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タイトル:公開特許公報(A)_グラビア印刷版の銅めっき皮膜の機械的彫刻適性および剥離適性の判断方法
出願番号:2010082333
年次:2011
IPC分類:G01N 3/08,C25D 21/12,B41N 1/06,B41N 1/20


特許情報キャッシュ

久保田 英敏 JP 2011214947 公開特許公報(A) 20111027 2010082333 20100331 グラビア印刷版の銅めっき皮膜の機械的彫刻適性および剥離適性の判断方法 凸版印刷株式会社 000003193 久保田 英敏 G01N 3/08 20060101AFI20110930BHJP C25D 21/12 20060101ALI20110930BHJP B41N 1/06 20060101ALN20110930BHJP B41N 1/20 20060101ALN20110930BHJP JPG01N3/08C25D21/12 CB41N1/06B41N1/20 2 3 OL 9 2G061 2H114 2G061AA01 2G061AB01 2G061BA01 2G061BA07 2G061CA03 2G061CB01 2G061EA03 2G061EA04 2G061EC03 2H114AA03 2H114AA09 2H114AA17 2H114AA27 2H114DA04 2H114DA72 2H114EA02 2H114FA02 本発明は、グラビア印刷用シリンダー表面の銅めっき皮膜の機械的彫刻適性及び落版時のバラードの剥離適性を判断する方法に関する。 グラビア印刷における印刷版製造工程の概要を図1に示す。まず、表面(最外層)が銅(下地銅)、中間層がニッケル、そして最も芯に近い層が鉄またはアルミニウムであるシリンダー(グラビア印刷用版胴)の、下地銅の表面を研磨等で整備する(ステップS1)。 その後、剥離層を形成するためのバラード剥離液をシリンダー表面に塗布し(ステップS2)、その後、銅めっきを施して銅めっき皮膜を形成する(ステップS3)。銅めっき後、機械的彫刻方法(ステップS4)または腐蝕法(ステップS5)により、銅めっき皮膜にセルと呼ばれる多数の窪みを形成する。 セル形成後、シリンダー表面の銅めっき皮膜に、グラビア印刷工程における耐刷性を持たせるためにクロムめっきを施し(ステップS6)、グラビア印刷用版が完成する(ステップS7)。完成したグラビア印刷用版は、グラビア印刷工程で使用される(ステップS8)。 ここで、銅めっき皮膜形成の前に、剥離層を形成しているのは、グラビア印刷工程終了後の落版時に銅めっき皮膜を剥離して取り除くことができるようにするためである。この銅めっき皮膜をシリンダーの下地銅から剥離(ステップS9)したものをバラードと呼ぶ。 この剥離工程が完了したシリンダーは、再度、下地銅の表面整備(ステップS1)工程に戻って、再利用される。このように、銅めっき皮膜形成の前に剥離層を形成しておくと、シリンダーの下地銅を切削する手間が省け、かつシリンダーを再利用できる、という利点がある。 なお、機械的彫刻方法においては銅めっき皮膜の表面をダイヤモンドの針で彫刻して、印刷される絵柄に対応した位置に多数のセルを形成する。機械的彫刻による方法は、セル径と版深によって色の濃淡を表現できることから、印刷時にライト部の着肉が安定し、階調性のある印刷物を得ることができるという特徴がある。 機械的彫刻方法に適した機械的加工適性を有する銅めっき皮膜を得るためには、各種の添加剤を添加した硫酸銅めっき浴を使用するのが一般的である。 上記の機械的加工適性を有する銅めっき皮膜を得るための、硫酸銅めっき浴への添加成分(添加剤)としては、表面の光沢性の向上を目的としたブライトナー及びポリマー、レベリング性の向上を目的としたレベラーのほかに、機械的加工適性のある物理的性質を確保するためのハードナーと呼ばれる添加剤などがある。 グラビア用印刷版の機械的彫刻適性に関する物理的性質評価方法としては、従来から銅めっき皮膜のビッカース硬さ等の押し込み硬さによる方法が行なわれている。このビッカース硬さによる評価では、彫刻される銅めっき皮膜の適正な範囲は約180〜230とされているが、上記ハードナーなしの硫酸銅めっき浴では、このビッカース硬さの値の範囲を実現することは困難であった。 