タイトル: | 公開特許公報(A)_超音波診断装置 |
出願番号: | 2010084533 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61B 8/00,G01N 29/24,H04R 17/00 |
西久保 雄一 大沼 憲司 森田 聖和 鈴木 謙次 児玉 秀和 伊達 宗宏 JP 2011212334 公開特許公報(A) 20111027 2010084533 20100331 超音波診断装置 コニカミノルタエムジー株式会社 303000420 小谷 悦司 100067828 小谷 昌崇 100115381 櫻井 智 100111453 西久保 雄一 大沼 憲司 森田 聖和 鈴木 謙次 児玉 秀和 伊達 宗宏 A61B 8/00 20060101AFI20110930BHJP G01N 29/24 20060101ALI20110930BHJP H04R 17/00 20060101ALI20110930BHJP JPA61B8/00G01N29/24H04R17/00 332BH04R17/00 330JH04R17/00 330H 9 16 OL 41 2G047 4C601 5D019 2G047AC13 2G047BC13 2G047EA05 2G047GB12 2G047GB21 2G047GB36 4C601BB02 4C601DE08 4C601EE03 4C601EE22 4C601GB02 4C601GB15 4C601GB40 5D019BB17 5D019BB25 5D019FF04 5D019GG01 本発明は、超音波診断装置に関し、特にその超音波トランスデューサ(探触子)の構造に関する。 一般に、超音波トランスデューサには圧電体が用いられる。これは、圧電体が機械エネルギーを電気エネルギーに変換する、またその逆のいわゆる電気系と機械系との結合作用を持つためである。用いられる圧電体は、一対の電極が設けられたシート状、板状あるいは棒状で、一方の電極が背後層に固定され、もう一方の電極が音響レンズや整合層を介して媒質に接する。 そして、圧電超音波トランスデューサの多くは、d33モードやe33モードにより媒質に音波を放射し、あるいは媒質に伝搬する音波を検出する。d33モードは柱状振動子の縦振動、e33モードは板状振動子の厚み振動と一般に言われている。PZTセラミックスやPVDFなどの強誘電体や、P(VDCN/VAc)といった高誘電体、ポーラスポリマーエレクトレット圧電体では、ポーリング処理による電気双極子の配向により残留分極を保持し、d33やe33を示す。一方、残留分極を持たない圧電結晶では、ZnO、LiNbO3、KNbO3といった圧電結晶の場合はC軸、水晶の場合はA軸を、それぞれ電極面に対して垂直に配向すれば、前記d33やe33(水晶ではd11やe11)を示す。圧電コンポジット材料については、用いられる材料に応じる。 ここで、超音波トランスデューサを構成する圧電体において、最も単純な力学境界条件は、一端が固定端でもう一端が自由端の場合である。なお、理論上は、接する物の音響インピーダンスZ(単位はMRayl.)と境界条件には、Z=0が自由端、Z=∞が固定端の関係があるが、本明細書においてはそこまで厳密ではなく、接着層や電極層を除いて、接する物のZに対し、圧電材料のインピーダンスZが、小さいもしくは同等の場合に固定端、大きい場合に自由端とみなすものとする。また、超音波トランスデューサの送波および受波には、圧電体の縦振動あるいは厚み振動の共振が用いられ、その共振周波数frは、トランスデューサの構造や媒質への押し当てにもよるが、主に圧電体の物性と寸法とで決まる。したがって、本明細書では圧電体の寸法や性質以外で共振周波数を変化させる要因を除外する。 先ず、圧電体のd33モードやe33モードにおける共振周波数frは、圧電体の音速vと高さ(厚み)hとから、 fr=v/4h …(1)となる。これは一般にλ/4共振と言われる。λは圧電体内の波長を意味する。このほかに両端を自由としたλ/2共振がある。その共振周波数は、λ/4共振の1/2となる。 一方、前記圧電体の音速vは、柱状振動子の縦振動では、 v=(1/sρ)1/2 …(2)となり、板状の厚み振動子の厚み振動では、 v=(c/ρ)1/2 …(3)となる。ここで、sは弾性コンプライアンス、cは弾性スティフネス、ρは密度である。 こうして、トランスデューサの送波および受波周波数は、主に圧電体の高さ(厚み)h、弾性率sおよび密度ρによって決定されることが、上式(1)〜(3)より理解される。 そして、医療分野に用いられる超音波診断装置には、より高分解能な画像を得るためトランスデューサの高周波数化や送受波性能の向上が求められている。圧電体を用いた超音波トランスデューサにおいて、送受波性能を向上するには、トランスデューサと電気処理回路との間の電気インピーダンス整合は、電気信号を高S/N比で伝送するための重要な因子である。また、高周波化では、送受波周波数が圧電体の厚みで決まるので、圧電体をより薄くする必要がある。圧電体の薄膜化は、電気インピーダンスを下げる方向に働くので、電気回路とのインピーダンス整合には有利に働くが、下げ幅はせいぜい厚み比の逆数分に過ぎない。また、圧電体の薄膜化は、膜厚制御や取り扱いなど製造プロセスを困難とする。 そこで、従来技術では、高周波信号を得る目的として、従来のλ/4共振トランスデューサの送受波信号における高調波成分が用いられている。しかしながら、高調波成分は基本波成分に比べて感度が弱く、かつ圧電体や周辺材料のダンピングによって減衰し易いので、高S/N比の信号は得られにくいという問題がある。そこで、高調波を使った超音波の送受波の一例として、図1を参照して、e33厚み伸縮モードについて説明する。この図1および以下の説明は、非特許文献1に示されたものである。この図1の等価回路を構成する素子の定数は、 Cn=pnkt2C0 …(4) L=1/ωp12C1 …(5) pn=(1/n2)(8/π2),n=2m−1 …(6)である。ここで、Cnは各素子のキャパシタンス、Lはインダクタンス、ktは厚み伸縮モードの電気機械結合係数、ωp1は共振周波数である。 上記式(6)において、pn≒1/n2と近似すれば、式(4)は、 Cn/C0=kt2/n2 …(7)となる。式(7)はn次調波における電気機械結合係数の実効値が1/nに減少することを示す。そして、1次モードの場合、n=1なので、式(7)は、 Cn=1/C0=kt2 …(8)となる。この式は、この1次モードにおけるktと誘電率との関係式 εT/εS=1+kt2 …(9)において、εT=C0+Cn,εS=C0とおいた式と一致する。εSは束縛条件の誘電率、、εTは自由条件の誘電率、C0とCnとは電気容量である。d33モードに対しては、上式(4)を、 Cn=pn(k332/1−k332)C0 …(10)に置き換えれば、同様の結果が得られる。 そして、3次調波を送受波するときの電気機械結合係数の実効値は、式(7)より、n=3のときに与えられ、見かけの結合係数をkt’とおけば、kt’=kt/n=kt/3となる。この結果は、3次調波を送受波する際に、見かけ結合係数が1/3に減衰することを意味する。 図2は、1MHzに厚み共振の1次モードを示す圧電体の複素誘電率の周波数特性(計算値)を示すグラフである。ただし、kt=0.3,h/2v=2.485×10−7(s),tanδm=0.04である。 1MHzに見られる実部(参照符号α1で示す)の極大・極小と、虚部(参照符号α2で示す)の極大とは、厚み共振の1次モードによるものである。以後、3MHzに3次調波成分、5MHzに5次調波成分が見られる。一方、図3に示すように、図2に示す3次調波成分について、3MHzを1次モードとする圧電体モデルで当てはめたところ、結合係数と圧電体の厚みが1/3とした場合に一致した。これらの結果は上記の解釈と一致する。図3は、厚み共振を示す圧電体の複素誘電率の周波数特性(計算値)を示すグラフである。ただし、破線は、前記のとおり、kt=0.3,h/2v=2.485×10−7(s),tanδm=0.04である。一方、実線は、kt=0.1,h/2v=8.300×10−7(s),tanδm=0.04である。 以上のように、従来技術の問題点は、高調波を検出する際に、見掛けの電気機械結合係数が1/nにまで減少してしまうことおよび電気インピーダンスが圧電体の寸法により一義的に決まってしまうことにある。 一方、医療用超音波診断装置において、高調波信号を用いた組織ハーモニックイメージング(THI)診断は、従来のBモード診断では得られない鮮明な診断像が得られることから、標準的な診断モダリティとなりつつある。このハーモニックイメージングのように使用する周波数が高くなると、サイドローブレベルが小さくなり、S/Nが良く、コントラスト分解能が良くなり、またビーム幅が細く横方向分解能が良くなり、さらに近距離では音圧が小さく、また音圧の変動が少ないので多重反射が起こらない等の多くの利点を有している。 そこで、特許文献1では、超音波トランスデューサの各圧電素子で受信された信号が整相加算回路で加算された後、基本波帯域のフィルタと高調波帯域のフィルタとに共通に入力され、それらの出力に、被検体の診断領域の深さにそれぞれ応じたゲインで重み付けされた後、合成されることで、深い診断領域での高調波成分の減衰を基本波で補間するようにした超音波診断装置が提案されている。すなわち、高調波の受信にあたって、前記電気機械結合係数の低下をフィルタとアンプとを用いて補償している。 同様に、特許文献2では、基本波用の圧電素子に高調波用の圧電素子を積層し、基本波用の圧電素子から送信超音波を放射し、該基本波用の圧電素子で受信した基本波の信号成分に、高調波用の圧電素子で受信された複数の高調波成分をそれぞれ帯域通過フィルタを通過させて所望の成分を抽出した後、個別にゲイン調整して加算することで、診断領域の深度に応じた信号を得るようにした超音波診断装置が提案されている。特開2002−11004号公報特許第4192598号公報圧電材料学の基礎 石田拓郎著 オーム社 しかしながら、上述の従来技術では、多数の圧電素子からの信号経路にフィルタやアンプを挿入する必要がある。 また、高い周波数の信号の受信には、PZT等の無機の材料に比べて、PVDFなどの有機の材料を用いることが加工特性の点で好ましい。しかしながら、無機の材料は誘電率が高く、このためキャパシタンスが大きく、電気インピーダンスが低いので、後段回路とのマッチングが比較的容易であるのに対して、有機の材料では、前記誘電率が低く、このためキャパシタンスが低く、前記電気インピーダンスが高いので、後段回路とのマッチングが難しいという問題もある。 本発明の目的は、超音波トランスデューサにおける所望高周波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧が1次モードのそれらよりも大きくなるようにすることができるとともに、電気インピーダンスを低下することができる超音波診断装置を提供することである。 本発明の超音波診断装置は、被検体内に超音波を送信し、前記被検体から来た超音波を受信する超音波トランスデューサと、前記超音波トランスデューサに送信用の超音波信号を与える送信部と、前記超音波トランスデューサで受信された受信信号に所定の信号処理を施す受信部と、前記受信部からの受信信号に基づいて、前記被検体の内部状態を断層画像として画像化する画像処理部とを含み、前記超音波トランスデューサは、相互に厚みの等しい複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振モードで共振を行う積層型圧電体であって、前記圧電体は3層積層されて、その層間および両端の圧電体の表面に電極を有し、互いに隣り合う圧電体における離反側の電極を連結することで、前記各圧電体を相互に並列接続する2組の連絡配線を備え、前記各圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では同方向、さらにその上の第3段目の圧電体では逆方向となるように配列されていることで、λ/4共振の場合に比べて、前記3λ/4共振モードでの感度を増大し、前記λ/4共振モードでの感度を減少することを特徴とする。 上記の構成によれば、超音波トランスデューサから被検体内に超音波を送信し、前記被検体から来た超音波を前記超音波トランスデューサで受信し、その受信信号に基づいて、画像処理部が前記被検体の内部状態を断層画像として画像化する超音波診断装置において、前記超音波トランスデューサを積層圧電体から構成し、前記超音波トランスデューサで受信し、受信部で抽出するのが3λ/4共振モードの信号とする場合に、前記積層圧電体の積層枚数を3枚として各圧電体を並列接続し、かつ予め定める態様で(ある決まりに従い)、一部の圧電体について、その表裏を反転して積層する。 具体的には、先ず、前記のように厚み方向に複数積層される各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極の内、互いに隣り合う圧電体における離反側の電極を2組の連絡配線で連結することで、各圧電体を電気的に並列結合とする。 