生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_シバリング抑制剤
出願番号:2010072937
年次:2013
IPC分類:A61K 31/485,A61P 23/00,A61P 25/04,A61K 31/4468,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

鈴木 万三 JP WO2011074695 20110623 JP2010072937 20101220 シバリング抑制剤 鈴木 万三 509349211 中島 淳 100079049 加藤 和詳 100084995 福田 浩志 100099025 鈴木 万三 JP 2009288524 20091218 A61K 31/485 20060101AFI20130405BHJP A61P 23/00 20060101ALI20130405BHJP A61P 25/04 20060101ALI20130405BHJP A61K 31/4468 20060101ALI20130405BHJP A61P 43/00 20060101ALI20130405BHJP JPA61K31/485A61P23/00A61P25/04A61K31/4468A61P43/00 121 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20130502 2011546194 17 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC21 4C086CB23 4C086MA01 4C086MA02 4C086MA04 4C086MA35 4C086MA36 4C086MA37 4C086MA41 4C086MA43 4C086MA52 4C086MA56 4C086MA59 4C086MA63 4C086MA66 4C086NA06 4C086ZA04 4C086ZA08 4C086ZC75 本発明は、シバリング抑制剤に関する。 麻薬は、手術中の鎮痛や、術後鎮痛、また、がん性疼痛の管理などに幅広く用いられている。モルヒネを代表とした、アヘンアルカロイドに加え、フェンタニルといったような合成麻薬も近年用いられるようになってきている。 しかしながら、大量に投与した場合、長時間にわたる呼吸抑制などが問題となっていた。レミフェンタニル(ultiva TM, ヤンセンファーマ)は作用時間を極端に短縮し、麻酔からの速やかな覚醒を可能とした合成麻薬である。麻酔科医が待望していたレミフェンタニルであったが、実際に使用してみた問題点として、麻酔からの覚醒後2時間ぐらいの間に、シバリングと呼ばれる震えがかなりの頻度でおこることがわかってきた。 シバリングとは、一般的には体温(正確には、中枢温)の低下により、体が体温を上昇させるために行われる、不随意の振るえである。一般的なシバリング抑制剤に関する技術としては、例えば、ヒトの体温を低下させる際に生じるシバリングを抑制するために、メペリジン又はアルフェンタニルなどのオピオイド性鎮痛剤などのシバリング抑制剤と、その効果を高めるために制吐剤とを併用することが知られている(例えば、WO2004/041171)。 しかしながら、Med Sci Monit. 2006 Nov;12(11):CR452-6(Rohm KD, Riechmann J, Boldt J, Suttner SW, Piper SN., "Total intravenous anesthesia with propofol and remifentanil is associated with a nearly twofold higher incidence in postanesthetic shivering than desflurane-fentanyl anesthesia.")によれば、レミフェンタニルによる麻酔のあと、体温管理を加温装置によりおこなっても、約50%の患者にシバリングが起こっているという。したがって、レミフェンタニルによる麻酔の後のシバリングは体温の低下によるものではないと考えられ、このレミフェンタニル後のシバリングの原因はいまだ解明されていない。 また現在では、シバリング発生時には、その抑制にメペリジンなどのオピオイド性鎮痛剤を用いているが、オピオイド系鎮痛剤には、気道反射を抑制する作用もある。このため、口腔内の手術の後などにオピオイド系鎮痛剤を使用すると、誤嚥が発生する可能性が高くなることが懸念されている。 そこで、このレミフェンタニルによる麻酔後のシバリングを軽減することができれば患者のQOL(クオリティオブライフ)を改善できるため、シバリング軽減の方法、及び薬剤が求められていた。 解決しようとする課題は、レミフェンタニルによる麻酔から覚醒する際に、あるいは覚醒後2時間以内に強い震え(シバリング)が起きることを抑制するシバリング抑制剤、麻酔剤及びキット、並びにシバリング抑制方法を提供することである。 本発明の各態様は、以下のシバリング抑制剤、麻酔剤、キット及びシバリング抑制方法を、それぞれ提供する。 [1] 麻酔剤投与後に生じるシバリングを抑制するシバリング抑制剤であって、前記麻酔剤が、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩であり、かつ、ナロキソン又はその薬学上許容される塩を有効成分とする当該シバリング抑制剤。 [2] 前記麻酔剤の投与直後から覚醒までに、ナロキソン又はその薬学上許容される塩を0.2μg/kg/hr〜4μg/kg/hrの速度で投与する[1]記載のシバリング抑制剤。 [3] 前記麻酔剤としてのレミフェンタニル又はその薬学上許容される塩と、併用して投与する[1]又は[2]記載のシバリング抑制剤。 [4] レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩と、ナロキソン又はその薬学上許容される塩と、を有効成分とする麻酔剤。 [5] 麻酔及びその副作用抑制のためのキットであって、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩を含む区画と、ナロキソン又はその薬学上許容される塩を含む区画と、を含む、当該キット。 [6] 麻酔剤投与後に生じるシバリングを抑制するシバリング抑制方法であって、前記麻酔剤として、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩を投与すること、前記[1]記載のシバリング抑制剤を投与すること、を含む当該シバリング抑制方法。 [7] 前記麻酔剤の投与直後から覚醒までにナロキソン又はその薬学上許容される塩を0.2μg/kg/hr〜4μg/kg/hrの速度で投与することを含む[6]記載のシバリング抑制方法。図1は、実施例にかかるナロキソン投与によるシバリングの抑制を示した図である。図2は、実施例にかかるナロキソン投与によるシバリングの程度の減少を示した図である。 本発明のシバリング抑制剤は、麻酔剤投与後に生じるシバリングを抑制するシバリング抑制剤であって、前記麻酔剤が、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩であり、かつ、ナロキソン又はその薬学上許容される塩を有効成分とする。 本発明によれば、レミフェンタニルとナロキソンとを併用することによってレミフェンタニルによる麻酔後のシバリングが顕著に抑制される。ナロキソンによるシバリング抑制効果は、特定理論には拘束されないが、シバリングは、麻薬に対する受容体(オピオイド受容体)からオピオイドが乖離し始める際の退薬現象であり、低濃度のオピオイドがぎりぎり作用しているはずの受容体を、あらかじめ、オピオイドの拮抗薬で遮断することよって術後のシバリングが抑制されるためと推測される。 従って、手術中の加温の必要性が減少し、術中の加温が推奨されない、例えば脳神経外科や心臓外科などの手術でレミフェンタニルを安全に用いることができる。また、口腔内手術などにおいても、シバリングの発生頻度を減少させるため、レミフェンタニルを安全に用いることができる。 本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。 また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。 また、本明細書において薬物の投与速度に関し「/kg」の表記は、「投与対象の体重1kgあたり」の意味であり、例えば、「/kg/hr」の表記は、投与量として、「1時間に、投与対象の体重1kgあたり」の意味である。 また、本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。 以下、本発明について説明する。<1> シバリング抑制剤 本発明のシバリング抑制剤は、麻酔剤投与後に生じるシバリングを抑制するシバリング抑制剤であって、前記麻酔剤が、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩であり、かつ、ナロキソン又はその薬学上許容される塩を有効成分とする。本シバリング抑制剤は、レミフェンタニルによる麻酔から覚醒する際の、あるいは覚醒後2時間以内のシバリングの発生を抑制することができる。 ナロキソンの「その薬学上許容される塩」とは、アミノ基のような塩基性の基を有する場合には酸と反応させることにより、また、カルボキシル基のような酸性基を有する場合には塩基と反応させることにより、塩にすることができるので、その塩を示す。 塩基性基に基づく塩としては、好適には、弗化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、沃化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、りんご酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及び、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩を挙げることができる。