タイトル: | 再公表特許(A1)_グリシジルエーテル化合物の製造方法及びモノアリルモノグリシジルエーテル化合物 |
出願番号: | 2010072715 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07D 301/12,C07D 303/22,C07D 303/27,C07B 61/00 |
内田 博 新井 良和 佐藤 一彦 千代 健文 JP WO2011078060 20110630 JP2010072715 20101216 グリシジルエーテル化合物の製造方法及びモノアリルモノグリシジルエーテル化合物 昭和電工株式会社 000002004 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 古賀 哲次 100087413 出野 知 100128495 蛯谷 厚志 100093665 高橋 正俊 100146466 内田 博 新井 良和 佐藤 一彦 千代 健文 JP 2009292315 20091224 JP 2010108696 20100510 C07D 301/12 20060101AFI20130412BHJP C07D 303/22 20060101ALI20130412BHJP C07D 303/27 20060101ALI20130412BHJP C07B 61/00 20060101ALN20130412BHJP JPC07D301/12C07D303/22C07D303/27C07B61/00 300 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20130509 2011547508 25 (出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構「グリーン・サステナブルケミカルプロセス基盤技術開発/廃棄物、副生成物を削減できる革新的プロセス及び化学品の開発/革新的酸化プロセス基盤技術開発」に係る業務委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願) 4C048 4H039 4C048AA01 4C048BB11 4C048CC01 4C048UU03 4C048UU05 4C048XX02 4C048XX04 4C048XX05 4H039CA63 4H039CC40 本発明は、グリシジルエーテル化合物の製造方法及びモノアリルモノグリシジルエーテル化合物に関する。さらに詳しくは、本発明は、所定の触媒を使用することにより、アリルエーテル結合を有する化合物の該アリル基の炭素−炭素二重結合を過酸化水素により酸化して、効率よくエポキシ化することを特徴とするグリシジルエーテル化合物の製造方法、及びアリルエーテル結合を有する化合物の該アリル基の炭素−炭素二重結合の過酸化水素による酸化により生成するモノアリルモノグリシジルエーテル化合物に関する。 エポキシ樹脂の原料として知られるグリシジルエーテルは、工業的に大規模に生産されており、様々な分野で広く使用されている。 従来知られているグリシジルエーテルの製造方法としては、対応するアルコール、フェノールを触媒の存在下又は不在下に塩基性条件下でエピクロロヒドリンと反応させて、グリシジルエーテルを得る方法がある。この方法では有機塩素化合物が必ず残存してしまい、幾つかの用途、例えばエレクトロニクス用途で使用するには、絶縁特性が低くなるという欠点がある。 そこで、アリルエーテルを、酸化剤を利用して該アリル基の炭素−炭素二重結合を直接エポキシ化することも検討されている。以下の特許文献1(特表平10−511722号公報)及び特許文献2(特開昭60−60123号公報)には、ビスフェノール-Aのジアリルエーテルやノボラック型フェノール樹脂のポリアリルエーテルをトルエン等の有機溶媒中でタングステン酸ナトリウムとリン酸触媒を用いて、4級アンモニウム塩の存在下で過酸化水素によりエポキシ化する方法が開示されている。この方法はタングステン化合物の使用量を非常に多く必要とする上、エポキシ化速度が十分ではなく、工業的製造方法として実施することはできない。 以下の特許文献3(米国特許第5633391号公報)には、オレフィンを有機溶媒中、酸化レニウム触媒の存在下で、酸化剤としてのビス(トリメチルシリル)ペルオキシドと接触させることにより、オレフィンをエポキシ化する方法が開示されているが、高価な触媒と酸化剤を必要とする上に、フェニルアリルエーテルの場合は収率も十分ではない。 以下の特許文献4(特開平7−145221号公報)及び特許文献5(特開昭58−173118号公報)には、フェノールノボラック樹脂をハロゲン化アリルによりアリルエーテル化後、有機溶媒中過酸によりエポキシ化する方法が開示されているが、危険性の高い過酸を使用する必要がある。 また、以下の特許文献6(特表2002−526483号公報)にはチタン含有ゼオライト触媒、及び3級アミン、3級アミンオキサイド又はそれらの混合物の存在下、過酸化水素によりエポキシ化する方法が開示されているが、この方法は分子量の小さなオレフィン化合物を基質とする場合には有用であるものの、フェニルエーテルのような分子量の大きな基質では、触媒効率が悪く、適用することができない。特表平10−511722号公報特開昭60−60123号公報米国特許第5633391号公報特開平7−145221号公報特開昭58−173118号公報特表2002−526483号公報 本発明が解決しようとする課題は、温和な条件下、過酸化水素を酸化剤に用いて、アリルエーテル結合を有する化合物からグリシジルエーテル化合物を効率良く製造する方法を提供することである。 