生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_油の劣化判定方法
出願番号:2010054785
年次:2011
IPC分類:G01N 21/59,G01N 33/30


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松本 正和 JP 2011185913 公開特許公報(A) 20110922 2010054785 20100311 油の劣化判定方法 株式会社高田工業所 000143455 中前 富士男 100090697 来田 義弘 100127155 今中 崇之 100163267 松本 正和 G01N 21/59 20060101AFI20110826BHJP G01N 33/30 20060101ALI20110826BHJP JPG01N21/59 ZG01N33/30 4 1 OL 12 2G059 2G059AA05 2G059BB04 2G059CC14 2G059DD04 2G059EE01 2G059EE17 2G059GG01 2G059HH01 2G059HH06 2G059KK01 2G059MM01本発明は、例えば、潤滑油や油圧作動油等の機械装置に使用される油(以下、単に「油」という)に発生するオイルスラッジによる油の劣化状況を判定する方法に関する。一般に、潤滑油や油圧作動油等の油の劣化状態を判断する方法として、外部からの汚染物(金属磨耗粉、ゴミ、水等の)による劣化を判定する方法では、NAS(National Aerospace Standard)等級判定があり、油(オイル)100mL中に含まれている粒子等を大きさ毎にその個数をカウントし、その等級を00級から12級で判定している。しかしなから、この方法は、外部からの汚染物による劣化の測定には適しているが、測定方法がかなり複雑であり、更に一定量以上の油を必要とし、またオイルスラッジによる劣化については適切に測定できないという問題があった。また、酸化等による化学的な劣化を測定する方法として、1)薄膜フィルタに所定量の油を通過させて濾過し、濾過後のフィルタの質量差を測定することによって固体不純物の質量を測定する質量法(JISB9931)や、2)所定量の酸性成分を中和価して測定する全酸価測定法(JISK2501)等が知られている。前記した質量法では、外部からの汚染物も含まれてしまい、油の酸化、変質等による劣化について正確に測定することは困難であった。また、前記した全酸価測定法では、オイルスラッジが形成しているか否かは不明であり、更に新油のデータが必要であるという問題があった。油中では、熱等による酸化劣化物、経年変化による生成物が集合して形成する糊状又はコロイド状のオイルスラッジが発生することが知られている。このオイルスラッジは、潤滑部や油の循環系統の流路や貯留部、例えば電磁弁等の弁部に付着あるいは堆積することでトラブルの発生原因となる。そこで、油中のオイルスラッジによる油の劣化状況を判定することが重要となっている。しかし、前記したそれぞれの測定法では、オイルスラッジによる油の劣化状況を正確に評価できない。そこで、薄膜フィルタに所定量の油を通過させて濾過し、濾過後のフィルタの汚れと予め作成した判定用の汚れ見本とを目視で比較し、判定する薄膜フィルタ比較法が用いられているが、定性的な評価であり、また、判定用の色見本作成のための新油や各劣化段階の油を必要とし、また目視によるため個人差や経験差の影響を受け易いという問題があった。また、特許文献1には、潤滑油等を循環させて、途中にレーザー光を通過する窓部を有する容器に流し、通過したレーザー光の減衰状況を測定し、油の劣化を判定する潤滑油等の劣化度判別方法が提案されている。特開平08−285771号公報しかしながら、この方法は、比較対象となる新油のデータが必要であり、劣化した油単体では劣化状況を測定するのは困難であった。また、金属粉やゴミ等の影響が露骨に現れ、油の酸化や変質状況を正確に測定するのは困難であった。