次に、前記積層枚数を共振モードの枚数である3枚とすることで、圧電体内を伝搬する弾性波の節と腹とを、該圧電体の境界面と一致させることができ、このときの該積層型圧電体内における前記3λ/4共振モード成分の歪み分布に着目すると、各圧電体の歪みが、絶対値が変わることなく位相が180度反転し、各圧電体が上記のように並列接続の場合、例えば基端(背後層)側の圧電体の歪みを+とすれば、「+,+,−」となる。そこで、前記予め定める態様として、各圧電体の残留分極、あるいは結晶のC軸やA軸の向き(d33,e33,d11,e11の符号を決める軸)を、前記歪み分布における電気変位や電場の符号と一致するように、不一致の箇所(「−」の符号に該当する)の圧電体について、その表裏を反転して積層する。上記の場合、固定端側の(背後層に接する)第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では同方向、さらにその上の第3段目の圧電体では逆方向に配列する。 これによって、積層型圧電体における各圧電体を、圧電正効果による電気変位や電場の符号に一致させ、λ/4共振モードの場合に比べて前記3λ/4共振モード成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる。こうして、該超音波トランスデューサ内での帯域分離性能を向上し、前記受信部におけるフィルタやアンプを不要にすることができ、あるいはそれらのフィルタやアンプ用いる場合にも、フィルタの次数を低くしたり、アンプのゲインを小さくしたりすることができる。また、圧電体の並列数、すなわち積層枚数をnとするとき、電気インピーダンスを1/nに下げることができ、送信回路および受信回路とのインピーダンスマッチングが容易になるとともに、S/Nを向上することができる。 また、本発明の超音波診断装置は、被検体内に超音波を送信し、前記被検体から来た超音波を受信する超音波トランスデューサと、前記超音波トランスデューサに送信用の超音波信号を与える送信部と、前記超音波トランスデューサで受信された受信信号に所定の信号処理を施す受信部と、前記受信部からの受信信号に基づいて、前記被検体の内部状態を断層画像として画像化する画像処理部とを含み、前記超音波トランスデューサは、相互に厚みの等しい圧電体を2層積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振モードで共振を行う積層型圧電体であって、前記各圧電体は、その層間および各外表面に電極を有し、前記外表面の電極を連結することで、前記各圧電体を相互に並列接続する連絡配線を備え、前記両圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、互いに同方向となるように配列されていることで、λ/4共振の場合に比べて、前記3λ/4共振モードでの感度を増大し、前記λ/4共振モードでの感度を減少することを特徴とする。 上記の構成によれば、超音波トランスデューサに2層の積層型圧電体を用い、それに3λ/4共振させて3次モード成分の超音波を送受波させるにあたって、各圧電体を互いに並列接続する場合に、圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを、圧電正効果による電気変位や電場の符号に一致させることができる。 さらにまた、本発明の超音波診断装置は、被検体内に超音波を送信し、前記被検体から来た超音波を受信する超音波トランスデューサと、前記超音波トランスデューサに送信用の超音波信号を与える送信部と、前記超音波トランスデューサで受信された受信信号に所定の信号処理を施す受信部と、前記受信部からの受信信号に基づいて、前記被検体の内部状態を断層画像として画像化する画像処理部とを含み、前記超音波トランスデューサは、相互に厚みの等しい複数の圧電体を4層以上積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により所望共振モードで共振を行う積層型圧電体であって、前記各圧電体は、その層間および両端の圧電体の表面に電極を有し、互いに隣り合う圧電体における離反側の電極を連結することで、前記複数の圧電体を相互に並列接続する2組の連絡配線を備え、前記各圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では同方向、さらにその上の第3および第4段目の圧電体では逆方向となる周期性を持つように1または複数組が配列されていることで、λ/4共振の場合に比べて、前記所望共振モードでの感度を増大し、前記λ/4共振モードでの感度を減少することを特徴とする。 上記の構成によれば、超音波トランスデューサに4層以上のn層の積層型圧電体を用い、それにnλ/4共振させてn次モード成分の超音波を送受波させるにあたって、各圧電体を互いに並列接続する場合に、圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを、圧電正効果による電気変位や電場の符号に一致させることができる。 また、本発明の超音波診断装置では、前記超音波トランスデューサにおいて、前記積層型圧電体は超音波の送受信に共用され、該超音波トランスデューサは、3λ/4共振モードによる超音波を送信することを特徴とする。 上記の構成によれば、送受信共に3λ/4共振モードを使用して、高周波、すなわち高解像なイメージングに好適な超音波探触子を実現することができる。 さらにまた、本発明の超音波診断装置では、前記超音波トランスデューサにおいて、前記積層型圧電体は第1の圧電体として超音波の受信に用いられ、該超音波トランスデューサは、λ/4共振モードによる基本波成分の超音波を送信する第2の圧電体をさらに備え、背後層側から、前記第2の圧電体および第1の圧電体の順で積層されていることを特徴とする。 上記の構成によれば、送信用と受信用とにそれぞれ適した圧電体を用いることができ、大パワー送信を行い、被検体で発生した高調波を高利得で受信するハーモニックイメージングに好適な超音波探触子を実現することができる。 また、本発明の超音波診断装置では、前記超音波トランスデューサにおいて、前記積層型圧電体は第1の圧電体として超音波の受信に用いられ、該超音波トランスデューサは、λ/4共振モードによる基本波成分の超音波を送信する2つの第2の圧電体をさらに備え、前記第1の圧電体の両側に、前記第2の圧電体が並設されていることを特徴とする。 上記の構成によれば、送信用と受信用とにそれぞれ適した圧電体を用いることができ、大パワー送信を行い、被検体で発生した高調波を高利得で受信するハーモニックイメージングに好適な超音波探触子を実現することができる。 さらにまた、本発明の超音波診断装置では、前記第1の圧電体は有機高分子を主成分とする材料から成ることを特徴とする。 上記の構成によれば、有機高分子圧電体は高周波の信号を扱うことができ、前記高調波の受信に好適である。 したがって、受信用に有機圧電体を用いることで、前述のように大パワー送信を行い、被検体で発生した高調波を高利得で受信するハーモニックイメージングに好適な超音波探触子を実現することができる。 また、本発明の超音波診断装置では、前記第2の圧電体は無機材料から成り、前記第1の圧電体は有機高分子を主成分とする材料から成り、前記第1の圧電体と被検体との間に音響整合を目的とした部材を介在しないことを特徴とする。 上記の構成によれば、無機・有機積層圧電体において、被検体側が音響インピーダンスの低い有機圧電体であるので、生体などの被検体との間に音響整合を目的とした部材を介在しない。 したがって、該有機圧電体と被検体との間に、インピーダンスマッチングのための音響整合層を不要にすることができ、構造を簡略化することができる。 さらにまた、本発明の超音波診断装置では、前記送信部は、送信信号を符号化されたパルス電圧として前記積層型圧電体に与え、前記受信部は、前記積層圧電体で受信した信号をパルス圧縮処理を行い、前記画像処理部に画像化させることを特徴とする。 上記の構成によれば、被検体に与える影響が無闇に大きくなることなく、大振幅、すなわちS/Nの良好な受信パルスを得ることができる。 本発明の超音波診断装置は、超音波トランスデューサから被検体内に超音波を送信し、前記被検体から来た超音波を前記超音波トランスデューサで受信し、その受信信号に基づいて、画像処理部が前記被検体の内部状態を断層画像として画像化する超音波診断装置において、前記超音波トランスデューサを積層圧電体から構成し、前記超音波トランスデューサで受信し、受信部で抽出するのが3次以上の所望共振モード成分の信号とする場合に、前記積層圧電体の積層枚数を、2層または前記所望共振モード成分の次数枚として各圧電体を並列接続し、かつ予め定める態様で一部の圧電体について、その表裏を反転して積層する。 それゆえ、積層型圧電体における各圧電体を、圧電正効果による電気変位や電場の符号に一致させ、λ/4共振モードの場合に比べて、前記3次以上の所望高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる。こうして、該超音波トランスデューサ内での帯域分離性能を向上し、前記受信部におけるフィルタやアンプを不要にすることができ、あるいはそれらのフィルタやアンプ用いる場合にも、フィルタの次数を低くしたり、アンプのゲインを小さくしたりすることができる。また、圧電体の並列数、すなわち積層枚数をnとするとき、電気インピーダンスを1/nに下げることができ、送信回路および受信回路とのインピーダンスマッチングが容易になるとともに、S/Nを向上することができる。圧電体の厚み伸縮モードでの等価回路図である。1MHzに厚み共振の1次モードを示す圧電体の複素誘電率の周波数特性を示すグラフである。前記図2に示す圧電体における3次調波成分と、3MHzに厚み共振の1次モードを示す圧電体との複素誘電率の周波数特性を示すグラフである。3層圧電体トランスデューサにおけるλ/4共振状態の模式的な断面図である。図4で示す3層圧電体トランスデューサにおける3λ/4共振状態の模式的な断面図である。n層圧電体トランスデューサの模式的な断面図である。図6に示したn層圧電体トランスデューサでn次高調波を励振あるいは検出する際の変位と歪みとを模式的に示す図である。図7に示す積層圧電体で、n次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極、あるいは結晶のC軸やA軸の向きと、圧電正効果による電気変位との関係を示す図である。n次調波を検出するための2n層圧電体トランスデューサの構造を模式的に示す図である。図8で示す本発明の考え方に従う詳細な実施例の一例であり、2層圧電体トランスデューサの構造を模式的に示す断面図である。図10で示す2層圧電体トランスデューサにおける高調波送受波時の変位と歪みとを説明するための図である。図10および図11に示す積層圧電体で、3次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極の向きと、圧電正効果による電気変位との関係を示す図である。図10に示す2層圧電体およびその比較例による超音波の送受波特性について、実験データおよびシミュレーション結果を示すグラフである。図8および図5で示す本発明の考え方に従う詳細な実施例の他の例であり、3層圧電体トランスデューサの構造を模式的に示す断面図である。図14で示す3層圧電体トランスデューサにおける高調波送受波時の変位と歪みとを説明するための図である。図14および図15に示す積層圧電体で、3次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極の向きと、圧電正効果による電気変位との関係を示す図である。図16に示す3層圧電体による超音波の送受波特性について、実験データおよびシミュレーション結果を示すグラフである。図16に示す3層圧電体の比較例による超音波の送受波特性について、実験データおよびシミュレーション結果を示すグラフである。図8で示す本発明の考え方に従う詳細な実施例のさらに他の例であり、6層圧電体トランスデューサの構造を模式的に示す断面図である。図19に示す積層圧電体で、3次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極の向きと、圧電正効果による電気変位との関係を示す図である。図20に示す6層圧電体による超音波の送受波特性について、シミュレーション結果を示すグラフである。本発明の実施の一形態に係る超音波診断装置の外観構成を示す斜視図である。前記超音波診断装置における診断装置本体の電気的構成を示すブロック図である。前記超音波診断装置の超音波探触子における超音波トランスデューサの一構造例を模式的に示す断面図である。前記超音波診断装置の超音波探触子における超音波トランスデューサの他の構造例を模式的に示す断面図である。前記超音波トランスデューサに用いるために作成した有機圧電材料の解析結果を示すグラフである。受信超音波の波形を示すグラフであり、符号化なしの単パルス駆動の場合を示す。受信超音波の波形を示すグラフであり、符号化ありの複数パルス駆動の場合を示す。 先ず、本発明の医療用超音波診断装置に用いられる超音波トランスデューサの考え方を説明する。