ビフェニル骨格を有するモノアリルモノグリシジルエーテル化合物を合成した例は報告されていない。モノアリルモノグリシジルエーテル化合物は、アリル基を有しているため、Si−H基を有する化合物とヒドロシリル化反応させることができ、様々なSi−H基を有する化合物にビフェニルグリシジルエーテル基を導入することができる。例えば、レジスト類や封止材類などに利用されるエポキシ樹脂を合成する際、種々のSi−H基を有するシロキサン化合物とヒドロシリル化することで、1段階の反応により、耐熱性、エッチング耐性が高いビフェニル骨格と硬化に必要となるエポキシ基とを同時に導入することができると考えられ、極めて有用である。したがって、本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、エッチング耐性が高いビフェニル骨格を有する新規モノアリルモノグリシジルエーテル化合物を提供することでもある。 本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究及び実験を重ねた結果、触媒としてタングステン化合物、3級有機アミン、及びフェニルホスホン酸を使用して、過酸化水素水溶液とアリルエーテル化合物とを反応させることにより、対応するグリシジルエーテル化合物が高効率で選択的に生成されることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。 [1]アリルエーテル結合を有する化合物と過酸化水素とを反応させて、該アリル基の炭素−炭素二重結合をエポキシ化することにより対応するグリシジルエーテル化合物を製造する方法において、反応触媒としてタングステン化合物、3級アミン、及びフェニルホスホン酸を使用することを特徴とする前記グリシジルエーテル化合物の製造方法。 [2]前記タングステン化合物としてタングステン酸の部分中和塩を用いる、前記[1]に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 [3]前記タングステン化合物が、タングステン酸ナトリウムとタングステン酸の混合物、タングステン酸ナトリウムと鉱酸の混合物、又はタングステン酸とアルカリ化合物の混合物である、前記[1]または[2]に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 [4]前記3級アミンがトリアルキルアミンであり、その窒素原子に結合したアルキル基の炭素数の合計が6以上50以下である、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 [5]前記アリルエーテル結合を有する化合物が複数のアリルエーテル結合を有する化合物である、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 [6]前記アリルエーテル結合を有する化合物が2つのアリルエーテル結合を有する化合物であり、反応生成物より一方のアリルエーテル結合のみがエポキシ化されたモノアリルモノグリシジルエーテル化合物を単離する工程をさらに有する、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 [7]反応溶煤として有機溶煤を使用しない、前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 [8]前記アリルエーテル結合を有する化合物が、以下の式(1):{式中、R1、及びR2は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、あるいは、R1とR2は一緒になって炭素数2〜6のアルキリデン基又は炭素数3〜12のシクロアルキリデン基を形成してもよい。R3、R4、R5、及びR6は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、そして、nは0又は1の整数を表す。}で表される構造を有する、前記[1]〜[7]のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 [9]前記アリルエーテル結合を有する化合物が、ビスフェノール−Aのジアリルエーテル、ビスフェノール−Fのジアリルエーテル、及び3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジアリルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種である、前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 [10]前記アリルエーテル結合を有する化合物が、炭素数2〜20のα,ω−ポリアルキレングリコールジアリルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル、及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアリルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種である、前記[1]〜[7]のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 [11]前記アリルエーテル結合を有する化合物が、フェノール−ホルムアルデヒド・アリルアルコール重縮合物またはクレゾール−ホルムアルデヒド・アリルアルコール重縮合物である、[1]〜[7]のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 [12]以下の一般式(2):{式中、R7、R8、R9、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を示す。