更には、複数の場所で使用されている油の劣化状況を簡便に判断するのには適していないという問題があった。本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、少量の油でも測定でき、しかも測定しようとする油について汚染前の新油を必要とせず、簡便に油の劣化状況を測定できる油の劣化判定方法を提供することを目的とする。前記目的に沿う本発明に係る油の劣化判定方法は、飽和系炭化水素からなる有機溶媒で測定対象となる油を希釈する第1工程と、前記有機溶媒で希釈した油を透明セルに入れて光の透過率Aを測定する第2工程と、前記有機溶媒で希釈した油を遠心分離機にかけてオイルスラッジを沈殿させ、その上澄み液を透明セルに入れて光の透過率Bを測定する第3工程と、前記透過率Aと前記透過率Bの差又は比から前記油の劣化状況を判定する第4工程とを有する。本発明に係る油の劣化判定方法において、前記有機溶媒の量は、前記油の1〜10倍の体積量の範囲にあるのが好ましい。また、本発明に係る油の劣化判定方法において、前記透過率A、Bの測定に使用する光は、通常の光(可視光、赤外線、紫外線)であってもよいが、レーザー光であるのが更に好ましい。そして、本発明に係る油の劣化判定方法において、前記油中に含まれている粒子の個数を大きさ毎にカウントし、その数の一番大きい等級を前記油の等級とする油の汚染度測定方法(NAS等級判定法)と合わせて、異物による汚染状況とオイルスラッジによる汚染状況の両方から、前記油の汚染程度を決めるのが好ましい。本発明に係る油の劣化判定方法は、測定対象となる油に、飽和系炭化水素からなる有機溶媒を入れて希釈し、透明セルに入れて光の透過率Aを測定し、更にこの有機溶媒で希釈して油を遠心分離機にかけてオイルスラッジを沈殿させ、その上澄み液を透明セルに入れて光の透過率Bを測定し、透過率Aと透過率Bの差又は比から、油中のオイルスラッジの状況を、測定対象とする油のみを用いて定量的に評価することができる。即ち、比較対象としての新油は必要ではない。特に、油中の粒子(ゴミ、金属等)をその大きさの粒子数から油の等級を決めるNAS等級判定法と、油に飽和系炭化水素からなる有機溶媒を入れて希釈し、透明セルに入れて光の透過率Aを測定し、更にこの有機溶媒で希釈して油を遠心分離機にかけてオイルスラッジを沈殿させ、その上澄み液を透明セルに入れて光の透過率Bを測定し、透過率Aと透過率Bの差又は比から、油の汚染状況を判断する方法とを組み合わせて油の判定を行うと、油の異物による汚染状況とオイルスラッジによる汚染状況の両方から油の汚染状況を判断できる。(A)〜(C)は本発明の一実施の形態に係る油の劣化判定方法の説明図である。加温劣化させた油を有機溶剤で希釈した場合のレーザー透過率と劣化時間との関係を示すグラフである。加温劣化させた油を有機溶剤で希釈しない場合のレーザー透過率と劣化時間との関係を示すグラフである。劣化油と石油ベンジンの比を変えた場合の油Aのレーザー光透過率を示すグラフである。劣化油と石油ベンジンの比を変えた場合の油Bのレーザー光透過率を示すグラフである。劣化油と石油ベンジンの比を変えた場合の油Cのレーザー光透過率を示すグラフである。遠心分離の時間と遠心分離前後の透過率の差を示すグラフである。続いて、図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。図1(A)〜(C)に示すように、測定対象となる少量(例えば、0.6〜20cc程度)の油10を容器11に入れ、飽和系炭化水素からなる有機溶剤の一例であるノルマルヘキサン(液体)を入れて油10を希釈し、希釈油12とする。投入するノルマルヘキサンの量は、油10の容積の1〜10倍(より好ましくは、1.5〜6倍、更に好ましくは2〜5倍)程度とする。なお、飽和系炭化水素からなる有機溶剤としては、例えば、炭素数が5以上のアルカン(パラフィン類)、シクロアルカン、その異性体、これらの混合物であって、常温で液体のものが使用され、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、及びこれらの異性体、シクロヘキサン、シクロヘプタン等がある。