本発明の超音波トランスデューサは、同じ厚みの圧電体をある決まりに従い積層することによって、3次以上の共振モード成分を効率良く送受波することができるという本件発明者の知見に基づき構成される積層圧電体から成るものである。圧電体を積層する手法はこれまで多く報告されているが、本発明は、前記3次以上の共振モード成分を送受波する際に圧電体内に歪み分布があることに着目したものである。 一例として、最も理解し易いと思われる図4に示す3枚の圧電体A1,A2,A3を積層したλ/4振動子について説明する。この、λ/4振動子のλ/4での励振状態では、前記3枚の圧電体A1,A2,A3が同期して伸縮を行い、全体で最大ΔZの伸縮を行うものとする。そして、固定端、すなわち前記の40MRayl.より小さいものの、充分大きい音響インピーダンスを有する背後層に接する1層目の圧電体A1の裏面の座標をz0とすると、前記伸縮に伴うその位置の変位は、z0=ΔZSsin0°=0である。これに対して、1層目の圧電体A1の表面の座標z1の変位は、z1=ΔZSsin30°=0.5ΔZとなり、2層目の圧電体A2の表面の座標z2の変位は、z2=ΔZSsin60°=0.85ΔZとなり、自由端、すなわち前記の0より大きいものの、充分小さい音響インピーダンスを有する空間と接する3層目の圧電体A3の表面の座標z3の変位は、z3=ΔZSsin90°=1.0ΔZとなる。ここで、圧電体A1,A2,A3の表裏は、該圧電体を厚み方向に加圧して、+の電圧が発生する方を表、−の電圧が発生する方を裏とする。 すなわち、図4の3層の圧電体A1,A2,A3の場合、全体の伸縮ΔZの内、固定端側の圧電体A1は、0.5ΔZの伸縮を受け持ち、2層目の圧電体A2は、0.35ΔZの伸縮を受け持ち、3層目の圧電体A3は、0.15ΔZしか伸縮しないことになる。このように積層型圧電体は、基本波のλ/4共振では、各圧電体A1,A2,A3は同期して(同じ方向に)伸縮を行うものの、各圧電体A1,A2,A3が一様に伸縮するのではなく、不均一な歪み分布を有する。 一方、同様の積層圧電体を3λ/4共振させると、図5で示すようになる。すなわち、1層目の圧電体A1の裏面の座標z0は、z0=ΔZsin0°=0であり、1層目の圧電体A1の表面の座標z1の変位は、z1=ΔZsin90°=ΔZとなり、2層目の圧電体A2の表面の座標z2の変位は、z2=ΔZsin180°=0となり、3層目の圧電体A3の表面の座標z3の変位は、z3=ΔZsin270°=−ΔZとなる。したがって、1層目の圧電体A1はΔZの伸びを行っているのに対して2層目および3層目の圧電体A2,A3は、ΔZの縮みとなっている。 そこで本件発明者は、このような不均一な歪み分布に着目し、各圧電体の残留分極(PZT,PVDFなどの強誘電体)、あるいは結晶(水晶など)のC軸やA軸の向き(d33,e33,d11,e11の符号を決める軸)を、高調波送受信時の歪み分布における電気変位や電場の符号と一致するように、不一致の箇所(「−」の符号に該当する)の圧電体について、その表裏を反転して積層するようにした。図4および図5の場合には、その左側の矢印で示すように、2層目および3層目の圧電体A2,A3を、1層目の圧電体Aとは前記残留分極の向きあるいは結晶軸が逆方向となるように積層する。これによって、基本波λの成分が、0.5・ΔZ+0.35・(−ΔZ)+0.15・(−ΔZ)=0となって除去されると同時に、3次高調波3λの成分は、1・ΔZ+(−1)・(−ΔZ)+(−1)・(−ΔZ)=3ΔZとなって抽出することが可能となる。 一方、図6を用いて、n枚(nは4以上の整数)の圧電体を積層したλ/4振動子において、n次高調波を送受波する場合を説明する。モデルを単純化するため、積層膜の一端を基盤に固定し、もう一端を自由端とした。インピーダンス整合層や背後(バッキング)層など、さらに接着層の厚み等による影響は除くものとする。 図7は、図6に示したn層圧電体トランスデューサで、n次調波を励振あるいは検出する際の変位と歪みとを模式的に示す図である。(a)は積層状況、(b)はある瞬間での各層の変位、(c)は歪の極性である。前述の図4や図5と同様に、基盤とそれに接する圧電体との境界面を原点z0として、素子の高さ(厚み)方向の座標をz1,z2,z3,・・・,znとする。積層圧電体内で、各圧電体層の変位は、背後層と第1段目の圧電体1の境界とを原点z0とした正弦波を形成する。 一般に、厚み方向にn倍波(n≧1)が励振された場合、高さzにおける変位ξ(z)は、 ξ(z,t)=ξ0sin(nπ/2・z/h)(cosnωrt+θ)…(11)となることが知られている(基礎物理学選書8 振動・波動 有山正孝著 裳華房)。ここで、ωrは積層圧電体の共振周波数2πfr,θは、電圧あるいは音波を受ける際の応力と変位との位相差である。係数ξ0sin(nπ/2・z/h)は、高さzにおける変位の振幅を意味する。以下、時間項は省略する。 この場合、座標z1での変位ξ(z1)は、 ξ(z1)=ξ0sin(nπ/2・z/h) …(12)である。ここで、変位ξ(z)と歪みSとの関係は、 dS=dξ/dz …(13)なので、第m層の圧電体の歪みSmは、 Sm=[ξ(zm)−ξ(zm−1)]/(zm−zm−1) …(14)と書ける。ただし、m=1〜n、z0=0である。 したがって、圧電体1の歪みS1は、 S1=Δh1/h1=ξ0sin(nπ/2・h1/h)/h1 …(15)となる。ここで、Δh1は圧電体1の厚み変化で、ξ(z1)−ξ(z=0),h1は圧電体1の厚みである。圧電体2についても同様に、歪みS2は、 S2=Δh2/h2 =ξ0{sin(nπ/2・(h1+h2)/h) −sin(nπ/2・h1/h)}/h2 …(16)となる。第m層の圧電体の歪みSmは、 Sm=Δhm/hm=ξ0{sin(nπ/2・zm/h)−sin(nπ/2・zm−1/h)}/hm …(17)となる。 上式(17)は、第m層にある圧電体の歪みが、sin(np/2・zm/h)−sin(np/2・zm−1/h)で決まり、前述のように一様に伸縮しないことを意味する。したがって、その項の符号が正になる圧電体と負になる圧電体とで、圧電体の表裏を反転させれば、圧電正効果による電気変位あるいは電場の符号を一致させることができ、圧電素子のn次調波の電気信号を効率良く得られることが理解される。 さらに、各圧電体の厚みを等しくすれば、 zm=(m/n)h,zm−1=(m−1/n)h,hm=h/m …(18)と単純化できる。これを式(17)に代入すると、Sm=mξ0{sin(mπ/2)−sin[(m−1)π/2]}/h …(19)となる。 次に、電気系について考える。第m層の圧電体が圧電正効果によって生じる電気変位(単位電極面積当りの電荷)Dmは、 Dm=e33SmまたはDm=d33Sm=d33sTm …(20)である。ここで、sは圧電体の弾性コンプライアンスである。各々の圧電体を電気的に並列に結合すれば、積層圧電体が出力する正味の電気変位DTotalは、となる。したがって、各圧電体の電気容量をCとすれば、積層圧電体の容量はnCとなり、電気インピーダンスは圧電体1層の1/nに減少する。 本願発明者は、上式(19),(21)から、単純な並列結合の実現と積層圧電体が出力する正味の電気変位が最大となる残留分極あるいは結晶C軸やA軸の配列の規則性を見出した。また、前記積層数nが4以上で、該積層数nと高調波の次数とを一致させれば、圧電体内を伝搬する弾性波の節と腹とを圧電体の境界面と一致させることができ、このとき各圧電体の歪みが絶対値が変わることなく位相が180度反転し、例えば各圧電体が直列の図7の場合、圧電体1の歪みを+とすれば「+,−,−,+」の周期性を4層おきに見出すことができ、n次調波の検出をより効率良く行うことができることを見出した。このことを理論説明すると以下のようになる。 図8に、本発明における、n層圧電体で、n次調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きと、圧電正効果による電気変位D(C/m2)との関係の一例を示す。各圧電体の層間および両端の圧電体の表面には電極が設けられており、互いに隣り合う圧電体における離反側の電極を連絡配線によって連結し、各圧電体を並列接続している。また、残留分極(それを持たない圧電体の場合は結晶のC軸(水晶の場合はA軸))は、z軸方向に配向されている。図中では便宜上、圧電体1の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の方向を+Pと表記している。これは他の圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸が圧電体1のそれと同方行か逆方行かを識別するためであり、圧電体1の分極方向を制限するものではない。 前述の図7(c)に示したように、各圧電体の歪みには、周期性がある(図7(c)の場合、前述のように各圧電体は直列)。そのため、残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを平行とした場合、本発明の目的である高電荷出力あるいは高電位出力を達成するためには、各々の電極を電気的に絶縁し、独立して配線しなければならなく、構造上かつ製造上のリスクは極めて高い。 しかしながら本発明によれば、図8に示す並列接続の場合に、4層毎の圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸に、「+P,+P,−P,−P」の周期性を与えた、すなわち背後層に接する第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では同方行、さらにその上の第3および第4段目の圧電体では逆方行とし、それ以後4層の圧電体毎に、同方向、同方行、逆方行、逆方行の周期性を持つように配列すれば、電気インピーダンスを1層の圧電体の1/nに下げられるだけでなく、容易に両端子間の電荷感度をn倍に増幅することができる。 上述ではn次調波を検出する場合を例として挙げたが、逆にn次調波を送波する場合についても、図8において端子間に発振器を接続することで、従来よりも効率が向上する。送波の場合、歪みSと印加電場Eとの関係は、 S=dEあるいはS=(e/c)E …(22)である。図8に示す積層圧電体の両端子間に電圧発生器を繋げ、n次調波に相当する周波数の電圧を印加すれば、図8に示す歪みおよび図7(b)に示す変位を生じ、超音波を媒質中に励振させることができる。そして、先に述べた電気インピーダンスの関係から、本願発明の構造では、低電圧高電流駆動となる。 一方、図9は、n次調波を検出するための2n層圧電体トランスデューサの構造を模式的に示す図である。(a)は積層状況、(b)はある瞬間での各層の変位、(c)および(d)はそれぞれ歪みおよび電気変位の係数である。0.3および0.7の前記係数は、歪みおよび電気変位それぞれの相対比を表しており、絶対値を示すものではない。なお、1/21/2=0.7と近似した。各圧電体は層間および両端面に電極が設けられ、互いに隣り合う圧電体における離反側の電極同士を連絡し、並列結合とした。この場合、先に述べたn層圧電体トランスデューサと比べて、圧電正効果による電気変位は同じであるが、電気容量が2倍となり、電気インピーダンスは半減する。残留分極あるいはC軸やA軸の配列は背後層に接する圧電体を基準として、8層毎に、「+P,−P,−P,+P,−P,+P,+P,−P」の繰り返しとなる。 各圧電体の歪みSmnωは、次式で与えられる。 Smnω=2nξ0nω{sin[m(π/4)]−sin[(m−1)(π/4)]}/h,m=1,2,…,2n …(23) 以下に、上述の考え方に従う本発明の詳細な実施例を説明する。先ず第1の実施例として、図10に示す2層圧電体トランスデューサによる3λ/4高調波の検出について述べる。2層圧電体トランスデューサは積層圧電体の中でも最もシンプルな構造である。この場合、送受波に用いる高調波の次数と積層枚数とは一致しない。しかしながら、本発明を以下のように適用することにより、送受波の効率を上げることができる。 すなわち、図10の圧電体1および圧電体2の歪みS1,S2は、 S1=Δh1/h1=ξ0sin(nπ/2・h1/h)/h1 …(24) S2=Δh2/h2 =ξ0{sin(nπ/2)−sin(nπ/2・h1/h)}/h2…(25)となる。ここでhは積層圧電体の高さ、h1とh2とは各圧電体の高さで、h1=h2=h/2である。 3λ/4共振倍波に対する応答は、n=3で与えられる。その場合の歪みS13ω,S23ωは、 S13ω =2ξ03ωsin(3π/4)/h=2(ξ03ω/21/2)/h …(26) S23ω =2ξ03ω{sin(3π/2)−sin(3π/4)}/h =−2ξ03ω(1+1/21/2)/h …(27)となる。添字3ωは、3倍波における変位を示す。ここで、1/21/2≒0.7と近似すると、これらの式は、3倍波では圧電体2の歪みと圧電体1の歪みとでは振幅比が−1.7:+0.7となることを示す。 そのような各圧電体の変位と歪みの符号とを図11に示す。(a)は変位であり、(b)は歪みである。圧電体1と圧電体2との歪み比は、(b)に示すとおりである。各圧電体の歪みの絶対値が一致しないのは、前述のように各圧電体の境界と変位の節と腹とが一致しないためである。 