}で表される、ビフェニル骨格を有するモノアリルモノグリシジルエーテル化合物。 [13]式中、R7、R8、R9、及びR10がメチル基である、前記[12]に記載のビフェニル骨格を有するモノアリルモノグリシジルエーテル化合物。 本発明のグリシジルエーテル化合物の製造方法によれば、触媒としてタングステン化合物、3級有機アミン、及びフェニルホスホン酸を使用して、過酸化水素とアリルエーテル化合物とを反応させることにより、対応するグリシジルエーテル化合物を製造することができ、電子材料分野や、接着剤、塗料樹脂といった各種ポリマーの原料として化学工業をはじめとする様々な産業分野で幅広く用いられる有用な物質であるエポキシ樹脂を、有機塩素系の不純物の混入を極力抑えながら、簡便な操作で安全に、収率良く、かつ、低コストで製造することができる。したがって、本発明のグリシジルエーテル化合物の製造方法は、工業的に多大な効果をもたらす。また、本発明に係るモノアリルモノグリシジルエーテル化合物は、アリル基を有しているため、Si−H基を有する化合物とヒドロシリル化反応させることができ、様々なSi−H基を有する化合物にビフェニルグリシジルエーテル基を導入することができるので、レジスト類や封止材類などに利用されるエポキシ樹脂原料として極めて有用である。図1は、実施例16で得られた生成物の1H−NMRの測定結果を示す。図2は、実施例16で得られた生成物の13C−NMRの測定結果を示す。図3は、実施例16で得られた生成物の質量分析(MS)の測定結果を示す。図4は、実施例17で得られた生成物の1H−NMRの測定結果を示す。図5は、実施例17で得られた生成物の13C−NMRの測定結果を示す。図6は、実施例17で得られた生成物の29Si−NMRの測定結果を示す。図7は、実施例17で得られた生成物の質量分析(MS)の測定結果を示す。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明のグリシジルエーテル化合物の製造方法においては、酸化剤として過酸化水素を用いる。過酸化水素は過酸化水素水溶液として用いることができる。過酸化水素の濃度には特に制限はないが、一般的には1〜80%、好ましくは5〜80%、より好ましくは10〜60%の範囲から選ばれる。工業的な生産性の観点、及び分離の際のエネルギーコストの点からは過酸化水素は高濃度のほうが好ましいが、一方で過度に高濃度の、および/または過剰量の過酸化水素を用いないほうが経済性、安全性などの観点で好ましい。過酸化水素の濃度が1%未満だと反応性が低い。過酸化水素の使用量についても、特に制限はないが、エポキシ化しようとするアリルエーテル結合を有する化合物のアリル基の炭素−炭素二重結合に対して、0.5〜10当量、好ましくは0.8〜2当量の範囲から選ばれる。この範囲を外れると、一方の原料が過剰に残存することになり経済的でない。 本発明のグリシジルエーテル化合物の製造方法において触媒として用いるタングステン化合物としては、水中でタングステン酸アニオンを生成する化合物が好適であり、例えば、タングステン酸、三酸化タングステン、三硫化タングステン、六塩化タングステン、リンタングステン酸、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム二水和物、タングステン酸ナトリウム二水和物等が挙げられるが、タングステン酸、三酸化タングステン、リンタングステン酸、タングステン酸ナトリウム二水和物等が好ましい。これらタングステン化合物は単独で使用しても2種以上を混合使用してもよい。 これらの水中でタングステン酸アニオンを生成する化合物の触媒活性は、タングステン酸アニオン1.0に対して、0.2〜0.8の対カチオンが存在したほうが高い。このようなタングステン組成物の調製法としては、例えばタングステン酸とタングステン酸のアルカリ金属塩を前記比率で混合してもよいし、タングステン酸とアルカリ化合物(アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩等)とを混合するか、タングステン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とリン酸、硫酸等の鉱酸のような酸性化合物を組み合わせることができ、このような調製法によりタングステン酸の部分中和塩を形成することができる。これらの好ましい具体例としては、タングステン酸ナトリウムとタングステン酸の混合物、タングステン酸ナトリウムと鉱酸の混合物、又はタングステン酸とアルカリ化合物の混合物が挙げられる。 タングステン化合物の触媒としての使用量は、タングステン元素として、基質のアリルエーテル結合を有する化合物のアリル基の炭素−炭素二重結合数を基準として0.0001〜20モル%、好ましくは0.01〜20モル%の範囲から選ばれる。0.0001モル%より少ないと反応性が低く、20モル%より多いと経済的に不利である。 触媒として用いる3級アミンとしては、その窒素原子に結合したアルキル基の炭素数の合計が6以上、好ましくは10以上の3級有機アミン(トリアルキルアミン)が、エポキシ化反応の活性が高くて好ましい。 