また、これらの混合物としての石油ベンジン等も使用できる。これによって、油10内に混入していた金属粉等の異物は沈殿し、オイルスラッジ13は希釈油12内に浮遊している。この希釈油12の全部又は一部を取り出して透明セルの一例である石英ガラスセル14に入れる。この石英ガラスセル14は例えば一辺が10mmの断面矩形となって、一方から他方に又はその逆方向に光を通すようになっている。なお、容器11として石英ガラスセルを使用することもできる。希釈油12の入った石英ガラスセル14をレーザーの発信器(投光器)15と受信器(受光器)16との間(隙間は例えば32mm)に置いて、光の透過率Aを測定する。透過率Aは、(希釈油12の入った石英ガラスセル14を通過したレーザー光の光度(輝度))÷(空の状態の石英ガラスセル14を通過したレーザー光の光度(輝度))×100となる。ここで、レーザー光としては、光幅が石英ガラスセル14の大きさに応じてその一辺の20〜90%のものを使用するのが好ましい。この希釈油12を遠心分離機にかける。遠心分離の条件は5000〜20000Gで2〜60分程度である。これによって、オイルスラッジ13を沈殿させ、この上澄み液を取り出して透明セルの一例である石英ガラスセル14に入れてレーザー光の透過率Bを測定する。透過率Bは、(上澄み液の入った石英ガラスセル14を通過したレーザー光の光度(輝度))÷(空の状態の石英ガラスセル14を通過したレーザー光の光度(輝度))×100となる。そして、透過率Aと透過率Bの比(A/B、又は差)から油の劣化状況(例えば、0.5以下は劣化)を判定することができる。図2には、新油を120度の温度で強制劣化させた油を用い、この油を有機溶剤(例えば、石油ベンジン)で希釈した場合の遠心分離前後のレーザー光透過率を示し、図3には、この油を有機溶剤で希釈しない場合の遠心分離前後のレーザー光透過率を示す。図3からも明白なように、有機溶剤で希釈しない場合は、遠心分離前後ではレーザー光の透過率に差がでないことが判る。なお、レーザー光は例えば、波長780nmの赤外線レーザーであった。次に、油には外部から異物が混入する場合もあるので、この異物の判定を、NAS等級判定で行い、更に、以上の実施の形態に説明した油の劣化判定方法(「第1発明方法」という)と合わせて、油の汚染状況を判定する場合について説明する。表1には、1)新油、2)新油300ccに微小銅粉0.01gを混入、3)新油300ccに微小銅粉0.02gを混入、4)新油300ccに微小銅粉0.2gを混入した場合について、パーティクルカウンタによる粒子の個数(上段:個/100mL)、NAS等級(下段)の結果を示す。金属粉の混入量を変化させても、第1発明方法では、遠心分離後のレーザー光の透過率に差は見られない。従って、第1の発明方法では、外部から混入した異物の影響を受けることなく、オイルスラッジによる油の劣化状態を評価することができる。この理由は、油を有機溶媒で希釈させているので、異物が沈殿し易いためであると考えられる。従って、第1発明方法とNAS等級判定法とを組み合わせれば、油が健全な状態と、内部劣化が進んでオイルスラッジが多い状態と、異物の混入が多い状態と、オイルスラッジ及び異物共に多い状態の識別が可能となる(第2発明方法)。続いて、本発明に係る油の劣化判定方法の作用、効果について確認した実施例について説明する。放置時間(4週間、6週間、8週間)を変えて、120℃にて加温劣化させた油(銅粉の混入なし)を3種類(油A、油B、油C)用意し、劣化油の量と有機溶媒の一例である石油ベンジン(主として、ノルマルヘキサン)との混合比率を変えて、第1発明方法によって、油の劣化判定を行った。表2、図4〜図6はその結果を示す。油の性状は以下の通りである。