そこで図12に示すように互いに隣り合う圧電体の離反面の電極同士を連絡して並列結合とすれば、積層圧電体の電気インピーダンスは1つの圧電体のインピーダンスの1/2となり、さらに圧電正効果による電気変位D1,−13ωは、圧電体1の残留分極の向きあるいは結晶のC軸やA軸の向きと圧電体2のそれらの向きを同方行とすれば、並列接続で一方の極性が反転して足し合わされ、 D1,−13ω=2(1+21/2)eξ03ω/h …(28)となる。 一方、基本波に対する応答は、式(24)および(25)でn=1の場合に理解できる。すなわち歪みS1ωとS2ωとは、S1ω=2ξ0ωsin(π/4)/h=2(ξ0ω/21/2)/h …(29)S2ω=2ξ0ω{sin(π/2)−sin(π/4)}/h =2ξ0ω{1−1/21/2}/h …(30)となる。 ここで図12に示すような並列結合を行い、残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを同方行とした場合、電気変位D1,1ωは、 D1,1ω=2eξ0ω(21/2−1)/h …(31)となる。ここで、添え字の1は、各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きに対応し、左から圧電体1、圧電体2の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを示している。 以上の結果から、各圧電体の歪みを考慮し、並列接続の場合、残留分極あるいは結晶のC軸やA軸方向を同方向とすることで、3λ/4波に対しては2.4倍感度を増幅することができ、同時にλ/4波に対しては0.4倍に感度を落とすことができる。したがって、2層圧電体から成る超音波トランスデューサへ本発明を適用すれば、3λ/4共振による信号を高S/N比で送受波することが可能となる。 図13は、P(VDF/TrFE)を用いた2層圧電体からなる超音波トランスデューサの送受波感度特性の実験結果ならびにシミュレーション結果である。実線は実験結果、破線はシミュレーション結果である。いずれも互いに隣り合う圧電体の離反面、すなわち外側の表面に形成された電極面を連絡し、並列結合としており、しかもλ/4共振周波数は7MHz、3λ/4共振周波数はおよそ20MHzである。(a)は本発明に基づき分極方向を同方行とした場合、(b)は参考に逆方行とした場合の結果である。(a)に示すように、本発明に基づく分極方向と配線手法とを組み合わせると、20MHzに見られる3λ/4共振ピークが、7MHzにみられるλ/4共振ピークよりも大きく、(b)に示す結果と比較すると、3λ/4共振ピークは20dB増加している。このように2層圧電体に対しても本発明の手法に基づき、分極方向と配線手法とを組み合わせることで、3次高調波成分を増加させると同時に、基本波成分を減衰させることができる。 続いて、3層圧電体トランスデューサによる3次調波の検出について述べる。図14に模式構造図を示す。このトランスデューサも、積層圧電体の一端を基盤に固定し、もう一端を自由端としたλ/4振動子としている。 先ず、本発明に基づく設計プロセスを述べる。前述と同様に基盤と圧電体1との境界を原点として、素子の高さ(厚み)方向の座標をzとする。次に、各々の圧電体が生じる歪みSについて考える。基盤側から順に圧電体1、圧電体2、圧電体3とする。座標zは、基盤と圧電体1との境界ではz=0、圧電体1と圧電体2との境界ではz1、圧電体2と圧電体3との境界ではz2、圧電体3の端部をz3とする。また、圧電体1の厚みをh1、圧電体2の厚みをh2、圧電体3の厚みをh3とし、積層圧電体の高さをhとする。 すると、座標z1における変位ξ(z1)は、 ξ(z1)=ξ0sin(nπ/2・z1/h) …(32)なので、圧電体1の歪みS1は、 S1=Δh1/h1=ξ0sin(nπ/2・h1/h)/h1 …(33)となる。同様に、圧電体2および3については、 S2=Δh2/h2=ξ0{sin(nπ/2・(h1+h2)/h)−sin(nπ/2・h1/h)}/h2 …(34) S3=Δh3/h3=ξ0{sin(nπ/2)−sin(nπ/2・(h1+h2)/h)}/h3 …(35)となる。 そして、3λ/4共振時の各圧電体の歪みは、上式(33)〜(35)においてn=3で与えられる。各圧電体の厚みが等しく、すなわち上式でh1=h2=h3=h/3の場合、各圧電体の歪みS13ω,S23ω,S33ωは、 S13ω=Δh13ω/h1=3ξ03ωsin(π/2)/h) =3ξ03ω/h …(36) S23ω=Δh23ω/h2 =3ξ03ω{sin(π)−sin(π/2)}/h =−3ξ03ω/h …(37) S33ω=Δh33ω/h3 =3ξ03ω{sin(3π/2)−sin(π)}/h =−3ξ03ω/h …(38)となる。ここで、添え字3ωは3次調波における応答を意味する。これらの式から3λ/4共振では圧電体2および圧電体3の歪みと、圧電体1の歪みとが逆位相であることを示す。 各圧電体の変位と歪みの符号とを図15に示す。(a)は変位であり、(b)は歪みである。本実施例は、3次調波の送受で、圧電体が3枚積層であるので、(a)および前述の図5で示すように、変位の節と腹とは、各圧電体の境界と一致する。このとき各圧電体の歪みは、圧電体1の歪みを+とすると、(b)および前述の図5で示すように、圧電体2および3の歪みを−として符号化することができる。 以上の力学系の振る舞いに基づき、電気系の最適構造を導く。図16に示すように、互いに隣り合う圧電体の離反側の面の電極同士を連絡し、そこから配線を引き出し結合すれば、容易に各圧電体を電気的に並列結合することができる。このとき、積層圧電体の電気インピーダンスは1枚の圧電体の1/3に減少する。また、圧電体1の残留分極の向きあるいは結晶のC軸やA軸の向きを基準(+P)として、圧電体2の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを同方行(+P)とし、圧電体3で逆方行(−P)とすれば、配線に誘起される電荷は、圧電正効果により生じた電荷の総和となる。このとき両端子間に誘起される電気変位D1,1,−13ωは、 D1,1,−13ω=eS1−e(S2+S3)=9eξ03ω/h …(39)となる。ここで、添え字の1および−1は、各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きに対応し、左から圧電体1、圧電体2そして圧電体3の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを示している。 そして、λ/4共振に対する応答は、n=1で与えられ、各圧電体の歪みS1,S2,S3は、 S1=Δh1/h1=3ξ0sin(π/6)/h …(40) S2=Δh2/h2 =3ξ0{sin(π/3)−sin(π/6)}/h …(41) S3=Δh3/h3 =3ξ0{sin(π/2)−sin(π/3)}/h …(42)すなわち、 S1=S2+S3 …(43)となる。 一方、図16に示す並列接続で、λ/4共振に対する電気変位D1,1,−1ωは、 D1,1,−1ω=e(S1+S2+S3)=0 ・・・(44)であり、本実施例の3層圧電体から成るトランスデューサでは、λ/4共振に基づく感度が打ち消されることを示す。 比較として、単に残留分極あるいは結晶のC軸やA軸を平行とした3層圧電体による3次調波の送受波について述べる。3λ/4共振において積層圧電体が圧電正効果により生じる電気変位D1,1,13ωは、D1,1,13ω=e(S1+S2+S3)=−3eξ03ω/h …(45)となる。したがって、本実施例では、上式(45)に示すとおり、並列接続において端子間の電気変位を、3倍(約10dB)向上できることが理解される。 以下、図16に示した3層圧電体による超音波の送受波特性について、実験データおよびシミュレーション結果を図17に示す。実験では代表的な強誘電性ポリマーであるフッ化ビニリデンと三フッ化エチレンの共重合体(P(VDF/TrFE))を用いた。超音波トランスデューサの構造模式図を図17の右図に示す。本発明に基づき3層圧電体を電気的に直列結合し、さらに分極の向きを図15に示したものと同じとした。3層圧電体の高さはおよそ120μmで、λ/4共振周波数は4.5MHzである。左図の実線は実験結果、破線はシミュレーション結果である。 図17から、20MHz以下では、それぞれ共振周波数に対応する4.5MHz付近にピークを示さず、λ/4共振ピークが消失している。したがって、本実施例のトランスデューサにおける第1のピークは、それの3λ/4共振である13.5MHzとなっていることが理解される。 比較例として、図18に圧電体2と3の残留分極の向きを図17とは反対にした積層圧電体の特性を示す。左図に示すように、この3層圧電体は、λ/4共振である4.5MHzと、その3次高調波成分である13.5MHzとに共にピークを示し、しかも3次高調波成分の感度は、−50〜−60dB程度であり、図17に示した本実施例の結果に比べて、10〜20dB程度小さいことが理解される。これらの実験結果からも、本発明の手法に基づき分極方向を工夫することで、3次高調波成分を増加させると同時に基本波成分を減衰させることが可能であることが理解される。 以上のように、第2の実施例では、3層圧電体を用いて3次調波を送受波する手法を述べたが、ここでは積層圧電体の高調波の次数と積層枚数とを一致させることにより、(i)圧電体の境界面を圧電体の弾性波の節と腹とに一致させて各圧電体の振動様式を符号化して理解でき、その符号と配線手法とに基づき、(ii)各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを適宜同方行または逆方行とすることで、各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを単純に同方行にした場合と比べ、3λ/4波の送受波時に感度を3倍(約10dB)以上増加することができるだけでなく、λ/4波を打ち消すフィルタとしての機能も有することができる。また、電気的に並列結合とするので、電気インピーダンスを1/3に減少させることができる。以上のように3λ/4波を選択的にかつ高S/N比で送受波する場合、本発明は極めて有効である。これによって、受波の場合には帯域分離フィルタやアンプを削減することができる。あるいは、削減まで至らなくても、フィルタの場合は次数を削減して損失を抑え、アンプの場合はゲインを小さくすることができる。 第3の実施例は、同じ厚さの圧電体を6層積層したトランスデューサによる3次調波の送受である。本実施例は、第2の実施例で示した3層圧電体において各圧電体を2つの圧電体に分割したもので、並列結合とした場合に電気インピーダンスがさらに半分になるだけでなく、上端電極と下端電極とが連絡されるので、積層圧電体全体を電気的にシールドすることができる。 図19は、その6層圧電体の構造を示し、3次調波を送受波する際の変位および歪みを模式的に示す断面図である。図9と同様に、(a)は積層状況、(b)はある瞬間での各層の変位、(c)は歪みの係数である。 各圧電体の歪みS1,S2,S3,S4,S5,S6は、 S1=6ξ0sin(π/4)/h=6ξ0(1/21/2) …(46) S2=6ξ0{sin(π/2)−sin(π/4)}/h =6ξ0(1−1/21/2) …(47) S3=6ξ0{sin(3π/4)−sin(π/2)}/h =6ξ0(1/21/2−1) …(48) S4=6ξ0{sin(π)−sin(3π/4)}/h =6ξ0(−1/21/2) …(49) S5=6ξ0{sin(5π/4)−sin(π)} =6ξ0(−1/21/2) …(50) S6=6ξ0{sin(3π/2)−sin(5π/4)} =6ξ0(1/21/2−1) …(51)となる。1/21/2≒0.7に近似すると、各圧電体の歪みの比は、図20の模式図に示すとおりとなる。 そして、互いに隣り合う圧電体における離反側の電極を連絡し、電気的並列結合をした場合の残留分極あるいは結晶のC軸またはA軸の好ましい配列を、図20に示す。このように構成することで、総電荷量は、図16で示す3枚積層時と変わらないけれども、電気インピーダンスはそれの1/2に下げることができる。 図21は、図20に示すように分極配列と配線とを組み合わせた6層圧電体における感度の周波数特性をシミュレーションした結果である。この6層圧電体のλ/4共振周波数は5MHzである。しかしながら、右図にあるように、本発明に基づく分極配列ならびに配線を組み合わせることで、左図に示すようにλ/4共振による感度は減衰し、3λ/4共振による感度が最大となる。 上述のように構成される積層圧電体を超音波探触子の超音波トランスデューサに用いて、本発明の超音波診断装置は構成される。図22は、本発明の実施の一形態に係る超音波診断装置1の外観構成を示す斜視図である。