このような3級有機アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ-(2-エチルヘキシル)アミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチルラウリルアミン、N,N-ジメチルミリスチルアミン、N,N-ジメチルパルミチルアミン、N,N-ジメチルステアリルアミン、N,N-ジメチルベヘニルアミン、N,N-ジメチルココアルキルアミン、N,N-ジメチル牛脂アルキルアミン、N,N-ジメチル硬化牛脂アルキルアミン、N,N-ジメチルオレイルアミン、N,N-ジイソプロピル-2-エチルヘキシルアミン、N,N-ジブチル-2-エチルヘキシルアミン、N-メチルジオクチルアミン、N-メチルジデシルアミン、N-メチルジココアルキルアミン、N-メチル硬化牛脂アルキルアミン、N-メチルジオレイルアミンなどが挙げられる。3級アミンの窒素原子に結合したアルキル基の炭素数の合計は、反応基質であるアリルエーテル結合を有する化合物の溶解性を考慮すると、50以下であることが好ましく、より好ましくは30以下である。 これらの3級アミンは、単独で使用しても2種以上を混合使用してもよい。その使用量は基質のアリルエーテル結合を有する化合物のアリル基の炭素−炭素二重結合数を基準として0.0001〜10モル%が好ましく、より好ましくは0.01〜10モル%の範囲から選ばれる。0.0001モル%より少ないと反応性が低く、10モル%より多いと経済的に不利である。 本発明のグリシジルエーテル化合物の製造方法では、(助)触媒として、さらに、フェニルホスホン酸を用いる。その使用量は基質のアリルエーテル結合を有する化合物のアリル基の炭素−炭素二重結合数を基準として0.0001〜10モル%が好ましく、より好ましくは0.01〜10モル%の範囲から選ばれる。0.0001モル%より少ないと反応性が低く、10モル%より多いと経済的に不利である。 本発明のグリシジルエーテル化合物の製造方法においてエポキシ化を行う基質としては、アリルエーテル結合を持った化合物であれば特に制限はなく、化合物中に含まれるアリルエーテル結合数は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。アリルエーテル結合数が1つの化合物としては、フェニルアリルエーテル、o-,m-,p-クレゾールモノアリルエーテル、ビフェニル-2-オールモノアリルエーテル、ビフェニル-4-オールモノアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、シクロヘキサンメタノールモノアリルエーテル等が例示できる。 アリルエーテル結合数が2つの化合物としては、1,5−ペンタンジオールジアリルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジアリルエーテル、1,9−ノナンジオールジアリルエーテル、1,10−デカンジオールジアリルエーテル、ネオペンチルグリコールジアリルエーテルなどの炭素数が2〜20のα,ω-アルキレンジオールジアリルエーテル類、炭素数2〜20のα,ω-ポリアルキレングリコールジアリルエーテル類、1,4-シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアリルエーテルや、以下の一般式(1):{式中、R1、及びR2は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であり、あるいは、R1とR2は一緒になって炭素数2〜6のアルキリデン基又は炭素数3〜12のシクロアルキリデン基を形成してもよい。R3、R4、R5、及びR6は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、そして、nは0又は1の整数を表す。}で表される化合物が挙げられる。ここでnが0の場合は、2つのベンゼン環が直接結合(ビフェニル骨格)していることを示す。これらの中でもR1〜R6が各々独立して水素原子又はメチル基であり、nが1または0のものがより好ましい。 このような化合物としては、具体的には、ビスフェノール−Aのジアリルエーテル、ビスフェノール−Fのジアリルエーテル、2,6,2’,6’−テトラメチルビスフェノール−Aジアリルエーテル、2,2’−ジアリルビスフェノール−Aジアリルエーテル、2,2’−ジ−t−ブチルビスフェノール−Aジアリルエーテル、4,4’−ビフェノールジアリルエーテル、2,2’−ジイソプロピルビフェノールジアリルエーテル、4,4’−エチリデンビスフェノールジアリルエーテル、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノールジアリルエーテル、4,4’−(1−α−メチルベンジリデン)ビスフェノールジアリルエーテル、4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノールジアリルエーテル、4,4’−(1−メチル−ベンジリデン)ビスフェノールジアリルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジアリルエーテルなどが挙げられる。 また、アリルエーテル結合数が3つ以上の化合物としては、フェノール−ホルムアルデヒド・アリルアルコール重縮合物またはクレゾール−ホルムアルデヒド・アリルアルコール重縮合物等が挙げられる。 これらの基質は、有機溶媒を用いないか必要に応じて有機溶媒を用いて、過酸化水素水溶液と前記した触媒とを混合し、エポキシ化反応を進行させることができ、有機溶媒を用いずにエポキシ化反応を行うことが、製造コストの低減、製造設備の簡略化(例えば防爆設備の省略等)、廃棄物処理、作業環境の改善等の点で有利である。溶媒を用いる場合には、反応速度が遅くなる上に、溶媒によっては加水分解反応等の望ましくない反応が進行しやすくなることがあるため、適切に選択する必要がある。反応基質としてのアリルエーテル結合を有する化合物の粘度があまりに高い場合や固体である場合には必要最小限の有機溶媒を用いてもよい。