生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_微生物活性の評価方法、および、該評価方法を用いる水系の微生物制御方法
出願番号:2010080821
年次:2011
IPC分類:C12Q 1/06,C12Q 1/26,G01N 33/18


特許情報キャッシュ

井上 浩章 石間 智生 JP 2011211919 公開特許公報(A) 20111027 2010080821 20100331 微生物活性の評価方法、および、該評価方法を用いる水系の微生物制御方法 アクアス株式会社 000101042 瀧野 秀雄 100060690 川崎 隆夫 100070002 松村 貞男 100108017 津田 俊明 100165308 瀧野 文雄 100134832 井上 浩章 石間 智生 C12Q 1/06 20060101AFI20110930BHJP C12Q 1/26 20060101ALI20110930BHJP G01N 33/18 20060101ALI20110930BHJP JPC12Q1/06C12Q1/26G01N33/18 F 7 OL 8 4B063 4B063QA01 4B063QQ63 4B063QQ79 4B063QR02 4B063QR58 4B063QS28 4B063QX02 本発明は、試料中の微生物活性を評価する微生物活性の評価方法、および、このような微生物活性の評価方法を用いる水系の微生物制御方法に関する。 食品衛生や、排水の生物処理の分野では、試料中の微生物活性が管理上重要視され、様々な方法で微生物活性の測定が行われてきた。このような微生物活性の具体的な測定方法として、呼吸速度(酸素消費速度)を測定する方法(特開平06−181742号公報等)、脱水素酵素活性を測定する方法、アデノシン三リン酸(ATP)量を測定する方法等が採用されてきた。 また、最近の新しい技術として、生物フォント(生態組織や細胞、生体関連物質から生じる微弱な光)を検出する方法(特開平05−23169号公報、特開平05−168461号公報)、誘電泳動と電気インピーダンスとを組み合わせた方法(特開2003−224公報)等を挙げることができる。 これらの方法のうち、ATP量を測定する方法は、簡便で現場測定も可能なために、微生物制御が必要な技術分野に広く応用されており、開放循環冷却水系をはじめとする水系における微生物制御(スライムコントロール)にも、このATP測定による微生物活性の評価が利用されてきた。 上記の微生物活性の評価方法は、いずれも試料中に存在する微生物量を相対的に測定するものであるが、その測定値だけでは、活性の高い微生物が少量存在する場合と、活性の低い微生物が多量に存在する場合との区別がつかないという欠点がある。特に、微生物制御剤により処理を行っている開放循環冷却水系等の水系では、微生物制御剤により弱まった活性の低い微生物が多量に存在する場合と、微生物制御剤に耐性を持つ活性の高い微生物が少量存在する場合とでは、その後の微生物制御の方向性に大きな違いが生じてくる。つまり、このような水系では、試料中の微生物の総量に対して、活性の高い微生物がどの程度の割合で存在するかが重要となるが、そのような情報の指標となる評価方法は従来なかった。特開平06−181742号公報特開平05−23169号公報特開平05−168461号公報特開2003−224号公報 ここで、上記のような試料中の微生物の総量に対して、活性の高い微生物がどの程度の割合で存在するかを評価する評価方法があると、該評価方法を薬剤添加などの微生物制御手段により微生物を制御している水系に応用することで、適用している微生物制御手段(例えば添加している薬剤の濃度や頻度、さらには薬剤の種類等)が十分有効に機能しているか、あるいは、過剰であるかの判断が可能となる。しかし、該評価方法に時間や手間がかかると、当然対策も遅れてしまい、好ましくない。 このため、上記のような評価方法を水系の微生物制御方法に応用するためには、簡便に、かつ、短時間で行えることが必要である。 本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、簡便にかつ短時間で行うことができ、かつ、試料中の微生物の総量に対して、活性の高い微生物がどの程度の割合で存在するかを知る方法である、微生物活性の評価方法を提供することを目的とする。 本発明者等は上記のような微生物活性の評価方法を得るために種々検討を行った。 上記課題を解決するためには、従来から測定されてきた微生物活性とは別に、試料中の総微生物量を測定し、これら総微生物量と微生物活性とを比較評価する必要がある。 