油A:4週間(698時間)、全酸価:0.81mgKOH/g、NAS:7等級油B:6週間(1034時間)、全酸価:1.45mgKOH/g、NAS:7等級油C:8週間(1394時間)、全酸価:1.81mgKOH/g、NAS:7等級なお、遠心分離機による遠心力は10000G、遠心分離時間は30分であった。表2、図4〜図6から判断されることは、全酸価の値が小さい場合には、石油ベンジンの希釈率が低い方が感度がよく、全酸価の値が大きい場合には、希釈率比を多くした方が感度がよい。従って、通常はオイルスラッジの少ない場合の見極め(感度)を向上したいので、油と石油ベンジンとの比率は1:10〜1:3程度とするのが好ましい。次に、遠心分離の時間について検討した。この場合の条件は油Bと油Cを用い、油と石油ベンジンの比率は1:2、遠心力は10000G、遠心分離時間は2.5〜40分の間で実験した。この結果を、表3及び図7に示す。図7の結果から、オイルスラッジの生成量の大小に関わらず、遠心分離の処理時間の影響は同じとなる。遠心力が10000Gの場合は、20〜30分の時間をかけた方が測定感度は向上する。従って、遠心力が10000Gの場合は、処理時間は10分程度以上の方が好ましいことが判る。続いて、油を希釈する有機溶剤について、石油ベンジン(主成分は飽和系炭化水素からなるノルマルヘキサン、及びイソヘキサン)と、不飽和系炭化水素の一例であるアセトン(CH3COCH3)を用いた場合の油の劣化判定について説明する。石油ベンジンの場合は、混合比率に関係なく測定対象となる油はよく混ざるが、油とアセトンを1:2にして放置すると、表面上アセトンと油とは分離してしまい希釈できなかった。更には、不飽和分を含むと条件によっては、その部分に酸素等が結合して油中にオイルスラッジが発生するので、溶剤としては、鎖状又は環状の飽和系炭化水素を使用するのがよい。前記実施の形態においては、具体的数字を用いて説明したが、本発明の要旨を変更しない範囲で数値変更はあり得る。また、前記実施の形態において、透明セルとして石英ガラスセルを用いたが、透光性を有するものであれば、ガラス、プラスチックのセルであってもよい。また、容器11とこの透明セルを兼用することもできる。前記実施の形態及び実施例においては、透過率Aと透過率Bの差から油の劣化状況を判定したが、透過率Aと透過率Bの比から油の劣化状況を判定してもよい。10:油、11:容器、12:希釈油、13:オイルスラッジ、14:石英ガラスセル、15:発信器、16:受信器測定対象となる油に、飽和系炭化水素からなる有機溶媒を入れて希釈する第1工程と、前記有機溶媒で希釈した油を透明セルに入れて光の透過率Aを測定する第2工程と、前記有機溶媒で希釈した油を遠心分離機にかけてオイルスラッジを沈殿させ、その上澄み液を透明セルに入れて光の透過率Bを測定する第3工程と、前記透過率Aと前記透過率Bの差又は比から前記油の劣化状況を判定する第4工程とを有することを特徴とする油の劣化判定方法。請求項1記載の油の劣化判定方法において、前記有機溶媒の量は、前記油の1〜10倍の体積量の範囲にあることを特徴とする油の劣化判定方法。請求項1又は2記載の油の劣化判定方法において、前記透過率A、Bの測定に使用する光は、レーザー光であることを特徴とする油の劣化判定方法。請求項1〜3のいずれか1記載の油の劣化判定方法において、前記油中に含まれている粒子の個数を大きさ毎にカウントし、その数の一番大きい等級を前記油の等級とする油の汚染度測定方法と合わせて、異物による汚染状況とオイルスラッジによる汚染状況の両方から、前記油の汚染程度を決めることを特徴とする油の劣化判定方法。 【課題】少量の油でも測定でき、しかも測定しようとする油について汚染前の新油を必要とせず、簡便に油の劣化状況を測定できる油の劣化判定方法を提供する。【解決手段】測定対象となる油10に、飽和系炭化水素からなる有機溶媒を入れて希釈する第1工程と、有機溶媒で希釈した油12を透明セル14に入れて光の透過率Aを測定する第2工程と、有機溶媒で希釈した油12を遠心分離機にかけてオイルスラッジを沈殿させ、その上澄み液を透明セル14に入れて光の透過率Bを測定する第3工程と、透過率Aと透過率Bの差又は比から油の劣化状況を判定する第4行程とを有する。【選択図】図1