安定性等の観点から、好適には、ハロゲン化水素酸塩又は無機酸塩であり、更に好適には、塩酸塩である。 一方、酸性基に基づく塩としては、好適には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩等の金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノ−ルアミン塩、N−ベンジルフェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;及び、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩を挙げることができる。 ナロキソンの投与形態としては、注射(静脈、筋肉、局所等)、経口投与、経口粘膜投与、鼻内投与、経皮吸収等が挙げられるが、これらに限られない。これらのうち、静脈注射(点滴を含む)が特に好ましい。点滴の場合、例えば、塩酸ナロキソンを麻酔後、覚醒までの間、0.2μg/kg/hr〜4μg/kg/hrとなる量で投与することが好ましく、0.4μg/kg/hr〜2μg/kg/hrとなる量で投与することがより好ましい。 なお、「麻酔後」とは、麻酔剤の投与開始後を意味し、「覚醒まで」とは、麻酔剤の投与が終了し、患者の呼吸又は意識が、麻酔科医の補助なしに安定するまでを意味する。 本発明にかかるシバリング抑制剤は、麻酔剤としてのレミフェンタニル又はその薬学上許容される塩と併用して投与されることが好ましい。 ここで、「併用」とは、投与対象の体内に同時に存在し得る条件で投与されることを意味し、体内において同時に存在しうる条件であれば、同時に又は、時間を異にして別々に投与されてよい。混合した溶液のようにして同時に投与されることが好ましい。 レミフェンタニルは、単体で用いてもよく、薬学的に許容される塩の形態であってもよい。レミフェンタニルの「その薬学上許容される塩」とは、ナロキソンについて記述した塩と同一の塩を挙げることができる。レミフェンタニルの薬学上許容される塩としては、安定性の観点から、塩酸塩が好ましい。 レミフェンタニルの投与形態としては、注射(静脈、筋肉、局所等)、経口投与、経口粘膜投与、鼻内投与、経皮吸収等が挙げられるが、これらに限られない。これらのうち、静脈注射(点滴を含む)が特に好ましい。点滴の場合、レミフェンタニルは、一般に、0.05μg/kg/min〜2μg/kg/minで投与することができ、0.05μg/kg/min〜1μg/kg/min投与することがより好ましい。また、シバリング抑制剤とレミフェンタニルとは、同一経路で投与してもよく、異なる経路から投与してもよい。 レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩とを併用する際の、レミフェンタニル又は薬学上許容される塩とナロキソン又はその薬学上許容される塩との混合比(併用時の比率)は、薬力学の観点から、レミフェンタニル又は薬学上許容される塩と、ナロキソン又はその薬学上許容される塩との質量比(レミフェンタニル:ナロキソン)が、500:1〜1:1であることが好ましい。また、併用時には、レミフェンタニルの投与速度は一定でなくてもよく、急速に投与してもよい。 本発明のシバリング抑制剤は、鎮静の観点から、レミフェンタニル以外に他の麻酔剤を更に併用してもよい。このように併用可能な麻酔剤としては、プロポフォール、吸入麻酔薬のセボフルレン(sevoflurane TM, アボット)等を挙げることができる。これらの併用可能な他の麻酔剤の投与量は、用いられる他の麻酔剤の種類に応じて適宜選択される。 本発明のシバリング抑制剤、レミフェンタニルまたは薬学上許容される塩、及び併用される他の麻酔剤のそれぞれ(本明細書では、それぞれの薬剤について区別なく総称する場合には、「医薬製剤」と称することがある)は、投与形態として、経口投与することも可能である。 本発明の医薬製剤は、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤又は細粒等の経口投与が可能な製剤として使用することができるが、好適には、錠剤である。 上記医薬製剤は、適宜、製薬学的に許容される添加物を含有してもよい。そのような添加物は、例えば、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α化デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウムのようなデンプン誘導体;予めゼラチン化したデンプン;結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウムのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、珪酸水和物、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムのようなケイ酸塩誘導体;リン酸二カルシウムのようなリン酸塩誘導体;塩化ナトリウムのような塩化塩誘導体;炭酸カルシウムのような炭酸塩誘導体;硫酸カルシウムのような硫酸塩誘導体;又はこれらの混合物)、結合剤(例えば、上記の賦形剤で例示した化合物;ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール;又はこれらの混合物)、崩壊剤(例えば、上記の賦形剤で例示した化合物;架橋ポリビニルピロリドン;又はこれらの混合物)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;安息香酸ナトリウムのような安息香酸金属塩;ビーガム、ゲイロウのようなワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸のようなカルボン酸類;硫酸ナトリウムのような硫酸金属塩;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸金属塩;上記の賦形剤で例示したケイ酸塩誘導体;上記の賦形剤で例示したデンプン誘導体;水素化植物油;カルナバロウ;蔗糖脂肪酸エステル;又はこれらの混合物)、安定剤(例えば、安息香酸;安息香酸ナトリウムのような安息香酸金属塩;メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;無水酢酸;ソルビン酸;又はこれらの混合物)、流動化剤(例えば、上記の賦形剤で例示したケイ酸塩誘導体;タルク;又はこれらの混合物)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート80のようなポリソルベート類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60のようなポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類;ソルビタン脂肪酸エステル類;蔗糖脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類;ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル類;ステアリン酸ポリオキシル類;又はこれらの混合物、好適には、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60又はこれらの混合物)、着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄)、抗酸化剤、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等)又は希釈剤を挙げることができる。使用される添加剤の種類及び量は、錠剤、カプセル剤又は他の投与形態薬剤により異なるが、製剤の分野の周知の技術に選択される。 例えば、錠剤の場合には、全医薬製剤中、結合剤の含量は、通常、1質量部〜10質量部(好適には、2〜5質量部)であり、崩壊剤の含量は、通常、1〜40質量部(好適には、5〜30質量部)であり、滑沢剤の含量は、通常、0.1〜10質量部(好適には、0.5〜3質量部)であり、流動化剤の含量は、0.1〜10質量部(好適には、0.5〜5質量部))である。 本発明の医薬製剤は、薬学的に許容される添加物を用いて周知の方法(例えば、水を用いる混練方法、湿式粒状化方法等)により容易に製造される。そのような製造の例として、例えば、有効成分、安定化剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤及び必要に応じて他の種類の助剤等を添加し、高速撹拌造粒機により混合し、得られた混合物に結合剤の水溶液を加えて練合し、造粒物を得る。その得られた造粒物を、流動層乾燥機を用いて乾燥し、乾燥した造粒物を、破砕造粒整粒機を用いて、スクリーンを強制的に通過させ、滑沢剤、崩壊剤及び必要に応じて他の種類の助剤等を加えてV型混合機で混合させ、得られた混合物を打錠し、又はカプセルに詰めることにより、それぞれ、錠剤又カプセル剤を製造することができる。 得られた錠剤は、必要に応じて、糖衣又はコーティング(好適には、コーティング)を施すことができる。例えば、得られた錠剤に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、タルク、酸化チタン、乳糖、トリアセチン又はポリエチレングリコール、黄色三二酸化鉄若しくは三二酸化鉄、及び水からなるコーティング液を、パンコーティング機中で噴霧することにより、フィルムコーティングを施すことができる。 また、上記の高速撹拌造粒機により混合し、結合剤の水溶液を加えて練合して得られた練合物を、押し出し造粒機を用いて、顆粒とした後、柵式乾燥機により乾燥し、乾燥した顆粒物を、破砕造粒整粒機を用いて、スクリーンを強制的に通過させることにより、顆粒剤を製造することができる。 本発明において使用されるそれぞれの医薬製剤の投与量と投与比率は、個々の物質の活性、患者の症状、年齢、体重等の種々の条件により大幅に変化しうる。 