ここで、試料中の総微生物量を測定する方法としては、試料水の濁度測定や、生菌数の測定が行なわれているが、濁度測定では微生物以外の濁質分と微生物との区別がつかず、生菌数の測定では微生物の培養操作が必要となり、時間と手間とを要する。また、排水処理の分野では、MLSS(活性汚泥浮遊物)やMLVSS(活性汚泥有機性浮遊物)を活性汚泥中の総微生物量の指標として利用しているが、これらの方法は少なくとも1000mg/L以上の高濃度の微生物懸濁液に利用されるものであり、開放循環冷却水系等の微生物障害に応用するには、大量の微生物塊(スライム)が必要となり実際的でなく、また測定操作にも、ろ過・乾燥・燃焼等の操作が必要で、手間を要する。 このような検討の末、本発明者等は本発明に到った。 すなわち、本発明の微生物活性の評価方法は、上記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、試料中に含まれるタンパク質量およびアデノシン三リン酸量を測定し、該アデノシン三リン酸量を該タンパク質量で除して得られる微生物活性度により、該試料中の微生物の活性を評価することを特徴とする微生物活性の評価方法である。 また、本発明の水系の微生物制御方法は請求項2に記載の通り、前記試料が水系から採取した試料であり、かつ、請求項1に記載の微生物活性の評価方法により得られる微生物活性度が、所定の上限値以上の場合に、該水系の微生物の抑制レベルを強化することを特徴とする。 また、本発明の水系の微生物制御方法は請求項5に記載の通り、前記試料が水系から採取した試料であり、かつ、請求項1に記載の微生物活性の評価方法により得られる微生物活性度が、所定の下限値以下の場合に、該水系の微生物の抑制レベルを低減することを特徴とする水系の微生物制御方法である。 本発明の微生物活性の評価方法によれば、きわめて簡便な方法でありながら、微生物活性の測定・評価が可能となる。 また、本発明の水系の微生物制御方法によれば、水系における微生物障害を未然に防止できると共に、微生物処理剤等の微生物制御手段の利用を最適化させることが可能となり、過剰な微生物制御を行う無駄を防止することができる。 本発明の微生物活性の評価方法は、試料中の微生物総量をタンパク質量で、微生物の活性をアデノシン三リン酸(ATP)量で測定し、微生物活性度(=ATP量/タンパク質量)を計算し、その値により評価する方法である。 本発明における試料とは、活性汚泥、微生物制御が必要な水系水、バイオフィルム(ぬめり)、微生物を含むスライム、スラッジ等の、微生物活性の測定・評価が必要な試料であれば、いかなるものでも構わない。 ここで、試料が水溶液または水性懸濁液の場合は、そのまま、あるいは、希釈して微生物活性度の測定を行う。また、固形(スライム状またはスラッジ状の場合を含む)の場合は、適当量の滅菌水に懸濁し、必要に応じてホモジェナイザー等を用いて粒子をすり潰し水性懸濁液としたものを、そのまま、または、希釈してサンプルとする。さらに、水系のバイオフィルムのように直接採取しにくい試料の場合には、滅菌綿棒等を用いて拭い取り、採取された試料を滅菌水に懸濁させて、タンパク質量とATP量を測定するサンプルとすることができる。 ここで本発明ではアデノシン三リン酸量とタンパク質量との比を用いるので、微生物活性度は上記のようなサンプルの試料濃度に左右されることがなく、このために、水系水の場合に多量に採取可能なスライム状の試料のみならず、機器や配管に薄く付着したバイオフィルムのような採取可能量が少ない試料であっても評価を行うことができる。 タンパク質の測定はブラドフォード(Bradford)法、ローリー(Lowry)法、BCA法等、公知のタンパク質の定量法を用いることができるが、このうち、定量下限が低く、操作が簡便で妨害物質が少ない点から、ブラドフォード法を用いることが好ましい。 ブラドフォード法は、試料にクマ−シーブルーを混合し、クマ−シーブルーとタンパク質とが結合する際の吸光度の変化を測定する方法であり、この方法によれば、吸光光度計があれば試料採取現場での迅速で簡易な測定が可能となる。 一方、ATPの測定は、試料中の細菌に含まれるATPをATP抽出試薬により抽出し、この抽出されたATPをルシフェラーゼにより発光させ、このときの発光量を測定することにより行うことができる。ATPを測定するための各種の測定装置が知られており、簡易測定装置も市販されているために試料採取現場での迅速な測定が可能である。 