用いることができる有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素又は脂環式炭化水素が好ましく、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等が挙げられる。使用量は必要最小限に留めた方が製造コスト等の点で有利であり、アリルエーテル結合を有する化合物100質量部に対して好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下で使用される。有機溶媒の使用量がアリルエーテル結合を有する化合物100質量部に対して50質量部を超えると基質濃度が低くなり、反応性が低下する。 また、エポキシ化を行う方法としては工業的に安定に生産を行うことを考えると、触媒と基質を最初に反応器に仕込み、反応温度を極力一定に保ちつつ、過酸化水素については反応で消費されているのを確認しながら、徐々に加えていった方がよい。このような方法を採れば、反応器内で過酸化水素が異常分解して酸素ガスが発生したとしても、過酸化水素の蓄積量が少なく圧力上昇を最小限に留めることができる。 反応温度があまりに高いと副反応が多くなり、かつ、過酸化水素も分解しやすくなるし、低すぎる場合には過酸化水素の消費速度が遅くなり、反応系内に蓄積することがあるので、反応温度は、好ましくは−10〜120℃、より好ましくは20℃〜100℃の範囲で選択する。 反応終了後は、水層と有機層の比重差がほとんど無い場合があるが、その場合には水層に無機化合物の飽和水溶液を混合して、有機層と比重差をつけることにより有機抽出溶媒を使用しなくても二層分離を行うことができる。特にタングステン化合物の比重は重いので、水層を下層に持って来るために、本来触媒として必要な前記した使用量を超えるタングステン化合物を用いてもよい。この場合、水層からのタングステン化合物を再使用して、タングステン化合物の効率を高めることが望ましい。 また、逆に基質によっては有機層の比重が1.2近くとなるものもあるので、このような場合には水を追添して、水層の比重を1に近づけることにより、上層に水層、下層に有機層を持って来ることもできる。また、反応液の抽出にトルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、塩化メチレンなどの有機溶媒を用いて抽出を実施することもでき、状況に応じて最適な分離方法を選択することができる。 このようにして水層と分離した有機層を濃縮後、蒸留、クロマト分離、再結晶や昇華等の通常の方法によって、得られたグリシジルエーテル化合物を取り出すことができる。アリルエーテル結合を有する化合物が2つのアリルエーテル結合を有する化合物である場合、上記の分離精製操作を行うことにより、反応生成物より一方のアリルエーテル結合のみがエポキシ化されたモノアリルモノグリシジルエーテル化合物を単離することができる。例えば、ビフェニル骨格を有するジアリルエーテル化合物を基質として用いる場合有機層中にはモノアリルモノグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、及び未反応のジアリルエーテル化合物が含まれるが、これらから後述の実施例16に記載のカラムクロマトグラフィー等の精製により、例えば以下の一般式(2):{式中、R7、R8、R9、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を示す。}で表されるモノアリルモノグリシジルエーテルを得ることができる。R7、R8、R9、及びR10は、メチル基であることができる。 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。[実施例1] 滴下ロート、ジムロート冷却管を備えた300mLの三ツ口フラスコに、タングステン酸ナトリウム(日本無機化学工業(株)製)0.950g(2.88mmol)、タングステン酸(日本無機化学工業(株)製)0.720g(2.88mmol)、トリオクチルアミン(広栄化学(株)製)2.04g(5.76mmol)、フェニルホスホン酸(日産化学(株)製)0.911g(5.76mmol)、アリルフェニルエーテル80g(0.576mol)を入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、オイルバスで70℃に加温した後、35%過酸化水素水溶液84.0g (0.864mol)を、反応温度が75℃を超えないように滴下した。滴下終了後、2時間、攪拌を継続し、反応液を室温まで冷却した。この後、酢酸エチルを40g追加し、上層に有機層、下層に水層が来るようにして、有機層を分離した。 この有機層を分析した結果、アリルフェニルエーテルの転化率は55.8%であり、そしてグリシジルフェニルエーテルへの選択率は66.3%であった。 なお、転化率、及び選択率は、ガスクロマトグラフィーにより分析した結果を元に、以下の計算式により計算した。 転化率(%)=(1−残存した原料のモル数/使用した原料のモル数)×100 選択率(%)={(目的化合物のモル数/使用した原料のモル数)×10000}/転化率(%)[比較例1] フェニルホスホン酸を加えなかった以外は実施例1と同様の条件で反応を行なった。その結果、アリルフェニルエーテルの転化率は3.6%であり、ガスクロマトグラフィーで極少量のグリシジルフェニルエーテルが検出されたに過ぎなかった。[比較例2] トリオクチルアミンを加えなかった以外は実施例1と同様の条件で反応を行なった。その結果、アリルフェニルエーテルの転化率は5.3%であり、ガスクロマトグラフィーで極少量のグリシジルフェニルエーテルが検出されたに過ぎなかった。