この超音波診断装置1は、図略の生体等の被検体に対して超音波を送信すると共に、その被検体において反射などで生成された超音波を受信する超音波探触子2と、前記超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、該ケーブル3を介して電気信号の送信信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して前記超音波信号を送信させるとともに、超音波探触子2で受信された信号に基づいて、被検体内の内部状態を断層画像として画像化する診断装置本体4とを備えて構成される。 前記診断装置本体4は、その上部に操作パネル5および表示パネル6を備え、前記操作パネル5からは各種設定操作等が行われ、表示パネル6には、その操作のための支援画像や、受信された超音波信号に基づき作成された断層画像などが表示される。また、前記操作パネル5や診断装置本体4の適所には、前記超音波探触子2を、その不使用時に保持するホルダ7が設けられている。 図23は、前記診断装置本体4の電気的構成を示すブロック図である。診断装置本体4は、操作入力部11(前記操作パネル5)と、送信部12と、受信部13と、信号処理部14と、画像処理部15と、表示部16(前記表示パネル6)と、制御部17と、電圧制御部18と、参照信号記憶部19とを備えて構成されている。 操作入力部11は、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボード等から成り、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などが行われる。 送信部12は、制御部17の制御に従って、前記超音波探触子2の各圧電素子からの送信パルスが所定の焦点位置に収束するようにフォーミングを行う回路であり、さらに本実施例では、前述の送信パルスを時間軸方向に伸張した複数の符号化されたパルスで構成する。作成された送信パルスは、制御部17を介して電圧制御部18に与えられ、振幅が拡大されて、各圧電素子へ与える。 受信部13は、制御部17の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路であり、この受信信号を信号処理部14へ出力する。 信号処理部14は、受信部13の出力と予め設定された参照信号との相関処理を行うことで、受信部13の出力から受信超音波を検出するものである。この参照信号は、送信超音波の周波数を基本周波数とした場合における検出すべき3次以上の高調波の次数および被検体の診断部位および診断深度から導かれる近似関数である。 なお、この信号処理部14では、前記相関処理を行う前に、前記符号化されたパルスを時間軸方向に圧縮し、送信パルスに対応する受信パルスを作成する。こうして、符号化パルスを用いることで、被検体である生体に与える影響が無闇に大きくなることなく、大振幅、すなわちS/Nの良好な受信パルスを得ることができる。この3次以上の高調波のみを抽出する復号フィルタは、基本波成分を抽出する場合の復号フィルタより構造が複雑になるのもの、バンドパスフィルタと組合わせたり、或いは符号化パルスの種類を変えることなどで、S/Nの改善と、前記3次以上の高周波の抽出とを両立することができる。前記符号化パルスによる伸張・圧縮については、たとえば特開2003−225237号公報に示されている。 参照信号記憶部19は、ROMあるいはEEPROM等の記憶素子を備えて構成され、被検体における複数の各診断部位および診断深度に対応した近似関数を前記参照信号として記憶するものである。そして、上記信号処理部14は、被検体の診断部位および診断深度に応じて、前記参照信号記憶部19に記憶されている複数の参照信号(近似関数)の中から1つの参照信号を選択して相関処理を行う。また、選択された前記参照信号に応答して、前記送信部12がビームフォーミングを行う。前記診断部位および診断深度は、操作入力部11から入力される。 画像処理部15は、制御部17の制御に従って、信号処理部14で相関処理された受信信号に基づいて、被検体の内部状態の画像(超音波画像)を生成する回路である。 表示部16は、制御部17の制御に従って、画像処理部15で生成された被検体の超音波画像を表示する装置である。表示部16は、CRTディスプレイ、LCD、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置や、プリンタ等の印刷装置等で実現される。 制御部17は、マイクロプロセッサ、記憶素子およびその周辺回路等を備えて構成され、これら操作入力部11、送信部12、電圧制御部18、受信部13、信号処理部14、参照信号記憶部19、画像処理部15および表示部16を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって超音波診断装置1の全体制御を行う回路である。 図24は、前記超音波探触子2における超音波トランスデューサ20として用いられる超音波トランスデューサ21の構造を模式的に示す断面図である。この超音波トランスデューサ21は、複数の圧電素子が一直線上に配列されて成り、前記圧電素子の配列方向は、図24の紙面に垂直(厚み)方向である。この超音波トランスデューサ21は、基本的に有機無機積層型の超音波トランスデューサであり、バッキッング(背後)層22上に、先ず大パワー送信が可能なように、無機材料から成る送信用圧電層23を積層し、その送信用圧電層23の被検体側には、中間層24を介して、ハーモニックイメージングのための高調波帯域の受信が可能な有機材料から成る受信用圧電層25が設けられて構成される。そして、前記電圧制御部18からの送信パルスは、第2の圧電体である送信用圧電層23に与えられ、第1の圧電体である受信用圧電層25での受信信号は受信部13に与えられる。 ここで、前記送信用圧電層23と受信用圧電層25との間には、それらの音響インピーダンスの違いを緩和するための中間層24が設けられているが、本実施の形態では、前記受信用圧電層25が後述するような有機材料から成ることで、被検体である生体に音響インピーダンスが近くなり、音響整合層が設けられていない。こうして、該超音波トランスデューサ21は、構造が簡略化されている。ただし、該受信用圧電層25上には、必要に応じて、音響レンズが設けられてもよい。 上述のように構成される超音波トランスデューサ21において、前記有機材料から成る受信用圧電層25に、前述の図8、図9、図12、図16または図20で示す積層圧電体が用いられる。そして、送信超音波の波長をλとするとき、送信用圧電層23はλ/4共振を行い、受信用圧電層25は3λ/4共振を行い、上述のようにして、受信用圧電層25は、前記波長λの3次高調波を高利得で抽出し、基本波を除去する。これによって、前記受信部13におけるフィルタやアンプを不要にすることができ、あるいはそれらのフィルタやアンプ用いる場合にも、フィルタの次数を低くしたり、アンプのゲインを小さくしたりすることができる。また、送信用と受信用とのそれぞれに適した無機圧電体および有機圧電体を用いることができ、大パワー送信を行い、被検体で発生した高調波を高利得で受信するハーモニックイメージングに好適な超音波探触子2を実現することができる。 一方、図25は、前記超音波探触子2における超音波トランスデューサ20として用いられる他の超音波トランスデューサ31の構造を模式的に示す断面図である。このトランスデューサ21も、複数の圧電素子が一直線上に配列されて成り、前記圧電素子の配列方向は、図25の紙面に垂直(厚み)方向である。この超音波トランスデューサ31は、有機無機並列配置の超音波トランスデューサであり、前記一直線上のバッキッング(背後)層32上で、その幅方向の中央部にハーモニックイメージングのための高調波帯域の受信が可能な有機材料から成る受信用圧電層35が設けられ、その幅方向の両側に大パワー送信が可能なように、無機材料から成る送信用圧電層33,34が並設されて構成されている。 そして、それらの圧電層33,34,35上には、被検体である生体との音響整合層33a,34a,35aおよび音響レンズ33b,34b,35bが積層されている。また、それらの圧電層33,34,35とバッキッング層32との間には介在部材33c,34c,35cがそれぞれ介在されており、中央の受信用圧電層35の介在部材35cが平板であるのに対して、両側の送信用圧電層33,34の介在部材33c,34cは、該送信用圧電層33,34を受信用圧電層35側に内傾させるために、楔形に形成されている。なお、図25では、分り易くするために、楔形の前記介在部材33c,34cの内傾角は、実際より大き目に強調して示している。 上述のように構成される超音波トランスデューサ31においても、前記有機材料から成る受信用圧電層35に、前述の図8、図9、図12、図16または図20で示す積層圧電体が用いられる。そして、送信超音波の波長をλとするとき、送信用圧電層33,34はλ/4共振を行い、受信用圧電層35は3λ/4共振を行い、上述のようにして、受信用圧電層35は、前記波長λの3次高調波を高利得で抽出し、基本波を除去する。これによって、前記受信部13におけるフィルタやアンプを不要にすることができ、あるいはそれらのフィルタやアンプ用いる場合にも、フィルタの次数を低くしたり、アンプのゲインを小さくしたりすることができる。また、送信用と受信用とそれぞれ適した無機圧電体および有機圧電体を用いることができ、大パワー送信を行い、被検体で発生した高調波を高利得で受信するハーモニックイメージングに好適な超音波探触子2を実現することができる。 以下に、前記3λ/4共振を行う受信用圧電層25,35として用いられる積層圧電体の具体的な作成方法および材料について詳述する。一般に、超音波振動子は、膜状の圧電材料から成る圧電層(「圧電体層」、「圧電膜」、「圧電体膜」ともいう。)を挟んで一対の電極を配設して構成され、複数の振動子(圧電素子)を前記のような1次元や2次元に配列して前記の超音波トランスデューサ20が構成される。その複数の振動子を配列する方法としては、1枚の振動子をバッキング層に貼付け、必要に応じて音響整合層等を貼付けた後に、ダイシングによって各素子に分割することで行うことができる。 複数に分割された積層振動子の各素子のアスペクト比は、アジマス方向の幅をW、高さをHとすると、W/Hは0.4〜0.6にすることが好ましい。これは、超音波が伝播する送受信方向の振動と、送受信方向に直交する走査方向(配列方向)の振動(横振動)との干渉を抑制し、振動子の配列方向の指向特性が狭くなることを回避でき、ビームの指向角度が制限されることなく、大きい偏向角においても良好な感度を保つことができるためである。 そして、複数の振動子が配列された長軸方向の所定数の振動子を口径として設定し、その口径に属する複数の振動子を駆動して被検体内の計測部位に超音波ビームを収束させて照射すると共に、その口径に属する、またはその口径に属する振動子とは別の複数の振動子により被検体から発する超音波の反射エコー等を受信して電気信号に変換する機能を有している。 前述の図8、図9、図12、図16または図20で示す積層圧電体を実現するにあたって、該積層圧電体がセラミックなどの無機材料から成る場合、圧電体層と電極層とが積層されて、焼成などによって一体化される。 一方、積層圧電体がPVDFなどの有機材料から成る場合、表裏両面の一部または全部に電極層が形成され、分極処理された有機材料のシートを積層し、層間を接着剤で接続することで一体化される。この際、電極層の接触面が互いに重なるようにすることが好ましい。これは振動子の駆動時や超音波の受信時に、不要な電界の形成を防ぎ、不均一な音場が形成されることを防ぐためである。なお、接着剤は絶縁性であるが、有機材料層および電極層の粗面(微細な凹凸)が、積層した際に互いに入り込み、隣接する電極同士は導通状態となる。積層接着後は、振動子端部の不要な部分をそぎ落とし、トランスデューサに搭載する大きさに成形する。その後、各圧電体を並列接続するにあたって、前述のように1組おきに電極の取出し方向を切替え、導電性ペーストで結線することで、バッキング層22,32側の両側部に、信号電極とGND電極とをそれぞれ引出すことができる。 積層圧電体の材料としては、従来から用いられている水晶、圧電セラミックスPZT、PZLTや、圧電単結晶PZN−PT、PMN−PT、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3、ZnO、AlNなどの薄膜などの無機圧電材料に加え、ポリフッ化ビニリデンやポリフッ化ビニリデン系共重合体、ポリシアン化ビニリデンやシアン化ビニリデン系共重合体、ナイロン9やナイロン11などの奇数ナイロン、芳香族ナイロン、脂環族ナイロン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシカルボン酸、セルロース系誘導体、あるいはポリウレアなどの有機圧電材料が挙げられる。さらに無機圧電材料と有機圧電材料、無機圧電材料と有機高分子材料を併用したコンポジット材料も挙げられる。図24および図25で示す超音波トランスデューサ21,31では、上述の無機材料を送信用圧電層23;33,34に用い、有機材料を受信用圧電層25;35に用いるものとする。 当該積層圧電体の1層の層厚は、設定する中心周波数(波長λ)にもよるが、加工性を考え、5〜200μmの範囲内にあることが好ましい。