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特許公報(B2)_油の劣化判定方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_油の劣化判定方法
出願番号:2010054785
年次:2014
IPC分類:G01N 21/59,G01N 33/30


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松本 正和 JP 5388911 特許公報(B2) 20131018 2010054785 20100311 油の劣化判定方法 株式会社高田工業所 000143455 中前 富士男 100090697 来田 義弘 100127155 今中 崇之 100163267 松本 正和 20140115 G01N 21/59 20060101AFI20131219BHJP G01N 33/30 20060101ALI20131219BHJP JPG01N21/59 ZG01N33/30 G01N 21/00−21/61 G01N 1/00− 1/44 G01N 15/00−15/14 G01N 33/30 特表2005−512053(JP,A) 特開平03−108640(JP,A) 特開昭62−110135(JP,A) 4 2011185913 20110922 12 20130212 横尾 雅一本発明は、例えば、潤滑油や油圧作動油等の機械装置に使用される油(以下、単に「油」という)に発生するオイルスラッジによる油の劣化状況を判定する方法に関する。一般に、潤滑油や油圧作動油等の油の劣化状態を判断する方法として、外部からの汚染物(金属磨耗粉、ゴミ、水等の)による劣化を判定する方法では、NAS(National Aerospace Standard)等級判定があり、油(オイル)100mL中に含まれている粒子等を大きさ毎にその個数をカウントし、その等級を00級から12級で判定している。しかしなから、この方法は、外部からの汚染物による劣化の測定には適しているが、測定方法がかなり複雑であり、更に一定量以上の油を必要とし、またオイルスラッジによる劣化については適切に測定できないという問題があった。また、酸化等による化学的な劣化を測定する方法として、1)薄膜フィルタに所定量の油を通過させて濾過し、濾過後のフィルタの質量差を測定することによって固体不純物の質量を測定する質量法(JISB9931)や、2)所定量の酸性成分を中和価して測定する全酸価測定法(JISK2501)等が知られている。前記した質量法では、外部からの汚染物も含まれてしまい、油の酸化、変質等による劣化について正確に測定することは困難であった。また、前記した全酸価測定法では、オイルスラッジが形成しているか否かは不明であり、更に新油のデータが必要であるという問題があった。油中では、熱等による酸化劣化物、経年変化による生成物が集合して形成する糊状又はコロイド状のオイルスラッジが発生することが知られている。このオイルスラッジは、潤滑部や油の循環系統の流路や貯留部、例えば電磁弁等の弁部に付着あるいは堆積することでトラブルの発生原因となる。そこで、油中のオイルスラッジによる油の劣化状況を判定することが重要となっている。しかし、前記したそれぞれの測定法では、オイルスラッジによる油の劣化状況を正確に評価できない。そこで、薄膜フィルタに所定量の油を通過させて濾過し、濾過後のフィルタの汚れと予め作成した判定用の汚れ見本とを目視で比較し、判定する薄膜フィルタ比較法が用いられているが、定性的な評価であり、また、判定用の色見本作成のための新油や各劣化段階の油を必要とし、また目視によるため個人差や経験差の影響を受け易いという問題があった。