前記シバリング抑制剤中に含まれるナロキソン又はその薬学上許容される塩の量は、特に限定されず広範囲に適宜選択されるが、通常、シバリング抑制剤の全質量中、1〜70質量%、好ましくは1〜40質量%含まれる量とするのが適当である。 その投与量は、症状、年令、体重、剤型等によって異なるが、通常は成人(体重50kg)に対して1日、下限として0.001mg(好ましくは0.01mg、更に好ましくは0.1mg)であり、上限として1.0mg(好ましくは0.5mg、更に好ましくは0.4mg)を投与することができる。 本発明において、ナロキソン若しくはその薬学上許容される塩、又は、レミフェンタニル若しくはその薬学上許容される塩は、それぞれ上記の投与量を、必要に応じて1回、又は数回に分割して、それぞれ同時に、又は時間を異にして別々に投与される。<2> 麻酔剤 本発明の麻酔剤は、レミフェンタニル又は薬学上許容される塩と、ナロキソン又はその薬学上許容される塩とを有効成分とするものである。本麻酔剤は、麻酔剤としての有効成分であるレミフェンタニル又は薬学上許容される塩と共にナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含有するので、一の投与によってレミフェンタニルとナロキソンとを簡便に併用することができる。これにより、シバリングの発生を低減させ、シバリングを伴わずにレミフェンタニルによる麻酔効果が期待できる。 本麻酔剤では、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩とナロキソン又はその薬学上許容される塩とを同時に投与可能な形態であればよく、一方の薬物が他方の薬物よりも体内において先に作用可能な形態、例えば徐放される形態として麻酔剤を構成していてもよい。このような形態としては、経皮吸収型の薬剤等を挙げることができる。 本麻酔剤において、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩及びナロキソン又はその薬学上許容される塩の詳細、薬剤としての形態等については、上記のシバリング抑制剤について記述した事項と同一である。 本麻酔剤において、レミフェンタニル又は薬学上許容される塩とナロキソン又はその薬学上許容される塩との混合比は、上記の投与量の範囲であれば特に制限はない。薬力学の観点から、レミフェンタニル又は薬学上許容される塩と、ナロキソン又はその薬学上許容される塩との質量比が、100:1〜10:1(レミフェンタニル:ナロキソン)であることが好ましい。<3> キット 本発明のキットは、麻酔及びその副作用抑制のためのキットであって、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩を含む区画と、ナロキソン又はその薬学上許容される塩を含む区画と、を含む。 本キットによれば、レミフェンタニルに起因したシバリングを利便性よく抑制することができる。 本キットにおける「区画」とは、それぞれの薬剤が混合せずに独立して存在するために有効な形態であれば特に制限はなく、例えば、容器や個別包装形態などであってもよく、一のシート状で独立して区分けされた領域としての形態であってもよい。 また本キットは、レミフェンタニル又は薬学上許容される塩による麻酔方法と、その際に併用されるナロキソン又はその薬学上許容される塩の使用方法を記載した説明書を含むものであってもよい。 本発明のキットにおけるシバリング抑制剤と、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩の投与量、投与形態又は併用使用時の態様等については、上記シバリング抑制剤に関して記述した事項と同一である。<4> シバリング抑制方法 本発明は、シバリング抑制方法も包含する。 本発明のシバリング抑制方法は、麻酔剤投与後に生じるシバリングを抑制するシバリング抑制方法であって、前記麻酔剤として、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩を投与すること(以下、「レミフェンタニル投与工程」)、ナロキソン又はその薬学上許容される塩を投与すること(以下、「ナロキソン投与工程」)、を含む。 これにより、レミフェンタニル又は薬学上許容される塩に起因したシバリングを効果的に抑制することができる。 シバリング抑制方法では、上述したように、前記麻酔剤の投与直後から覚醒までにナロキソン又はその薬学上許容される塩を0.2μg/kg/hr〜4μg/kg/hrの速度で投与することを含むことが、確実にシバリングを抑制するために好ましい。 本発明のシバリング抑制方法における各有効成分の投与量及び投与形態、併用時の態様等については、上記シバリング抑制剤及び麻酔剤に関して記述した事項と同一である。 なお、レミフェンタニル投与工程とナロキソン投与工程とは、いずれが先であってもよく、同時であってもよい。 以下に本発明の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量(質量)基準である。 倫理委員会の承認を得た。患者の承諾のえられた婦人科開腹手術患者46名を対象とした。