ビッカース硬さが上記の適正範囲より小さい銅めっき皮膜の場合、セルの大きさが目的とする大きさよりも大きくなってしまう、セル形状が崩れてしまう、バリが発生してしまうなどの現象が見られ、このビッカース硬さの評価方法による判断は概ね妥当なものとされている。 上記添加剤の管理のための手段として、簡易的にはハルセル試験による目視評価が行なわれている。この評価方法は、光沢範囲の変化によって添加剤の消耗の度合いを推測することができるが、定量的に評価する方法としては向いていない。 浴中濃度の直接定量としては、工業的にはレベラー、ブライトナー成分の一部についてのみサイクリックボルタンメトリーストリッピング法、高速液体クロマトグラフィー法、イオンクロマトグラフィー法、キャピラリー電気泳動法が用いられている(例えば、非特許文献1、非特許文献2、特許文献1を参照)。 一方、ハードナーの浴中濃度の直接定量については、ハードナーの一成分である有機窒素含有ポリマーの添加濃度に着目して分析、管理するという従来技術がある(特許文献2)。しかし、種々の添加剤を含むめっき液中のハードナーの濃度を直接定量することが可能な分析手法は未だ確立されていない。 現状では、ハードナーを所定量添加した場合に、銅めっき皮膜のビッカース硬さがどのくらい増加するかを測定して、ハードナーの浴中濃度を推定し、それによってハードナーの添加量を管理する方法が行なわれている。 ハードナーの浴中濃度が比較的低い領域においては、ハードナーの浴中濃度が増加するにつれて、銅めっき皮膜のビッカース硬さも、所定の割合で増加するため、上記のようなハードナーの添加量管理方法を適用することが可能である。 しかしながら、ハードナーの浴中濃度が高い領域においては、ハードナーの浴中濃度が増加しても、銅めっき皮膜のビッカース硬さはほとんど増加しない領域がある。このようなハードナーの高濃度領域においては上記のようなハードナーの添加量管理方法を適用することは困難で、したがって、銅めっき皮膜の機械的彫刻適性の判断のためには測定精度不足であり、使用できなかった。 ハードナーが適正値以上に添加されると、光沢異常やキズ状欠陥の発生といっためっき皮膜の外観の欠陥が発生するという問題があった。 また、銅めっき皮膜が異常に硬い場合、彫刻針の磨耗度が大きくなり、彫刻針の寿命を縮めてしまうという問題があった。さらに彫刻中に、彫刻針が欠けてしまい正常なセルを形成できず、損版になってしまうという問題もあった。 さらに、ハードナーが適正値以上に添加されると、銅めっき皮膜(およびバラード)を構成する銅の展性や延性が失われてしまう。そのような場合、落版時にバラードを引っ張り剥がす際、バラードが最後まで剥離できないで途中で切れてしまい、バラード剥離に手間がかかってしまうという問題があった。このバラード剥離性については、従来のビッカース硬さでの評価方法では判断することはできなかった。特開2004−53450号公報特許第4432422号小谷秀人、「CVS分析装置による電解銅めっき液の分析」、表面技術 、社団法人表面技術協会、2003年4月、第54巻、第4号、p.278−280柳井博子、「キャピラリー電気泳動装置の原理とめっき液組成の分析事例」、表面技術、社団法人表面技術協会、2003年4月、第54巻、第4号、p.263−267 本発明は、かかる従来の問題点を鑑みなされたものであり、その課題とするところは、従来のビッカース硬度による評価法では判断できなかった銅めっき皮膜の機械的彫刻適性及びバラードの剥離適性を判断する方法を提供することにある。 本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、グラビア印刷等に使用されるバラードめっきを施されたシリンダー表面の銅めっき皮膜の機械的彫刻適性を判断する方法において、該銅めっき皮膜より得られたダンベル形状の銅片を引張試験機にて一定速度で破断するまで引っ張ったときに得られる応力-伸び曲線の抗張力及び伸び率から、機械的彫刻適性を判断する方法としたものである。 また、請求項2の発明では、グラビア印刷等に使用されるバラード銅めっきを施されたシリンダー表面のバラードの剥離適性を判断する方法において、該銅めっき皮膜より得られたダンベル形状の銅片を引張試験機にて一定速度で破断するまで引っ張ったときに得られる応力-伸び曲線の伸び率から、バラードの剥離適性を判断する方法としたものである。 