また、特許文献1には、潤滑油等を循環させて、途中にレーザー光を通過する窓部を有する容器に流し、通過したレーザー光の減衰状況を測定し、油の劣化を判定する潤滑油等の劣化度判別方法が提案されている。特開平08−285771号公報しかしながら、この方法は、比較対象となる新油のデータが必要であり、劣化した油単体では劣化状況を測定するのは困難であった。また、金属粉やゴミ等の影響が露骨に現れ、油の酸化や変質状況を正確に測定するのは困難であった。更には、複数の場所で使用されている油の劣化状況を簡便に判断するのには適していないという問題があった。本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、少量の油でも測定でき、しかも測定しようとする油について汚染前の新油を必要とせず、簡便に油の劣化状況を測定できる油の劣化判定方法を提供することを目的とする。前記目的に沿う本発明に係る油の劣化判定方法は、飽和系炭化水素からなる有機溶媒で測定対象となる油を希釈する第1工程と、前記有機溶媒で希釈した油を透明セルに入れて光の透過率Aを測定する第2工程と、前記有機溶媒で希釈した油を遠心分離機にかけてオイルスラッジを沈殿させ、その上澄み液を透明セルに入れて光の透過率Bを測定する第3工程と、前記透過率Aと前記透過率Bの差又は比から前記油の劣化状況を判定する第4工程とを有する。本発明に係る油の劣化判定方法において、前記有機溶媒の量は、前記油の1〜10倍の体積量の範囲にあるのが好ましい。また、本発明に係る油の劣化判定方法において、前記透過率A、Bの測定に使用する光は、通常の光(可視光、赤外線、紫外線)であってもよいが、レーザー光であるのが更に好ましい。そして、本発明に係る油の劣化判定方法において、前記油中に含まれている粒子の個数を大きさ毎にカウントし、その数の一番大きい等級を前記油の等級とする油の汚染度測定方法(NAS等級判定法)と合わせて、異物による汚染状況とオイルスラッジによる汚染状況の両方から、前記油の汚染程度を決めるのが好ましい。本発明に係る油の劣化判定方法は、測定対象となる油に、飽和系炭化水素からなる有機溶媒を入れて希釈し、透明セルに入れて光の透過率Aを測定し、更にこの有機溶媒で希釈して油を遠心分離機にかけてオイルスラッジを沈殿させ、その上澄み液を透明セルに入れて光の透過率Bを測定し、透過率Aと透過率Bの差又は比から、油中のオイルスラッジの状況を、測定対象とする油のみを用いて定量的に評価することができる。即ち、比較対象としての新油は必要ではない。特に、油中の粒子(ゴミ、金属等)をその大きさの粒子数から油の等級を決めるNAS等級判定法と、油に飽和系炭化水素からなる有機溶媒を入れて希釈し、透明セルに入れて光の透過率Aを測定し、更にこの有機溶媒で希釈して油を遠心分離機にかけてオイルスラッジを沈殿させ、その上澄み液を透明セルに入れて光の透過率Bを測定し、透過率Aと透過率Bの差又は比から、油の汚染状況を判断する方法とを組み合わせて油の判定を行うと、油の異物による汚染状況とオイルスラッジによる汚染状況の両方から油の汚染状況を判断できる。(A)〜(C)は本発明の一実施の形態に係る油の劣化判定方法の説明図である。加温劣化させた油を有機溶剤で希釈した場合のレーザー透過率と劣化時間との関係を示すグラフである。加温劣化させた油を有機溶剤で希釈しない場合のレーザー透過率と劣化時間との関係を示すグラフである。劣化油と石油ベンジンの比を変えた場合の油Aのレーザー光透過率を示すグラフである。劣化油と石油ベンジンの比を変えた場合の油Bのレーザー光透過率を示すグラフである。劣化油と石油ベンジンの比を変えた場合の油Cのレーザー光透過率を示すグラフである。遠心分離の時間と遠心分離前後の透過率の差を示すグラフである。続いて、図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。図1(A)〜(C)に示すように、測定対象となる少量(例えば、0.6〜20cc程度)の油10を容器11に入れ、飽和系炭化水素からなる有機溶剤の一例であるノルマルヘキサン(液体)を入れて油10を希釈し、希釈油12とする。