[実施例2〜10] 以下の表1に示す触媒成分、仕込みモル比で、実施例1と同様にエポキシ化反応を行った。結果を併せて以下の表1に示す。[合成例1]:ビスフェノール-Fのジアリルエーテルの合成 2000mlのナス型フラスコに、ビスフェノール-F-ST(三井化学(株)製)200g(0.999mol)、50%含水5%-Pd/C-STDタイプ(エヌ・イーケムキャット(株)製)2.13g(0.499mmol)、トリフェニルホスフィン(北興化学(株)製)2.62g(9.99mmol)、炭酸カリウム(旭硝子(株)製)276g(2.00mol)、酢酸アリル(昭和電工(株)製)220g(2.20mol)、及びイソプロパノール200gを入れ、窒素雰囲気中、85℃で8時間反応させた。反応後、一部サンプリングし、酢酸エチルで希釈後、ガスクロマトグラフィーによる分析で、ビスフェノール-Fジアリルエーテル対モノアリルエーテルの比率が99:1までになっていることを確認した。 この後、反応液にトルエン400gを加え、Pd/Cと析出した固体を濾過により除き、エバポレーターにより、イソプロパノールとトルエンを留去した。この反応、後処理操作を4回繰り返し後、分子蒸留装置(大科工業(株)製)により、留出物748g(単離収率66%、ビスフェノール-Fジアリルエーテル98.7%、残りはモノアリルエーテル)、非留出物368g(ビスフェノール-Fジアリルエーテル88%)を得た。これらの分析はガスクロマトグラフィーにより行なった。留出物の25℃における粘度は、25mPa・s(B型粘度計(BROOKFIELD製DV-E(型式:LVDV-E))により測定)であった。また、異性体比はo,o’-:o,p’-:p,p’-=17:52:31(ガスクロマトグラフィーによる分析値)であった。[合成例2]:3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジアリルエーテルの合成 2000mlのナス型フラスコに、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェニルジオール(中国:甘粛省化工研究院製)150g(0.619mol)、50%含水5%-Pd/C-STDタイプ(エヌ・イーケムキャット(株)製)1.32g(0.310mmol)、トリフェニルホスフィン(北興化学(株)製)1.624g(6.19mmol)、炭酸カリウム(日本曹達(株)製)171g(1.24mol)、酢酸アリル(昭和電工(株)製)136g(1.36mol)、及びイソプロパノール68.1gを入れ、窒素雰囲気中、85℃で8時間反応させた。反応後、一部サンプリングし、酢酸エチルで希釈後、ガスクロマトグラフィーによる分析で、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジアリルエーテル対モノアリルエーテルの比率が97:3までになっていることを確認した。 この後、反応液にトルエン200gを加え、Pd/Cと析出した固体を濾過により除き、エバポレーターにより、イソプロパノールとトルエンを留去した。この反応、後処理操作を4回繰り返し後、分子蒸留装置(大科工業(株)製)により、留出物127.5g(単離収率66%、ジアリルエーテル97.9%、残りはモノアリルエーテル)、非留出物31.7g(ジアリルエーテル97.5%)を得た。これらの分析はガスクロマトグラフィーにより行なった。留出物は融点が51.7℃の固体であり、60℃における粘度は、29mPa・s(B型粘度計(BROOKFIELD製DV-E(型式:LVDV-E))により測定)であった。[合成例3]:1,4-シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテルの合成 1000mlのフラスコに、1,4-シクロヘキサンジオール(イーストマンケミカル製)100g(0.693mol)、50%水酸化ナトリウム水溶液110.9g(1.39mol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(ライオンアクゾー(株)製)1.12g(3.47mmol)、塩化アリル132.7g(1.73mol)を入れ、窒素気流下に最初は40℃で加熱を行い、反応の進行とともに徐々に反応温度を上げて、3時間かけて70℃になるまで昇温し、更に17時間反応させた。反応液を室温まで冷却し、トルエン200mlを加え反応物を抽出し、有機層を純水で2回洗浄した。エバポレーターによりトルエンを留去した後、減圧蒸留により、初留を除去後、沸点80.4℃/28Paの留出分84.6g(ジアリルエーテル94%、残りはモノアリルエーテル)を得た。これらの分析はガスクロマトグラフィーにより行なった。また、留出物の25℃における粘度は、8.5mPa・s(B型粘度計(BROOKFIELD製DV-E(型式:LVDV-E))により測定)であった。[合成例4]:1,6-ヘキサンジオールジアリルエーテルの合成 1000mlのフラスコに、1,6-ヘキサンジオール(東京化成(株)製)100g(0.846mol)、50%水酸化ナトリウム水溶液135.4g(1.69mol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(ライオンアクゾー(株)製)1.36g(4.23mmol)、塩化アリル161.9g(2.12mol)を入れ、窒素気流下に最初は40℃で加熱を行い、反応の進行とともに徐々に反応温度を上げて、2時間かけて70℃になるまで昇温し、更に10時間反応させた。反応液を室温まで冷却し、トルエン200mlを加え反応物を抽出し、有機層を純水で2回洗浄した。エバポレーターによりトルエンを留去した後、減圧蒸留により、初留を除去後、沸点72℃/133Paの留出分84.6g(ジアリルエーテル97%、残りはモノアリルエーテル)を得た。