患者は無作為に対象群(n=25),ナロキソン投与群(n=21)に分けられた。対象群には生理食塩水が、ナロキソン投与群には、塩酸ナロキソン0.4μg/kg/hrが、麻酔導入直後から覚醒まで投与された。この投与量は、塩酸ナロキソンを麻薬による覚醒遅延からの拮抗を目的として投与する場合の量の約十分の一以下に相当する。 麻酔法 麻酔法はレミフェンタニル(0.25μg/kg/min)、プロポフォール(3μg/ml:予測血中濃度)(dipribanTM, AstraZeneca社)を用いた全静脈麻酔を主体とした。執刀2時間後に術後の鎮痛を鑑み、硬膜外麻酔を併用した。患者の血圧又は脈拍などをもとに、レミフェンタニル及びプロポフォールの投与速度を調節した。両群とも、温風式の加温装置で鼓膜温36℃以上を目標に体温管理がなされた。 測定項目 麻酔導入後、気管挿管や、執刀刺激による血圧脈拍等の変化と、麻酔からの覚醒から3時間までのシバリングの発生の有無と、(A)シバリングなし、(B)シバリングはあるが軽いもので、部分的な筋肉におけるシバリングであり、加温等の特別な処置を必要としない、(C)ひどいシバリングで、例えば全身的な痙攣に近いシバリングで加温等の処置が必要、の3段階によるシバリングの程度とを、それぞれ評価した。統計学的にはカイ二乗検定などを用いて検討した。 結果 患者の背景に有意差はなく、挿管や手術刺激によっても、血圧、脈拍等の変化に有意差はなかった。覚醒から30分以内では、シバリングの頻度に有意差は見られなかったが、対象群で、30分から1時間の間に25名中15名の患者でシバリングがみられ、ナロキソン投与群では21名中、6名にシバリングの発生がみられた(図1参照)。またシバリングの程度についても有意差がみられた。ナロキソン投与群でのシバリングが発生した患者6名については、(B)4名、(C)2名であり、対象群では同15名のうち、(B)3名、(C)12名であった(図2参照)。 従って、ナロキソンを投与することによって、レミフェンタニルによるシバリングの発生は有意に低減された。 レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩と、ナロキソン又はその薬学上許容される塩を有効成分として含有するシバリング抑制剤、ナロキソン又はその薬学上許容される塩とレミフェンタニル又はその薬学上許容される塩を含む麻酔剤、並びに、キットを用いることにより、レミフェンタニルによる麻酔後の覚醒時又は覚醒後2時間以内に起こるシバリングを抑制することができる。 2009年12月18日に出願された日本国特許出願第2009−288524号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。 本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。 麻酔剤投与後に生じるシバリングを抑制するシバリング抑制剤であって、 前記麻酔剤が、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩であり、かつ、 ナロキソン又はその薬学上許容される塩を有効成分とする当該シバリング抑制剤。 前記麻酔剤の投与直後から覚醒までに、ナロキソン又はその薬学上許容される塩を0.2μg/kg/hr〜4μg/kg/hrの速度で投与する請求項1記載のシバリング抑制剤。 前記麻酔剤としてのレミフェンタニル又はその薬学上許容される塩と、併用して投与する請求項1又は請求項2記載のシバリング抑制剤。 レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩と ナロキソン又はその薬学上許容される塩とを有効成分とする麻酔剤。 麻酔及びその副作用抑制のためのキットであって、 レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩を含む区画と、 ナロキソン又はその薬学上許容される塩を含む区画と、を含む、当該キット。 麻酔剤投与後に生じるシバリングを抑制するシバリング抑制方法であって、 前記麻酔剤として、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩を投与すること、 請求項1記載のシバリング抑制剤を投与すること、を含む当該シバリング抑制方法。 前記麻酔剤の投与直後から覚醒までにナロキソン又はその薬学上許容される塩を0.2μg/kg/hr〜4μg/kg/hrの速度で投与することを含む請求項6記載のシバリング抑制方法。 麻酔剤投与後に生じるシバリングを抑制するシバリング抑制剤であって、前記麻酔剤が、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩であり、かつ、ナロキソン又はその薬学上許容される塩を有効成分とするシバリング抑制剤、レミフェンタニル又はその薬学上許容される塩と、ナロキソン又はその薬学上許容される塩と、を有効成分とする麻酔剤。


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