本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。 即ち、上記請求項に係る発明によれば、めっき皮膜の引張試験物性から、この銅めっき皮膜の物理的性質の評価を、従来のビッカース硬さ等の押し込み硬さに代え、引張試験における応力-伸び曲線の特性値から求められる抗張力及び伸び率としたものので、押込み硬さでは認識できなかった、より詳細な情報を得ることができる。この情報により銅めっき皮膜の彫刻適性を判断できるようになった。 また、従来ビッカース硬さのみでは分からなかったバラードの剥離適性が、上記引張試験により得られる伸び率より、判断できるようになった。 さらに究極的には、引張試験による得られる抗張力及び伸び率を管理し、その値に応じてハードナーの添加量を制御することによって、機械的彫刻適性及びバラードの剥離適性の良好な銅めっき皮膜を製造することができた。グラビア印刷用版の製造工程の説明図。ダンベル形状のバラード銅片の上面模式図応力−伸び曲線の一例を示すグラフ実施例1における週ごとの抗張力の推移のグラフ実施例1における週ごとの伸び率の推移のグラフ 以下に本発明の実施形態を説明する。 まず、シリンダーの表面に銅めっき皮膜を形成する。銅めっき皮膜を形成するための銅めっき浴としては、硫酸銅めっき浴を用いる。特に断りのない限り、その銅めっき浴の組成としては、硫酸銅五水和物200〜240g/L、硫酸40〜80g/L、塩化ナトリウム180〜240mg/Lをイオン交換水に溶解したものに、各種の添加剤を加えたものが用いられる。 表1には、銅めっき浴に添加される、代表的な銅めっき添加剤の一覧を示した。 銅めっき皮膜形成の後、バラードをシリンダーから剥離して、そのバラードの一部からダンベル形状(図2参照)の試験片を断裁する。このバラード試験片の厚みを測定後、0.006m/minの一定速度で引張試験を行い、得られた応力−伸び曲線から、抗張力、伸び率を読み取る。ここで、伸び率とは試験片が破断するまで試験片が伸びた値を、試験片の元の長さで除した値である。 応力−伸び曲線の一例を図3に示す。図3の中の、伸び率の範囲A内と抗張力の範囲B内が、本発明の機械的彫刻適性及びバラードの剥離適性を判断する管理範囲であり、抗張力及び伸び率がこの範囲A内および範囲B内であれば、機械的彫刻適性及びバラードの剥離適性が適正であると判断する。 伸び率が管理範囲Aより小さいか、または抗張力が管理範囲Bより大きい場合、銅めっき皮膜は非常に脆くて硬い状態であり、機械彫刻適性及びバラードの剥離適性が無いと判断することができる。伸び率が管理範囲Aより大きいか、または抗張力が管理範囲Bより小さい場合、銅めっき皮膜は、柔らかく粘り気のある状態であり機械彫刻適性が無いと判断することができる。 以下に、本発明の具体的実施例について説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 硫酸銅濃度200〜240g/L、硫酸濃度40〜80g/L、塩化物イオン濃度90〜130mg/Lに管理された溶液に、表1に示す大和特殊株式会社製の添加剤(コスモG)を添加し、浴温度を45℃に保ちグラビア版シリンダーに銅めっきを行なった。大和特殊株式会社製のコスモGは、ハードナーを含むコスモG1と、ブライトナー等を含むコスモG2の2種類がある。各々の添加剤は、浴中にて電解により消耗されるので、通電量に応じて一定量補給される。 1週間ごとにテストめっきを行ない、得られた銅めっき皮膜を剥離してバラードを作製する。バラード試験片を断裁して、上記方法で引張試験を行い、応力−伸び曲線を得た。得られた銅めっき皮膜が管理範囲より外れ非常に硬い場合、一時的にコスモG1の補給を停止し過剰なハードナー成分を消耗させた後、コスモG1の補給量を前回より下げて補給を再開した。このようにして、応力−伸び曲線における抗張力及び伸び率が安定するコスモG1の最適な補給量を模索した。 週ごとの引張試験における抗張力を図4に、伸び率を図5に示した。各々のグラフは、抗張力及び伸び率の週ごとの変化量が容易にわかるように一部拡大して示してある。