そして、各圧電体A1〜A3などの厚さが相互に等しいことで、各圧電体の製造が容易となるので、超音波トランスデューサ21,31の生産性を向上させることができる。 有機圧電材料から成る圧電層の形成方法には、塗布によって膜を形成する方法、蒸着(蒸着重合)によって膜を形成する方法が好ましい。前記の塗布方法としては、たとえばスピンコート法、ソルベントキャスト法、メルトキャスト法、メルトプレス法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、バーコート法等が挙げられる。また、蒸着(蒸着重合)方法としては、数百Pa以下程度の真空度で、単一、または複数の蒸発源よりモノマーを蒸発させ、基板上に付着、反応させることで膜を得ることができる。必要に応じて、適宜基板の温度調整が行われる。 上述のようにして作成された有機圧電体膜への電極層の形成は、先ずチタン(Ti)やクロム(Cr)などの下地金属をスパッタ法により0.02〜1.0μmの厚さに形成し、続いて金属元素を主体とする金属材料またはそれらの合金から成る金属材料に、必要に応じて一部絶縁材料を併せて、スパッタ法等の適当な方法で1〜10μmの厚さに形成することで行われる。その後、前記の圧電層(圧電体膜)の分極処理が行われる。前記の金属材料には、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)などが用いられる。電極形成は、上記のスパッタ法以外に、微粉末の金属粉末と低融点ガラスとを混合した導電ペーストを、スクリーン印刷やディッピング法、溶射法等で、塗布することで行うこともできる。 一方、図24の超音波トランスデューサ21では形成されないが、図25の超音波トランスデューサ31で形成される音響整合層33a,34a,35aや音響レンズ33b,34b,35bの形成方法は、以下の通りである。前記音響整合層33a,34a,35aは、振動子と生体組織との音響インピーダンスの差によって境界面での反射が発生し、自由振動が長く続いてしまうことを防止するために、振動子と生体組織との間に介在され、両者の中間的な音響インピーダンスを持つものである。この音響整合層を介在することで、前記境界面での反射が軽減されて自由振動が速やかに集束し、トランスデューサで送受信される超音波パルス幅が短くなって、生体内に超音波が効果的に伝搬されるようになる。 この音響整合層33a,34a,35aに用いられる材料としては、金属材料(アルミ、アルミ合金(例えばAl−Mg合金)、マグネシウム合金、等)、ガラス類(マコールガラス、ケイ酸塩ガラス、溶融石英、等)、炭素材料(カーボングラファイト、コッパーグラファイト、等)、樹脂材料(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン(PA6,PA6−6)、ポリフェニレンスルフィド(PPS、ガラス繊維入りも可)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ABC樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、等)等である。好ましくは、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に、充填剤として、亜鉛華、酸化チタン、シリカやアルミナ、ベンガラ、フェライト、酸化タングステン、酸化イットリビウム、硫酸バリウム、タングステン、モリブデン等を入れて成形したものを用いることができる。 前記音響整合層33a,34a,35aは、単層でもよいし、複数層から構成されてもよい。好ましくは、2層以上である。この音響整合層33a,34a,35aの厚さは、送信超音波の波長をλとすると、λ/4となるように定める必要がある(図24や図25では、送信用圧電層23;33,34内では、受信用圧電層25,35内より超音波の速度が速いので、厚くなっている)。これを満たさない場合、本来の共振周波数とは異なる周波数ポイントに複数の不要スプリアスが出現し、基本音響特性が大きく変動し、残響時間の増加や反射エコーの波形歪みによる感度やS/Nの低下を引き起こしてしまう。このような音響整合層33a,34a,35aの厚さとしては、概ね30μm〜500μmの範囲で用いられる。 また、バッキング層22,32は、超音波振動子の背面に配置され、後方へ放射された超音波の伝搬を抑制(吸収)する。これによってもまた、振動子側への不要な反射を抑え、パルス幅を短くすることができる。これらのバッキング層22,32に用いられる材料としては、天然ゴム、フェライトゴム、エポキシ樹脂に、酸化タングステンや酸化チタン、フェライト等の粉末を入れてプレス成形した材料、塩化ビニル、ポリビニルブチラール(PVB)、ABS樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、フッ素樹脂(PTFE)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体等の熱可塑性樹脂などを用いることができる。 好ましいバッキング材としては、ゴム系複合材料および/またはエポキシ樹脂複合材から成るものであり、その形状は、該圧電体や、圧電体を含むプローブヘッドの形状に応じて、適宜選択することができる。 前記のゴム系複合材としては、ゴム成分および充填剤を含有する物が好ましく、JIS K6253に準拠したスプリング硬さ試験機(デュロメータ硬さ)におけるタイプAデュロメータでA70からタイプDデュロメータでD70までの硬さを有するものであり、さらに、必要に応じて各種の他の配合剤を添加してもよい。 前記のゴム成分としては、たとえば、エチレンプロピレンゴム(EPDMまたはEPM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、EPDMとHNBRのブレンドゴム、EPDMとニトリルゴム(NBR)のブレンドゴム、NBRおよび/またはHNBRと高スチレンゴム(HSR)のブレンドゴム、EPDMとHSRブレンドゴムなどが好ましい。より好ましくは、エチレンプロピレンゴム(EPDMまたはEPM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、EPDMとHNBRのブレンドゴム、EPDMとニトリルゴム(NBR)のブレンドゴム、NBRおよび/またはHNBRと高スチレンゴム(HSR)とのブレンドゴム、EPDMとHSRとのブレンドゴムなどが挙げられる。本実施例のゴム成分は、加硫ゴムおよび熱可塑性エラストマーなどのゴム成分の1種を単独で使用してもよいが、ブレンドゴムのように2種以上のゴム成分をブレンドしたブレンドゴムを用いてもよい。 ゴム成分に添加される充填剤としては、通常使用されているものから比重の大きいものに至るまで、その配合量と共に様々な形で選ぶことができる。たとえば、亜鉛華、チタン白、ベンガラ、フェライト、アルミナ、三酸化タングステン、酸化イットリビウムなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、ハードクレイ、ケイソウ土などのクレイ類、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属塩類、ガラス粉末等やタングステン、モリブデン等の各種の金属系微粉末類、ガラスバルーン、ポリマーバルーン等の各種バルーン類が挙げられる。これらの充填剤は、種々の比率で添加することができるが、好ましくはゴム成分100質量部に対して、50〜3000質量部、より好ましくは100〜2000質量部、または300〜1500質量部程度である。また、これらの充填剤は、1種または2種以上を組み合わせて添加してもよい。 ゴム系複合材料には、さらに他の配合剤を必要に応じて添加することができ、このような配合剤としては、加硫剤、架橋剤、硬化剤、それらの助剤類、劣化防止剤、酸化防止剤、着色剤などが挙げられる。たとえば、カーボンブラック、二酸化ケイ素、プロセスオイル、イオウ(加硫剤)、ジクミルパーオキサイド(Dicup、架橋剤)、ステアリン酸などを配合することができる。これらの配合剤は必要に応じて使用されるものであるが、その使用量は、一般にゴム成分100質量部に対し、それぞれ1〜100質量部程度であるが全体的バランスや特性によって適宜変更することもできる。 前記のエポキシ樹脂複合剤としては、エポキシ樹脂成分および充填剤を含有するのが好ましく、さらに必要に応じて各種の配合剤を添加することもできる。エポキシ樹脂成分としては、たとえばビスフェノールAタイプ、ビスフェノールFタイプ、レゾールノボラックタイプ、フェノール変性ノボラックタイプ等のノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン構造含有タイプ、アントラセン構造含有タイプ、フルオレン構造含有タイプ等の多環芳香族型エポキシ樹脂、水添脂環型エポキシ樹脂、液晶性エポキシ樹脂などが挙げられる。本実施例のエポキシ樹脂成分は単独で用いても良いが、ブレンド樹脂のように2種類以上のエポキシ樹脂成分を混合して用いてもよい。 前記のエポキシ樹脂成分に添加される充填剤としては、前述のゴム成分に混合する充填剤と同様のものから、上記ゴム系複合剤を粉砕して作成した複合粒子まで、いずれも好ましく使用することができる。前記複合粒子としては、たとえばシリコーンゴム中にフェライトを充填したものを粉砕器にて粉砕し、200μm程度の粒径にしたものを挙げることができる。 前記エポキシ樹脂複合剤を使用する際には、さらに架橋剤を添加する必要があり、たとえばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン等の環状脂肪族ポリアミン、m−キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族アミン、ポリアミド樹脂、ピペリジン、NN−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール等の2級および3級アミン等、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート等のイミダゾール類、液状ポリメルカプタン、ポリスルフィド、無水フタル酸、無水トリメリット酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の酸無水物を挙げることができる。 このようにして成るバッキング層22,32の厚さは、概ね1〜10mmが好ましく、特に1〜5mmであることが好ましい。 一方、前記音響レンズ33b,34b,35bは、屈折を利用して超音波ビームを集束し、分解能を向上するために設けられるものであり、超音波を収束するとともに、被検体である生体とよく密着して、圧電層33,34,35側と生体との音響インピーダンス(密度×音速;(1.4〜1.6)×106kg/m2・sec)を整合させ、超音波の反射を少なくし得ること、レンズ自体の超音波減衰量が小さいことが必要条件とされている。このため、従来から、高分子材料をベースにして作られた音響レンズが設けられている。 ここに用いられるレンズ材料としては、その音速が人体のそれより充分小さくて、減衰が少なく、また音響インピーダンスが人体の皮膚の値に近いものが望まれる。レンズ材の音速が人体のそれより充分小さければ、レンズ形状を凸状となすことができ、診断を行う際に滑りが良くなり、安全に行うことができる。また、減衰が少なくなれば、感度良く超音波の送受信が行え、さらに、音響インピーダンスが人体の皮膚の値に近いものであれば、反射が小さくなり、換言すれば、透過率が大きくなるので、同様に超音波の送受信感度が良くなるからである。 本実施例において、音響レンズ33b,34b,35bを構成する素材としては、従来公知のシリコーン系ゴム、ブタジエン系ゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のホモポリマー、エチレンとプロピレンとを共重合させて成るエチレン−プロピレン共重合体ゴム等の共重合体ゴム等を用いることができる。これらのうち、シリコーン系ゴムを用いることが特に好ましい。 本実施例に使用されるシリコーン系ゴムとしては、シリコーンゴム、フッ素シリコーンゴム等が挙げられる。中でも、レンズ材の特性上、シリコーンゴムを使用することが好ましい。シリコーンゴムとは、Si−O結合から成る分子骨格を有し、そのSi原子に複数の有機基が主結合したオルガノポリシロキサンを言い、通常は、その主成分はメチルポリシロキサンで、全体の有機基のうち90%以上はメチル基である。メチル基に代えて水素原子、フェニル基、ビニル基、アリル基等を導入したものも使用することができる。当該シリコーンゴムは、たとえば高重合度のオルガノポリシロキサンに過酸化ベンゾイルなどの硬化剤(加硫剤)を混練し、加熱加硫し硬化させることにより得ることができる。必要に応じてシリカ、ナイロン粉末等の有機または無機の充填剤、硫黄、酸化亜鉛等の加硫助剤等を添加してもよい。 本実施例に使用されるブタジエン系ゴムとしては、ブタジエン単独またはブタジエンを主体とし、これに少量のスチロールまたはアクリロニトリルが共重合した共重合ゴム等が挙げられる。中でも、レンズ材の特性上、ブタジエンゴムを使用することが好ましい。