本発明の微生物活性の評価方法ではこれら測定された試料のアデノシン三リン酸量を試料のタンパク質量で除して得られる微生物活性度により、試料中の微生物の活性を評価するが、評価の際にアデノシン三リン酸濃度とタンパク質濃度との比を用いた場合も実質同一であり、本発明に含まれる。 ここで、このような微生物活性の評価方法を水系に応用して、水系の微生物制御を行うことができる。 すなわち、微生物活性度が高いときには、水系に存在する微生物中に活性の高い微生物が多いと判断し、微生物活性度が低いときには、水系に存在する微生物中に活性の高い微生物が少ないと判断する。 具体的には、水系から得られた試料の場合、一般的に、水系に存在する微生物中に活性の高い微生物が多いと判断する微生物活性度の境界値(所定の上限値)は、例えば1000nmol/gであり、微生物活性度がこの値以上であるときには、活性の高い微生物が相対的に多いと判断し、該水系の微生物の抑制レベルを強化して、活性の高い微生物の抑制を図る。一方、水系に存在する微生物中に活性の高い微生物が少ないと判断する微生物活性度の境界値(所定の下限値)は、例えば100nmol/gであり、微生物活性度がこの値以下である場合には、活性の高い微生物が相対的に少ないと判断し、該水系の微生物の抑制レベルを低減することができる。 水系の微生物抑制(制御)の手段としては、微生物制御剤(バイオサイド)の添加、水系の化学洗浄の他、水系の物理的殺菌(紫外線処理や電解殺菌等)、オゾン処理等の、水系に適用可能な、あらゆる微生物制御手段を用いることができる。 微生物制御剤としては、例えば5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−べンゾイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン系化合物、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド等のアルデヒド類、過酸化水素、ヒドラジン、塩素系殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウム等)、臭素系殺菌剤およびヨウ素系殺菌剤、ピリチオン系化合物、ジチオール系化合物、メチレンビスチオシアネート等のチオシアネート系化合物、ヨーネンポリマ、ビス型四級アンモニウム塩、ビス型四級アンモニウム塩以外の四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩等のカチオン系化合物などを挙げることができる。 また、水系の化学洗浄を行う際に用いる化学洗浄剤としては、過酸化水素、高濃度塩素剤、高濃度グルタルアルデヒド等を挙げることができる。 ここで、微生物制御剤の該水系への添加濃度の増加、微生物制御剤の該水系への添加頻度の増加、および、該水系に添加する微生物制御剤の種類の変更、から選ばれる少なくとも一つ、または、該水系の化学洗浄、を行うことで水系での微生物の抑制レベルを強化することができ、微生物制御剤の該水系への添加濃度の減少、および、微生物制御剤の該水系への添加頻度の減少、から選ばれる少なくとも1つ、または、微生物制御剤添加の中止を行うことで、水系の微生物の抑制レベルを低減させることができる。 以下に、本発明の微生物活性の評価方法、および、水系の微生物制御方法の実施例について具体的に説明する。<実施例1> 微生物制御剤として5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを用いて1年間継続処理していた茨城県内のある工場の冷却水系の冷凍機チュ−ブから採取されたスライム、および、同冷却水系の冷却塔の充填材に付着していた付着物(バイオフィルム)の一部を滅菌綿棒を用いて拭い取った試料を、各々滅菌水に懸濁した後、それぞれ3つに分けてサンプルとした。 これら各サンプルに対して5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「CMI」と云う)を20mg/Lの濃度で添加したもの(CMI添加系)、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を20mg/Lの濃度で添加したもの(DBNPA添加系)、薬剤無添加のもの(無添加系)を調製し、それぞれ27℃で3日間静置した後、ATP濃度(ATPアナライザー(東亜DKK製AF−100)を使用)、タンパク質濃度(ブラドフォード法による)を測定した。 こうして得られたATP濃度をタンパク質濃度で除して微生物活性度を求めた。また、上記各サンプルの、従属栄養細菌数(JIS K0101 63.3に準拠)の測定を行った。これらの結果を表1に記載した。 