また、表2には週ごとのコスモG1の補給量と彫刻針の欠けによる損版率を示した。損版率は、シリンダーの生産本数に対する針欠けによる損版の本数の割合である。 コスモG1を80ml/kAhで補給を行なったときには、抗張力も高く適正以上に硬い銅質といえる。また、バラードの剥離適性も芳しくなかった。 コスモG1の補給量を徐々に下げていったところ、50ml/kAhにした11週目以降、抗張力と伸び率が安定し、矢印の示す管理範囲内に収まった。表2からわかるように、彫刻針の欠けによる損版率も0.33%と減少した。また、バラードの剥離適性も良好であった。 本発明は、出版・包装・建材分野をはじめして広く用いられているグラビア印刷用シリンダーの銅めっき皮膜の表面概観及び機械彫刻適性の安定化、ならびにバラードの剥離適性の安定化に用いられる。A・・・伸び率の管理範囲B・・・抗張力の管理範囲 グラビア印刷等に使用されるバラード銅めっきが施されたシリンダー表面の銅めっき皮膜の機械的彫刻適性を判断する方法において、該銅めっき皮膜より得られたダンベル形状の銅片を引張試験機にて一定速度で破断するまで引っ張ったときに得られる応力-伸び曲線の抗張力及び伸び率から、機械的彫刻適性を判断する方法。 グラビア印刷等に使用されるバラード銅めっきが施されたシリンダー上のバラード銅の剥離適性を判断する方法において、該銅めっき皮膜より得られたダンベル形状の銅片を引張試験機にて一定速度で破断するまで引っ張ったときに得られる応力-伸び曲線の伸び率から、バラードの剥離適性を判断する方法。 【課題】本発明は、従来のビッカース硬度による評価法では判断できなかった機械的彫刻適性及びバラードの剥離適性を判断する方法を提供することを目的とする。【解決手段】従来のビッカース硬さ等押し込み硬さによる管理に代え、銅めっき皮膜より得られたダンベル形状の銅片を引張試験機にて一定速度で破断するまで引っ張ったときに得られる応力-伸び曲線の抗張力及び伸び率から、機械的彫刻適性及びバラードの剥離適性を判断する方法としたものである。【選択図】図3


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特許公報(B2)_グラビア印刷版の銅めっき皮膜の機械的彫刻適性および剥離適性の判断方法

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タイトル:特許公報(B2)_グラビア印刷版の銅めっき皮膜の機械的彫刻適性および剥離適性の判断方法
出願番号:2010082333
年次:2014
IPC分類:G01N 3/08,C25D 21/12,B41N 1/06,B41N 1/20


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久保田 英敏 JP 5526943 特許公報(B2) 20140425 2010082333 20100331 グラビア印刷版の銅めっき皮膜の機械的彫刻適性および剥離適性の判断方法 凸版印刷株式会社 000003193 久保田 英敏 20140618 G01N 3/08 20060101AFI20140529BHJP C25D 21/12 20060101ALI20140529BHJP B41N 1/06 20060101ALN20140529BHJP B41N 1/20 20060101ALN20140529BHJP JPG01N3/08C25D21/12 CB41N1/06B41N1/20 G01N 3/00−3/62 G01N 17/00−19/10 C25D 1/00−21/22 B41N 1/00−1/24 特開2006−328493(JP,A) 特開平11−173973(JP,A) 特開2002−221474(JP,A) 2 2011214947 20111027 9 20130220 阿部 知 本発明は、グラビア印刷用シリンダー表面の銅めっき皮膜の機械的彫刻適性及び落版時のバラードの剥離適性を判断する方法に関する。 グラビア印刷における印刷版製造工程の概要を図1に示す。まず、表面(最外層)が銅(下地銅)、中間層がニッケル、そして最も芯に近い層が鉄またはアルミニウムであるシリンダー(グラビア印刷用版胴)の、下地銅の表面を研磨等で整備する(ステップS1)。 その後、剥離層を形成するためのバラード剥離液をシリンダー表面に塗布し(ステップS2)、その後、銅めっきを施して銅めっき皮膜を形成する(ステップS3)。銅めっき後、機械的彫刻方法(ステップS4)または腐蝕法(ステップS5)により、銅めっき皮膜にセルと呼ばれる多数の窪みを形成する。 セル形成後、シリンダー表面の銅めっき皮膜に、グラビア印刷工程における耐刷性を持たせるためにクロムめっきを施し(ステップS6)、グラビア印刷用版が完成する(ステップS7)。完成したグラビア印刷用版は、グラビア印刷工程で使用される(ステップS8)。 ここで、銅めっき皮膜形成の前に、剥離層を形成しているのは、グラビア印刷工程終了後の落版時に銅めっき皮膜を剥離して取り除くことができるようにするためである。この銅めっき皮膜をシリンダーの下地銅から剥離(ステップS9)したものをバラードと呼ぶ。 この剥離工程が完了したシリンダーは、再度、下地銅の表面整備(ステップS1)工程に戻って、再利用される。このように、銅めっき皮膜形成の前に剥離層を形成しておくと、シリンダーの下地銅を切削する手間が省け、かつシリンダーを再利用できる、という利点がある。 なお、機械的彫刻方法においては銅めっき皮膜の表面をダイヤモンドの針で彫刻して、印刷される絵柄に対応した位置に多数のセルを形成する。機械的彫刻による方法は、セル径と版深によって色の濃淡を表現できることから、印刷時にライト部の着肉が安定し、階調性のある印刷物を得ることができるという特徴がある。 機械的彫刻方法に適した機械的加工適性を有する銅めっき皮膜を得るためには、各種の添加剤を添加した硫酸銅めっき浴を使用するのが一般的である。 上記の機械的加工適性を有する銅めっき皮膜を得るための、硫酸銅めっき浴への添加成分(添加剤)としては、表面の光沢性の向上を目的としたブライトナー及びポリマー、レベリング性の向上を目的としたレベラーのほかに、機械的加工適性のある物理的性質を確保するためのハードナーと呼ばれる添加剤などがある。 グラビア用印刷版の機械的彫刻適性に関する物理的性質評価方法としては、従来から銅めっき皮膜のビッカース硬さ等の押し込み硬さによる方法が行なわれている。このビッカース硬さによる評価では、彫刻される銅めっき皮膜の適正な範囲は約180〜230とされているが、上記ハードナーなしの硫酸銅めっき浴では、このビッカース硬さの値の範囲を実現することは困難であった。 ビッカース硬さが上記の適正範囲より小さい銅めっき皮膜の場合、セルの大きさが目的とする大きさよりも大きくなってしまう、セル形状が崩れてしまう、バリが発生してしまうなどの現象が見られ、このビッカース硬さの評価方法による判断は概ね妥当なものとされている。 上記添加剤の管理のための手段として、簡易的にはハルセル試験による目視評価が行なわれている。この評価方法は、光沢範囲の変化によって添加剤の消耗の度合いを推測することができるが、定量的に評価する方法としては向いていない。 浴中濃度の直接定量としては、工業的にはレベラー、ブライトナー成分の一部についてのみサイクリックボルタンメトリーストリッピング法、高速液体クロマトグラフィー法、イオンクロマトグラフィー法、キャピラリー電気泳動法が用いられている(例えば、非特許文献1、非特許文献2、特許文献1を参照)。 一方、ハードナーの浴中濃度の直接定量については、ハードナーの一成分である有機窒素含有ポリマーの添加濃度に着目して分析、管理するという従来技術がある(特許文献2)。しかし、種々の添加剤を含むめっき液中のハードナーの濃度を直接定量することが可能な分析手法は未だ確立されていない。 現状では、ハードナーを所定量添加した場合に、銅めっき皮膜のビッカース硬さがどのくらい増加するかを測定して、ハードナーの浴中濃度を推定し、それによってハードナーの添加量を管理する方法が行なわれている。 ハードナーの浴中濃度が比較的低い領域においては、ハードナーの浴中濃度が増加するにつれて、銅めっき皮膜のビッカース硬さも、所定の割合で増加するため、上記のようなハードナーの添加量管理方法を適用することが可能である。 しかしながら、ハードナーの浴中濃度が高い領域においては、ハードナーの浴中濃度が増加しても、銅めっき皮膜のビッカース硬さはほとんど増加しない領域がある。