ブタジエンゴムとは、共役二重結合を有するブタジエンの重合により得られる合成ゴムを言う。ブタジエンゴムは、共役二重結合を有するブタジエン単独が1.4〜1.2重合することにより得ることができる。ブタジエンゴムは、硫黄等により加硫させることが好ましい。 本実施例に係る音響レンズ33b,34b,35bにおいては、シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとを混合し加硫硬化させて得たものであってもよい。具体的には、シリコーンゴムとブタジエンゴムとを適宜割合で、混練ロールによって混合し、過酸化ベンゾイルなどの加硫剤を添加し、加熱加硫し、架橋(硬化)させることにより得ることができる。その際に、加硫助剤として、酸化亜鉛を添加することが好ましい。酸化亜鉛は、レンズ特性を落とさずに、加硫を促し、加硫時間を短縮できる。他に、着色剤や音響レンズの特性を損なわない範囲内で他の添加剤を添加してもよい。シリコーン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合割合は、その音響インピーダンスが人体に近似しているとともに、その音速が人体より小さく、減衰が少ないものを得るには、通常、1:1が好ましいが、当該混合割合は適宜変更可能である。 シリコーンゴムは、市販品として入手することができ、たとえば信越化学社製、KE742U、KE752U、KE931U、KE941U、KE951U、KE961U、KE850U、KE555U、KE575U等や、モメンティブパフォーマンスマテリアル社製、TSE221−3U、TE221−4U、TSE2233U、XE20−523−4U、TSE27−4U、TSE260−3U、TSE−260−4Uや、ダウコーニング東レ社製のSH35U、SH55UA、SH831U、SE6749U、SE1120USE4704Uなどを用いることができる。 なお、本実施例においては、上記シリコーン系ゴム等のゴム素材をベース(主成分)として、音速調整や密度調整等の目的に応じて、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの無機充填剤や、ナイロンなどの有機樹脂等を配合することもできる。また、当該音響レンズ33b,34b,35bの被検体表面に近い領域に、励起光を照射することで発光する物質、すなわち発光物質が添加されていてもよい。 一方、本実施例に用いる部材間の接着には、一般的に用いられるエポキシ系樹脂が好適である。市販のエポキシ接着剤の具体例としては、スリーエム カンパニー製のDP−420、DP−460、DP−460EG、セメダイン社製のエクセルエポ、EP001、EP008、EP330、EP331、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製のアラルダイト スタンダード(登録商標)、アラルダイト ラピッド(登録商標)、システムスリー社製のシステムスリーエポキシ、ゲルマジック、スリーボンド社製の2087L(高強度二液性エポキシ配合樹脂)、2082C(常温硬化型二液性エポキシ樹脂高せん断接着力タイプ)、2081D(軟質塩ビ用接着剤エポキシ系)、コニシ社製のEセットL、コトロニクス社製デュラルコ4525IP、7050、NM25、4461IP等を挙げることができる。ただし、ダイシング加工適性、薬剤耐性の面から、強固な接着性、低反応性、などが要求される。さらに、接着層は可能な限り薄くすることが求められるため、低粘度のものが好ましい。接着層の厚みとしては、0.5〜3μmが好ましい。 以下に、圧電体の作製方法について述べる。先ず、送信用圧電体23;33,34として用いられる無機圧電体である。成分原料であるCaCO3、La2O3、Bi2O3とTiO2、および副成分原料であるMnOを準備し、成分原料については、成分の最終組成が、(Ca0.97La0.03)Bi4.01Ti4O15となるように秤量した。 次に、純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて8時間混合し、充分に乾燥を行い、混合粉体を得た。得られた混合粉体を、仮成形し、空気中、800℃で2時間仮焼を行い、仮焼物を作製した。 次に、得られた仮焼物に純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて微粉砕を行い、乾燥することにより圧電セラミックス原料粉末を作製した。微粉砕においては、微粉砕を行う時間および粉砕条件を変えることにより、それぞれ粒子径100nmの圧電セラミックス原料粉末を得た。 それぞれ粒子径の異なる各圧電セラミックス原料粉末に、バインダーとして純水を6質量%添加し、プレス成形して、厚み100μmの板状仮成形体とし、この板状仮成形体を真空パックした後、235MPaの圧力でプレスにより成形した。 次に、上記の成形体を焼成し、最終焼結体の厚さは20μmである。なお、焼成温度は、それぞれ1100℃であった。その後、1.5×Ec(MV/m)以上の電界を1分間印加して、分極処理を施した。 次に、受信用圧電体25,35として用いられる有機圧電体の作製方法について述べる。本実施例に係る有機圧電材料は、前述の高分子材料を主たる構成成分として有する室温以上、融点から10℃低い温度以下の温度において、延伸可能なフィルム状であり、張力を一定の範囲に保ちながら熱処理され、続いて室温まで冷却される間に二段階目の延伸をして作製することができる。 本実施例に係るフッ化ビニリデンを含む有機圧電材料を振動子とする場合、フィルム状に形成し、ついで電気信号を入力するための表面電極を形成する。本実施例は、表面に形成した電極を介して電場を厚さ方向にかけ、圧迫しながら分極することを特徴とするが、表面に電極を形成せずに、圧迫部材の材料に接触する面に電圧をかけられる電極を設置し、同様に圧迫しながら材料の厚さ方向に電場をかけながら分極することでも効果は同じである。 フィルム形成は、溶融法、流延法など一般的な方法を用いることができる。ポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体の場合、フィルム状にしたのみで自発分極を持つ結晶型を有することが知られているが、さらに特性を上げるには、分子配列を揃える処理を加えることが有用である。手段としては、延伸製膜、分極処理などが挙げられる。 延伸製膜の方法については、種々の公知の方法を採用することができる。たとえば、上記高分子材料をエチルメチルケトン(MEK)などの有機溶媒に溶解した液をガラス板などの基板上に流延し、常温にて溶媒を乾燥させ、所望の厚さのフィルムを得て、このフィルムを室温で所定の倍率の長さに延伸する。当該延伸は、所定形状の有機圧電材料が破壊されない程度に、一軸あるいは二軸方向に行うことができる。延伸倍率は2〜10倍、好ましくは2〜6倍である。 なお、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体および/またはフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体において、230℃における溶融流動速度(Melt Flow Rate)が0.03g/min以下である。より好ましくは、0.02g/min以下、更に好ましくは、0.01g/min以下である高分子圧電体を使用すると、高感度な圧電体の薄膜が得られる。 一般に、フィルム状の材料を熱処理する場合、フィルム面内に効率的かつ均一に熱を与えるために、チャックやクリップなどで端部を支持して、所定温度環境下に置くことが好ましい。この際に、フィルム面にヒートプレート等の熱源を直接触れるような形態で熱を与えることは、加熱の際に収縮する材料の場合、平面性を損なうので好ましくない。むしろ、加熱の際の熱収縮に対し、わずかに弛緩処理を行うことの方が平面性に対しては効果がある。ここでいう弛緩処理とは、熱処理およびその終了後室温まで冷却される過程でフィルムにかかる収縮ないしは膨張しようとする力に追従しながら、フィルム両端の応力を変化させることである。弛緩処理は、フィルムが弛むことで平面性が保てなくなったり、応力が大きくなって破断したりしない限り、応力を緩和させるように縮めても、さらに張力をかける方向に延伸しない程度に広げてもよい。本実施例においては、延伸した方向をプラスと定めた場合、長さにして10%程度、フィルムが冷却中に伸びる場合は、弛みに追従するように、最大でも10%程度、二段階目の延伸を行う。この二段階目の延伸は、フィルムがピンと張った状態となるように、弛みを無くす程度に延伸チャックを稼動させることで行うものとする。それ以上の処理は、冷却中の延伸となり、フィルム破断のおそれがある。 本実施例の有機圧電材料の熱処理としては、フィルム面内に効率的かつ均一に熱を与えるために、チャックやクリップなどで端部を支持して、フィルムの融点よりも10℃低い温度を上限とした温度付近下に置くことが好ましい。たとえば、ポリフッ化ビニリデンを主成分とする有機圧電材料の場合、融点が150〜180℃にあることから、110〜140℃の温度で熱処理をすることが好ましい。また、その時間は、30分以上行うことで効果が発現し、長ければ長い程、結晶成長が促進されるが、時間とともに飽和することから、現実的には10時間程度、長くとも一昼夜程度である。この間もフィルムの平面性を維持するために、一定の張力がフィルムにかかるようにしておくことが好ましい。熱処理中の張力は、仕上がりの平面性の観点から0.1〜500kPaの範囲内が好ましく、より好ましくは、可能な限り小さい応力が好ましい。熱処理中のフィルムは柔らかく、張力がこの値よりも大きくなると、さらに延びてしまうため、熱処理の効果が失われてしまうだけでなく、破断が起こるおそれがある。 上述のようにして作成された有機圧電材料の両面には、電極が貼付けられた後に、絶縁部材による圧迫下で、その電極間に電圧が印加されて分極処理が施される。一般に、圧電材料は、電場応答に対して変形応答をする特性を持っている材料である。そのため、分極処理中における電場によっても変形応答する。すなわち、材料に電場を加えて分極処理を施すことで圧電材料としての特性を付与するその最中にも、電場によって変形してしまう。このため、材料はしばしば分極処理後に変形して、初期の形状を保たないことがある。そこで本実施例では、その分極中の変形を抑制するために、上述のように圧迫をしつつ、分極処理を行うことで、より変形の少ない、好ましくは分極処理前後での平面性が保たれ、かつ高い圧電特性を有する有機圧電材料を得るようにしている。 ここで、押圧力、すなわち、押圧する圧力の程度としては、少なくとも0.98MPa(10kg/cm2)以上、9.8MPa(100kg/cm2)以下であることが好ましい。これは、0.98MPa(10kg/cm2)以上とすることで変形を抑えることができ、9.8Ma(100kg/cm2)以下とすることで厚さ方向の変形の発生を防止したり、初期の厚さを保つことができ、もしくは分極処理の印加電流が短絡することを防止できるためである。本実施例に係る分極処理方法としては、公知の直流電圧印加処理、もしくは交流電圧印加処理等の電圧印加処理の方法が適用され得る。 以下に、有機圧電材料の具体的な例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。本実施例では、有機圧電材料として、P(VDF−TrFE)を用いる。その合成方法は、以下のとおりである。内容積14Lのステンレス製の耐圧オートクレーブに、フッ化ビニリデン(VDF;シグマアルドリッチ社製)70部(3000g)、3フッ化エチレン(TrFE;シグマアルドリッチ社製)30部、純水210部、メチルセルロース(東京化成社製)0.1部、ピロリン酸ナトリウム(太平化学産業社製)0.2部、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート(日油株式会社製)0.61部を仕込み、25℃で重合を開始した。3時間に酢酸エチル3.0部を添加し、重合反応を継続した。その後オートクレーブの内圧が25kg/cm2に低下した時点で、未反応物を回収し、重合物の脱水、水洗を順に3回繰り返した後、減圧乾燥を行った。収率は26%であった。得られたP(VDF−TrFE)について評価を行うと、分子量は255000、分散は2.4であった。 なお、重量平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、下記の要領で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出した。測定条件は以下の通りである。 溶媒 :30mMLiBr in N−メチルピロリドン 装置 :HLC−8220GPC(東ソー(株)製) カラム :TSKgel SuperAWM−H×2本(東ソー(株)製) カラム温度:40℃ 試料濃度 :1.0g/L 注入量 :40μl 流量 :0.5ml/min 校正曲線 :標準ポリスチレン:PS−1(Polymer Laboratories社製)Mw=580〜2,560,000までの9サンプルによる校正曲線を使用した。 組成については、1H−NMRにより決定した。