投入するノルマルヘキサンの量は、油10の容積の1〜10倍(より好ましくは、1.5〜6倍、更に好ましくは2〜5倍)程度とする。なお、飽和系炭化水素からなる有機溶剤としては、例えば、炭素数が5以上のアルカン(パラフィン類)、シクロアルカン、その異性体、これらの混合物であって、常温で液体のものが使用され、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、及びこれらの異性体、シクロヘキサン、シクロヘプタン等がある。また、これらの混合物としての石油ベンジン等も使用できる。これによって、油10内に混入していた金属粉等の異物は沈殿し、オイルスラッジ13は希釈油12内に浮遊している。この希釈油12の全部又は一部を取り出して透明セルの一例である石英ガラスセル14に入れる。この石英ガラスセル14は例えば一辺が10mmの断面矩形となって、一方から他方に又はその逆方向に光を通すようになっている。なお、容器11として石英ガラスセルを使用することもできる。希釈油12の入った石英ガラスセル14をレーザーの発信器(投光器)15と受信器(受光器)16との間(隙間は例えば32mm)に置いて、光の透過率Aを測定する。透過率Aは、(希釈油12の入った石英ガラスセル14を通過したレーザー光の光度(輝度))÷(空の状態の石英ガラスセル14を通過したレーザー光の光度(輝度))×100となる。ここで、レーザー光としては、光幅が石英ガラスセル14の大きさに応じてその一辺の20〜90%のものを使用するのが好ましい。この希釈油12を遠心分離機にかける。遠心分離の条件は5000〜20000Gで2〜60分程度である。これによって、オイルスラッジ13を沈殿させ、この上澄み液を取り出して透明セルの一例である石英ガラスセル14に入れてレーザー光の透過率Bを測定する。透過率Bは、(上澄み液の入った石英ガラスセル14を通過したレーザー光の光度(輝度))÷(空の状態の石英ガラスセル14を通過したレーザー光の光度(輝度))×100となる。そして、透過率Aと透過率Bの比(A/B、又は差)から油の劣化状況(例えば、0.5以下は劣化)を判定することができる。図2には、新油を120度の温度で強制劣化させた油を用い、この油を有機溶剤(例えば、石油ベンジン)で希釈した場合の遠心分離前後のレーザー光透過率を示し、図3には、この油を有機溶剤で希釈しない場合の遠心分離前後のレーザー光透過率を示す。図3からも明白なように、有機溶剤で希釈しない場合は、遠心分離前後ではレーザー光の透過率に差がでないことが判る。なお、レーザー光は例えば、波長780nmの赤外線レーザーであった。次に、油には外部から異物が混入する場合もあるので、この異物の判定を、NAS等級判定で行い、更に、以上の実施の形態に説明した油の劣化判定方法(「第1発明方法」という)と合わせて、油の汚染状況を判定する場合について説明する。表1には、1)新油、2)新油300ccに微小銅粉0.01gを混入、3)新油300ccに微小銅粉0.02gを混入、4)新油300ccに微小銅粉0.2gを混入した場合について、パーティクルカウンタによる粒子の個数(上段:個/100mL)、NAS等級(下段)の結果を示す。金属粉の混入量を変化させても、第1発明方法では、遠心分離後のレーザー光の透過率に差は見られない。従って、第1の発明方法では、外部から混入した異物の影響を受けることなく、オイルスラッジによる油の劣化状態を評価することができる。この理由は、油を有機溶媒で希釈させているので、異物が沈殿し易いためであると考えられる。従って、第1発明方法とNAS等級判定法とを組み合わせれば、油が健全な状態と、内部劣化が進んでオイルスラッジが多い状態と、異物の混入が多い状態と、オイルスラッジ及び異物共に多い状態の識別が可能となる(第2発明方法)。続いて、本発明に係る油の劣化判定方法の作用、効果について確認した実施例について説明する。