このようなハードナーの高濃度領域においては上記のようなハードナーの添加量管理方法を適用することは困難で、したがって、銅めっき皮膜の機械的彫刻適性の判断のためには測定精度不足であり、使用できなかった。 ハードナーが適正値以上に添加されると、光沢異常やキズ状欠陥の発生といっためっき皮膜の外観の欠陥が発生するという問題があった。 また、銅めっき皮膜が異常に硬い場合、彫刻針の磨耗度が大きくなり、彫刻針の寿命を縮めてしまうという問題があった。さらに彫刻中に、彫刻針が欠けてしまい正常なセルを形成できず、損版になってしまうという問題もあった。 さらに、ハードナーが適正値以上に添加されると、銅めっき皮膜(およびバラード)を構成する銅の展性や延性が失われてしまう。そのような場合、落版時にバラードを引っ張り剥がす際、バラードが最後まで剥離できないで途中で切れてしまい、バラード剥離に手間がかかってしまうという問題があった。このバラード剥離性については、従来のビッカース硬さでの評価方法では判断することはできなかった。特開2004−53450号公報特許第4432422号小谷秀人、「CVS分析装置による電解銅めっき液の分析」、表面技術 、社団法人表面技術協会、2003年4月、第54巻、第4号、p.278−280柳井博子、「キャピラリー電気泳動装置の原理とめっき液組成の分析事例」、表面技術、社団法人表面技術協会、2003年4月、第54巻、第4号、p.263−267 本発明は、かかる従来の問題点を鑑みなされたものであり、その課題とするところは、従来のビッカース硬度による評価法では判断できなかった銅めっき皮膜の機械的彫刻適性及びバラードの剥離適性を判断する方法を提供することにある。 本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、グラビア印刷等に使用されるバラードめっきを施されたシリンダー表面の銅めっき皮膜の機械的彫刻適性を判断する方法において、該銅めっき皮膜より得られたダンベル形状の銅片を引張試験機にて一定速度で破断するまで引っ張ったときに得られる応力−伸び曲線の抗張力及び伸び率を求め、前記抗張力及び伸び率の値が特定の管理範囲内にともに入っている時に、機械的彫刻適性が適正であると判断する方法としたものである。 また、請求項2の発明では、グラビア印刷等に使用されるバラード銅めっきを施されたシリンダー表面のバラードの剥離適性を判断する方法において、該銅めっき皮膜より得られたダンベル形状の銅片を引張試験機にて一定速度で破断するまで引っ張ったときに得られる応力−伸び曲線の伸び率を求め、前記伸び率の値が特定の管理範囲内に入っている時に、バラードの剥離適性が適正であると判断する方法としたものである。 本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。 即ち、上記請求項に係る発明によれば、めっき皮膜の引張試験物性から、この銅めっき皮膜の物理的性質の評価を、従来のビッカース硬さ等の押し込み硬さに代え、引張試験における応力-伸び曲線の特性値から求められる抗張力及び伸び率としたものので、押込み硬さでは認識できなかった、より詳細な情報を得ることができる。この情報により銅めっき皮膜の彫刻適性を判断できるようになった。 また、従来ビッカース硬さのみでは分からなかったバラードの剥離適性が、上記引張試験により得られる伸び率より、判断できるようになった。 さらに究極的には、引張試験による得られる抗張力及び伸び率を管理し、その値に応じてハードナーの添加量を制御することによって、機械的彫刻適性及びバラードの剥離適性の良好な銅めっき皮膜を製造することができた。グラビア印刷用版の製造工程の説明図。ダンベル形状のバラード銅片の上面模式図応力−伸び曲線の一例を示すグラフ実施例1における週ごとの抗張力の推移のグラフ実施例1における週ごとの伸び率の推移のグラフ 以下に本発明の実施形態を説明する。 まず、シリンダーの表面に銅めっき皮膜を形成する。銅めっき皮膜を形成するための銅めっき浴としては、硫酸銅めっき浴を用いる。特に断りのない限り、その銅めっき浴の組成としては、硫酸銅五水和物200〜240g/L、硫酸40〜80g/L、塩化ナトリウム180〜240mg/Lをイオン交換水に溶解したものに、各種の添加剤を加えたものが用いられる。 表1には、銅めっき浴に添加される、代表的な銅めっき添加剤の一覧を示した。 