これらの分析はガスクロマトグラフィーにより行なった。また、留出物の25℃における粘度は、2.3mPa・s(B型粘度計(BROOKFIELD製DV-E(型式:LVDV-E))により測定)であった。[実施例11〜15] 実施例1のアリルフェニルエーテルを、以下の表2に示す化合物に代えたほかは、実施例1と同様にエポキシ化反応を行った。結果を併せて以下の表2に示す。[実施例16] 実施例13で得られた生成物からモノグリシジルモノアリルエーテルを単離し、本実施例において同定した。実験手順を以下に説明する。 滴下ロート、ジムロート冷却管を備えた300mLの三ツ口フラスコに、タングステン酸ナトリウム(日本無機化学工業(株)製)0.950g(2.88mmol)、タングステン酸(日本無機化学工業(株)製)0.720g(2.88mmol)、トリオクチルアミン(広栄化学(株)製)2.04g(5.76mmol)、フェニルホスホン酸(日産化学(株)製)0.911g(5.76mmol)、3,3’、5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’-ジアリルエーテル92.9g (0.288mol)を入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、オイルバスで70℃に加温した後、35%過酸化水素水溶液84.0g (0.864mol)を、反応温度が75℃を超えないように滴下した。滴下終了後、2時間、攪拌を継続し、反応液を室温まで冷却した。この後、酢酸エチルを40g追加し、上層に有機層、下層に水層が来るようにして、有機層を分離した。 この有機層を分析した結果、3,3’、5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’-ジアリルエーテルの転化率は54.2%であり、モノエポキシ体の選択率が64.9%、そしてジエポキシ体への選択率は15.5%であった(実施例13、表2参照)。 その後、有機層を亜硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、エバポレーター、真空ポンプを用いて有機層の溶媒留去及び乾燥を行い、クルードの反応物が得られ、その後カラムクロマトグラフィー精製(シリカゲル60N(球状、中性):関東化学製、展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜3:1)により、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル及び3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−モノアリルモノグリシジルエーテルが得られた。得られた生成物のNMR(1H、13C)及び質量分析(MS)の結果から、得られた生成物は3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル及び3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−モノアリルモノグリシジルエーテルであることが確認された。モノアリルモノグリシジルエーテル体の測定結果を図1〜3に示す。 MSの測定条件は以下の通りであった: 装置:JEOL JMS-SX102A 試料加熱温度:80℃→〔32℃/min〕→400℃ 試料濃度:NMR測定用溶液をジクロロメタンで10倍希釈 試料量:0.5μl *80℃加熱で溶媒により揮発除去してからMSに導入 イオン化法:EI(電子イオン化法) スキャン範囲:m/z10〜800[実施例17] 還流冷却器、温度計、攪拌装置およびセラムキャップを備えた50ml三ツ口フラスコに、実施例16で合成したモノアリルモノグリシジルエーテル体0.1g(0.30mmol)、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン0.077g(0.35mmol)、及びトルエン1mlを加え、アルゴン気流下、室温で攪拌した。その混合溶液に3%ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体イソプロピルアルコール溶液0.002g(白金量:6.0×10−5g)を、反応溶液に加え、室温で攪拌した。6時間室温で攪拌した後、減圧下でトルエン溶媒を除去し、クルードの反応物0.13g得た。その後、カラムクロマトグラフィー精製(シリカゲル60N(球状、中性):関東化学製、展開溶媒;トルエン:酢酸エチル=10:1)により、下記構造式(3):に示すモノグリシジルエーテル0.13gが得られた。得られた生成物のNMR(1H、13C、29Si)および質量分析(MS)の結果から、得られた生成物は構造式(3)に示される化合物であることが確認された(図4〜7参照)。すなわち、実施例16で合成したモノアリルモノグリシジルエーテル化合物は、ヒドロシリル化反応により、Si−H基を有する化合物と反応させることができることが示された。 MSの測定条件は、以下の通りであった: 装置:JEOL JMS-SX102A 試料加熱温度:80℃→〔32℃/min〕→400℃ 試料濃度:NMR測定用溶液をジクロロメタンで10倍希釈 試料量:0.5μl *80℃加熱で溶媒により揮発除去してからMSに導入 イオン化法:EI(電子イオン化法) スキャン範囲:m/z10〜800 本発明のグリシジルエーテル化合物の製造方法によれば、触媒としてタングステン化合物、3級有機アミン、及びフェニルホスホン酸を使用して、過酸化水素とアリルエーテル化合物とを反応させることにより、対応するグリシジルエーテル化合物を製造することができ、電子材料分野や、接着剤、塗料樹脂といった各種ポリマーの原料として化学工業をはじめとする様々な産業分野で幅広く用いられる有用な物質であるエポキシ樹脂を、有機塩素系の不純物の混入を極力抑えながら、簡便な操作で安全に、収率良く、かつ、低コストで製造することができる。