である、焼結状態の異なる複数のセラミック焼結体(例えば、寸法が、長さ2.0mm、幅1.0mm、厚さ1.0mmの積層セラミックチップ)を作製した。 [3]比表面積の測定 上記[1]で作製した、内部導体を含み、開気泡の割合が吸水率換算で0.1重量%以上であり、焼結状態の異なる複数のセラミック焼結体(積層セラミックチップ)と、上記[2]で作製した、内部導体を含まず、開気泡の割合が吸水率換算で0.1重量%以上であり、焼結状態の異なる複数のセラミック焼結体(積層セラミックチップ)について、比表面積を測定した。 なお、比表面積を測定するにあたっては、全自動BET比表面積測定装置マックソーブ(HM Model−1201:マウンテック社製)を使用して、以下の手順でBET法による比表面積(SSA)の測定を行った。 (1)全自動BET比表面積測定装置のセル重量の測定 (2)セルへのサンプルのセットおよびセルの全自動BET比表面積測定装置へのセット (3)全自動BET比表面積測定装置の条件のセット (4)全自動BET比表面積測定装置による以下の工程に沿った自動測定 (a)400℃での脱気 (b)冷却 (c)液体窒素冷却および窒素吸着 (d)常温までの昇温および窒素脱離 (5)セル+サンプルの重量の測定 なお、この比表面積の測定に当たり、上記の(1)〜(5)の各工程に要する時間を同時に測定し、下記の[7]において評価した。 [4]検量線の作成 上記[2]で作製した、内部導体を含まず、開気泡の割合が、吸水率換算で0.1重量%以上であり、焼結状態の異なる複数のセラミック焼結体について、アルキメデス法により、以下の工程を実施し、乾燥重量、水中重量、および気泡の含有割合から、セラミック焼結体の焼結密度を求めた。 (1)乾燥重量の測定 (2)純水中での煮沸 (3)常温まで冷却 (4)水中重量測定 (5)飽水重量測定 測定した焼結密度のデータと、上記[3]で測定した比表面積のデータとの関係から、両者の関係を表す検量線を作成した。 なお、図4は、上述のようにして作成した、セラミック焼結体の焼結密度と比表面積の関係を示す検量線である。 なお、ここでアルキメデス法により焼結密度を求めるのにあたり、上記の(1)〜(5)の各工程に要する時間を同時に測定し、下記の[7]における本発明の評価のための比較データとした。 [5]内部導体を備えたセラミック焼結体の焼結密度について 上記[3]で求めた、内部導体を含み、開気泡の割合が、吸水率換算で0.1重量%以上であり、かつ、焼結状態の異なる複数のセラミック焼結体(積層セラミックチップ)について測定した比表面積の値から、上記[4]で作成した検量線(図4)を用いて焼結密度を求めた。すなわち、図4の検量線から、測定した比表面積の値に対応する焼結密度を読み取り、その値を、焼結密度を測定すべきセラミック焼結体(被検試料)の焼結密度とした。 その結果、内部導体を含むセラミック焼結体についても、BET法により測定した比表面積の値から、精度よく焼結密度を測定できることが確認された。 なお、確認のため、内部導体を備えたセラミック焼結体と、内部導体を備えていないセラミック焼結体であって、同じ焼成条件で焼成したものについて、BET法により比表面積を測定した場合、ほぼ同じ比表面積の値が得られた。なお、この比表面積の値から焼結密度を求めると、ほぼ同じ焼結密度の値が得られることになる。 上記の結果より、本発明の方法によれば、内部導体を含むセラミック焼結体の焼結密度を効率よく測定できることが確認された。 [6]アルキメデス法では焼結密度を求めることができないサイズのセラミック焼結体の焼結密度について サイズが小さく、アルキメデス法では焼結密度を測定できない、長さ0.6mm、幅0.3mm、厚さ0.3mmサイズのセラミック焼結体(開気泡の割合が吸水率換算で0.1重量%以上)を作製した。 それから、このセラミック焼結体について、上記[3]の場合と同様の方法で、BET法による比表面積(SSA)の測定を行った。 そして、測定した比表面積の値から、上記[4]で作成した検量線(図4)を用いて焼結密度を求めた。すなわち、図4の検量線から、測定した比表面積の値に対応する焼結密度を読み取り、その値を、焼結密度を測定すべきセラミック焼結体(被検試料)の焼結密度とした。 その結果、飽水重量の測定(表面の水滴除去の確認)が困難で、アルキメデス法では実質的に焼結密度を測定できない、長さ0.6mm、幅0.3mm、厚さ0.3mmサイズのセラミック焼結体についても焼結密度を測定できることが確認された。 なお、サイズの小さいセラミック焼結体の焼結密度を測定する場合にも、内部導体などの非セラミック部材(内部導体)の割合は30重量%以下であることが望ましい。 [7]焼結密度の測定に要する時間について 上述のように、上記[3]で調べた、BET法により比表面積(SSA)を測定し、その値から焼結密度を求める場合における各工程に要する時間と、合計時間とを表1に示す。 また、上記[4]で調べた、アルキメデス法により焼結密度を求める場合の各工程に要する時間と、合計時間とを表2に示す。 