銅めっき皮膜形成の後、バラードをシリンダーから剥離して、そのバラードの一部からダンベル形状(図2参照)の試験片を断裁する。このバラード試験片の厚みを測定後、0.006m/minの一定速度で引張試験を行い、得られた応力−伸び曲線から、抗張力、伸び率を読み取る。ここで、伸び率とは試験片が破断するまで試験片が伸びた値を、試験片の元の長さで除した値である。 応力−伸び曲線の一例を図3に示す。図3の中の、伸び率の範囲A内と抗張力の範囲B内が、本発明の機械的彫刻適性及びバラードの剥離適性を判断する管理範囲であり、抗張力及び伸び率がこの範囲A内および範囲B内であれば、機械的彫刻適性及びバラードの剥離適性が適正であると判断する。 伸び率が管理範囲Aより小さいか、または抗張力が管理範囲Bより大きい場合、銅めっき皮膜は非常に脆くて硬い状態であり、機械彫刻適性及びバラードの剥離適性が無いと判断することができる。伸び率が管理範囲Aより大きいか、または抗張力が管理範囲Bより小さい場合、銅めっき皮膜は、柔らかく粘り気のある状態であり機械彫刻適性が無いと判断することができる。 以下に、本発明の具体的実施例について説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 硫酸銅濃度200〜240g/L、硫酸濃度40〜80g/L、塩化物イオン濃度90〜130mg/Lに管理された溶液に、表1に示す大和特殊株式会社製の添加剤(コスモG)を添加し、浴温度を45℃に保ちグラビア版シリンダーに銅めっきを行なった。大和特殊株式会社製のコスモGは、ハードナーを含むコスモG1と、ブライトナー等を含むコスモG2の2種類がある。各々の添加剤は、浴中にて電解により消耗されるので、通電量に応じて一定量補給される。 1週間ごとにテストめっきを行ない、得られた銅めっき皮膜を剥離してバラードを作製する。バラード試験片を断裁して、上記方法で引張試験を行い、応力−伸び曲線を得た。得られた銅めっき皮膜が管理範囲より外れ非常に硬い場合、一時的にコスモG1の補給を停止し過剰なハードナー成分を消耗させた後、コスモG1の補給量を前回より下げて補給を再開した。このようにして、応力−伸び曲線における抗張力及び伸び率が安定するコスモG1の最適な補給量を模索した。 週ごとの引張試験における抗張力を図4に、伸び率を図5に示した。各々のグラフは、抗張力及び伸び率の週ごとの変化量が容易にわかるように一部拡大して示してある。また、表2には週ごとのコスモG1の補給量と彫刻針の欠けによる損版率を示した。損版率は、シリンダーの生産本数に対する針欠けによる損版の本数の割合である。 コスモG1を80ml/kAhで補給を行なったときには、抗張力も高く適正以上に硬い銅質といえる。また、バラードの剥離適性も芳しくなかった。 コスモG1の補給量を徐々に下げていったところ、50ml/kAhにした11週目以降、抗張力と伸び率が安定し、矢印の示す管理範囲内に収まった。表2からわかるように、彫刻針の欠けによる損版率も0.33%と減少した。また、バラードの剥離適性も良好であった。 本発明は、出版・包装・建材分野をはじめして広く用いられているグラビア印刷用シリンダーの銅めっき皮膜の表面概観及び機械彫刻適性の安定化、ならびにバラードの剥離適性の安定化に用いられる。A・・・伸び率の管理範囲B・・・抗張力の管理範囲 グラビア印刷等に使用されるバラード銅めっきが施されたシリンダー表面の銅めっき皮膜の機械的彫刻適性を判断する方法において、該銅めっき皮膜より得られたダンベル形状の銅片を引張試験機にて一定速度で破断するまで引っ張ったときに得られる応力−伸び曲線の抗張力及び伸び率を求め、前記抗張力及び伸び率の値が特定の管理範囲内にともに入っている時に、機械的彫刻適性が適正であると判断する方法。 グラビア印刷等に使用されるバラード銅めっきが施されたシリンダー上のバラード銅の剥離適性を判断する方法において、該銅めっき皮膜より得られたダンベル形状の銅片を引張試験機にて一定速度で破断するまで引っ張ったときに得られる応力−伸び曲線の伸び率を求め、前記伸び率の値が特定の管理範囲内に入っている時に、バラードの剥離適性が適正であると判断する方法。


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