得られたP(VDF−TrFE)の3wt%重ジメチルスルホキシド溶液を調製し、サンプル管に入れ、NMR(核磁気共鳴)装置( <http://www.varianjapan.com/product/nmr/001/index.html>Varian 400−MR、Varian社製)にて400MHzの周波数で解析した。得られたデータ(図26参照)の解析から、5.3−6.0ppm付近に現れるTrFEに特有のプロトンのシグナルと、2.3−3.3ppm付近に現れるVDFに特有のプロトンのシグナルとの比より、VDF/TrFE=3/1と決定した。 また同様にして、VDFのホモポリマーPVDFも重合した。GPC評価から分子量200000、分散2.1であった。 得られたP(VDF−TrFE)をメチルエチルケトン(関東化学社製)を溶媒とし、乾燥膜厚40±1μmとなるようにガラス板に塗布し、60℃で30分乾燥し、有機圧電膜を作製した。 そして、そのP(VDF−TrFE)(膜厚:40±1μm)の表面に、厚さ0.1μmのクロム電極を蒸着により形成した後、厚さ0.2μmの金電極を蒸着により形成し、有機圧電膜の両端部を除く部分に30kgf/cm2の圧力が均一に加わるようアクリル製の板で挟み込み、有機圧電膜の厚さ方向に電圧が印加されるように、有機圧電膜の一方の電極層をグランドに、他方をファンクションジェネレータ(20MHz Function/Arbitary Waveform Generator 33220A;Agilent Technology(株)製)とパワーアンプ(AC/DC AMPLIFIER HVA4321;nF社製)に接続し、0.1HzのSin波印加条件下、20秒おきに100Vずつ昇圧し、最大100MV/mの電場を印加し、ポーリング処理を施した。その後、電極に3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの1%(メタノール−pH4酢酸ナトリウム水溶液)混合溶液中に5分浸漬し、乾燥後水洗し、再度乾燥させ、表面処理を行った。 その有機圧電膜を3層または6層積層し、電極を含めて0.12mmの厚さで、表裏の電極のオーバーラップ部分(電圧印加範囲)を3.3mmとした。その積層の際、該有機圧電膜の分極方向を、3層では前述の図16の同方行、同方行、逆方行、6層では前述の図8の同方行、同方行、逆方行、逆方行、…とした。なお比較例として、3層で、前述の図18で示す同方行、逆方行、同方行のものや、無機材料のPZTを使用したものを作成した。積層時に用いた接着剤は、エポキシ系接着剤であり、30kgf/cm2の圧力で厚み方向に均一に加圧した。積層後、ダイシングにより7.5mm×50mmのサイズに切り出し、側面電極を形成し、積層圧電体1〜4および積層圧電体5,6を作成した。 以下に、これらの積層圧電体1〜6の評価方法について説明する。先ず、有機圧電体自体の評価を行った。それには、その積層圧電体1〜6の側面に、電極がパターンニングされたFPC、背面に3.0mm厚のバッキング層を順に接着し、超音波射出側に音響整合層(ML層)を接着した(積層圧電体1,2,5,6)。その後、長手方向に0.15mmピッチで30μmの厚みを有するブレードでダイシングを行った。さらに、パリレン処理にて3μm程度の絶縁層を設け、音響整合層を積層したものについては、さらにその上にレンズを接着した。その後、FPCにコネクタを接続し、こうして作成した超音波トランスデューサをケースに収め、送受兼用の超音波探触子1〜6を作成した。 その超音波探触子1〜6に、パルサーレシーバー(PANAMETRICS−NDT MODEL 5900PR、オリンパス社製、入力インピーダンス5000Ω)とオシロスコープ(TPS5032、Tektronix社製)を接続し、脱気した水の中に入れ、超音波放射面側に金属製の反射板を配置した。この超音波探触子1〜6の駆動は、符号化なしのパルス駆動の場合と、前記特開2003−225237号公報に記載の符号化パルスを用いる場合との2通り行った。受信した超音波は、電気信号に変換され、オシロスコープでその電圧波形を確認した。超音波探触子と反射板とのアライメントは、電圧波形の実効値が最大となる座標で決定した。アライメントの後、超音波の送受信を行い、図27が符号化なしの場合の受信波形であり、図28が符号化ありの場合の受信波形である。こうして得られたパルスについて、符号化パルスを用いたものはパルス圧縮を行い、符号化パルスを用いなかったものはそのままのFFT解析をかけた帯域特性から、基本波における感度を求めた。その結果を表1に示す。 本結果より、本発明に基づいた規則性を有する積層方法により作成した積層圧電体1〜4を搭載した超音波探触子1〜4を用いれば、生体内で反射した高周波を感度良く受信することが可能であり、高解像・高分解能を有する診断画像が得られることが理解される。 次に、これらの上述の積層圧電体1〜6を無機圧電体の上に搭載して、送受別体として評価を行った。すなわち、図24の構造であり、無機の送信用圧電層23から上層の受信用圧電層への音の通りを良くするため、中間層(IL(Intermediate Layer))24が存在する。すなわち、前述の積層圧電体1〜6の側面に、電極がパターンニングされたFPCを、背面側に、中心周波数5MHzのPZT層およびバッキング層を順に接着し、必要に応じて超音波射出側に音響整合層を接着した。その後、長手方向に0.15mmピッチで30μmの厚みを有するブレードでダイシングを行った。さらに、パリレン処理にて3μm程度の絶縁層を設け、前記音響整合層を積層したものについては、さらにその上にレンズを接着した。その後、FPCにコネクタを接続し、こうして作成した超音波トランスデューサをケースに収め、送受別体の超音波探触子1〜6を作成した。 その超音波探触子1〜6に、前述のパルサーレシーバーおよびオシロスコープを接続し、実験方法は上述と同様である。得られたパルスについて、符号化パルスを用いたものはパルス圧縮を行い、符号化パルスを用いなかったものはそのままのFFT解析をかけた帯域特性から、3次高調波帯域における感度を求めた。その結果を表2に示す。 本結果より、本発明に基づいた規則性を有する積層方法により作成した積層圧電体1〜4を搭載した超音波探触子1〜4を用いれば、生体内で生じた3次高調波を感度良く受信することが可能であり、高解像・高分解能を有する診断画像が得られることが理解される。 1 超音波診断装置 2 超音波探触子 3 ケーブル 4 診断装置本体 5 操作パネル 6 表示パネル 7 ホルダ7が設けられている。11 操作入力部12 送信部13 受信部14 信号処理部15 画像処理部16 表示部17 制御部18 電圧制御部19 参照信号記憶部20,21,31 超音波トランスデューサ22,32 バッキッング層23;33,34 送信用圧電層24 中間層25,35 受信用圧電層33a,34a,35a 音響整合層33b,34b,35b 音響レンズ33c,34c,35c 介在部材A1〜A3 圧電体 被検体内に超音波を送信し、前記被検体から来た超音波を受信する超音波トランスデューサと、 前記超音波トランスデューサに送信用の超音波信号を与える送信部と、 前記超音波トランスデューサで受信された受信信号に所定の信号処理を施す受信部と、 前記受信部からの受信信号に基づいて、前記被検体の内部状態を断層画像として画像化する画像処理部とを含み、 前記超音波トランスデューサは、 相互に厚みの等しい複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振モードで共振を行う積層型圧電体であって、 前記圧電体は3層積層されて、その層間および両端の圧電体の表面に電極を有し、 互いに隣り合う圧電体における離反側の電極を連結することで、前記各圧電体を相互に並列接続する2組の連絡配線を備え、 前記各圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では同方向、さらにその上の第3段目の圧電体では逆方向となるように配列されていることで、λ/4共振の場合に比べて、前記3λ/4共振モードでの感度を増大し、前記λ/4共振モードでの感度を減少することを特徴とする超音波診断装置。 被検体内に超音波を送信し、前記被検体から来た超音波を受信する超音波トランスデューサと、 前記超音波トランスデューサに送信用の超音波信号を与える送信部と、 前記超音波トランスデューサで受信された受信信号に所定の信号処理を施す受信部と、 前記受信部からの受信信号に基づいて、前記被検体の内部状態を断層画像として画像化する画像処理部とを含み、 前記超音波トランスデューサは、 相互に厚みの等しい圧電体を2層積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振モードで共振を行う積層型圧電体であって、 前記各圧電体は、その層間および各外表面に電極を有し、前記外表面の電極を連結することで、前記各圧電体を相互に並列接続する連絡配線を備え、 前記両圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、互いに同方向となるように配列されていることで、λ/4共振の場合に比べて、前記3λ/4共振モードでの感度を増大し、前記λ/4共振モードでの感度を減少することを特徴とする超音波診断装置。 被検体内に超音波を送信し、前記被検体から来た超音波を受信する超音波トランスデューサと、 前記超音波トランスデューサに送信用の超音波信号を与える送信部と、 前記超音波トランスデューサで受信された受信信号に所定の信号処理を施す受信部と、 前記受信部からの受信信号に基づいて、前記被検体の内部状態を断層画像として画像化する画像処理部とを含み、 前記超音波トランスデューサは、 相互に厚みの等しい複数の圧電体を4層以上積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により所望共振モードで共振を行う積層型圧電体であって、 前記各圧電体は、その層間および両端の圧電体の表面に電極を有し、 互いに隣り合う圧電体における離反側の電極を連結することで、前記複数の圧電体を相互に並列接続する2組の連絡配線を備え、 前記各圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では同方向、さらにその上の第3および第4段目の圧電体では逆方向となる周期性を持つように1または複数組が配列されていることで、λ/4共振の場合に比べて、前記所望共振モードでの感度を増大し、前記λ/4共振モードでの感度を減少することを特徴とする超音波診断装置。 前記超音波トランスデューサにおいて、前記積層型圧電体は超音波の送受信に共用され、該超音波トランスデューサは、3λ/4共振モードによる超音波を送信することを特徴とする請求項1または2記載の超音波診断装置。 前記超音波トランスデューサにおいて、前記積層型圧電体は第1の圧電体として超音波の受信に用いられ、該超音波トランスデューサは、λ/4共振モードによる基本波成分の超音波を送信する第2の圧電体をさらに備え、背後層側から、前記第2の圧電体および第1の圧電体の順で積層されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波診断装置。 前記超音波トランスデューサにおいて、前記積層型圧電体は第1の圧電体として超音波の受信に用いられ、該超音波トランスデューサは、λ/4共振モードによる基本波成分の超音波を送信する2つの第2の圧電体をさらに備え、前記第1の圧電体の両側に、前記第2の圧電体が並設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波診断装置。 前記第1の圧電体は有機高分子を主成分とする材料から成ることを特徴とする請求項5または6記載の超音波診断装置。 前記第2の圧電体は無機材料から成り、前記第1の圧電体は有機高分子を主成分とする材料から成り、前記第1の圧電体と被検体との間に音響整合を目的とした部材を介在しないことを特徴とする請求項5記載の超音波診断装置。 前記送信部は、送信信号を符号化されたパルス電圧として前記積層型圧電体に与え、前記受信部は、前記積層型圧電体で受信した信号をパルス圧縮処理を行い、前記画像処理部に画像化させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。 【課題】医療用超音波診断装置において、超音波トランスデューサに多層圧電体を用いて高調波を送受波するにあたって、高調波成分を増加させると同時に基本波成分を減衰させる。【解決手段】3層圧電体を用いて3次高調波を送受波するにあたって、その3層を分極方向を揃えて積層するのではなく、一部の向きを逆方向にするとともに、電極引回しを工夫する。具体的には、互いに隣り合う圧電体の離反側の面の電極同士を連絡して2つの端子にそれぞれ並列接続する。そして、圧電体1の残留分極の向き(+P)を基準として、圧電体2を同方向(+P)、圧電体3を逆方向(−P)とすると、端子間の電気変位は、λ/4共振ではその感度が打ち消され、3λ/4共振においては強調される。こうして、フィルタやアンプを用いることなく、基本波を抑え、3次調波を抽出することができる。【選択図】図16