また、本発明のモノアリルモノグリシジルエーテル化合物は、Si−H基を有する化合物とヒドロシリル化反応させることにより様々なSi−H基を有する化合物にビフェニルグリシジルエーテル基を導入することができるので、耐熱性、エッチング耐性が高いレジスト類や封止材類などに利用されるエポキシ樹脂の合成に有用である。 アリルエーテル結合を有する化合物と過酸化水素とを反応させて、該アリル基の炭素−炭素二重結合をエポキシ化することにより対応するグリシジルエーテル化合物を製造する方法において、反応触媒としてタングステン化合物、3級アミン、及びフェニルホスホン酸を使用することを特徴とする前記グリシジルエーテル化合物の製造方法。 前記タングステン化合物としてタングステン酸の部分中和塩を用いる、請求項1に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 前記タングステン化合物が、タングステン酸ナトリウムとタングステン酸の混合物、タングステン酸ナトリウムと鉱酸の混合物、又はタングステン酸とアルカリ化合物の混合物である、請求項1または2に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 前記3級アミンがトリアルキルアミンであり、その窒素原子に結合したアルキル基の炭素数の合計が6以上50以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 前記アリルエーテル結合を有する化合物が複数のアリルエーテル結合を有する化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 前記アリルエーテル結合を有する化合物が2つのアリルエーテル結合を有する化合物であり、反応生成物より一方のアリルエーテル結合のみがエポキシ化されたモノアリルモノグリシジルエーテル化合物を単離する工程をさらに有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 反応溶煤として有機溶煤を使用しない、請求項1〜6のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 前記アリルエーテル結合を有する化合物が、以下の式(1):{式中、R1、及びR2は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、あるいは、R1とR2は一緒になって炭素数2〜6のアルキリデン基又は炭素数3〜12のシクロアルキリデン基を形成してもよい。R3、R4、R5、及びR6は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、そして、nは0又は1の整数を表す。}で表される構造を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 前記アリルエーテル結合を有する化合物が、ビスフェノール−Aのジアリルエーテル、ビスフェノール−Fのジアリルエーテル、及び3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジアリルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 前記アリルエーテル結合を有する化合物が、炭素数2〜20のα,ω−ポリアルキレングリコールジアリルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル、及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアリルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 前記アリルエーテル結合を有する化合物が、フェノール−ホルムアルデヒド・アリルアルコール重縮合物またはクレゾール−ホルムアルデヒド・アリルアルコール重縮合物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のグリシジルエーテル化合物の製造方法。 以下の一般式(2):{式中、R7、R8、R9、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を示す。}で表される、ビフェニル骨格を有するモノアリルモノグリシジルエーテル化合物。 式中、R7、R8、R9、及びR10がメチル基である、請求項12に記載のビフェニル骨格を有するモノアリルモノグリシジルエーテル化合物。 本願発明は、温和な条件下、過酸化水素を酸化剤に用いて、アリルエーテル結合を有する化合物から対応のグリシジルエーテル化合物を効率良く製造する方法、及びビフェニル骨格を有する新規モノアリルモノグリシジルエーテル化合物を提供する。 本願発明によれば、アリルエーテル結合を有する化合物と過酸化水素とを反応させて、該アリル基の炭素−炭素二重結合をエポキシ化することにより対応するグリシジルエーテル化合物を製造する方法において、反応触媒としてタングステン化合物、3級アミン、及びフェニルホスホン酸を使用することを特徴とする前記グリシジルエーテル化合物の製造方法、及び該製造方法により得ることができる、ビフェニル骨格を有するモノアリルモノグリシジルエーテル化合物が提供される。