表1および表2より、BET法による比表面積の測定は、アルキメデス法により焼結密度を測定する場合のように、長時間の煮沸を行う必要がないため、アルキメデス法により焼結密度を測定する場合と比較して、本発明の方法により焼結密度を測定するのに要する時間は、約1/4に短縮されることが確認された。 上述のように、本発明のセラミック焼結体の焼結密度の測定方法によれば、アルキメデス法により焼結密度を測定する場合に比べて、短時間で焼結密度を測定することが可能になる。なお、アルキメデス法の場合、小型(例えば、長さ0.6mm、幅0.3mm、厚さ0.3mm等の)サイズのセラミック焼結体や、内部導体を含むセラミック焼結体の焼結密度を測定することはできないが、本発明の方法によれば、セラミック焼結体が内部導体を含む場合にも、セラミック自体の焼結密度を効率よく測定できることは上述の通りである。 なお、上記実施例では、セラミック焼結体が積層型コイル部品を構成する積層セラミック素子である場合を例にとって説明したが、本発明を適用して焼結密度を測定することが可能なセラミック焼結体はこれに限られるものではなく、積層セラミックコンデンサやLC複合部品、セラミック圧電部品、抵抗素子などの種々のセラミック電子部品の製造工程で作製されるセラミック焼結体の焼結密度の測定に、広く本発明を適用することが可能である。 また、上記実施例ではセラミック焼結体を構成するセラミックが、Fe2O3、ZnO、NiO、CuOを含む原料を焼成することにより形成されるフェライト系セラミックである場合を例にとって説明したが、本発明は、誘電体セラミック、圧電体セラミック、抵抗体セラミックなどの種々のセラミックからなるセラミック焼結体の焼結密度を測定する場合に広く適用することが可能である。 また、上記実施例では異なる温度条件で焼成することによって、焼結状態の異なる複数のセラミック焼結体を作製しているが、セラミック原料の混合条件、粉砕条件、仮焼条件、積層後の圧着条件などの各工程の条件を変更することによっても、焼結状態の異なる複数のセラミック焼結体を作製することが可能である。 本発明はさらにその他の点においても上記実施例に限定されるものではなく、 セラミック焼結体が備えているセラミック以外の材料からなる部材(例えば内部導体)の種類や、その配設態様、セラミック焼結体の比表面積を測定するのに用いる分析装置の具体的な種類などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。 1 磁性体セラミック層 1a 外層 2 内部導体 3 セラミック焼結体(磁性体セラミック素子) 4 螺旋状コイル 4a,4b 螺旋状コイルの両端部 5a,5b 外部電極 6 ビアホール 開気孔を有するセラミック焼結体の焼結密度を測定する方法であって、 (a)開気孔を有し、焼結密度を測定すべき開気孔を含むセラミック焼結体とセラミックの組成が同じで、焼結密度が判明しており、かつ該焼結密度を所定の範囲で異ならせた複数のセラミック焼結体を用意し、それらの比表面積をBET法により測定して、焼結密度と比表面積との関係を表す検量線を作成する工程と、 (b)焼結密度を測定すべき開気孔を含むセラミック焼結体の比表面積をBET法により測定する工程と、 (c)前記(b)の工程で測定した比表面積の値から、前記検量線を用いて、前記開気孔を含むセラミック焼結体の焼結密度を求める工程と を具備することを特徴とするセラミック焼結体の焼結密度の測定方法。 前記セラミック焼結体がセラミック以外の材料からなる部材を備えていることを特徴とする請求項1記載のセラミック焼結体の焼結密度の測定方法。 前記セラミック焼結体が、セラミック積層体の内部に内部導体を備えた積層セラミック素子であることを特徴とする請求項1記載のセラミック焼結体の焼結密度の測定方法。 前記セラミック焼結体が、セラミック積層体の内部にコイル用内部導体を備えた積層セラミックコイル部品を構成するものであることを特徴とする請求項1記載のセラミック焼結体の焼結密度の測定方法。 前記セラミック焼結体が、体積1mm3以下のものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセラミック焼結体の焼結密度の測定方法。 【課題】短時間で、セラミック焼結体の焼結密度を求めることが可能であるとともに、セラミック焼結体のサイズが非常に小さい場合や、セラミック焼結体が、セラミック以外の材料からなる部材、例えば内部導体などを備えている場合にも焼結密度を効率よく測定することが可能なセラミック焼結体の焼結密度の測定方法を提供する。【解決手段】(a)開気孔を有し、焼結密度を測定する対象である被検試料と組成が同じで、焼結密度が判明しているセラミック焼結体を用意し、その比表面積をBET法により測定して、焼結密度と比表面積との関係を表す検量線を作成するとともに、(b)被検試料である、開気孔を含むセラミック焼結体の比表面積をBET法により測定し、(c)前記検量線を用いて、前記被検試料の焼結密度を求める。 上記方法により、セラミック以外の材料からなる部材、例えば、内部導体を備えたセラミック焼結体の焼結密度を測定する。【選択図】図3