表1より、冷凍機チューブに付着したスライムでの微生物活性度と、充填材に付着したバイオフィルムでの微生物活性度とは同レベルであり、充填材に付着したバイオフィルムと同種の微生物が冷凍機チューブで繁殖していることが示唆された。 また、この微生物に対しては、CMIは抑制効果がなく、DBNPAが有効であることも判った。 そこで、この冷却水系の処理をCMIからDBNPAへ変更し、定期的に充填材付着物の微生物活性度を測定しながら6ヶ月間処理を継続した。この間、微生物活性度は、100nmol/g未満を維持し、充填材への付着物、冷却塔下部水槽への堆積物共に殆ど認められなかった。<実施例2> 微生物制御を行っていない、東京都内のあるビルの冷却水系の冷却塔下部水槽に堆積している堆積物を試料として採取し、その微生物活性度を測定したところ、3200nmol/gと高かった。このために、過酸化水素による化学洗浄を実施し、その後、この水系の運転を、微生物制御なしで再開した。 運転再開の1週間後に冷却塔下部水槽に再び堆積物が認められたので、この堆積物を採取し、その微生物活性度を測定したところ、75nmol/gであった。 また、これら堆積物の顕微鏡観察を行ったところ、化学洗浄前の堆積物は細菌類が主体で、運転再開後の堆積物は土砂等の無機物が主体であった。また、冷凍機のLTD(汚れ指標)は、化学洗浄前が6.0℃、化学洗浄後が0.6℃であった。 運転再開1週間後の堆積物の微生物活性度が上記のように低かったので、下部水槽を手洗浄したのち、微生物制御を行わない状態(無処理)での運転をさらに2ヶ月間継続した。この継続運転の期間中、下部水槽への堆積物は殆ど認められなかったが、1週間おきに冷却塔充填材に付着した付着物を滅菌綿棒で採取して、その微生物活性度を測定したところ、微生物活性度は徐々に上昇し、継続運転開始の2ヵ月後には1200nmol/gに達した。そこで、以降の運転では、微生物制御剤として1,4−ビス(3,3’−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイドを、冷却水中の濃度が10mg/Lを維持するように、継続的に添加した。 その後、冷却塔充填材に付着する付着物の微生物活性度は徐々に低下して行き、薬剤濃度維持開始の1ヵ月後には60nmol/gとなった。 試料中に含まれるタンパク質量およびアデノシン三リン酸量を測定し、該アデノシン三リン酸量を該タンパク質量で除して得られる微生物活性度により、該試料中の微生物の活性を評価することを特徴とする微生物活性の評価方法。 前記試料が水系から採取した試料であり、かつ、請求項1に記載の微生物活性の評価方法により得られる微生物活性度が、所定の上限値以上の場合に、該水系の微生物の抑制レベルを強化することを特徴とする水系の微生物制御方法。 前記水系の微生物の抑制レベルの強化が、微生物制御剤の該水系への添加濃度の増加、微生物制御剤の該水系への添加頻度の増加、および、該水系に添加する微生物制御剤の種類の変更、から選ばれる少なくとも一つ、または、該水系の化学洗浄、であることを特徴とする請求項2に記載の水系の微生物制御方法。 前記所定の上限値が1000nmol/gであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の水系の微生物制御方法。 前記試料が水系から採取した試料であり、かつ、請求項1に記載の微生物活性の評価方法により得られる微生物活性度が、所定の下限値以下の場合に、該水系の微生物の抑制レベルを低減することを特徴とする水系の微生物制御方法。 前記水系の微生物の抑制レベルの低減が、微生物制御剤の該水系への添加濃度の減少、および、微生物制御剤の該水系への添加頻度の減少、から選ばれる少なくとも1つ、または、微生物制御剤添加の中止、であることを特徴とする請求項5に記載の水系の微生物制御方法。 前記所定の下限値が100nmol/gであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の水系の微生物制御方法。 【課題】簡便にかつ短時間で行うことができ、かつ、試料中の微生物の総量に対して、活性の高い微生物がどの程度の割合で存在するかを知る方法である、微生物活性の評価方法を提供する。【解決手段】試料中に含まれるタンパク質量およびアデノシン三リン酸量を測定し、該アデノシン三リン酸量を該タンパク質量で除して得られる微生物活性度により、該試料中の微生物の活性を評価する微生物活性の評価方法。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る