放置時間(4週間、6週間、8週間)を変えて、120℃にて加温劣化させた油(銅粉の混入なし)を3種類(油A、油B、油C)用意し、劣化油の量と有機溶媒の一例である石油ベンジン(主として、ノルマルヘキサン)との混合比率を変えて、第1発明方法によって、油の劣化判定を行った。表2、図4〜図6はその結果を示す。油の性状は以下の通りである。油A:4週間(698時間)、全酸価:0.81mgKOH/g、NAS:7等級油B:6週間(1034時間)、全酸価:1.45mgKOH/g、NAS:7等級油C:8週間(1394時間)、全酸価:1.81mgKOH/g、NAS:7等級なお、遠心分離機による遠心力は10000G、遠心分離時間は30分であった。表2、図4〜図6から判断されることは、全酸価の値が小さい場合には、石油ベンジンの希釈率が低い方が感度がよく、全酸価の値が大きい場合には、希釈率比を多くした方が感度がよい。従って、通常はオイルスラッジの少ない場合の見極め(感度)を向上したいので、油と石油ベンジンとの比率は1:10〜1:3程度とするのが好ましい。次に、遠心分離の時間について検討した。この場合の条件は油Bと油Cを用い、油と石油ベンジンの比率は1:2、遠心力は10000G、遠心分離時間は2.5〜40分の間で実験した。この結果を、表3及び図7に示す。図7の結果から、オイルスラッジの生成量の大小に関わらず、遠心分離の処理時間の影響は同じとなる。遠心力が10000Gの場合は、20〜30分の時間をかけた方が測定感度は向上する。従って、遠心力が10000Gの場合は、処理時間は10分程度以上の方が好ましいことが判る。続いて、油を希釈する有機溶剤について、石油ベンジン(主成分は飽和系炭化水素からなるノルマルヘキサン、及びイソヘキサン)と、不飽和系炭化水素の一例であるアセトン(CH3COCH3)を用いた場合の油の劣化判定について説明する。石油ベンジンの場合は、混合比率に関係なく測定対象となる油はよく混ざるが、油とアセトンを1:2にして放置すると、表面上アセトンと油とは分離してしまい希釈できなかった。更には、不飽和分を含むと条件によっては、その部分に酸素等が結合して油中にオイルスラッジが発生するので、溶剤としては、鎖状又は環状の飽和系炭化水素を使用するのがよい。前記実施の形態においては、具体的数字を用いて説明したが、本発明の要旨を変更しない範囲で数値変更はあり得る。また、前記実施の形態において、透明セルとして石英ガラスセルを用いたが、透光性を有するものであれば、ガラス、プラスチックのセルであってもよい。また、容器11とこの透明セルを兼用することもできる。前記実施の形態及び実施例においては、透過率Aと透過率Bの差から油の劣化状況を判定したが、透過率Aと透過率Bの比から油の劣化状況を判定してもよい。10:油、11:容器、12:希釈油、13:オイルスラッジ、14:石英ガラスセル、15:発信器、16:受信器測定対象となる油に、飽和系炭化水素からなる有機溶媒を入れて希釈する第1工程と、前記有機溶媒で希釈した油を透明セルに入れて光の透過率Aを測定する第2工程と、前記有機溶媒で希釈した油を遠心分離機にかけてオイルスラッジを沈殿させ、その上澄み液を透明セルに入れて光の透過率Bを測定する第3工程と、前記透過率Aと前記透過率Bの差又は比から前記油の劣化状況を判定する第4工程とを有することを特徴とする油の劣化判定方法。請求項1記載の油の劣化判定方法において、前記有機溶媒の量は、前記油の1〜10倍の体積量の範囲にあることを特徴とする油の劣化判定方法。請求項1又は2記載の油の劣化判定方法において、前記透過率A、Bの測定に使用する光は、レーザー光であることを特徴とする油の劣化判定方法。請求項1〜3のいずれか1記載の油の劣化判定方法において、前記油中に含まれている粒子の個数を大きさ毎にカウントし、その数の一番大きい等級を前記油の等級とする油の汚染度測定方法と合わせて、異物による汚染状況とオイルスラッジによる汚染状況の両方から、前記油の汚染程度を決めることを特徴とする油の劣化判定方法。


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